JP2005105165A - 低温積層可能な熱可塑性液晶ポリマーフィルム - Google Patents

低温積層可能な熱可塑性液晶ポリマーフィルム Download PDF

Info

Publication number
JP2005105165A
JP2005105165A JP2003341477A JP2003341477A JP2005105165A JP 2005105165 A JP2005105165 A JP 2005105165A JP 2003341477 A JP2003341477 A JP 2003341477A JP 2003341477 A JP2003341477 A JP 2003341477A JP 2005105165 A JP2005105165 A JP 2005105165A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
temperature
film
liquid crystal
crystal polymer
thermoplastic liquid
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2003341477A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2005105165A5 (ja
Inventor
Tatsuya Sunamoto
辰也 砂本
Minoru Onodera
稔 小野寺
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kuraray Co Ltd
Original Assignee
Kuraray Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kuraray Co Ltd filed Critical Kuraray Co Ltd
Priority to JP2003341477A priority Critical patent/JP2005105165A/ja
Publication of JP2005105165A publication Critical patent/JP2005105165A/ja
Publication of JP2005105165A5 publication Critical patent/JP2005105165A5/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Abstract

【課題】 高耐熱化された熱可塑性液晶ポリマーフィルムでありながら、該フィルムの積層を低温下で実施することができ、高温、高圧下での積層を必要としないで樹脂流れを招くことなく十分な接着力が得られる熱可塑性液晶ポリマーフィルムとこれを用いた多層構成のフィルムおよび回路基板並びにその製造方法を提供する。
【解決手段】 熱可塑性液晶ポリマーフィルムであって、0.05MPaの圧縮荷重下、10℃/分の昇温速度で測定して得られる、フィルムの厚さ〜温度曲線における勾配の変曲開始点の温度をTD1、同フィルムの厚さ〜温度曲線における勾配の絶対値が最大になる温度TDmaxよりも10℃低い温度をTD2としたとき、これらがTD2−TD1≧60の条件を満足する。
【選択図】 図1



Description

本発明は、回路基板の絶縁層として有用な光学的異方性の溶融相を形成し得る熱可塑性ポリマー(以下、これを熱可塑性液晶ポリマーと称する)からなるフィルム(以下、これを熱可塑性液晶ポリマーフィルムと称する)とこれを利用した多層構成のフィルムおよび回路基板並びにその製造方法に関する。
IC集積度の向上、回路製品の軽量化、高性能化、高機能化に伴い、回路基板の多層化が進められると共に、電気特性に優れた回路基板が熱望されている。その要望に応えるために、回路基板の絶縁材料として熱可塑性液晶ポリマーフィルムが使用されるようになってきている。熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、耐熱性、低吸水性に優れているとともに、高周波領域での優れた電気特性を有しており、しかも熱可塑性であることから熱圧着により接着剤なしで多層化が可能であるなど、回路基板の多層化用絶縁材料として有望である。
近年、環境問題への配慮から従来の鉛−スズハンダではなく、鉛フリーハンダの適用が求められており、絶縁材料に対してハンダ耐熱性を従来必要とされていた260℃から280℃以上に高めることが要求されている。このため、より高耐熱性(融点:300℃以上)の熱可塑性液晶ポリマーフィルムの開発が進められている。
このような高耐熱性のフィルムを製造する方法として、熱可塑性液晶ポリマーフィルムを熱処理する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。そして、このような熱処理をより効率的に行って熱処理時間を短縮する方法として、熱可塑性液晶ポリマーの熱処理を、熱処理温度を段階的に高めながら多段階で実施する方法も知られている(例えば、特許文献2参照)。
特開平8−90570号公報 特開2000−44797号公報
しかし、高耐熱化処理された液晶ポリマーフィルムを銅箔などの金属箔と熱圧着によって積層して回路基板を形成する場合には、以下の問題があり、特に多層回路基板を形成する場合により顕著である。すなわち、(a)高温での熱プレスが必要である。即ち、汎用の平板プレスの耐用温度領域での積層は不可能であり、高温下での積層が可能な特殊な設備が必要となる。(b)金属箔との積層で十分な接着力を得るには、熱可塑性液晶ポリマーフィルムを融点付近まで加熱する必要があり、また高圧下での積層が必須である。
その一方、高温、高圧下での積層では積層時の樹脂流れの影響を考慮する必要があり、高密度の多層回路基板を製造する場合には、特に積層時の樹脂流れによる導電体(配線パターン)の位置ずれが問題となる。
本発明は、上記した問題点に鑑みてなされたものであって、高耐熱化された熱可塑性液晶ポリマーフィルムでありながら、該フィルムの積層を低温下で実施することができ、高温、高圧下での積層を必要としないで樹脂流れを招くことなく十分な接着力が得られる熱可塑性液晶ポリマーフィルムとこれを用いた多層構成のフィルムおよび回路基板並びにその製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明にかかる熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、熱可塑性液晶ポリマーフィルムであって、0.05MPaの圧縮荷重下、10℃/分の昇温速度で測定して得られる、フィルムの厚さ〜温度曲線における勾配の変曲開始点の温度をTD1、同フィルムの厚さ〜温度曲線における勾配の絶対値が最大になる温度TDmaxよりも10℃低い温度をTD2としたとき、これらがTD2−TD1≧60の条件を満足するものである。
従来から知られている熱可塑性液晶ポリマーフィルムに一定の荷重を負荷し、一定の昇温速度で温度を上昇させながら、その厚さの変化を観測すると、室温からほぼ一定の変化率で厚さが減少し、ある温度(TD1)から厚さの変化率が大きくなり始め、さらに温度が上昇してある温度を過ぎると急激に厚さが減少する様子が観察される。
本発明者らの知見によれば、熱可塑性液晶ポリマーフィルムの積層を行う際、樹脂流れを抑制するには、経験上、上記の観測において、フィルムの厚さの変化率の絶対値が最大となる温度(これは、フィルムが完全に流れ、厚さが0となる温度でもある)よりも10℃低い温度(TD2)を越えないような温度で積層を行うことが必要である。一方で、熱可塑性液晶ポリマーフィルムの積層を行う際、十分な接着力を確保するには、積層を行う温度においてフィルムが柔軟化されていることが必要であり、上記した温度TD1を越える温度で積層を行うことが必要となるが、従来知られている熱可塑性液晶ポリマーフィルムでは、TD1とTD2が近く、あるいはTD1の方がTD2よりも高いことから、樹脂流れの発生を十分に抑制しきれないことが分かった。
本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルムでは、一定の荷重を負荷し、一定の昇温速度で温度を上昇させながら、その厚さの変化を観測した場合、上記した温度TD1を越えた後、緩やかに厚さの変化率が増加していく。その結果、上記したTD2とTD1の温度差が大きくなっている。本発明の熱可塑性液晶ポリマーでは、上記したTD2とTD1の温度差が60℃以上であることから、樹脂流れの発生を伴うことなく、十分な接着力で積層を行うことが可能となっている。
本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルムを構成する熱可塑性液晶ポリマーの原料は特に限定されるものではないが、その具体例として、以下に例示する(1)から(4)に分類される化合物およびその誘導体から導かれる公知のサーモトロピック液晶ポリエステルおよびサーモトロピック液晶ポリエステルアミドを挙げることができる。
(1)芳香族または脂肪族ジヒドロキシ化合物(代表例は表1参照)
Figure 2005105165
(2)芳香族または脂肪族ジカルボン酸(代表例は表2参照)
Figure 2005105165
(3)芳香族ヒドロキシカルボン酸(代表例は表3参照)
Figure 2005105165
(4)芳香族ジアミン、芳香族ヒドロキシアミンまたは芳香族アミノカルボン酸(代表例は表4参照)
Figure 2005105165
これらの原料化合物から得られる液晶高分子の代表例として表5に示す構造単位を有する共重合体(a)〜(e)を挙げることができる。
Figure 2005105165
本発明に使用される熱可塑性液晶ポリマーの融点は、得られるフィルムの耐熱性および加工性の点で、約200〜約400℃の範囲内、とりわけ約250〜約350℃の範囲内に融点を有するものが好ましい。
本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、フィルムに一定の圧縮荷重を与えて昇温し、厚さの変化率を測定した際に、特有の挙動を示し、従来より知られている高耐熱化された熱可塑性液晶ポリマーフィルムとは区別される。本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルムでは、フィルムに一定の圧縮荷重を与えて昇温し、厚さの変化率を測定した際に観測される変曲開始点温度(TD1)と最大圧縮熱変形温度(TDmax)よりも10℃低い温度(TD2)の温度差(TD1−TD2)が60℃以上となっている。これにより、熱可塑性液晶ポリマーフィルムと金属箔または他の熱可塑性液晶ポリマーフィルムとの積層、もしくは熱可塑性液晶ポリマーフィルム同士の積層がTDmaxの直前まで加熱しなくても実施可能となり、樹脂流れを招くことなく十分な接着力が得られる。
本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルムにおいては、分子配向度SORが1.3以下であることが加熱時の反りがないなどの形態安定性が必要とされるプリント配線板や多層プリント配線板の用途に適しており、好ましい。特に加熱時の反りをほとんどなくす必要がある精密プリント配線板や精密多層プリント配線板等を使用する場合には、本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルムの分子配光度SORは1.05以下であることがより好ましい。
ここで、分子配向度SOR(Segment Orientation Ratio)とは、分子配向の度合いを与える指標をいい、従来のMOR(Molecular Orientation Ratio)とは異なり、物体の厚さを考慮した値である。この分子配向度SORは、以下のように算出される。
まず、周知のマイクロ波分子配向度測定機において、液晶ポリマーフィルムを、マイクロ波の進行方向にフィルム面が垂直になるように、マイクロ波共振導波管中に挿入し、該フィルムを透過したマイクロ波の電場強度(マイクロ波透過強度)が測定される。
そして、この測定値に基づいて、次式により、m値(屈折率と称する)が算出される。
m=(Zo/△z) X [1−νmax/νo]
ただし、 Zoは装置定数、△z は物体の平均厚、νmaxはマイクロ波の振動数を変化させたとき、最大のマイクロ波透過強度を与える振動数、νoは平均厚ゼロのとき(すなわち物体がないとき)の最大マイクロ波透過強度を与える振動数である。
次に、マイクロ波の振動方向に対する物体の回転角が0°のとき、つまり、マイクロ波の振動方向と、物体の分子が最もよく配向されている方向であって、最小マイクロ波透過強度を与える方向とが合致しているときのm値をm0、回転角が90°のときのm値をm90として、分子配向度SORがm0/ m90により算出される。
本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、任意の厚みであってもよく、5mm以下の板状またはシート状のものをも包含する。ただし、回路基板における電気絶縁層として熱可塑性液晶ポリマーフィルムを単独で用いる場合、そのフィルムの膜厚は、10〜150μmの範囲内にあることが好ましく、15〜75μmの範囲内がより好ましい。フィルムの厚さが薄過ぎる場合には、フィルムの剛性や強度が小さくなることから、厚さが10〜150μmの範囲のフィルムを所望の数だけ積層させて任意の厚みとすることが好ましい。
本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、熱可塑性液晶ポリマーを押出成形して製造することができる。任意の押出成形法がこの目的のために使用されるが、周知のTダイ法、インフレーション法等が工業的に有利である。特にインフレーション法では、フィルムの機械軸方向(以下、MD方向と略す)だけでなく、これと直交する方向(以下、TD方向と略す)にも応力が加えられるため、MD方向とTD方向との間における機械的性質および熱的性質のバランスのとれたフィルムを得ることができるので、より好適に用いることができる。
本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、以上のようにして押出成形によって形成されたフィルムを熱処理して高耐熱化することによって得られる。特に、熱処理を多段階にわたって行うことにより、より良好なフィルムが得られる。これらの熱処理時には、熱可塑性液晶ポリマーフィルムを銅やアルミニウムなどの支持体に保持させて行うことが好ましい。例えば、インフレーション法などにより形成されたフィルムを支持体に保持させて、この状態で多段階にわたって熱処理を行い、熱処理後に支持体を除去して本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルムを得る。または、支持体を除去することなく、この支持体を導電体とする回路基板として用いることもできる。
このときの熱処理条件は、熱可塑性液晶ポリマーフィルムを構成するポリマーの組成、フィルムの厚さ、支持体の使用の有無等の条件により異なるので一律に規定することはできないが、一般に、1段階目の熱処理を熱可塑性液晶ポリマーフィルムの融点付近、好ましくは融点未満の温度、より好ましくは融点(Tm)から15℃低い温度以上、特に好ましくは融点(Tm)から10℃低い温度以上で実施し、2段階目の熱処理を1段階目の熱処理よりも高い温度に設定して行う。また、熱処理時の時間は一律に規定することはできないが、2段階目の熱処理時間を1段階目の熱処理時間よりも長くすることにより、本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルムが容易に得られる。
また、本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルム同士、または本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルムと他の熱可塑性ポリマーからなるフィルムを積層して多層構成のフィルムとすることもできる。
上記した他の熱可塑性ポリマーからなるフィルムとしては、例えば、(a)ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミドなどの耐熱性の熱可塑性ポリマーからなるフィルム、(b)ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル等の比較的融点が低い熱可塑性ポリマーからなるフィルムや、(c)熱可塑性液晶ポリマーからなるが熱挙動が本発明で規定する要件からはずれるフィルムなどが挙げられる。他の熱可塑性ポリマーからなるフィルムは、本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルムとの積層を行う温度において、熱変形を起こさない程度の耐熱性を有していることが好ましい。
他の熱可塑性ポリマーからなるフィルムの厚さには特に制限はないが、10〜150μmであることが好ましく、15〜100μmであることがより好ましい。
多層フィルムは、本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルムを2枚以上積層したもの、他の熱可塑性ポリマーからなるフィルム1枚と本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルムの1枚を積層したもの、他の熱可塑性ポリマーからなるフィルムの両面に本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルムを積層したもの、他の熱可塑性ポリマーからなるフィルムの複数枚と本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルムの複数枚を積層したものなどが挙げられる。
本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、銅箔やアルミニウム箔などの金属箔と積層し、この金属箔を導電体とする回路基板とする。ここで使用する金属箔の材質としては、電気的接続に使用されるような金属が好適であり、銅のほか金、銀、ニッケル、アルミニウムなどを挙げることができる。回路基板として使用する場合、熱可塑性液晶ポリマーフィルムの熱膨張係数は、該熱可塑性液晶ポリマーフィルム上に形成される導電体の熱膨張係数と実質的に同一となるように調整することが好ましい。
金属箔として銅箔を使用する場合、該銅箔は圧延法、電気分解法などによって製造される何れのものでも用いることができるが、電気分解法によって製造される表面粗さの大きいものが好ましい。金属箔には、銅箔に対して通常施される酸洗浄などの化学的処理が施されていてもよい。また、金属箔の厚さは、3〜35μmの範囲内であることが好ましく、9〜18μmの範囲内であることがより好ましい。
回路基板は、金属箔の片面に本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルムが積層された構造を有するものや、本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルムの両面に金属箔が積層された構造を有するものが挙げられる。金属箔は、熱可塑性液晶ポリマーフィルムとの積層後に、エッチング等の常法により、回路パターンとすることができる。さらに必要に応じて炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザーなどのレーザーによる加工などを施して、スルーホールやマイクロビアを形成してもよい。
また、このようにして得られる回路基板と本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルムを積層することも可能であり、特に本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルムを介して回路基板同士を一体化してなる多層構成の回路基板は、好ましい実施形態の1つである。
また本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルム同士、または本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルムと他の熱可塑性ポリマーからなるフィルムを積層した多層構成のフィルムを金属箔と積層して回路基板とすることもできる。
図1に、一定の圧縮荷重下、一定の速度で昇温した時に観測される、熱可塑性液晶ポリマーフィルムの厚さと温度の関係を表す曲線(模式図)を示す。同図において、実線で示したものは、本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルムの厚さと温度の関係を表す曲線であり、破線で示したものは、従来の高耐熱化された熱可塑性液晶ポリマーフィルムの厚さと温度の関係を表す曲線である。
従来のフィルムは、特開2000−44797号公報の各実施例において示されるように、1段階目ではフィルムの熱処理前の融点(Tm)よりも15℃以上低い温度で熱処理し、2段階目では1段階目より高い温度で、その1段階目よりも短い時間で熱処理されて作製されている。
なお、本発明者らの知見によれば、1段階目ではフィルムの熱処理前の融点(Tm)よりも15℃以上低い温度で熱処理し、2段階目では1段階目より高い温度で、その1段階目よりも長い時間で熱処理されて作製されたフィルムについても、従来のフィルムと同様の熱挙動を示すことが確認されている。
また、1段階目ではフィルムの熱処理前の融点(Tm)よりも15℃以上低い温度(Tm−15)℃よりも高く、上記した融点(Tm)未満の温度で熱処理し、2段階目では1段階目より高い温度で、1段階目よりも短い時間熱処理して作製されるフィルムについても従来のフィルムと同様の熱挙動を示すことが確認されている。
図1から明らかなように、従来の熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、破線で示すように、厚さ〜温度曲線が室温(20℃)からTDmax(最大圧縮熱変形温度)の近くまで緩やかな傾斜勾配で下方に向かって延び、この間は厚さの変化率が小さい。このため、熱可塑性液晶ポリマーフィルムと金属箔または他の熱可塑性ポリマーからなるフィルムとを、もしくは熱可塑性液晶ポリマーフィルム同士を十分な接着力で積層するためには、フィルムが流動開始するTDmaxの直前で熱圧着する必要がある。
これに対し、本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルムでは、室温(20℃)から上記したTD1(変曲開始点温度)までの範囲における厚さの変化は、従来のフィルムと同様であるが、TD1からTD2(TDmaxよりも10℃低い温度)までの範囲においては、厚さの変化が、連続的に緩やかに大きくなっていく。その結果、TD1とTD2の差が60℃以上となっている。このため、TD1とTD2の範囲内で、熱可塑性液晶ポリマーフィルムと金属箔または他の熱可塑性ポリマーからなるフィルムの積層、もしくは熱可塑性液晶ポリマーフィルム同士の積層を実施しても十分な接着力を実現することが可能となり、TDmaxの直前まで加熱することを必要としないで樹脂流れを招くことがない。
本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、室温から上記の温度TD1までの温度範囲での温度に対する厚さの変化率(TDE1)と上記の温度TD1からTD2までの温度範囲での温度に対する厚さの変化率(TDE2)が、
2≦TDE2/TDE1≦20 を満足することが好ましい。
TDE1とTDE2が上記の関係を満足するような熱可塑性液晶ポリマーフィルムを使用することにより、本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルムと金属箔または他の熱可塑性ポリマーからなるフィルム、もしくは本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルム同士を低温下で十分な接着力でより確実に積層することが可能となる。特に多層構造の回路基板を製造する際に、配線パターンの位置ズレをより確実に防止することが可能である。
TDE2/TDE1の値が2より小さい場合、樹脂流れを生じることなく十分な接着力を達成することが困難であり、また、TDE2/TDE1の値が20を越えると、樹脂流れが発生しやすくなる。
次に、本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルムを用いて回路基板や多層構成のフィルムを製造する場合について、図2を参照しながら説明する。
図2の(A)は、本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F1)の片面に金属箔(MF)を積層して回路基板を製造する様子を示しており、両者を熱圧着して積層する。熱圧着は、公知の手段、例えば、加熱ロール、平盤熱プレス、平盤真空熱プレス、二重ベルトプレスなどを使用して実施することができる。熱圧着は、樹脂流れを生じることなく、かつ十分な接着力を達成するために、本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F1)の、上記した温度TD1からTD2の範囲内の温度で実施される。より好ましい熱圧着温度は、TD1+20℃〜TD2の範囲内の温度である。また、熱圧着時の圧力は、通常2〜8MPa、好ましくは3〜6MPaである。
また、図2の(B)は、本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F1)の両面に金属箔(MF)を積層して回路基板を製造する様子を示しており、金属箔(MF)を熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F1)の両面に配置した上で全体を熱圧着する。熱圧着に使用される装置、熱圧着の温度は、上記した図2(A)の場合と同様である。なお、本図においては、積層後、片方の金属箔にはエッチング処理が施され、回路パターン(P1)が形成される。
図2(C)は、本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F1)同士、または本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F1)と他の熱可塑性ポリマーフィルム(F2)からなる多層構成のフィルムの例を示している。
さらに図2(D)は、本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルムを使用して多層構造の回路基板を製造する様子を示しており、本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F1)に金属箔(MF)が積層された単一の回路基板(CB1)と、従来の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F3)の片面に回路パターン(P1)が形成され、その反対側の面に金属箔(MF)が積層されてなる単一の回路基板(CB2)を、熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F1)の層と回路パターン(P1)が内側になるように配置した上で全体を熱圧着して、多層回路基板(CB3)とする。熱圧着は、公知の手段、例えば、加熱ロール、平盤熱プレス、平盤真空熱プレス、二重ベルトプレスなどを使用して実施することができる。
また、熱圧着は、本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F1)の、上記した温度TD1からTD2の範囲内の温度で実施される。熱圧着が従来よりも低温下で行われるにも係らず、各回路基板(CB1とCB2)は十分な接着力を示す。また、積層時に樹脂流れを生じることがないので、回路パターン(P1)が位置ズレを起こすことがない。積層時のより好ましい熱圧着温度は、TD1+20℃〜TD2の範囲内の温度である。また、熱圧着時の圧力は、通常2〜8MPa、好ましくは3〜6MPaである。
なお、本図においては、2つの回路基板(CB1とCB2)を積層した後、各金属箔にエッチング処理を施して回路パターン(P2)を形成し、次いで内部に位置する回路パターン(P1)に対応する位置にマイクロビア(H1,H2)が形成され、さらに導電ペーストや半田などの導電体を充填した後、それに接続するように回路パターン(P3)が形成される。
また、図2の(E)は多層構造の回路基板を製造方法の他の実施形態を示すものであり、従来の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F3)に金属箔(MF)が積層された単一の回路基板(CB1)と、従来の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F4)を使用してなる多層回路基板(CB4)であって、片面に回路パターン(P2、P3)が形成され、その反対側の面に金属箔(MF)からなる層を有するとともに、層内回路パターン(P2、P3)を有しており、回路パターンP3同士、および層内回路パターンP3と金属箔(MF)がマイクロビア(H1、H2)を介して電気的に接続されている多層回路基板(CB4)を、本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F1)を介して回路パターン(P2、P3)と熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F3)が対向するように配置して全体を熱圧着する。本図においては、本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F1)は、積層後の厚さが回路パタ−ン(P2、P3)と同一の厚さとなるように設定されており、熱圧着時に回路パターン(P2、P3)が本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F1)を貫通して、対向する熱可塑性液晶ポリマーフィルム(F3)の表面に接触し、多層構造の回路基板となる。
このようにして得られる回路基板は、近年重要になってきている、高い精密さを満足するものである。
また、本発明で得られる多層構成のフィルムについても、上記と同様の工程で金属箔と積層して回路基板とすることができる。また、かかる多層構成のフィルムは、それ自体で、包装材料やカバーフィルムなどの用途に使用することができる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
以下の実施例において、熱可塑性液晶ポリマーフィルムの融点、一定の圧縮荷重下でのフィルムの厚さの変化に係る上記した温度TD1,TDmaxおよびTD2、並びに、積層体の接着強度は以下の方法により測定した。
(1)フィルムの融点
示差走査熱量計を用いて、フィルムの熱挙動を観察することによって測定した。すなわち、フィルムを10℃/分の速度で昇温した時に現れる吸熱ピークの位置を、フィルムの融点として記録した。
(2)フィルムの厚さの変化に係る温度(TD1,TDmax,TD2)
熱機械分析装置〔TMA−50、島津製作所社製〕を用い、圧縮プローブは0.5mmΦのものを用い、0.05MPaの圧縮荷重下で室温から10℃/分の速度で400℃まで昇温してフィルムの厚さの変化を観察し、温度−厚さ曲線を作成した。
そして、得られた温度−厚さ曲線から、以下の温度を読み取った。
TD1:厚さの変化の勾配が変化しはじめる温度。
TDmax :厚さの変化の勾配の絶対値が最大になる温度(フィルムが流れ出す温度)。なお、TDmax よりも10℃低い温度をTD2とした。
さらに、室温から上記の温度TD1までの温度範囲での温度に対する厚さの変化率(TDE1)と上記の温度TD1からTD2までの温度範囲での温度に対する厚さの変化率(TDE2)とを求め、TDE2/TDE1の値を算出した。
(3)積層体の接着強度
積層体から1.0cm幅の剥離試験片を作成し、JIS C 5016に準じて、180°法により、50mm/分の速度で剥離試験を行い、接着強度を測定した。
実施例1(高耐熱化した熱可塑性液晶ポリマーフィルム2の製造)
p−ヒドロキシ安息香酸と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の共重合物で、融点が283℃である液晶ポリマーを溶融押出し、インフレーション成形法により、膜厚:50μm、分子配向度SOR:1.03の熱可塑性液晶ポリマーフィルム1(融点:280℃)を得た。
得られた熱可塑性液晶ポリマーフィルム1と電解銅箔(厚さ:18μm)を重ね合わせ、真空熱プレス装置を用い、加熱盤を250℃に設定し、3MPaの圧力で10分間加熱圧着した後、270℃で3時間、さらに290℃で5時間加熱処理し、電解銅箔を剥離して、膜厚が50μmである、高融点の熱可塑性液晶ポリマ−フィルム2(融点:310℃)を得た。この熱可塑性液晶ポリマーフィルム2について、上記の方法で厚さの変化に係る温度(TD1、TDmax、TD2)とTDE1、TDE2を測定した。結果を表6に示す。
実施例2(高耐熱化した熱可塑性液晶ポリマーフィルム3の製造)
実施例1で作製した熱可塑性液晶ポリマーフィルム1と電解銅箔(厚さ:18μm)を重ね合わせ、真空熱プレス装置を用い、加熱盤を250℃に設定し、3MPaの圧力で5分間加熱圧着した後、270℃で1時間、さらに290℃で7時間加熱処理し、電解銅箔を剥離して、膜厚が50μmである、高融点の熱可塑性液晶ポリマ−フィルム3(融点:310℃)を得た。この熱可塑性液晶ポリマーフィルム3について、上記の方法で厚さの変化に係る温度(TD1、TDmax、TD2)とTDE1、TDE2を測定した。結果を表6に示す。
比較例1(高耐熱化した熱可塑性液晶ポリマーフィルムC1の製造)
実施例1で作製した熱可塑性液晶ポリマーフィルム1と電解銅箔(厚さ:18μm)を重ね合わせ、真空熱プレス装置を用い、加熱盤を250℃に設定し、3MPaの圧力で5分間加熱圧着した後、270℃で10時間加熱処理し、電解銅箔を剥離して、膜厚が50μmである、高融点の熱可塑性液晶ポリマーフィルムC1(融点:310℃)を得た。この熱可塑性液晶ポリマーフィルム3について、上記の方法で厚さの変化に係る温度(TD1、TDmax、TD2)とTDE1、TDE2を測定した。結果を表6に示す。
Figure 2005105165
実施例3(回路基板の製造)
実施例1で得られた熱可塑性液晶ポリマーフィルム2の両面に厚さ18μmの電解銅箔を重ね合わせ、真空熱プレス装置を用い、加熱盤を所定の温度(280℃、290℃、300℃の3通り)に設定し、4MPaの圧力で10分間熱圧着して、回路基板(熱可塑性液晶ポリマーフィルム2と銅箔の組み合わせからなる両面金属張積層体)を得た。この積層体の接着強度を上記した方法で測定したところ、熱圧着温度が280℃の場合には0.5kgf/cm、290℃の場合には0.8kgf/cm、300℃の場合には1.0kgf/cmであった。
比較例2
実施例1で得られた熱可塑性液晶ポリマーフィルム2の両面に厚さ18μmの電解銅箔を重ね合わせ、真空熱プレス装置を用い、加熱盤を所定の温度(320℃、340℃の2通り)に設定し、4MPaの圧力で10分間熱圧着して、回路基板(熱可塑性液晶ポリマーフィルム2と銅箔の組み合わせからなる両面金属張積層体)を得た。この積層体の接着強度を上記した方法で測定したところ、熱圧着温度が320℃の場合には1.2kgf/cm、340℃の場合には1.5kgf/cmであった。ただし、いずれの場合にも、樹脂流れが認められた。
実施例4(回路基板の製造)
実施例2で得られた熱可塑性液晶ポリマーフィルム3の両面に厚さ18μmの電解銅箔を重ね合わせ、真空熱プレス装置を用い、加熱盤を所定の温度(280℃、290℃、300℃の3通り)に設定し、4MPaの圧力で10分間熱圧着して、回路基板(熱可塑性液晶ポリマーフィルム3と銅箔の組み合わせからなる両面金属張積層体)を得た。この積層体の接着強度を上記した方法で測定したところ、熱圧着温度が280℃の場合には0.8kgf/cm、290℃の場合には1.0kgf/cm、300℃の場合には1.2kgf/cmであった。
比較例3
実施例2で得られた熱可塑性液晶ポリマーフィルム3の両面に厚さ18μmの電解銅箔を重ね合わせ、真空熱プレス装置を用い、加熱盤を所定の温度(320℃、340℃の2通り)に設定し、4MPaの圧力で10分間熱圧着して、回路基板(熱可塑性液晶ポリマーフィルム3と銅箔の組み合わせからなる両面金属張積層体)を得た。この積層体の接着強度を上記した方法で測定したところ、熱圧着温度が320℃の場合には1.2kgf/cm、340℃の場合には1.5kgf/cmであった。ただし、いずれの場合にも、樹脂流れが認められた。
比較例4
比較例1で得られた熱可塑性液晶ポリマーフィルムC1の両面に厚さ18μmの電解銅箔を重ね合わせ、真空熱プレス装置を用い、加熱盤を所定の温度(280℃、290℃、300℃の3通り)に設定し、4MPaの圧力で10分間熱圧着して、回路基板(熱可塑性液晶ポリマーフィルムC1と銅箔の組み合わせからなる両面金属張積層体)を得た。この積層体の接着強度を上記した方法で測定したところ、熱圧着温度が280℃の場合には0.3kgf/cm、290℃の場合には0.5kgf/cm、300℃の場合には0.6kgf/cmであった。 本比較例4において、0.8kgf/cmという接着強度を達成するためには、TDmax(310℃)直前での熱圧着が必要であった。
以上のことから明らかなように、本発明のフィルムは、低い熱圧着温度でも、銅箔との十分な接着強度を示す。
実施例5(多層構成のフィルムの製造)
実施例1で得られた熱可塑性液晶ポリマーフィルム2の2枚を重ね合わせ、真空熱プレス装置を用い、加熱盤を所定の温度(280℃、290℃、300℃の3通り)に設定し、3MPaの圧力で10分間加熱圧着して、積層フィルムを得た。この積層フィルム間の接着強度を上記した方法で測定したところ、熱圧着温度が280℃の場合には0.2kgf/cm、290℃の場合には0.3kgf/cm、300℃の場合には0.6kgf/cmであった。
実施例6(多層構成のフィルムの製造)
実施例2で得られた熱可塑性液晶ポリマーフィルム3の2枚を重ね合わせ、真空熱プレス装置を用い、加熱盤を所定の温度(280℃、290℃、300℃の3通り)に設定し、3MPaの圧力で10分間加熱圧着して、積層フィルムを得た。この積層フィルム間の接着強度を上記した方法で測定したところ、熱圧着温度が280℃の場合には0.2kgf/cm、290℃の場合には0.5kgf/cm、300℃の場合には0.8kgf/cmであった。
比較例5(多層構成のフィルムの製造)
比較例1で得られた熱可塑性液晶ポリマーフィルムC1の2枚を重ね合わせ、真空熱プレス装置を用い、加熱盤を所定の温度(280℃、290℃、300℃の3通り)に設定し、3MPaの圧力で10分間加熱圧着して、積層フィルムを得た。この積層フィルム間の接着強度を上記した方法で測定したところ、熱圧着温度が280℃の場合には0.1kgf/cm、290℃の場合には0.1kgf/cm、300℃の場合には0.2kgf/cmであった。
実施例7(多層構成のフィルムの製造)
実施例1で得られた熱可塑性液晶ポリマーフィルム2と比較例1で得られた熱可塑性液晶ポリマーフィルムC1を重ね合わせ、真空熱プレス装置を用い、加熱盤を所定の温度(280℃、290℃、300℃の3通り)に設定し、3MPaの圧力で10分間加熱圧着して、積層フィルムを得た。この積層フィルム間の接着強度を上記した方法で測定したところ、熱圧着温度が280℃の場合には0.2kgf/cm、290℃の場合には0.3kgf/cm、300℃の場合には0.6kgf/cmであった。
実施例8(多層構成のフィルムの製造)
実施例2で得られた熱可塑性液晶ポリマーフィルム3と比較例1で得られた熱可塑性液晶ポリマーフィルムC1を重ね合わせ、真空熱プレス装置を用い、加熱盤を所定の温度(280℃、290℃、300℃の3通り)に設定し、3MPaの圧力で10分間加熱圧着して、積層フィルムを得た。この積層フィルム間の接着強度を上記した方法で測定したところ、熱圧着温度が280℃の場合には0.2kgf/cm、290℃の場合には0.3kgf/cm、300℃の場合には0.6kgf/cmであった。
実施例9(多層回路基板の製造)
比較例1で得られた熱可塑性液晶ポリマーフィルムC1の両面に厚さ18μmの電解銅箔を重ね合わせ、真空熱プレス装置を用い、加熱盤を300℃に設定し、4MPaの圧力で10分間熱圧着して、熱可塑性液晶ポリマーフィルムC1の両面に銅箔が積層されてなる両面金属張積層体を得た。この両面金属張積層体の1方の面の銅箔層をエッチングして、格子状の回路パターンを形成した。この回路パターンに予め基準点と標点を付け、3次元測定装置(株式会社ミツトヨ製)を使用して基準点と標点の距離(L1)を測定した後、実施例1で得られた熱可塑性液晶ポリマーフィルム2を回路パターン上に重ね、さらに厚さ18μmの電解銅箔を重ねて、加熱盤を300℃に設定し、3MPaの圧力で10分間熱圧着して、格子状の回路パターンが熱可塑性液晶ポリマーフィルム2と電解銅箔でカバーされてなる積層体(多層回路基板)を得た。電解銅箔と熱可塑性液晶ポリマーフィルム2の層を削り取り、回路パターンを露出させて、再度基準点と標点の距離(L2)を測定した。
(L1−L2)/L1×100 で算出される回路パターンの位置ズレは0.02%であった。
実施例10(多層回路基板の製造)
実施例9において、熱可塑性液晶ポリマーフィルム2に代えて熱可塑性液晶ポリマーフィルム3を使用したこと以外は実施例9と同様の操作を行い、格子状の回路パターンが熱可塑性液晶ポリマーフィルム3と電解銅箔でカバーされてなる積層体(多層回路基板)を得た。電解銅箔と熱可塑性液晶ポリマーフィルム3の層を削り取り、回路パターンを露出させて、回路パターンに設けた基準点と標点の距離(L2)を測定した。
(L1−L2)/L1×100 で算出される回路パターンの位置ズレは0.02%であった。
比較例6(多層回路基板の製造)
実施例9において、熱可塑性液晶ポリマーフィルム2に代えて熱可塑性液晶ポリマーフィルムC1を使用し、かつ熱圧着時の温度を300℃から305℃に変更したこと以外は実施例9と同様の操作を行い、格子状の回路パターンが熱可塑性液晶ポリマーフィルムC1と電解銅箔でカバーされてなる積層体を得た。電解銅箔と熱可塑性液晶ポリマーフィルムC1の層を削り取り、回路パターンを露出させて、回路パターンに設けた基準点と標点の距離(L2)を測定した。
(L1−L2)/L1×100 で算出される回路パターンの位置ズレは0.50%であった。
熱可塑性液晶ポリマーフィルムについて、一定の圧縮荷重の下で一定の速度で昇温したときに観測される厚さと温度との関係を示すグラフである。 本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルムを用いて多層構造の回路基板や多層構成のフィルムを製造する場合について説明する図である。
符号の説明
F1:本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルム
F2:他の熱可塑性ポリマーフィルム
F3,F4:従来の熱可塑性液晶ポリマーフィルム
MF:金属箔
CB1:本発明の回路基板
CB3:本発明の多層構造の回路基板
TD1:変曲開始点温度
TDmax:最大圧縮熱変形温度
TD2:Tdmaxよりも10℃低い温度

Claims (12)

  1. 光学的異方性の溶融相を形成し得るポリマーからなるフィルム(以下、これを熱可塑性液晶ポリマーフィルムと称する)であって、
    0.05MPaの圧縮荷重下、10℃/分の昇温速度で測定して得られる、フィルムの厚さ〜温度曲線における勾配の変曲開始点の温度をTD1、同フィルムの厚さ〜温度曲線における勾配の絶対値が最大になる温度TDmaxよりも10℃低い温度をTD2としたとき、これらが以下の条件を満足する熱可塑性液晶ポリマーフィルム。
    TD2−TD1≧60
  2. 上記したフィルムの厚さ〜温度曲線における、室温から上記の温度TD1までの温度範囲でのフィルムの厚さの温度に対する変化率(TDE1)と、上記の温度TD1から上記の温度TD2までの温度範囲でのフィルムの厚さの温度に対する変化率(TDE2)との比が、以下の関係を満足する請求項1記載の熱可塑性液晶ポリマーフィルム。
    2≦TDE2/TDE1≦20
  3. 熱可塑性液晶ポリマーフィルムの分子配向度SORが1.05以下である請求項1または2に記載のフィルム。
  4. 少なくとも1層が請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性液晶ポリマーフィルムから構成されている多層フィルム。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項に記載された熱可塑性液晶ポリマーフィルムを絶縁層として有する回路基板。
  6. 請求項4に記載された多層フィルムを絶縁層として有する回路基板。
  7. 多層構造である請求項5または6に記載の回路基板。
  8. 請求項1〜3のいずれか1項に記載された熱可塑性液晶ポリマーフィルムと金属箔をTD1〜TD2の範囲の温度で熱圧着することからなる回路基板の製造方法。
  9. 請求項4の多層フィルムと金属箔をTD1〜TD2の範囲の温度で熱圧着することからなる回路基板の製造方法。
  10. 熱圧着温度がTD1+20℃〜TD2の範囲内である請求項8または9に記載の回路基板の製造方法。
  11. 請求項1〜3のいずれか1項に記載された熱可塑性液晶ポリマーフィルム同士、または請求項1〜3のいずれか1項に記載された熱可塑性液晶ポリマーフィルムと他の熱可塑性ポリマーからなるフィルムをTD1〜TD2の範囲の温度で熱圧着することからなる多層フィルムの製造方法。
  12. 熱圧着温度がTD1+20℃〜TD2の範囲内である請求項11に記載の多層フィルムの製造方法。
JP2003341477A 2003-09-30 2003-09-30 低温積層可能な熱可塑性液晶ポリマーフィルム Pending JP2005105165A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003341477A JP2005105165A (ja) 2003-09-30 2003-09-30 低温積層可能な熱可塑性液晶ポリマーフィルム

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003341477A JP2005105165A (ja) 2003-09-30 2003-09-30 低温積層可能な熱可塑性液晶ポリマーフィルム

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2005105165A true JP2005105165A (ja) 2005-04-21
JP2005105165A5 JP2005105165A5 (ja) 2005-10-06

Family

ID=34536071

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003341477A Pending JP2005105165A (ja) 2003-09-30 2003-09-30 低温積層可能な熱可塑性液晶ポリマーフィルム

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2005105165A (ja)

Cited By (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007123737A (ja) * 2005-10-31 2007-05-17 Nippon Pillar Packing Co Ltd 基板材料及びプリント基板
JP2016129949A (ja) * 2015-01-13 2016-07-21 宇部エクシモ株式会社 フレキシブル積層板、及びフレキシブル積層板の製造方法
JP2016131193A (ja) * 2015-01-13 2016-07-21 宇部エクシモ株式会社 積層板の製造方法、及び多層回路基板
WO2016114262A1 (ja) * 2015-01-13 2016-07-21 宇部エクシモ 株式会社 フレキシブル積層板及び多層回路基板
JP2017128061A (ja) * 2016-01-21 2017-07-27 宇部エクシモ株式会社 フレキシブル金属積層板
WO2017179542A1 (ja) * 2016-04-11 2017-10-19 旭硝子株式会社 積層体、プリント基板、および積層体の製造方法
KR20180090739A (ko) 2017-02-03 2018-08-13 토요잉크Sc홀딩스주식회사 보호 시트가 구비된 프린트 배선판, 시트형상 기재가 구비된 열 경화성 접착 시트 및 이들의 제조 방법, 그리고 열 경화성 접착 시트
WO2020095988A1 (ja) * 2018-11-08 2020-05-14 株式会社クラレ 熱可塑性液晶ポリマーフィルムおよびそれを用いた回路基板
CN111497379A (zh) * 2019-12-30 2020-08-07 瑞声科技(新加坡)有限公司 一种覆铜板及其制备方法
CN113553706A (zh) * 2021-07-21 2021-10-26 青岛博锐智远减振科技有限公司 一种锥形橡胶弹簧粘接实验拐点的判定方法
WO2022113961A1 (ja) * 2020-11-24 2022-06-02 富士フイルム株式会社 液晶ポリマーフィルム、ポリマーフィルム、及び、積層体

Cited By (19)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007123737A (ja) * 2005-10-31 2007-05-17 Nippon Pillar Packing Co Ltd 基板材料及びプリント基板
JP2016129949A (ja) * 2015-01-13 2016-07-21 宇部エクシモ株式会社 フレキシブル積層板、及びフレキシブル積層板の製造方法
JP2016131193A (ja) * 2015-01-13 2016-07-21 宇部エクシモ株式会社 積層板の製造方法、及び多層回路基板
WO2016114262A1 (ja) * 2015-01-13 2016-07-21 宇部エクシモ 株式会社 フレキシブル積層板及び多層回路基板
JP2017128061A (ja) * 2016-01-21 2017-07-27 宇部エクシモ株式会社 フレキシブル金属積層板
JPWO2017179542A1 (ja) * 2016-04-11 2019-02-14 Agc株式会社 積層体、プリント基板、および積層体の製造方法
CN108925132A (zh) * 2016-04-11 2018-11-30 Agc株式会社 层叠体、印刷基板和层叠体的制造方法
WO2017179542A1 (ja) * 2016-04-11 2017-10-19 旭硝子株式会社 積層体、プリント基板、および積層体の製造方法
US10507631B2 (en) 2016-04-11 2019-12-17 AGC Inc. Laminate, printed circuit board and method for producing laminate
KR20180090739A (ko) 2017-02-03 2018-08-13 토요잉크Sc홀딩스주식회사 보호 시트가 구비된 프린트 배선판, 시트형상 기재가 구비된 열 경화성 접착 시트 및 이들의 제조 방법, 그리고 열 경화성 접착 시트
JP6764049B1 (ja) * 2018-11-08 2020-09-30 株式会社クラレ 熱可塑性液晶ポリマーフィルムおよびそれを用いた回路基板
WO2020095988A1 (ja) * 2018-11-08 2020-05-14 株式会社クラレ 熱可塑性液晶ポリマーフィルムおよびそれを用いた回路基板
JP2021004365A (ja) * 2018-11-08 2021-01-14 株式会社クラレ 熱可塑性液晶ポリマーフィルムおよびそれを用いた回路基板
CN112969585A (zh) * 2018-11-08 2021-06-15 株式会社可乐丽 热塑性液晶聚合物膜和使用该膜的电路基板
US11877395B2 (en) 2018-11-08 2024-01-16 Kuraray Co., Ltd. Thermoplastic liquid crystal polymer film and circuit board using same
CN111497379A (zh) * 2019-12-30 2020-08-07 瑞声科技(新加坡)有限公司 一种覆铜板及其制备方法
WO2022113961A1 (ja) * 2020-11-24 2022-06-02 富士フイルム株式会社 液晶ポリマーフィルム、ポリマーフィルム、及び、積層体
CN113553706A (zh) * 2021-07-21 2021-10-26 青岛博锐智远减振科技有限公司 一种锥形橡胶弹簧粘接实验拐点的判定方法
CN113553706B (zh) * 2021-07-21 2024-01-19 青岛博锐智远减振科技有限公司 一种锥形橡胶弹簧粘接实验拐点的判定方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR100360045B1 (ko) 폴리머 필름을 사용한 코팅 방법 및 폴리머층과 금속박의 적층체의 제조 방법
JP6640072B2 (ja) 熱可塑性液晶ポリマーフィルムならびにこれを用いた積層体および回路基板
KR101366906B1 (ko) 열가소성 액정 폴리머 필름으로 피복한 배선판의 제조 방법
JP2019178326A (ja) 熱可塑性液晶ポリマーフィルムの製造方法、並びに回路基板及びその製造方法
WO2015050080A1 (ja) 熱可塑性液晶ポリマーフィルム、回路基板、およびそれらの製造方法
JP4162321B2 (ja) 金属箔積層板の製造方法
US8152950B2 (en) Multi-layer circuit board and method of making the same
WO2012090733A1 (ja) 回路基板およびその製造方法
JP5611355B2 (ja) 金属張積層板
US20080311358A1 (en) Fluorine Resin Laminated Substrate
JP5234647B2 (ja) 複合接着フィルムおよびそれを用いた多層回路基板並びにその製造方法
JP2005105165A (ja) 低温積層可能な熱可塑性液晶ポリマーフィルム
JP4064897B2 (ja) 多層回路基板およびその製造方法
JP4695421B2 (ja) 積層体の製造方法
JP2001244630A (ja) 多層配線回路基板およびその製造方法
KR100855925B1 (ko) 금속도포 적층판의 제조방법
JP4004139B2 (ja) 多層積層板とその製造方法および多層実装回路基板
JP3984387B2 (ja) ポリマーフィルムを用いたコーティング方法および金属箔積層体の製造方法
JPH11302417A (ja) ポリマーフィルムおよびその製造方法
JP4630120B2 (ja) 回路基板およびその製造方法
WO2021193385A1 (ja) 多層回路基板の製造方法
JP4408116B2 (ja) 金属箔積層体の製造方法
KR20220020270A (ko) 금속 피복 적층체의 제조 방법
JP4480337B2 (ja) 回路基板の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20050810

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20050810

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20070810

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20070821

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20071218