JP2005097821A - 人工皮革およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 平均繊維径5μm以下の非弾性ポリマーからなる極細繊維と弾性ポリマーとからなる人工皮革において、該弾性ポリマーの主体は人工皮革の厚さ方向全層に渡って繊維形態で該非弾性ポリマーからなる極細繊維と絡合不織布構造を形成しており、かつ該弾性ポリマーの一部は人工皮革の少なくとも一方の面において該絡合不織布構造と一体化した多孔質層を形成している人工皮革。
【選択図】 なし
Description
例えば、伸縮性があり且つ風合いの優れた立毛調人工皮革を得るために、弾性ポリマーからなる繊維(弾性繊維)と非弾性ポリマーからなる繊維(非弾性繊維)を絡合して得られる不織布を面積割合で10〜80%収縮させた、伸縮性に優れた絡合不織布が知られている。(例えば、特許文献1を参照。)。しかしながら、提案された弾性繊維と非弾性繊維から得られる人工皮革は、弾性繊維が全てが繊維状態のままで存在しておりフレキシブルであるためにドレープ性には優れているが、非弾性繊維を保持するバインダー効果が少ないのでバフィング等による起毛工程の通過性が悪く、毛羽感がラフでスエードあるいはヌバックの外観にはほど遠いものであった。
また、融点の異なる2種以上の弾性繊維を発生させる複合繊維と極細非弾性繊維発生型繊維とを使用した、良好な機械的性能を併せもった人工皮革が提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。しかしながら、上記人工皮革を構成する低融点の弾性繊維が溶融することによって低度のバインダー効果を付与しているだけで、バインダー効果は不十分であった。そしてこれらの方法ではスエード調の外観に優れた人工皮革を製造することはできなかった。
上記、特許文献1および特許文献2に記載されているような方法では、人工皮革に伸縮性は与えられるものの、優れた外観を有する繊維立毛面は得られなかった。また、特許文献3に記載の方法によると、優れた外観は得られるが、優れた伸縮性、風合いおよびドレープ性を得ることが困難であった。
I.少なくとも表面に弾性ポリマーからなる繊維の一部が存在しており、該弾性ポリマーからなる繊維を発生し得る繊維(A)と平均繊維径5μm以下の非弾性ポリマーからなる極細繊維を発生し得る繊維(B)からなる絡合不織布を製造する工程、
II.該絡合不織布の少なくとも一方の面に該弾性ポリマーに対する良溶剤を少なくとも含む液を塗布し、少なくとも表面層部に存在する該繊維(A)中の弾性ポリマーを部分的に溶解させ、次に該弾性ポリマーに対する貧溶剤を少なくとも含む液を付与する工程、及び
III.該繊維(A)および該繊維(B)よりそれぞれ弾性ポリマーからなる繊維および平均繊維径5μm以下の非弾性ポリマーからなる極細繊維を発生させる工程。
弾性ポリマーからなる繊維(弾性繊維)は、弾性ポリマー単独で溶融紡糸するか、または、弾性ポリマーと該弾性ポリマーとは化学的または物理的性質の異なる少なくとも1種類の可紡性ポリマーを組み合わせて溶融紡糸した多成分系繊維を分割するか、あるいは、該多成分系繊維から少なくとも1種類のポリマーを抽出除去することにより得られる。該多成分系繊維は、少なくともその表面の一部に弾性繊維形成成分が存在しており、分割、抽出操作などにより弾性繊維を発生し得る繊維(以下、単に繊維(A)と称する)である。繊維(A)としては、表面の一部に弾性ポリマーが存在するような構造を有する複合繊維であれば特に限定されないが、海島型繊維、分割型繊維等が好ましく挙げられる。中でも海島型繊維がより好ましく、海島型混合紡糸繊維が、該繊維の表面の一部に弾性ポリマーが島成分としてランダムに存在しやすい点でさらに好ましい。繊維(A)の表面において、弾性ポリマーが占める面積割合は、0.1〜95%が好ましく、より好ましくは、1〜70%である。0.1%以上であると、弾性繊維を部分的に多孔質状態にし易くなり、弾性繊維同士の部分的融着状態が得られ易い。また、95%以下であると、弾性ポリマーの性質に起因するカード通過性等の工程通過性の低下を防止することができる。
なお、本発明の効果を損なわない範囲にて、弾性ポリマーにはカーボンブラック等の顔料や樹脂の熱安定性向上剤等の添加剤を添加することができる。
繊維(B)が海島型繊維の場合、島成分を構成する非弾性ポリマーは、発生する非弾性極細繊維同士を必要以上に融着させることなく分繊、ミクロファイバー化する必要がある。従って、上記繊維(A)および繊維(B)が共に海島型繊維の場合、海成分を抽出除去するための溶剤処理等によって、少なくとも非弾性極細繊維同士を融着させないような非弾性ポリマーを選択することが好ましい。具体的には海成分除去処理における溶剤膨潤率が10質量%以下であるポリマーが好ましい。
なお、本発明の効果を損なわない範囲にて、非弾性ポリマーにはカーボンブラック等で代表される顔料や樹脂の熱安定性向上剤等の添加剤を添加することができる。
繊維(B)の海成分ポリマーは、繊維(A)の場合と基本的には同様であり、繊維(A)に関して記載したポリマーが使用できる。繊維(B)と繊維(A)の海成分は異なるポリマーであってもよいが、海成分除去を効率的に行う上で、同種のポリマーであることが好ましい。
溶融紡糸安定性の点から、非弾性ポリマー、繊維(A)および繊維(B)の海成分を構成するポリマーは、弾性ポリマーの溶融紡糸可能温度に適した融点を持つポリマーを選択することが好ましい。例えば、弾性ポリマーとしてポリウレタン類を用いる場合には、非弾性ポリマーおよび海成分を構成するポリマーの融点は230℃程度以下、弾性ポリマーにポリエステルエラストマー類やポリアミドエラストマー類を使用する場合には、非弾性ポリマーおよび海成分を構成するポリマーの融点は260℃程度以下のものを選択するのが好ましい。
また、必要に応じて該絡合不織布を、例えばポリビニルアルコール系樹脂などの水溶性糊剤等で代表される溶解除去可能な樹脂で仮固定してもよい。また、表面の平滑性を向上させ、さらに立毛調人工皮革に優れたライティング効果を付与する点から、該絡合不織布の表面を公知の方法で熱プレス処理してもよい。
得られた絡合不織布の厚みは、人工皮革の用途等によって任意に選択でき、特に制限されるものではないが、1層の場合には、0.2〜10mm程度であることが好ましく、0.4〜5mm程度であることがより好ましい。密度は0.20〜0.65g/cm3が好ましく、0.25〜0.55g/cm3がより好ましい。0.20g/cm3以上であると、繊維の立毛感が不足し、さらに機械物性が低下するのを避けることができる。0.65g/cm3以下であると得られる人工皮革の風合いが硬くなるのを避けることができる。
次に絡合不織布の少なくとも一方の面に該弾性ポリマーに対する良溶剤を少なくとも含む液を塗布し、少なくとも表面層部に存在する該繊維(A)中の弾性ポリマーを部分的に溶解させ、次に該弾性ポリマーに対する貧溶剤を少なくとも含む液を付与する必要がある。
すなわち、該絡合不織布の少なくとも一方の面に該繊維(A)を構成する弾性ポリマーの良溶剤を少なくとも含む処理液Aを塗布し、該繊維(A)の表面や端面に弾性ポリマーの一部が露出していることを利用して、表面に部分的に存在する該繊維(A)中の弾性ポリマーを部分的に溶解させ、次に該弾性ポリマーの貧溶剤を含む処理液Bを付与し、溶解した弾性ポリマーを多孔質状態に凝固させ多孔質層を形成することが重要である。さらには弾性ポリマー同士を部分的に融着させる好ましい。
弾性ポリマーの濃度は、固形分で1〜30質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。30質量%以下であると、含浸量にも左右されるが、弾性ポリマー溶液が塗布されて絡合不織布内に沈み込むことによって、弾性繊維及び/又は非弾性極細繊維が過剰の弾性ポリマーによって固定され自由度を失うことを防ぎ、得られる人工皮革のドレープ性や伸縮性が低下するのを防ぐことができる。
なお、処理液Aが弾性ポリマーを含む場合、例えば、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリエーテルエステルジオール、ポリラクトンポリオール、ポリカーボネートジオールなどから選ばれた少なくとも1種類の平均分子量500〜3000のポリマージオールと、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの芳香族系、脂環族系、脂肪族系の有機ポリイソシアネートから選ばれた少なくとも1種のポリイソシアネートと、エチレングリコール、エチレンジアミン等の2個以上の活性水素原子を有する、少なくとも1種の低分子化合物とを所定のモル比で反応させて得たポリウレタンが弾性ポリマーとして好ましく用いられる。また、必要に応じて、ポリウレタンに合成ゴム、ポリエステルエラストマーなどの重合体を添加してもよい。弾性ポリマーを含む処理液Aには必要に応じて着色剤、凝固調節剤、酸化防止剤等の添加剤を配合してもよい。
繊維(A)の表面に存在する弾性繊維形成成分の存在比率を公知の紡糸方法で高めたり、処理液Aの含浸量を多くしたり、さらに処理液A中の弾性ポリマーに対する良溶剤の比率を高めたりすることによって、繊維(A)同士の融着箇所の数を調節し、部分的に網目構造を発生させた状態の多孔質層を形成するることが好ましい。さらに、弾性ポリマー溶液と繊維を構成する弾性ポリマーが凝固後に混在した状態の多孔質層を形成することが好ましい。そして、多孔質層を形成することによって、得られる人工皮革は伸縮性、繰り返し伸長変形を行っても実質的に構造変形を生じず、風合いやドレープ性に優れる。
ここで多孔質状態とは、弾性ポリマーを湿式凝固させたときに形成される微細なスポンジ状態をいう。繊維(A)から発生する弾性繊維が部分的に多孔質状態であると、得られる人工皮革の風合いやドレープ性が優れる。
この処理により、繊維(A)および繊維(B)から海成分が除去される。繊維(A)は部分的に多孔質状態である弾性繊維に変換される。発生した弾性繊維は互いに部分的に融着し、網目構造を形成する。そして、少なくとも表面層部に存在する繊維(A)は部分的に多孔質状態にある弾性ポリマーからなる繊維の集合体となり、さらに該弾性ポリマーからなる繊維同士、あるいは処理液Aの弾性ポリマーと部分的に融着することによって、該弾性ポリマーの一部は人工皮革の少なくとも一方の表面層部において該絡合不織布構造と一体化した多孔質層を形成する。さらに、繊維(B)は非弾性極細繊維またはその繊維束にそれぞれ変成される。公知の紡糸技術により、繊維(A)および繊維(B)の海成分比率を減らしたり、島成分を表面に露出させたりすることにより、弾性繊維と非弾性極細繊維を部分的に密着させることも好ましい。
また、絡合不織布構造と一体化した多孔質層とは、多孔質層を形成する弾性ポリマーと非弾性ポリマーが混在一体化した状態のことを言う。多孔質層の確認方法としては非弾性ポリマーからなる極細繊維を抽出または分解除去した後、厚み方向にスライスした状態を走査型電子顕微鏡で観察することによって確認することができる。このような弾性ポリマーの構造形態は、人工皮革の形態そのままでも観察可能だが、好ましくは、弾性ポリマーを膨潤、溶解、または融解させない方法により、非弾性ポリマーからなる極細繊維を除去することにより、非常に容易かつ明瞭に観察できる。そして、非弾性ポリマーがナイロンの場合にはフェノール系の溶剤を用いて除去することができる。
図1は、非弾性極細繊維のみを除去した後の本発明の人工皮革断面を示す図面代用電子顕微鏡写真である。図1中、本発明の人工皮革から非弾性ポリマーからなる極細繊維のみを除去することにより、弾性ポリマーからなる繊維が少なくとも表面層部において部分的に多孔質状態で、さらに該弾性ポリマーからなる繊維同士が部分的に融着して表面層部において該絡合不織布構造と一体化した多孔質層を形成している断面形態の一例を示す。
図2は、本発明の人工皮革の断面形態の1例を示す図面代用電子顕微鏡写真である。図1および図2から、本発明の人工皮革は絡合不織布の少なくとも表面層部の弾性ポリマーからなる繊維が多孔質状態で存在し、かつ、該弾性ポリマーの一部は人工皮革の少なくとも一方の表面層部において該絡合不織布構造と一体化した多孔質層を形成していることが確認できる。
このようにして得られた立毛調人工皮革は、上記したように、平均繊維径5μm以下の非弾性ポリマーからなる極細繊維と弾性ポリマーとからなり、該弾性ポリマーの主体は人工皮革の厚さ方向全層に渡って繊維形態で該非弾性ポリマーからなる極細繊維と絡合不織布構造を形成しており、かつ該弾性ポリマーの一部が人工皮革の表面において該絡合不織布構造と一体化した多孔質層を形成しているため、従来の人工皮革にない良好な伸縮性、風合いおよびドレープ性を有し、表面タッチ、ライティング効果および外観に優れている。
本発明の人工皮革は、衣料用、家具用、靴用、鞄用などの広い用途に適用できる。特に、本発明の人工皮革は、高級銀付き商品の分野や高級スエード商品の分野に特に有用である。
なお、実施例中の部および%は、ことわりのない限り質量に関するものである。また、平均単繊維繊度の測定および各評価は次のように行った。
人工皮革の表面又は断面を、電子顕微鏡にて500〜2000倍程度の倍率で観察して繊維径を実測し、その実測値から平均繊維径あるいは平均繊維繊度(デシテックス)を求めた。尚、繊維断面が円形でない場合は、断面積を真円に換算して繊維径と見なした。
人工皮革の立毛面の立毛感、立毛の均一性、全体的に感じられる色斑、及びタッチ、柔軟性、充実感を総合して得られる人工皮革の風合いの評価は、下記の実施例または比較例で得られた染色した立毛調人工皮革の立毛面を人工皮革の製造販売に携わる者(10人)が、見た目や手で触れてみて、目標とする高級な天然皮革スエード調の滑らかで均一な外観、および風合いである場合を○、△、×の3段階に分けて評価し、それらの評価を元に総合評価した。天然皮革スエード調の滑らかな外観、タッチおよび風合いである場合をA、天然皮革スエードには若干劣るものの実用上問題ない場合をB、天然皮革スエードより劣り商品価値に乏しい場合をCとして評価した。
得られた人工皮革(I)において、ナイロンからなる極細繊維の平均繊維径は約1.1μmであり、また表面および断面を電子顕微鏡にて観察すると、ポリウレタンからなる繊維は部分的に多孔質状態で、かつ繊維同士が部分的に融着しているところがあり、また人工皮革全層に渡ってナイロンからなる極細繊維と共に絡合不織布構造を形成しており、人工皮革の表面および裏面部ともにポリウレタンの一部が絡合不織布構造と一体化した多孔質層が観察された。さらに、ポリウレタンからなる繊維が一部ナイロン極細繊維と密着した状態が、人工皮革全層に渡って所々に見られ、特に表面層部において集中的に観察された。
染色機 ウインス
染料 イルガラン ブラウン 2RL(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)) owf 4%
イルガラン イエロー 2GL(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)) owf 1%
助剤 レベラン NK−D(丸菱油化工業(株)製)2g/l
浴比 1:20
染色温度×時間 90℃×60分
実施例1で得られた絡合不織布(III)をDMF溶剤に溶解したポリカーボネート系ポリウレタンの4%溶液中に含浸した後、40℃のDMF30%水溶液中に投入し、さらに水洗して絡合不織布中に存在するDMFを水で置換した。次に、90℃のトルエン浴中で繊維(A1)及び繊維(B1)中のポリエチレンを溶解除去した後、90〜100℃の熱水中で絡合不織布中に存在するトルエンを水と共沸させて水で置換し、所定の幅へセットしながら乾燥して、厚さ約1.3mmの人工皮革得た。
得られた人工皮革において、ナイロンからなる極細繊維の平均繊維径は約1.1μmであり、また表面および断面を電子顕微鏡にて観察すると、全層においてポリウレタンからなる繊維は部分的に多孔質状態であり、かつ全層に渡ってナイロンからなる極細繊維と共に絡合不織布構造を形成しつつ、繊維同士が部分的に融着した網目構造を形成していた。さらに、ポリウレタンからなる繊維が一部ナイロン極細繊維と密着した状態が人工皮革全層に渡って随所に見られた。
得られた人工皮革を実施例1と同様に分割処理、分割面研削処理、表面起毛処理、染色処理、揉み処理、整毛処理して立毛調人工皮革を得た。この立毛調人工皮革は実施例1に比べて平滑性に劣り、伸縮性、ドレープ性においても実施例1のレベルには達していないものであった。その他の評価結果を表1に示す。
DMF溶剤に溶解したポリカーボネート系ポリウレタンの4%溶液を、該絡合不織布(III)に含浸・凝固・水洗の操作を行わない以外は実施例1と同様の方法で厚さ約1.3mmの人工皮革を得た。得られた人工皮革の表面および断面を電子顕微鏡にて観察すると、弾性ポリマーからなる繊維が無孔の状態であり、さらに該弾性ポリマーからなる繊維同士が融着していない、さらには網目構造を有するものではなかった。
この人工皮革を厚み方向にニ分割して、分割面をバフ機にて研削して厚さ0.52mmの人工皮革を得た。該人工皮革の分割面の反対側を砥粒番手#400のサンドペーパーで起毛処理し、未染色の立毛調人工皮革を得た。得られた立毛調人工皮革は立毛状態が不安定で工程通過性も低いものであった。
その後、実施例1と同じ染色条件で染色を行うと、茶色に染色された毛羽感に乏しく外観がラフであり、毛羽の不均一なベロアの立毛調人工皮革を得た。得られた立毛調人工皮革は、ドレープ性や伸縮性に優れるが、30%伸長を繰り返した後の形態安定性は、実施例1に比べ劣るものであった。そして、柔軟ではあるが充実感に欠けた風合いであった。評価結果を表1に示す。
全て4デシテックスの短繊維(B1)のみを用いてカードで解繊した後、クロスラップウェバーでウェブとし、次に1バーブのニードルパンチ用針で1500パンチ/cm2の条件にて処理することにより、目付800g/m2の絡合不織布を得た。得られた絡合不織布に乾燥機で熱処理を行い、海成分のポリエチレンを軟化させて繊維間を部分接着させて厚みを2.65mm、目付850g/m2、密度0.32g/cm3の絡合不織布(III)を得た。該絡合不織布の内部にポリエーテル系ポリウレタンの13%DMF溶液を含浸した後、40℃のDMF30%水溶液に投入し、さらに水洗して絡合不織布中に存在するDMFを水で置換した。次に、90℃のトルエン浴中で繊維(B1)中のポリエチレンを溶解除去した後、90〜100℃の熱水中で絡合不織布中に存在するトルエンを水と共沸させて水で置換し、所定の幅へセットしながら乾燥すると、厚さ1.3mmのナイロン6の極細繊維からなる絡合不織布の絡合空間に非繊維状のポリウレタンが多孔質状態で存在する人工皮革が得られた。この人工皮革からナイロン6の極細繊維を溶解除去すると、ポリウレタンからなる発泡シートが得られた。得られた人工皮革におけるナイロン6の極細繊維の平均繊維径は約1.1μmであり、また表面および断面を電子顕微鏡にて観察すると、前記したように繊維状の構造をとっているポリウレタンは存在しなかった。
得られた人工皮革を実施例1と同様に分割処理、分割面研削処理、表面起毛処理、染色処理、揉み処理、整毛処理して立毛調人工皮革を得た。この立毛調人工皮革は伸縮性、ドレープ性に劣るものであった。評価結果を表1に示す。
比較例2で得られた人工皮革において乾式造面を実施例3と同様に行った。得られた人工皮革は実施例3に比べ一体感および平滑性に劣っていた。評価結果を表2に示す。
Claims (6)
- 平均繊維径5μm以下の非弾性ポリマーからなる極細繊維と弾性ポリマーとからなる人工皮革において、該弾性ポリマーの主体は人工皮革の厚さ方向全層に渡って繊維形態で該非弾性ポリマーからなる極細繊維と絡合不織布構造を形成しており、かつ該弾性ポリマーの一部は人工皮革の少なくとも一方の面において該絡合不織布構造と一体化した多孔質層を形成していることを特徴とする人工皮革。
- 繊維形態の弾性ポリマーが部分的に多孔質状態にある請求項1に記載の人工皮革。
- 非弾性ポリマーからなる極細繊維と弾性ポリマーからなる繊維が部分的に密着した構造を有する請求項1または2に記載の人工皮革。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の人工皮革の少なくとも多孔質層が形成された面に、非弾性ポリマーからなる極細繊維を主体とする立毛が形成されている立毛調人工皮革。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の人工皮革の少なくとも多孔質層が形成された面に被覆層を有する銀付き調人工皮革。
- 下記I〜IIIの工程を順次行うことを特徴とする人工皮革の製造方法。
I.少なくとも表面に弾性ポリマーからなる繊維の一部が存在しており該弾性ポリマーからなる繊維を発生し得る繊維(A)と平均繊維径5μm以下の非弾性ポリマーからなる極細繊維を発生し得る繊維(B)からなる絡合不織布を製造する工程、
II.該絡合不織布の少なくとも一方の面に該弾性ポリマーに対する良溶剤を少なくとも含む液を塗布し、少なくとも表面層部に存在する該繊維(A)中の弾性ポリマーを部分的に溶解させ、次に該弾性ポリマーに対する貧溶剤を少なくとも含む液を付与する工程、及び
III.該繊維(A)および該繊維(B)よりそれぞれ弾性ポリマーからなる繊維および平均繊維径5μm以下の非弾性ポリマーからなる極細繊維を発生させる工程。
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