JP2005129714A - 太陽電池セルの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】少数キャリアの再結合を抑制しライフタイムを向上させ、結晶系シリコン太陽電池セル特性の改善を図る。
【解決手段】シリコン基板1表面にリンの熱拡散を実施してPSG(リンシリケイトガラス)層3およびリン拡散層2を形成した後、酸処理によりPSG層3を除去することによりPSG層3に含まれる金属不純物を除去する。この後、残留したリン拡散層2を利用して再度熱処理することにより、金属不純物を更にゲッタリングする。そして最後に、リン拡散層2を含むシリコン基板1’表面層を除去することにより、金属不純物の再混入を防止するという工程によって得られるシリコンウエハを用いて太陽電池を製造する。
【選択図】図1

Description

本発明は、太陽電池用基板材料として有用なシリコンウエハを用いた太陽電池セルの製造方法に関し、特に、太陽電池セルの製造工程において発生する重金属などの汚染物をゲッタリング除去することが可能な太陽電池セルの製造方法に関する。
太陽光のような光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池は、地球環境問題に対する関心が高まるにつれ、積極的に種々の構造・構成のものが開発されている。その中でも、シリコンなどの半導体基板を用いた太陽電池は、その変換効率・製造コストなどの優位性により最も一般的に用いられている。
シリコンウエハを用いた太陽電池セルの製造工程を図3および図4を用いて説明する。図3は、従来の太陽電池の一例を模式的に示す図であり、(a)は受光面側からみた平面図、(b)は(a)のX−X線断面図である。この図3の太陽電池セルは図4に示す製造工程にしたがって製造される。
結晶系シリコンを用いた太陽電池の場合、半導体基板としては、ワイヤーソーなどを用いて、単結晶または多結晶の半導体インゴットを125mm×125mmまたは155mm×155mmなどの面積で300〜350μm程度の厚さに切り出したp型シリコン基板が用いられる。
図4に示す製造工程では、まず、p型シリコン基板11をアルカリエッチングにより、加工時に形成されたダメージ層を除去する(a)。次いで、公知の方法により、p型シリコン基板11の受光面となる片面にn型ドーパントを拡散させ、n型拡散層12を形成してpn接合とする(b)。さらにその上に表面反射率を低減させるためにSiN膜またはTiO2膜などからなる反射防止膜13を形成する(c)。
一方、p型シリコン基板11の裏面(受光面と反対側となる面)には、スクリーン印刷法などによりアルミニウムペーストを塗布し、150℃程度で乾燥した後、空気中において700℃程度で焼成することにより、p型シリコン基板11に不純物となるアルミニウムを拡散させ、BSF(Back Surface Field:裏面電界)層14としてp+型層とアルミニウム電極15とを同時に形成する(d)。
次いで、スクリーン印刷法などにより、p型シリコン基板11の裏面側に銀ペーストをアルミニウム電極15に一部重なるように塗布・乾燥し(e)、さらにスクリーン印刷法などにより、p型シリコン基板11の受光面側に銀ペーストを魚骨型のパターン状に塗布・乾燥する(f)。
次に、酸化性雰囲気下、600℃程度で焼成することにより銀電極16(基板裏面側)および電極部17(基板表面側)を形成する(g)。焼成時に電極部17は、反射防止膜13をファイヤースルーしてn型拡散層12と接触する。そして最後に、これら銀電極16および電極部17の表面にはんだ層(図示せず)をコーティングして太陽電池セルを得る(h)。
ここで、多結晶シリコンインゴット成長、単結晶成長、ウエハ加工、太陽電池セル製造プロセスにおいては、さまざまな不純物・欠陥が、シリコン結晶やウエハに導入・誘起される。これらの中で直接的にデバイス特性を劣化させるのは金属(特に遷移金属)不純物によるウエハの汚染であり、これらがウエハ内の少数キャリアのライフタイムを減少させ、太陽光によって発生したキャリアを再結合させる原因となり、太陽電池セルの特性を劣化させる。
不純物あるいは2次欠陥による悪影響を除去するには、汚染源の除去、汚染濃度の低減が重要であるが、完全にゼロにすることは不可能であり、ウエハのデバイス領域から汚染不純物を除去する“ゲッタリング”技術が注目されている。
ゲッタリング技術については、例えば特許文献1に良くまとめられており、中でもリン(P)あるいはホウ素(B)を高濃度に拡散したSiO2層により不純物金属を捕獲することはゲッタリング技術の起源であり、そのゲッタリング効果が広く認められている。
ゲッタリング技術を用いた製造方法として、DRAMなどの半導体メモリデバイスに対し、半導体ウエハの裏面にゲッタリングサイトを形成し、熱処理してウエハ中の汚染不純物をゲッタリングした後、汚染不純物を含むコンタミネイテッド層を除去する、というサイクルを繰り返し用いる製造方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
また、単結晶および多結晶ウエハにリンのゲッタリングを適用し、捕獲された金属不純物を含む層を除去する製造方法が報告されている(例えば、特許文献3参照。)。
志村忠夫著「半導体シリコン結晶工学」(1993):丸善 特開平4−218921公報 A.El Moussaoui et al.;Proc.14th European Photovoltaic Solar Energy Conference,Barcelona(1997) p.65
ところで、近年、地球環境問題への関心の高まりとともに太陽電池セル生産量が増加するにつれ、原料となる半導体基板、特に太陽電池用シリコンウエハの供給量が急激に増大している。
太陽電池セルは低コストで製造することが必要であり、使用する太陽電池用シリコンウエハは、必ずしも集積回路などの半導体デバイスの作製で使用するシリコンウエハほど純度が高いものではない。その理由は、高純度・高精度のものを用いようとすると必然的にコスト高になってしまうことによる。
しかしながら、不純物が混入したシリコンウエハを用いたり、あるいは上記のような低コスト化の観点から太陽電池セルを製造したりする場合、工程中に金属不純物が混入してウエハライフタイムが低下し、その結果として、太陽電池セルの変換効率を低下させるという問題がある。
すなわち、ゲッタリング技術の問題点としていえるのは、ウエハ基板にゲッタリング処理を実施しても、ゲッタリングサイトに一旦捕獲された汚染物質や工程設備内に残留している汚染物質が、後続の熱処理によってウエハ内部のデバイス活性領域に容易に拡散し、実質的にゲッタリング作用としての効果が半減することである。
本発明は、そのような問題を解決するためになされたもので、ゲッタリング作用が半減もしくは消滅するのを防止し、シリコンウエハのライフタイムを向上させることが可能な太陽電池セルの製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の製造方法は、シリコン基板表面にリンの熱拡散を実施してPSG層およびリン拡散層を形成し、次いで酸処理により前記PSG層を除去した後に熱処理を行い、この熱処理後に前記リン拡散層を含むシリコン基板表面層を除去することにより得られるシリコンウエハを用いて太陽電池セルを製造することを特徴としている。
この発明の製造方法によれば、PSG層に含まれた金属不純物を除去できるとともに、残留したリン拡散層を利用して再度熱処理することにより、金属不純物を更にゲッタリングすることができる。そして最後に、リン拡散層を含むシリコン基板表面層を除去することにより、金属不純物の再混入を防止することができる。
本発明の製造方法において、前記シリコン基板表面へのリンの熱拡散には、リンを含む液体の塗布による拡散またはリンを含む気体による気相拡散を用いることが好ましい。このような拡散方法を採用すると、PSG層およびリン拡散層を同時に形成することができる。なお、シリコン基板表面へのリンの熱拡散は、シリコン基板両面への拡散であってもよいし、またはシリコン基板片面への拡散であってもよい。
本発明の製造方法において、前記PSG層の除去処理は、フッ酸を含む酸による酸処理であることが好ましい。このような酸処理を採用すると、フッ酸によりリン拡散層は除去されず、PSG層のみを除去することが可能となる。
本発明の製造方法において、前記PSG層除去後の熱処理温度は800〜900℃であることが好ましい。このような温度範囲とすることにより、シリコンウエハの少数キャリアのライフタイムを効果的に向上させることができる。
本発明の製造方法において、前記熱処理後のリン拡散層を含むシリコン基板表面層の除去処理が、フッ酸と硝酸の混酸もしくは混酸に酢酸を含む酸による酸処理、または、水酸化ナトリウムを含むアルカリ水溶液による処理であることが好ましい。これらの酸処理またはアルカリ処理を採用することにより、リン拡散層を除去することができ、かつ、2次的な加工歪みを発生することなく、低コストで信頼性の高い、高スループットな除去処理が可能となる。
本発明の製造方法において、前記熱処理後のリン拡散層を含むシリコン基板表面層のエッチング量は3〜20μmであることが好ましい。この範囲を採用することにより、リン拡散層を完全に除去できるとともに、ウエハを過剰に薄くすることなく次の工程に移行できるので、後工程でのウエハの割れを回避することができる。
本発明の製造方法によれば、ゲッタリング作用が半減もしくは消滅するのを防止することができるので、シリコンウエハのライフタイムを向上させることができ、太陽電池セルの特性を改善することができる。従って、本発明の製造方法を採用することにより、多結晶シリコンインゴットのセンター部分のみならず、インゴットの端の部分(トップ部やボトム部)の品質の良くない部分から得られたシリコンウエハ基板についても、ライフタイムおよび太陽電池セルの特性を改善することができる。これにより、ウエハの選択肢を広げることができ、ブロック切断時に捨てられていたようなインゴットの端の部分を使用することが可能となる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
図1は、本発明の製造方法における太陽電池用シリコン基板ゲッタリングの一例を模式的に示す断面図である。図2はその太陽電池用シリコン基板ゲッタリングの工程を示す図である。
この例では、まず、シリコンウエハを作製するための単結晶または多結晶のシリコンインゴット(図示せず)を用意する。このインゴットを円盤状ブレードやワイヤーソーを用いた通常の方法によりスライスして、図1に示すシリコンウエハ基板1を作製する。基板のサイズは、例えば125mm×125mmまたは155mm×155mmで、その厚さは100〜500μm程度であるが、通常300μm程度のものを用いることが多い。
太陽電池セルはpn接合を有するが、これは、第1導電型のシリコン基板の表面側に第2導電型の不純物拡散層が形成されていることを意味する。
ここで、第1導電型がn型の場合には、第2導電型はp型であり、第1導電型がp型の場合には、第2導電型はn型である。p型を与える不純物としては、ホウ素、アルミニウムなどが挙げられ、n型を与える不純物としては、リン、砒素などが挙げられる。シリコン基板の場合、p型、n型ともにその比抵抗は0.1〜10Ω・cm程度である。現在、太陽電池として用いられているシリコンウエハ基板の導電型はp型が主流であり、以下、p型シリコン基板を使用した場合について図1及び図2を参照しながら説明する。
(1)基板準備として、シリコン基板1のスライス・エッチングを行う(図1(a),図2(a))。この処理を行うのは以下の理由による。
まず、スライス直後のシリコンウエハは、切断時の機械的衝撃によるダメージ層すなわち加工変質層を有している。本発明においては、この加工変質層を有したスライス完のシリコンウエハを用いたゲッタリングも可能であるが、スライス完のシリコンウエハでは、加工変質層中の洗浄しきれない残留不純物により汚染されていることが多く、熱処理工程において、逆に製造装置側を汚染しかねない。一旦製造装置が汚染されると、その後に投入されるシリコンウエハはすべて汚染される可能性があり、電気的特性に悪影響を及ぼすおそれがあるので、スライス後のシリコンウエハについては、酸またはアルカリ溶液中で化学エッチングして加工変質層を完全に除去するほうが好ましい。
(2)シリコン基板1表面に対しリンの熱拡散を行う(図2(b))。シリコン基板1表面へのリンの熱拡散には、リンを含む液体の塗布による拡散、または、リンを含んだ気体による気相拡散を用いることができる。熱拡散条件は900℃程度で20分以上行う。このような熱拡散を行うことにより、図1(b)に示すように、シリコン基板1表面にリン拡散層2およびPSG層3が同時に形成され、このリン熱拡散処理時に、ウエハ基板ライフタイム低減の原因となる不純物がゲッタリングされる。
なお、シリコン基板1表面へのリンの熱拡散は、シリコン基板1の両面への拡散であってもよいし、または、シリコン基板1の片面への拡散であってもよい。ただし、リンを含む液体の塗布による拡散の場合は、シリコン基板1の両面への塗布は工程の増加につながりコスト高となるので、シリコン基板1片面への塗布で実施する。この点(片面塗布)について、本発明者らは、研究・実験等によりシリコン基板1の厚みが300μm程度である場合、不純物となる金属の拡散速度は900℃程度では非常に大きく、片面拡散で両面拡散と同等なゲッタリング効果が得られることを見出している。一方、リンを含んだ気体による気相拡散の場合は、ガスの拡散により両面への均等なリン拡散を実施できるので、シリコン基板1に両面からの拡散を行う。
(3)以上のリンの熱拡散を行った後、図1(c)および図2(c)に示すようにPSG層3を除去する。PSG層3の除去処理は、フッ酸を含む酸による酸処理であることが好ましい。この酸処理を採用することにより、フッ酸によりリン拡散層2は除去されず、PSG層3のみを除去することが可能となる。これにより、汚染物質である不純物を含む層であるリン拡散層2とPSG層3のうち、PSG層3をまず除去することによって、後続の熱処理でゲッタリングサイトから汚染物質が遊離する、というゲッタリング技術の問題のひとつを防止することができる。
ただし、ゲッタリング技術の問題点としていえるのは、ウエハ内部には一回のリン拡散にて捕獲しきれない残留汚染物質があり、また、ゲッタリングによって捕獲しきれない不純物によるリン拡散工程装置内への汚染があって、後続の熱処理によってウエハ内部のデバイス活性領域に拡散することである。
このような問題点を解消する手法を本発明者らの研究等によって見出した。すなわち、図1(c)からわかるように、PSG層3を除去した後、シリコン基板1の表面にはリン拡散層2が残っており、PSG層3の除去により、シリコン基板1の表面にはリンを含むクリーンなシリコン層が現れるので、これを再びゲッタリングサイトとして利用できること、つまり、もう一度、リン拡散するなどの追加工程は不要であり、ゲッタリングサイトとしてのリフレッシュ機能を持たせることができることを見出した。
(4)従って、図2(d)に示すように、PSG層3の除去後のシリコン基板1(図1(c))に対して熱処理を行えば、新たなゲッタリングサイトにウエハ内部に残留している不純物をゲッタリングすることができ、少数キャリアのライフタイムが向上し、太陽電池特性が改善する。なお、熱処理後のリン拡散層は不純物を捕獲した新たなゲッタリングサイトとして機能しているので、図1(d)において熱処理後のリン拡散層を「リン拡散層2’」として示している。
このようなPSG層3の除去後の熱処理は、前記したリン拡散処理と別の装置で行うことが好ましい。リン拡散処理と同一装置で行うと、前工程である図2(b)の拡散処理で汚染物質が装置内部に残留しており、これらが再度ウエハ内部に拡散しゲッタリングしきれないものがデバイス活性領域に拡散してしまうという問題があり、これを避けるためである。
さらに、PSG層3の除去後の熱処理の温度は、800〜900℃で実施することが好ましい。熱処理温度が800℃よりも低いとゲッタリング効果が薄まり、1000℃程度であるとシリコン基板内部に新たな欠陥が生成しライフタイム低下の原因となる。従って熱処理を800〜900℃の温度範囲を行うことにより、シリコンウエハの少数キャリアのライフタイムを効果的に向上させることができる。
(5)ゲッタリングの最終工程では、図2(e)に示すように、汚染物質である不純物をゲッタリングしたリン拡散層2’を除去し、図1(e)に示したシリコン基板1’を得る(改質後のシリコン基板という意味で「シリコン基板1’」とする)。
熱処理後のリン拡散層2’を含むシリコン基板1’の表面層の除去処理には、フッ酸と硝酸の混酸もしくは混酸に酢酸を含む酸による酸処理、または、水酸化ナトリウムを含むアルカリ水溶液による処理が好ましい。これらの酸処理またはアルカリ処理を採用することにより、リン拡散層2’を除去することができ、かつ、2次的な加工歪みを発生することなく、低コストで信頼性の高い、高スループットな除去処理ができる。
また、熱処理後のリン拡散層2’を含むシリコン基板1’表面のエッチング量は3〜20μmであることが好ましい。この範囲を採用することにより、リン拡散層を完全に除去できるとともに、シリコンウエハを過剰に薄くすることなく次の工程に移行できるので、後工程でのウエハの割れを回避することができる。
そして、本発明の太陽電池セルの製造方法は、上記したゲッタリング工程以外は、基本的に、図4に示した従来の太陽電池セルの製造工程と同じであり、図4(b)のn型拡散層形成工程以降の工程にしたがって太陽電池セルを製造することができる。
このような本発明の製造方法によれば、少数キャリアのライフタイムが向上され、特性が改善された太陽電池セルを提供することができる。
<実施例>
以下、本発明の実施例を比較例とともに具体的に説明する。なお、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。
以下の工程により、図3に示す太陽電池セルを作製した。
シリコン基板1として、大きさ125mm×125mm、厚さ約300μmのp型シリコンウエハ基板を用いた。まず、表面清浄化のために、p型シリコンウエハ基板をアルカリ(水酸化ナトリウムを含む)エッチングと純水リンスを行った。
ここで、サンプルとなるウエハを3条件[A]、[B]、[R]に分けた。3条件のうち、本発明の実施例である2条件[A]、[B]は、図1および図2に示すゲッタリング工程を経て太陽電池セルを作製するサンプルである。
そのうち条件[A]のサンプルは、リン化合物および有機溶剤などからなる液体の塗布による片面拡散により、ゲッタリング用のリン拡散を実施したものである。条件[B]のサンプルはリンを含んだPOCl3による気相両面拡散により、ゲッタリング用のリン拡散を実施したものである。
一方、条件[R]は比較例であり、図4に示す従来技術により太陽電池セルを作製するサンプルである。
以下、条件[A]、[B]のゲッタリング工程について記述する。
条件[A]では、シリコン基板の受光面となるべき片側表面に900℃で20分程度リンの熱拡散を行ってリン拡散層とPSG層を基板片面に形成した。このリン拡散層の面抵抗値は約50Ωであった。条件[B]では、シリコン基板の両面に900℃で20分程度リンの熱拡散を行ってリン拡散層とPSG層を基板両面に形成した。このリン拡散層の面抵抗値は約50Ωであった。
条件[A]と条件[B]との違いは以上の工程までであり、以下のゲッタリング工程では同一の処理を施した。リン拡散層およびPSG層が形成された条件[A]、[B]の各サンプルについて、フッ酸水溶液中への浸漬により、PSG層を除去した。このときリン拡散層は除去されない。
次に、これら条件[A]、[B]の各サンプルを別の拡散炉装置に投入し、900℃で1時間熱処理を行った。
最後に、条件[A]、[B]で形成され、シリコン基板表面に残ったリン拡散層をアルカリ(水酸化ナトリウムを含む)エッチングで片側10μm程度除去した。
一方、条件[R]については、条件[A]、[B]のサンプルと同程度の厚さとなるように、シリコン基板のアルカリエッチングのみを行った。
以上の3条件[A]、[B]、[R]のウエハ(サンプル)を用いて図3、図4の工程にしたがって太陽電池セルを作製した。
まず、シリコン基板の受光面となるべき片側表面に900℃でリンの熱拡散を行い、不純物拡散層として面抵抗値が約50Ωのn型拡散層12を形成した。次いで、そのn型拡散層12上に反射防止膜13としてプラズマCVD法により厚さ約70nmのシリコン窒化膜を形成した。
次に、シリコン基板の裏面にアルミペーストをスクリーン印刷し、150℃で乾燥した後、IR焼成炉に入れ、空気中において700℃で焼成し、BSF層14およびアルミ電極15を形成した。さらに、シリコン基板の裏面に銀ペーストをパターン状にスクリーン印刷・乾燥し、シリコン基板の受光面に銀ペーストを魚骨状パターンにスクリーン印刷・乾燥した後に、酸化性雰囲気下、600℃で2分間焼成して銀電極16(基板裏面側)および電極部17(基板表面側)を形成した。そして最後に、銀電極16および電極部17をはんだ層(図示せず)でコーティングすることにより、それぞれの条件下における太陽電池セルを得た。
以上の処理で得られた太陽電池の電流−電圧特性について評価した測定結果と、ゲッタリング工程を経た直後の少数キャリアライフタイムの測定結果を、実施例の各条件[A]、[B]と、比較例の条件[R]の各工程内容とともに下記の表1に示す。ただし、少数キャリアライフタイムの測定は、反射マイクロ波光導電減衰法(μ−PCD法:Photo−Conductive−Decay)に基づいて行った。
Figure 2005129714
表1の結果から明らかなように、ゲッタリング工程を実施した後のシリコン基板のライフタイムは、従来使用されているシリコン基板よりも向上しており、太陽電池セルにおいても特性向上をもたらすことがわかる。
本発明は、太陽電池用基板材料として有用なシリコンウエハを用いた太陽電池セルの製造工程において発生する重金属などの汚染物をゲッタリング除去するのに有効に利用できる。
本発明の製造方法において実施する太陽電池用シリコン基板ゲッタリング工程の一例を模式的に示す断面図である。 本発明の製造方法において実施する太陽電池用シリコン基板ゲッタリング工程の一例を示す図である。 従来の太陽電池セルの一例を示す模式的に示す平面図(a)およびその(a)のX−X線断面図を併記して示す図である。 従来の太陽電池セルの製造工程を示す図である。
符号の説明
1 シリコン基板
1’ 改質後のシリコン基板
2 リン拡散層
2’ 熱処理後のリン拡散層
3 PSG(リンシリケイトガラス)層
11 p型シリコン基板
12 n型拡散層
13 反射防止膜
14 BSF層
15 アルミニウム電極
16 銀電極(基板裏面側)
17 電極部(基板受光面側)

Claims (7)

  1. シリコン基板表面にリンの熱拡散を実施してPSG層およびリン拡散層を形成し、次いで酸処理により前記PSG層を除去した後に熱処理を行い、この熱処理後に前記リン拡散層を含むシリコン基板表面層を除去することにより得られるシリコンウエハを用いて太陽電池セルを製造することを特徴とする太陽電池セルの製造方法。
  2. 前記シリコン基板表面へのリンの熱拡散が、リンを含む液体の塗布による拡散、または、リンを含む気体による気相拡散であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池セルの製造方法。
  3. 前記シリコン基板表面へのリンの熱拡散が、シリコン基板両面への拡散、または、シリコン基板片面への拡散であることを特徴とする請求項1または2に記載の太陽電池セルの製造方法。
  4. 前記PSG層の除去処理が、フッ酸を含む酸による酸処理であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の太陽電池セルの製造方法。
  5. 前記PSG層除去後の熱処理の温度が800〜900℃であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池セルの製造方法。
  6. 前記熱処理後のリン拡散層を含むシリコン基板表面層の除去処理が、フッ酸と硝酸の混酸もしくは混酸に酢酸を含む酸による酸処理、または、水酸化ナトリウムを含むアルカリ水溶液による処理であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の太陽電池セルの製造方法。
  7. 前記熱処理後のリン拡散層を含むシリコン基板表面層のエッチング量が3〜20μmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の太陽電池セルの製造方法。

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