JP4408116B2 - 金属箔積層体の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、さらに、金属箔に圧着された液晶ポリマーフィルムの一部を層の厚さ方向に引き裂いて得られる、液晶ポリマーの金属箔積層体の製造方法に関する。ここで、コート体とは、被コート体(金属箔)に液晶ポリマーをコートして液晶ポリマーコート層を形成させた物体をいう。
物体の表面に樹脂などの薄い皮膜を形成させることは、ライニング加工、コーティング加工としてよく知られており、両者は一般には次のように区別されている。コーティングは素地に連続した皮膜を形成し、汚染、腐食からの保護と美観を与える装飾性が主目的であるが、非粘着性や低摩擦性付与の目的にも利用され、ライニングは腐食、エロージョンなどの化学的、物理的に厳しい環境下で使用される容器(槽)、管の保護用内装肉厚皮膜形成法であり、両者は種々の点で類似した面があって区別は難しい。一般に、一つは皮膜の厚さ0.5mm 以上のものをライニング、それ以下のものをコーティングと称するのが普通であるとされ、他方では、コーティングは主として構造物の表面上に数十ミクロン程度の膜を形成することであり、ライニングは数百ミクロン以上の場合をいうとされている。
いずれにせよ、本発明は、液晶ポリマーの非常に薄い皮膜(厚さ25μm以下、主として15μm以下)を素地に形成する技術に関連しているから、コーティングに関するものであると言える。
エレクトロニクス分野における回路基板等には、導電性の金属箔と電気絶縁性のフィルム状絶縁材料(フィルムあるいはシートあるいはフィルムやシート形状に金属箔上にコートされたもの)とを重ね合わせて圧着してなる金属箔積層体が用いられる。かかる金属箔積層体には、2つの金属箔層の間に電気絶縁層が挟み込まれた形態の両面金属箔積層体と、1つの金属箔層と電気絶縁層が合わされた形態の片面金属箔積層体の2形態があり、電気絶縁層には、上記の特長を有する液晶ポリマーが理想的な材料の一つであるとされている。
本発明に係る被コート体上に残されたコート層を有するコート体は、光学的異方性の溶融層を形成し得るポリマーのコート層を有し、前記ポリマーの層の分子配向度が1.3以下である。また、本発明に係る被コート体の好ましい実施形態は、前記コート層の厚さが15μm以下である。したがって、本発明に係るコート体のコート層は、薄さを確保しながらも、等方性であるので、液晶ポリマーの上述の優れた特長を利用して、精密回路基板、多層回路基板、封止材、パッケージなどの材料とすることができる。
(Molecular Orientation Ratio) とは異なり、物体の厚さを考慮した値である。この分子配向度SORは、以下のように算出される。
m=(Z0 /△z)×(1−νmax /ν0 )
ただし、Z0 は装置定数、△zは被測定物体の平均厚、νmax はマイクロ波の振動数を変化させたときの最大マイクロ波透過強度を与える振動数、ν0 は平均厚ゼロのとき(すなわち物体がないとき)の最大マイクロ波透過強度を与える振動数である。
また、液晶ポリマーとは、半1型液晶ポリマー、全1型液晶ポリマー、半2型液晶ポリマー、全2型液晶ポリマー[末長純一著「成形・設計のための液晶ポリマー」シグマ出版]などすべての液晶ポリマーを含むものである。
液晶ポリマーフィルムの製膜技術は非常に高度な技術であり、薄いフィルムを製造することは困難で製造コストが高くなる。通常、厚さ20μm以上の液晶ポリマーフィルムは安定に製造することができるので、液晶ポリマーコート層を20μm以上で形成することは比較的容易であって、場合によっては上述の引き剥がし過程を必要とせず液晶ポリマーコート層を形成することもできる。むろん、引き剥がすことにより引き剥がし面が微細な粗さを有するようになり接着剤で接着する面として好ましいものになるので、厚さ20μm以上の液晶ポリマーコート層を引き剥がし過程を経て形成することが重要であることも多い。本発明に係るコート体は、特に電子回路基板およびその部品用途において、薄い液晶ポリマーコート層が要求される場合に有効なものであって、厚さ20μm以下、特に厚さ15μm以下の等方性液晶ポリマーコート層を設けるためには、請求項1に述べられた方法が実用上唯一のものである。実現できる液晶ポリマーコート層の平均厚の下限は限りなく0に近く、例えば平均厚が1μm以下であるような液晶ポリマーコート層は容易に実現することができ、精密に制御された条件下では平均厚0.1μm以下であるような等方性液晶ポリマーコート層も実現することができる。
先に「背景技術」の項で述べたように液晶ポリマーコート層の熱膨張係数が被コート体の熱膨張係数とできる限り近いことが望ましい。特に、100℃の温度変化に対して被コート体とコート層の寸法変化のずれが0.2%以下であれば、エレクトロニクス部品等の精密なコート層として使用できる。したがって、ここで等方性液晶ポリマーコート層の熱膨張係数と被コート体の熱膨張係数が同等であるとは、被コート体表面の熱膨張係数に対してプラスマイナス20ppm/℃(すなわち、プラスマイナス1000分の2%/℃)であることである。このように、被コート体とコート層の熱膨張係数を近づけることは、最も単純にはコート層の原料となる液晶ポリマーフィルムの熱膨張係数を被コート体の熱膨張係数と同等にしておくことであるが、原材料である液晶ポリマーフィルムの熱膨張係数が被コート体の熱膨張係数と異なっていても、該液晶ポリマーフィルムを用いて形成された液晶ポリマーコート層を加熱処理することにより、双方の熱膨張係数を同等にすることが可能である。加熱処理において非常に精密に加熱温度をコントロールすれば被コート体とコート層の熱膨張係数を測定誤差範囲内で一致させることも可能である。液晶性を示さない通常の熱可塑性ポリマーやエポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂をコート層に用いる場合に熱膨張係数を制御するためには、無機粉体や無機クロスをコート層に組み入れてその分率を制御することやコート層を構成するポリマー分子の架橋密度を制御するなどの特別の操作を実施しなければならないが、液晶ポリマーコート層の場合は、液晶ポリマー分子の特異な性質を利用することによって、加熱処理という単純な操作で実現することが可能である。
本発明の片面金属箔積層体は上記の製造方法によって得られるものである。
本発明の片面金属箔積層体は前記液晶ポリマーの層が15μm以下であることが好ましい。
本発明の片面金属箔積層体は、前記液晶ポリマーの層の分子配向度が1.3以下であることが好ましい。
本発明の多層実装回路基板は、上記の片面金属箔積層体に、この積層体または他の積層体を重ねてなる多層積層体を用い、その多層積層体上に電子部品を搭載して接続してなる。
本発明の両面金属箔積層体は上記の製造方法によって得られるものである。
このコーティング方法により、分子配向度SORが1.3以下で液晶ポリマーコート層の厚さが15μm以下のコート体を製造することができる。
図2(b)に示す液晶ポリマー層2を引き裂く工程は、第1実施形態と同様に液晶ポリマーフィルムの層内剥離性を利用するため、容易に行うことができる。 図2(a)から(c)の工程により、離型フィルムを使用することなく、液晶ポリマーの片面金属箔積層体を同時に2つ製造できる。
6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸単位27モル%、p−ヒドロキシ安息香酸単位73モル%からなるサーモトロピック液晶ポリエステルを単軸押出機を用いて280〜300℃で加熱混練し、直径40mm、スリット間隔0.6mmのインフレーションダイより押し出し、厚さ75μmの液晶ポリマーフィルムを得た。得られた液晶ポリマーフィルムの融点は280℃で、その分子配向度SORは1.2であった。厚さ200μmのアルミ箔(被コート体)と該液晶ポリマーフィルムとを重ね合わせ、上下より真空平板熱プレス機を用いて全体を40mmHgの真空とし、温度275℃、圧力20Kg/cm2 で熱圧着した後、該液晶ポリマーフィルムの一部が残るように引き剥がした。
しかる後に、アルミ箔を化学エッチングにより除去し、得られた液晶ポリマーコート層の分子配向度SORを測定したところ1.2で、厚さは30μmであった。
比較のために、同じアルミ箔(被コート体)に上記の液晶ポリマーを溶融してロールコーター法でコーティングして液晶ポリマーコート層を得、上に述べたようにして該液晶ポリマーコート層の分子配向度SORを測定したところ1.5であった。
6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸単位27モル%、p−ヒドロキシ安息香酸単位73モル%からなるサーモトロピック液晶ポリエステルを単軸押出機を用いて280〜300℃で加熱混練し、直径40mm、スリット間隔0.6mmのインフレーションダイより押し出し、厚さ20μmの液晶ポリマーフィルムを得た。得られた液晶ポリマーフィルムの融点は280℃で、その分子配向度SORは1.03であった。
上記の液晶ポリマーフィルムを液晶ポリマーコート層材料とし、厚さ18μmの電解銅箔(被コート体)と重ね合わせて真空熱プレス機を用いて実施例1と同様に熱圧着した後、該液晶ポリマーフィルムの一部が残るように引き剥がして、液晶ポリマーコート層を得た。電解銅箔を化学エッチングにより除去して、液晶ポリマーコート層の分子配向度SOR、厚さを測定したところ、それぞれ1.03、および9μmであった。
6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸単位27モル%、p−ヒドロキシ安息香酸単位73モル%からなるサーモトロピック液晶ポリエステルを単軸押出機を用いて280〜300℃で加熱混練し、直径40mm、スリット間隔0.6mmのインフレーションダイより押し出し、厚さ50μmの液晶ポリマーフィルムを得た。得られた液晶ポリマーフィルムの融点は280℃で、分子配向度SORは1.02、熱膨張係数は−8ppm/℃であった。
上記の液晶ポリマーフィルムを液晶ポリマーコート層材料とし、厚さ10μm、熱膨張係数18ppm/℃の圧延銅箔を被コート体材料とし、両者を重ね合わせて真空熱プレス機を用いて実施例1と同様に熱圧着した後、該液晶ポリマーフィルムの一部が残るように引き剥がして液晶ポリマーコート層を得た。圧延銅箔を化学エッチングして、得られた液晶ポリマーコート層の分子配向度SORと厚さを測定したところ、それぞれ1.02および15μmであった。また熱膨張係数は−8ppm/℃であった。
実施例3において得られた液晶ポリマーコート層を有する被コート体を、熱風循環式オーブンを用いて、292℃に加熱した。圧延銅箔を化学エッチングにより除去した。得られた液晶ポリマーコート層の分子配向度SORは1.02、厚さは15μm、熱膨張係数は18ppm/℃であった。
厚さ18μmの電解銅箔を上面の金属箔とし、厚さ18μmの電解銅箔を下面の金属箔として、これら2枚の金属箔の間に、実施例3で用いたものと同じ厚さ50μmの液晶ポリマーフィルムを挟み、真空平板熱プレス機を用いて、全体を30mmHgの真空とし、プレス温度270℃、プレス圧60Kg/cm2 で熱プレスし、厚さ86μmの両面金属箔積層体を作製した。ここで用いた液晶ポリマーフィルムの分子配向度SORは1.02であった。
上記の両面金属箔積層体を上面側と下面側に厚さ方向に中央部で分離し、2枚の片面金属箔積層体を得た。液晶ポリマー層における分離面は毛羽立ちがなく平滑であった。これら2枚の片面金属箔積層体の厚さはいずれも43μmで、金属箔の厚さ18μmを差し引けば、液晶ポリマー層の厚さは25μmである。
こうして得られた片面金属箔積層体より電解銅箔を化学エッチングにより除去した。残されたフィルム状の液晶ポリマー層の分子配向度SORは1.02であって、分子配向度は変化しなかった。
実施例5で作製した厚さ86μmの両面金属箔積層体の上面の金属箔層側と下面の金属箔層側とを、実施例5とは別の位置で引き剥がすように力を加えて、液晶ポリマー層を上下に2分し、上側の金属箔層と液晶ポリマー層とからなる第1の積層体と、下側の金属箔層と液晶ポリマー層とからなる第2の積層体を作製した。
第1の積層体の厚さは48μm、したがって、液晶ポリマー層の厚さは30μm、また第2の積層体の厚さは38μm、したがって、液晶ポリマー層の厚さは20μmであった。
上記の第1の積層体および第2の積層体の金属箔層を化学エッチングすることにより除去した。得られた液晶ポリマー層の分子配向度SORは、第1の積層体も第2の積層体も1.02であった。
6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸単位27モル%、p−ヒドロキシ安息香酸単位73モル%からなるサーモトロピック液晶ポリエステルを単軸押出機を用いて280〜300℃で加熱混練し、直径40mm、スリット間隔0.6mmのインフレーションダイより押し出し、厚さ16μmの液晶ポリマーフィルムを得た。得られた液晶ポリマーフィルムの融点は280℃で、分子配向度SORは1.02であった。
上記の厚さ16μmの液晶ポリマーフィルムを、厚さ18μmの電解銅箔2枚の間に挟み、一対の熱プレスロールを用いてロール温度280℃、線圧100kg/cmで熱接着して、上面の金属箔層、液晶ポリマー層、下面の金属箔層で構成される積層体を作製した。該積層体の厚さは52μmであった。
次いで、厚さ52μmの上記積層体の上面の金属箔層側と下面の金属箔層側とを引き剥がすように力を加え、液晶ポリマー層を上下に2分し、上側の金属箔層と液晶ポリマー層とからなる第1の積層体と、下側の金属箔層と液晶ポリマー層とからなる第2の積層体を作製した。
第1の積層体の厚さは26μm、したがって、液晶ポリマー層の厚さは8μm、また第2の積層体の厚さも26μm、したがって、液晶ポリマー層の厚さは8μmであった。
上記の第1の積層体および第2の積層体の金属箔層を化学エッチングすることにより除去した。得られた液晶ポリマー層の分子配向度SORは、第1の積層体も第2の積層体も1.02であった。
実施例7で得られた厚さ26μmの積層体の液晶ポリマー層側に厚さ18μmの電解銅箔1枚を重ね、実施例7と同様に熱接着して、上面の金属箔層、液晶ポリマー層、下面の金属箔層とで構成される積層体を作製した。積層体の厚さは44μmであった。
次いで、厚さ44μmの上記積層体の上面の金属箔層側と下面の金属箔層側とを引き剥がすように力を加え、液晶ポリマー層を上下に2分し、上側の金属箔層と液晶ポリマー層とからなる第1の積層体と、下側の金属箔層と液晶ポリマー層とからなる第2の積層体を作製した。
第1の積層体の厚さは22μm、したがって、液晶ポリマー層の厚さは4μm、また第2の積層体の厚さも22μm、したがって、液晶ポリマー層の厚さは4μmであった。
上記の第1の積層体および第2の積層体の金属箔層を化学エッチングすることにより除去した。得られた液晶ポリマー層の分子配向度SORは、第1の積層体1も第2の積層体も1.02であった。
実施例8において得られた厚さ22μmの積層体の液晶ポリマー層側に厚さ18μmの電解銅箔1枚を重ね、熱プレス機を用いてプレス温度294℃、圧力20kg/cm2 で熱接着して、上面の金属箔層、液晶ポリマー層、下面の金属箔層とで構成される積層体を作製した。積層体の厚さは40μmであった。該積層体の金属箔層をエッチングして15×15mm角の範囲で回路を形成し、該回路を半導体チップに熱固定して貼り付け、実装回路基板を作製した。
実施例8において得られた厚さ22μmの積層体の液晶ポリマー層側に厚さ18μmの電解銅箔1枚を重ね、熱プレス機を用いて、プレス温度294℃、圧力20kg/cm2 で熱接着して、上面の金属箔層、液晶ポリマー層、下面の金属箔層とで構成される積層体を2枚作製した。積層体の厚さは40μmであった。こうして作製した2枚の厚さ40μmの積層体の金属箔に回路パターンを、エッチングにより形成した。この2枚の回路パターンが形成された積層体の間に、実施例3で使用したものと同じ厚さ50μmの液晶ポリマーフィルムを挟み、プレス温度284℃、圧力10kg/cm2 で熱プレスして多層化した。ついで、回路パターン中の接続部の位置にドリルによって貫通孔をあけた後に、クリムソン無電解銅メッキ法によってメッキスルーホール部を形成して多層回路基板を作製した。
Claims (4)
- 光学的異方性の溶融相を形成し得るポリマーの層とその上面の金属箔層と下面の金属箔層とからなる両面金属箔積層体を、前記ポリマーの層の厚さ方向に上面と下面に引き裂くことによって、光学的異方性の溶融相を形成し得るポリマーの層とその上面の金属箔層とからなる第1の片面金属箔積層体と、光学的異方性の溶融相を形成し得るポリマーの層とその下面の金属箔層とからなる第2の片面金属箔積層体とに分割することを特徴とする片面金属箔積層体の製造方法。
- 請求項1において、前記両面金属箔積層体は、光学的異方性の溶融相を形成し得るポリマーから成形されるフィルムを2枚の金属箔で層状に挟み、これを熱プレスして製造されることを特徴とする片面金属箔積層体の製造方法。
- 請求項1または2に記載の製造方法によって得られる片面金属箔積層体の前記ポリマーの層側に金属箔を重ね合わせて熱プレスして、両面金属箔積層体を製造することを特徴とする両面金属箔積層体の製造方法。
- 2枚の金属箔で層状に挟まれた、光学的異方性の溶融相を形成し得るポリマーから成形されるフィルムを厚さ方向に熱プレスする熱プレス装置と、
熱プレスによって形成された光学的異方性の溶融相を形成し得るポリマーの層とその上面の金属箔層と下面の金属箔層とからなる両面金属箔積層体を、前記ポリマーの層の厚さ方向に上面と下面に引き裂く分割装置とを備えた片面金属箔積層体の製造装置。
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