JP3417930B2 - 誘電体磁器組成物の製造方法および電子部品の製造方法 - Google Patents

誘電体磁器組成物の製造方法および電子部品の製造方法

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JP3417930B2
JP3417930B2 JP2001075929A JP2001075929A JP3417930B2 JP 3417930 B2 JP3417930 B2 JP 3417930B2 JP 2001075929 A JP2001075929 A JP 2001075929A JP 2001075929 A JP2001075929 A JP 2001075929A JP 3417930 B2 JP3417930 B2 JP 3417930B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、たとえば積層型セ
ラミックコンデンサの誘電体層などとして用いられる誘
電体磁器組成物の製造方法と、その誘電体磁器組成物を
誘電体層として用いる電子部品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】電子部品の一例である積層型セラミック
コンデンサは、所定の誘電体磁器組成物からなるグリー
ンシート上に導電ペーストを印刷し、該導電ペーストを
印刷した複数枚のグリーンシートを積層し、グリーンシ
ートと内部電極とを一体的に焼成し、形成されている。
【0003】従来の誘電体磁器組成物は、低酸素分圧で
ある中性または還元性雰囲気下で焼成すると還元され、
半導体化する性質を有していた。このため、積層型セラ
ミックコンデンサを製造するに際しては、高酸素分圧で
ある酸化性雰囲気下で焼成することを余儀なくされてい
た。これに伴い、誘電体磁器組成物と同時に焼成される
内部電極材料としては、該誘電体磁器組成物が焼結する
温度で溶融せず、酸化性雰囲気下で焼成しても酸化され
ない高価な貴金属(たとえばパラジウムや白金など)を
用いる必要があり、製造される積層型セラミックコンデ
ンサの低価格化に対して大きな妨げとなっていた。
【0004】これに対して、安価な卑金属(たとえばニ
ッケルや銅など)を内部電極の材料として用いるために
は、中性または還元性雰囲気下において低温で焼成して
も半導体化せず、すなわち耐還元性に優れ、焼成後には
十分な比誘電率と優れた誘電特性(たとえば容量温度変
化率が小さいなど)とを有する誘電体磁器組成物を開発
することが必要である。
【0005】従来、内部電極の材料として卑金属を用い
ることができる誘電体磁器組成物として種々の提案がな
されている。
【0006】たとえば、特開昭63−224108号公
報では、(Sr1−x Ca (Ti1−y
Zr)Oで示される組成の誘電体酸化物(ただ
し、0.30≦x≦0.50、0.03≦y≦0.2
0、0.95≦m≦1.08)を主成分とし、この主成
分100重量部に対して、副成分として、MnをMnO
換算で0.01〜2.00重量部、SiO
0.10〜4.00重量部含有する誘電体磁器組成物が
開示してある。
【0007】また、特開昭63−224109号公報で
は、前記主成分に対し、前記MnおよびSiOに加
えて、さらにZnOを0.01〜1.00重量部含有す
る誘電体磁器組成物が開示してある。
【0008】さらに、特開平4−206109号公報で
は、(Sr1−x Ca(Ti1−y Zr
)Oで示される組成の誘電体酸化物(ただし、
0.30≦x≦0.50、0.00≦y≦0.20、
0.95≦m≦1.08)を主成分とし、その粉末粒径
を0.1〜1.0μmの範囲にしてある誘電体磁器組成
物が開示してある。
【0009】さらにまた、特公昭62−24388号公
報では、(MeO)TiOで示される組成の誘電
体酸化物(ただし、MeはSr、CaおよびSr+Ca
から選択された金属、kは1.00〜1.04)を主成
分とし、この主成分100重量部に対して、ガラス成分
として、LiO、M(ただし、MはBaO、CaO
およびSrOから選択される少なくとも1種の金属酸化
物)およびSiO を所定のモル比で用いたものを0.
2〜10.0重量部含有する誘電体磁器組成物が開示し
てある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
の公報記載の誘電体磁器組成物では、特に薄層化した場
合に絶縁抵抗(IR)が劣化しやすく、該誘電体磁器組
成物を用いて卑金属製内部電極を有する積層型セラミッ
クコンデンサを製造した場合には、得られる積層型セラ
ミックコンデンサの初期絶縁抵抗の不良率が増加する問
題があった。
【0011】本発明の目的は、焼成時の耐還元性に優
れ、焼成後には優れた容量温度特性を有し、特に薄層化
した場合でも絶縁抵抗が劣化し難い誘電体磁器組成物の
製造方法、および初期絶縁抵抗の不良率の発生が少ない
チップコンデンサなどの電子部品の製造方法を提供する
ことである。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、第1の観点に係る誘電体磁器組成物の製造方法は、
組成式(AO)・BOで表され、前記組成式中
の要素AがSr、CaおよびBaから選ばれる少なくと
も1つの元素であり、要素BがTiおよびZrの少なく
とも1つの元素である主成分を有する誘電体磁器組成物
を製造する方法であって、組成式(AO)m’・BO
で表され、前記組成式中のモル比m’がm’<mで
ある原料を用いて、前記誘電体磁器組成物を製造するこ
とを特徴とする。
【0013】好ましくは、前記原料に前記要素Aを含む
物質を添加した後に、より好ましくは前記要素Bを含む
物質を添加せずに前記要素Aを含む物質を添加した後に
焼成する。
【0014】上記目的を達成するために、特に好ましい
態様は、以下の第2の観点に係る誘電体磁器組成物の製
造方法である。
【0015】第2の観点に係る誘電体磁器組成物の製造
方法は、組成式{(Sr1−x Ca)O}
(Ti1−y Zr)O で表され、前記組成式中
の記号xが0≦x≦1.00であり、記号yが0≦y≦
0.20である主成分を有する誘電体磁器組成物を製造
する方法であって、組成式{(Sr1−x Ca
O}m’・(Ti1−y Zr)O で表され、前
記組成式中のモル比m’がm’<mである原料を用い
て、前記誘電体磁器組成物を製造することを特徴とす
る。
【0016】好ましくは、前記原料にSrおよびCaの
少なくとも1つの元素を含む物質を添加した後に、より
好ましくはTiを含む物質を添加せずにSrおよびCa
の少なくとも1つの元素を含む物質を添加した後に焼成
する。
【0017】好ましくは、前記組成式中のモル比mおよ
びm’の関係が、m−m’<0.085である。
【0018】好ましくは、前記誘電体磁器組成物中の主
成分における組成式中のモル比mが0.94<m<1.
08である。
【0019】上記目的を達成するために、第1の観点に
係る電子部品の製造方法は、組成式(AO)・BO
で表され、前記組成式中の要素AがSr、Caおよ
びBaから選ばれる少なくとも1つの元素であり、要素
BがTiおよびZrの少なくとも1つの元素である主成
分を有する誘電体磁器組成物で構成してある誘電体層を
有する電子部品を製造する方法であって、組成式(A
O)m’・BOで表され、前記組成式中のモル比
m’がm’<mである原料を用いて、前記誘電体磁器組
成物を製造することを特徴とする。
【0020】上記目的を達成するために、特に好ましい
態様は、以下の第2の観点に係る電子部品の製造方法で
ある。
【0021】第2の観点に係る電子部品の製造方法は、
組成式{(Sr1−x Ca)O}・(Ti
1−y Zr)O で表され、前記組成式中の記号
xが0≦x≦1.00であり、記号yが0≦y≦0.2
0である主成分を有する誘電体磁器組成物で構成してあ
る誘電体層を有する電子部品を製造する方法であって、
組成式{(Sr1−x Ca)O}m’・(Ti
1−y Zr)O で表され、前記組成式中のモル
比m’がm’<mである原料を用いて、前記誘電体磁器
組成物を製造することを特徴とする。
【0022】
【作用】組成式(AO)・BOで表される主成
分を有する誘電体磁器組成物を、通常の方法で製造した
場合には、特に薄層化した場合に絶縁抵抗不良が発生す
ることが本発明者らにより明らかにされている。その原
因は必ずしも明らかではないが、焼成後の誘電体磁器組
成物中に、要素Bがリッチとなる偏析相が生じ、誘電体
の絶縁抵抗および誘電率が悪化すると考えられる。
【0023】第1の観点に係る誘電体磁器組成物の製造
方法では、焼成後のモル比mより小さいモル比m’をも
つ組成式(AO)m’・BOで表される原料を用い
て前記誘電体磁器組成物を製造することにより、焼成時
の耐還元性に優れ、焼成後には優れた容量温度特性を有
し、特にたとえば4μm程度に薄層化した場合に絶縁抵
抗が劣化し難い誘電体磁器組成物を製造できる。m’<
mである原料を用いることにより、焼成前に要素Bを後
添加する必要がなくなり、上記した要素Bがリッチな偏
析相の発生を防止できるためと考えられる。
【0024】第2の観点に係る誘電体磁器組成物の製造
方法では、焼成後のモル比mより小さいモル比m’をも
つ組成式{(Sr1−x Ca)O}m’・(Ti
1− Zr)Oで表される原料を用いて前記
誘電体磁器組成物を製造することにより、同様の理由に
より要素Bがリッチな偏析相の発生を防止でき、これに
より、焼成時の耐還元性に優れ、焼成後には優れた容量
温度特性を有し、特にたとえば4μm程度に薄層化した
場合でも絶縁抵抗が劣化し難い誘電体磁器組成物を製造
できる。これらのことは、本発明者等により初めて見出
された。
【0025】本発明の第1および第2の観点に係る電子
部品の製造方法では、初期絶縁抵抗の不良率の発生が少
ないチップコンデンサなどの電子部品を製造できる。
【0026】
【発明の実施の形態】以下、本発明を、図面に示す実施
形態に基づき説明する。図1は本発明の一実施形態に係
る積層セラミックコンデンサの断面図、図2(A)〜
(C)は誘電体層の厚みを代えたときの、原料m’の値
と初期絶縁抵抗の不良率との関係を示すグラフである。
【0027】本発明に係る誘電体磁器組成物の製造方法
について説明する前に、まず、積層セラミックコンデン
サについて説明する。
【0028】積層セラミックコンデンサ 図1に示されるように、本発明の一実施形態に係る電子
部品としての積層セラミックコンデンサ1は、誘電体層
2と内部電極層3とが交互に積層された構成のコンデン
サ素子本体10を有する。
【0029】このコンデンサ素子本体10の両端部に
は、素子本体10の内部で交互に配置された内部電極層
3と各々導通する一対の外部電極4が形成してある。コ
ンデンサ素子本体10の形状に特に制限はないが、通
常、直方体状とされる。また、その寸法にも特に制限は
なく、用途に応じて適当な寸法とすればよいが、通常、
(0.6〜5.6mm)×(0.3〜5.0mm)×
(0.3〜1.9mm)程度である。
【0030】内部電極層3は、各端面がコンデンサ素子
本体10の対向する2端部の表面に交互に露出するよう
に積層してある。一対の外部電極4は、コンデンサ素子
本体10の両端部に形成され、交互に配置された内部電
極層3の露出端面に接続されて、コンデンサ回路を構成
する。
【0031】誘電体層2 誘電体層2は、本発明の製造方法により得られる誘電体
磁器組成物を含有する。本発明の一実施形態に係る製造
方法により得られる誘電体磁器組成物は、組成式(A
O)・BOでを具体化した組成式{(Sr
1−x Ca)O}・(Ti1−y
)Oで表される主成分を有する。この際、酸
素(O)量は、上記式の化学量論組成から若干偏倚して
もよい。
【0032】上記式中、記号xは、0≦x≦1.00、
好ましくは0.30≦x≦0.50である。xはCa原
子数を表し、x、すなわちCa/Sr比を変えることで
結晶の相転移点を任意にシフトさせることが可能とな
る。そのため、容量温度係数や比誘電率を任意に制御す
ることができる。xを上記範囲とすると、結晶の相転移
点が室温付近に存在し、静電容量の温度特性を向上させ
ることができる。ただし、本発明においては、SrとC
aとの比率は任意であり、一方だけを含有するものであ
ってもよい。
【0033】上記式中、記号yは、0≦y≦0.20、
好ましくは0≦y≦0.10である。yを0.20以下
とすることにより比誘電率の低下が防止される。yはZ
r原子数を表すが、TiOに比べ還元されにくいZ
rOを置換していくことにより耐還元性がさらに増
していく傾向がある。ただし、本発明においては、必ず
しもZrを含まなくてもよく、Tiだけを含有するもの
であってもよい。
【0034】上記式中、モル比mは、0.94<m<
1.08、好ましくは0.970≦m≦1.030であ
る。mを0.94より大きくすることにより還元雰囲気
下での焼成に対して半導体化を生じることが防止され、
mを1.08未満にすることにより焼成温度を高くしな
くても緻密な焼結体を得ることができる。
【0035】誘電体磁器組成物には、V、Nb、W、T
aおよびMoの酸化物および/または焼成後にこれらの
酸化物になる化合物から選ばれる少なくとも1つを含む
第1副成分が所定量添加してあってもよい。こうした第
1副成分を所定量添加することにより、誘電特性を劣化
させることなく低温焼成が可能となり、誘電体層を薄層
化した場合でも絶縁抵抗の加速寿命(高温負荷寿命)を
向上しうる。第1副成分を添加する場合において、前記
主成分100モルに対する第1副成分の比率は、酸化物
中の金属元素換算で、0.01モル≦第1副成分<2モ
ル、好ましくは0.04モル≦第1副成分≦0.6モル
である。
【0036】誘電体磁器組成物には、Mnの酸化物(た
とえばMnO)および/または焼成によりMnの酸化物
になる化合物(たとえばMnCO)を含む第2副成
分が所定量添加してあってもよい。この第2副成分は、
焼結を促進する効果と高温負荷寿命を改善する効果を有
し、しかも誘電体層2をたとえば4μm程度に薄層化し
たときの初期絶縁抵抗(IR)不良率を低下させる効果
も有する。第2副成分を添加する場合において、前記主
成分100モルに対する第2副成分の比率は、酸化物中
の金属元素換算で、0モル≦第2副成分<4モル、好ま
しくは0.05モル≦第2副成分≦1.4モルである。
【0037】誘電体磁器組成物には、SiO、MO
(ただし、Mは、Ba、Ca、SrおよびMgから選ば
れる少なくとも1つの元素)、LiOおよびB
から選ばれる少なくとも1つを含む第3副成分が所
定量添加してあってもよい。この第3副成分は、主とし
て焼結助剤として作用する。第3副成分を添加する場合
において、前記主成分100モルに対する前記第3副成
分の比率は、酸化物換算で、0モル<第3副成分<15
モル、好ましくは0.2モル≦第3副成分≦6モルであ
る。
【0038】誘電体磁器組成物には、Rの酸化物(ただ
し、Rは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、
Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Y
bおよびLuから選択される少なくとも1種)を含む第
4副成分が所定量添加してあってもよい。この第4副成
分は、高温負荷寿命を改善する効果を有する。第4副成
分を添加する場合において、前記主成分100モルに対
する前記第4副成分の比率は、酸化物中のR換算で、
0.02モル≦第4副成分<2モル、好ましくは0.0
2モル≦第4副成分≦0.6モルである。
【0039】なお、図1に示す誘電体層2の積層数や厚
み等の諸条件は、目的や用途に応じ適宜決定すればよ
い。また、誘電体層2は、グレインと粒界相とで構成さ
れ、誘電体層2のグレインの平均粒子径は、1〜5μm
程度あることが好ましい。この粒界相は、通常、誘電体
材料あるいは内部電極材料を構成する材質の酸化物や、
別途添加された材質の酸化物、さらには工程中に不純物
として混入する材質の酸化物を成分とし、通常ガラスな
いしガラス質で構成されている。
【0040】内部電極層3 内部電極層3に含有される導電材は、特に限定されない
が、誘電体層2の構成材料が耐還元性を有するため、卑
金属を用いることができる。導電材として用いる卑金属
としては、NiまたはNi合金が好ましい。Ni合金と
しては、Mn,Cr,CoおよびAlから選択される1
種以上の元素とNiとの合金が好ましく、合金中のNi
含有量は95重量%以上であることが好ましい。なお、
NiまたはNi合金中には、P,Fe,Mg等の各種微
量成分が0.1重量%程度以下含まれていてもよい。
【0041】内部電極層の厚さは用途等に応じて適宜決
定すればよいが、通常、0.5〜5μm、特に1〜2.
5μm程度であることが好ましい。
【0042】外部電極4 外部電極4に含有される導電材は、特に限定されない
が、通常、CuやCu合金あるいはNiやNi合金等を
用いる。なお、AgやAg−Pd合金等も、もちろん使
用可能である。なお、本実施形態では、安価なNi,C
uや、これらの合金を用いる。外部電極の厚さは用途等
に応じて適宜決定されればよいが、通常、10〜50μ
m程度であることが好ましい。
【0043】積層セラミックコンデンサの製造方法 本発明に係る誘電体磁器組成物の製造方法を用いて製造
される積層セラミックコンデンサ1は、ペーストを用い
た通常の印刷法やシート法によりグリーンチップを作製
し、これを焼成した後、外部電極を印刷または転写して
焼成することにより製造される。以下、製造方法につい
て具体的に説明する。
【0044】誘電体層用ペースト、内部電極用ペース
ト、外部電極用ペーストをそれぞれ製造する。
【0045】誘電体層用ペースト まず、誘電体層用ペーストに含まれる誘電体磁器組成物
原料を準備する。誘電体磁器組成物原料には、主成分原
料と、必要に応じて添加される副成分(第1〜第4副成
分)原料とが用いられる。
【0046】第1副成分原料としては、V、Nb、W、
TaおよびMoの酸化物および/または焼成後にこれら
の酸化物になる化合物から選ばれる1種類以上の単一酸
化物または複合酸化物が用いられる。第2副成分原料と
しては、Mnの酸化物および/または焼成によりMnの
酸化物になる化合物の単一酸化物または複合酸化物が用
いられる。第3副成分原料としては、SiO、MO
(ただし、Mは、Ba、Ca、SrおよびMgから選ば
れる少なくとも1種の元素)、LiOおよびB
から選ばれる少なくとも1種が用いられる。第4
副成分原料としては、Rの酸化物(ただし、Rは、S
c、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、
Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLu
から選択される少なくとも1種)が用いられる。
【0047】本実施形態では、主成分原料として、組成
式{(Sr1−x Ca)O} m’・(Ti
1−y Zr)Oで表される原料を用いる。前
記組成式中のモル比m’は、組成式{(Sr1−x
)O}・(Ti1−y Zr)O
表される焼成後の誘電体酸化物のモル比mより小さい
(m’<m)。m’をmより小さくすることで、上述し
た誘電体層2を、たとえば4μm程度に薄層化した場合
でも絶縁抵抗が劣化し難く、初期絶縁抵抗の不良率の発
生を少なくできる。
【0048】モル比m’は、モル比mよりも小さければ
よく、その程度は特に限定されないが、好ましくはm−
m’<0.085、より好ましくはm−m’<0.04
である。m−m’≧0.085となると、1380℃の
高温でも焼結体の緻密化ができなくなるおそれがある。
m−m’<0.085とすることにより、誘電体層を薄
層化した場合に得られる上記効果が一層顕著となるメリ
ットがある。
【0049】このような組成式{(Sr1−x Ca
)O}m’・(Ti1−y Zr )Oで表
される原料は、いわゆる固相法の他、いわゆる液相法に
より得られるものであってもよい。固相法は、SrCO
、CaCO、TiO、ZrOを出発原
料として用いる場合、これらを所定量秤量して混合、仮
焼き、粉砕することにより、原料を得る方法である。液
相法としては、しゅう酸塩法、水熱合成法、ゾルゲル法
などが挙げられる。なお、aモルのSrTiO
と、bモルのCat’TiOと、cモルのSr
t’’ ZrOと、dモルのCat’’’ZrO
を組み合わせて原料を調合する場合には、m’は、
m’=(at+bt’+ct’’+dt’’’)/(a
+b+c+d)で求めることができる。
【0050】以下、固相法による仮焼きを例に挙げて説
明する。まず、所定のm’となるように、たとえばSr
CO、CaCO、TiO、ZrOなど
の各原料を秤量して混合、乾燥することにより、仮焼き
前原料を準備する。
【0051】次いで、準備された仮焼前粉体を仮焼きす
る。仮焼き条件は、特に限定されないが、次に示す条件
で行うことが好ましい。昇温速度は、好ましくは50〜
400℃/時間、より好ましくは100〜300℃/時
間である。保持温度は、好ましくは700〜1300
℃、より好ましくは700〜1200℃である。温度保
持時間は、好ましくは0.5〜6時間、より好ましくは
1〜3時間である。処理雰囲気は、好ましくは空気中お
よび窒素中である。
【0052】次いで、仮焼きされた仮焼済粉末は、アル
ミナロールなどにより粗粉砕された後、最終製品の組成
式{(Sr1−x Ca)O}・(Ti
1−y Zr)Oを達成するための原料粉末と
混合される。この際、必要に応じて副成分(第1〜第4
副成分)原料を添加してもよい。ただし、必要に応じて
添加する前記各副成分原料は、仮焼き前に前記主成分原
料に添加してもよい。m’<mなので、最終製品の組成
式を達成するための原料粉末としては、Tiおよび/ま
たはZrよりもSrおよび/またはCaを多く含む物質
の粉末である。より好ましくはTiおよび/またはZr
を含まず、Srおよび/またはCaを含む物質である。
【0053】その後、この混合粉末を、必要に応じて、
ボールミルなどによって混合し、乾燥することによっ
て、本発明の組成を持つ誘電体磁器組成物原料を得るこ
とができる。
【0054】本発明では、上述したように、焼成後に誘
電体磁器組成物中の主成分に含まれることとなる誘電体
酸化物のmより小さいm’を持つ所定原料を用意してお
き、その後、最終組成に対して不足している所定量の原
料を後添加し、最終組成に調整して誘電体磁器組成物原
料を得る。このように調製された原料を用いて、後述す
る焼成に供することにより、焼成後の誘電体磁器組成物
中に、特にTiリッチな偏析相が生じるおそれが少なく
なり、誘電体の絶縁抵抗および誘電率が悪化することを
防止できる。特に後添加するに際し、Tiを添加しない
ことにより、上記効果が顕著となる。
【0055】なお、焼成により酸化物になる化合物とし
ては、例えば炭酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、有機金属化
合物等が例示される。もちろん、酸化物と、焼成により
酸化物になる化合物とを併用してもよい。誘電体磁器組
成物原料中の各化合物の含有量は、焼成後に上記した誘
電体磁器組成物の組成となるように決定すればよい。塗
料化する前の状態で、誘電体磁器組成物粉末の粒径は、
通常、平均粒子径0.0005〜5μm程度である。
【0056】次いで、この誘電体磁器組成物原料を塗料
化して、誘電体層用ペーストを調整する。誘電体層用ペ
ーストは、誘電体磁器組成物原料と有機ビヒクルとを混
練した有機系の塗料であってもよく、水系の塗料であっ
てもよい。
【0057】有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中
に溶解したものであり、有機ビヒクルに用いられるバイ
ンダは、特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニ
ルブチラール等の通常の各種バインダから適宜選択すれ
ばよい。また、このとき用いられる有機溶剤も特に限定
されず、印刷法やシート法等利用する方法に応じてテル
ピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン
等の有機溶剤から適宜選択すればよい。
【0058】また、水溶系塗料とは、水に水溶性バイン
ダ、分散剤等を溶解させたものであり、水溶系バインダ
は、特に限定されず、ポリビニルアルコール、セルロー
ス、水溶性アクリル樹脂、エマルジョン等から適宜選択
すればよい。
【0059】内部電極用ペースト,外部電極用ペースト 内部電極用ペーストは、上述した各種導電性金属や合金
からなる導電材料あるいは焼成後に上述した導電材料と
なる各種酸化物、有機金属化合物、レジネート等と、上
述した有機ビヒクルとを混練して調製される。また、外
部電極用ペーストも、この内部電極用ペーストと同様に
して調製される。
【0060】上述した各ペーストの有機ビヒクルの含有
量は、特に限定されず、通常の含有量、たとえば、バイ
ンダは1〜5重量%程度、溶剤は10〜50重量%程度
とすればよい。また、各ペースト中には必要に応じて各
種分散剤、可塑剤、誘電体、絶縁体等から選択される添
加物が含有されても良い。
【0061】印刷法を用いる場合は、誘電体ペーストお
よび内部電極用ペーストをポリエチレンテレフタレート
等の基板上に積層印刷し、所定形状に切断したのち基板
から剥離することでグリーンチップとする。これに対し
て、シート法を用いる場合は、誘電体ペーストを用いて
グリーンシートを形成し、この上に内部電極ペーストを
印刷したのちこれらを積層してグリーンチップとする。
【0062】次に、このグリーンチップを脱バインダ処
理および焼成する。
【0063】脱バインダ処理 脱バインダ処理は、通常の条件で行えばよいが、特に内
部電極層の導電材としてNiやNi合金等の卑金属を用
いる場合には、空気雰囲気において、昇温速度を5〜3
00℃/時間、より好ましくは10〜100℃/時間、
保持温度を180〜400℃、より好ましくは200〜
300℃、温度保持時間を0.5〜24時間、より好ま
しくは5〜20時間とする。
【0064】焼成 グリーンチップの焼成雰囲気は、内部電極層用ペースト
中の導電材の種類に応じて適宜決定すればよいが、導電
材としてNiやNi合金等の卑金属を用いる場合には、
焼成雰囲気の酸素分圧を好ましくは10−10 〜10
−3Paとし、より好ましくは10−10 〜6×10
−5Paとする。焼成時の酸素分圧が低すぎると内部電
極の導電材が異常焼結を起こして途切れてしまい、酸素
分圧が高すぎると内部電極が酸化されるおそれがある。
【0065】焼成の保持温度は、1000〜1400
℃、より好ましくは1200〜1380℃である。保持
温度が低すぎると緻密化が不充分となり、保持温度が高
すぎると内部電極の異常焼結による電極の途切れまたは
内部電極材質の拡散により容量温度特性が悪化するから
である。
【0066】これ以外の焼成条件としては、昇温速度を
50〜500℃/時間、より好ましくは200〜300
℃/時間、温度保持時間を0.5〜8時間、より好まし
くは1〜3時間、冷却速度を50〜500℃/時間、よ
り好ましくは200〜300℃/時間とし、焼成雰囲気
は還元性雰囲気とすることが望ましく、雰囲気ガスとし
てはたとえば、窒素ガスと水素ガスとの混合ガスを加湿
して用いることが望ましい。
【0067】還元性雰囲気で焼成した場合は、コンデン
サチップの焼結体にアニール(熱処理)を施すことが望
ましい。
【0068】アニール(熱処理) アニールは誘電体層を再酸化するための処理であり、こ
れにより絶縁抵抗を増加させることができる。アニール
雰囲気の酸素分圧は、好ましくは10−4Pa以上、よ
り好ましくは10−1〜10Paである。酸素分圧が低
すぎると誘電体層2の再酸化が困難となり、酸素分圧が
高すぎると内部電極層3が酸化されるおそれがある。
【0069】アニールの際の保持温度は、1100℃以
下、より好ましくは500〜1100℃である。保持温
度が低すぎると誘電体層の再酸化が不充分となって絶縁
抵抗が悪化し、その加速寿命も短くなる。また、保持温
度が高すぎると内部電極が酸化されて容量が低下するだ
けでなく、誘電体素地と反応してしまい、容量温度特
性、絶縁抵抗およびその加速寿命が悪化する。なお、ア
ニールは昇温行程および降温行程のみから構成すること
もできる。この場合には、温度保持時間はゼロであり、
保持温度は最高温度と同義である。
【0070】これ以外のアニール条件としては、温度保
持時間を0〜20時間、より好ましくは6〜10時間、
冷却速度を50〜500℃/時間、より好ましくは10
0〜300℃/時間とし、アニールの雰囲気ガスとして
は、たとえば、窒素ガスを加湿して用いることが望まし
い。
【0071】なお、上述した焼成と同様に、前記脱バイ
ンダ処理およびアニール工程において、窒素ガスや混合
ガスを加湿するためには、たとえばウェッター等を用い
ることができ、この場合の水温は5〜75℃とすること
が望ましい。
【0072】また、これら脱バインダ処理、焼成および
アニールは連続して行っても互いに独立して行っても良
い。これらを連続して行う場合には、脱バインダ処理の
のち冷却することなく雰囲気を変更し、続いて焼成の際
の保持温度まで昇温して焼成を行い、続いて冷却してア
ニールの保持温度に達したら雰囲気を変更してアニール
処理を行うことがより好ましい。一方、これらを独立し
て行う場合には、焼成に関しては脱バインダ処理時の保
持温度まで窒素ガスあるいは加湿した窒素ガス雰囲気下
で昇温したのち、雰囲気を変更してさらに昇温を続ける
ことが好ましく、アニールの保持温度まで冷却したのち
は、再び窒素ガスまたは加湿した窒素ガス雰囲気に変更
して冷却を続けることが好ましい。また、アニールに関
しては窒素ガス雰囲気下で保持温度まで昇温したのち雰
囲気を変更しても良く、アニールの全工程を加湿した窒
素ガス雰囲気としても良い。
【0073】以上のようにして得られたコンデンサ焼成
体に、たとえば、バレル研磨やサンドブラストにより端
面研磨を施し、外部電極用ペーストを印刷または転写し
て焼成し、外部電極4を形成する。外部電極用ペースト
の焼成条件は、たとえば、加湿した窒素ガスと水素ガス
との混合ガス中で600〜800℃にて10分〜1時間
程度とすることが好ましい。そして、必要に応じて外部
電極4の表面にメッキ等により被覆層(パッド層)を形
成する。
【0074】このようにして製造された本実施形態の積
層セラミックコンデンサ1は、優れた容量温度特性を有
し、特に誘電体層2をたとえば層間4μm程度に薄層化
した場合でも絶縁抵抗が劣化し難く、初期絶縁抵抗の不
良率の発生が少ない。
【0075】また、このようにして製造された積層セラ
ミックコンデンサ1は、はんだ付け等によってプリント
基板上に実装され、各種電子機器に用いられる。
【0076】以上本発明の実施形態について説明してき
たが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるもの
ではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種
々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0077】たとえば、本発明に係る製造方法により得
られる誘電体磁器組成物は、積層セラミックコンデンサ
のみに使用されるものではなく、誘電体層が形成される
その他の電子部品に使用されても良い。
【0078】
【実施例】次に、本発明の実施の形態をより具体化した
実施例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明する。但し、
本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではな
い。
【0079】実施例1 本実施例では、まず、誘電体材料を作製するための出発
原料として、それぞれ平均粒径0.1〜1μmの主成分
原料(SrCO、CaCO、TiO )および
第1〜第4副成分原料を用意した。本実施例では、Mn
Oの原料には炭酸塩(第2副成分:MnCO)を用
い、他の原料には酸化物(第1副成分:V
第3副成分:SiO+CaO、第4副成分:Y
)を用いた。
【0080】次いで、表1に示されるm’となるよう
に、SrCO、CaCOおよびTiOを所
定量秤量し、1200℃で仮焼きして、組成式{(Sr
0.6 Ca0.36)O}m’・TiOで表され
る主成分原料を得た。
【0081】次いで、この主成分原料に、V
、MnCO、(SiO+CaO)お
よびYを所定量加え、さらにSrCO
CaCOおよびTiOを所定量加えて、{(S
0.64Ca0.36)O}・TiO(主成
分)+V(第1副成分)+MnCO(第
2副成分)+(SiO+CaO)(第3副成分)+
(第4副成分)において、焼成後の組成が
表1〜表3の各試料に示す配合比になるように秤量した
後、これらをそれぞれボールミルにより、約16時間湿
式混合し、これを乾燥することによって誘電体磁器組成
物(誘電体原料)を得た。
【0082】得られた乾燥後の原料100重量部と、ア
クリル樹脂4.8重量部と、塩化メチレン40重量部
と、酢酸エチル20重量部と、ミネラルスピリット6重
量部と、アセトン4重量部とをボールミルで混合してペ
ースト化し、誘電体層用ペーストを得た。
【0083】次いで、平均粒径0.2〜0.8μmのN
i粒子100重量部と、有機ビヒクル(エチルセルロー
ス8重量部をブチルカルビトール92重量部に溶解した
もの)40重量部と、ブチルカルビトール10重量部と
を3本ロールにより混練してペースト化し、内部電極層
用ペーストを得た。
【0084】次いで、平均粒径0.5μmのCu粒子1
00重量部と、有機ビヒクル(エチルセルロース樹脂8
重量部をブチルカルビトール92重量部に溶解したも
の)35重量部およびブチルカルビトール7重量部とを
混練してペースト化し、外部電極用ペーストを得た。
【0085】次いで、上記誘電体層用ペーストを用いて
PETフィルム上に、厚さ6μm、3μmのグリーンシ
ートを形成し、この上に内部電極層用ペーストを印刷し
たのち、PETフィルムからグリーンシートを剥離し
た。次いで、これらのグリーンシートと保護用グリーン
シート(内部電極層用ペーストを印刷しないもの)とを
積層、圧着してグリーンチップを得た。内部電極を有す
るシートの積層数は4層とした。
【0086】次いで、グリーンチップを所定サイズに切
断し、脱バインダ処理、焼成およびアニール(熱処理)
を行って、積層セラミック焼成体を得た。
【0087】脱バインダ処理は、昇温時間15℃/時
間、保持温度280℃、保持時間8時間、空気雰囲気の
条件で行った。また、焼成は、昇温速度200℃/時
間、保持温度1200〜1380℃、保持時間2時間、
冷却速度300℃/時間、加湿したN+H混合
ガス雰囲気(酸素分圧は2×10−7〜5×10−4
a内に調節)の条件で行った。アニールは、保持温度9
00℃、温度保持時間9時間、冷却速度300℃/時
間、加湿したNガス雰囲気(酸素分圧は3.54×
10−2Pa)の条件で行った。なお、焼成およびアニ
ールの際の雰囲気ガスの加湿には、水温を35℃とした
ウェッターを用いた。
【0088】次いで、積層セラミック焼成体の端面をサ
ンドブラストにて研磨したのち、外部電極用ペーストを
端面に転写し、加湿したN+H雰囲気中におい
て、800℃にて10分間焼成して外部電極を形成し、
図1に示す構成の積層セラミックコンデンサ1のサンプ
ルを得た。
【0089】このようにして得られた各サンプルのサイ
ズは、3.2mm×1.6mm×0.6mmであり、内
部電極層に挟まれた誘電体層の数は4、その厚さは4μ
m、2μmであり、内部電極層の厚さは1.5μmであ
った。各サンプルについて下記特性の評価を行った。
【0090】比誘電率(εr)、絶縁抵抗(IR) コンデンサのサンプルに対し、基準温度25℃でデジタ
ルLCRメータ(YHP社製4274A)にて、周波数
1kHz,入力信号レベル(測定電圧)1Vrmsの条
件下で、静電容量を測定した。そして、得られた静電容
量と、コンデンササンプルの電極寸法および電極間距離
とから、比誘電率(単位なし)を算出した。その後、絶
縁抵抗計(アドバンテスト社製R8340A)を用い
て、25℃においてDC50Vを、コンデンササンプル
に60秒間印加した後の絶縁抵抗IRを測定し、この測
定値と、コンデンササンプルの電極面積および厚みとか
ら、比抵抗ρ(単位はΩcm)を計算で求めた。結果を
表1〜表3に示す。評価として、比誘電率εrは、小型
で高誘電率のコンデンサを作成するために重要な特性で
あり、180以上、より好ましくは200以上を良好と
した。比抵抗値は1×1012Ωcm以上を良好とし
た。比誘電率εrの値は、コンデンサの試料数n=10
個を用いて測定した値の平均値から求めた。比抵抗ρの
値は、良品10個の比抵抗の平均値とした。
【0091】静電容量の温度特性 コンデンサのサンプルに対し、LCRメータを用いて、
1kHz、1Vの電圧での静電容量を測定し、基準温度
を20℃としたとき、20〜85℃の温度範囲内で、温
度に対する静電容量変化率が−2000〜0ppm/℃
を満足するかどうかを調べ、満足する場合を○、満足し
ない場合を×とした。結果を表1〜表3に示す。
【0092】初期絶縁抵抗(IR)の不良率 初期IR不良率の値は、100個程度のコンデンササン
プルの比抵抗ρを、絶縁抵抗IRと、電極面積および誘
電体層の厚み(本実施例では4μmおよび2μm)とか
ら、計算でそれぞれ求め、バルクの状態のときの比抵抗
ρの値より一桁以上小さい試料の個数を、全体個数で割
って、パーセンテージで示した。結果を表1〜表3に示
す。この値が小さいほど、初期IR不良率が低く、良品
が多いこととなる。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
【表3】
【0096】表1〜表3中における後添加分のモル数
は、主成分の最終組成100モルに対する比率である。
また表1〜表3中における第1〜第4副成分のモル数
は、主成分100モルに対する比率である。さらに表1
〜表3中、比抵抗(ρ)の数値において、「mE+n」
は「m×10+n」を意味する。
【0097】表1〜表2に示される結果から、主成分の
最終m値と原料m’値との関係において、以下のことが
理解される。最終mが、原料m’に対してm’<mとな
る試料3〜3−2,3−5〜3−7において、初期IR
不良率が低減されていることが確認できた。中でも特
に、より小さい原料m’を持つ試料3,試料3−2,試
料3−6,3−7では、初期IR不良率が著しく低減さ
れた。これに対し、試料1〜2,3−3,3−4のよう
にm’>mとなるとき初期IR不良率が増加することが
確認できた。
【0098】表3に示される結果から、主成分の最終m
値につき、以下のことが理解される。試料4のようにm
=0.94の場合は、還元雰囲気下における焼成で誘電
体が還元され、十分な絶縁抵抗がとれず、コンデンサと
して作用しないことが確認できた。また試料7のように
m=1.08であると、1380℃(高温)で焼成して
も、緻密な焼結体が得られないことが確認できた。
【0099】実施例2 誘電体層の厚みを8.8μm以上、4μm、2μmと異
ならせた場合に、主成分の原料m’の値が、初期絶縁抵
抗の不良発生率に対して与える試験を行った。なお、主
成分の最終mは、m=0.985とした。良品率の結果
を図2(A)〜(C)に示すが、厚みが8.8μm以上
と厚いときには、m’の値は特に不良発生率には影響を
与えないが(図2(A)参照)、4μm、2μmと薄く
なってくるにつれて、原料m’の値を最終mの値より小
さくすることが効果的であることが確認できた(図2
(B)〜(C)参照)。初期IR不良率の値は、実施例
1と同様にして求めた。
【0100】
【発明の効果】以上説明してきたように、本発明によれ
ば、焼成時の耐還元性に優れ、焼成後には優れた容量温
度特性を有し、特に薄層化した場合でも絶縁抵抗が劣化
し難い誘電体磁器組成物の製造方法、および初期絶縁抵
抗の不良率の発生が少ないチップコンデンサなどの電子
部品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミ
ックコンデンサの断面図である。
【図2】 図2(A)〜(C)は誘電体層の厚みを代え
たときの、原料m’の値と初期絶縁抵抗の不良率との関
係を示すグラフである。
【符号の説明】
1… 積層セラミックコンデンサ 10… コンデンサ素子本体 2… 誘電体層 3… 内部電極層 4… 外部電極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI H01G 4/12 418 H01G 4/12 418 (72)発明者 佐藤 陽 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 テ ィーディーケイ株式会社内 (56)参考文献 特開2001−89230(JP,A) 特開2000−109361(JP,A) 特開2000−226255(JP,A) 特開 平11−340075(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C04B 35/42 - 35/50 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 組成式{(Sr1−x Ca)O}
    ・(Ti1−yZr)Oで表され、前記組
    成式中の記号xが0≦x≦1.00であり、記号yが0
    ≦y≦0.20である主成分と、SiO 、Li およびBから選ばれ
    る少なくとも1つを含む第3副成分とを有する誘電体磁
    器組成物を製造する方法であって、 組成式{(Sr1−x Ca)O}m’・(Ti
    1−y Zr)Oで表され、前記組成式中のモル
    比m’がm’<mである原料に、SrおよびCaの少な
    くとも1つの元素を含む物質(焼結助剤を除く)を添加
    して、前記モル比m’がm’=mに調製された主成分原
    料を得た後、該主成分原料に対して第3副成分原料を添
    加して得られた組成物原料を用いて、前記誘電体磁器組
    成物を製造することを特徴とする誘電体磁器組成物の製
    造方法。
  2. 【請求項2】 前記組成式中のモル比mおよびm’の関
    係が、m−m’<0.085である請求項1記載の誘電
    体磁器組成物の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記誘電体磁器組成物中の主成分におけ
    る組成式中のモル比mが0.94<m<1.08である
    請求項1または2に記載の誘電体磁器組成物の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 組成式{(Sr1−x Ca)O}
    ・(Ti1−yZr)Oで表され、前記組
    成式中の記号xが0≦x≦1.00であり、記号yが0
    ≦y≦0.20である主成分と、SiO 、Li およびBから選ばれ
    る少なくとも1つを含む第3副成分とを有する誘電体磁
    器組成物で構成してある誘電体層を有する電子部品を製
    造する方法であって、 組成式{(Sr1−x Ca)O}m’・(Ti
    1−y Zr)Oで表され、前記組成式中のモル
    比m’がm’<mである原料に、SrおよびCaの少な
    くとも1つの元素を含む物質(焼結助剤を除く)を添加
    して、前記モル比m’がm’=mに調製された主成分原
    料を得た後、該主成分原料に対して第3副成分原料を添
    加して得られた組成物原料を用いて、前記誘電体磁器組
    成物を製造することを特徴とする電子部品の製造方法。
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