JP2005118871A - レールのテルミット溶接部処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】現場で容易かつ確実にテルミット溶接部の疲労強度を向上させることができ、かつ、その確認も容易であるレールのテルミット溶接部処理方法を提供する。
【解決手段】レール1のテルミット溶接部2のうち、レール底部上面の余盛止端部7aに、塑性加工を施すことにより、この塑性加工を施された余盛止端部7aが加工硬化によって、硬度、降伏強度、引張強さが増大し、さらに圧縮残留応力が付与されるので、テルミット溶接部の疲労強度が向上する。また、その確認も塑性加工が施された部分を外観検査するだけで容易に行うことができる。
【選択図】図1
【解決手段】レール1のテルミット溶接部2のうち、レール底部上面の余盛止端部7aに、塑性加工を施すことにより、この塑性加工を施された余盛止端部7aが加工硬化によって、硬度、降伏強度、引張強さが増大し、さらに圧縮残留応力が付与されるので、テルミット溶接部の疲労強度が向上する。また、その確認も塑性加工が施された部分を外観検査するだけで容易に行うことができる。
【選択図】図1
Description
本発明は、例えば鉄道レールのロングレール化に用いられるレールのテルミット溶接に係り、特に、テルミット溶接による溶接部の疲労強度を向上させる溶接部の処理方法に関する。
近年、軌道保守コストの低減や騒音振動の低減のために溶接によって継目を連続化するロングレール化が普及しつつある。鉄道用レールのロングレール化は、軌道の最弱点箇所である継目をなくし、騒音、振動及びメンテナンスコスト低減、さらには乗り心地を向上させる等の多くの利点がある。このロングレールは一般に25〜50mのレールを溶接して製造される。その溶接方法として、フラッシュ溶接、ガス圧接、エンクローズアーク溶接及びテルミット溶接の4種類の溶接方法が適用されている。しかし、新幹線軌道の高速線区にはテルミット溶接が使用されていない。これは溶接部の疲労強度が他の3つの溶接方法により得られる溶接部に対して小さいからである。
このテルミット溶接による溶接部(以下テルミット溶接部という)の疲労強度が小さい理由としては、テルミット溶接部が基本的には鋳物であるとともに、レールの腹部から底部にかけての余盛を研削除去せずにレールを敷設しているためである。他の3つの溶接方法による溶接部は、レール全周を研削し余盛のない状態でのレールの敷設となっている。そのため、テルミット溶接部では、余盛止端部の応力集中により疲労強度が他の3つの溶接方法による溶接部に対して小さくなっている。
そこで、テルミット溶接部に対しても全周の余盛を削除することが考えられるが、前述のようにテルミット溶接部が鋳物であるため余盛を研削することにより内部の巣が表面に現出する場合がある。内部にある巣はその大きさにもよるが、表面に現出した巣に比較して応力拡大係数が小さく問題とならない場合が多いが、表面に開口した巣は、そこを起点として疲労き裂が進展する可能性があり、一般にテルミット溶接部は列車の車輪と接触するレール頭部のみ研削されている。
このテルミット溶接による溶接部(以下テルミット溶接部という)の疲労強度が小さい理由としては、テルミット溶接部が基本的には鋳物であるとともに、レールの腹部から底部にかけての余盛を研削除去せずにレールを敷設しているためである。他の3つの溶接方法による溶接部は、レール全周を研削し余盛のない状態でのレールの敷設となっている。そのため、テルミット溶接部では、余盛止端部の応力集中により疲労強度が他の3つの溶接方法による溶接部に対して小さくなっている。
そこで、テルミット溶接部に対しても全周の余盛を削除することが考えられるが、前述のようにテルミット溶接部が鋳物であるため余盛を研削することにより内部の巣が表面に現出する場合がある。内部にある巣はその大きさにもよるが、表面に現出した巣に比較して応力拡大係数が小さく問題とならない場合が多いが、表面に開口した巣は、そこを起点として疲労き裂が進展する可能性があり、一般にテルミット溶接部は列車の車輪と接触するレール頭部のみ研削されている。
上記のようなレールのテルミット溶接部における疲労強度を改善する方法として、特許文献1および特許文献2に記載のものが知られている。
特許文献1に記載の技術は、レールを溶接するテルミット溶接であって、溶融金属が完全に凝固し、レール頭部溶接金属の表面温度が300℃以下になるまで冷却した後で、凝固部を含むレール底部足表面を400〜700℃に再加熱して、残留応力分布を制御することによって、疲労強度を向上させるようにしたものである。
また、特許文献2に記載の技術は、レールをテルミット溶接するに際し、レール溶接部頭部の余盛を除去し、レール溶接部頭部を、レール溶接部底部の温度降下速度より速い冷却速度で空冷して溶接熱を除熱することによって、レール溶接部底部の残留応力をより圧縮側とすることができ、その結果、溶接部の疲労強度を向上させるようにしたものである。
特開平11−58042号公報
特開2002−263866号公報
特許文献1に記載の技術は、レールを溶接するテルミット溶接であって、溶融金属が完全に凝固し、レール頭部溶接金属の表面温度が300℃以下になるまで冷却した後で、凝固部を含むレール底部足表面を400〜700℃に再加熱して、残留応力分布を制御することによって、疲労強度を向上させるようにしたものである。
また、特許文献2に記載の技術は、レールをテルミット溶接するに際し、レール溶接部頭部の余盛を除去し、レール溶接部頭部を、レール溶接部底部の温度降下速度より速い冷却速度で空冷して溶接熱を除熱することによって、レール溶接部底部の残留応力をより圧縮側とすることができ、その結果、溶接部の疲労強度を向上させるようにしたものである。
しかし、上記のような従来技術においては以下のような問題点があった。
すなわち、テルミット溶接は一般的には現地溶接工法で、現場という大きな制約条件下での作業となる。したがって、前者の場合、レールの底部を足表面側からガスバーナーを用いて400〜700℃まで再加熱する必要があるので、その再加熱の温度制御は施工面において困難さを伴うとともに、現場で再加熱処理が行われたかどうかを確認する手段がない。
また、後者の場合、空冷装置等の準備が必要となるので、テルミット溶接の利点である使用器具が軽量で、機動性に優れるといった点が損なわれる。また、現場で、レール溶接部底部の残留応力をより圧縮側とした点を確認する手段がない。
すなわち、テルミット溶接は一般的には現地溶接工法で、現場という大きな制約条件下での作業となる。したがって、前者の場合、レールの底部を足表面側からガスバーナーを用いて400〜700℃まで再加熱する必要があるので、その再加熱の温度制御は施工面において困難さを伴うとともに、現場で再加熱処理が行われたかどうかを確認する手段がない。
また、後者の場合、空冷装置等の準備が必要となるので、テルミット溶接の利点である使用器具が軽量で、機動性に優れるといった点が損なわれる。また、現場で、レール溶接部底部の残留応力をより圧縮側とした点を確認する手段がない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、現場で容易かつ確実にテルミット溶接部の疲労強度を向上させることができ、かつ、その確認も容易であるレールのテルミット溶接部処理方法を提供することを課題としている。
上記課題を解決するために、本発明者等が鋭意研究した結果、次のような知見を得るに至った。すなわち、レール底部におけるテルミット溶接部の余盛止端部の残留応力分布状況(図3参照)によると、レール底面では大きな圧縮残留応力となっているのに対し、レールの底部上面では、引張あるいは小さな圧縮残留応力となっている。レール上を列車が通過した場合、車輪直下のレール底面において引張の最大曲げ応力が作用することとなる。しかし、レール底面には大きな圧縮応力が残留しているため、列車通過による疲労の観点からの律速箇所は、曲げによる発生応力は小さいが引張残留応力となっているレール底部上面であることが推察される。
そこで、請求項1に記載の発明は、例えば図1および図2に示すように、レール1をテルミット溶接してなる溶接部2のうち、レール底部上面にある余盛7の余盛止端部7aに、塑性加工を施すことを特徴とする。
なお、本発明における塑性加工は、鉄道のレールのテルミット溶接部に対してだけではなく、例えば、クレーンレール等のテルミット溶接部に対して行ってもよい。
なお、本発明における塑性加工は、鉄道のレールのテルミット溶接部に対してだけではなく、例えば、クレーンレール等のテルミット溶接部に対して行ってもよい。
また、レール底部上面のうち、特に腹部立ち上がり部近傍で、引張残留応力が大きくなっているのが、残留応力分布状況によって判明した。
そこで、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のレールのテルミット溶接部処理方法において、前記レール底部上面のうちの、レール腹部立ち上がり部近傍にある余盛7の余盛止端部7aに、塑性加工を施すことを特徴とする。
そこで、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のレールのテルミット溶接部処理方法において、前記レール底部上面のうちの、レール腹部立ち上がり部近傍にある余盛7の余盛止端部7aに、塑性加工を施すことを特徴とする。
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のレールのテルミット溶接部処理方法において、前記レール1の底面からの高さが20mm以上、30mm以下の全範囲で、前記レール底部上面にある余盛7の余盛止端部7aに塑性加工を施すことを特徴とする。
鉄道に使用される60kgレール、50kgNレールでは、レールの底面からの高さが20mm以上、30mm以下の範囲が、レール底部上面のうちの、腹部立ち上がり部近傍に相当する。
なお、レールの底面からの高さが25mm以上、30mm以下の全範囲で、前記レール底部上面にある余盛の余盛止端部に塑性加工を施すのがより望ましい。
鉄道に使用される60kgレール、50kgNレールでは、レールの底面からの高さが20mm以上、30mm以下の範囲が、レール底部上面のうちの、腹部立ち上がり部近傍に相当する。
なお、レールの底面からの高さが25mm以上、30mm以下の全範囲で、前記レール底部上面にある余盛の余盛止端部に塑性加工を施すのがより望ましい。
塑性加工を施す方法は特に限定するものではないが、例えば、プレス加工、ピーニング、研削等が好適である。さらに、塑性加工処理は溶接直後に限ることなく、いつ実施してもよい。
本発明によれば、レールをテルミット溶接してなる溶接部のうち、レール底部上面の余盛止端部に、塑性加工を施すので、この塑性加工を施された余盛止端部が加工硬化によって、硬度、降伏強度、引張強さが増大し、さらに圧縮残留応力が付与されるので、テルミット溶接部の疲労強度が向上する。
また、レール腹部立ち上がり部近傍にある余盛の余盛止端部や、レールの底面からの高さが20mm以上、30mm以下の範囲で、レール底部上面の余盛の余盛止端部に塑性加工を施すので、この範囲の余盛止端部に効果的に圧縮残留応力が付与され、よって、テルミット溶接部の疲労強度を効果的に向上させることができる。
また、レール腹部立ち上がり部近傍にある余盛の余盛止端部や、レールの底面からの高さが20mm以上、30mm以下の範囲で、レール底部上面の余盛の余盛止端部に塑性加工を施すので、この範囲の余盛止端部に効果的に圧縮残留応力が付与され、よって、テルミット溶接部の疲労強度を効果的に向上させることができる。
さらに、レール底部上面の余盛止端部に塑性加工を施すだけの簡単な作業で済むので、
現場で容易にテルミット溶接部の疲労強度を向上させることができる。また、その確認も塑性加工が施された部分を外観検査するだけで容易に行うことができる。
また、塑性加工は、テルミット溶接当日やそれ以外の日でも行えるので、溶接部の処理時の自由度が高く、さらに、既に敷設されている既存のレールのテルミット溶接部にも容易に疲労強度が向上のための処理を施すことができる。
現場で容易にテルミット溶接部の疲労強度を向上させることができる。また、その確認も塑性加工が施された部分を外観検査するだけで容易に行うことができる。
また、塑性加工は、テルミット溶接当日やそれ以外の日でも行えるので、溶接部の処理時の自由度が高く、さらに、既に敷設されている既存のレールのテルミット溶接部にも容易に疲労強度が向上のための処理を施すことができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1および図2は本発明のレールのテルミット溶接部処理方法を説明するためのものであり、レール溶接部断面図である。図1には、60kgレール(左側)と50kgNレール(右側)の2種類が記載されている。図2は図1におけるA−A断面図である。
レールのテルミット溶接は、まず、2本のレール端部(図示せず)を間隔を設けて対向設置し、耐火物鋳型(図示せず)によって前記レール端部間の隙間とその周囲を取り囲みキャビティ(図示せず)を形成する。そのキャビティの上方に反応るつぼ(図示せず)を設置して、前記るつぼ内の酸化鉄並びに若干の成分調整済剤とアルミニウムとの化学反応によって生成した溶融鉄を、前記るつぼ底部の流出孔を開口させて前記キャビティに注入し、前記レールを溶接する。溶接後、型開きし、レールの頭部の溶接部の余盛を除去する。
図1に示すように、レール1のテルミット溶接部2は、溶接部頭部3と溶接部腹部4と溶接部底部5とで構成される。溶接部頭部3の余盛は押し抜き剪断等により除去される。また、溶接部腹部4及び溶接部底部5の余盛6,7は除去せずそのまま残しておく。
図1および図2は本発明のレールのテルミット溶接部処理方法を説明するためのものであり、レール溶接部断面図である。図1には、60kgレール(左側)と50kgNレール(右側)の2種類が記載されている。図2は図1におけるA−A断面図である。
レールのテルミット溶接は、まず、2本のレール端部(図示せず)を間隔を設けて対向設置し、耐火物鋳型(図示せず)によって前記レール端部間の隙間とその周囲を取り囲みキャビティ(図示せず)を形成する。そのキャビティの上方に反応るつぼ(図示せず)を設置して、前記るつぼ内の酸化鉄並びに若干の成分調整済剤とアルミニウムとの化学反応によって生成した溶融鉄を、前記るつぼ底部の流出孔を開口させて前記キャビティに注入し、前記レールを溶接する。溶接後、型開きし、レールの頭部の溶接部の余盛を除去する。
図1に示すように、レール1のテルミット溶接部2は、溶接部頭部3と溶接部腹部4と溶接部底部5とで構成される。溶接部頭部3の余盛は押し抜き剪断等により除去される。また、溶接部腹部4及び溶接部底部5の余盛6,7は除去せずそのまま残しておく。
そして、テルミット溶接部2のうち、レール底部上面にある余盛7の余盛止端部7aに、塑性加工を施す。つまり、溶接部底部5の余盛7の余盛止端部7aに、塑性加工を施す。
この場合、レール1の底面からの高さが20mm以上、30mm以下の全範囲で、レール底部上面にある余盛7の余盛止端部7aに塑性加工を施す。この範囲が、レール底部上面のうちの、腹部立ち上がり部近傍に相当する。
塑性加工を施す場合、ピーニングにより行う。その場合、例えば、ジェットタガネと称される空気式高速多針タガネを使用して行う。この空気式高速多針タガネは、多数の硬鋼線を束ねたものが、毎分4000〜4500回の高速で往復動する工具であり、この工具を把持して、多数の硬鋼線の先端部で前記余盛7の余盛止端部7aを高速で叩くことによって、該余盛止端部7aに塑性加工が施される。
この場合、レール1の底面からの高さが20mm以上、30mm以下の全範囲で、レール底部上面にある余盛7の余盛止端部7aに塑性加工を施す。この範囲が、レール底部上面のうちの、腹部立ち上がり部近傍に相当する。
塑性加工を施す場合、ピーニングにより行う。その場合、例えば、ジェットタガネと称される空気式高速多針タガネを使用して行う。この空気式高速多針タガネは、多数の硬鋼線を束ねたものが、毎分4000〜4500回の高速で往復動する工具であり、この工具を把持して、多数の硬鋼線の先端部で前記余盛7の余盛止端部7aを高速で叩くことによって、該余盛止端部7aに塑性加工が施される。
上述したように、レール底部におけるテルミット溶接部(溶接部底部5)の余盛止端部の残留応力分布は、図3に示すように、レール底面では大きな圧縮残留応力となっているのに対し、レールの底部上面では、引張あるいは小さな圧縮残留応力となっている。
レール底面には大きな圧縮応力が残留しているため、列車通過による疲労の観点からの律速箇所は、曲げによる発生応力は小さいが引張残留応力となっているレール底部上面であることが推察されるので、このレール底部上面にある余盛7の余盛止端部7aに、塑性加工を施すと、この塑性加工を施された余盛止端部7aが加工硬化によって、硬度、降伏強度、引張強さが増大し、さらに圧縮残留応力が付与されるので、テルミット溶接部2の疲労強度が向上し、エンクローズアーク溶接とほぼ同等な疲労強度を得ることができる。
したがって、簡便なレール溶接方法であるテルミット溶接法を新幹線の高速線区にも適用できる。
また、レール底部上面の余盛7の余盛止端部7aに塑性加工を施すだけの簡単な作業で済むので、現場で容易にテルミット溶接部2の疲労強度を向上させることができる。また、その確認も塑性加工が施された部分を外観検査するだけで容易に行うことができる。
また、塑性加工は、テルミット溶接当日やそれ以外の日でも行えるので、溶接部の処理時の自由度が高く、さらに、既に敷設されている既存のレールのテルミット溶接部にも容易に疲労強度が向上のための処理を施すことができる。
さらに、本発明において、余盛止端部に施す塑性加工として、研削加工を用いてもよい。研削加工は高速回転する砥石を工作物に押し付けて加工するもので、一般的にグラインダーによる加工が知られている。この処理は材料表面を機械的に仕上げる方法であり、機械仕上げとしては研削のほかに、切削、機械研摩、手研摩、バフ仕上げ、電解研摩がある。機械仕上げに共通する加工の特徴は材料の表面を機械的にむしりとって形を整えることであり、むしりとられた表面は大なり小なり、冷間加工、きず、残留応力が生じている。(疲労設計便覧、日本材料学会編、(株)養賢堂、1995年1月20日発行、p.43) したがって、機械仕上げは、材料の表面に塑性加工を施していることになる。
溶接部の疲労強度向上法として、余盛止端部の研削処理が一般に行われている。これは、形状を滑らかにすることにより応力集中源をなくすことを目的として一般に行われているが、塑性加工の観点から観れば、材料をむしりとる(塑性加工する)際に発生する熱応力により発生する表面の圧縮残留応力及び加工による硬さ上昇等の加工変質層の形成による疲労強度向上である。
したがって、研削処理は、プレス加工あるいはピーニング等の塑性加工と同様の理由により疲労強度を向上させることができる。
レール底面には大きな圧縮応力が残留しているため、列車通過による疲労の観点からの律速箇所は、曲げによる発生応力は小さいが引張残留応力となっているレール底部上面であることが推察されるので、このレール底部上面にある余盛7の余盛止端部7aに、塑性加工を施すと、この塑性加工を施された余盛止端部7aが加工硬化によって、硬度、降伏強度、引張強さが増大し、さらに圧縮残留応力が付与されるので、テルミット溶接部2の疲労強度が向上し、エンクローズアーク溶接とほぼ同等な疲労強度を得ることができる。
したがって、簡便なレール溶接方法であるテルミット溶接法を新幹線の高速線区にも適用できる。
また、レール底部上面の余盛7の余盛止端部7aに塑性加工を施すだけの簡単な作業で済むので、現場で容易にテルミット溶接部2の疲労強度を向上させることができる。また、その確認も塑性加工が施された部分を外観検査するだけで容易に行うことができる。
また、塑性加工は、テルミット溶接当日やそれ以外の日でも行えるので、溶接部の処理時の自由度が高く、さらに、既に敷設されている既存のレールのテルミット溶接部にも容易に疲労強度が向上のための処理を施すことができる。
さらに、本発明において、余盛止端部に施す塑性加工として、研削加工を用いてもよい。研削加工は高速回転する砥石を工作物に押し付けて加工するもので、一般的にグラインダーによる加工が知られている。この処理は材料表面を機械的に仕上げる方法であり、機械仕上げとしては研削のほかに、切削、機械研摩、手研摩、バフ仕上げ、電解研摩がある。機械仕上げに共通する加工の特徴は材料の表面を機械的にむしりとって形を整えることであり、むしりとられた表面は大なり小なり、冷間加工、きず、残留応力が生じている。(疲労設計便覧、日本材料学会編、(株)養賢堂、1995年1月20日発行、p.43) したがって、機械仕上げは、材料の表面に塑性加工を施していることになる。
溶接部の疲労強度向上法として、余盛止端部の研削処理が一般に行われている。これは、形状を滑らかにすることにより応力集中源をなくすことを目的として一般に行われているが、塑性加工の観点から観れば、材料をむしりとる(塑性加工する)際に発生する熱応力により発生する表面の圧縮残留応力及び加工による硬さ上昇等の加工変質層の形成による疲労強度向上である。
したがって、研削処理は、プレス加工あるいはピーニング等の塑性加工と同様の理由により疲労強度を向上させることができる。
JIS1101の60kg普通レールを用いてテルミット溶接部を作製し、支点間距離1mの3点曲げ疲労試験を行った。最小応力を30N/mm2 とし繰返し数は200万回を限度とした。また、レール底部上面にある余盛の余盛止端部には、前記工具を使用して塑性加工を施した。さらに、レール底部の余盛止端部には、棒状グラインダーを使用して塑性加工(研削加工)を施した。それらの結果を表1に示す。
本発明に係る実施例はNo1〜No8およびNo11〜No13であり、比較例はNo9とNo10である。実施例では、レール底部上面の余盛の余盛止端部に、ピーニング(No1〜No8)や棒状グラインダー(No11〜No13)による塑性加工を施しているが、比較例では塑性加工を施していない。
表1から明らかなように、実施例のNo1〜No3およびNo11、No12では、余盛止端部に塑性加工を施す範囲がレールの底面からの高さが20mm以上、30mm以下の範囲と最も好適な範囲であるので、最大応力が290N/mm2 であっても未破断であった。また、実施例のNo4は塑性加工を施す範囲は上記と同様に最も好適な範囲であるが、最大応力が310N/mm2と大きいので、繰返し数が1.32×106回で破断した。
また、実施例のNo5およびNo13は塑性加工を施す範囲が上記範囲より広いが、最大応力が290N/mm2 で未破断であった。実施例のNo6は塑性加工を施す範囲が0〜75mmと広く、溶接部底部の底面部も含めて上面全ての範囲に亙って塑性加工を施しているので、最大応力が290N/mm2 であっても未破断であった。実施例のNo7とNo8では、塑性加工を施す範囲が20〜25mmと上記範囲より狭いが、No7では最大応力が250N/mm2 と比較的小さいので未破断であり、No8では最大応力が270N/mm2 と比較的大きいので、繰返し数が1.47×106回で破断した。
このような実施例により、余盛止端部に塑性加工を施す際の最も好適な範囲は、レールの底面からの高さが20mm以上、30mm以下の範囲であることが分る。但し、本発明では、この範囲を超えて、あるいはこの範囲より狭い範囲で塑性加工を施してもよいのは勿論である。
また、比較例のNo9では、最大応力が230N/mm2 と小さい場合は、未破断であるが、比較例のNo10では、最大応力が250N/mm2 であり、実施例のうちの最も小さい最大応力と等しいが、繰返し数が0.98×106回で破断した。したがって、本発明のように、レール底部上面にある余盛の余盛止端部に塑性加工を施すことにより疲労強度が向上しているのが明らかとなった。
本発明に係る実施例はNo1〜No8およびNo11〜No13であり、比較例はNo9とNo10である。実施例では、レール底部上面の余盛の余盛止端部に、ピーニング(No1〜No8)や棒状グラインダー(No11〜No13)による塑性加工を施しているが、比較例では塑性加工を施していない。
また、実施例のNo5およびNo13は塑性加工を施す範囲が上記範囲より広いが、最大応力が290N/mm2 で未破断であった。実施例のNo6は塑性加工を施す範囲が0〜75mmと広く、溶接部底部の底面部も含めて上面全ての範囲に亙って塑性加工を施しているので、最大応力が290N/mm2 であっても未破断であった。実施例のNo7とNo8では、塑性加工を施す範囲が20〜25mmと上記範囲より狭いが、No7では最大応力が250N/mm2 と比較的小さいので未破断であり、No8では最大応力が270N/mm2 と比較的大きいので、繰返し数が1.47×106回で破断した。
このような実施例により、余盛止端部に塑性加工を施す際の最も好適な範囲は、レールの底面からの高さが20mm以上、30mm以下の範囲であることが分る。但し、本発明では、この範囲を超えて、あるいはこの範囲より狭い範囲で塑性加工を施してもよいのは勿論である。
また、比較例のNo9では、最大応力が230N/mm2 と小さい場合は、未破断であるが、比較例のNo10では、最大応力が250N/mm2 であり、実施例のうちの最も小さい最大応力と等しいが、繰返し数が0.98×106回で破断した。したがって、本発明のように、レール底部上面にある余盛の余盛止端部に塑性加工を施すことにより疲労強度が向上しているのが明らかとなった。
1 レール
2 テルミット溶接部
3 溶接部頭部
4 溶接部腹部
5 溶接部底部
7 溶接部底部上面の余盛
7a 余盛止端部
2 テルミット溶接部
3 溶接部頭部
4 溶接部腹部
5 溶接部底部
7 溶接部底部上面の余盛
7a 余盛止端部
Claims (3)
- レールをテルミット溶接してなる溶接部のうち、レール底部上面にある余盛の余盛止端部に、塑性加工を施すことを特徴とするレールのテルミット溶接部処理方法。
- 前記レール底部上面のうちの、レール腹部立ち上がり部近傍にある余盛の余盛止端部に、塑性加工を施すことを特徴とする請求項1に記載のレールのテルミット溶接部処理方法。
- 前記レールの底面からの高さが20mm以上、30mm以下の全範囲で、前記レール底部上面にある余盛の余盛止端部に塑性加工を施すことを特徴とする請求項1または2に記載のレールのテルミット溶接部処理方法。
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