JP2005129264A - 多孔質金属箔及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 非水電解液二次電池の電極用集電体として用いた場合に、電池の容量が高まり、またサイクル特性が向上した多孔質金属箔を提供すること。
【解決手段】 本発明の多孔質金属箔は、直径0.01〜200μmの微細孔を多数有し、該微細孔の存在密度が5〜10000個/cm2で、厚さが1〜100μmであることを特徴とする。この金属箔は、その構成材料と異質の材料からなる被覆体を、キャリア箔上に0.001〜1μmの厚さで形成し、その上に前記金属箔の構成材料を電解めっきによって電析させることで製造される。
【選択図】 図1

Description

本発明は、多孔質金属箔及びその製造方法に関する。また本発明は、かかる多孔質金属箔を備えてなる非水電解液二次電池用負極に関する。
リチウムイオン二次電池用の集電体として、表面に適度の凹凸を形成したものや、厚さ方向に貫通する微細孔を形成したものが知られている。例えば、厚み方向に貫通する連通孔が三次元網目構造をなして形成されている多孔質電解金属箔からなる集電体が提案されている(特許文献1参照)。この金属箔は、ドラムカソード体の表面に金属を電析してその金属箔層を形成し、それをドラムカソード体から剥離して電解金属箔にする際に、剥離後に露出したドラムカソード体の表面に、少なくとも厚みが14nmである酸化皮膜を形成し、その上に電解金属箔形成することで製造される。しかしこの金属箔の開孔率や開孔径は、ドラムカソード体に形成する酸化皮膜の厚さに依存し、しかもこの酸化皮膜は常に箔とともに少しずつ剥がれていくので、開孔率や開孔径の制御が困難である。また、開孔径が比較的小さい上に三次元網目構造を有しているので、箔の表裏にそれぞれ塗布される活物質ペーストどうしが直接接触することが難しい。従ってペーストと箔との密着性を向上させるには限界があると考えられる。
前記の金属箔の有する問題点を解決すべく、本出願人は先に、平面方向平均粒径1〜50μmの銅粒子を互いに平面的に接合するように電析によって形成した多孔質銅箔であって、光透過率が0.01%以上であると共に、箔を形成する際に陰極面側であった表面の表面粗度とその反対側の表面の表面粗度との差がRzで5〜20μmの範囲にある多孔質銅箔を提案した(特許文献2参照)。この銅箔をリチウムイオン二次電池の集電体として用いると、(イ)電解液が流通しやすくなり、限られた量の電解液を均一に活物質へ浸透させることができる、(ロ)充放電中におけるLiイオンや電子の授受を妨げにくくなる、(ハ)表面に適度の凹凸を有しているので、活物質との密着性に優れている、という有利な効果が奏される。しかしこの多孔質銅箔の製造方法では、ドラム状カソード体に銅を電析した後、該カソード体から剥離された状態の該銅箔に各種の加工が施されることから、銅箔の状態が不安定になり、ハンドリング性が良好とは言えず、大量生産が容易ではない。また、この多孔質銅箔を集電体として用い、その各面に負極合剤を塗布してなる非水電解液二次電池用負極においては、リチウムの吸脱蔵に起因して負極活物質が脱落しやすくなり、サイクル特性が低下しやすいという問題がある。
特開平8−236120号公報 国際公開第00/15875号パンフレット
従って本発明の目的は、リチウムイオン二次電池の電極用集電体として用いた場合に、リチウムイオン二次電池の容量やサイクル特性を向上させ得る多孔質金属箔を提供することにある。
本発明は、直径0.01〜200μmの微細孔を多数有し、該微細孔の存在密度が5〜10000個/cm2で、厚さが1〜100μmであることを特徴とする多孔質金属箔を提供することにより前記目的を達成したものである。
また本発明は前記金属箔の好ましい製造方法として、
前記金属箔の構成材料と異質の材料からなる被覆体を、キャリア箔上に0.001〜1μmの厚さで形成し、
その上に前記金属箔の構成材料を電解めっきによって電析させて該金属箔を形成することを特徴とする多孔質金属箔の製造方法を提供するものである。
また本発明は前記金属箔の別の好ましい製造方法として、
平均粒径D50が2〜200nmの炭素質材料を含む塗工液を支持体上に0.001〜1μmの厚さで塗布し、
その上に前記金属箔の構成材料を電解めっきによって電析させて該金属箔を形成することを特徴とする多孔質金属箔の製造方法を提供するものである。
また本発明は前記金属箔の更に別の好ましい製造方法として、
前記金属箔の構成材料を含み、且つ平均粒径D50が2〜200nmの炭素質材料が懸濁しためっき液を用い、電解めっきによって前記金属箔の構成材料を支持体上に電析させて前記金属箔を形成することを特徴とする多孔質金属箔の製造方法を提供するものである。
また本発明は前記金属箔を備えてなることを特徴とする非水電解液二次電池用負極及び該負極を備えてなることを特徴とする非水電解液二次電池を提供するものである。
本発明の多孔質金属箔を非水電解液二次電池の電極用集電体として用いると、電解液の流通経路が十分に確保されることから、非水電解液二次電池の容量が高まり、また活物質がリチウムを吸脱蔵することに起因して電極から脱落することが効果的に防止され、サイクル特性が向上する。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の多孔質金属箔(以下、単に金属箔ともいう)は微細孔を多数有するものである。本発明の金属箔には、これをその厚み方向に貫通する微細孔及び途中で閉塞している微細孔の両方が存在している。両者のうち、本発明にいう微細孔とは金属箔を厚み方向に貫通する微細孔を意味する。しかしこのことは、本発明において、途中で閉塞している微細孔が存在する金属箔を排除するものではない。またそのような金属箔が好ましくないということを意味するものでもない。
本発明においては、金属箔における微細孔の直径を0.01〜200μm、好ましくは0.05〜50μm、更に好ましくは0.1〜10μmとする。微細孔の直径が0.01μm未満では、金属箔を非水電解液二次電池の電極用集電体として用いた場合に、非水電解液の流通を十分に確保することができない。微細孔の直径が200μm超では、後述する金属箔の厚みとの関係で、金属箔の強度が低下するおそれがある。また、金属箔を非水電解液二次電池の電極用集電体として用いた場合に、リチウムの吸脱蔵に起因する活物質の脱落が起こりやすくなり、非水電解液二次電池のサイクル特性が低下するおそれがある。なお本発明の金属箔においては、これを貫通するすべての微細孔が前記範囲の直径を有していることを要せず、金属箔の製造工程で不可避的に発生する前記範囲外の直径の微細孔がごく少数存在していることは許容される。微細孔の直径の測定方法は、後述する実施例において詳述する。
前記の直径を有する微細孔は、金属箔のどの部位をとってみても、1cm2の面積内に5〜10000個、好ましくは10〜5000個、更に好ましくは100〜2000個の存在密度で存在している。微細孔の存在密度が1個/1cm2未満では、金属箔を非水電解液二次電池の電極用集電体として用いた場合に、十分な量の非水電解液を活物質に供給することができない。存在密度を10000個/cm2超とすることは、前述した微細孔の直径の上限値との関係で、金属箔の強度が低下するおそれがある。微細孔の存在密度は、例えば金属箔表面の走査型電子顕微鏡観察によって測定できる。
金属箔の厚みは1〜100μmとし、好ましくは2〜20μm、更に好ましくは3〜10μmとする。金属箔の厚みが1μm未満の場合、該金属箔を非水電解液二次電池の電極用集電体として用いると、エネルギー密度が向上するので好ましいが、機械的強度が十分でなく、また製造が困難になる。厚みが100μm超となると、貫通する微細孔を形成することが容易でなく、また金属箔を非水電解液二次電池の電極用集電体として用いた場合にエネルギー密度を高めることが困難となる。また電解液の円滑な流通の妨げにもなる。
金属箔は各種金属材料から構成され得る。例えばCu、Ni、Co、Fe、Cr、Sn、Zn、In、Ag及びAuのうちの少なくとも1種類の金属を含む金属箔とすることができる。つまり、これらの金属の単体若しくはこれらの金属の二種以上の合金又はこれらに加えて他の元素を含む材料から金属箔を構成することができる。金属箔を非水電解液二次電池の電極用集電体として用いる場合には、Cu、Ni、Co、Fe、Cr、Auから構成することが、リチウムとの反応性が低い点から好ましい。
次に本発明の金属箔の好ましい製造方法について図1を参照しながら説明する。先ず図1(a)に示すようにキャリア箔1を用意する。キャリア箔1の材質に特に制限はない。キャリア箔1は導電性であることが好ましい。この場合、導電性を有していれば、キャリア箔1は金属製でなくてもよい。しかし金属製のキャリア箔1を用いることで、金属箔の製造後にキャリア箔1を溶解・製箔してリサイクルできるという利点がある。金属製のキャリア箔1を用いる場合、Cu、Ni、Co、Fe、Cr、Sn、Zn、In、Ag、Au、Al及びTiのうちの少なくとも1種類の金属を含んでキャリア箔1が構成されていることが好ましい。キャリア箔1は、金属箔を製造するための支持体として用いられるものであることから、製造工程においてヨレ等が生じないような強度を有していることが好ましい。従ってキャリア箔1は、その厚みが10〜50μm程度であることが好ましい。
次に図1(b)に示すように、キャリア箔1の一面に、被覆体2を所定の手段によって被覆する。被覆前にキャリア箔1に酸洗浄等の前処理を施し、その表面を清浄にしておくことが好ましい。被覆体2は、金属箔の形成面の電子伝導性を不均一な状態にすることで、金属箔に多数の微細孔を形成するために用いられる。被覆体2は、その厚みが0.001〜1μm、特に0.002〜0.5μm、とりわけ0.005〜0.2μmとなるように形成されることが好ましい。この程度の厚みにすることで、被覆体2は、キャリア箔1の表面を不連続に、例えば島状に被覆することになるからである。被覆体2を不連続に形成することは、先に述べた直径や存在密度を有する微細孔を容易に形成する点から有利である。なお図1(b)においては、理解の助けとするため、被覆体2の大きさが強調されて描かれている。
被覆体2は、金属箔の構成材料と異質の材料からなる。これによって後述する剥離工程において、キャリア箔1から金属箔を首尾良く剥離することができる。特に被覆体2は、金属箔の構成材料と異質の材料であって、且つCu、Ni、Co、Mn、Fe、Cr、Sn、Zn、In、Ag、Au、C、Al、Si、Ti及びPdのうちの少なくとも1種類の元素を含んで構成されていることが好ましい。
被覆体2の形成方法に特に制限はない。例えば、後述する金属箔の形成方法との関係で、被覆体2の形成方法を選択することができる。具体的には、金属箔を電解めっきで形成する場合には、被覆体2も電解めっきで形成することが製造効率等の点から好ましい。尤も他の方法、例えば無電解めっき、スパッタリング法、物理気相蒸着法(PVD)、化学気相蒸着法(CVD)、ゾルゲル法又はイオンプレーティング法によって被覆体2を形成することも可能である。
電解めっきによって被覆体2を形成する場合には、被覆体2の構成材料に応じて適切なめっき浴やめっき条件が選択される。例えば被覆体2をすずから構成する場合には、めっき浴として以下の組成を有するものや、ほうふっ化すず浴を用いることができる。このめっき浴を用いる場合の浴温は15〜30℃程度であり、電流密度は0.5〜10A/dm2程度であることが好ましい。
・SnSO4 30〜70g/l
・H2SO4 60〜150g/l
・クレゾールスルホン酸 70〜100g/l
先に述べた通り、被覆体2は、金属箔の形成面の電子伝導性を不均一な状態にするために用いられる。従って、被覆体2の構成材料の電子伝導性がキャリア箔1の電子伝導性と大きく異なれば、被覆体2を形成することで金属箔の形成面の電子伝導性が直ちに不均一な状態になる。例えば被覆体2の構成材料としてカーボンを用いるような場合である。一方、被覆体2の構成材料として、キャリア箔1と同程度の電子伝導性を有する材料、例えばすず等を始めとする各種金属材料を用いた場合には、被覆体2の形成によっては、金属箔の形成面の電子伝導性が直ちに不均一な状態とはならない。そこで、そのような材料から被覆体2を構成する場合には、被覆体2が形成されたキャリア箔1を、乾燥状態下に含酸素雰囲気、例えば大気中にさらすことが好ましい。これによって被覆体2の表面(及びキャリア箔1の露出面)を酸化させる(図1(c)参照)。この操作によって、金属箔の形成面の電子伝導性が不均一な状態になる。この状態下に後述する電解めっきを行うと、被覆体2の表面とキャリア箔1の露出面とで電析速度に差が生じ、先に述べた直径や存在密度を有する微細孔を容易に形成することができる。酸化の程度は本発明において臨界的ではない。例えば、被覆体2が形成されたキャリア箔1を大気中に10〜30分程度放置しておけば十分であることが本発明者らの検討によって判明した。尤も被覆体2が形成されたキャリア箔1を強制的に酸化させることは妨げられない。
被覆体2が形成されたキャリア箔1を、含酸素雰囲気にさらすときにこれを乾燥状態にする理由は、酸化を効率的に行うためである。例えば電解めっきによって被覆体2を形成した場合には、キャリア箔1をめっき浴から引き上げた後にドライヤ等を用いてこれを乾燥させ、次いで所定時間大気中に放置すればよい。被覆体2の形成方法としてスパッタリング法や各種蒸着法等の乾式法を用いる場合には乾燥操作は不要であり、被覆体2の形成後、そのまま大気中に放置しておけばよい。
被覆体2を酸化させた後、図1(d)に示すように、その上に剥離剤3を施す。剥離剤3は、後述する剥離工程において、キャリア箔1から金属箔を首尾良く剥離するために用いられる。剥離剤3としては有機化合物を用いることが好ましく、特に窒素含有化合物又は硫黄含有化合物を用いることが好ましい。窒素含有化合物としては、例えばベンゾトリアゾール(BTA)、カルボキシベンゾトリアゾール(CBTA)、トリルトリアゾール(TTA)、N’,N’−ビス(ベンゾトリアゾリルメチル)ユリア(BTD−U)及び3−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾール(ATA)などのトリアゾール系化合物が好ましく用いられる。硫黄含有化合物としては、メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、チオシアヌル酸(TCA)および2−ベンズイミダゾールチオール(BIT)などが挙げられる。剥離剤を施す工程は、あくまでも、後述する剥離工程において、キャリア箔1から金属箔を首尾良く剥離するために行われるものである。従って、この工程を省いても多孔質な金属箔を形成することができる。
次に図1(e)に示すように、剥離剤3を施した上に、金属箔の構成材料を電解めっきによって電析させて金属箔4を形成する。形成された金属箔4には、先に述べた直径の微細孔が、先に述べた存在密度で多数形成されている。なお図1(e)においては、被覆体2の頂点の位置に微細孔が形成されているように描かれているが、これは便宜的なものであり、実際には、被覆体2の頂点の位置に必ず微細孔が形成される訳ではない。めっき浴やめっき条件は、金属箔の構成材料に応じて適切に選択される。例えば金属箔4をNiから構成する場合には、めっき浴として以下の組成を有するワット浴やスルファミン酸浴を用いることができる。これらのめっき浴を用いる場合の浴温は40〜70℃程度であり、電流密度は0.5〜20A/dm2程度であることが好ましい。
・NiSO4・6H2O 150〜300g/l
・NiCl2・6H2O 30〜60g/l
・H3BO3 30〜40g/l
以上の方法によって金属箔4を製造すれば、先に背景技術の項で述べた特許文献1記載の製造方法と異なり、微細孔の直径や存在密度を制御することが容易である。この理由は次の通りである。特許文献1記載の製造方法では、金属箔が電析される面が常に同じ面、即ちドラムカソード体の周面であり、当該面の状態が時間と共に変化してしまう。これに対して本発明の製造方法では、常に新しい面、即ち製造の度ごとに取り替えられるキャリア箔の表面に金属箔が電析されるので、当該面の状態を常に一定に保てるからである。
得られた金属箔4は、先に述べた通りその厚さが薄いものなので、これを単独で取り扱うには不都合な場合が多い。そこで、金属箔4に対して所定の加工(例えば後述する活物質層の形成等)が完了するまで、金属箔4をキャリア箔1から剥離しないでおくことが好ましい。そして、所定の加工が完了した後に、図1(f)に示すように金属箔4をキャリア箔1から剥離すればよい。キャリア箔1と金属箔4との間には、先に述べた通り剥離剤3が施されているので、キャリア箔1からの金属箔4の剥離は首尾良く行える。なお、図1(f)では被覆体2がキャリア箔側に残っている状態が示されているが、被覆体2がキャリア箔側に残るか、金属箔側に残るかはまちまちである。剥離剤についても同様である。何れの場合であっても、被覆体及び剥離剤の使用量は僅かなので、金属箔に悪影響を及ぼすことはない。
以上の方法に代えて、本発明の金属箔4は次に述べる方法(以下、別法1という)によっても製造することができる。まず、炭素質材料の粒子を含む塗工液、例えばペーストなどを用意する。炭素質材料としては例えばアセチレンブラックなどを用いることができる。炭素質材料はその平均粒径D50(レーザー回折散乱法及び走査型電子顕微鏡観察の併用によって測定)が2〜200nm、特に10〜100nm程度であることが、先に述べた直径や存在密度を有する微細孔を容易に形成し得る点から好ましい。この塗工液を所定の支持体上に塗布する。塗布厚さは0.001〜1μm、特に0.05〜0.5μm程度であることが好ましい。次いで塗膜上に、金属箔の構成材料を電解めっきによって電析させて金属箔を形成する。電解めっきの条件は先に述べた方法におけるそれと同様とすることができる。
支持体としては先に述べたキャリア箔が典型的なものとして挙げられるが、これに限られない。例えば後述するように、非水電解液二次電池用負極の製造過程にある中間体を電解めっきの対象としてもよい。
金属箔の形成後には、該金属箔は支持体から剥離してもよく、或いは剥離せずそのままにしておいてもよい。例えば後述する非水電解液二次電池用負極の製造にこの方法を適用する場合には、金属箔を剥離する必要はない。逆に金属箔を剥離する場合には、剥離性を良好にする観点から、炭素質材料を含むペーストを塗布した上に剥離剤を施し、その上に金属箔を電析させることが好ましい。剥離剤としては先に述べた方法で用いられるものと同様のものを用いることができる。
別法1に代えて次に述べる方法(以下、別法2という)によっても金属箔を形成することができる。別法2においては、まず金属箔の構成材料を含むめっき浴を用意する。例えば金属箔をNiから構成する場合には、先に述べたワット浴やスルファミン酸浴を用意すればよい。このめっき浴に炭素質材料の粒子を加えて懸濁させる。炭素質材料としては別法1で用いられるものと同様のものを用いることができる。炭素質材料の粒径も別法1と同様とすることができる。めっき浴に懸濁させる炭素質材料の量は、0.5〜50g/l、特に1〜10g/l程度であることが、先に述べた直径や存在密度を有する微細孔を容易に形成し得る点から好ましい。
めっき浴を撹拌して炭素質材料を懸濁させた状態下に、所定の支持体に対して電解めっきを行い金属箔の構成材料を電析させて金属箔4を得る。支持体としては別法1で用いたものと同様のものを用いることができる。金属箔の形成後の金属箔の取り扱いについても別法1と同様とすることができる。なお所望により剥離剤を施した支持体を用いることができる。これによって金属箔の剥離を首尾良く行うことができる。
以上の各方法によって得られた金属箔は、非水電解液二次電池用の電極用集電体、特に負極用集電体として好適に用いられる。図2には本発明の金属箔を備えてなる非水電解液二次電池用負極6の構造が模式的に示されている。負極6は負極活物質の粒子7を含む活物質層5が、一対の金属箔4a,4b間に挟持されて構成されている。この負極6によれば、金属箔4a,4bを通じて電解液の流通経路が十分に確保されることから、非水電解液二次電池の容量が高まる。集電体を備えた従来の負極では、集電体を通じて電解液を活物質層に供給することは不可能であった。そのため、負極の両面を電極反応に利用したい場合には、集電体の各面に活物質層を形成せざるを得なかった。これに対して図2に示す負極6では、集電体として用いられる金属箔の一面にのみ活物質層を形成すればよいという利点がある。このことは、後述するエネルギー密度の向上にも寄与している。
図2に示す負極6においては、金属箔4a,4bを構成する材料が活物質層5の厚み方向全域に亘って浸透していることが好ましい。そして浸透した該材料中に活物質の粒子7が存在していることが好ましい。これによって、活物質層5と金属箔4a,4bとの密着性が強固なものとなり、活物質の脱落が一層防止される。また活物質層5中に浸透した前記材料を通じて金属箔4a,4bと活物質との間に電子伝導性が確保されるので、電気的に孤立した活物質が生成すること、特に活物質層5の深部に電気的に孤立した活物質が生成することが効果的に防止され、集電機能が保たれる。その結果、負極としての機能低下が抑えられる。更に負極の長寿命化も図られる。このことは、活物質として半導体であり電子導電性の乏しい材料、例えばシリコン系材料を用いる場合に特に有利である。
活物質層5に存在する金属箔4a,4bを構成する材料は、活物質層5をその厚み方向に貫いており、金属箔4a,4bとつながっていることが好ましい。それによって金属箔4a,4bは前記材料を通じて電気的に導通することになり、負極6全体としての電子伝導性が一層高くなる。つまり本実施形態の負極6は、負極全体が一体として集電機能を有する。金属箔4a,4bを構成する材料が活物質層5の厚み方向全域に亘って浸透して両金属箔同士がつながっていることは、該材料を測定対象とした電子顕微鏡マッピングによって求めることができる。更に、金属箔4a,4bのうちの少なくとも一方(図2においては金属箔4a)における微細孔の一部に、金属箔4a,4bを構成する材料が進入していると、アンカー効果によって活物質層5と金属箔との密着性が強固なものとなるので好ましい。この場合、金属箔4a,4bを構成する材料は、微細孔を完全に埋めないように該微細孔へ進入していることが、電解液の流通を確保する点から好ましい。金属箔4a,4bを構成する材料を、活物質層中に浸透させるための好ましい方法は後述する。
また図2に示す負極6においては、活物質層5は、一対の金属箔4a,4b間に挟持されているので、リチウムの吸脱蔵に起因して活物質の粒子が膨張収縮を繰り返しても負極2から脱落しづらくなる。更に、前述したアンカー効果で、活物質層5と金属箔4a,4bとの密着性が良好になる。これらの結果、サイクル特性が向上する。しかも、金属箔4a,4bはその厚さが薄いので、単位体積当たり及び単位重量当たりのエネルギー密度を高くすることができる。
負極活物質としては、例えば容量の高い活物質であるSiやSnを含有する合金の粒子が好適に用いられる。活物質粒子の平均粒径D50は0.1〜30μmであり、好ましくは0.5〜5μmである。このような活物質の粒子を含む活物質層5はその厚みが3〜30μmであり、好ましくは5〜20μmである。このようにすることで、電池を高容量化、高エネルギー密度化することができる。
図2に示す負極6は、先に述べた金属箔の製造方法を利用して製造することができる。例えば、まず図1(a)〜(e)に示す方法に従い一方の金属箔4aを製造する。次に、金属箔4aをキャリア箔から剥離しない状態で、金属箔4a上に活物質層5を形成する。活物質層5は、例えば活物質の粒子や導電性材料の粒子を含むペーストを塗布することで形成される。活物質層5に、先に述べた別法1に従い、平均粒径D50が2〜200nmの炭素質材料を含む塗工液を0.001〜1μmの厚さで塗布し、その上に金属箔の構成材料を電解めっきによって電析させて他方の金属箔4bを形成する。この場合、めっき液が活物質層5内に浸入して、活物質層5と金属箔4aとの界面にまで達し、その状態下に電解めっきが行われる。その結果、(イ)活物質層5の内部、(ロ)活物質層5の外面側(即ちめっき液と接している面側)及び(ハ)活物質層5の内面側(即ち金属箔4aと対向している面側)において金属材料が析出する。これにより金属箔4bが形成されると共に金属箔4bを構成する材料が活物質層5の厚み方向全域に亘って浸透して金属箔4aにまで達する。その一部は金属箔4aの微細孔の一部に進入する。最後に、初めに製造した金属箔4aをキャリア箔から剥離する。これによって図2に示す負極6が得られる。こ のようにして得られた負極6は、後述する実施例から明らかなように、各面における電極特性がほぼ同等なものとなる。即ち、各金属箔4a,4bは微細孔の大きさやその存在密度がほぼ同等なものとなっている。
このようにして得られた負極6は、公知の正極、セパレータ、非水系電解液と共に用いられて非水電解液二次電池となされる。正極は、正極活物質並びに必要により導電剤及び結着剤を適当な溶媒に懸濁し、正極合剤を作製し、これを集電体に塗布、乾燥した後、ロール圧延、プレスし、さらに裁断、打ち抜きすることにより得られる。正極活物質としては、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムコバルト複合酸化物等の従来公知の正極活物質が用いられる。セパレーターとしては、合成樹脂製不織布、ポリエチレン又はポリプロピレン多孔質フイルム等が好ましく用いられる。非水電解液は、リチウム二次電池の場合、支持電解質であるリチウム塩を有機溶媒に溶解した溶液からなる。リチウム塩としては、例えば、LiC1O4、LiA1Cl4、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiSCN、LiC1、LiBr、LiI、LiCF3SO3、LiC49SO3等が例示される。
以下実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に制限されるものではない。
〔実施例1〕
電解によって得られた銅製のキャリア箔(厚さ35μm)を室温で30秒間酸洗浄した。引き続き室温で30秒間純水洗浄した。次いで以下の浴組成を有するすずめっき浴にキャリア箔を浸漬させて電解めっきを行いすずからなる被覆体を形成した。電流密度は2A/dm2、浴温は30℃とした。陽極にはすず電極を用いた。電源は直流電源を用いた。被覆体は20nmの厚さに形成した。めっき浴から引き上げた後、30秒間純水洗浄して大気中で乾燥後、15分間放置して被覆体の酸化を行った。
・SnSO4 50g/l
・H2SO4 100g/l
・クレゾールスルホン酸 100g/l
被覆体が形成されたキャリア箔を、40℃に保たれた3g/lのCBTA溶液中に30秒間浸漬した。これにより剥離層形成処理を行った。剥離層形成処理後、溶液から引き上げて15秒間純水洗浄した。
次に以下の浴組成を有するワット浴にキャリア箔を浸漬させて電解めっきを行いニッケルからなる第1の金属箔を形成した。電流密度は5A/dm2、浴温は50℃とした。陽極にはニッケル電極を用いた。電源は直流電源を用いた。金属箔は3μmの厚さに形成した。めっき浴から引き上げた後、30秒間純水洗浄して大気中で乾燥させた。このようにして得られた金属箔の走査型電子顕微鏡写真及び光を透過させた状態での写真を図3(a)及び図3(b)に示す。
・NiSO4・6H2O 250g/l
・NiCl2・6H2O 45g/l
・H3BO3 30g/l
次に、金属箔上に負極活物質の粒子を含むスラリーを膜厚15μmになるように塗布し活物質層を形成した。活物質粒子はSi80wt%−Ni20wt%の組成を有する合金であり、平均粒径はD50=1.5μmであった。スラリーの組成は、活物質:Ni粉:アセチレンブラック:ポリピニリデンフルオライド=60:34:1:5であった。
活物質層上に、平均粒径D50が40nmの炭素質材料(アセチレンブラック)を含むペーストを膜厚0.5μmになるように塗布した。引き続き、この塗膜上に、前述した電解条件と同条件で電解めっきを行いニッケルからなる第2の金属箔を形成した。金属箔は3μmの厚さに形成した。
最後に、第1の金属箔とキャリア箔とを剥離して、一対の金属箔間に活物質層が挟持されてなる非水電解液二次電池用負極を得た。
〔比較例1〕
電解によって得られた銅製のキャリア箔(厚さ35μm)を室温で30秒間酸洗浄した。引き続き室温で30秒間純水洗浄した。次いでキャリア箔を、40℃に保たれた3g/lのCBTA溶液中に30秒間浸漬した。これにより剥離層形成処理を行った。剥離層形成処理後、溶液から引き上げて15秒間純水洗浄した。
次に実施例1と同様の浴組成を有するワット浴にキャリア箔を浸漬させて電解めっきを行いニッケルからなる第1の金属箔を形成した。電解条件は実施例1と同様とした。
次に、金属箔上に負極活物質の粒子を含むスラリーを膜厚15μmになるように塗布し活物質層を形成した。活物質及びスラリーは実施例1と同様のものを用いた。
活物質層上に、実施例1と同条件で電解めっきを行いニッケルからなる第2の金属箔を形成した。金属箔は3μmの厚さに形成した。最後に、第1の金属箔とキャリア箔とを剥離して、一対の金属箔間に活物質層が挟持されてなる非水電解液二次電池用負極を得た。
〔性能評価〕
実施例及び比較例で得られた負極について以下の方法で充電特性を評価した。その結果を図4及び図5に示す。図4及び図5において、(a)はキャリア箔から剥離した金属箔側(第1の金属箔側)の充電特性を示し、(b)は被覆めっき側(第2の金属箔側)の充電特性を示す。また、実施例及び比較例で得られた負極における第1及び第2の金属箔に形成された微細孔の直径及び存在密度を以下の方法で測定した。その結果を以下の表1に示す。
〔充電特性の評価方法〕
対極として金属リチウムを用い、また作用極として実施例及び比較例で得られた電極を用い、両極をセパレーターを介して対向させた。非水電解液としてLiPF6/エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合溶液(1:1容量比)を用い、通常の方法によって非水電解液二次電池を作製した。この電池を用い、充電条件0.2mA/cm2、電圧範囲0〜2.8Vにて評価を行った。
〔微細孔の直径及び存在密度の測定方法〕
暗室にて金属箔の裏側から光を透過させ、その状態下に金属箔の写真を撮影した。その写真を画像解析することにより微細孔の直径及び存在密度を求めた。
表1並びに図4及び図5に示す結果から明らかなように、実施例の負極ではキャリア箔剥離側及び被覆めっき側ともに十分な容量が得られていることが判る。このことは、実施例の負極では第1及び第2の金属箔を通じて電解液が活物質層に十分に供給されていることを意味している。これに対して比較例の負極では、キャリア箔剥離側及び被覆めっき側ともに十分な容量が得られていないことが判る。このことは、比較例の負極では第1及び第2の金属箔を通じて電解液が活物質層に十分に供給されていないことを意味している。
本発明の多孔質金属箔の製造方法を示す工程図である。 本発明の金属箔を備えてなる非水電解液二次電池用負極の構造を示す模式図である。 実施例1で得られた金属箔の走査型電子顕微鏡写真(図3(a))及び光を透過させた状態での写真(図3(b))である。 実施例1で得られた負極の充電特性を示す図である。 比較例1で得られた負極の充電特性を示す図である。
符号の説明
1 キャリア箔
2 被覆体
3 剥離剤
4 金属箔
5 活物質層
6 非水電解液二次電池用負極
7 活物質の粒子

Claims (17)

  1. 直径0.01〜200μmの微細孔を多数有し、該微細孔の存在密度が5〜10000個/cm2で、厚さが1〜100μmであることを特徴とする多孔質金属箔。
  2. Cu、Ni、Co、Fe、Cr、Sn、Zn、In、Ag及びAuのうちの少なくとも1種類の金属を含んで構成されている請求項1記載の多孔質金属箔。
  3. 請求項1記載の多孔質金属箔の製造方法であって、
    前記金属箔の構成材料と異質の材料からなる被覆体を、キャリア箔上に0.001〜1μmの厚さで形成し、
    その上に前記金属箔の構成材料を電解めっきによって電析させて該金属箔を形成することを特徴とする多孔質金属箔の製造方法。
  4. 前記被覆体が形成されたキャリア箔の上に有機化合物からなる剥離剤を施し、その上に前記金属箔の構成材料を電解めっきによって電析させる請求項3記載の多孔質金属箔の製造方法。
  5. 前記有機化合物が窒素含有化合物又は硫黄含有化合物からなる請求項4記載の多孔質金属箔の製造方法。
  6. 前記被覆体が形成されたキャリア箔を、乾燥状態下に含酸素雰囲気にさらして該被覆体を酸化させた後に、前記金属箔の構成材料を電解めっきによって電析させる請求項3記載の多孔質金属箔の製造方法。
  7. 前記キャリア箔が、Cu、Ni、Co、Fe、Cr、Sn、Zn、In、Ag、Au、Al及びTiのうちの少なくとも1種類の金属を含んで構成されている請求項3〜6の何れかに記載の多孔質金属箔の製造方法。
  8. 前記被覆体が、前記金属箔の構成材料と異質の材料からなり且つCu、Ni、Co、Mn、Fe、Cr、Sn、Zn、In、Ag、Au、C、Al、Si、Ti及びPdのうちの少なくとも1種類の元素を含んで構成されている請求項3〜7の何れかに記載の多孔質金属箔の製造方法。
  9. 前記金属箔が、Cu、Ni、Co、Fe、Cr、Sn、Zn、In、Ag及びAuのうちの少なくとも1種類の金属を含んで構成されている請求項3〜8の何れかに記載の多孔質金属箔の製造方法。
  10. 前記被覆体を、電解めっきによって形成する請求項3〜9の何れかに記載の多孔質金属箔の製造方法。
  11. 前記被覆体を、無電解めっき、スパッタリング法、物理気相蒸着法、化学気相蒸着法、ゾルゲル法又はイオンプレーティング法によって形成する請求項3〜9の何れかに記載の多孔質金属箔の製造方法。
  12. 請求項1記載の多孔質金属箔の製造方法であって、
    平均粒径D50が2〜200nmの炭素質材料を含む塗工液を支持体上に0.001〜1μmの厚さで塗布し、
    その上に前記金属箔の構成材料を電解めっきによって電析させて該金属箔を形成することを特徴とする多孔質金属箔の製造方法。
  13. 請求項1記載の多孔質金属箔の製造方法であって、
    前記金属箔の構成材料を含み、且つ平均粒径D50が2〜200nmの炭素質材料が懸濁しためっき液を用い、電解めっきによって前記金属箔の構成材料を支持体上に電析させて前記金属箔を形成することを特徴とする多孔質金属箔の製造方法。
  14. 請求項1記載の多孔質金属箔を備えてなることを特徴とする非水電解液二次電池用負極。
  15. 平均粒径D50が1〜30μmの負極活物質の粒子を含む厚さ3〜30μmの活物質層が、一対の前記多孔質金属箔間に挟持されている請求項14記載の非水電解液二次電池用負極。
  16. 請求項15記載の非水電解液二次電池用負極の製造方法であって、
    請求項1記載の多孔質金属箔上に、前記活物質層を形成し、
    その上に、平均粒径D50が2〜200nmの炭素質材料を含む塗工液を0.001〜1μmの厚さで塗布し、
    その上に請求項1記載の多孔質金属箔の構成材料を電解めっきによって電析させて該金属箔を形成することを特徴とする非水電解液二次電池用負極の製造方法。
  17. 請求項14又は15記載の非水電解液二次電池用負極を備えてなることを特徴とする非水電解液二次電池。
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