JP2005132698A - 電子部品、誘電体磁器組成物およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 高い比誘電率を有し、積層セラミックコンデンサの誘電体層として使用し、コンデンサを薄層化および多層化した場合においても、高い信頼性を有する誘電体磁器組成物を提供すること。
【解決手段】 チタン酸バリウム系の主成分と副成分とを、ハロゲン化合物を含ませた状態で、焼成する工程を有し、前記ハロゲン化合物の添加量が、主成分100モルに対して0.05モルより多く、2.0モル未満であることを特徴とする誘電体磁器組成物の製造方法であり、好ましくは前記焼成する工程が、前記主成分と前記副成分との少なくとも一部を反応させた後に、ハロゲン化合物を添加し、焼成する工程である。
【選択図】 図2
【解決手段】 チタン酸バリウム系の主成分と副成分とを、ハロゲン化合物を含ませた状態で、焼成する工程を有し、前記ハロゲン化合物の添加量が、主成分100モルに対して0.05モルより多く、2.0モル未満であることを特徴とする誘電体磁器組成物の製造方法であり、好ましくは前記焼成する工程が、前記主成分と前記副成分との少なくとも一部を反応させた後に、ハロゲン化合物を添加し、焼成する工程である。
【選択図】 図2
Description
本発明は、たとえば積層セラミックコンデンサの誘電体層などとして用いられる誘電体磁器組成物の製造方法と、その製造方法により得られる誘電体磁器組成物および、その誘電体磁器組成物を誘電体層として用いる電子部品に関する。
電子部品の一例である積層セラミックコンデンサは、たとえば、所定の誘電体磁器組成物からなるセラミックグリーンシートと、所定パターンの内部電極層とを交互に重ね、その後一体化して得られるグリーンチップを、焼成して製造される。積層セラミックコンデンサの内部電極層は、焼成によりセラミック誘電体と一体化されるために、セラミック誘電体と反応しないような材料を選択する必要がある。このため、内部電極層を構成する材料として、従来では白金やパラジウムなどの高価な貴金属を用いることを余儀なくされていた。
これに対して、安価な卑金属(たとえばニッケルや銅など)を内部電極の材料として用いるためには、中性または還元性雰囲気下で焼成しても半導体化せず、すなわち耐還元性に優れ、焼成後には十分な比誘電率と優れた誘電特性とを有する誘電体磁器組成物を開発することが必要である。
内部電極の材料として、ニッケルや銅のような卑金属を用いることができる誘電体磁器組成物として種々の提案がなされている(たとえば、特許文献1、特許文献2参照)。
特許文献2には、誘電体磁器組成物に不純物として含まれるアルカリ金属酸化物の含有量を0.03重量%以下、ハロゲンの含有量を0.03重量%とすることにより還元性雰囲気中で焼成しても半導体化せず、大きな誘電率が得られる旨記載されている。
一方、特許文献3には、一般式A・B・O3で表されるBaTiO3系原料粉末1molに対して、Clを0.05〜2.0mol%含有することを特徴とする誘電体原料粉末が開示されている。
上記文献によると、一般式A・B・O3で表されるBaTiO3系原料粉末の粒成長を伴う仮焼合成過程の前段階において、BaTiO3 系原料粉末1molに対して、Clを0.05〜2.0mol%添加することにより、仮焼温度の変化に対しての粒成長の変化が緩やかになり、粉末の粒径の制御が容易となると記載されている。しかしながら、この文献に記載の発明においては、Cl添加後に仮焼を行っているため、焼成時および焼成直前の状態においては、ハロゲン化合物がほとんど含まれないことになる。
なお、積層セラミックコンデンサの取得静電容量は、以下の式(1)の関係にある。
C=ε0 ・εr ×n×S/d 式(1)
(C:容量(F)、ε0 :真空の誘電率、εr :誘電体材料の比誘電率、n:層数、S:有効面積、d:誘電体厚み)
C=ε0 ・εr ×n×S/d 式(1)
(C:容量(F)、ε0 :真空の誘電率、εr :誘電体材料の比誘電率、n:層数、S:有効面積、d:誘電体厚み)
このため、近年、電子回路の高密度化に伴う電子部品の小型化、大容量化に対する要求に答えるために、コンデンサの静電容量を増加させるためには、誘電体層厚みdを薄くする、比誘電率εrを増加する、有効面積Sを増加する、誘電体層数nを増やすという方法が考えられる。
しかし、小型で大容量を得るために有効面積Sを増加させるには限界があるために、一般に比誘電率の増加または誘電体層の薄層化という手法がとられている。誘電体層の薄層化に関しては、厚み2μm以下というレベルにまで到達しており、この場合に、高誘電率材料を使用した場合においては、焼成後の誘電体粒子のサイズが1μm以上となり、そのため、結果として、誘電体層の層間に誘電体粒子が一つという状態になってしまい、さらなる薄層化は困難となっている。そこで、さらなる小型、大容量化のためには、誘電体材料の比誘電率εr の向上が求められる。
本発明の目的は、高い比誘電率を有し、積層セラミックコンデンサの誘電体層として使用し、コンデンサを薄層化および多層化した場合においても、高い信頼性を有する誘電体磁器組成物の製造方法および、該製造方法により得られる誘電体磁器組成物を提供することである。また、本発明は、このような誘電体磁器組成物を用いて製造され、高い比誘電率を有し、かつ信頼性の高い積層セラミックコンデンサなどの電子部品を提供することも目的とする。特に本発明は、薄層化、多層化および小型化対応の積層セラミックコンデンサ等の電子部品を提供することを目的としている。
本発明の発明者等は、高い誘電率を有し、コンデンサを薄層化および多層化しても、高い信頼性を有する誘電体磁器組成物の製造方法について鋭意検討した結果、焼成の直前の粉体にハロゲン化合物を添加し、そのハロゲン化合物の添加量を、主成分100モルに対して0.05モルより多く、2.0モル未満とすることにより、本発明の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明に係る誘電体磁器組成物の製造方法は、
チタン酸バリウム系の主成分と副成分とを、ハロゲン化合物を含ませた状態で、焼成する工程を有し、
前記ハロゲン化合物の添加量が、主成分100モルに対して0.05モルより多く、2.0モル未満であることを特徴とする。
チタン酸バリウム系の主成分と副成分とを、ハロゲン化合物を含ませた状態で、焼成する工程を有し、
前記ハロゲン化合物の添加量が、主成分100モルに対して0.05モルより多く、2.0モル未満であることを特徴とする。
本発明においては、誘電体磁器組成物原料を焼成する際に、原料のうち少なくとも一部をハロゲン化合物の形態とし、ハロゲン化合物を含有した状態で、焼成することが重要であり、このようにすることにより上記目的が達成できる。
本発明に係る誘電体磁器組成物の製造方法において、好ましくは、
チタン酸バリウム系の主成分および副成分の少なくとも一部を反応させて、反応済粉体を得る工程と、
前記反応済粉体に、少なくともハロゲン化合物を添加・混合して焼成前粉体を作製し、前記焼成前粉体を焼成する工程とを有し、
前記ハロゲン化合物の添加量が、主成分100モルに対して0.05モルより多く、2.0モル未満であることを特徴とする。
チタン酸バリウム系の主成分および副成分の少なくとも一部を反応させて、反応済粉体を得る工程と、
前記反応済粉体に、少なくともハロゲン化合物を添加・混合して焼成前粉体を作製し、前記焼成前粉体を焼成する工程とを有し、
前記ハロゲン化合物の添加量が、主成分100モルに対して0.05モルより多く、2.0モル未満であることを特徴とする。
本発明においては、ハロゲン化合物を含有した状態で、焼成する際に、前記主成分および前記副成分の少なくとも一部をあらかじめ反応させ、反応済粉体とし、この反応済粉体にハロゲン化合物を含有した状態で、焼成することも可能である。
本発明に係る誘電体磁器組成物の製造方法において、好ましくは、
前記主成分が組成式
{{Ba(1−x)Cax}O}A{Ti(1−y)Zry}BO2
(ただし、A,B,x,yが、0.960≦A/B≦1.020、0≦x≦0.3、0≦y≦0.3)
で表されることを特徴とする。
前記主成分が組成式
{{Ba(1−x)Cax}O}A{Ti(1−y)Zry}BO2
(ただし、A,B,x,yが、0.960≦A/B≦1.020、0≦x≦0.3、0≦y≦0.3)
で表されることを特徴とする。
本発明に係る誘電体磁器組成物の製造方法において、好ましくは、前記ハロゲン化合物が、Mn、Si、Y、V、W、Ba、Caのハロゲン化合物から選ばれる1種または2種以上である。
本発明に係る誘電体磁器組成物の製造方法において、好ましくは、前記ハロゲン化合物が、Baのハロゲン化合物である。
本発明に係る誘電体磁器組成物の製造方法において、好ましくは、
前記副成分が、Ba、Y、Mn、Si、VおよびWの酸化物および/または焼成後にこれらの酸化物になる化合物を含有し、それぞれ、主成分原料100モルに対して、BaCO3、Y2O3、MnO、SiO2、V2O5、WO3換算で、
BaCO3:0〜2.0モル、
Y2O3:0〜1.0モル、
MnO:0.03〜1.70モル、
SiO2:0〜1.0モル、
V2O5+WO3:0.001〜0.7モルである。
前記副成分が、Ba、Y、Mn、Si、VおよびWの酸化物および/または焼成後にこれらの酸化物になる化合物を含有し、それぞれ、主成分原料100モルに対して、BaCO3、Y2O3、MnO、SiO2、V2O5、WO3換算で、
BaCO3:0〜2.0モル、
Y2O3:0〜1.0モル、
MnO:0.03〜1.70モル、
SiO2:0〜1.0モル、
V2O5+WO3:0.001〜0.7モルである。
本発明に係る誘電体磁器組成物は、上記のいずれかに記載の方法で製造される誘電体磁器組成物である。
本発明に係る電子部品は、上記記載の誘電体磁器組成物で構成してある誘電体層を有する。電子部品としては、特に限定されないが、積層セラミックコンデンサ、圧電素子、チップインダクタ、チップバリスタ、チップサーミスタ、チップ抵抗、その他の表面実装(SMD)チップ型電子部品が例示される。
本発明に係る積層セラミックコンデンサは、上記記載の誘電体磁器組成物で構成してある誘電体層と、内部電極層とが交互に積層してあるコンデンサ素子本体を有する。
本発明の製造方法によれば、積層型セラミックコンデンサなどの電子部品の誘電体層として用いられる誘電体磁器組成物の製造方法において、他の電気特性を悪化させることなく比誘電率の向上をはかることができ、積層セラミックコンデンサを薄層化、多層化した場合においても、高い信頼性を有する誘電体磁器組成物の製造方法および、その製造方法により得られる誘電体磁器組成物を提供することができる。
また、本発明の製造方法により得られる誘電体磁器組成物を積層型セラミックコンデンサの誘電体層として使用することにより、高い比誘電率を有し、コンデンサを薄層化、多層化しても、高い信頼性を有する積層型セラミックコンデンサなどの電子部品を提供することができる。
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図、
図2は本発明の実施例および比較例の焼成時に添加したバリウムの量と比誘電率との関係を示すグラフである。
図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図、
図2は本発明の実施例および比較例の焼成時に添加したバリウムの量と比誘電率との関係を示すグラフである。
本発明に係る誘電体磁器組成物の製造方法について説明する前に、まず、積層セラミックコンデンサについて説明する。
積層セラミックコンデンサ
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1は、誘電体層2と内部電極層3とが交互に積層された構成のコンデンサ素子本体10を有する。このコンデンサ素子本体10の両端部には、素子本体10の内部で交互に配置された内部電極層3と各々導通する一対の外部電極4が形成してある。コンデンサ素子本体10の形状に特に制限はないが、通常、直方体状とされる。また、その寸法にも特に制限はなく、用途に応じて適当な寸法とすればよいが、通常、(0.6〜5.6mm)×(0.3〜5.0mm)×(0.3〜1.9mm)程度である。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1は、誘電体層2と内部電極層3とが交互に積層された構成のコンデンサ素子本体10を有する。このコンデンサ素子本体10の両端部には、素子本体10の内部で交互に配置された内部電極層3と各々導通する一対の外部電極4が形成してある。コンデンサ素子本体10の形状に特に制限はないが、通常、直方体状とされる。また、その寸法にも特に制限はなく、用途に応じて適当な寸法とすればよいが、通常、(0.6〜5.6mm)×(0.3〜5.0mm)×(0.3〜1.9mm)程度である。
内部電極層3は、各端面がコンデンサ素子本体10の対向する2端部の表面に交互に露出するように積層してある。一対の外部電極4は、コンデンサ素子本体10の両端部に形成され、交互に配置された内部電極層3の露出端面に接続されて、コンデンサ回路を構成する。
誘電体層2
誘電体層2は、本発明の製造方法により得られる誘電体磁器組成物を含有する。
本発明の一実施形態に係る誘電体磁器組成物としては、チタン酸バリウム系の主成分と、副成分を含有する。
誘電体層2は、本発明の製造方法により得られる誘電体磁器組成物を含有する。
本発明の一実施形態に係る誘電体磁器組成物としては、チタン酸バリウム系の主成分と、副成分を含有する。
前記チタン酸バリウム系の主成分としては、チタン酸バリウムを含むものであれば特に限定されないが、組成式{{Ba(1−x)Cax}O}A{Ti(1−y)Zry}BO2で表される化合物であることが好ましい。
上記式中、xは、0≦x≦0.3であることが好ましく、さらに好ましくは0≦x≦0.1であり、より好ましくは0≦x≦0.05である。また、yは、0≦y≦0.3であることが好ましく、さらに好ましくは0.15≦y≦0.25である。また、A/Bは、0.960≦A/B≦1.020であることが好ましく、さらに好ましくは0.980≦A/B≦1.010である。
前記組成式において、xはCaの比率を表すが、このCaは、主に焼結安定性を向上させるとともに、絶縁抵抗値を向上させる元素として作用するものである。xが大き過ぎると、比誘電率が低くなる傾向にある。
前記組成式において、yはZrの比率を表すが、このZrは、主にキュリー点を低温側に移動させるシフターとして作用するものである。yが大き過ぎると、比誘電率が低くなる傾向にある。
前記組成式において、A/Bが小さ過ぎると、焼成時に誘電体層の異常粒成長が生じ易くなると共に、絶縁抵抗値が低下する傾向にあり、A/Bが大き過ぎると、焼結性が低下する傾向にあり、緻密な焼結体が得にくくなる。
前記副成分としては、特に限定はされないが、Baの酸化物と、Yの酸化物と、Mnの酸化物と、Siの酸化物と、VおよびWの少なくとも1種の酸化物とを含有する副成分であることが好ましい。
前記Baの酸化物は、耐還元性を向上させる効果があり、主成分100モルに対して、BaCO3換算で0〜2.0モルであることが好ましい。
前記Yの酸化物は、主として、IR寿命を向上させる効果を示し、主成分100モルに対して、Y2O3換算で0〜1.0モルであることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜0.6モルである。Yの酸化物の含有量が少な過ぎると、このような効果が不十分となる。
前記Mnの酸化物は、焼結を促進する効果と、IRを高くする効果と、IR寿命を向上させる効果とがあり、主成分100モルに対して、MnO換算で0.03〜1.70モルであることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜1.0モルであり、より好ましくは、0.3〜0.7モルである。Mnの酸化物の含有量が少な過ぎると、添加した効果が得にくくなる傾向にあり、多過ぎると、比誘電率が低下する傾向にある。
前記Siの酸化物は、焼結助剤として作用し、主成分100モルに対して、SiO2換算で0〜1.0モルであることが好ましく、さらに好ましくは、0.4〜1.0モルである。Siの酸化物の含有量が多過ぎると、比誘電率が低下する傾向にある。
前記Vの酸化物およびWの酸化物は、IR寿命を向上させる効果があり、VおよびWの少なくとも1種の酸化物は、主成分100モルに対して、V2O5およびWO3換算で0.001〜0.7モルであることが好ましく、さらに好ましくは、0.01〜0.2モルである。Vの酸化物およびWの酸化物の含有量が少な過ぎると、添加した効果が得にくくなる傾向にあり、多過ぎると、IRが著しく低下する傾向にある。
なお、本明細書では、主成分および各副成分を構成する各酸化物を化学量論組成で表しているが、各酸化物の酸化状態は、化学量論組成から外れるものであってもよい。ただし、各副成分の上記比率は、各副成分を構成する酸化物に含有される金属量から上記化学量論組成の酸化物に換算して求める。
誘電体層2の厚さは、特に限定されないが、一層あたり5μm以下であることが好ましく、より好ましくは3μm以下である。
誘電体層2に含まれる誘電体粒子の平均結晶粒径は、特に限定されず、誘電体層2の厚さなどに応じて、例えば1〜5μmの範囲から適宜決定すればよく、好ましくは2〜3μmである。平均結晶粒径を小さくすることにより、比誘電率は低下する傾向にあるが、HALTを改良することができる。
内部電極層3
内部電極層3に含有される導電材は特に限定されないが、誘電体層2の構成材料が耐還元性を有するため、卑金属を用いることができる。導電材として用いる卑金属としては、NiまたはNi合金が好ましい。Ni合金としては、Mn,Cr,CoおよびAlから選択される1種以上の元素とNiとの合金が好ましく、合金中のNi含有量は95重量%以上であることが好ましい。なお、NiまたはNi合金中には、P等の各種微量成分が0.1重量%程度以下含まれていてもよい。
内部電極層3に含有される導電材は特に限定されないが、誘電体層2の構成材料が耐還元性を有するため、卑金属を用いることができる。導電材として用いる卑金属としては、NiまたはNi合金が好ましい。Ni合金としては、Mn,Cr,CoおよびAlから選択される1種以上の元素とNiとの合金が好ましく、合金中のNi含有量は95重量%以上であることが好ましい。なお、NiまたはNi合金中には、P等の各種微量成分が0.1重量%程度以下含まれていてもよい。
外部電極4
外部電極4に含有される導電材は特に限定されないが、本発明では安価なNi,Cuや、これらの合金を用いることができる。外部電極4の厚さは用途等に応じて適宜決定されればよいが、通常、10〜50μm程度であることが好ましい。
外部電極4に含有される導電材は特に限定されないが、本発明では安価なNi,Cuや、これらの合金を用いることができる。外部電極4の厚さは用途等に応じて適宜決定されればよいが、通常、10〜50μm程度であることが好ましい。
積層セラミックコンデンサの製造方法
本発明に係る誘電体磁器組成物の製造方法を用いて製造される積層セラミックコンデンサ1は、ペーストを用いた通常の印刷法やシート法によりグリーンチップを作製し、これを焼成した後、外部電極を印刷または転写して焼成することにより製造される。以下、製造方法について具体的に説明する。
本発明に係る誘電体磁器組成物の製造方法を用いて製造される積層セラミックコンデンサ1は、ペーストを用いた通常の印刷法やシート法によりグリーンチップを作製し、これを焼成した後、外部電極を印刷または転写して焼成することにより製造される。以下、製造方法について具体的に説明する。
まず、誘電体層用ペーストに含まれる誘電体磁器組成物原料を準備する。
本実施形態では、好ましくは、誘電体磁器組成物原料として、チタン酸バリウム系の主成分と、副成分の少なくとも一部を反応させて、反応済粉体を作製し、この反応済粉体に、少なくともハロゲン化合物を添加・混合することにより得られる焼成前粉体を使用する。
本実施形態では、好ましくは、誘電体磁器組成物原料として、チタン酸バリウム系の主成分と、副成分の少なくとも一部を反応させて、反応済粉体を作製し、この反応済粉体に、少なくともハロゲン化合物を添加・混合することにより得られる焼成前粉体を使用する。
前記チタン酸バリウム系の主成分と、前記副成分の少なくとも一部を反応させて、反応済粉体を得るための反応方法としては、特に限定はされないが、たとえば、仮焼き法などの固相法、しゅう酸塩法、水熱合成法、ゾルゲル法などの液相合成法などが挙げられる。
たとえば、前記仮焼き法の仮焼き条件としては、特に限定されないが、次に示す条件で行うことが好ましい。昇温速度は、好ましくは50〜400℃/時間、さらに好ましくは100〜300℃/時間である。保持温度は、好ましくは500〜1200℃、さらに好ましくは700〜1100℃である。温度保持時間は、好ましくは0.5〜6時間、さらに好ましくは1〜3時間である。処理雰囲気は、空気中、窒素中および還元雰囲気中の何れでも構わない。
なお、「少なくとも一部」とは、最終組成に含まれることになる主成分または、副成分の全量に対応する原料の少なくとも一部という意味である。ただし、後に添加するハロゲン化合物以外の原料の全量を反応させることが好ましい。
前記主成分および前記副成分の原料形態は、特に限定されず、上記した酸化物や炭酸塩、その混合物、複合酸化物を用いることができるが、その他、焼成により上記した酸化物や複合酸化物となる各種化合物、例えば、ハロゲン化合物、シュウ酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物等から適宜選択し、混合して用いることもできる。また、各化合物の含有量は、焼成後に上記した誘電体磁器組成物の組成となるように決定すればよい。
本実施形態では、前記反応済粉体に、少なくともハロゲン化合物を添加・混合することにより焼成前粉体とし、その粉体を含む成形体を用いて焼成を行う。
本発明の特徴点としては、誘電体磁器組成物原料を焼成する際に、原料のうち少なくとも一部をハロゲン化合物の形態とし、ハロゲン化合物を含有した状態で、焼成する点にある。このようにすることにより、他の電気特性、たとえば絶縁抵抗や誘電損失等を悪化させることなく、誘電体磁器組成物の比誘電率を向上することが可能となる。なお、その理由は、必ずしも明らかではないが、誘電体磁器組成物中に存在するハロゲン化合物が、焼成時に、焼成雰囲気中にハロゲンガスとして放出され、このハロゲンガスの影響により誘電体焼結粒子が均一に成長するためと考えられる。
前記ハロゲン化合物としては、特に限定はされないが、Mn、Si、Y、V、W、Ba、Caのハロゲン化合物から選ばれる1種または2種以上であることが好ましい。
前記Mnのハロゲン化合物としては、たとえばMnF2、MnCl2、MnBr2、MnI2等が、前記Siのハロゲン化合物としては、たとえばSiF4、SiCl4、SiBr4、SiI4等が、前記Yのハロゲン化合物としては、YF3、YCl3、YBr3、YI3等が、前記Vのハロゲン化合物としては、VF4、VCl3、VBr3、VI3、VOF3、VOCl2、VOCl3等が、前記Wのハロゲン化合物としては、WF5、WCl5、WBr6、WI4等が、前記Baのハロゲン化合物としては、たとえばBaF2、BaCl2、BaBr2、BaI2等が、前記Caのハロゲン化合物としては、たとえばCaF2、CaCl2、CaBr2、CaI2等がそれぞれ好適に使用できる。
上記ハロゲン化合物のなかでも、Baのハロゲン化合物が、特に好ましく、Baのハロゲン化合物としては、たとえば上述したBaF2、BaCl2、BaBr2、BaI2等が挙げられる。
また、前記ハロゲン化合物の添加量としては、主成分100モルに対して、0.05モルより多く、2.0モル未満であり、好ましくは0.1モル以上、1.7モル以下であり、さらに好ましくは0.1モル以上、1.5モル以下である。前記ハロゲン化合物の添加量が、少な過ぎても、多過ぎても比誘電率の向上という本発明の効果が得られなくなる傾向にある。
なお、本実施形態では、反応済粉体に、少なくともハロゲン化合物を添加・混合して焼成前粉体を作製する際に、上述したハロゲン化合物以外にも、種々の添加物を添加しても良い。ハロゲン化合物以外の添加物としては、たとえば、酸化物やその混合物、複合酸化物や、その他、焼成により酸化物や複合酸化物となる各種化合物、例えば、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物等から適宜選択し、混合して添加することができる。
次に、上記にて得られた焼成前粉体を塗料化して、誘電体層用ペーストを調整する。誘電体層用ペーストは、焼成前粉体と有機ビヒクルとを混練した有機系の塗料であってもよく、水系の塗料であってもよい。
有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いるバインダは特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。また、用いる有機溶剤も特に限定されず、印刷法やシート法など、利用する方法に応じて、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン等の各種有機溶剤から適宜選択すればよい。
また、誘電体層用ペーストを水系の塗料とする場合には、水溶性のバインダや分散剤などを水に溶解させた水系ビヒクルと、誘電体原料とを混練すればよい。水系ビヒクルに用いる水溶性バインダは特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性アクリル樹脂などを用いればよい。
内部電極層用ペーストは、上記した各種導電性金属や合金からなる導電材、あるいは焼成後に上記した導電材となる各種酸化物、有機金属化合物、レジネート等と、上記した有機ビヒクルとを混練して調製する。
外部電極用ペーストは、上記した内部電極層用ペーストと同様にして調製すればよい。
上記した各ペースト中の有機ビヒクルの含有量に特に制限はなく、通常の含有量、例えば、バインダは1〜5重量%程度、溶剤は10〜50重量%程度とすればよい。また、各ペースト中には、必要に応じて各種分散剤、可塑剤、誘電体、絶縁体等から選択される添加物が含有されていてもよい。これらの総含有量は、10重量%以下とすることが好ましい。
印刷法を用いる場合、誘電体層用ペーストおよび内部電極層用ペーストを、PET等の基板上に積層印刷し、所定形状に切断した後、基板から剥離してグリーンチップとする。
また、シート法を用いる場合、誘電体層用ペーストを用いてグリーンシートを形成し、この上に内部電極層用ペーストを印刷した後、これらを積層してグリーンチップとする。
焼成前に、グリーンチップに脱バインダ処理を施す。脱バインダ処理は、内部電極層ペースト中の導電材の種類に応じて適宜決定されればよいが、導電材としてNiやNi合金等の卑金属を用いる場合、脱バインダ雰囲気中の酸素分圧を10−45 〜105 Paとすることが好ましい。酸素分圧が前記範囲未満であると、脱バインダ効果が低下する。また酸素分圧が前記範囲を超えると、内部電極層が酸化する傾向にある。
また、それ以外の脱バインダ条件としては、昇温速度を好ましくは5〜300℃/時間、より好ましくは10〜100℃/時間、保持温度を好ましくは200〜500℃、より好ましくは350〜450℃、温度保持時間を好ましくは0.5〜24時間、より好ましくは1〜5時間とする。また、焼成雰囲気は、空気もしくは還元性雰囲気とすることが好ましく、還元性雰囲気における雰囲気ガスとしては、たとえばN2 とH2 との混合ガスを加湿して用いることが好ましい。
次いで、グリーンチップの焼成を行う。焼成時の雰囲気は、内部電極層用ペースト中の導電材の種類に応じて適宜決定されればよいが、導電材としてNiやNi合金等の卑金属を用いる場合、焼成雰囲気中の酸素分圧は、10−9〜10−4Paとすることが好ましい。酸素分圧が前記範囲未満であると、内部電極層の導電材が異常焼結を起こし、途切れてしまうことがある。また、酸素分圧が前記範囲を超えると、内部電極層が酸化する傾向にある。
また、焼成時の保持温度は、好ましくは1100〜1400℃、さらに好ましくは1200〜1300℃である。保持温度が前記範囲未満であると緻密化が不十分となり、前記範囲を超えると、内部電極層の異常焼結による電極の途切れや、内部電極層構成材料の拡散による容量温度特性の悪化、誘電体磁器組成物の還元が生じやすくなる。
これ以外の焼成条件としては、昇温速度を好ましくは50〜500℃/時間、さらに好ましくは200〜300℃/時間、温度保持時間を好ましくは0.5〜8時間、さらに好ましくは1〜3時間、冷却速度を好ましくは50〜500℃/時間、さらに好ましくは200〜300℃/時間とする。また、焼成雰囲気は還元性雰囲気とすることが好ましく、雰囲気ガスとしてはたとえば、N2 とH2 との混合ガスを加湿して用いることが好ましい。
還元性雰囲気中で焼成した場合、コンデンサ素子本体にはアニールを施すことが好ましい。アニールは、誘電体層を再酸化するための処理であり、これによりIR寿命を著しく長くすることができるので、信頼性が向上する。
アニール雰囲気中の酸素分圧は、10−3Pa以上、特に10−2〜10Paとすることが好ましい。酸素分圧が前記範囲未満であると誘電体層の再酸化が困難であり、前記範囲を超えると内部電極層が酸化する傾向にある。
アニールの際の保持温度は、1100℃以下、特に500〜1100℃とすることが好ましい。保持温度が前記範囲未満であると誘電体層の酸化が不十分となるので、IRが低く、また、IR寿命が短くなりやすい。一方、保持温度が前記範囲を超えると、内部電極層が酸化して容量が低下するだけでなく、内部電極層が誘電体素地と反応してしまい、容量温度特性の悪化、IRの低下、IR寿命の低下が生じやすくなる。なお、アニールは昇温過程および降温過程だけから構成してもよい。すなわち、温度保持時間を零としてもよい。この場合、保持温度は最高温度と同義である。
これ以外のアニール条件としては、温度保持時間を好ましくは0〜20時間、より好ましくは2〜10時間、冷却速度を好ましくは50〜500℃/時間、より好ましくは100〜300℃/時間とする。また、アニールの雰囲気ガスとしては、たとえば、加湿したN2 ガス等を用いることが好ましい。
上記した脱バインダ処理、焼成およびアニールにおいて、N2 ガスや混合ガス等を加湿するには、例えばウェッター等を使用すればよい。この場合、水温は5〜75℃程度が好ましい。
脱バインダ処理、焼成およびアニールは、連続して行なっても、独立に行なってもよい。
脱バインダ処理、焼成およびアニールは、連続して行なっても、独立に行なってもよい。
上記のようにして得られたコンデンサ素子本体に、例えばバレル研磨やサンドブラストなどにより端面研磨を施し、外部電極用ペーストを印刷または転写して焼成し、外部電極4を形成する。外部電極用ペーストの焼成条件は、例えば、加湿したN2 とH2 との混合ガス中で600〜800℃にて10分間〜1時間程度とすることが好ましい。そして、必要に応じ、外部電極4表面に、めっき等により被覆層を形成する。
このようにして製造された本発明の積層セラミックコンデンサは、ハンダ付等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。
このようにして製造された本発明の積層セラミックコンデンサは、ハンダ付等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
たとえば、上述した実施形態では、積層セラミックコンデンサの製造方法として、反応済粉体を作製する工程と、その反応済粉体にハロゲン化合物を含ませた状態で、焼成する工程とを有する製造方法を例示したが、主成分と副成分とハロゲン化合物とを直接添加・混合し、焼成する工程を有する製造方法とすることも可能である。この製造方法においては、主成分と副成分とをあらかじめ反応させる工程を経ず、主成分と副成分とハロゲン化合物とを直接添加・混合し、焼成する。
また、上述した実施形態では、本発明に係る電子部品として積層セラミックコンデンサを例示したが、本発明に係る電子部品としては、積層セラミックコンデンサに限定されず、上記組成の誘電体磁器組成物で構成してある誘電体層を有するものであれば何でも良い。たとえば、円板状に成形し、焼成した誘電体磁器組成物に、電極を印刷して焼成することにより製造される単層の円板状コンデンサとすることも可能である。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
出発原料として、ゾルゲル合成により生成された{{Ba(1−x)Cax}O}A{Ti(1−y)Zry}BO2 で示される組成の誘電体酸化物から成る主成分を用いた。主成分を示す式中の組成比を示す記号A,B,x,yが、
A/B=0.985、
x=0.01、
y=0.20の関係にあった。
なお、上記誘電体酸化物の平均粒径は0.4μm、最大粒径は1.5μmであった。また、後述するように、本実施例においては、仮焼前および/または焼成前に、焼成後の試料の上記A/Bが、A/B=1.005となるように、主成分に対して、2.0モルのバリウム化合物を添加している。すなわち、本実施例により得られた誘電体磁器組成物において、上記A/Bは、A/B=1.005となっている。
A/B=0.985、
x=0.01、
y=0.20の関係にあった。
なお、上記誘電体酸化物の平均粒径は0.4μm、最大粒径は1.5μmであった。また、後述するように、本実施例においては、仮焼前および/または焼成前に、焼成後の試料の上記A/Bが、A/B=1.005となるように、主成分に対して、2.0モルのバリウム化合物を添加している。すなわち、本実施例により得られた誘電体磁器組成物において、上記A/Bは、A/B=1.005となっている。
また、以下の副成分をそれぞれ添加し、ボールミルで16時間湿式粉砕し、900℃および3時間の条件で、大気雰囲気中で仮焼きを行った。
上記副成分としては、主成分100モルに対して、Y2O3を0.60モル、SiO2を0.80モル、MnCO3を0.4モル、V2O5を0.08モル、WO3を0.08モル、および、表1(表中では、仮焼前に添加したバリウムとした)に示すモル比にてBaCO3をそれぞれ添加した。
なお、上記仮焼前に添加した副成分全体の平均粒径は0.5μm、最大粒径は3.3μmであった。また、表1の試料15は、主成分100モルに対して、上記副成分に加えてBaCl2を1.00モル添加して、粉砕および仮焼きを行った。
上記副成分としては、主成分100モルに対して、Y2O3を0.60モル、SiO2を0.80モル、MnCO3を0.4モル、V2O5を0.08モル、WO3を0.08モル、および、表1(表中では、仮焼前に添加したバリウムとした)に示すモル比にてBaCO3をそれぞれ添加した。
なお、上記仮焼前に添加した副成分全体の平均粒径は0.5μm、最大粒径は3.3μmであった。また、表1の試料15は、主成分100モルに対して、上記副成分に加えてBaCl2を1.00モル添加して、粉砕および仮焼きを行った。
その後、仮焼きを行うことにより得られた反応済粉体に、表1(表中では、焼成前に添加したバリウムとした)に示す添加形態および量にて各バリウム化合物を添加し、ボールミルで16時間、湿式混合することにより、焼成前粉体を得た。
なお、表1の試料16については、上記副成分とともに、主成分100モルに対して、BaCO3を1.00モルおよびBaCl2を1.00モル添加し、ボールミルで16時間湿式粉砕し、焼成前粉体とした。つまり、試料16については、仮焼きは行わなかった。
上記にて得られた焼成前粉体にバインダーとして0.6重量%のポリアクリルニトリルを添加し、加圧成型することにより直径12mm、厚さ0.6mm程度の円板状の試料を得た。
次いで、円板状の試料について、脱バインダ処理、焼成およびアニールを下記条件にて行って、円板状の誘電体磁器組成物の試料を得た。
脱バインダ処理条件は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:400℃、温度保持時間:2時間、雰囲気:空気中とした。
焼成の条件は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:1300℃、温度保持時間:2時間、冷却速度:300℃/時間、雰囲気ガス:加湿したN2 +H2 混合ガス(酸素分圧:10−3Pa)とした。
アニール条件は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:1050℃、温度保持時間:2時間、冷却速度:200℃/時間、雰囲気ガス:加湿したN2 ガス(酸素分圧:1.0Pa)とした。なお、焼成およびアニールの際の雰囲気ガスの加湿には、水温を0〜75℃としたウエッターを用いた。
脱バインダ処理条件は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:400℃、温度保持時間:2時間、雰囲気:空気中とした。
焼成の条件は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:1300℃、温度保持時間:2時間、冷却速度:300℃/時間、雰囲気ガス:加湿したN2 +H2 混合ガス(酸素分圧:10−3Pa)とした。
アニール条件は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:1050℃、温度保持時間:2時間、冷却速度:200℃/時間、雰囲気ガス:加湿したN2 ガス(酸素分圧:1.0Pa)とした。なお、焼成およびアニールの際の雰囲気ガスの加湿には、水温を0〜75℃としたウエッターを用いた。
次いで、得られた円板状の試料の両面に、直径6mmのIn−Gaを塗布し、これを電極とした。各試料について下記特性の評価を行った。
比誘電率(ε r )、絶縁抵抗(ρ)、誘電損失(tanδ)
円板状の試料に対し、基準温度25℃において、デジタルLCRメータ(YHP社製4284A)にて、周波数1kHz,入力信号レベル(測定電圧)1.0Vrmsの信号を入力し、静電容量Cおよび誘電損失tanδ(単位は、%)を測定した。比誘電率εr(単位なし)は、円板状の試料の厚みと、有効電極面積と、測定の結果得られた静電容量Cとに基づき算出した。
比誘電率εrは、小型で高誘電率のコンデンサを作成するために重要な特性であり、比誘電率εrは、大きいほど好ましい。
絶縁抵抗ρ(単位は、Ω・m)は、絶縁抵抗計(アドバンテスト社製R8340A)を用いて、円板状の試料に50Vの直流電圧を1分間印加した後の抵抗を測定した。絶縁抵抗ρは高いほど好ましい。
誘電損失tanδは、誘電体層の薄膜化を実現し、小型で高誘電率のコンデンサを作成するために重要な特性であり、tanδは、小さいほど好ましく、円板状サンプルにおいては、1%以下である必要がある。
結果を表1に示す。
円板状の試料に対し、基準温度25℃において、デジタルLCRメータ(YHP社製4284A)にて、周波数1kHz,入力信号レベル(測定電圧)1.0Vrmsの信号を入力し、静電容量Cおよび誘電損失tanδ(単位は、%)を測定した。比誘電率εr(単位なし)は、円板状の試料の厚みと、有効電極面積と、測定の結果得られた静電容量Cとに基づき算出した。
比誘電率εrは、小型で高誘電率のコンデンサを作成するために重要な特性であり、比誘電率εrは、大きいほど好ましい。
絶縁抵抗ρ(単位は、Ω・m)は、絶縁抵抗計(アドバンテスト社製R8340A)を用いて、円板状の試料に50Vの直流電圧を1分間印加した後の抵抗を測定した。絶縁抵抗ρは高いほど好ましい。
誘電損失tanδは、誘電体層の薄膜化を実現し、小型で高誘電率のコンデンサを作成するために重要な特性であり、tanδは、小さいほど好ましく、円板状サンプルにおいては、1%以下である必要がある。
結果を表1に示す。
表1は、反応済粉体を得る工程、つまり仮焼前に添加したバリウムの添加形態および添加量と、焼成前粉体作製時、つまり焼成前に添加したバリウムの添加形態および添加量と、バリウムの添加量の合計と、各電気特性とをまとめた表である。また、表1より示すように、いずれの試料においても、仮焼前に添加したバリウムの添加量と焼成前に添加したバリウムの添加量との合計を、主成分100モルに対して、2.00モルになるように添加した。
表1より、焼成前に添加するバリウムの添加形態をBaCl2とした実施例の試料8〜10は、焼成前にバリウムを添加しなかった比較例の試料1と比較して、比誘電率がいずれも高い値となった。また、実施例の試料8〜10は、絶縁抵抗ρ、誘電損失tanδについても良好な値であった。一方、焼成前のバリウムの添加量がそれぞれ0.05および2.00である比較例の試料7および11は、焼成前にバリウムを添加しなかった比較例の試料1と比較して、いずれも比誘電率が低い値となった。
また、焼成前にバリウムを添加する形態をBaCO3とした比較例の試料2〜6は、添加形態をBaCl2とした試料7〜11と比較して、添加量を0.05とした場合を除いて、比誘電率が、低い値となった。このことは、試料2〜11の焼成前のバリウムの添加量と比誘電率をグラフ化した図2からも明らかである。なお、添加量を0.05とした試料2および7については、比誘電率が同じ値であった。
さらに、焼成前にバリウムを添加する形態をBaCO3とした比較例の試料2〜6は、焼成前にバリウムを添加しなかった比較例の試料1と比較して、比誘電率は、同程度もしくは、若干劣る結果であった。
この結果より、誘電体磁器組成物の比誘電率を向上させるためには、焼成前にハロゲン化合物を添加することが望ましく、その添加量は、主成分100モルに対して0.05モルより多く、2.0モル未満であることが望ましく、好ましくは0.1モル以上、1.7モル以下であることが確認できた。
また、焼成前に添加するハロゲン化合物を塩素化合物以外のハロゲン化合物であるBaF2、BaBr2、BaI2とした実施例の試料12〜14は、比誘電率が、いずれも、焼成前にバリウムを添加しなかった比較例の試料1より高い値となった。また、実施例の試料12〜14は、絶縁抵抗ρ、誘電損失tanδについても良好な値となった。この結果より、塩素化合物以外の他のハロゲン化合物を使用した場合においても、本発明の効果が得られることが確認できた。
また、仮焼きを行わなかった実施例の試料16は、バリウムの添加量および添加形態が同じであり、仮焼きを行った実施例の試料10と、比誘電率εr、絶縁抵抗ρおよび誘電損失tanδについて、ほぼ同等の結果が得られた。この結果より、たとえば仮焼き法などにより、主成分と副成分とをあらかじめ反応させなくても、本発明の効果が得られることが確認できた。
なお、仮焼前にBaCl2を添加した比較例の試料15は、比誘電率が16500であり、BaCl2の添加量が1.00モルと同量である本発明の実施例の試料10の比誘電率19500と比較して小さな値となった。また試料15は、同じく焼成前にバリウムを添加しなかった比較例の試料1と、仮焼前のバリウムの添加形態は異なるが、比誘電率については、同程度の結果となった。
この結果より、ハロゲン化合物を仮焼き後に添加するか、ハロゲン化合物を添加した後仮焼きを行わず、ハロゲン化合物を適量含んだ状態で焼成することが好ましいことが確認できた。なお、比較例の試料15においては、900℃で仮焼きした際に、ハロゲン化合物がガス化してしまい、1300℃で焼成を行った焼成前粉体中には、ハロゲン化合物がほとんど残存していなかったと考えられる。
1… 積層セラミックコンデンサ
10… コンデンサ素子本体
2… 誘電体層
3… 内部電極層
4… 外部電極
10… コンデンサ素子本体
2… 誘電体層
3… 内部電極層
4… 外部電極
Claims (9)
- チタン酸バリウム系の主成分と副成分とを、ハロゲン化合物を含ませた状態で、焼成する工程を有し、
前記ハロゲン化合物の添加量が、主成分100モルに対して0.05モルより多く、2.0モル未満であることを特徴とする誘電体磁器組成物の製造方法。 - チタン酸バリウム系の主成分および副成分の少なくとも一部を反応させて、反応済粉体を得る工程と、
前記反応済粉体に、少なくともハロゲン化合物を添加・混合して焼成前粉体を作製し、前記焼成前粉体を焼成する工程とを有し、
前記ハロゲン化合物の添加量が、主成分100モルに対して0.05モルより多く、2.0モル未満であることを特徴とする誘電体磁器組成物の製造方法。 - 前記主成分が組成式
{{Ba(1−x)Cax}O}A{Ti(1−y)Zry}BO2
(ただし、A,B,x,yが、0.960≦A/B≦1.020、0≦x≦0.3、0≦y≦0.3)
で表されることを特徴とする請求項1または2に記載の誘電体磁器組成物の製造方法。 - 前記ハロゲン化合物が、Mn、Si、Y、V、W、Ba、Caのハロゲン化合物から選ばれる1種または2種以上である請求項1〜3のいずれかに記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
- 前記ハロゲン化合物が、Baのハロゲン化合物である請求項4に記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
- 前記副成分が、Ba、Y、Mn、Si、VおよびWの酸化物および/または焼成後にこれらの酸化物になる化合物を含有し、それぞれ、主成分原料100モルに対して、BaCO3、Y2O3、MnO、SiO2、V2O5、WO3換算で、
BaCO3:0〜2.0モル、
Y2O3:0〜1.0モル、
MnO:0.03〜1.70モル、
SiO2:0〜1.0モル、
V2O5+WO3:0.001〜0.7モルである請求項1〜5のいずれかに記載の誘電体磁器組成物の製造方法。 - 請求項1〜6のいずれかに記載の方法で製造される誘電体磁器組成物。
- 請求項7に記載の誘電体磁器組成物で構成してある誘電体層を有する電子部品。
- 請求項7に記載の誘電体磁器組成物で構成してある誘電体層と、内部電極層とが交互に積層してあるコンデンサ素子本体を有する積層セラミックコンデンサ。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2003372565A JP2005132698A (ja) | 2003-10-31 | 2003-10-31 | 電子部品、誘電体磁器組成物およびその製造方法 |
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Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011236122A (ja) * | 2010-05-12 | 2011-11-24 | General Electric Co <Ge> | 電力伝達系のための誘電材料 |
US8968609B2 (en) | 2010-05-12 | 2015-03-03 | General Electric Company | Dielectric materials for power transfer system |
US8968603B2 (en) | 2010-05-12 | 2015-03-03 | General Electric Company | Dielectric materials |
US9954580B2 (en) | 2011-07-28 | 2018-04-24 | General Electric Company | Dielectric materials for power transfer systems |
-
2003
- 2003-10-31 JP JP2003372565A patent/JP2005132698A/ja not_active Withdrawn
Cited By (5)
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