JP2001097772A - 誘電体磁器組成物、電子部品およびそれらの製造方法 - Google Patents

誘電体磁器組成物、電子部品およびそれらの製造方法

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JP2001097772A
JP2001097772A JP28018899A JP28018899A JP2001097772A JP 2001097772 A JP2001097772 A JP 2001097772A JP 28018899 A JP28018899 A JP 28018899A JP 28018899 A JP28018899 A JP 28018899A JP 2001097772 A JP2001097772 A JP 2001097772A
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oxide
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composition
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Mari Fujii
真理 藤井
Yukie Nakano
幸恵 中野
Akira Sato
陽 佐藤
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 非酸化性雰囲気で1200℃以下の温度での
焼成が可能であるにもかかわらず、高い誘電率を有する
誘電体磁器組成物およびその製造方法を提供すること
と、低温焼成が可能で、しかも絶縁抵抗の加速寿命が向
上されたチップコンデンサなどの電子部品を提供するこ
と。 【解決手段】 {{Ba(1−x) Ca}O}
(Ti(1−y)Zrで示される組
成の誘電体酸化物を含む主成分と、Sr,Y,Gd、T
b,Dy,V,Mo,Zn,Cd,Ti,Sn,W,M
n,SiおよびPの酸化物および/または焼成後にこれ
らの酸化物になる化合物から選ばれる1種類以上を含む
副成分とを有し、前記副成分が、組成物全体に対して、
酸化物換算で、0.001〜5%含まれ、前記主成分を
示す式中の組成比を示す記号A,B,x,yが、0.9
90≦A/B<1.000、0.01≦x≦0.25、
0.1≦y≦0.3の関係にあることを特徴とする誘電
体磁器組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、たとえば積層型セ
ラミックコンデンサの誘電体層などとして用いられる誘
電体磁器組成物の改良と、その誘電体磁器組成物を誘電
体層として用いる電子部品およびそれらの製造方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】従来、積層型セラミックコンデンサは、
所定の誘電体磁器組成物からなるグリーンシート上に導
電ペーストを印刷し、該導電ペーストを印刷した複数枚
のグリーンシートを積層し、グリーンシートと内部電極
とを一体的に焼成し、形成されている。そして、従来、
卑金属を内部電極として用いることができる非還元性誘
電体磁器組成物として、例えば、セラミックスコンデン
サで高容量材料の特許番号第2787746号で開示さ
れるようなものが知られている。
【0003】この公報に開示される誘電体磁器組成物
は、{(Ba(1−x) CaSr)O}
(Ti(1−z) Zrにて示される
誘電体酸化物を主成分とする。ただし、1.000≦A
/B<1.020、0.01≦x≦0.25、0≦y≦
0.05、0.05≦z≦0.20である。
【0004】しかしながら、この誘電体磁器組成物で
は、焼成時に発生する誘電体材料の還元反応を抑えるこ
とができるものの、焼成に1220℃以上の高い焼成温
度が必要である。
【0005】また、近年、低温焼成が可能な誘電体磁器
組成物として、特開平10−279353号公報、特公
平6−14496号公報、および特開平4−36755
9号公報に開示されるようなものが知られている。特公
平6−14496号公報には、{(Ba(1−x)
)O}(Ti(1−y−z) Zr
)O2−z/2 にて表される主成分と、SiO
、LiOおよびMO(MOはBaO等)からな
る添加成分との混合物を焼成してなる誘電体磁器組成物
が開示されている。ただし、主成分中のRはY等の希土
類元素であり、1.00≦m≦1.04である。
【0006】この公報には、主成分を1200℃で仮焼
きし、添加成分を1000℃で仮焼し、主成分と添加成
分の仮焼粉末とを混合し、この混合粉末でスラリーを形
成し、所定形状に成形し、1150℃で焼成することに
より焼結体が得られることが開示してある。
【0007】また、特開平4−367559号公報に
は、(Ba(1−x) Ca (Ti
(1−y) Zr+aM1+bM2+
cM3にて表される磁器組成物が開示されている。ただ
し、M1はMn等の化合物、M2はSiの化合物、M3
はYの化合物である。
【0008】この公報には、BaCO、CaCO
、TiO、ZrO、SiO、Y
等の粉末を混合し、この粉末を1050〜1240
℃で仮焼し、この仮焼粉末を用いて成形体を作製し、1
300〜1400℃で焼成することにより焼結体が得ら
れることが開示されている。これらの誘電体磁器組成物
では、還元性雰囲気で焼成しても磁器が還元されず、長
寿命のチップコンデンサを得ることができる。
【0009】また、特開平10−279353号公報に
は、{(Ba(1−x) Ca)O}(Ti
(1−y) Zrを主成分とし、Y,
Li,BまたはSiの酸化物を副成分として含む誘電体
磁器組成物が開示されている。ただし、0.990≦A
/B<1.02、0.01≦x≦0.10、0.15≦
y≦0.25である。さらに、特開平11−13053
1号公報には、{(Ba(1−x) Ca )O}
(Ti(1−y) Zrを主成分と
し、Y,Si,BaおよびCaの酸化物を副成分として
含む誘電体磁器組成物が開示されている。ただし、0.
98≦A/B<1.01、0.01≦x≦0.10、
0.15≦y≦0.25である。
【0010】しかしながら、これらの公報に示す誘電体
磁器組成物では、薄層化の点で問題があると共に、焼成
温度が高いなどの課題があった。
【0011】積層型セラミックチップコンデンサは、通
常、内部電極用のペーストと、誘電体層用のペーストと
をシート法や印刷法等により積層し、一体同時焼成して
製造される。内部電極には、一般に、PdやPd合金が
用いられているが、Pdは高価であるため、比較的安価
なNiやNi合金が使用されつつある。ところで、内部
電極をNiやNi合金で形成する場合は、大気中で焼成
を行うと電極が酸化してしまう。
【0012】このため、一般に、脱バインダ後は、Ni
とNiOの平衡酸素分圧よりも低い酸素分圧で焼成を行
っている。この場合、誘電体材料の緻密化を図るため、
通常、焼結助剤としてSiOが加えられる。また、
誘電体層の還元による絶縁抵抗の低下等を防止するた
め、Mnの添加や、Ca置換等も行われている。
【0013】しかし、NiやNi合金製の内部電極を有
する積層型チップコンデンサは、大気中で焼成して製造
されるPd製の内部電極を有する積層型チップコンデン
サに比べて、絶縁抵抗の寿命が圧倒的に短く、信頼性が
低いという問題があった。
【0014】ところが、この問題は、本発明者等により
提案された、ある特定の組成を有する誘電体酸化物を主
成分として含有し、Y、Gd、Tb、Dy、Zr、V、
Mo、Zn、Cd、Ti、SnおよびPの酸化物および
/または焼成後にこれらの酸化物になる化合物から選ば
れる1種類以上を特定量添加した誘電体材料と、Niま
たはNi合金の内部電極材料とを積層して焼成した積層
型セラミックチップコンデンサにより、ほぼ解決するこ
とができた(特開平3−133116号公報)。すなわ
ち、この公報に示すように、Y等を副成分として添加す
れば、従来の無添加の誘電体材料を持つチップコンデン
サに比べ、寿命が約2〜10倍に増大し、ある程度優れ
た信頼性が得られることが判明した。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ような組成の誘電体層を備える積層型セラミックチップ
コンデンサにおいては、1400℃未満では緻密化しな
いという問題があり、そこで従来では、焼結助剤として
SiOを用いて、上記磁器組成物の低温化焼成を可
能としていた。
【0016】しかしながら、従来のように、主成分(A
/B<1)に対して、焼結助剤としてSiOの比率
を多くした場合には、半導体化を生じたり、絶縁抵抗も
低く加速寿命も短いという問題があった。
【0017】本発明の目的は、非酸化性雰囲気で120
0℃以下の温度での焼成が可能であるにもかかわらず、
高い誘電率を有する誘電体磁器組成物およびその製造方
法を提供することである。また、本発明の目的は、低温
焼成が可能で、しかも絶縁抵抗の加速寿命が向上された
チップコンデンサなどの電子部品を提供することであ
る。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明の発明者等は、積
層型セラミックチップコンデンサなどの電子部品の誘電
体層として用いられる誘電体磁器組成物において、Y等
添加の誘電体磁器組成物に比べ、更に低温での焼成を可
能にし、より一層に信頼性を向上させ、しかも、この高
信頼性化により、誘電体層を10μm以下の薄層化を可
能とする誘電体磁器組成物について鋭意検討した結果、
特定組成の誘電体磁器組成物において、組成比の範囲を
特定することで、本発明の目的を達成できることを見出
し、本発明を完成させるに至った。
【0019】すなわち、本発明に係る誘電体磁器組成物
は、{{Ba(1−x) Ca}O}(Ti
(1−y) Zr で示される組成の誘電
体酸化物を含む主成分と、Sr,Y,Gd、Tb,D
y,V,Mo,Zn,Cd,Ti,Sn,W,Mn,S
iおよびPの酸化物および/または焼成後にこれらの酸
化物になる化合物から選ばれる1種類以上を含む副成分
とを有し、前記副成分が、組成物全体に対して、酸化物
換算で、0.001〜5モル%含まれ、前記主成分を示
す式中の組成比を示す記号A,B,x,yが、0.99
0≦A/B<1.000、0.01≦x≦0.25、
0.1≦y≦0.3の関係にあることを特徴とする。
【0020】本発明に係る誘電体磁器組成物において、
好ましくは、組成物全体に対して、Liの酸化化合物お
よび/または焼成後にLiの酸化化合物となる化合物
を、酸化物(LiO)換算で0.01〜15モル%
含有する。
【0021】本発明に係る誘電体磁器組成物において、
好ましくは、焼成後の誘電体磁器組成物が、Liの酸化
化合物および/または焼成後にLiの酸化化合物となる
化合物を、酸化物(LiO)換算で0.01〜10
000ppm含有する。焼成後の誘電体磁器組成物中の
Liの酸化化合物および/または焼成後にLiの酸化化
合物となる化合物の含有量は、原子吸光分析などで測定
される。
【0022】本発明に係る誘電体磁器組成物の製造方法
は、Sr,Y,Gd、Tb,Dy,V,Mo,Zn,C
d,Ti,Sn,W,Mn,SiおよびPの酸化物およ
び/または焼成後にこれらの酸化物になる化合物から選
ばれる1種類以上を含む副成分を予め500〜1000
℃で仮焼きする工程と、この仮焼きで得られた粉体と、
{{Ba(1−x) Ca}O}(Ti
(1−y) Zrで示される組成の誘電
体酸化物を含む主成分とを混合する工程とを有する。
【0023】本発明に係る誘電体磁器組成物の製造方法
において、好ましくは、前記仮焼き工程で得られた粉末
と、Liの酸化化合物および/または焼成後にLiの酸
化化合物となる化合物とを混合する工程をさらに有す
る。
【0024】本発明に係る電子部品は、誘電体層を有す
る電子部品であって、前記誘電体層が、{{Ba
(1−x) Ca}O}(Ti(1−y)
で示される組成の誘電体酸化物を含む
主成分と、Sr,Y,Gd、Tb,Dy,V,Mo,Z
n,Cd,Ti,Sn,W,Mn,SiおよびPの酸化
物および/または焼成後にこれらの酸化物になる化合物
から選ばれる1種類以上を含む副成分とを有し、前記副
成分が、組成物全体に対して、酸化物換算で、0.00
1〜5モル%含まれ、前記主成分を示す式中の組成比を
示す記号A,B,x,yが、0.990≦A/B<1.
000、0.01≦x≦0.25、0.1≦y≦0.3
の関係にあることを特徴とする。
【0025】本発明に係る電子部品において、好ましく
は、前記誘電体層が、Liの酸化化合物および/または
焼成後にLiの酸化化合物となる化合物を、酸化物(L
O)換算で0.01〜10000ppm含有する。
【0026】本発明に係る電子部品の製造方法は、S
r,Y,Gd、Tb,Dy,V,Mo,Zn,Cd,T
i,Sn,W,Mn,SiおよびPの酸化物および/ま
たは焼成後にこれらの酸化物になる化合物から選ばれる
1種類以上を含む副成分を予め500〜1000℃で仮
焼きする工程と、この仮焼きで得られた粉体と、{{B
(1−x) Ca}O}(Ti(1−y)
Zrで示される組成の誘電体酸化物を含
む主成分とを混合する工程と、混合された粉体を用いて
誘電体ペーストを作製する工程と、内部電極用ペースト
を作製する工程と、前記誘電体ペーストおよび内部電極
用ペーストを交互に積層する工程と、交互に積層された
前記誘電体ペーストおよび内部電極用ペーストを焼成す
る工程とを有する。
【0027】本発明に係る電子部品の製造方法におい
て、好ましくは、前記仮焼き工程で得られた粉末と、L
iの酸化化合物および/または焼成後にLiの酸化化合
物となる化合物とを混合する工程をさらに有する。
【0028】
【作用】本発明に係る誘電体磁器組成物は、1000〜
1200℃の低温で焼成することができると共に、絶縁
抵抗の加速寿命も40時間(200℃,DC8V/μ
m)以上に向上する。また、本発明に係る誘電体磁器組
成物を誘電体層とするチップコンデンサなどの電子部品
では、内部電極の途切れや太りが低減し、長寿命化する
効果が得られる。
【0029】また、本発明に係る誘電体磁器組成物の製
造方法では、従来より低温での焼成が可能でありなが
ら、緻密性の高い焼結体が得られる。
【0030】さらに、本発明に係る電子部品の製造方法
では、従来より低温での焼成が可能でありながら、緻密
性の高い焼結体から成る誘電体層が得られ、しかも、内
部電極の途切れや太りが低減し、長寿命化する効果が得
られる。
【0031】
【発明の実施の形態】以下、本発明を、図面に示す実施
形態に基づき説明する。図1は本発明の一実施形態に係
る積層セラミックコンデンサの要部断面図である。
【0032】積層セラミックコンデンサ 図1に示すように、本発明の一実施形態に係る電子部品
としての積層セラミックコンデンサ1は、誘電体層2と
内部電極層3とが交互に積層された構成のコンデンサ素
子本体10を有する。このコンデンサ素子本体10の両
端部には、素子本体10の内部で交互に配置された内部
電極層3と各々導通する一対の外部電極4が形成してあ
る。コンデンサ素子本体10の形状に特に制限はない
が、通常、直方体状とされる。また、その寸法にも特に
制限はなく、用途に応じて適当な寸法とすればよいが、
通常、(0.6〜5.6mm)×(0.3〜5.0m
m)×(0.3〜1.9mm)程度である。
【0033】内部電極層3は、各端面がコンデンサ素子
本体10の対向する2端部の表面に交互に露出するよう
に積層してある。一対の外部電極4は、コンデンサ素子
本体10の両端部に形成され、交互に配置された内部電
極層3の露出端面に接続されて、コンデンサ回路を構成
する。
【0034】誘電体層2 誘電体層2は、本発明の誘電体磁器組成物を含有する。
本発明の誘電体磁器組成物は、{{Ba(1−x)
}O}(Ti(1−y) Zr
で表される組成の誘電体酸化物を含む主成分と、S
r,Y,Gd、Tb,Dy,V,Mo,Zn,Cd,T
i,Sn,W,Mn,SiおよびPの酸化物から選ばれ
る1種類以上を含む副成分とを有する。この際、酸素
(O)量は、上記式の科学量論組成から若干偏倚しても
よい。
【0035】上記式中、xは、0.01以上0.25以
下、好ましくは0.05以上0.10以下である。ま
た、yは、0.1以上0.3以下、好ましくは0.1以
上0.2以下である。また、A/Bは、0.990以上
1.000未満、好ましくは0.995以上0.999
以下である。
【0036】この組成において、xはCa原子数を表す
が、このCaは、主に焼結安定性として作用するととも
に、絶縁抵抗値を向上させる元素として作用するもので
ある。xが0.01未満になると、焼成温度が1250
℃以上となり絶縁抵抗値が1×10Ωを下回ること
になり、また、xが0.25を超えると、比誘電率が8
000を下回り、いずれの場合でも、積層セラミックコ
ンデンサとしての基本特性を満足することができない。
従って、xの値は、0.01≦x≦0.25の範囲が望
ましい。
【0037】前記組成式において、yはZrの原子数を
表すが、このZrは、主にキュリー点を低温側に移動さ
せるシフターとして作用するものである。yが0.1未
満となると誘電損失が8%を超えてしまい、また、yが
0.3を超えると比誘電率が8000を下回り、いずれ
の場合でも積層セラミックコンデ≦ンサとしての基本特
性を満足することができない。従って、yの値は0.1
≦y≦0.3の範囲が望ましい。
【0038】前記組成式において、A/Bが0.99未
満になると、焼成時に誘電体層の異常粒成長が生じると
共に、絶縁抵抗値が1×10Ω未満となってしま
い、また、A/Bが1.00を超えると焼結性が低下
し、緻密な焼結体が得られない。従って、A/Bは0.
99≦A/B<1.00の範囲が好ましい。そして、従
来の誘電体磁器組成物と異なる点は、A/B<1の範囲
で副成分を添加することと、Li酸化化合物を添加する
点にある。
【0039】このように、副成分を添加することによ
り、主成分のA/B<1の範囲での誘電特性を劣化させ
ることなく低温焼成が可能となり、誘電体層を薄層化し
た場合の信頼性不良を低減することができ、長寿命化を
図ることができるのである。
【0040】本発明では、副成分が組成物の全体に対し
て0.001モル%未満となると、焼結性が低下し、緻
密な焼結体が得られない。また、5モル%を超えると、
絶縁抵抗値が1×10Ωを下回ることになり、積層
セラミックコンデンサとしての基本特性を満足すること
ができない。この副成分は、Sr,Y,Gd,Tb,D
y,V,Mo,Zn,Cd,Ti,Sn,W,Mn,S
iおよびPの酸化物および/または焼成後にこれらの酸
化物になる化合物から選ばれる1種類以上、好ましくは
3種類以上含む。この副成分は、組成物全体に対して、
酸化物換算で、0.001〜5モル%含まれる。このよ
うな副成分を上記モル%範囲で含ませることにより、組
成物を焼成して得られる誘電体層を持つセラミックコン
デンサの高温負荷寿命が向上する。
【0041】好ましくは、副成分として、マンガンの酸
化物および/または焼成により酸化物になる化合物を、
酸化物(MnO)換算で0.03〜2モル%、好ましく
は0.2〜1.3モル%、より好ましくは0.2〜0.
4モル%、イットリウムの酸化物および/または焼成に
より酸化物になる化合物を、酸化物(Y)換
算で、0.05〜0.5モル%、好ましくは0.08〜
0.45モル%、より好ましくは0.2〜0.4モル
%、バナジウムの酸化物および/または焼成により酸化
物になる化合物を、酸化物(V)換算で、
0.005〜0.5モル%、好ましくは0.01〜0.
1モル%、タングステンの酸化物および/または焼成に
より酸化物になる化合物を、酸化物(WO)換算
で、0.005〜0.3モル%、好ましくは0.01〜
0.2モル%、より好ましくは0.01〜0.1モル%
程度含有する。このような副成分を上記範囲で含有させ
ることにより、特に低温での焼結性が向上する。また、
上記の副成分以外に、Ni酸化物、Nb酸化物,Mg酸
化物、Co酸化物、Hf酸化物等が、副成分の合計とし
て、0.5重量%程度以下含有されてもよい。
【0042】また、本発明に係る誘電体磁器組成物で
は、組成物全体に対して、Liの酸化化合物および/ま
たは焼成後にLiの酸化物になる化合物(たとえばLi
の珪酸化合物)を、酸化物(LiO)換算で、0.
01〜15モル%を、焼結助材として添加してあること
が好ましい。
【0043】これらの量が、上記範囲を外れると、誘電
体磁器組成物の焼結性が低下すると共に、得られるセラ
ミックコンデンサの電気特性が低下してしまう傾向にあ
る。なお、Li酸化物は、誘電体磁器組成物に対して直
接に添加してもよいが、誘電体磁器組成物を、Liを含
む雰囲気ガス中で焼成することでも、得られる焼結体中
に含有させることができる。ただし、雰囲気ガス中のL
iを、酸化物(Li O)換算で、0.01〜1500
00ppmで含ませることが好ましい。0.01ppm
未満となると焼結性が低下し、緻密な焼結体が得られな
い。また、150000ppmを超えると、絶縁抵抗値
が1×10Ωを下回ることになり、積層セラミック
コンデンサとしての基本特性を満足することができな
い。
【0044】上記の副成分は、予め、500〜1000
℃で仮焼きした後、主成分中に後添加する方法が、低温
焼成には望ましく、この副成分とLiの酸化化合物と
を、主成分中に後添加する方法が、低温焼成にはさらに
望ましい。
【0045】これらの方法により得られた焼成後の誘電
体層は、原子吸光分析等で測定した結果、Liを、その
酸化物(LiO)換算で、好ましくは0.01〜1
0000ppm、さらに好ましくは1〜5000、特に
好ましくは1〜500ppm含有することが好ましい。
【0046】なお、図1に示す誘電体層2の積層数や厚
み等の諸条件は、目的や用途に応じ適宜決定すればよ
い。また、誘電体層2は、グレインと1%以下の粒界相
とで構成され、誘電体層2のグレインの平均粒子径は、
1〜5μm程度あることが好ましい。
【0047】この粒界相は、通常、誘電体材料あるいは
内部電極材料を構成する材質の酸化物や、別途添加され
た材質の酸化物、さらには工程中に不純物として混入す
る材質の酸化物を成分とし、通常ガラスないしガラス質
で構成されている。
【0048】内部電極層3 内部電極層3に含有される導電材は特に限定されない
が、誘電体層2の構成材料が耐還元性を有するため、卑
金属を用いることができる。導電材として用いる卑金属
としては、NiまたはNi合金が好ましい。Ni合金と
しては、Mn,Cr,CoおよびAlから選択される1
種以上の元素とNiとの合金が好ましく、合金中のNi
含有量は95重量%以上であることが好ましい。なお、
NiまたはNi合金中には、P,Fe,Mg等の各種微
量成分が0.1重量%程度以下含まれていてもよい。内
部電極層の厚さは用途等に応じて適宜決定すればよい
が、通常、0.5〜5μm、特に1〜2.5μm程度で
あることが好ましい。
【0049】外部電極4 外部電極4に含有される導電材は特に限定されないが、
通常、CuやCu合金あるいはNiやNi合金等を用い
る。なお、AgやAgーPd合金等も、もちろん使用可
能である。なお、本実施形態では、安価なNi,Cu
や、これらの合金を用いる。外部電極の厚さは用途等に
応じて適宜決定されればよいが、通常、10〜50μm
程度であることが好ましい。
【0050】積層セラミックコンデンサの製造方法 本発明の誘電体磁器組成物を用いた積層セラミックコン
デンサは、従来の積層セラミックコンデンサと同様に、
ペーストを用いた通常の印刷法やシート法によりグリー
ンチップを作製し、これを焼成した後、外部電極を印刷
または転写して焼成することにより製造される。以下、
製造方法について具体的に説明する。
【0051】誘電体層用ペーストは、誘電体原料と有機
ビヒクルとを混練した有機系の塗料であってもよく、水
系の塗料であってもよい。
【0052】誘電体原料には、前述した本発明に係る誘
電体磁器組成物の組成に応じ、主成分を構成する原料
と、副成分を構成する原料と、必要に応じて焼結助剤を
構成する原料とが用いられる。主成分を構成する原料と
しては、Ti,Ba,Sr,Ca,Zrの酸化物および
/または焼成により酸化物になる化合物が用いられる。
副成分を構成する原料としては、Sr,Y,Gd,T
b,Dy,V,Mo,Zn,Cd,Ti,Sn,W,M
n,SiおよびPの酸化物および/または焼成により酸
化物になる化合物から選ばれる1種類以上、好ましくは
3種類以上の単一酸化物または複合酸化物が用いられ
る。焼結助剤を構成する原料としては、Liの酸化物お
よび/または焼成により酸化物になる化合物が用いられ
る。焼成により酸化物になる化合物としては、例えば炭
酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、有機金属化合物等が例示さ
れる。もちろん、酸化物と、焼成により酸化物になる化
合物とを併用してもよい。
【0053】これらの原料粉末は、通常、平均粒子径
0.0005〜5μm程度のものが用いられる。このよ
うな原料粉末から誘電体材料を得るには例えば下記のよ
うにすればよい。
【0054】まず、出発原料を所定の量比に配合し、例
えば、ボールミル等により湿式混合する。次いで、スプ
レードライヤー等により乾燥させ、その後仮焼し、主成
分を構成する上記式の誘電体酸化物を得る。なお、仮焼
は、通常500〜1300℃、好ましくは500〜10
00℃、さらに好ましくは800〜1000℃にて、2
〜10時間程度、空気中にて行う。次いで、ジェットミ
ルあるいはボールミル等にて所定粒径となるまで粉砕
し、誘電体材料を得る。副成分と、焼結助剤(SiO
またはLiOなど)とは、それぞれ主成分とは
別に仮焼きし、得られた誘電体材料に混合される。この
主成分の仮焼き時に、副成分も含めて行うと所望の特性
が得られない。また、副成分とLiOとを含めて行
う仮焼きも低温焼成の効果を半減させる。副成分とLi
Oとを同時に仮焼きすると、Li化合物を生成し、
主成分との反応が著しく低下、あるいは焼成温度が高く
なる。
【0055】誘電体層用ペーストを調整する際に用いら
れる結合剤、可塑剤、分散剤、溶剤等の添加剤は種々の
ものであってよい。また、誘電体層用のペーストにはガ
ラスフリットを添加してもよい。結合剤としては、例え
ばエチルセルロース、アビエチン酸レジン、ポリビニー
ル・ブチラールなど、可塑剤としては、例えばアビエチ
ン酸誘導体、ジエチル蓚酸、ポリエチレングリコール、
ポリアルキレングリコール、フタール酸エステル、フタ
ール酸ジブチルなど、分散剤としては、例えばグリセリ
ン、オクタデシルアミン、トリクロロ酢酸、オレイン
酸、オクタジエン、オレイン酸エチル、モノオレイン酸
グリセリン、トリオレイン酸グリセリン、トリステアリ
ン酸グリセリン、メンセーデン油など、溶剤としては、
例えばトルエン、テルピネオール、ブチルカルビトー
ル、メチルエチルケトンなどが挙げられる。このペース
トを焼成する際に、誘電体材料がペースト全体に対して
占める割合は50〜80重量%程度とし、その他、結合
剤は2〜5重量%、可塑剤は0.01〜5重量%、分散
剤は0.01〜5重量%、溶剤は20〜50重量%程度
とする。そして、前記誘電体材料とこれら溶剤などとを
混合し、例えば3本ロール等で混練してペースト(スラ
リー)とする。
【0056】なお、誘電体層用ペーストを水系の塗料と
する場合には、水溶性のバインダや分散剤などを水に溶
解させた水系ビヒクルと、誘電体原料とを混練すればよ
い。水系ビヒクルに用いる水溶性バインダは特に限定さ
れず、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース、水
溶性アクリル樹脂などを用いればよい。
【0057】内部電極層用ペーストは、各種導電性金属
や合金からなる導電体材料、あるいは焼成後に上記した
導電体材料となる各種酸化物、有機金属化合物、レジネ
ート等と、有機ビヒクルとを混練して調製する。
【0058】内部電極用のペーストを製造する際に用い
る導体材料としては、NiやNi合金さらにはこれらの
混合物を用いる。このような導体材料は、球状、リン片
状等、その形状に特に制限はなく、また、これらの形状
のものが混合したものであってもよい。また、導体材料
の平均粒子径は、通常、0.1〜10μm、好ましくは
0.1〜1μm程度のものを用いればよい。
【0059】有機ビヒクルは、バインダーおよび溶剤を
含有するものである。バインダーとしては、例えばエチ
ルセルロース、アクリル樹脂、ブチラール樹脂等公知の
ものはいずれも使用可能である。バインダー含有量は1
〜5重量%程度とする。溶剤としては、例えばテルピネ
オール、ブチルカルビトール、ケロシン等公知のものは
いずれも使用可能である。溶剤含有量は、ペースト全体
に対して、20〜55重量%程度とする。
【0060】このようにして得られた内部電極層用ペー
ストと誘電体層用ペーストとは、印刷法、転写法、グリ
ーンシート法等により、それぞれ交互に積層される。印
刷法を用いる場合、誘電体層用ペーストおよび内部電極
層用ペーストを、PET等の基板上に積層印刷し、所定
形状に切断した後、基板から剥離して積層体とする。ま
た、シート法を用いる場合、誘電体層用ペーストを用い
てグリーンシートを形成し、この上に内部電極層用ペー
ストを印刷した後、これらを積層して積層体とする。
【0061】次に、このようにして得られた積層体を、
所定の積層体サイズに切断した後、脱バインダ処理およ
び焼成を行う。そして、誘電体層2を再酸化させるた
め、熱処理を行う。
【0062】脱バインダ処理は、通常の条件で行えばよ
いが、内部電極層の導電体材料にNiやNi合金等の卑
金属を用いる場合、特に下記の条件で行うことが好まし
い。 昇温速度:5〜300℃/時間、特に10〜50℃/時
間、 保持温度:200〜400℃、特に250〜350℃、 保持時間:0.5〜20時間、特に1〜10時間、 雰囲気 :空気中。
【0063】焼成条件は、下記の条件が好ましい。 昇温速度:50〜500℃/時間、特に200〜300
℃/時間、 保持温度:1000〜1200℃、特に1100〜12
00℃、 保持時間:0.5〜8時間、特に1〜3時間、 冷却速度:50〜500℃/時間、特に200〜300
℃/時間、 雰囲気ガス:加湿したNとHとの混合ガス等。
【0064】ただし、焼成時の空気雰囲気中の酸素分圧
は、10−7atm以下、特に10 −7〜10−13
atmにて行うことが好ましい。前記範囲を超えると、
内部電極層が酸化する傾向にあり、また、酸素分圧があ
まり低すぎると、内部電極層の電極材料が異常焼結を起
こし、途切れてしまう傾向にある。
【0065】焼成後の熱処理は、保持温度または最高温
度を900〜1100℃として行うことが好ましい。熱
処理時の保持温度または最高温度が、前記範囲未満では
誘電体材料の酸化が不十分なために寿命が短くなる傾向
にあり、前記範囲をこえると内部電極のNiが酸化し、
容量が低下するだけでなく、誘電体素地と反応してしま
い、寿命も短くなる傾向にある。熱処理の際の酸素分圧
は、10−8atm以上、より好ましくは10−4〜1
−7atm が好ましい。前記範囲未満では、誘電体
層2の再酸化が困難であり、前記範囲をこえると内部電
極層3が酸化する傾向にある。そして、そのほかの熱処
理条件は下記の条件が好ましい。
【0066】保持時間:0〜6時間、特に2〜5時間、 冷却速度:50〜500℃/時間、特に100〜300
℃/時間、 雰囲気用ガス:加湿したNガス等。
【0067】なお、Nガスや混合ガス等を加湿する
には、例えばウェッター等を使用すればよい。この場
合、水温は0〜75℃程度が好ましい。また脱バインダ
処理、焼成および熱処理は、それぞれを連続して行って
も、独立に行ってもよい。これらを連続して行なう場
合、脱バインダ処理後、冷却せずに雰囲気を変更し、続
いて焼成の際の保持温度まで昇温して焼成を行ない、次
いで冷却し、熱処理の保持温度に達したときに雰囲気を
変更して熱処理を行なうことが好ましい。一方、これら
を独立して行なう場合、焼成に際しては、脱バインダ処
理時の保持温度までNガスあるいは加湿したN
ガス雰囲気下で昇温した後、雰囲気を変更してさらに昇
温を続けることが好ましく、アニール時の保持温度まで
冷却した後は、再びNガスあるいは加湿したN
ガス雰囲気に変更して冷却を続けることが好ましい。ま
た、アニールに際しては、Nガス雰囲気下で保持温
度まで昇温した後、雰囲気を変更してもよく、アニール
の全過程を加湿したNガス雰囲気としてもよい。
【0068】このようにして得られた焼結体には、例え
ばバレル研磨、サンドプラスト等にて端面研磨を施し、
外部電極用ペーストを焼きつけて外部電極4を形成す
る。外部電極用ペーストの焼成条件は、例えば、加湿し
たNとHとの混合ガス中で600〜800℃に
て10分間〜1時間程度とすることが好ましい。そし
て、必要に応じ、外部電極4上にめっき等を行うことに
よりパッド層を形成する。なお、外部電極用ペースト
は、上記した内部電極層用ペーストと同様にして調製す
ればよい。
【0069】このようにして製造された本発明の積層セ
ラミックコンデンサは、ハンダ付等によりプリント基板
上などに実装され、各種電子機器等に使用される。
【0070】なお、本発明は、上述した実施形態に限定
されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変する
ことができる。たとえば、上述した実施形態では、本発
明に係る電子部品として積層セラミックコンデンサを例
示したが、本発明に係る電子部品としては、積層セラミ
ックコンデンサに限定されず、上記組成の誘電体磁器組
成物で構成してある誘電体層を有するものであれば何で
も良い。
【0071】
【実施例】以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づ
き説明するが、本発明は、これら実施例に限定されな
い。
【0072】実施例1 出発原料として、ゾルゲル合成により生成された{{B
(1−x) Ca }O}(Ti(1−y)
で示される組成の誘電体酸化物から成
る主成分を用いた。主成分を示す式中の組成比を示す記
号A,B,x,yが、0.990≦A/B<1.00
0、0.01≦x≦0.25、0.1≦y≦0.3の関
係の関係にあった。なお、上記誘電体酸化物の平均粒径
は、0.4μm、最大粒径は1.5μmであった。
【0073】また、副成分であるMnCO、Y
、VおよびWO とSiOとを、
添加物(添加物全体の平均粒径0.5μm、最大粒径
3.3)として、表1に示すモル比にて、各々ボールミ
ルで16時間湿式粉砕し、900℃および3時間の条件
で、大気雰囲気中で仮焼きし、その後、解砕のためにボ
ールミルで20時間湿式粉砕し、副成分の添加物とし
た。そして、主成分と副成分とLiCOを、ボ
ールミルで16時間、湿式粉砕し、表1に示す試料番号
1〜34のチタン酸バリウム系の誘電体材料を得た。ま
た、副成分にLi COも加えて仮焼きした以外
は、前記と同様の方法で、表1に示す試料番号35のチ
タン酸バリウム系の誘電体材料を得た。
【0074】
【表1】
【0075】これら試料番号1〜35の誘電体材料の各
々を用いて、下記に示される配合比にて、ジルコニア製
ボールを用いてボールミル混合し、スラリー化して誘電
体層用ペーストとした。すなわち、誘電体材料:100
重量部、アクリル系樹脂:5.0重量部、フタル酸ベン
ジルブチル:2.5重量部、ミネラルスピリット:6.
5重量部、アセトン:4.0重量部、トリクロロエタ
ン:20.5重量部、塩化メチレン:41.5重量部の
配合比である。
【0076】次に、下記に示される配合比にて、3本ロ
ールにより混練し、スラリー化して内部電極用ペースト
とした。すなわち、Ni:44.6重量部、テルピネオ
ール:52重量部、エチルセルロース:3重量部、ベン
ゾトリアゾール:0.4重量部である。これらのペース
トを用い、以下のようにして、図1に示される積層型セ
ラミックチップコンデンサ1を製造した。
【0077】まず、誘電体層用ペーストを用いてキャリ
アフィルム上に16μm厚のシートを、ドクターブレー
ド法などで形成し、この上に内部電極用ペーストを用い
て、内部電極を印刷した。この後、キャリヤフィルムか
ら上記のシートを剥離し、内部電極が印されたシートを
複数枚積層し、加圧接着した。なお、誘電体層2の積層
数は10層であった。次いで、積層体を所定サイズに切
断した後、脱バインダ処理、焼成および熱処理を連続し
て下記の条件にて行った。
【0078】脱バインダ処理 昇温速度:20℃/時間、 保持温度:250℃、 保持時間:2時間、 雰囲気用ガス:air。
【0079】焼成 昇温速度:200℃/時間、 保持温度:各々、表2に示す温度、 保持時間:2時間、 冷却温度:300℃/時間、 雰囲気用ガス:加湿したNとHの混合ガス、 酸素分圧:10−8atm。
【0080】熱処理 保持温度:1000℃、 保持時間:3時間、 冷却温度:300℃/時間、 雰囲気用ガス:加湿したNガス、 酸素分圧:10−7atm。
【0081】なお、それぞれの雰囲気用ガスの加湿に
は、ウェッターを用い、水温0〜75℃にて行った。
【0082】得られた焼結体の端面をサンドブラストに
て研磨した後、In−Ga合金を塗布して、試験用電極
を形成した。このようにして製造した積層型コンデンサ
1のサイズは、3.2mm×1.6mm×0.6mmで
あり、誘電体層2の厚みは10μm、内部電極3の厚み
は2μmであった。
【0083】この積層型コンデンサの特性を、基準温度
25℃でデジタルLCRメータ(YHP製4274A)
にて、周波数1KHz、測定電圧1.0Vrmsの信号
を入力し、静電容量および誘電損失tanδを測定し
た。誘電体磁器の比誘電率εrは、積層型コンデンサの
誘電体磁器の試料寸法と静電容量を考慮して算出した。
【0084】なお、絶縁抵抗値は、積層型コンデンサに
10Vの直流電圧を1分間印加して測定した。また、破
壊電圧は、3V/Sで昇圧し、100mA以上の電流が
流れた電圧を測定した。評価として、比誘電率εrは、
小型で高誘電率のコンデンサを作成するために重要な特
性であり、8000以上を良好とした。誘電損失tan
δは、誘電体層2の薄膜化を実現し、小型で高誘電率の
コンデンサを作成するために重要な特性であり、8%以
下を良好とした。絶縁抵抗値は1×10Ω以上を良
好とした。破壊電圧は、100V(7V/μm)以上を
良好とした。また、これらの特性値は、コンデンサの試
料数n=10個を用いて測定した値の平均値から求め
た。
【0085】また、コンデンサの高温負荷寿命(絶縁抵
抗の加速寿命)を、200℃で8V/μmの直流電圧の
印加状態に保持することにより測定した。この高温負荷
寿命は、10個の積層型コンデンサ試料について行い、
最初にショートしたコンデンサの、印加開始からショー
トに至るまでの時間を測定することにより評価した。高
温負荷寿命は、誘電体層を薄層化する際に特に重要とな
るものであり、印加開始からショートに至るまでの時間
が40時間以上を良品とした。
【0086】また、各コンデンサ試料における誘電体層
中のLiの含有量を、LiO換算で、原子吸光分析
にて測定した。さらに、コンデンサ試料を切断し、内部
電極の途切れがあるか否かを観察した。これらの結果を
表2に示した。
【0087】
【表2】
【0088】表1および表2において、本発明の特に好
ましい実施例に相当する試料番号には、*印を付けた。
表1および表2から分かるように、本発明の積層型セラ
ミックチップコンデンサは、焼結助剤としてLi
を用いたことにより、1140℃という低温で焼成して
も、比誘電率εrが8000以上となった。また、焼結
助剤としてのLiOを添加していないもの(試料番
号2および3)は、緻密な焼結体が得られていないこと
から、本発明の積層型セラミックチップコンデンサは、
低温での焼結性が向上していることが分かる。
【0089】副成分の仮焼き温度について、別に実験し
たところ、1200℃以上の高温で焼成すると副成分の
解砕が困難になり、不適正であることが判明した。
【0090】また、試料番号35のように、副成分とL
iとを同時に予め仮焼きすると、低温焼成の効果が激減
することが確認された。副成分とLiとを同時に予め仮
焼きすると、試料番号35と試料番号20とを比較して
分かるように、近い組成でも、焼成温度が100℃以上
に上昇し、電極の途切れも観察されることが確認され
た。
【0091】
【発明の効果】以上説明してきたように、本発明によれ
ば、非酸化性雰囲気で1200℃以下の温度での焼成が
可能であるにもかかわらず、高い誘電率を有する誘電体
磁器組成物およびその製造方法を提供することができ
る。また、本発明によれば、低温焼成が可能で、しかも
絶縁抵抗の加速寿命が向上されたチップコンデンサなど
の電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミ
ックコンデンサの断面図である。
【符号の説明】
1…積層セラミックコンデンサ 10…コンデンサ素子本体 2…誘電体層 3…内部電極層 4…外部電極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 佐藤 陽 東京都中央区日本橋1丁目13番1号 ティ ーディーケイ株式会社内 Fターム(参考) 4G031 AA01 AA04 AA05 AA06 AA07 AA08 AA11 AA12 AA13 AA17 AA18 AA19 AA24 AA26 AA30 AA31 AA33 BA09 CA03 5E001 AB03 AC03 AC09 AD03 AE00 AE01 AE02 AE03 AE04 AF06 AH01 AH05 AH06 AH08 AH09 AJ01 AJ02 5G303 AA01 AB01 AB06 AB14 AB15 AB20 BA12 CA01 CB03 CB06 CB07 CB16 CB18 CB24 CB30 CB31 CB32 CB35 CB36 CB37 CB38 CB39 CB40 CB41 CB43 DA04 DA06

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 {{Ba(1−x) Ca}O}
    (Ti(1−y) Zrで示される組
    成の誘電体酸化物を含む主成分と、 Sr,Y,Gd、Tb,Dy,V,Mo,Zn,Cd,
    Ti,Sn,W,Mn,SiおよびPの酸化物および/
    または焼成後にこれらの酸化物になる化合物から選ばれ
    る1種類以上を含む副成分とを有し、 前記副成分が、組成物全体に対して、酸化物換算で、
    0.001〜5モル%含まれ、 前記主成分を示す式中の組成比を示す記号A,B,x,
    yが、 0.990≦A/B<1.000、 0.01≦x≦0.25、 0.1≦y≦0.3の関係にある誘電体磁器組成物。
  2. 【請求項2】 組成物全体に対して、Liの酸化化合物
    および/または焼成後にLiの酸化化合物となる化合物
    を、酸化物(LiO)換算で0.01〜15モル%
    含有することを特徴とする請求項1記載の誘電体磁器組
    成物。
  3. 【請求項3】 焼成後の誘電体磁器組成物が、Liの酸
    化化合物および/または焼成後にLiの酸化化合物とな
    る化合物を、酸化物(LiO)換算で0.01〜1
    0000ppm含有する特徴とする請求項1または請求
    項2記載の誘電体磁器組成物。
  4. 【請求項4】 Sr,Y,Gd、Tb,Dy,V,M
    o,Zn,Cd,Ti,Sn,W,Mn,SiおよびP
    の酸化物および/または焼成後にこれらの酸化物になる
    化合物から選ばれる1種類以上を含む副成分を予め50
    0〜1000℃で仮焼きする工程と、 この仮焼きで得られた粉体と、{{Ba(1−x)
    }O}(Ti(1−y) Zr
    で示される組成の誘電体酸化物を含む主成分とを混
    合する工程とを有する誘電体磁器組成物の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記仮焼き工程で得られた粉末と、Li
    の酸化化合物および/または焼成後にLiの酸化化合物
    となる化合物とを混合する工程をさらに有する請求項4
    に記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
  6. 【請求項6】 誘電体層を有する電子部品であって、 前記誘電体層が、 {{Ba(1−x) Ca}O}(Ti
    (1−y) Zr で示される組成の誘電
    体酸化物を含む主成分と、 Sr,Y,Gd、Tb,Dy,V,Mo,Zn,Cd,
    Ti,Sn,W,Mn,SiおよびPの酸化物および/
    または焼成後にこれらの酸化物になる化合物から選ばれ
    る1種類以上を含む副成分とを有し、 前記副成分が、組成物全体に対して、酸化物換算で、
    0.001〜5モル%含まれ、 前記主成分を示す式中の組成比を示す記号A,B,x,
    yが、 0.990≦A/B<1.000、 0.01≦x≦0.25、 0.1≦y≦0.3の関係にある電子部品。
  7. 【請求項7】 前記誘電体層が、Liの酸化化合物およ
    び/または焼成後にLiの酸化化合物となる化合物を、
    酸化物(LiO)換算で0.01〜10000pp
    m含有する特徴とする請求項6に記載の電子部品。
  8. 【請求項8】 Sr,Y,Gd、Tb,Dy,V,M
    o,Zn,Cd,Ti,Sn,W,Mn,SiおよびP
    の酸化物および/または焼成後にこれらの酸化物になる
    化合物から選ばれる1種類以上を含む副成分を予め50
    0〜1000℃で仮焼きする工程と、 この仮焼きで得られた粉体と、{{Ba(1−x)
    }O}(Ti(1−y) Zr
    で示される組成の誘電体酸化物を含む主成分とを混
    合する工程と、 混合された粉体を用いて誘電体ペーストを作製する工程
    と、 内部電極用ペーストを作製する工程と、 前記誘電体ペーストおよび内部電極用ペーストを交互に
    積層する工程と、 交互に積層された前記誘電体ペーストおよび内部電極用
    ペーストを焼成する工程とを有する電子部品の製造方
    法。
  9. 【請求項9】 前記仮焼き工程で得られた粉末と、Li
    の酸化化合物および/または焼成後にLiの酸化化合物
    となる化合物とを混合する工程をさらに有する請求項8
    に記載の電子部品の製造方法。
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