JP2005127815A - 携帯時計 - Google Patents

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Abstract

【課題】 時計ムーブメントの機能に制約されずに、竜頭をねじの噛合いを利用して不用意に回転されないように保持できるとともに、耐久性も向上でき、竜頭のねじロック操作が軽い携帯時計を提供することにある。
【解決手段】 胴14内の時計ムーブメント13に回転力を伝達する巻真36に接続された竜頭31を、胴14に取付けたパイプ21の雄ねじ部24に噛合わせて、竜頭31が回転されないように保持する携帯時計10を前提とする。竜頭31は、巻真36を連動する竜頭軸32と、前記噛合わせが外された状態で竜頭軸32を回転させる竜頭ヘッド33と、クラッチ手段34とを具備する。竜頭ヘッド33は雄ねじ部24に着脱可能に噛合わされる雌ねじ部38を有する。クラッチ手段34は、前記噛合いが完了した状態では竜頭軸32の回転を妨げるように竜頭軸32と竜頭ヘッド33とを連結し、前記噛合いが外された状態では竜頭軸32を連れ回し可能とするように竜頭軸32と竜頭ヘッド33とを連結する。
【選択図】 図2

Description

本発明は、ねじの噛合いを利用して竜頭が不用意に回転されないように保持する携帯時計に関する。
従来、胴に内蔵された時計ムーブメントを操作する竜頭は、単一部品であって、時計ムーブメントを連動する竜頭軸部と、この軸部に一体に形成された竜頭ヘッドとを有している。竜頭軸部は胴に取付けられた巻真パイプに挿入されており、竜頭ヘッドは巻真パイプの胴外部に位置するパイプ端部に被嵌されている。
この竜頭が不用意に回転されないようにするために、巻真パイプの胴外部に位置するパイプ端部の外周に雄ねじ部を形成するとともに、竜頭ヘッドに雌ねじ部を形成して、この雌ねじ部をパイプ端部の雄ねじ部に着脱可能に噛合わせる携帯時計が知られている(特許文献1参照。)。
この携帯時計で、時計ムーブメントを操作しない通常の状態では、竜頭をパイプの雄ねじ部に噛合わせて、竜頭ヘッドを胴の外側面に当接させることにより、竜頭の不用意な回転を抑制できる。このように竜頭が回転しないように保持させる操作を、以下ねじロック操作と称し、かつ、保持された状態を、以下ねじロック状態と称する。又、時計ムーブメントを操作する時には、雄ねじ部に対する竜頭の噛合いを外して竜頭を引き動かした状態としてから、時計ムーブメントに接続されている巻真を、竜頭とともに回転させることができる。
特開昭57−46181号公報(第1頁右欄第8行〜第2頁左欄第7行、第1図−第2図)
ところで、巻真によって操作される時計ムーブメントが、ぜんまいばねを駆動源とする機械式である携帯時計では、竜頭が引出されない位置に配置されている状態で、この竜頭の回転操作によってぜんまいばねが巻き上げられるように作られている。又、巻真によって操作される時計ムーブメントが、複数の動作モードを有している携帯時計では、竜頭が引出されない位置に配置されている状態で、この竜頭の回転操作によって、動作モードが切換えられるように作られている。
なお、竜頭が引出されない位置に配置されている状態は、一般には「零段」と通称されている。これに対して、カレンダー調整等のために竜頭が引出された位置は「1段」と通称されている。場合によっては、時刻合わせのための位置である「2段」の引出し位置に更に竜頭を引出し得る携帯時計も知られている。
「零段」に配置された竜頭で、ぜんまいばねを巻き上げる機能を有した携帯時計、及び動作モードを変更させる機能を有した携帯時計に、特許文献1の技術を適用することは、以下の点で好ましくない。
すなわち、特許文献1の携帯時計では、竜頭軸部と竜頭ヘッドとが一体である。このため、竜頭を巻真パイプの雄ねじ部に噛合わせるねじロック操作においては、竜頭軸部も回転されるので、この竜頭軸部に接続されている巻真も竜頭と一緒に回転される。
これにより、ぜんまいばねを巻き上げる機能を有した携帯時計への適用では、竜頭を巻真パイプの雄ねじ部に噛合わせるに伴ってぜんまいばねが巻き上げられてしまう。ぜんまいまねの巻上げ操作は、手動巻き又は自動巻きのいずれかでなされるが、胴内のぜんまいばねがどのような巻き上げ状態にあるのかは知ることができない。このため、ぜんまいばねがかなり巻き上がっている状態で、竜頭に対するねじロック操作が行われることがある。この場合、ねじロック操作が特に重くなり不便であるとともに、それに伴い過度の操作力が雄ねじ部と雌ねじ部に加わって、これらのねじ部の摩耗が早められる。
又、動作モードを変更させる機能を有した携帯時計への適用では、竜頭に対するねじロック操作に伴って動作モードが勝手に変更されてしまう。このため、この種の携帯時計に対しては、ねじの噛合いを利用して竜頭が不用意に回転されないようにした技術の適用はできなかった。
本発明が解決しようとする課題は、時計ムーブメントの機能に制約されずに、竜頭をねじの噛合いを利用して不用意に回転されないように保持できるとともに、耐久性も向上でき、竜頭のねじロック操作が軽い携帯時計を提供することにある。
前記課題を解決するために、本発明は、ねじの噛合いを利用して竜頭が不用意に回転されないように保持する携帯時計において、竜頭が、巻真を連動する竜頭軸と、胴に取付けられたパイプの雄ねじ部に着脱可能に噛合わされる雌ねじ部を有し、この噛合いが外された状態で竜頭軸を回転させる竜頭ヘッドと、前記噛合いが完了した状態では前記竜頭軸の回転を妨げるように前記竜頭軸と竜頭ヘッドとを連結し、前記噛合いが外された状態ではこの竜頭軸を連れ回し可能とするように前記竜頭軸と竜頭ヘッドとを連結するクラッチ手段と、を具備している。
本発明では、パイプの雄ねじ部に対する竜頭ヘッドの雌ねじ部の噛合いを外すことにより、竜頭ヘッドの拘束が解除されて、この竜頭ヘッドが回転可能となるとともに、軸方向に関する竜頭ヘッドと竜頭軸との相対位置が変わって、竜頭ヘッドと竜頭軸とがクラッチ手段で連結される。このため、この連結状態下での竜頭ヘッドの回転操作が、クラッチ手段を介して竜頭軸に伝えられる。これにより、巻真が回転されるに伴い胴内の時計ムーブメントを操作できる。この操作後に、竜頭ヘッドを胴の外側面に寄るように軸方向移動させてパイプの雄ねじ部に竜頭ヘッドの雌ねじ部を噛合わせることにより、クラッチ手段での前記連結が解除されてから、竜頭ヘッドが胴の外側面に当たってねじロック状態になる。こうしてパイプに対する竜頭ヘッドの噛合いが完了される直前に、竜頭ヘッドと竜頭軸とがクラッチ手段で再び連結されるので、この再連結直後に前記噛合いが完了した時点では、竜頭軸の回転がねじロック状態に保持された竜頭ヘッドによって妨げられる。この場合、ねじロック状態を得るねじロック操作では、前記噛合いが完了される直前まで竜頭ヘッドと竜頭軸とは連結されていないので、ねじロック操作に伴って竜頭軸が回転して、時計ムーブメントに回転が伝えられることを抑制できる。
又、本発明の好ましい形態では、前記クラッチ手段が、多角形状又は歯車形状をなして前記竜頭軸の外周に前記竜頭ヘッドの軸方向移動寸法分隔てて前記竜頭軸の軸方向に並設された第1、第2の従動部と、これら従動部と同形状の嵌合孔を有して前記竜頭ヘッドに設けられ、竜頭ヘッドの軸方向移動に伴って前記第1、第2の従動部に着脱可能に嵌合される原動部と、を有しているので、クラッチ手段の構成が簡単である点で優れている。
又、本発明の好ましい形態では、前記第1、第2の従動部間の軸部分が、前記嵌合孔に内接する太さに作られているので、竜頭ヘッドを軸方向に移動させる際に、原動部が第1、第2の従動部間の軸部分に案内され、竜頭ヘッドが傾く等の姿勢変動を抑制しつつ容易に竜頭ヘッドを軸方向に移動させ得る点で優れている。
又、本発明の好ましい形態では、前記原動部が前記竜頭ヘッドの内周に固定されたリングで作られているので、竜頭ヘッドの視認可能な端面に現れるリング状の接合跡が、手間を掛けて竜頭ヘッドを加工したとの印象を与えるのに寄与できて外観的に好ましい点で優れている。
又、本発明の好ましい形態では、前記原動部が前記竜頭ヘッドに一体に設けられているので、竜頭ヘッドの内面に対する原動部の取付け不良に基づく竜頭軸と竜頭ヘッドとの連結不良がなく、長期の使用にわたりクラッチ手段の機能を確実に維持できる点で好ましい。
又、本発明の好ましい形態では、前記雄ねじ部と前記雌ねじ部との噛合いが外された状態での前記竜頭ヘッドの軸方向移動に伴い前記雌ねじ部の端が接離する受け部が、前記クラッチ手段よりも前記胴の外側面に寄せて前記竜頭軸の外周に設けられているので、雌ねじ部の端を受け部に引掛けて、竜頭ヘッドを竜頭軸の軸方向に関して位置決めできる。
又、本発明の好ましい形態では、前記受け部と前記原動部とが前記軸方向に対向するように配置されていて、これらの間に前記竜頭ヘッドを前記胴の外側面から離れる方向に付勢する弾性体が挟設されているので、前記雄ねじ部と前記雌ねじ部との噛合いが外されると同時に弾性体の付勢力によって、雌ねじ部の端が受け部に引掛けるように竜頭ヘッドをその軸方向に移動させるとともに、前記引っ掛りにより原動部を第2の従動部に対して位置決めして、竜頭軸が回転可能となるように竜頭軸と竜頭ヘッドとを連結できる点で優れている。
本発明によれば、ねじロック操作に伴って竜頭軸が回転して、時計ムーブメントに回転が伝えられることを抑制できる。このため、竜頭のねじロック操作を軽く行えるとともに、パイプの雄ねじ部及び竜頭ヘッドの雌ねじ部の耐久性を向上でき、しかも、時計ムーブメントの機能、例えばぜんまいばねを巻き上げる機能や動作モードを変更させる機能等に制約されずに、竜頭をねじの噛合いを利用して不用意に回転されないように保持させることが可能な携帯時計を提供できる。
(第1実施形態)
図1〜図5を参照して本発明の第1実施形態を説明する。
図1中符号10は携帯時計としての腕時計を示している。この腕時計10は時計外装組立11内に図2及び図3に示すように文字板12及び図示しない時計ムーブメント13等を収容している。時計ムーブメント13には、ぜんまいを動力源にした手動巻き型、又は自動巻き型、若しくはこれら手動巻きと自動巻きとを併用した型の機械式の時計ムーブメントが用いられている。なお、これに代えて、文字板12上での時刻表示等をデジタル表示とアナログ表示とを選択して切換えることができる型の時計ムーブメントであってもよい。
図2及び図3に示すように時計外装組立11は、環状をなす金属製の胴14の厚み方向一面からなる正面に、カバーガラス15を液密に装着するとともに、胴14の厚み方向他面からなる裏面に、金属等からなる裏蓋16を液密に螺着して形成されている。カバーガラス15を通して文字板12は視認可能である。裏蓋16は取外し可能である。
図2及び図3に示すように胴14の一部には、この胴14を径方向に貫通するパイプ取付け孔17が開けられている。パイプ取付け孔17の一端は、胴14で囲まれた胴内空間14aに開口され、パイプ取付け孔17の他端は、胴14の外側面14bに開口されている。
胴14には、胴外側からパイプ取付け孔17に挿入してパイプ21がろう付け等により取付けられている。図2及び図3中符号22はろう材を示している。金属製、例えばステンレス鋼製のパイプ21は、円筒状でその軸方向両端が夫々開放しているとともに、胴14の外部に配置されるパイプ端部21aを備え、このパイプ端部21aの外周に竜頭31をねじロック状態に保持するための雄ねじ部24を有している。
竜頭31は、竜頭軸32と、竜頭ヘッド33と、クラッチ手段34と、弾性体例えばコイルばね35とを備えている。
竜頭軸32は、例えば金属製好ましくはステンレス製であって、図2及び図3に示すようにパイプ21内に胴14の外部から挿入される円柱状の挿入軸部32aと、この軸部32aと一体に連続してパイプ21の外部に配置される軸端部32bと、これら挿入軸部32aと軸端部32bとの境界をなして設けられた受け部32cとを有している。受け部32cはクラッチ手段34よりも胴14の外側面14bに寄って設けられている。
挿入軸部32aの先端部には、時計ムーブメント13に竜頭31の回転力を伝達する巻真36が胴内側からねじ込んで連結されている。これにより互いに連結された巻真36と竜頭軸32とは軸方向には動くことができない。挿入軸部32aの先端部外周に形成された環状凹部にはゴム等の弾性材料からなる環状の防水パッキン37が装着されている。このパッキン37は前記環状凹部及びパイプ21の内周に弾性的に密接しており、これにより、パイプ21の内周と竜頭軸32との間が防水されている。
軸端部32bは挿入軸部32aより大径である。受け部32cは環状の鍔をなして設けられている。この受け部32cは軸端部32b及び雄ねじ部24の外径より大きい。
竜頭ヘッド33は、例えば金属製好ましくはステンレス製であって、図2及び図3に示すように円筒状であって、その外周に回転操作のすべり止めのための溝を有している。更に、竜頭ヘッド33の一端面33aは、胴14の外側面14bに接離する面となっている。この一端面33a寄りの内周には、ねじロック状態を得るために雄ねじ部24に取外し可能に噛合わされる雌ねじ部38が形成されている。雌ねじ部38の径は受け部32cの径より小さく、この雌ねじ部38の端38a(図2参照)は受け部32cに接離可能である。
クラッチ手段34は、雄ねじ部24と雌ねじ部38との噛合いが完了した状態で竜頭軸32の回転を妨げるように竜頭軸32と竜頭ヘッド33とを連結(この連結を第1の連結状態と以下称する。)し、かつ、前記噛合いが外された状態では、竜頭ヘッド33に対して竜頭軸32を連れ回り可能とするように竜頭軸32と竜頭ヘッド33とを連結(この連結を第2の連結状態と以下称する。)し、前記2つの状態以外の状態では前記連結を解除するようになっている。このために、クラッチ手段34は例えば第1従動部41と、第2従動部42と、原動部43とを有している。
詳しくは、図2〜図5に示すように第1、第2の従動部41、42は、多角形例えば正五角形をなして軸端部32bの外周に突出されている。第1、第2の従動部41、42を正五角形を超える正多角形とすることは、第1の従動部41又は第2の従動部42と原動部43とが嵌合した状態での竜頭ヘッド33の回転に対する竜頭軸32の連動を極力減らすために、好ましい。これら第1、第2の従動部41、42は竜頭軸32の軸方向に所定間隔を空けて設けられている。これら第1、第2の従動部41、42は、その各部が、竜頭軸32の周方向に位置がずれることなく、竜頭軸32の軸方向に対向して設けられている。前記所定間隔は竜頭ヘッド33の軸方向移動寸法に等しい。第1、第2の従動部41、42の各辺は、これら第1、第2の従動部41、42間に位置する軸端部32bの外周面に対する接線をなして延びている。
原動部43は、第1、第2の従動部41、42に選択的に係脱するものであって、第1、第2の従動部41、42と同形状、したがって本実施形態の場合には図4に例示するように正五角形の嵌合孔43aを有して、竜頭ヘッド33に設けられている。この原動部43は、嵌合孔43aを有した金属例えばステンレス製のリングで作られていて、竜頭ヘッド33の雌ねじ部38が設けられた一端とは反対側の他端の内周に、例えばかしめ止めにより固定されている。このかしめ止めにより竜頭ヘッド33の端面には視認可能なリング状の接合跡43bが現れている。このような原動部43の固定により、手間を掛けて竜頭ヘッド33を加工したとの印象を与えるのに寄与できて外観的に好ましい。
前記軸端部32bの第1、第2の従動部41、42間の軸部分32bcは、原動部43が有する嵌合孔43aの各辺に内接する太さに作られている。これにより、竜頭ヘッド33を軸方向に移動させる際に、原動部43が軸部分32bcに案内されるので、竜頭ヘッド33が傾く等の姿勢変動を抑制しつつ竜頭ヘッド33を軸方向に容易にかつ円滑に移動させることができる。したがって、第1、第2の従動部41、42に対する原動部43の嵌合孔43aの係脱操作が容易である。
コイルばね35は、竜頭軸32の軸方向に相対向した受け部32cと原動部43との間に挟まれていて、竜頭ヘッド33を胴14の外側面14bから離れる方向に常に付勢して設けられている。
以上の構成を備えた腕時計10において、竜頭31が引出されない位置に配置されている状態(一般に「零段」と通称されている。)は、図2に示されている。この「零段」では、竜頭ヘッド33の雌ねじ部38がパイプ21の雄ねじ部24に噛合わされて、竜頭ヘッド33の一端面33aが胴14の外側面14bに接して位置決めされているとともに、クラッチ手段34の原動部43の嵌合孔43aが第1の従動部41の外周に嵌合されている(この嵌合状態を図5に示す。)。
このため、原動部43と竜頭軸32の受け部32cとの間にコイルばね35が強く圧縮された状態にあって、竜頭ヘッド33が胴14から離れる方向に付勢されているにも拘らず、前記噛合いによって竜頭ヘッド33が軸方向に動かされることがない。これとともに、クラッチ手段34が第1の連結状態にあって、原動部43の嵌合孔43aと第1の従動部41とが嵌合されていることより、竜頭軸32が竜頭ヘッド33に対して回り止めされている。このように「零段」では竜頭31がねじロック状態にある。このねじロック状態では、図1及び図2に示すように竜頭軸32の軸端部32bの一部が竜頭ヘッド33より突出している。このため、使用者は、竜頭ヘッド33の端面に対する竜頭軸32の軸端部32bの位置関係により、竜頭31が不用意に回転されないように保持されたねじロック状態にあることを視認可能である。
時計ムーブメント13の時刻合わせをする場合、ねじロック状態にある竜頭31は、「1段」と通称される位置に引出されて回転操作される。すなわち、まず、竜頭ヘッド33を緩み方向に回転させて、その雌ねじ部38をパイプ21の雄ねじ部24から外した状態とする。この場合、緩み方向への竜頭ヘッド33の回転の初期段階では、原動部43と第1の従動部41とが嵌合されているので、竜頭軸32が竜頭ヘッド33に連動して回転される。しかし、竜頭ヘッド33はその緩み方向の回転に伴い胴14の外側面14bから次第に離れる方向に軸方向移動するので、前記初期段階において原動部43と第1の従動部41との嵌合が速やかに外される。このため、緩み方向に回転される竜頭ヘッド33に対する竜頭軸32の連動に応じて時計ムーブメント13に回転力が伝えられることは、実質的には無視できる。
以上のようにして原動部43と第1の従動部41との嵌合が外されることによって、クラッチ手段34による竜頭軸32と竜頭ヘッド33との第1の連結状態が解除される。これと同時に、コイルばね35のばね力(付勢力)で、竜頭ヘッド33が、竜頭軸32の軸方向に沿って手動操作によることなく簡便に移動される。この軸方向移動に伴って竜頭軸32が回転されることはない。
この竜頭ヘッド33の軸方向移動に伴い、クラッチ手段34が第2の連結状態となって竜頭軸32と竜頭ヘッド33とを連結する。つまり、原動部43の嵌合孔43aが第2の従動部42の外周に嵌合される。この第2の連結状態が作られると同時に、雌ねじ部38の端38aが竜頭軸32の受け部32cに当たって、竜頭ヘッド33の軸方向移動が規制される。この規制による位置決めで、ねじロック状態が解除された竜頭31が、図3に示すように「1段」と通称される引出し位置に保持される。コイルばね35のばね力によって、次に説明する時刻合わせ操作の途中で竜頭31から手を離しても、第2の連結状態が維持される点で好ましい。
この引出し位置で竜頭31を手動により回転させることができる。つまり、原動部43の嵌合孔43aが第2の従動部42の外周に嵌合された第2の連結状態では、竜頭ヘッド33の回転がクラッチ手段34を介して竜頭軸32に伝えられる。これに伴い巻真36を介して時計ムーブメント13に回転力が与えられるので、この時計ムーブメント13の時刻合わせ等の調整を行うことができる。
この調整後には竜頭31が再びロック状態(図2参照)とされる。このねじロック状態を得る操作は、まず、竜頭ヘッド33をコイルばね35に抗して胴14方向に押し戻した後に、この竜頭ヘッド33の雌ねじ部38を締め付け方向に回転させてパイプ21の雄ねじ部24にねじ込むことで実施される。これにより、竜頭ヘッド33の一端面33aが胴14の外側面14bに当接するとともに、この当接の直前にクラッチ手段34が前記第1の連結状態となるので、腕時計10の携帯時等に竜頭31が不用意に回転されないように竜頭31をねじロック状態とすることができる。
このねじロック状態を得る操作において、竜頭ヘッド33の回転初期にクラッチ手段34は、竜頭ヘッド33と竜頭軸32との第2の連結状態が解除される。又、雄ねじ部24への雌ねじ部38の噛合わせ完了の直前に、クラッチ手段34は竜頭ヘッド33と竜頭軸32とを連結する第1の連結状態となる。そして、竜頭ヘッド33が締め付け方向に回転操作される殆どの期間、つまり、第2の連結状態が解除された時点から第1の連結状態となるまでの間は、竜頭軸32に伝えられることがない。
ところで、雄ねじ部24への雌ねじ部38の噛合わせが完了する直前の段階では、クラッチ手段34が第1の連結状態となるので、締め付け方向に回転される竜頭ヘッド33に対して竜頭軸32は連れ回るようになる。しかし、この連れ回りの開始時点から竜頭ヘッド33の一端面33aが胴14の外側面14bに当接して前記噛合わせ合わせが完了するまでに要する竜頭ヘッド33の回転量は僅かである。このため、締め付け方向に回転される竜頭ヘッド33に対する竜頭軸32の連動は、実質的に無視できる程度である。
したがって、ねじロック状態を得るための既述のねじロック操作に伴って、竜頭軸32が回転して、機械式の時計ムーブメント13に回転が伝えられることを抑制できる。これにより、ねじロック操作において、時計ムーブメント13が有するぜんまいばねが負荷となることが抑制される。したがって、例えばぜんまいばねがかなり巻き上がっている状態であっても、竜頭31のねじロック操作を軽く行うことができ、操作性が良い。なお、時計ムーブメント13が、機械式ではなく、「零段」位置に配置された竜頭31で動作モードを変更させる機能を有したものである場合には、既述のように時計ムーブメントに対して竜頭31のねじロック操作に伴う回転力が波及することが抑制されるので、動作モードが不用意に変更されることがない。
又、既述のようにぜんまいばねを有する機械式の時計ムーブメント13でのねじロック操作を軽く行えることに伴い、過度の回転操作力が雄ねじ部24と雌ねじ部38に加えられることもなくなるので、これらのねじ部24、38の耐久性を向上することができる。
(第2実施形態)
竜頭31のねじロック状態を示す図6、及び竜頭31のねじロック状態が解除された状態を示す図7を参照して本発明の第2実施形態を説明する。この第2実施形態は、基本的には第1実施形態と同じであるので、第1実施形態と同じ部分については第1実施形態と同一符号を付してその説明を省略し、以下、第1実施形態とは異なる部分について説明する。
第2実施形態では、竜頭ヘッド33とは別体とした雌ねじ部38が、竜頭ヘッド33の軸方向一端部内周にかしめによって固定されている。更に、クラッチ手段34の原動部43は竜頭ヘッド33の軸方向他端部内周に一体に形成されている。以上説明した点以外は、図6及び図7に示されない構成を含めて第1実施形態と同じである。
したがって、この第2実施形態の腕時計10でも、第1実施形態と同じ作用を得て本発明が解決しようとする課題を解決できる。しかも、原動部43を竜頭ヘッド33に一体に設けたので、竜頭ヘッド33に対する原動部43の取付け不良がない。このため、前記取付け不良に基づく竜頭軸32と竜頭ヘッド33との連結不良がなく、長期の使用にわたりクラッチ手段34の機能を確実に維持できるとともに、かしめ跡を見せないようにできる。
本発明は前記両実施形態には制約されない。例えば、竜頭ヘッド33は、ねじロック状態にある時に、軸端部32bの全外周を略被う長さとすることができる。この構成では、竜頭ヘッド33の端面と竜頭軸32の軸端部32bとの相互位置関係で、竜頭31の状態が、ねじロック状態であるのか、ねじロックが解除された状態であるのかということを知ることができるという機能を維持しつつ、ねじロック状態において第2従動部42を操作して竜頭軸32が不用意に回される恐れをなくすことができる。
本発明では、竜頭31のコイルばね35を省略してもよい。この場合には、竜頭ヘッド33をねじロック状態とする際に、コイルばね35の抵抗を受けなくて済む。これにより、軽い操作で胴14の外側面14bに向けて竜頭ヘッド33を軸方向に移動させることができる。
前記両実施形態ではクラッチ手段34の第1、第2の従動部41、42は正多角形の凸部で形成するとともに、原動部43は正多角形の嵌合孔を有する構成としたが、これに代えて、本発明では、第1、第2の従動部41、42を外歯歯車で形成し、原動部43を内歯歯車で形成することもできる。
本発明の第1実施形態に係る腕時計を示す正面図。 図1中Z−Z線に沿って竜頭のねじロック状態を示す断面図。 図1中Z−Z線に沿って竜頭のねじロック状態が解除された状態を示す断面図。 図1中の携帯時計が備えるクラッチ手段を分解して示す斜視図。 図4のクラッチ手段を第1の連結状態で示す斜視図。 本発明の第2実施形態に係る腕時計を竜頭のねじロック状態で示す断面図。 本発明の第2実施形態に係る腕時計を竜頭のねじロック状態が解除された状態で示す断面図。
符号の説明
10…腕時計(携帯時計)
11…時計外装組立
13…時計ムーブメント
14…胴
14a…胴内空間
14b…胴の外側面
21…パイプ
21a…パイプ端部
24…雄ねじ部
31…竜頭
32…竜頭軸
32c…竜頭軸の受け部
32bc…竜頭軸の軸部分
33…竜頭ヘッド
33a…竜頭ヘッドの一端面
34…クラッチ手段
35…コイルばね(弾性体)
36…巻真
38…雌ねじ部
41…第1の従動部
42…第2の従動部
43…原動部
43a…原動部の嵌合孔

Claims (7)

  1. 時計ムーブメントが内蔵された胴にこの胴の外側に位置される雄ねじ部を有したパイプを取付け、前記時計ムーブメントに回転力を伝達する巻真に接続された竜頭を、前記雄ねじ部の外周に着脱可能に噛合わせ、この噛合いにより前記竜頭を回転されないように保持する携帯時計であって、
    前記竜頭が、
    前記巻真を連動する竜頭軸と、
    前記雄ねじ部に着脱可能に噛合わされる雌ねじ部を有し、前記噛合いが外された状態で前記竜頭軸を回転させる竜頭ヘッドと、
    前記噛合いが完了した状態では前記竜頭軸の回転を妨げるように前記竜頭軸と竜頭ヘッドとを連結し、前記噛合いが外された状態ではこの竜頭軸を連れ回し可能とするように前記竜頭軸と竜頭ヘッドとを連結するクラッチ手段と、
    を具備したことを特徴とする携帯時計。
  2. 前記クラッチ手段が、
    多角形状又は歯車形状をなして前記竜頭軸の外周に前記竜頭ヘッドの軸方向移動寸法分隔てて前記竜頭軸の軸方向に並設された第1、第2の従動部と、
    これら従動部と同形状の嵌合孔を有して前記竜頭ヘッドに設けられ、竜頭ヘッドの軸方向移動に伴って前記第1、第2の従動部に着脱可能に嵌合される原動部と、
    を有していることを特徴とする請求項1に記載の携帯時計。
  3. 前記第1、第2の従動部間の軸部分が、前記嵌合孔に内接する太さに作られていることを特徴とする請求項2に記載の携帯時計。
  4. 前記原動部が前記竜頭ヘッドの内周に固定されたリングで作られていることを特徴とする請求項2又は3に記載の携帯時計。
  5. 前記原動部が前記竜頭ヘッドに一体に設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の携帯時計。
  6. 前記雄ねじ部と前記雌ねじ部との噛合いが外された状態での前記竜頭ヘッドの軸方向移動に伴い前記雌ねじ部の端が接離する受け部が、前記クラッチ手段よりも前記胴の外側面に寄せて前記竜頭軸の外周に設けられていることを特徴とする請求項2から5の内のいずれか1項に記載の携帯時計。
  7. 前記受け部と前記原動部とが前記軸方向に対向するように配置されていて、これらの間に前記竜頭ヘッドを前記胴の外側面から離れる方向に付勢する弾性体が挟設されていることを特徴とする請求項6に記載の携帯時計。
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