JPH08337819A - レール溶接部の耐腹部水平き裂性改善法 - Google Patents
レール溶接部の耐腹部水平き裂性改善法Info
- Publication number
- JPH08337819A JPH08337819A JP14224395A JP14224395A JPH08337819A JP H08337819 A JPH08337819 A JP H08337819A JP 14224395 A JP14224395 A JP 14224395A JP 14224395 A JP14224395 A JP 14224395A JP H08337819 A JPH08337819 A JP H08337819A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】本発明は、レール溶接部の耐腹部水平き裂性改
善に関するものである。 【構成】溶接終了後、余盛り取り処理を行ったレール
の、レール溶接部を中心にして両側の母材側へそれぞれ
50mm以上120mmの範囲のレール腹部中立軸、あるい
は中立軸を中心にして頭部側ならびに底部側へ±30mm
の範囲の腹部片面あるいは両面について、直径が15mm
〜50mmの範囲を局部的に500℃以上1000℃を超
えない範囲に加熱し、共析変態が終了後急速冷却を行
う。 【効果】 溶接部に近接する個所を局部加熱することに
より、局部加熱部には大きな引張残留応力が発生し、こ
れとバランスして発生する圧縮残留応力により、溶接部
に存在する引張残留応力を100MPa 以下に軽減して耐
腹部水平き裂性を改善できる。
善に関するものである。 【構成】溶接終了後、余盛り取り処理を行ったレール
の、レール溶接部を中心にして両側の母材側へそれぞれ
50mm以上120mmの範囲のレール腹部中立軸、あるい
は中立軸を中心にして頭部側ならびに底部側へ±30mm
の範囲の腹部片面あるいは両面について、直径が15mm
〜50mmの範囲を局部的に500℃以上1000℃を超
えない範囲に加熱し、共析変態が終了後急速冷却を行
う。 【効果】 溶接部に近接する個所を局部加熱することに
より、局部加熱部には大きな引張残留応力が発生し、こ
れとバランスして発生する圧縮残留応力により、溶接部
に存在する引張残留応力を100MPa 以下に軽減して耐
腹部水平き裂性を改善できる。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はレール溶接部の耐腹部水
平き裂性改善に関するものである。
平き裂性改善に関するものである。
【0002】
【従来の技術】鉄道輸送の効率化指向によって、旅客列
車はますます高速化し、貨物列車は重荷重・大量輸送化
してきている。また一方ではメンテナンスフリー化、快
適運行性、安全性の指向からレールの溶接化が促進され
ロングレール化が図られてきている。ところが、レール
溶接部においては特に重荷重線や寒冷地などでレール溶
接部の腹部中立軸を起点として疲労き裂が発生し、これ
が引き金となって脆性破壊が発生し、レール取替頻度が
多くなることがあった。図1にこの状態の一例を示す。
すなわち(a)図は、腹部水平き裂の発生状況をレール
側面側から見た図であり、き裂は腹部中立軸近傍の予盛
り研削疵を起点に水平方向に発生し、腹部板厚を貫通
後、一方側のき裂はレール頭部側へ、他方側のき裂は底
部側へ進展している。(b)図は腹部水平き裂の破面を
レール頭部側から見た状態を示し、レール溶接部の腹部
中立軸近傍の予盛り研削疵を起点に疲労が発生し、深さ
約3mm程度進展後脆性破壊により腹部板厚を貫通してい
る様子が分かる。この原因は図2に示すようにレール溶
接部の腹部中立軸近傍に、レール垂直方向に大きな引張
残留応力が溶接により発生し、列車通過ごとに圧縮、引
張の繰返しが負荷し、溶接余盛り取りの研削疵が起点と
なって疲労き裂が発生、進展したことによるものである
ことが判明している。
車はますます高速化し、貨物列車は重荷重・大量輸送化
してきている。また一方ではメンテナンスフリー化、快
適運行性、安全性の指向からレールの溶接化が促進され
ロングレール化が図られてきている。ところが、レール
溶接部においては特に重荷重線や寒冷地などでレール溶
接部の腹部中立軸を起点として疲労き裂が発生し、これ
が引き金となって脆性破壊が発生し、レール取替頻度が
多くなることがあった。図1にこの状態の一例を示す。
すなわち(a)図は、腹部水平き裂の発生状況をレール
側面側から見た図であり、き裂は腹部中立軸近傍の予盛
り研削疵を起点に水平方向に発生し、腹部板厚を貫通
後、一方側のき裂はレール頭部側へ、他方側のき裂は底
部側へ進展している。(b)図は腹部水平き裂の破面を
レール頭部側から見た状態を示し、レール溶接部の腹部
中立軸近傍の予盛り研削疵を起点に疲労が発生し、深さ
約3mm程度進展後脆性破壊により腹部板厚を貫通してい
る様子が分かる。この原因は図2に示すようにレール溶
接部の腹部中立軸近傍に、レール垂直方向に大きな引張
残留応力が溶接により発生し、列車通過ごとに圧縮、引
張の繰返しが負荷し、溶接余盛り取りの研削疵が起点と
なって疲労き裂が発生、進展したことによるものである
ことが判明している。
【0003】こうしたレール取替頻度の増加を防ぐた
め、特開昭59−93837号公報や特開昭59−93
838号公報などの発明ではレール溶接部全体あるいは
レール頭部と腹部を溶接熱あるいは外部からの加熱を利
用して残留応力制御し、溶接部の腹部中立軸近傍にレー
ル垂直方向に発生する引張残留応力を軽減するかあるい
は圧縮側に変えて溶接部の耐疲労性を改善する方法を提
案している。これらの発明により、最近のレール溶接部
の耐疲労性は確かに大きく改善されて来た。
め、特開昭59−93837号公報や特開昭59−93
838号公報などの発明ではレール溶接部全体あるいは
レール頭部と腹部を溶接熱あるいは外部からの加熱を利
用して残留応力制御し、溶接部の腹部中立軸近傍にレー
ル垂直方向に発生する引張残留応力を軽減するかあるい
は圧縮側に変えて溶接部の耐疲労性を改善する方法を提
案している。これらの発明により、最近のレール溶接部
の耐疲労性は確かに大きく改善されて来た。
【0004】ところがこれらの発明以前に溶接され、し
かも既に敷設されているレールについては溶接部の疲労
破壊発生頻度が高く、事実重荷重列車が大量に走行する
鉱山鉄道では溶接部の腹部水平き裂発生が散見されてい
ることが報告されている。すなわち、既に敷設している
レール溶接部の耐腹部水平き裂性をいかに低コストで、
かつ効率良く改善するかが大きな課題として浮上してき
た。しかもレール溶接部は極めて多数個所にのぼること
から、これを短時間で処理できることがポイントとな
る。
かも既に敷設されているレールについては溶接部の疲労
破壊発生頻度が高く、事実重荷重列車が大量に走行する
鉱山鉄道では溶接部の腹部水平き裂発生が散見されてい
ることが報告されている。すなわち、既に敷設している
レール溶接部の耐腹部水平き裂性をいかに低コストで、
かつ効率良く改善するかが大きな課題として浮上してき
た。しかもレール溶接部は極めて多数個所にのぼること
から、これを短時間で処理できることがポイントとな
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記問題を解決する方
法として、本発明は溶接部に存在する過大な引張残留
応力を軽減するかあるいは圧縮側に変えること、あるい
は疲労破壊の発生起点となる余盛り打ち抜き疵を除去
すること、の両方あるいはいずれかで対応することを試
みた。の方法はグラインダーを使用して余盛り打ち抜
き疵を研摩除去することにより耐腹部水平き裂性がかな
り向上することが分かったが、非常に労費を必要とする
こと、研摩程度によっては十分な効果が得られないため
その管理が非常に困難であるなどの問題点があることが
分かった。
法として、本発明は溶接部に存在する過大な引張残留
応力を軽減するかあるいは圧縮側に変えること、あるい
は疲労破壊の発生起点となる余盛り打ち抜き疵を除去
すること、の両方あるいはいずれかで対応することを試
みた。の方法はグラインダーを使用して余盛り打ち抜
き疵を研摩除去することにより耐腹部水平き裂性がかな
り向上することが分かったが、非常に労費を必要とする
こと、研摩程度によっては十分な効果が得られないため
その管理が非常に困難であるなどの問題点があることが
分かった。
【0006】そこで本発明者はの方法で解決すること
を狙い諸検討を行った。溶接部に存在する引張残留応力
を除去するには一般的方法として応力除去焼鈍を行う方
法があるが、敷設したレールを焼鈍するにはかなりの熱
容量を必要とし、かつ時間がかかることから実用上応力
除去焼鈍は不可能であることが分かった。次に溶接部を
ショットピーニングすることで引張残留応力を除去し圧
縮残留応力に変える方法について検討した。その結果、
比較的容易にかつ安価に引張残留応力を除去し圧縮残留
応力に変えることができ、効果もあることが分かった
が、ショットピーニング装置を必要とするので敷設レー
ルには適用できない問題点がある。
を狙い諸検討を行った。溶接部に存在する引張残留応力
を除去するには一般的方法として応力除去焼鈍を行う方
法があるが、敷設したレールを焼鈍するにはかなりの熱
容量を必要とし、かつ時間がかかることから実用上応力
除去焼鈍は不可能であることが分かった。次に溶接部を
ショットピーニングすることで引張残留応力を除去し圧
縮残留応力に変える方法について検討した。その結果、
比較的容易にかつ安価に引張残留応力を除去し圧縮残留
応力に変えることができ、効果もあることが分かった
が、ショットピーニング装置を必要とするので敷設レー
ルには適用できない問題点がある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は上記問題を解
決するために、機動性を考慮して、ガストーチを用いて
局部加熱し、溶接部残留応力を軽減する方法を検討し
た。原理的には溶接部に近接する個所をガストーチで局
部加熱し、その後の冷却によって局部加熱部に引張残留
応力を発生させ、近接する個所にこれとバランスする圧
縮残留応力を発生させて、この圧縮残留応力により溶接
部に存在する引張残留応力を軽減しようとするものであ
る。
決するために、機動性を考慮して、ガストーチを用いて
局部加熱し、溶接部残留応力を軽減する方法を検討し
た。原理的には溶接部に近接する個所をガストーチで局
部加熱し、その後の冷却によって局部加熱部に引張残留
応力を発生させ、近接する個所にこれとバランスする圧
縮残留応力を発生させて、この圧縮残留応力により溶接
部に存在する引張残留応力を軽減しようとするものであ
る。
【0008】溶接部残留応力を腹部水平き裂が発生しな
い限度の100MPa 以下に軽減するために、局部加熱条
件を種々検討した結果、加熱の中心を溶接部の腹部中心
から中立軸上で約30mmから150mm程度離れた母材部
をガストーチで加熱温度を種々変え、その後の冷却速度
も色々変えて溶接部腹部中立軸の垂直方向残留応力を調
べた結果、加熱部位の中心は溶接中心からレール長さ方
向に50mm以上離し120mmの範囲でなければ効果がな
いこと、加熱の中心位置の中立軸上からの範囲は±30
mmの範囲が最適であること、加熱面は腹部の片面でも構
わないが、両面であればさらに十分な効果があること、
局部加熱範囲は直径が15mm〜50mmの範囲が良いこ
と、加熱温度は少なくとも500℃以上に加熱し、上限
としては1000℃が望ましいこと、冷却は共析変態が
終わるまでは放冷し、共析変態点が終了後は出来るだけ
急速冷却することが好ましいことが分かった。図3は上
記局部加熱の位置を示している。
い限度の100MPa 以下に軽減するために、局部加熱条
件を種々検討した結果、加熱の中心を溶接部の腹部中心
から中立軸上で約30mmから150mm程度離れた母材部
をガストーチで加熱温度を種々変え、その後の冷却速度
も色々変えて溶接部腹部中立軸の垂直方向残留応力を調
べた結果、加熱部位の中心は溶接中心からレール長さ方
向に50mm以上離し120mmの範囲でなければ効果がな
いこと、加熱の中心位置の中立軸上からの範囲は±30
mmの範囲が最適であること、加熱面は腹部の片面でも構
わないが、両面であればさらに十分な効果があること、
局部加熱範囲は直径が15mm〜50mmの範囲が良いこ
と、加熱温度は少なくとも500℃以上に加熱し、上限
としては1000℃が望ましいこと、冷却は共析変態が
終わるまでは放冷し、共析変態点が終了後は出来るだけ
急速冷却することが好ましいことが分かった。図3は上
記局部加熱の位置を示している。
【0009】本発明は上記知見に基づいてなされたもの
で、その主旨とするところは、レール溶接部を中心にし
てレール長手方向両側へそれぞれ50mm以上120mm以
下の範囲でかつレール腹部中立軸を起点として頭部側お
よび底部側へそれぞれ30mm以下の範囲のレール腹部の
片面または両面の任意の点を中心とし、前記中心を起点
として直径が15〜50mmの範囲を500〜1000℃
に局部加熱することを特徴とするレール溶接部の耐腹部
水平き裂性改善法にある。また前記局部加熱後レールを
常温まで放冷すること、或いはレールを少なくとも共析
変態終了まで放冷し、その後急冷する方法を採用しても
よい。
で、その主旨とするところは、レール溶接部を中心にし
てレール長手方向両側へそれぞれ50mm以上120mm以
下の範囲でかつレール腹部中立軸を起点として頭部側お
よび底部側へそれぞれ30mm以下の範囲のレール腹部の
片面または両面の任意の点を中心とし、前記中心を起点
として直径が15〜50mmの範囲を500〜1000℃
に局部加熱することを特徴とするレール溶接部の耐腹部
水平き裂性改善法にある。また前記局部加熱後レールを
常温まで放冷すること、或いはレールを少なくとも共析
変態終了まで放冷し、その後急冷する方法を採用しても
よい。
【0010】以下本発明について詳細に説明する。本発
明の詳細説明の前にまずレール各部の名称について説明
する。図4にレール各部の名称を示し、同図(a)にお
いてAは頭部、Bは腹部、Cは底部、Dは中立軸を示
す。(b)図はレール長手方向の状態を示し、Eは溶接
部でハッチングの範囲が余盛り打ち抜き部(余盛り取り
処理を行った部分)、Fが溶接部中心を示す。
明の詳細説明の前にまずレール各部の名称について説明
する。図4にレール各部の名称を示し、同図(a)にお
いてAは頭部、Bは腹部、Cは底部、Dは中立軸を示
す。(b)図はレール長手方向の状態を示し、Eは溶接
部でハッチングの範囲が余盛り打ち抜き部(余盛り取り
処理を行った部分)、Fが溶接部中心を示す。
【0011】本発明ではすでに実軌道に敷設しているレ
ールを対象にしており、これにガストーチで局部加熱を
行って局部加熱部に発生する引張残留応力とバランスし
て発生する圧縮残留応力で溶接部に存在する引張残留応
力の軽減を狙っている。
ールを対象にしており、これにガストーチで局部加熱を
行って局部加熱部に発生する引張残留応力とバランスし
て発生する圧縮残留応力で溶接部に存在する引張残留応
力の軽減を狙っている。
【0012】まずその加熱範囲について述べる。局部加
熱の中心の範囲を、溶接部を中心にして両側の母材側へ
それぞれ50mm以上120mmの範囲のレール腹部中立軸
に限定している理由は、溶接ままで溶接部の腹部中立軸
の垂直方向に残存する過大な引張残留応力を最も効率良
く軽減させるためである。すなわち、溶接部中心から5
0mmまでの範囲を中心として局部加熱すると、溶接部に
は返って引張残留応力が重畳する危険性があることから
加熱は溶接部中心から50mm以上はなす必要がある。溶
接部からの加熱の中心位置を120mm以下とする理由は
溶接部に存在する引張残留応力を目標値まで軽減するこ
とができる限界の範囲であるためである。
熱の中心の範囲を、溶接部を中心にして両側の母材側へ
それぞれ50mm以上120mmの範囲のレール腹部中立軸
に限定している理由は、溶接ままで溶接部の腹部中立軸
の垂直方向に残存する過大な引張残留応力を最も効率良
く軽減させるためである。すなわち、溶接部中心から5
0mmまでの範囲を中心として局部加熱すると、溶接部に
は返って引張残留応力が重畳する危険性があることから
加熱は溶接部中心から50mm以上はなす必要がある。溶
接部からの加熱の中心位置を120mm以下とする理由は
溶接部に存在する引張残留応力を目標値まで軽減するこ
とができる限界の範囲であるためである。
【0013】次に加熱の中心位置を中立軸上あるいは中
立軸を中心にして頭部側ならびに底部側へ±30mmの範
囲に限定する理由は、溶接の中立軸上に存在する残留応
力を軽減するためで、この範囲外を加熱した場合溶接部
中立軸上の残留応力の軽減は不可能となるためである。
加熱する個所は腹部の片面でも構わないが両面であれば
さらに大きな引張残留応力の軽減効果が得られる。
立軸を中心にして頭部側ならびに底部側へ±30mmの範
囲に限定する理由は、溶接の中立軸上に存在する残留応
力を軽減するためで、この範囲外を加熱した場合溶接部
中立軸上の残留応力の軽減は不可能となるためである。
加熱する個所は腹部の片面でも構わないが両面であれば
さらに大きな引張残留応力の軽減効果が得られる。
【0014】局部加熱の大きさを直径15mm〜50mmの
範囲に限定する理由は、15mm未満の直径で加熱する
と、局部加熱により発生する引張残留応力の範囲が小さ
くなり、これとバランスする圧縮残留応力の範囲も小さ
くなるので溶接部の引張残留応力を十分に軽減できない
こと、および小さな局部加熱はレール腹部をガス切断し
て穴を開ける危険性があることによる。また50mmを超
える加熱範囲は局部加熱部に発生する引張残留応力の値
が小さくなり、これとバランスする圧縮残留応力も小さ
くなって溶接部の引張残留応力を十分に軽減できないこ
と、および加熱にかなりの時間、費用を必要として不経
済となるためである。
範囲に限定する理由は、15mm未満の直径で加熱する
と、局部加熱により発生する引張残留応力の範囲が小さ
くなり、これとバランスする圧縮残留応力の範囲も小さ
くなるので溶接部の引張残留応力を十分に軽減できない
こと、および小さな局部加熱はレール腹部をガス切断し
て穴を開ける危険性があることによる。また50mmを超
える加熱範囲は局部加熱部に発生する引張残留応力の値
が小さくなり、これとバランスする圧縮残留応力も小さ
くなって溶接部の引張残留応力を十分に軽減できないこ
と、および加熱にかなりの時間、費用を必要として不経
済となるためである。
【0015】加熱温度を500℃以上1000℃以下の
範囲に限定する理由は、局部加熱部に十分な引張残留応
力を発生させ、これとバランスする大きな圧縮残留応力
を発生させて溶接部の引張残留応力を軽減するためであ
る。500℃に満たない加熱では溶接部に引張残留応力
を十分軽減できる圧縮残留応力を発生させることができ
ない。一方、1000℃を超える温度に加熱した場合、
局部加熱部にマルテンサイト組織が発生しやすくなり、
割れを誘発する危険性があること、および加熱に時間と
労費が必要となり不経済であることによる。
範囲に限定する理由は、局部加熱部に十分な引張残留応
力を発生させ、これとバランスする大きな圧縮残留応力
を発生させて溶接部の引張残留応力を軽減するためであ
る。500℃に満たない加熱では溶接部に引張残留応力
を十分軽減できる圧縮残留応力を発生させることができ
ない。一方、1000℃を超える温度に加熱した場合、
局部加熱部にマルテンサイト組織が発生しやすくなり、
割れを誘発する危険性があること、および加熱に時間と
労費が必要となり不経済であることによる。
【0016】急速冷却開始温度を共析変態終了後に規定
するのは、共析変態点以上の温度範囲から急速冷却する
と、レール鋼は高炭素鋼であるため容易にマルテンサイ
ト組織となり割れが発生したり脆化するので、これを防
止するためである。共析変態終了後の冷却速度はできる
だけ急速冷却することが望ましい。理由は局部加熱部に
温度差に基づく大きな残留応力を発生させるためであ
る。なお、局部加熱用の熱源には実軌道などへの運搬が
可能なガスなどが利用できる。
するのは、共析変態点以上の温度範囲から急速冷却する
と、レール鋼は高炭素鋼であるため容易にマルテンサイ
ト組織となり割れが発生したり脆化するので、これを防
止するためである。共析変態終了後の冷却速度はできる
だけ急速冷却することが望ましい。理由は局部加熱部に
温度差に基づく大きな残留応力を発生させるためであ
る。なお、局部加熱用の熱源には実軌道などへの運搬が
可能なガスなどが利用できる。
【0017】
【実施例】次に本発明の具体的実施例について説明す
る。本発明の有効性を確認するために、JIS60kg普
通鋼レールのフラッシュバット溶接継手について本発明
を実施した。結果を表1に示す。表1から本発明により
レール溶接部の腹部中立軸に垂直方向残留応力は溶接ま
まより著しく軽減でき、また腹部水平き裂再現実験にお
いても、亀裂の発生が防止でき、耐腹部水平き裂性が改
善できていることが分かる。
る。本発明の有効性を確認するために、JIS60kg普
通鋼レールのフラッシュバット溶接継手について本発明
を実施した。結果を表1に示す。表1から本発明により
レール溶接部の腹部中立軸に垂直方向残留応力は溶接ま
まより著しく軽減でき、また腹部水平き裂再現実験にお
いても、亀裂の発生が防止でき、耐腹部水平き裂性が改
善できていることが分かる。
【0018】
【表1】
【0019】
【発明の効果】以上説明したように、本発明により、レ
ール溶接部に近接する個所を局部加熱することによっ
て、溶接部に残在する引張残留応力を100MPa 以下に
軽減し、耐腹部水平き裂性を改善したレールを得ること
ができる。
ール溶接部に近接する個所を局部加熱することによっ
て、溶接部に残在する引張残留応力を100MPa 以下に
軽減し、耐腹部水平き裂性を改善したレールを得ること
ができる。
【図1】(a)はレール溶接部の腹部水平き裂発生状況
の一例をレール側面から示し、(b)は切れ粒の破面を
レール頭部側空見た状態を示す図。
の一例をレール側面から示し、(b)は切れ粒の破面を
レール頭部側空見た状態を示す図。
【図2】レール溶接部の腹部中立軸近傍における引張残
留応力の発生状況を示す図。
留応力の発生状況を示す図。
【図3】本発明における局部加熱部位を示す説明図。
【図4】レールの各部位を示す図。
A:頭部 B:腹部 C:底部 D:中立軸 E:溶接部余盛打抜部 F:溶接部中心
Claims (3)
- 【請求項1】 レール溶接部を中心にしてレール長手方
向両側へそれぞれ50mm以上120mm以下の範囲でかつ
レール腹部中立軸を起点として頭部側および底部側へそ
れぞれ30mm以下の範囲のレール腹部の片面または両面
の任意の点を中心とし、前記中心を起点として直径が1
5〜50mmの範囲を500〜1000℃に局部加熱する
ことを特徴とするレール溶接部の耐腹部水平き裂性改善
法。 - 【請求項2】 局部加熱後、レールを常温まで放冷する
ことを特徴とする請求項1記載のレール溶接部の耐腹部
水平き裂性改善法。 - 【請求項3】 局部加熱後、レールを少なくとも共析変
態終了まで放冷し、その後急冷することを特徴とする請
求項1記載のレール溶接部の耐腹部水平き裂性改善法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP14224395A JPH08337819A (ja) | 1995-06-08 | 1995-06-08 | レール溶接部の耐腹部水平き裂性改善法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP14224395A JPH08337819A (ja) | 1995-06-08 | 1995-06-08 | レール溶接部の耐腹部水平き裂性改善法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH08337819A true JPH08337819A (ja) | 1996-12-24 |
Family
ID=15310777
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP14224395A Withdrawn JPH08337819A (ja) | 1995-06-08 | 1995-06-08 | レール溶接部の耐腹部水平き裂性改善法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH08337819A (ja) |
Cited By (8)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2010109837A1 (ja) * | 2009-03-27 | 2010-09-30 | 新日本製鐵株式会社 | レール溶接部の冷却装置および冷却方法 |
WO2010116680A1 (ja) * | 2009-03-30 | 2010-10-14 | 新日本製鐵株式会社 | レール溶接部の冷却方法、レール溶接部の冷却装置、及びレール溶接継手 |
WO2012161207A1 (ja) * | 2011-05-25 | 2012-11-29 | 新日鐵住金株式会社 | レール溶接部の再加熱方法 |
WO2014077140A1 (ja) * | 2012-11-16 | 2014-05-22 | 新日鐵住金株式会社 | 後熱処理装置 |
JP2014101533A (ja) * | 2012-11-16 | 2014-06-05 | Nippon Steel & Sumitomo Metal | 後熱処理装置 |
JP2014101534A (ja) * | 2012-11-16 | 2014-06-05 | Nippon Steel & Sumitomo Metal | 後熱処理装置 |
RU2661199C2 (ru) * | 2014-04-08 | 2018-07-16 | Ниппон Стил Энд Сумитомо Метал Корпорейшн | Устройство для термической обработки, способ термической обработки и рельсовая сталь |
CN117696686A (zh) * | 2024-02-06 | 2024-03-15 | 中国航空制造技术研究院 | T型焊接结构变形校正与焊缝强化的复合加工方法 |
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1995
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