JP2005136588A - 圧電薄膜共振器、フィルタ、フィルタバンク、フィルタバンク一体型電力増幅器および高周波通信装置 - Google Patents

圧電薄膜共振器、フィルタ、フィルタバンク、フィルタバンク一体型電力増幅器および高周波通信装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 フィルタの狭帯域化を実現できる小型の圧電薄膜共振器、この圧電薄膜共振器を備えるフィルタ、このフィルタを備えるフィルタバンク、このフィルタバンクを備え、効率に優れるフィルタバンク一体型電力増幅器、および、上記フィルタバンクと上記フィルタバンク一体型電力増幅器とを備える高周波通信装置を提供する。
【解決手段】 下部電極105と上部電極106との間に、圧電膜107と並列に誘電体膜108を配置する。このようにして、圧電膜107に隣接する部分に下部電極105の一部、上部電極106の一部および誘電体膜108とから成るMIMキャパシタンス成分を備える圧電薄膜共振器を形成する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、圧電薄膜共振器(FBAR:Film Bulk Acoustic Resonator)、その圧電薄膜共振器を用いたRF帯チャネル選択のフィルタ、そのフィルタを用いたフィルタバンク、そのフィルタバンクを用いたフィルタバンク一体型電力増幅器、および、そのフィルタバンク一体型電力増幅器と上記フィルタバンクとを用いた高周波通信装置に関する。
図3の模式図に示すような、ある程度広いシステム帯域309の中に複数の狭い通信チャネル305〜308が配置されている周波数配置に従う高周波通信装置は、従来、フィルタリング方法として、所望の通信チャネル(上記通信チャネル305〜308の内のいずれか)のみを直接フィルタリングして抽出するフィルタリング方法を使用せず、第1段階としてRF帯でシステム帯域309をフィルタリングした後、第2段階としてIF帯以降で所望の通信チャネルをフィルタリングする2段階フィルタリング方式を使用している。
というのも、一般的に高周波通信装置は、周波数の利用効率を高めるために、通信チャネル305〜308が、かなり狭帯域化(例えば比帯域幅0.1%オーダ)されているので、上記2段階フィルタリング方式以外のフィルタリング方式を採用した場合、現在実際に使用されている低コストで小型のフィルタ部品を用いると、信号の十分な急峻度が得られないためである。
このように、高周波通信装置においては、現実のフィルタ部品の性能の限界によって、回路構成が束縛されているのである。
このように、フィルタ部品は、高周波通信装置の回路構成に多大な影響を及ぼしているが、近年、フィルタ部品として、圧電薄膜共振器(例えば、日経BP社刊、日経エレクトロニクス2003−3−31号p.152−159の記事「5GHz帯ではFBARフィルタが最適(下)」(非特許文献1)を参照)と呼ばれる新技術が開発され、1〜10GHz程度の周波数帯において極めて高性能の小型フィルタを実現できる等の理由により、注目されるようになっている。
図8(A)は、単位共振器としての従来の圧電薄膜共振器を、基板の上方からみた平面図であり、図8(B)は、図8(A)のC−C線断面図である。
図8に示すように、この圧電薄膜共振器は、Si等の適当な材料から成る支持基板901の上に、先ず下部電極905を成膜・パターニングした後、圧電膜907を成膜・パターニングし、続いて上部電極906を成膜・パターニングすることによって、形成されている。
上記上部電極906は、支持基板901の表面方向における下部電極905から離れる側に凸部である端子903を有し、下部電極905は、上部電極906から離れる側に凸部である端子902を有している。また、上記上部電極906と下部電極905とは、これらの間に配置される圧電膜907によって、直接接触しないようになっており(間接接触しており)、圧電膜907によって、直流電気的に分離されている。
また、図8(B)に示すように、支持基板901における圧電膜907の直下の付近には、圧電膜907の機械的振動を阻害しないように、キャビティ904が形成されている。上記下部電極905は、キャビティ904が形成されていない支持基板901上からキャビティ904の一部を覆うように配置されており、キャビティ904における下部基板905に覆われなかった部分は、下部基板905上から延びて支持基板901方向に折り曲げられた圧電膜907によって覆われている。また、上記圧電膜907は、上部電極906の端子903側のキャビティ904が形成されていない支持基板901の部分まで延びている。また、上記上部電極906は、圧電膜907の表面に沿って、圧電膜907上における下部電極905の端子902側から、上記圧電膜907の折り曲げられた部分を超えて、支持基板901上まで延びている。
この圧電薄膜共振器は、下部電極905の一部と上部電極906の一部の間に高周波電気信号を印加されることによって、周波数軸上で鋭い共振現象を発生するようになっている。
非特許文献1に記載されているように、この単位共振器である圧電薄膜共振器を複数個接続することによって、帯域幅が狭くて小型のフィルタを構成できる。
また、このような圧電薄膜共振器を、例えば、小西良弘著「通信用フィルタ回路の設計とその応用」(総合電子出版、1994年第1版)の218ページ等で開示されている、所謂「ラダー型」に多段接続すると、所望の急峻なバンドパスフィルタ特性を実現できることがわかっている。また、このように、圧電薄膜共振器を、「ラダー型」に多段接続すると、形成されたバンドパスフィルタの帯域幅が、直列共振と並列共振の夫々に起因する2つの共振点の周波数の差に略比例することもわかっている。
図9は、例えば、特開平5−22074号公報(特許文献1)等で開示されている、圧電薄膜共振器と類似の構造を有し、かつ、比帯域幅を狭めることができるデバイスである弾性表面波共振器(SAW共振器)を示す図である。
図9に示すように、この弾性表面波共振器は、LiTaO等の圧電結晶から成る基板1101上に、互いに噛み合うようにデザインされた櫛歯状電極1102,1103を、成膜・パターニングして形成されている。
この弾性表面波共振器は、櫛歯状電極1102,1103の端子1104,1105に高周波電気信号を印加されることによって、周波数軸上で鋭い共振現象を発生するようになっている。
図10は、上記圧電薄膜共振器や上記弾性表面波共振器における共振現象を説明する際に使われる等価回路である。
図10に示す等価回路を、図8に示す圧電薄膜共振器に対応させた場合は、等価回路の2つの端子1001および1002は、図8に示す2つの端子902および903に対応し、図10に示すインダクタンス成分Lsとキャパシタンス成分Csの直列共振回路は、図8に示す圧電膜907の厚み方向の機械的共振現象を等価表現するものになる。また、図10に示すキャパシタンス成分Cpは、電極905,906間の平行平板キャパシタンス成分を表現したものになる(図10に示すキャパシタンス成分Cxは、圧電薄膜共振器においては必要がない。)。
また、図10に示す等価回路を、図9に示す弾性表面波共振器に対応させた場合は、等価回路の2つの端子1001および1002は、図9に示す2つの端子1103および1104に対応することになる。また、図10に示すインダクタンス成分Lsとキャパシタンス成分Csの直列共振回路と、この直列共振回路に並列に配置されるキャパシタンス成分Cpは、図9に示す櫛部分の交差指電極1対の単位長さの容量、交差指電極の交差幅(開口長)および交差指電極の総対数等によって、夫々の容量やインダクタンスが決定される、弾性表面波共振器の両端を除いた部分に対応するものである。また、図10に示すキャパシタンス成分Cxは、図9に、1106および1107で示されるキャパシタンス成分に対応したものになる。
このように、図10に示す2端子回路は、インダクタンスとキャパシタンス成分による、直列共振回路と並列共振回路の両方を含んだものになっている。
図11は、図10の2端子回路において、回路定数を具体的に設定したときの、周波数とインピーダンス(Z)の絶対値との関係を示す図である。
詳細には、図11に1201で示す曲線は、図10における回路において、インダクタンス成分Lsのインダクタンスを1nH、キャパシタンス成分Csの容量を1pF、キャパシタンス成分Cpの容量を2pFに設定し、かつ、キャパシタンス成分Cxを省略したときの、周波数とインピーダンス(Z)の絶対値との関係を示す図である。
また、図11に1202で示す曲線は、図10における回路において、インダクタンス成分Lsのインダクタンスを1nH、キャパシタンス成分Csの容量を1pF、キャパシタンス成分Cpの容量を2pF、キャパシタンス成分Cxの容量を3pFに設定したときの、周波数とインピーダンス(Z)の絶対値との関係を示す図である。
上記圧電薄膜共振器に対応する曲線1201で見られる鋭いピークfs1(この場合、インピーダンスが極小になる)は、直列共振に起因するものである(この共振周波数の値は、f=(1/2π)×(1/(10−12F×10−9H)1/2)≒5×10Hz=5GHzと容易に計算される。)。
また、上記圧電薄膜共振器に対応する曲線1201で見られる鋭いピークfp1(この場合、インピーダンスが極大になる)は、並列共振に起因するものである。
また、上記弾性表面波共振器に対応する曲線1202は、上記曲線1201と比較して、直列共振に起因する共振周波数は変わらない一方、並列共振に起因する共振周波数(図11にそのピークをfp2で示す)が、キャパシタンス成分Cxの影響で、値が小さくなる方へずれている。
このことから、上記弾性表面波共振器に対応する曲線1202においては、2つの共振点(fs1、fp2)の周波数差を、上記圧電薄膜共振器に対応する曲線1201よりも狭くすることができるので、この共振器を用いてバンドパスフィルタを構成した場合、帯域幅を狭くできるという利点を有する(「ラダー型」に多段接続しない場合は、帯域幅は、(fs1、fp2)の周波数差に比例する)。
上記圧電薄膜共振器が上記弾性表面波共振器と比較して帯域幅が広いことからもわかるように、圧電薄膜共振器フィルタ技術によってRF帯直接チャネル選択を行う場合においても、現状の圧電薄膜共振器を用いたフィルタでは、比帯域幅が広過ぎて、上記で説明した圧電薄膜共振器を用いない一般的なフィルタを用いた場合と同様に、RF帯において、チャネル選択(例えば図3の306)を直接行うことができないという問題がある。
というのも、本発明が想定している高周波通信装置は、第4世代携帯電話のような広帯域通信装置であり、第4世代携帯電話はまだ規格が定まっていないが、そのチャネル比帯域幅は、移動端末側から見て、送信は1%程度、受信は2%程度になると見込まれており、非常に狭い比帯域幅が要求されるからである。
第4世代向けに開放予定の周波数帯は3.6〜5GHzの範囲内であり、多くの公知文献(例えば2003年電子情報通信学会総合大会B‐5‐72)によれば、送信のチャネル帯域幅は40MHz、受信のチャネル帯域幅は100MHz程度である。したがって、送信は1%程度、受信は2%程度になると見込まれているのである。
また、従来技術の圧電薄膜共振器を用いたフィルタは、非特許文献1に記載されているように、比帯域幅の自由度が低いという問題もある。すなわち、従来の圧電薄膜共振器を用いたフィルタにおいては、圧電膜(図8、907参照)の材質によって略比帯域幅が決まってしまい(非特許文献1によれば、ZnO膜の場合は4.3%程度、AlN膜の場合は3.3%程度に決まってしまい)、これら比帯域幅は、上記の第4世代携帯電話等のチャネル比帯域幅と比べて、同じオーダではあるが、まだ広過ぎるという問題がある(非特許文献1には、インダクタンスを用いて比帯域幅を広げる方法が開示されているが、肝心の比帯域幅を狭める方法は開示されていない。)。
一方、上記弾性表面波共振器を用いる場合においては、共振器のサイズが非常に大きいという問題がある。
というのも、通常で比帯域幅が3.3〜4.3%程度の弾性表面波共振器の場合、比帯域幅を1〜2%近くまで狭帯域化するためには、図10の外部付加キャパシタンス成分Cxの容量としては、pFオーダ前後の値が必要になるが、このpFオーダ前後の容量を図9に示すギャップ容量1106,1107で実現するとなると、ギャップの周囲長が非現実的なほど大型化してしまうからである。
図12は、IEEE802.11a規格の無線LAN装置等の高周波通信装置で採用されている回路構成を示す図である。
図12に示されているように、変調回路812が生成した低周波の送信変調信号は、ミキサ813で高周波帯へ周波数変換された後、電力増幅器814で増幅されて、スイッチ805を介して、ローパスフィルタ803,804の一方を透過して、アンテナ801,802の一方から放射されるようになっている。
また、2つのアンテナ801と802が受信した高周波信号は、そのうちの一方がスイッチ805によって選択されて、フィルタ806によってシステム帯域(例えば、図3の309に示すシステム帯域)内の全信号(例えば、図3に305〜308で示す通信チャネル)が抽出された後、受信アンプ807で増幅されるようになっている。そして、その後、ミキサ808で低周波帯へ周波数変換されて、フィルタ809によって所望チャネルの信号(例えば、図3に306で示す信号)のみが選択されて、可変利得アンプ810で適切な電力レベルに調整されて、復調回路811へ入力されるようになっている。
尚、上記ローパスフィルタ803,804は、上記の送信系中の各種非線形デバイス812〜814およびスイッチ805に起因する高調波スプリアス放射を防止する役割を果たしている。
高周波通信装置の使い勝手を測る尺度として、消費電力を採用するのが最も一般的な方法である。というのも、消費電力が大きいと、大きなバッテリー部品を搭載せざるを得ず、装置が大型化・重量化・高コスト化してしまうからである。このため、装置全体の消費電力を改善する必要があるが、装置全体の消費電力を改善するために特に重要なのが、例えば、特開2001−94360号公報等、多数の文献に記載されている電力増幅器の効率改善である。
上記文献(特開2001−94360号公報)には、電力増幅器の一つの効率改善法として、本発明とは全くアプローチが異なる歪補償回路技術等(詳細な説明は行わない)が開示されている。
しかしながら、歪補償回路技術等の技術を用いても、電力増幅器(図12に示す従来技術の場合、図12に814で示す電力増幅器)の効率が不十分であるという問題がある。
特開平5−22074号公報 「5GHz帯ではFBARフィルタが最適(下)」、日経BP社、日経エレクトロニクス2003-3-31号、p.152-159
そこで、本発明の課題は、フィルタの狭帯域化を実現できる小型の圧電薄膜共振器、この圧電薄膜共振器を備えるフィルタ、このフィルタを備えるフィルタバンク、このフィルタバンクを備え、効率に優れるフィルタバンク一体型電力増幅器、および、上記フィルタバンクと上記フィルタバンク一体型電力増幅器とを備える高周波通信装置を提供することにある。
上記課題を解決するため、この発明の圧電薄膜共振器は、支持基板と、上記支持基板上に配置される下部電極と、上記下部電極の一部を覆っている部分を有する圧電膜と、上記下部電極における上記圧電膜が配置されていない部分の少なくとも一部を覆っている部分を有すると共に、上記支持基板の厚さ方向で上記圧電膜と重ならないように配置される誘電体膜と、上記圧電膜上に設けられて、この圧電膜を挟んで上記下部電極と対向する第1の部分と、上記誘電体膜上に設けられて、この誘電体膜を挟んで上記下部電極と対向する第2の部分とを有する上部電極とを備え、上記支持基板における上記圧電膜に対応する部分の少なくとも一部には、キャビティが形成されていることを特徴としている。
上記発明の圧電薄膜共振器によれば、上記下部電極と上記上部電極の圧電膜を挟んだ部分と、上記下部電極と上記上部電極の誘電体膜を挟んだ部分とが、並列配置された構造になっているので、この上記下部電極と上記上部電極の誘電体膜を挟んだ部分で構成されるキャパシタンス成分によって、この圧電薄膜共振器を用いて形成されるフィルタ(バンドパスフィルタ)の帯域幅を、大幅に狭帯域化することができる。
また、上記発明の圧電薄膜共振器によれば、上記キャパシタンス成分の構造が所謂MIM(Metal Insulator Metal)キャパシタンス成分構造になっているので圧電薄膜共振器のサイズを大幅に小型化できて、この圧電薄膜共振器を用いて形成されるフィルタ(バンドパスフィルタ)のサイズを大幅に小型化できる。
また、この発明のフィルタは、請求項1に記載の圧電薄膜共振器を備えることを特徴としている。
上記発明のフィルタによれば、上記発明の圧電薄膜共振器を用いて形成されるので、帯域幅を、大幅に狭帯域化することができると共に、サイズを大幅に縮小化できる。
また、この発明のフィルタバンクは、第1の端子と、第2の端子と、上記第1の端子と上記第2の端子との間に配置されると共に、通過帯域が異なる複数の上記発明のフィルタと、上記複数のフィルタの内の任意の1個の上記フィルタを、上記第1の端子と上記第2の端子に電気的に接続するスイッチとを備えることを特徴としている。
上記発明のフィルタバンクによれば、本発明のフィルタを備えるので、その通過帯域幅を、第4世代携帯電話等の広帯域な高周波通信装置におけるチャネル帯域幅と略等しくすることができる。このことから、このフィルタバンクによれば、所望の通信チャネルに合せてスイッチをOn−Offすることによって、RF帯においてチャネル選択を直接行うことができる。
また、この発明のフィルタバンク一体型電力増幅器は、電力増幅器と、この電力増幅器の出力側に一端子が接続される上記発明のフィルタバンクとを備えることを特徴としている。
上記発明のフィルタバンク一体型電力増幅器によれば、本発明のフィルタバンクを備えるので、歪成分を、従来よりも大幅に抑制できて、電力増幅器の効率を、従来よりも優れたものにすることができる。
また、この発明の高周波通信装置は、上記発明のフィルタバンクを受信フィルタとして使用すると共に、上記発明のフィルタバンク一体型電力増幅器を送信電力増幅器として使用する高周波通信装置であって、上記受信フィルタとしての上記フィルタバンクの受信チャネルのチャネル選択を制御すると共に、上記フィルタバンク一体型電力増幅器が有するフィルタバンクの送信チャネルのチャネル選択を制御する制御手段を備えることを特徴としている。
上記発明の高周波通信装置によれば、送信系に、本発明のフィルタバンク一体型電力増幅器を使用しているので、このフィルタバンク一体型電力増幅器が有する電力増幅器を高効率化できて、装置全体の消費電力を大幅削減することができる。
また、この発明の高周波通信装置によれば、送信系に、本発明のフィルタバンク一体型電力増幅器を使用しているので、フィルタバンクの効果により、高調波を含むスプリアス放射を抑制することができる。
また、本発明の高周波通信装置で、受信系において、アンテナ直近でチャネル単位の帯域制限を行うようにすると、受信系のはやい段階で妨害波成分を最小化できて、通信品質を改善することができるので、受信アンプや受信ミキサに妨害波が入力するのを防止することができる。
本発明によれば、通常は3.3〜4.3%程度になる圧電薄膜共振器を用いたフィルタの比帯域幅を、サイズやコストの増大を抑えつつ狭帯域化できる。そして、この狭帯域化された圧電薄膜共振器を用いたフィルタの比帯域幅を、第4世代携帯電話等の高周波通信装置において、RF帯で直接チャネル選択を行うのに適切なオーダにすることができる。
また、本発明のフィルタバンク一体型電力増幅器が備える電力増幅器として、従来よりも非線形気味に動作する電力増幅器を使用すれば、高効率化を図ることができる。また、その際に発生する隣接チャネルへの歪成分を、本発明のフィルタバンクで除去できて、帯域幅が狭い良質の信号を出力できる
また、本発明の高周波通信装置において、アンテナ直近でチャネル単位の帯域制限を行うようにすると、受信系のはやい段階で妨害波成分を最小化できて、通信品質を改善することができるので、受信アンプや受信ミキサに妨害波が入力するのを防止することができる。また、本発明の高周波通信装置は、送信系に本発明の高効率電力増幅器が組み込まれているので、消費電力の大幅低減を図ることができる。
以下、本発明を図示の形態により詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態の圧電薄膜共振器(FBAR)を示す図である。
詳細には、図1(A)は、上記圧電薄膜共振器を、基板の上から見た平面図であり、図1(B)は、図1(A)のA−A線断面図であり、図1(C)は、図1(A)のB−B線断面図である。
この圧電薄膜共振器は、支持基板101と、下部電極105と、圧電膜107と、誘電体膜108と、上部電極106とを備える。
上記下部電極105は、図1(A)において端子102部分を除いて略矩形をしており、支持基板101上の一部に配置されている。
上記圧電膜107および誘電体膜108は、共に略矩形をしており、矩形の下部電極105の長手方向に、互いに離間して配置されている。また、上記圧電膜107および誘電体膜108は、下部電極上105から、途中で折れ曲がることにより、支持基板上101上まで、矩形の下部電極105の幅方向に略延びている。
上記上部電極106は、圧電膜107上に配置形成されている第1の凸部111と、誘電体膜108上に配置形成される第2の凸部112と、これら第1および第2の凸部111,112に連なって、これら第1および第2の凸部111,112を連結させると共に、圧電膜107上および誘電体108上からはみだして折れ曲がって支持基板101上まで広がっている連結部113とから成っている。
上記第1の凸部111は、圧電膜107上に設けられて、この圧電膜107を挟んで下部電極105と対向している上部電極106の第1の部分に含まれ、第2の凸部112は、誘電体膜108上に設けられて、この誘電体膜108を挟んで下部電極105と対向している上部電極106の第2の部分に含まれている。
上記下部電極105における圧電膜107の幅方向の略中央に対応する周囲には、端子102が形成され、上部電極106における圧電膜107の幅方向の略中央に対応する周囲には、図1(A)において端子102と対向するように端子103が形成されている。
この圧電薄膜共振器は、Si等の適当な材料から成る支持基板101上に、先ず下部電極105を、成膜・パターニングし、次に、圧電膜107および誘電体膜108を、重ならないように成膜・パターニングし、続いて、上部電極106を、成膜・パターニングして形成されている。
また、図1(B)に示すように、支持基板101における圧電膜107の直下の付近には、圧電膜107の機械的振動を阻害しないように、キャビティ104が形成されている。上記下部電極105は、キャビティ104が形成されていない支持基板101部分の上からキャビティ104の一部を覆うように配置されており、キャビティ104における下部基板105に覆われなかった部分は、下部基板105上から延びて支持基板101の方向に折り曲げられた圧電膜107によって覆われている。上記圧電膜107は、上部電極106の端子103側のキャビティ104が形成されていない支持基板101部分まで延びている。また、上記上部電極106は、圧電膜107の表面に沿って、圧電膜107上における下部電極105の端子102側から、上記圧電膜107の折り曲げられた部分を超えて、支持基板101上まで形成されている。
図1(B)および図1(C)に示すように、上記上部電極106と下部電極105とは、これらの間に配置される圧電膜107または誘電体膜108によって、直接接触しないようになっており(間接接触しており)、圧電膜107によって、直流電気的に分離されている。
図1に示す本発明の一実施形態の圧電薄膜共振器は、図8に示す従来の圧電薄膜共振器と比較して、工数をほとんど増やすこと無く、誘電体膜108のみを追加した構造になっており、上部および下部電極105,106に挟まれた誘電体膜108は、所謂MIM(Metal Insulator Metal)キャパシタンス成分構造になっている。
したがって、図1に示す圧電薄膜共振器の等価回路は、図10において、並列キャパシタンス成分Cxを付加したものになっているので、この圧電薄膜共振器を用いてバンドパスフィルタを構成すれば、該バンドフィルタの帯域幅を、上記特許文献1の場合と同様に、大幅に狭帯域化することができる。
また、単位面積当たりの容量値が大きいMIMキャパシタンス成分構造を採用しているので、上記特許文献1と比較して大幅な小型化を実現できる。
以上より、本発明の圧電薄膜共振器を用いれば、低コストで、小型で、かつ、帯域幅が従来よりも格段に狭い本発明のフィルタ(バンドパスフィルタ)を構成することができる。
尚、上記実施形態の圧電薄膜共振器では、誘電体膜108の直下に、キャビティを形成しなかったが、この発明の圧電薄膜共振器では、誘電体膜の直下に、キャビティを形成しても良い。
また、上記実施形態の圧電薄膜共振器では、下部電極105、圧電膜107、誘電体膜108の形状を、矩形状にしたが、この発明の圧電薄膜共振器では、下部電極、圧電膜、誘電体膜および上部電極の形状は、どのような形状であっても良いことは勿論である。
図2は、本発明の一実施形態のフィルタバンクを示す図である。この実施形態のフィルタバンクは、図3に示す周波数配置に従っている。
図2に示すように、このフィルタバンクは、第1の端子201と第2の端子202の間に、スイッチSW1〜SW8を通して並列に接続されている4個のフィルタFL1〜FL4を備えている。4個の各フィルタFL1〜FL4は、本発明の圧電薄膜共振器を用いて形成されるフィルタ(狭帯域な高周波バンドパスフィルタ)であり、そのフィルタ通過帯域301〜304は、図3における4つの通信チャネル305〜308に合せて設計されている。
本発明の圧電薄膜共振器を用いて形成された本発明のフィルタを使用すれば、その通過帯域幅を、第4世代携帯電話等の広帯域な高周波通信装置におけるチャネル帯域幅と略等しくすることができる。
このことから、このフィルタバンクによれば、所望の通信チャネル(305〜308)に合せてスイッチ素子(SW1〜SW8)をOn−Offすることによって、RF帯においてチャネル選択を直接行うことができる。
図4は、本発明の一実施形態のフィルタバンク一体型電力増幅器を示す図である。
このフィルタバンク一体型電力増幅器は、入力端子401と、この入力端子401に入力側が接続された電力増幅器の一例としての高効率アンプ403と、この高効率アンプ403の出力側に一端が接続された本発明のフィルタバンク404と、このフィルタバンク404の他端に接続された出力端子402とを備える。
尚、この実施形態では、上記高効率アンプ403として、その出力に歪成分(隣接チャネルへの漏洩電力)が含まれる非線形気味のアンプを使用している。
上記構成において、上記入力端子401に与えられた高周波電気信号を、非線形気味に調整する高効率アンプ403で増幅し、この増幅されると共に、歪成分を含む高周波電気信号を、フィルタバンク404で帯域制限を行って歪成分を取り除いて狭帯域化する。そして、歪が含まれない狭帯域化された高周波電気信号を出力端子402に出力する。
非線形気味なアンプほど効率を改善できることが、例えば、上記特開2001−94360号公報をはじめ、多数の文献に記載されている。
図5および図6は、図4に示すフィルタバンク一体型電力増幅器の回路動作を説明する周波数配置図である。
以下に、上記歪み成分の漏洩防止機構を、図5および図6を用いて詳細に説明する。
尚、図5の501〜504と、図6の601〜604とは、フィルタバンク404を構成する4つのフィルタ通過帯域である。
例えば、現在の増幅対象の信号が、図3の模式図の通信システムに示される通信チャネル306と略同等の通過帯域を有する周波数スペクトルであるとする。すると、図4にP1で示す位置における周波数スペクトルは、上記通信チャネル306と略同等の通過帯域を有する周波数スペクトル506になり、非線形気味の高効率アンプ403の出力である図4にP2で示す位置における周波数スペクトルは、図6に示す605、606および607になる。
図6に示すように、図4にP2で示す位置においては、選択されている第2通過帯域602に隣接する第1通過帯域601および第3通過帯域603に、非線形気味の高効率アンプ403を使用したことに起因する、歪成分605および607が発生する。
しかしながら、本発明のフィルタバンク一体型電力増幅器では、歪成分605,607を含んだ周波数スペクトルを、後続のフィルタバンク404を通過させるようにしているので、望まれない歪み成分を帯域制限効果(今の場合、第2通過帯域602内の成分のみを通過させる)によって除去することができる。
このように、本発明のフィルタバンク一体型電力増幅器においては、歪成分を、従来よりも大幅に抑制できて、電力増幅器の効率を、従来よりも優れたものにすることができる。
図7は、本発明の一実施形態の高周波通信装置を示す図である。
この高周波通信装置は、変調回路712と、この変調回路712に一端が接続されたミキサ713と、このミキサ713の他端に入力側が接続された電力増幅器714と、この電力増幅器714の出力側に一端が接続された本発明のフィルタバンク715と、このフィルタバンク715の他端に第1端子721が接続された4端子型のスイッチ705とを備える。
また、この高周波通信装置は、上記4端子型のスイッチ705の第2端子722に一端が接続された本発明のフィルタバンク706と、このフィルタバンク706の他端に入力側が接続された受信アンプ707と、この受信アンプ707の出力側に一端が接続されたミキサ708と、このミキサ708の他端に一端が接続されたフィルタ709と、このフィルタ709の他端に入力側が接続された可変利得アンプ710と、この変利得アンプ710の出力側に接続された復調回路711とを備える。
また、この高周波通信装置は、上記4端子型のスイッチ705の第3端子723に一端が接続されたローパスフィルタ704と、このローパスフィルタ704の他端に接続されたアンテナ702と、上記4端子型のスイッチ705の第4端子724に一端が接続されたローパスフィルタ703と、このローパスフィルタ703の他端に接続されたアンテナ701とを備える。
また、この高周波通信装置は、上記フィルタバンク706で使用するチャネルと、フィルタバンク715で使用するチャネルとを制御する制御手段としての制御回路716を備える。
この高周波通信装置の送信系における図8に示す従来技術との違いは、電力増幅器714の後ろに、図2で説明した本発明のフィルタバンク715が挿入されている点であり、電力増幅器714とフィルタバンク715で、本発明の高効率のフィルタバンク一体型電力増幅器730を構成している点である。
この実施形態の高周波通信装置は、送信系に、本発明の高効率のフィルタバンク一体型電力増幅器730を使用しているので、電力増幅器714を高効率化できて、装置全体の消費電力を大幅削減することができる。
また、この実施形態の高周波通信装置は、送信系に、高効率な本発明のフィルタバンク一体型電力増幅器730を使用しているので、フィルタバンク715の効果により、高調波を含むスプリアス放射を抑制することができる。
この高周波通信装置の受信系における図8に示す従来技術との違いは、4端子型のスイッチ705の第2端子722に、本発明のフィルタバンク706を接続している点である。
この実施形態の高周波通信装置は、受信系において、4端子型のスイッチ705の直後に、本発明のフィルタバンク706を配置しているので、システム帯域(図3の309)の中から所望チャネル(例えば、図3の306)のみを抽出する機能を、従来技術におけるフィルタ809の位置から、4端子型のスイッチ705の直後の位置に移動させることができる。したがって、受信アンプ707、ミキサ708およびフィルタ709に、所望のチャネル以外の望まれない妨害波成分(例えば、図3に305、307および308で示す通信チャネルに属する成分)が通過することを防止できるので、これら3つの部品について性能要求を大幅に緩和することができて、非線形デバイスである受信アンプ707およびミキサ708の消費電力を低減することができる。また、受信系で発生する歪成分を抑制することができて、通信品質を改善することができる。
尚、上記実施形態の高周波通信装置では、ローパスフィルタ703,704を使用したが、この発明の高周波通信装置では、非線形デバイスであるスイッチでの高調波発生が少ない場合、ローパスフィルタを省略しても良いことは勿論である。
また、本発明は、上記従来技術の効率改善法(歪補償回路等)とは全く競合しないので、本発明と上記従来技術の効率改善法とを組み合わせることによって、性能が格段に優れるバンドパスフィルタ等を形成することができる。
本発明の一実施形態の圧電薄膜共振器を示す図である。 本発明の一実施形態のフィルタバンクを示す図である。 周波数配置を示す図である。 本発明の一実施形態のフィルタバンク一体型電力増幅器を示す図である。 図4に示すフィルタバンク一体型電力増幅器の回路動作を説明する周波数配置図である。 図4に示すフィルタバンク一体型電力増幅器の回路動作を説明する周波数配置図である。 本発明の一実施形態の高周波通信装置を示す図である。 従来の圧電薄膜共振器を示す図である。 弾性表面波共振器を示す図である。 圧電薄膜共振器や弾性表面波共振器における共振現象を説明する際に使われる等価回路である。 図10に示す等価回路において、回路定数を具体的に設定したときの、周波数とインピーダンス(Z)の絶対値との関係を示す図である。 従来の高周波通信装置を示す図である。
符号の説明
101 支持基板
102,103 端子
104 キャビティ
105 下部電極
106 上部電極
107 圧電膜
108 誘電体膜
201 第1の端子
202 第2の端子
301,302,303,304,501,502,503,504,601,602,603,604 フィルタ通過帯域
305,306,307,308 通信チャネル
309 システム帯域
401 入力端子
402 出力端子
403 高効率アンプ
404,706,715 フィルタバンク
506,605,606,607 周波数スペクトル
705 4端子型のスイッチ
714 電力増幅器
716 制御回路
730 フィルタバンク一体型電力増幅器
FL1,FL2,FL3,FL4 フィルタ
SW1,SW2,SW3,SW4,SW5,SW6,SW7,SW8 スイッチ

Claims (5)

  1. 支持基板と、
    上記支持基板上に配置される下部電極と、
    上記下部電極の一部を覆っている部分を有する圧電膜と、
    上記下部電極における上記圧電膜が配置されていない部分の少なくとも一部を覆っている部分を有すると共に、上記支持基板の厚さ方向で上記圧電膜と重ならないように配置される誘電体膜と、
    上記圧電膜上に設けられて、この圧電膜を挟んで上記下部電極と対向する第1の部分と、上記誘電体膜上に設けられて、この誘電体膜を挟んで上記下部電極と対向する第2の部分とを有する上部電極とを備え、
    上記支持基板における上記圧電膜に対応する部分の少なくとも一部には、キャビティが形成されていることを特徴とする圧電薄膜共振器。
  2. 請求項1に記載の圧電薄膜共振器を備えることを特徴とするフィルタ。
  3. 第1の端子と、
    第2の端子と、
    上記第1の端子と上記第2の端子との間に配置されると共に、通過帯域が異なる複数の請求項2に記載のフィルタと、
    上記複数のフィルタの内の任意の1個の上記フィルタを、上記第1の端子と上記第2の端子に電気的に接続するスイッチと
    を備えることを特徴とするフィルタバンク。
  4. 電力増幅器と、
    この電力増幅器の出力側に一端子が接続される請求項3に記載のフィルタバンクと
    を備えることを特徴とするフィルタバンク一体型電力増幅器。
  5. 請求項2に記載のフィルタバンクを受信フィルタとして使用すると共に、請求項3に記載のフィルタバンク一体型電力増幅器を送信電力増幅器として使用する高周波通信装置であって、
    上記受信フィルタとしての上記フィルタバンクの受信チャネルのチャネル選択を制御すると共に、上記フィルタバンク一体型電力増幅器が有するフィルタバンクの送信チャネルのチャネル選択を制御する制御手段を備えることを特徴とする高周波通信装置。
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