JP3318951B2 - 誘電体磁器組成物とそれを用いた積層セラミックコンデンサ - Google Patents

誘電体磁器組成物とそれを用いた積層セラミックコンデンサ

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JP3318951B2 JP07937492A JP7937492A JP3318951B2 JP 3318951 B2 JP3318951 B2 JP 3318951B2 JP 07937492 A JP07937492 A JP 07937492A JP 7937492 A JP7937492 A JP 7937492A JP 3318951 B2 JP3318951 B2 JP 3318951B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は誘電体磁器組成物とそ
れを用いた積層セラミックコンデンサに関し、特にたと
えばNiあるいはNi合金からなる内部電極を含む積層
セラミックコンデンサに用いられる誘電体磁器組成物と
それを用いた積層セラミックコンデンサに関する。
【0002】
【従来の技術】一般的に積層セラミックコンデンサの製
造工程では、まず、その表面に内部電極となる電極材料
を塗布したシート状の誘電体材料が準備される。誘電体
材料としては、たとえばBaTiO3 を主成分とする材
料などが用いられる。この電極材料を塗布したシート状
の誘電体材料を積層して熱圧着し、一体化したものを自
然雰囲気中において1250〜1350℃で焼成するこ
とで、内部電極を有する誘電体磁器が得られる。そし
て、この誘電体磁器の端面に、内部電極と導通する外部
電極を焼き付けて、積層セラミックコンデンサが得られ
る。また、近年のエレクトロニクスの発展に伴い電子部
品の小型化が急速に進行し、積層セラミックコンデンサ
も小型化の傾向が顕著になってきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このような積層セラミ
ックコンデンサに用いられる内部電極の材料としては、
次のような条件を満たす必要がある。
【0004】(a)誘電体磁器と内部電極とが同時に焼
成されるので、誘電体磁器が焼成される温度以上の融点
を有すること。
【0005】(b)酸化性の高温雰囲気中においても酸
化されず、しかも誘電体と反応しないこと。
【0006】このような条件を満足する電極材料として
は、白金,金,パラジウムあるいはこれらの合金などの
ような貴金属が用いられていた。
【0007】しかしながら、これらの電極材料は優れた
特性を有する反面、高価であった。そのため、積層セラ
ミックコンデンサに占める電極材料費の割合は30〜7
0%にも達し、製造コストを上昇させる最大の要因とな
っていた。
【0008】貴金属以外に高融点をもつものとしてN
i,Fe,Co,W,Moなどの卑金属があるが、これ
らの卑金属は高温の酸化性雰囲気中では容易に酸化され
てしまい、電極としての役目を果たさなくなってしま
う。そのため、これらの卑金属を積層セラミックコンデ
ンサの内部電極として使用するためには、誘電体磁器と
ともに中性または還元性雰囲気中で焼成する必要があ
る。しかしながら、従来の誘電体磁器材料では、このよ
うな還元性雰囲気中で焼成すると著しく還元されてしま
い、半導体化してしまうという欠点があった。
【0009】また、積層セラミックコンデンサを小型化
する方法としては、一般的に大きな誘電率を有する材料
を用いるか、誘電体層を薄膜化することが知られてい
る。しかし、大きな誘電率を有する材料は結晶粒が大き
く、10μm以下のような薄膜になると、1つの層中に
存在する結晶粒の数が減少し、信頼性が低下してしま
う。
【0010】一方、特開昭58−135507号公報、
特開昭58−223669号公報、特開昭59−861
03号公報に示されるように、チタン酸バリウム固溶体
に酸化セリウムあるいは酸化ネオジウムを添加した、結
晶粒径の小さい誘電体磁器が知られている。このように
結晶粒径を小さくすることによって、1つの層中に存在
する結晶粒の数を増やすことができ、信頼性の低下を防
ぐことができる。
【0011】しかしながら、この希土類酸化物を添加し
た材料では、還元雰囲気中で焼成すると還元されてしま
い、内部電極としてNiなどの卑金属を使用した積層セ
ラミックコンデンサを製造することは不可能であった。
【0012】それゆえに、この発明の主たる目的は、還
元性雰囲気中で焼成しても半導体化せず、しかも結晶粒
径が小さいにもかかわらず、大きな誘電率が得られる誘
電体磁器組成物および低コストで信頼性の高い小型大容
量の積層セラミックコンデンサを提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】第1の発明は、Ba,C
a,Mg,Ti,Zr,CoおよびRe(ReはTb,
Dy,HoおよびErの中から選ばれる少なくとも1種
類)の各酸化物からなり、次の一般式、 (Ba1-x-y-z
Cax Rey Mgz ) m ( Ti1-o-p Zro Cop ) O
3 で表され、x,y,z,o,pおよびmが、0.00
5≦x≦0.25、0.0005≦y≦0.03、0.
0005≦z≦0.05、0<o≦0.20、0.00
05≦p≦0.03、1.00≦m≦1.04の関係を
満足する主成分100モルに対して、副成分として、M
nおよびNiの各酸化物をMnO2 およびNiOと表し
たとき、MnおよびNiの各酸化物の少なくとも一種類
各酸化物の合計量で0.02〜2.0モル添加含有
し、前記主成分を100重量部として、BaO−SrO
−Li2 O−SiO2 を主成分とする酸化物ガラスを
0.05重量部〜5.0重量部含む、誘電体磁器組成物
である。
【0014】第2の発明は、前記誘電体磁器組成物から
なる誘電体層と、NiおよびNi合金のうちの1種類か
らなる内部電極とを含む、積層セラミックコンデンサで
ある。
【0015】
【作用】Ba,Ca,Mg,Ti,Zr,CoおよびR
e(ReはTb,Dy,HoおよびErの中から選ばれ
る少なくとも1種類の希土類元素)の各酸化物の組成比
を調整し、Mn,Niの各酸化物およびBaO−SrO
−Li2 O−SiO2 を主成分とする酸化物ガラスを添
加することによって、還元雰囲気中においても、その特
性を劣化させることなく、焼成することができる。さら
に、Tb2 3 ,Dy2 3 ,Ho2 3 ,Er2 3
の希土類酸化物およびCo酸化物は、誘電体の粒成長を
抑制する効果がある。そして、結晶粒径が小さいことか
ら、1つの誘電体層中に存在する結晶粒の数を増やすこ
とができるため、誘電体層の厚みを薄くしても信頼性の
低下を防ぐことができる。
【0016】
【発明の効果】この発明によれば、還元性雰囲気中で焼
成しても還元されず、半導体化しない誘電体磁器組成物
を得ることができる。したがって、この誘電体磁器組成
物を用いて積層セラミックコンデンサを製造すれば、電
極材料として卑金属を用いることができ、1270℃以
下と比較的低温で焼成可能であるため、積層セラミック
コンデンサのコストダウンを図ることができる。
【0017】また、この誘電体磁器組成物を用いた積層
セラミックコンデンサでは、誘電率が10000以上あ
り、しかもこのように高誘電率であるにもかかわらず、
結晶粒が3μm以下と小さい。したがって、誘電体層を
薄膜化しても、従来の積層セラミックコンデンサのよう
に層中に存在する結晶粒の量が少なくならない。このた
め、信頼性が高く、しかも小型で大容量の積層セラミッ
クコンデンサを得ることができる。
【0018】この発明の上述の目的,その他の目的,特
徴および利点は、以下の実施例の詳細な説明から一層明
らかとなろう。
【0019】
【実施例】まず、原料として、純度99.8%以上のB
aCO3 ,CaCO3 ,MgCO3 ,Tb2 3 ,Dy
2 3 ,Ho2 3 ,Er2 3 ,TiO2 ,Zr
2 ,CoO,MnO2 ,NiOを準備した。これらの
原料を (Ba1-x-y-z Cax Rey Mgz ) m ( Ti
1-o-p Zro Cop ) O3 の組成式で表され、x,y,
z,o,p,mが表1に示す割合となるように配合し
て、配合原料を得た。ここで、ReはTb,Dy,H
o,Erから選ばれる少なくとも1種類である。この配
合原料をボールミルで湿式混合し、粉砕したのち乾燥
し、空気中において1100℃で2時間仮焼して仮焼物
を得た。この仮焼物を乾式粉砕機によって粉砕し、粒径
が1μm以下の粉砕物を得た。この粉砕物に、予め準備
した粒径1μm以下のBaO−SrO−Li2 O−Si
2 を主成分とする酸化物ガラスを秤量し、純水と酢酸
ビニルバインダを加えて、ボールミルで16時間混合し
て混合物を得た。
【0020】
【表1】
【0021】この混合物にポリビニルブチラール系バイ
ンダおよびエタノールなどの有機溶剤を加えて、ボール
ミルによって湿式混合し、セラミックスラリを調整し
た。そののち、セラミックスラリをドクターブレード法
によってシート成形し、厚み26μmの矩形のグリーン
シートを得た。次に、このセラミックグリーンシート上
に、Niを主体とする導電ペーストを印刷し、内部電極
を構成するための導電ペースト層を形成した。導電ペー
スト層が形成されたセラミックグリーンシートを、導電
ペーストの引き出されている側が互い違いとなるように
複数枚積層し、積層体を得た。得られた積層体をN2
囲気中において350℃の温度に加熱し、バインダを燃
焼させたのち、酸素分圧が10-9〜10-12 MPaのH
2 −N2 −空気ガスからなる還元性雰囲気中において表
2に示す温度で2時間焼成し、セラミック焼結体を得
た。得られたセラミック焼結体の表面を、走査型電子顕
微鏡で倍率1500倍で観察し、グレインサイズを測定
した。そして、その結果を表2に示した。
【0022】
【表2】
【0023】焼成後、得られた焼結体の両端面にAgペ
ーストを塗布し、N2 雰囲気中において600℃の温度
で焼き付け、内部電極と電気的に接続された外部電極を
形成した。このようにして得られた積層セラミックコン
デンサの外形寸法は、幅1.6mm,長さ3.2mm,
厚さ1.2mmであり、内部電極間に介在する誘電体セ
ラミック層の厚みは16μmである。また、有効誘電体
セラミック層の総数は19であり、一層当たりの対向電
極の面積は2.1mm2 である。
【0024】静電容量(C)および誘電損失(tan
δ)は、自動ブリッジ式測定器を用いて、周波数1kH
z,1Vrms ,温度25℃にて測定し、静電容量から誘
電率(ε)を算出した。次に、絶縁抵抗(R)を測定す
るために、絶縁抵抗計を用い、25Vの直流電圧を2分
間印加して、25℃,85℃での絶縁抵抗(R)を測定
し、静電容量(C)と絶縁抵抗(R)との積、すなわち
CR積を求めた。また、温度変化に対する静電容量の変
化率を測定した。なお、温度変化に対する静電容量の変
化率については、20℃での静電容量を基準とした−2
5℃と85℃での変化率(ΔC/C20)および−25℃
から85℃の範囲内で絶対値としてその変化率が最大で
ある値(|ΔC/C20max )を示した。そして、これ
らの結果を表2に示した。
【0025】次に、各組成の限定理由について説明す
る。
【0026】(Ba1-x-y-z Cax Rey Mgz ) m (
Ti1-o-p Zro Cop ) O3 において、試料番号1の
ように、Ca量xが0.005未満の場合、磁器の焼結
性が悪くなり、誘電率εが10000未満と低くなり、
誘電損失tanδが5.0%を超え、CR積が25℃で
1000MΩ・μF未満、85℃で100MΩ・μF未
満となり、絶縁抵抗の低下が生じ好ましくない。また、
試料番号18のように、Ca量xが0.25を超える
と、再び焼結性が極度に悪くなり好ましくない。
【0027】さらに、試料番号2のように、Re量yが
0.0005未満であれば、誘電損失tanδが5.0
%を超え、さらに結晶粒径が3μmより大きくなるた
め、誘電体層を薄膜化できず好ましくない。一方、試料
番号19のように、Re量yが0.03を超えると、還
元性雰囲気で焼成したときに磁器が還元され、半導体化
して絶縁抵抗が大幅に低下し好ましくない。
【0028】また、試料番号3のように、Mg量zが
0.0005未満であれば、25℃,85℃でのCR積
が低下し好ましくない。一方、試料番号20のように、
Mg量zが0.05を超えると、誘電率εが10000
未満に低下するだけでなく、絶縁性も低下し好ましくな
い。
【0029】試料番号4のように、Zr量oが0の場
合、誘電率εが10000未満になり、静電容量の温度
変化率が大きくなり好ましくない。一方、試料番号21
のように、Zr量oが0.20を超えると、焼結性が低
下し、誘電率が10000未満になり好ましくない。
【0030】試料番号5のように、Co量pが0.00
05未満の場合、誘電損失tanδが5.0%を超え、
さらに結晶粒径が3μmより大きくなるため、誘電体層
を薄膜化できず好ましくない。一方、試料番号22のよ
うに、Co量pが0.03を超えると、誘電損失tan
δが5.0%を超えて大きくなり、CR積が25℃で1
000MΩ・μF未満、85℃で100MΩ・μF未満
となり、絶縁抵抗の低下が生じ好ましくない。
【0031】試料番号6のように、 (Ba1-x-y-z Sr
x Cay Mgz ) m ( Ti1-o-p Zro Nbp ) O3
モル比mが1.000未満では、還元性雰囲気中で焼成
したときに磁器が還元され、半導体化して絶縁抵抗が低
下してしまい好ましくない。一方、試料番号23のよう
に、モル比mが1.04を超えると、焼結性が極端に悪
くなり好ましくない。
【0032】さらに、試料番号7のように、MnO2
NiOの添加量が0.02モル未満の場合、85℃での
CR積が低くなり、高温中における長時間使用の信頼性
が低下し好ましくない。一方、試料番号24のように、
MnO2 ,NiOの量が2.0モルを超えると、誘電損
失tanδが5.0%を超えて大きくなり、同時に絶縁
抵抗も低下し好ましくない。
【0033】また、試料番号8のように、BaO−Sr
O−Li2 O−SiO2 を主成分とする酸化物ガラスの
添加量が0.05重量部未満の場合、焼結性が悪くな
り、誘電損失tanδが5.0%を超えて好ましくな
い。一方、試料番号25のように、BaO−SrO−L
2 O−SiO2 を主成分とする酸化物ガラスの添加量
が5.0重量部を超えると、誘電率が10000未満に
低下するとともに、結晶粒径が3μmより大きくなり好
ましくない。
【0034】それに対して、この発明の誘電体磁器組成
物を用いた積層セラミックコンデンサは、誘電率が10
000以上と高く、誘電損失tanδが5.0%以下
で、温度に対する静電容量の変化率が、−25℃〜85
℃の範囲でJIS規格に規定するF特性規格を満足する
誘電体磁器を得ることができる。しかも、この積層セラ
ミックコンデンサでは、25℃,85℃における絶縁抵
抗が、CR積で表したときに、それぞれ1000MΩ・
μF以上,100MΩ・μF以上と高い値を示す。さら
に、この発明の誘電体磁器組成物は、焼成温度も127
0℃以下と比較的低温で焼結可能であり、粒径について
も3μm以下と小さい。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭62−288160(JP,A) 特開 平2−296313(JP,A) 特開 平5−9066(JP,A) 特開 平5−17212(JP,A) 特開 平5−70221(JP,A) 特開 平5−78167(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01B 3/12 303 C04B 35/46 H01G 4/12 358

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Ba,Ca,Mg,Ti,Zr,Coお
    よびRe(ReはTb,Dy,HoおよびErの中から
    選ばれる少なくとも1種類の希土類元素)の各酸化物か
    らなり、次の一般式 (Ba1-x-y-z Cax Rey Mgz ) m ( Ti1-o-p Zro Cop ) O3 で表され、x,y,z,o,pおよびmが、 0.005≦x≦0.25 0.0005≦y≦0.03 0.0005≦z≦0.05 0<o≦0.20 0.0005≦p≦0.03 1.00≦m≦1.04 の関係を満足する主成分100モルに対して、副成分と
    して、MnおよびNiの各酸化物をMnO2 およびNi
    Oと表したとき、MnおよびNiの各酸化物の少なくと
    も一種類を各酸化物の合計量で0.02〜2.0モル添
    加含有し、前記主成分を100重量部として、BaO−
    SrO−Li2 O−SiO2 を主成分とする酸化物ガラ
    スを0.05重量部〜5.0重量部含む、誘電体磁器組
    成物。
  2. 【請求項2】 請求項1の誘電体磁器組成物からなる誘
    電体層と、NiおよびNi合金のうちの1種類からなる
    内部電極とを含む、積層セラミックコンデンサ。
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