JP5099995B2 - エマルションの製造方法、ならびに、そのエマルションを用いた塗料 - Google Patents
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Description
このような水性塗料としては、例えば、エマルションをバインダーとするもの等が挙げられ、これらは主に水を媒体とするため、VOCの低減を図ることができる。
例えば、水性塗料で用いるエマルションのガラス転移温度を低く設定することにより造膜性を高めることができる。しかしエマルションのガラス転移温度を低く設定すると、耐汚染性に劣るという問題が発生する。反対にガラス転移温度を高く設定すると耐汚染性を向上させることはできるが、造膜性に劣るという問題が発生する。
このようなコアシェルエマルションは、一つのエマルション粒子内にガラス転移温度の高い層と低い層があり、ガラス転移温度の低い層が造膜性、高い層が耐汚染性に寄与しているものと思われる。
しかし、特許文献1では、その製造過程において、ガラス転移温度の高いコア層部に、ガラス転移温度の低いシェル成分が浸入する場合があり、コア層のガラス転移温度が想定したよりも低く、逆にシェル層のガラス転移温度が想定したよりも高くなる場合があった。よって、造膜性と耐汚染性を両立させることは困難となる場合があった。
しかしながら、上記多官能モノマーでは、コア層全体が架橋し、しかも架橋密度が高くなりすぎる場合があるため、そのようなコアシェルエマルションをバインダーとして用いた場合、優れた造膜性が得られない場合があった。
1.(1´)シクロアルキル基含有モノマー及び/またはt−アルキル基含有モノマーの合計量が重量比率で10重量%以上であるコア層形成用モノマーを重合した後、アルコキシシラン化合物を混合して、コア層を得る工程、
(2)コア層をシードとし、シクロアルキル基含有モノマー及び/またはt−アルキル基含有モノマーの合計量が重量比率で5重量%以上であるシェル層形成用モノマー(但し、アルコキシシラン化合物を除く)をシード乳化重合する工程、
からなり、コア層形成用モノマーの重合体のガラス転移温度が、シェル層形成用モノマーの重合体のガラス転移温度よりも20℃以上高いことを特徴とするエマルションの製造方法。
2.コア層形成用モノマーの重合体のガラス転移温度が30℃以上であり、シェル層形成用モノマーの重合体のガラス転移温度が10℃以下であることを特徴とする1.に記載のエマルションの製造方法
3.コア層形成用モノマーの重合体のガラス転移温度が、シェル層形成用モノマーの重合体のガラス転移温度よりも40℃以上高いことを特徴とする1.に記載のエマルションの製造方法
4.コア層形成用モノマーの重合体のガラス転移温度が40℃以上であり、シェル層形成用モノマーの重合体のガラス転移温度が0℃以下であることを特徴とする3.に記載のエマルションの製造方法
5.コア層形成用モノマー及びシェル層形成用モノマーのうち、シクロアルキル基含有モノマー及び/またはt−アルキル基含有モノマーの合計量が重量比率で10重量%以上であることを特徴とする1.から4.のいずれかに記載のエマルションの製造方法
6.1.から5.のいずれかに記載の製造方法によって得られるエマルションをバインダーとする揮発性有機化合物(VOC)が5重量%未満の低VOC塗料
アルコキシシラン化合物は、主に水等の存在下でアルコキシシラン縮合物を生成しやすいため、水等を媒体とする重合法(乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法等)を用いて重合した場合、アルコキシシラン化合物がコア層の最表面でアルコキシシラン縮合物を生成しやすく、かつ、コア層内部では、アルコキシシラン縮合物の生成がある程度抑制される。そのため、コア層表面が架橋した柔軟性をもつコア層が製造でき、ガラス転移温度の低いシェル層形成用モノマーがコア層内部に浸入することを抑制できるため、造膜性に優れたエマルションを得ることができると考えられる。
このようにして得られるエマルションは、優れた耐汚染性と造膜性の両立が可能であり、低VOC塗料用のバインダーとして好適に用いることができ、造膜助剤等のVOCが削減可能な環境配慮型の水性塗料を得ることができる。
あるいは、
(ii)(1´)コア層形成用モノマーを重合した後、アルコキシシラン化合物を混合して、コア層を得る工程、(2)コア層をシードとし、シェル層形成用モノマーをシード乳化重合する工程、により製造する方法、等が挙げられる。
本発明では、特に、コア層形成用モノマーの重合体のガラス転移温度を30℃以上、シェル層形成用モノマーの重合体のガラス転移温度を10℃以下とすることにより、常温における優れた造膜性と、耐汚染性を発揮することができ好ましい。
その結果、コアシェル型のエマルションを簡便に製造することができ、得られたエマルションは耐汚染性と造膜性を両立することができる。
このような場合、第(2)段階目にシェル層形成用モノマーをシード乳化重合する際に、シェル層形成用モノマーがコア層内部へ侵入することをより抑制することができるとともに、コア層内部での架橋を抑えることができ、適度に柔軟性のあるコア層を製造することできると考えられる。その結果、コア層とシェル層がより明確に区別されたコアシェル型のエマルションを製造することができるとともに、耐汚染性と造膜性をより両立させることができると考えられる。
(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、イソクロトン酸、サリチル酸、けい皮酸等のカルボキシル基含有モノマー;
(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシブチル、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール―ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールアリルエーテル、ポリプロピレングリコールアリルエーテル、ポリエチレングリコール―ポリプロピレングリコールアリルエーテル、N−メチロ−ル(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシル基含有モノマー;
(メタ)アクリル酸アミノメチル、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、(メタ)アクリル酸アミノブチル、ブチルビニルベンジルアミン、ビニルフェニルアミン、p−アミノスチレン、(メタ)アクリル酸−N−メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸−N−t−ブチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジエチルアミノプロピル、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ピペリジン、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ピロリジン、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕モルホリン、4−〔N,N−ジメチルアミノ〕スチレン、4−〔N,N−ジエチルアミノ〕スチレン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等のアミノ基含有モノマー;
(メタ)アクリル酸グリシジル、ジグリシジルフマレート、(メタ)アクリル酸−3,4−エポキシシクロヘキシル、3,4−エポキシビニルシクロヘキサン、アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸−ε−カプロラクトン変性グリシジル、(メタ)アクリル酸−β−メチルグリシジル等のグリシジル基含有モノマー;
(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−シクロプロピル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクロイルピロリジン、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル](メタ)アクリルアミド、ビニルアミド、N,N−メチレンビスアクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−メチロ−ル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;
ジアセトン(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、アクロレイン、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニル(イソ)ブチルケトン、アセトニルアクリレート、アクリルオキシアルキルプロパナール類、メタクリルオキシアルキルプロパナール類、2ーヒドロキシプロピルアクリレートアセチルアセテート、タンジオールアクリレートアセチルアセテート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシアリルエステル等のカルボニル基含有モノマー;
アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル基含有モノマー;
メタクリロイルイソシアネートなどのイソシアネート基含有モノマー;
プロピレン−1,3−ジヒドラジン及びブチレン−1,4−ジヒドラジンなどのヒドラジノ基含有モノマー;
ビニルオキサゾリン、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−プロペニル2−オキサゾリン等のオキサゾリン基含有モノマー;
アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシアリルエステル等のアセトアセトキシル基含有モノマー;
N−メチロ−ル(メタ)アクリルアミド等のメチロール基含有モノマー;
シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロデシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、4−tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル基含有モノマー;
(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸t−アミル、(メタ)アクリル酸トリプロピルメチル、(メタ)アクリル酸トリイソプロピルメチル、(メタ)アクリル酸トリブチルメチル、(メタ)アクリル酸トリイソブチルメチル、(メタ)アクリル酸トリt−ブチルメチル、4−tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のt−アルキル基含有モノマー;
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸−i−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、、(メタ)アクリル酸−sec−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸n一アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸オキチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ドデセニル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−フェニルエチル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−4−メトキシブチル等の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;
ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール―ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールアリルエーテル、ポリプロピレングリコールアリルエーテル、ポリエチレングリコール―ポリプロピレングリコールアリルエーテル、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール―ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(メトキシ)ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、(メトキシ)ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、(メトキシ)ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、(メトキシ)ポリエチレングリコールアリルエーテル、(メトキシ)ポリプロピレングリコールアリルエーテル、(メトキシ)ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールアリルエーテル等のポリアルキレングリコール鎖含有モノマー
フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系モノマー;
スチレン、2−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル系モノマー;
スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸などのスルホン酸含有モノマー;
エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン等のその他のモノマー;
等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができ、上述したガラス転移温度の範囲で適宜設定することができる。
また、カルボキシル基含有モノマーは、後述するアルコキシシラン化合物自体の縮合反応を促進する効果があり、また、アルコキシシラン化合物の種類によってはアルコキシシラン化合物と反応し、コア層表面にアルコキシシラン縮合物を固定化できると考えられる。
このようなカルボキシル基含有モノマーは、コア層形成用モノマー全量に対し、0.1〜10重量%、0.5〜5重量%程度含むことが好ましい。
また、形成塗膜の耐水性、耐候性向上の面から、シクロアルキル基含有モノマー、t−アルキル基含有モノマー等を含むことが好ましい。シクロアルキル基含有モノマー、t−アルキル基含有モノマーを含むことによって、造膜性等を維持しつつ、形成塗膜の耐水性、耐候性を向上させることができる。さらに、形成塗膜のクリヤー性、弾性塗膜への密着性の向上も期待できる。
シクロアルキル基含有モノマー及び/またはt−アルキル基含有モノマーの混合比率は、コア層形成用モノマーのうち、シクロアルキル基含有モノマー及び/またはt−アルキル基含有モノマーの合計量が重量比率で10重量%以上(好ましくは15重量%以上95重量%以下、さらに好ましくは20重量%以上85重量%以下)であることが好ましい。
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシシシラン、ビニルトリエトキシシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン等の不飽和結合を有するアルコキシシラン化合物;
3−グリドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリドキシプロピルメチルジエトキシシシラン、2−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のグリシジル基を有するアルコキシシラン化合物;
N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジエトキシシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するアルコキシシラン化合物;
γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基を有するアルコキシシラン化合物;
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−i−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、プロピルトリブトキシシラン、ブチルトリメトキシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリプロポキシシラン、ブチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメチルシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン、あるいは、これらのアルコキシシランのアルコキシル基のうち、ポリオキシアルキレン基含有化合物、アミノ基含有化合物、フッ素含有化合物等によって変性されたアルコキシシラン変性物等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
本発明では特に、コア層形成用モノマーとしてカルボキシル基含有モノマーを含み、アルコキシシラン化合物としてグリシジル基を有するアルコキシシラン化合物を使用する組み合わせ、コア層形成用モノマーとしてカルボキシル基含有モノマーを含み、アルコキシシラン化合物としてアミノ基を有するアルコキシシラン化合物を使用する組み合わせ、コア層形成用モノマーとしてアセトアセトキシル基含有モノマーを含み、アルコキシシラン化合物としてアミノ基を有するアルコキシシラン化合物を使用する組み合わせ等が好ましい。
例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸塩、ロジン酸塩、アルキル硫酸エステル、アルキルスルホコハク酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル(アリール)硫酸エステル塩等のアニオン性乳化剤、
ラウリルトリアルキルアンモニウム塩、ステアリルトリアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩などの第4級アンモニウム塩、第1級〜第3級アミン塩、ラウリルピリジニウム塩、ベンザルコニウム塩、ベンゼトニウム塩、或は、ラウリルアミンアセテート等のカチオン性界面活性剤、
ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等のノニオン性界面活性剤、
カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸型、イミダゾリン誘導体型等の両性界面活性剤等が挙げられる。
本発明では、特に、凍結安定性の面からポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性乳化剤や、ノニオン性乳化剤の使用が好ましい。
コア層(シード粒子)の平均粒子径は、特に限定されないが、50nmから1000nm(好ましくは50nmから500nm)であることが好ましい。
なお、平均粒子径は、動的光散乱法により測定した値である。具体的には、動的光散乱測定装置として、マイクロトラック粒度分析計(例えば、UPA150、日機装株式会社製)を用い、検出された散乱強度をヒストグラム解析法のMarquardt法により解析した値であり、測定温度は25℃である。
シェル層形成用モノマーとしては、例えば、上記したコア層形成用モノマーと同様のモノマーが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を、上述したガラス転移温度の範囲で適宜設定し用いることができる。
第(2)段階目では特に、コアシェル型エマルション粒子の製造の容易さ、低温安定性、重合安定性、造膜性等を考慮すると、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、ポリアルキレングリコール鎖含有モノマー等を含むことが好ましい。
また、形成塗膜の耐水性、耐候性向上の面から、シクロアルキル基含有モノマー、t−アルキル基含有モノマー等を含むことが好ましい。シクロアルキル基含有モノマー、t−アルキル基含有モノマーを含むことによって、造膜性等を維持しつつ、耐水性、耐候性を向上させることができる。さらに、形成塗膜のクリヤー性、弾性塗膜への密着性の向上も期待できる。
シクロアルキル基含有モノマー及び/またはt−アルキル基含有モノマーの混合比率は、シェル層形成用モノマーのうち、シクロアルキル基含有モノマー及び/またはt−アルキル基含有モノマーの合計量が重量比率で5重量%以上(好ましくは5重量%以上50重量%以下、さらに好ましくは10重量%以上30重量%以下)であることが好ましい。
エマルションの平均粒子径は、特に限定されないが、60nm〜1100nm(好ましくは60nm〜600nm)であることが好ましい。1100nmよりも大きい場合は、経時安定性や耐水性が劣る恐れがある。60nmよりも小さい場合は、固形分の低いエマルションとなり適用範囲が制限される恐れがある。
また、コア層形成用モノマーと、シェル層形成用モノマーは、相互に反応可能な官能基を有することが好ましい。反応可能な官能基を有することにより、耐水性、透明性等の向上を図ることができる。このような官能基の組合わせとしては、カルボキシル基とグリシジル基、カルボキシル基とアミノ基、カルボキシル基とカルボジイミド基、カルボキシル基とアジリジン基、カルボキシル基とオキサゾリン基、カルボキシル基とアルコキシル基、ヒドロキシル基とイソシアネート基、アミノ基とグリシジル基、カルボニル基とヒドラジド基、アセトアセトキシル基とアミノ基、アルコキシル基どうし等の組合わせが挙げられる。
1/Tg=W(1)/Tg(1)+W(2)/Tg(2)(但し、W(1)+W(2)=1)
W(1):モノマー(1)の重量分率、W(2):モノマー(2)の重量分率、Tg(1):モノマー(1)のホモポリマーのTg値(単位:K)、Tg(2):モノマー(2)のホモポリマーのTg値(単位:K)
本発明におけるポリマーのTg値は上記の式を多成分系に一般化した式により計算したものである。
なお、本発明のガラス転移温度に算出には、コア層形成用モノマー及び/またはシェル層形成用モノマーで算出した値であり、アルコキシシラン化合物は含まれない値である。
塗料用のバインダーとして用いた場合、優れた造膜性(低温での造膜性等)を示し、かつ、形成塗膜は、耐汚染性に優れ、さらに透明性、光沢性に優れている。
特に、コア層形成用モノマーの重合体のガラス転移温度が30℃以上であり、シェル層形成用モノマーの重合体のガラス転移温度が10℃以下であることにより、常温においても優れた造膜性を示すため、水性でありながら、造膜助剤等のVOCの削減可能な環境配慮型の水性塗料(低VOC塗料)を得ることができる。
本発明では、必要に応じ、造膜助剤その他の揮発性有機化合物を混合することもできるが、その含有量は塗料中に5重量%未満(さらには1重量%未満)とすることが好ましい。本発明は、造膜助剤等の揮発性有機化合物がこのような低含有量であっても、優れた造膜性を示すことができる。
このような塗料(低VOC塗料)は、上塗材として使用することが好ましいが、用途に応じ、下塗材、中塗材等に適用することも可能である。
水38重量部、アニオン乳化剤1重量部、開始剤0.2重量部と、表1の合成例1(コア層)に示す原料を各重量部で混合し、窒素雰囲気下80℃で3時間、乳化重合を行い、コア層(シード粒子)を含むエマルション(1)を得た。
エマルション(1)は固形分40重量%であった。また、コア層(シード粒子)の平均粒子径は110nmであった。
次に、エマルション(1)64重量部に、水10重量部、アニオン乳化剤1重量部、開始剤0.2重量部と、表1の合成例1(シェル層)に示す原料を各重量部で混合したプレエマルションを、窒素雰囲気下80℃で2時間かけて添加し、シード乳化重合を行い、コアシェル型エマルション(1)を得た。
コアシェル型エマルション(1)は、固形分50重量%であり、平均粒子径は150nmであった。コアシェル型エマルション(1)を用いて、次の各種試験を行った。
スレート板(150mm×150mm)に、SKクリヤーシーラー(合成樹脂エマルション系シーラー、エスケー化研株式会社製)をローラーで150g/m2塗付し、温度23℃、相対湿度50%(以下、「標準状態」ともいう。)で24時間養生させた後、コアシェル型エマルション(1)を刷毛にて150g/m2塗付し、温度2℃で24時間乾燥させた。24時間後の塗膜の割れの有無を目視にて評価した。結果は表3に示す。
◎:塗膜の割れ数0
〇:塗膜の割れ数1〜5
△:塗膜の割れ数6〜10
×:塗膜の割れ数11以上
ガラス板(150mm×150mm)に、すきま150μmのフィルムアプリケーターを用いてコアシェル型エマルション(1)を塗付し、標準状態で48時間乾燥させた後、珪砂を散布し、温度50℃で静置した。3時間後、試験体を垂直にして珪砂を落下させ、残存する珪砂量を目視にて評価した。結果は表3に示す。
◎:残存率25%未満
○:残存率25以上50%未満
△:残存率50以上75%未満
×:残存率75%以上
スレート板(150mm×150mm)に、SKクリヤーシーラー(合成樹脂エマルション系シーラー、エスケー化研株式会社製)をローラーで150g/m2塗付し、温度23℃、相対湿度50%(以下、「標準状態」ともいう。)で24時間養生させた後、水性塗料を刷毛にて300g/m2塗付し、温度2℃で24時間乾燥させた。24時間後の塗膜の割れの有無を目視にて評価した。結果は表3に示す。
◎:塗膜の割れ数0
〇:塗膜の割れ数1〜5
△:塗膜の割れ数6〜10
×:塗膜の割れ数11以上
ガラス板(150mm×150mm)に、すきま150μmのフィルムアプリケーターを用いて水性塗料を塗付し、標準状態で48時間乾燥させた後、光沢度計(日本電色工業株式会社製)を用いて、60度光沢を測定した。結果は表3に示す。
光沢度測定を行った後、試験体に珪砂を散布し、温度50℃で静置した。3時間後、試験体を垂直にして珪砂を落下させ、残存する珪砂量を目視にて評価した。結果は表3に示す。
◎:残存率25%未満
○:残存率25以上50%未満
△:残存率50以上75%未満
×:残存率75%以上
スレート板(150mm×150mm)に、SKクリヤーシーラー(合成樹脂エマルション系シーラー、エスケー化研株式会社製)をローラーで150g/m2塗付し、標準状態で24時間養生させた後、水性塗料をスプレーにて300g/m2塗付し、標準状態で14日間乾燥させた。耐水性試験では、14日間乾燥後、23℃の水に96時間浸漬し、96時間浸漬前後の光沢度を、光沢度計(日本電色工業株式会社製)にて測定し、光沢保持率を算出することによって評価した。評価は次の通りである。結果は表3に示す。
◎:光沢保持率95%以上
○:光沢保持率80以上以上95%未満
△:光沢保持率60以上以上80%未満
×:光沢保持率60%未満
スレート板(150mm×150mm)に、SKクリヤーシーラー(合成樹脂エマルション系シーラー、エスケー化研株式会社製)をローラーで150g/m2塗付し、標準状態で24時間養生させた後、水性塗料をスプレーにて300g/m2塗付し、標準状態で14日間乾燥させた。促進耐候性試験では、キセノンウェザーメーターで480時間照射し、480時間照射前後の光沢度を、光沢度計(日本電色工業株式会社製)にて測定し、光沢保持率を算出することによって評価した。評価は次の通りである。結果は表3に示す。
◎:光沢保持率95%以上
○:光沢保持率80以上以上95%未満
△:光沢保持率60以上以上80%未満
×:光沢保持率60%未満
表1の合成例2(コア層)に示す原料・各重量部、表1の合成例2(シェル層)に示す原料・各重量部を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、コアシェル型エマルション(2)を得、実施例1と同様の方法で水性塗料を製造した。
なお、コアシェル型エマルション(2)は、固形分50重量%であり、平均粒子径は155nmであった。また、得られた水性塗料は、VOCが0.1重量%未満の環境配慮型の水性塗料であった。
得れらたコアシェル型エマルション(2)、及びその水性塗料を用いて、実施例1と同様の試験を行った。
結果は表3に示す。
表1の合成例3(コア層)に示す原料・各重量部、表1の合成例3(シェル層)に示す原料・各重量部を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、コアシェル型エマルション(3)を得、実施例1と同様の方法で水性塗料を製造した。
なお、コアシェル型エマルション(3)は、固形分50%重量であり、平均粒子径は150nmであった。また、得られた水性塗料は、VOCが0.1重量%未満の環境配慮型の水性塗料であった。
得れらたコアシェル型エマルション(3)、及びその水性塗料を用いて、実施例1と同様の試験を行った。
結果は表3に示す。
水38重量部、アニオン乳化剤1重量部、開始剤0.2重量部と、表1の合成例4(コア層1)に示す原料を各重量部で混合し、窒素雰囲気下80℃で3時間、乳化重合を行った後、表1の合成例4(コア層2)に示す原料を各重量部で混合し、コア層(シード粒子)を含むエマルション(4)を得た。
次に、エマルション(4)64重量部に、水10重量部、アニオン乳化剤1重量部、開始剤0.2重量部と、表1の合成例4(シェル層)に示す原料を各重量部で混合したプレエマルションを、窒素雰囲気下80℃で2時間かけて添加し、シード乳化重合を行い、コアシェル型エマルション(4)を得た、実施例1と同様の方法で水性塗料を製造した。
なお、コアシェル型エマルション(4)は、固形分50%重量であり、平均粒子径は160nmであった。また、得られた水性塗料は、VOCが0.1重量%未満の環境配慮型の水性塗料であった。
得れらたコアシェル型エマルション(4)、及びその水性塗料を用いて、実施例1と同様の試験を行った。
結果は表3に示す。
表1の合成例5(コア層)に示す原料・各重量部、表1の合成例5(シェル層)に示す原料・各重量部を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、コアシェル型エマルション(3)を得、実施例1と同様の方法で水性塗料を製造した。
なお、コアシェル型エマルション(5)は、固形分50%重量であり、平均粒子径は150nmであった。また、得られた水性塗料は、VOCが0.1重量%未満の環境配慮型の水性塗料であった。
得れらたコアシェル型エマルション(5)、及びその水性塗料を用いて、実施例1と同様の試験を行った。
結果は表3に示す。
表1の合成例6(コア層)に示す原料・各重量部、表1の合成例6(シェル層)に示す原料・各重量部を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、コアシェル型エマルション(6)を得、実施例1と同様の方法で水性塗料を製造した。
なお、コアシェル型エマルション(6)は、固形分50%重量であり、平均粒子径は152nmであった。また、得られた水性塗料は、VOCが0.1重量%未満の環境配慮型の水性塗料であった。
得れらたコアシェル型エマルション(6)、及びその水性塗料を用いて、実施例1と同様の試験を行った。
結果は表3に示す。
表1の合成例7(コア層)に示す原料・各重量部、表1の合成例7(シェル層)に示す原料・各重量部を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、コアシェル型エマルション(7)を得、実施例1と同様の方法で水性塗料を製造した。
なお、コアシェル型エマルション(7)は、固形分50%重量であり、平均粒子径は150nmであった。また、得られた水性塗料は、VOCが0.1重量%未満の環境配慮型の水性塗料であった。
得れらたコアシェル型エマルション(7)、及びその水性塗料を用いて、実施例1と同様の試験を行った。
結果は表3に示す。
表1の合成例8(コア層)に示す原料・各重量部、表1の合成例8(シェル層)に示す原料・各重量部を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、コアシェル型エマルション(8)を得、実施例1と同様の方法で水性塗料を製造した。
なお、コアシェル型エマルション(8)は、固形分50重量%であり、平均粒子径は160nmであった。
得れらたコアシェル型エマルション(8)、及びその水性塗料を用いて、実施例1と同様の試験を行った。
結果は表3に示す。
表1の合成例9(コア層)に示す原料・各重量部、表1の合成例9(シェル層)に示す原料・各重量部を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、コアシェル型エマルション(9)を得、実施例1と同様の方法で水性塗料を製造した。
なお、コアシェル型エマルション(9)は、固形分50重量%であり、平均粒子径は150nmであった。
得れらたコアシェル型エマルション(9)、及びその水性塗料を用いて、実施例1と同様の試験を行った。
結果は表3に示す。
水48重量部、アニオン乳化剤2重量部、開始剤0.4重量部と、表1の合成例10に示す原料を各重量部で混合し、窒素雰囲気下80℃で3時間、乳化重合を行い、エマルション(10)を得た。
エマルション(10)は固形分50%重量であり、平均粒子径は145nmであった。
次に、エマルション(10)65重量部、二酸化チタンペースト(二酸化チタン含有量70重量%)30重量部、添加剤(消泡剤、粘性調整剤)5重量部を配合し水性塗料を製造した。
得れらたコアシェル型エマルション(10)、及びその水性塗料を用いて、実施例1と同様の試験を行った。
結果は表3に示す。
Claims (6)
- (1´)シクロアルキル基含有モノマー及び/またはt−アルキル基含有モノマーの合計量が重量比率で10重量%以上であるコア層形成用モノマーを重合した後、アルコキシシラン化合物を混合して、コア層を得る工程、
(2)コア層をシードとし、シクロアルキル基含有モノマー及び/またはt−アルキル基含有モノマーの合計量が重量比率で5重量%以上であるシェル層形成用モノマー(但し、アルコキシシラン化合物を除く)をシード乳化重合する工程、
からなり、コア層形成用モノマーの重合体のガラス転移温度が、シェル層形成用モノマーの重合体のガラス転移温度よりも20℃以上高いことを特徴とするエマルションの製造方法。 - コア層形成用モノマーの重合体のガラス転移温度が30℃以上であり、シェル層形成用モノマーの重合体のガラス転移温度が10℃以下であることを特徴とする請求項1に記載のエマルションの製造方法
- コア層形成用モノマーの重合体のガラス転移温度が、シェル層形成用モノマーの重合体のガラス転移温度よりも40℃以上高いことを特徴とする請求項1に記載のエマルションの製造方法
- コア層形成用モノマーの重合体のガラス転移温度が40℃以上であり、シェル層形成用モノマーの重合体のガラス転移温度が0℃以下であることを特徴とする請求項3に記載のエマルションの製造方法
- コア層形成用モノマー及びシェル層形成用モノマーのうち、シクロアルキル基含有モノマー及び/またはt−アルキル基含有モノマーの合計量が重量比率で10重量%以上であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のエマルションの製造方法
- 請求項1から請求項5のいずれかに記載の製造方法によって得られるエマルションをバインダーとする揮発性有機化合物(VOC)が5重量%未満の低VOC塗料
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