JP2005095972A - 溶接用ソリッドワイヤの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 銅めっきを有しない溶接用ソリッドワイヤの製造において、鋼素線をローラダイスにて製品径または製品径近くのワイヤまで高速で伸線するとともに、この伸線工程や、洗浄工程、潤滑剤塗布工程などを含めて、これらの工程を全てインラインで連続的に行なう、高効率の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 鋼素線100 を一次伸線(B )および二次伸線(C) を含めて全てローラダイス201 〜206 および401 〜405 にて略製品径ワイヤまで伸線する銅めっきを有しない溶接用ソリッドワイヤ110 の製造方法において、伸線用乾式固形潤滑剤として、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウムから選択された1 種または2 種の石鹸を用い、洗浄手段108 にて伸線後のワイヤ107 表面から前記潤滑剤を除去した後、塗油手段109 にてこの伸線ワイヤ107 表面に溶接用ソリッドワイヤ送給用潤滑剤を塗布する工程を、前記二次伸線(C) と同じ工程で行なうことことである。
【選択図】 図2

Description

本発明は、銅めっきを有しない溶接用ソリッド (中実) ワイヤ( 以下、単に溶接用ワイヤとも言う) の製造方法に関するものである。
一般にCO2 ガスシールドアーク溶接、MIG 溶接等には細径(0.8 〜1.6 mmφ)の溶接用ソリッドワイヤが使用される。この溶接用ソリッドワイヤはスプールに巻装、あるいはペールパックに装填された形態で溶接に供せられる。この溶接用ワイヤの使用は、送給機の送給ローラによりスプール(あるいはペールパック)からワイヤを引き出すとともに後続するコンジットケーブルに内包されたライナー内に押し込み、このライナーを経由して、溶接位置にある溶接トーチ内の給電チップ部分まで送給するという方式が慣用されている。
ここで使用されるコンジットライナは鋼線をスパイラル状にして形成したフレキシブルなガイド管であり、その長さは通常3 〜6 m 程度のものから10〜20m の長尺なものが溶接個所までの距離に合わせて選択使用されている。このような一連の溶接用ワイヤの送給作業の際に、造船現場等の溶接個所が狭隘な場所、あるいは高低差や屈曲部がある場所であっても、これらの送給条件によらず、一定速度で安定的に溶接用ワイヤが供給されることが必要となる。これが溶接用ワイヤの重要な品質特性の一つであるワイヤの送給性である。
溶接用ワイヤは送給ローラの送給力によってコンジットライナー内に押し込まれ、一方コンジットライナー内面からは接触摩擦による送給抵抗を受ける。このとき、コンジットライナーが直線状態に近い単純な使用環境下の場合には、送給抵抗はそれ程大きくならず送給性に問題は生じない。しかし、屈曲個所が多い、屈曲半径(曲率半径)が小さい、あるいはライナーが長尺化する、等の複雑な使用環境下の場合には、送給抵抗が増加し、送給力とのバランスが崩れ、送給性が著しく低下する。
このため、安定した送給性を確保するには、送給ライナーからの送給抵抗を下げる必要がある。この送給抵抗を下げて、ワイヤの送給性を改善するために、一般的に、アーク溶接用ワイヤ表面には、銅めっきや潤滑剤の塗布を施している。銅めっきには、この他、伸線性を大きく向上させ、通電性や防錆性などを向上させる効果もある。
しかし、銅めっきや潤滑剤の塗布を施した溶接用ソリッドワイヤは、送給ローラの圧下により、ワイヤ表面の過剰なワイヤ送給用潤滑剤が削れやすい。このため、この削れ滓がコンジットライナー内に侵入、蓄積する状態を呈する等により、送給抵抗の異常な増加を招くことがある。特に、前記銅めっきを有する溶接用ワイヤでは、表面からの銅めっき剥離物 (削れ滓) に起因する、送給抵抗の異常な増加が深刻な問題となる。また、溶接用ワイヤへの銅めっきの際のシアン化合物の使用など、環境上の問題からも、銅めっきを有しない溶接用ワイヤが強く求められている。
また、銅めっきを有する溶接用ワイヤの銅めっき層は、送給性向上の潤滑皮膜機能だけではなく、溶接用ワイヤの製造工程における伸線性向上の潤滑皮膜としての機能をも担っている。したがって、銅めっきを有しない溶接用ワイヤを、銅めっき溶接用ワイヤと同様に、効率良く伸線するためには、この銅めっきに相当する伸線潤滑方式や、銅めっきの潤滑性を補完するための伸線加工技術が必要となる。
溶接用ワイヤは、基本的には、鋼素線 (以下、原線とも言う) を、孔ダイス群(列とも言う)やローラダイス群などの線引き装置により順次伸線して、前記細径の溶接用ワイヤとして製造される。ここにおいて、前記銅めっき潤滑性を補完する伸線加工技術として、孔ダイス減面率の指定により、高速伸線時の断線を防止する、銅めっきを有しない溶接用ワイヤ製造技術が提案されている( 例えば特許文献1参照) 。また、送給潤滑剤の改善により、安定した潤滑剤付着性を実現し、溶接用ワイヤの前記送給抵抗の異常な増加を防止することが提案されている (例えば特許文献2参照) 。
特開平10−296488号公報 (第3 頁、図1-5) 特開2000−117486号公報 (第2 頁)
しかし、これらの方式で銅めっきを有しない溶接用ワイヤを伸線するには、ボンデ処理、ボラックス処理などの、伸線潤滑剤とワイヤ表面との密着性を確保するための、原線の下地処理が必要となる。これら原線処理技術は製造コスト面の問題の他、環境面の問題がある。また、潤滑性が良好なカルシウム石鹸などの乾式固体潤滑剤を使用することにより、伸線は可能となるものの、カルシウムはアーク安定性に顕著な悪影響を及ぼすため、製品径および中間径までの伸線完了後に、焼鈍、アルカリ脱脂、酸洗処理、有機系洗浄剤による洗浄といった処理が必要となり、製造コスト面および環境面の問題がある。
一方、CO2 ガスシールドアーク溶接用ワイヤにおいては、ワイヤ表面が緻密平滑であると、所定量の送給性潤滑油を脱離することなく安定して保持することが困難である。このため、ある程度の送給性能を有するワイヤを得るため、ワイヤ表面の粗度を大きくして、その凹みにワイヤ送給性潤滑油を保持させることにより、潤滑油をワイヤ長手方向にむらなく、かつ安定して塗布する技術が提案された (例えば特許文献3参照) 。
これに関連した方法も以下の通り種々提案されている。例えば、乾式孔ダイス伸線と湿式孔ダイス伸線との間にローラダイス伸線を介在させ、これにより湿式伸線が受け持つ減面率を小さくする方法も提案されている。この方法は、潤滑剤溜めとして有効な凹みを有する表面粗度を製品ワイヤ表面に形成させ、そしてそのワイヤ表面凹みに送給潤滑剤を安定して付着させるものである (例えば特許文献4参照) 。
また、ローラダイスの表面に予め付与した凹凸を、ワイヤ表面に転写する方法も提案されている。この方法によれば、ワイヤ表面に転写された凹凸によって、潤滑剤溜めとして有効な凹みを有する表面粗度を、製品ワイヤ表面に形成させる (例えば特許文献5参照) 。
更に、孔ダイスの減面率と潤滑剤付着量の相関性に着目し、伸線潤滑剤としてMoS2およびWS2 を使用し、孔ダイスによる減面率を指定することで適正な表面粗度を確保しつつ、伸線性の向上を図る技術も提案されている (例えば特許文献6参照) 。
また、アーク安定性を向上させる目的で、伸線終了後、湯洗浄した後に、ローラダイス伸線又はローラ圧着を1回だけ行うことによって、カルボン酸カリウムを固着させる技術が提案されている (例えば特許文献7参照) 。
特開2000−107881号公報 (第4 頁、図3) 特開平10−272596号公報 (第3 頁、図2) 特開平10−249576号公報 (第3 頁、図2) 特開平11−197878号公報 (第2 頁) 特開平3−77035 号公報 (第5 頁、図4)
しかし、銅めっきを有しない溶接用ワイヤでは、効率的なワイヤ生産効率を確保しつつ、その凹みに潤滑油を保持させるだけ、これらワイヤ表面の粗度を大きくすることは、実際には困難であり、現実的では無い面がある。
特に、上記溶接用ワイヤ伸線の主流となっている孔ダイス伸線は、ローラダイス伸線と比較して、孔ダイス面における潤滑層に負荷される剪断力が大きく、潤滑皮膜切れの問題が発生しやすい。このため、銅めっきを有しない溶接用ワイヤを、原線処理およびステアリン酸カルシウム系の潤滑剤を使用せずに、孔ダイス伸線した場合、孔ダイス伸線工程において特に潤滑皮膜切れが生じやすい。したがって、この問題から、銅めっきを有しない溶接用ワイヤにおいては、孔ダイス伸線では高速伸線を行なうことが出来ない。
これは、前記した乾式孔ダイス伸線による1 次伸線後に、2次伸線で湿式伸線を行なう方法でも同様である。湿式伸線は乾式伸線と比較して伸線性が悪いために、銅めっきを有しないワイヤを高速で伸線することは出来ない。更に、前記特許文献4 にも記載されているように、ワイヤ表面粗度が伸線中に急激に低下するため、半製品段階で形成している表面平坦度を製品径まで維持し難いという問題もある。
更に、前記した伸線潤滑剤としてのMoS2およびWS2 では、孔ダイス伸線やローラダイス伸線における伸線性が確保されず、銅めっきを有しないワイヤを高速で伸線することは困難である。また、伸線潤滑剤としてのMoS2およびWS2 が過剰残留すると、製品ワイヤの給電安定性を阻害し、また、前記削れ滓によるワイヤ送給性の低下が発生する。このため、伸線工程では、これら潤滑剤を均一に塗布し、かつ、均一に残留させ、洗浄工程において均一に除去する必要がある。しかし、このような課題は、伸線効率を低下させ、工業的に困難かつ品質の安定性に欠けるという問題がある。更に、ワイヤ素地に適正な防錆処理を行わずに、MoS2およびWS2 などの硫化物を直接塗布した場合には、溶接用ワイヤの耐食性が劣化する問題も生じる。
また、ローラダイスの表面に予め付与した凹凸をワイヤ表面に転写する方法では、消耗や磨耗しやすいロール表面を用いて、ワイヤ表面の凹凸を特定の粗度で一定に維持することとなる。このため、ロール表面管理が極めて困難であり、伸線製品の品質安定性を欠き、また、ロール交換頻度の増加によるコストアップの問題もある。
このローラダイスは、対向する一対のローラダイスによって形成された型孔にワイヤを挟んで線引きする装置である。このため、ローラダイスは、その構造上、孔ダイスよりも高速の伸線に適する。これは、小さい型孔を持つ孔ダイスを用いた伸線に比して、ダイス面における潤滑層に負荷される剪断力が比較的小さく、潤滑被膜切れの問題が発生しにくいためである。また、伸線の潤滑を水素増加の問題がない非水素系の無機乾式固体潤滑剤によって行なう場合にも、小さい型孔を持つ孔ダイスのような、この潤滑剤の固化、目詰まりの問題が発生しないためである。したがって、このローラダイスを主として用いて、銅めっきを有しない溶接用ソリッドワイヤを伸線してやれば、孔ダイスを用いた伸線に比して、伸線の大幅な高速化や、伸線工程の大幅な効率化が図れる。
しかし、銅めっきを有しない溶接用ソリッドワイヤの伸線方法において、これまで、鋼素線をローラダイスにて製品径 (製品径か製品径に近いワイヤ径) のワイヤまで、特に高速で伸線することは無かった。このようなローラダイスにおいても、銅めっきを有しないソリッドワイヤを、溶接特性良く、ローラダイスのみで高速で伸線するには大きな限界や問題があったからである。この点、製品溶接ワイヤの溶接対象鋼に応じたワイヤ素材として、ハイテン、合金鋼、ステンレス鋼などの、より高強度の、銅めっきを有しない溶接用ソリッドワイヤを伸線する場合には、ローラダイスにおける伸線高速度化は、通常の軟鋼ワイヤの場合に比して、より困難となる。
即ち、これら高強度の溶接ワイヤは、軟鋼溶接ワイヤに比して、伸線においてより大きな加工力を必要とし、ローラダイスに対して大きな負荷がかかる。一方で、ローラダイスを支持する枠体を含めて、伸線時のローラダイスの剛性なり固定強度には、一定の限界がある。このため、前記大きな加工力が加わった場合、ローラダイスも変形しやすくなり、ローラ自身が伸線の際の回転時に振動しやすくなる。これにより、伸線の際の溶接ワイヤの振動が励起され、ローラの型孔と断続的に接触し、溶接ワイヤ表面に打痕傷が発生する。したがって、溶接ワイヤの線径精度や形状精度が出なくなる、ワイヤの肌荒れが生じる、などの問題が起こり易くなる。この結果、ローラダイス伸線を例え実施したとしても、伸線速度を遅くせざるを得ず、伸線効率や溶接ワイヤの生産性が著しく低くなる。
このため、実質的な伸線を全てローラダイスによって行なって、鋼素線を製品径若しくは製品径直前のワイヤ径まで伸線した例はこれまで無く、仮にあったとしても、上記した高強度の銅めっきを有しない溶接用ソリッドワイヤを高速で伸線することはできなかった。
この伸線速度を高速化できない問題は、前記したローラダイスのロール (以下、ローラとも言う) の消耗や磨耗の問題、あるいは、孔ダイスと同様の伸線の潤滑の問題によっても生じる。銅めっきを有しない溶接用ワイヤのローラダイス伸線においても、伸線潤滑剤のワイヤ表面との密着性が悪ければ、前記した、ボンデ処理、ボラックス処理などの原線の下地処理が必要となる。これら下地処理を省略しようとすると、潤滑性が良好なカルシウム石鹸などの乾式固体潤滑剤を使用せざるを得ない。しかし、カルシウム石鹸は、製品溶接用ワイヤ表面に微量でも残留すると、アーク安定性に顕著な悪影響を及ぼす。このため、伸線完了後にオフライン (伸線とは別工程) にて、微量のカルシウム石鹸でも除去する、前記した種々の洗浄処理が必要となる。これは、製造コスト面および環境面に悪影響を与える。そして、勿論、銅めっきを有しない溶接用ワイヤ製造工程全体の生産性を阻害する。
このため、前記伸線工程や、伸線潤滑剤の洗浄工程、溶接用ワイヤ送給用の潤滑剤を塗布する工程などを含めて、これらの工程をインラインで連続的に行なう銅めっきを有しない溶接用ワイヤ製造工程はこれまで無かった。また、仮にあったとしても、これらの工程を、伸線工程と同様に、高速で処理することはできなかった。なお、ここで、インラインとは、伸線と同じ工程にて、伸線後のワイヤを搬送しつつ、連続的に処理を行なうことを言う。
以上説明した通り、従来から、銅めっきを有しない溶接用ワイヤは、より高強度の溶接ワイヤを含めて、実質的な伸線を全てローラダイスによって行なって、鋼素線を製品径のワイヤまで伸線することは無かった。また、この伸線工程や、伸線潤滑剤の洗浄工程、溶接用ワイヤ送給用の潤滑剤を塗布する工程などを含めて、これらの工程を全てインラインで連続的に行なうことは無かった。また、例え仮にあったとしても、これらを高速で行なうことはできなかった。
本発明は、この様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、銅めっきを有しない溶接用ソリッドワイヤの製造において、鋼素線をローラダイスにて製品径若しくは製品径直前のワイヤ径まで高速で伸線するとともに、この伸線工程や、伸線潤滑剤の洗浄工程、溶接用ワイヤ送給用の潤滑剤を塗布する工程などを含めて、これらの工程を全てインラインで連続的に行なう、高効率の製造方法を提供しようとするものである。
この目的を達成するために、本発明溶接用ソリッドワイヤの製造方法の要旨は、鋼素線をローラダイスにて製品径ワイヤまで伸線する銅めっきを有しない溶接用ソリッドワイヤの製造方法において、伸線用乾式固形潤滑剤として、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウムから選択された1 種または2 種の石鹸を用い、伸線後のワイヤ表面から前記潤滑剤を除去した後、この伸線ワイヤ表面に溶接用ソリッドワイヤ送給用潤滑剤を塗布する工程を、前記伸線と同じ工程で行なうことである。
本発明では、銅めっきを有しないワイヤの伸線に用いる乾式固形潤滑剤として、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウムから選択された1 種または2 種の石鹸を用いることを特徴とする。但し、本発明のローラダイス伸線用潤滑剤は、石鹸単体の場合のみを意味するのではなく、後述する通り、他の軟化点調整剤や極圧剤などの添加剤を含みうるものである。なお、本発明で言う上記ローラダイスにて製品径ワイヤまで伸線する際の製品径とは、製品径だけでなく、製品径直前のワイヤ径をも含むものである。
これらステアリン酸系の水溶性石鹸であれば、より高強度の溶接ワイヤを含めて、実質的な伸線を主としてローラダイスによって行なって、鋼素線を製品径若しくは製品径直前のワイヤ径まで高速で伸線する際にも、良好な潤滑性を発揮する。また、前記した伸線用潤滑剤除去のためのオフラインでの洗浄工程を必要とせず、インラインでの洗浄工程により除去が可能である。
この結果、銅めっきを有しない溶接用ソリッドワイヤの製造において、実質的な伸線を全てローラダイスによって行なって、鋼素線を製品径若しくは製品径直前のワイヤ径まで高速で伸線するとともに、この伸線工程や、伸線潤滑剤の洗浄工程、溶接用ワイヤ送給用の潤滑剤を塗布する工程などを含めて、これらの工程を全てインラインで連続的に行なう、高効率の製造方法が可能となる。
因みに、本発明のステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウムなどの石鹸を用いて、前記した溶接用ワイヤ伸線の主流となっている孔ダイスのみで高速伸線することはできない。即ち、孔ダイス伸線は、ローラダイス伸線と比較して、孔ダイス面における潤滑層に負荷される剪断力が大きい。このため、本発明の石鹸が、例え、他の軟化点調整剤や極圧剤などの添加剤を含んだとしても、孔ダイス高速伸線では、潤滑皮膜切れの問題が発生しやすい。この点が、本発明の石鹸の、既に孔ダイス伸線に適用されている、前記したステアリン酸カルシウム系の金属石鹸潤滑剤の特性に対し、著しく相違する点である。
また、本発明では、好ましい態様として、前記ローラダイスによる伸線の前工程あるいは中間段階で、減径率の総和ΣRdが0.5 〜78% の範囲となる、孔ダイス伸線を行なっても良い。この態様では、この孔ダイス伸線によって、後段のローラダイス伸線にて新たな乾式固体潤滑剤を、伸線用に塗布することなく、伸線が可能なように、孔ダイス伸線後のワイヤ表面に全周均一に塗り込めることが可能となる。
以下に、図面を用いて、本発明の実施の形態を説明する。
(溶接用ソリッドワイヤの製造工程)
図1 、2 は、本発明の溶接用ソリッドワイヤの、高速伸線工程を含めた、製造工程の概略を各々示す、フローチャート図、工程図である。
図1 および図2 は、例えば、5.5 mmΦの高強度鋼線材素線から1.2mm Φの製品径の溶接用ソリッドワイヤを製造する工程を示す。この図2 に示す溶接用ソリッドワイヤの伸線工程は一次伸線(B) および二次伸線(C) からなる。そして、一次伸線(B) および二次伸線(C) を含めて、溶接ワイヤの素線径から製品ワイヤ径に近いワイヤ径までの伸線を、孔ダイス線引き装置を用いず、全てローラダイスにて行なう工程を示している。即ち、一次伸線(B) および二次伸線(C) を含めて、実質的な伸線を全てローラダイスによって行なう工程を示している。
本発明では、鋼素線を製品線径あるいは製品線径直前のワイヤ径まで、実質的な伸線を主としてローラダイスによって行ない、銅めっきを有しない溶接用ソリッドワイヤを製造する。また、本発明では、後述する通り、乾式 (潤滑) でローラダイス伸線を全て行ない、湿式 (潤滑) では行なわない。但し、本発明では、後述する通り、孔ダイス伸線を、ローラダイス伸線用潤滑剤の塗り込めに用いる態様を含む。このため、孔ダイス伸線を、一次伸線(B) や二次伸線(C) におけるローラダイス伸線の前工程または中間工程に配置することを含む。また、孔ダイス伸線をローラダイス伸線後の、仕上げ伸線用に用いることも含む。
このようなローラダイス線引き装置を適用した工程で、例えば、500MPa以上の高強度鋼線材素線を溶接ワイヤに伸線する場合、高速と言える伸線速度は、一次伸線(B) および二次伸線(C) ともに、600m/ 分以上、好ましくは700m/ 分以上である。本発明の、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウムの石鹸を、この一次伸線(B) および二次伸線(C) における、銅めっきを有しない溶接用ソリッドワイヤの乾式固形潤滑剤として適用することで、これらローラダイス伸線工程の高速化が可能となる。しかも、溶接用ソリッドワイヤにおいても、特に、伸線が困難な、銅めっきを有しない溶接用ソリッドワイヤの高速伸線が可能となる。
本発明において、ローラダイス伸線できる鋼素線径は、従来の孔ダイス伸線に付される鋼素線径と同様のものが可能である。通常、この鋼素線径は2 〜8 mmφ程度である. 例えば、汎用される鋼素線は、ローラダイス群入線時の素線径が4.0 〜6.0mm φの熱間圧延線材や、ローラダイス群入線時の素線径が2.2 〜4.0mm φの冷間伸線材、などである。なお、鋼素線としては、これら熱間圧延線材や冷間伸線材でも良いが、これら線材を更に、孔ダイス、ローラダイスおよびマイクロミル圧延などを適用して冷間伸線し、前記素線径範囲としたものも鋼素線として用いることができる。また、4.0 〜6.0mm φの熱間圧延線材を2.2 〜4.0mm φまで、従来のステアリン酸カルシウムを主成分とする乾式固形潤滑剤を用いて孔ダイス伸線し、焼鈍および酸洗によって、ステアリン酸カルシウムを除去したものを鋼素線として用いても良い。
図2 に示す工程では、先ず、例えば、500MPa以上の高強度鋼線材素線(A) のコイル100 を巻き戻して、図5 で後述するように、4 段(4列) のローラダイスを各々連接した線引き装置201 、202 、203 、204 、205 、206 を順に6 段直列に配置した一次伸線工程(B) において、本発明伸線用潤滑剤を用いて、2.4mm Φの線径のワイヤに伸線し、その後巻き取り、コイル106 とする。なお、図2 において、111 は各ダイス間に適宜配置される引取キャプスタンである。
次いで、コイル106 を巻き戻して、同じく4 段のローラダイスを各々連接した線引き装置401 、402 、403 、404 、405 を順に5 段(5列) 直列に配置した二次伸線工程(C) において、本発明伸線用潤滑剤を用いて、あるいは、新たな本発明伸線用潤滑剤を用いずに、2.4mm Φの線径のワイヤを1.3mm Φの線径の製品径直前の線径のワイヤ、若しくは、2.4mm Φの線径のワイヤを1.2mm Φの製品径ワイヤに伸線する。この場合、製品径直前のワイヤ径に伸線したものは、1 段の孔ダイス501 により、線径精度を上げるための仕上げ伸線 (サイジング)Dを行ない、1.3mm Φの線径のワイヤを1.2mm Φの最終製品径のワイヤに仕上げる。
ここで、本発明伸線用潤滑剤は、一次伸線工程(B) 、二次伸線工程(C) ともに (二次伸線工程の場合は選択的に) 、ローラダイス線引き装置201 と401 との直前で (一次および二次伸線前に) 素線およびワイヤに各々塗布される。
二次伸線工程(C) において、孔ダイス501 による仕上げ伸線D を入れるか否かは、製品溶接用ワイヤの製品取り扱いの必要性や製品の要求線径精度から適宜選択され、この孔ダイスによる仕上げ伸線D が無い二次伸線工程も、当然選択できる。
この伸線後、ワイヤは、有機系洗剤および酸もしくはアルカリを含まない簡易な例えば温水の洗浄槽108 による洗浄工程E で洗浄され、ワイヤ表面に残留した伸線用潤滑剤が除去される。その後ワイヤは、ワイヤ送給用潤滑剤を塗油工程E にて、ワイヤ表面に塗布され、これら一連の処理をインラインで行なった後に、1.2mm Φの線径の製品溶接ワイヤF としてコイル110 に巻き取られる。なお、上記洗浄工程E は、伸線用潤滑剤を拭き取るフェルトまたは研磨布などを表面に設けた拭い取り(ワイパー)ロール、ワイヤを加振する、ワイヤを打撃するなどの物理的な除去手段、あるいはこれら除去手段の適宜の組み合わせにより、洗浄しても良い。
この図2 では、ローラダイス群による、一次伸線工程(B) と二次伸線工程(C) とを、別の工程に分けて行なっている態様を示している。これは、比較的太径の5.5 mmΦの高強度鋼線材素線から、比較的細径の1.2mm Φの製品径の溶接用ソリッドワイヤに、効率良く伸線するためである。このように、伸線工程を分割するか、同じ工程で連続的に製品径まで伸線するかは、鋼線材素線の線径と製品溶接用ソリッドワイヤの製品径による生産性などによって適宜選択される。また、一本の一次伸線工程(B) に対して、二次伸線工程(C) を複数本設ける、あるいは、複数本の一次伸線工程(B) に対して、一本の二次伸線工程(C) を設けるなども、生産性などによって適宜選択される。したがって、本発明では、鋼素線をローラダイスにて製品径か製品径に近いワイヤ径まで、連続的に同一工程で、あるいは伸線工程を分割した上で連続的に同一工程で伸線する。
但し、本発明において、ローラダイス群による伸線以降の、洗浄工程E 、塗油工程E などの工程は、インラインにて( 同一のラインにて連続的に) 行なう。これらの工程を別工程によるオフライン処理とした場合、製品溶接用ソリッドワイヤ製造工程全体の生産性や生産効率が著しく低下し、ローラダイス群による高速伸線化の利点が大きく損なわれる。
(伸線用乾式固形潤滑剤)
ここで、伸線に用いる本発明乾式固形潤滑剤について説明する。本発明では、乾式 (潤滑) でローラダイス伸線を全て行ない、湿式( 潤滑) では行なわない。銅めっきを有しない高強度溶接用ソリッドワイヤをローラダイスで高速伸線する場合、乾式潤滑剤に必要な特性は、ローラダイス伸線の際に良好な潤滑性を発揮することである。更に、このローラダイス伸線後に、その残留付着量にもよるが、インラインでの洗浄工程で除去可能なことである。
この特性を満足する潤滑剤として、本発明では、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウムなどのステアリン酸系石鹸を主成分とする乾式固体潤滑剤とする。これら水溶性のステアリン酸系石鹸であれば、ローラダイスによる伸線の際に良好な潤滑性を発揮するとともに、焼鈍、アルカリ脱脂、酸洗処理、有機系洗浄剤処理などによるような、除去のためのオフラインでの洗浄工程を必要とせず、インラインでの洗浄工程により除去が可能である。また、この石鹸により、製品溶接用ワイヤ表面のpHが弱アルカリに維持され、ワイヤ表面の酸化が抑制され、優れた防錆性能を得ることが出来る。そのため、伸線用潤滑剤中および送給用潤滑剤中に、潤滑性を向上させる微量の硫化物を含有させることも可能となる効果もある。
更に、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウムなどのステアリン酸系石鹸を主成分とする乾式固体潤滑剤は、鋼線材素線や伸線中のワイヤ表面との密着性に優れる。このために、銅めっきを有しないワイヤの伸線前の鋼線材素線に対し、通常は必要となる、前記した、ボンデ処理、石灰処理、ボラックス処理などの、所謂原線処理は基本的に必要ない。この原線処理を省略でき、工程が簡略化できる点が、本発明乾式固体潤滑剤をローラダイス伸線に適用する大きな利点である。
但し、上記ステアリン酸系石鹸の単体では軟化点が低く、銅めっきを有しない溶接用ソリッドワイヤのローラダイス伸線を高速で行なった場合に、石鹸成分が孔ダイス内で炭化し、高速で伸線することが出来ない可能性がある。このため、全体工程の高速化、高効率化のために、潤滑剤を高軟化点化することが好ましい。この高軟化点化のためには、上記ステアリン酸系石鹸に軟化点調整剤を添加することが好ましい。軟化点調整剤としては、燐酸ナトリウム、硼酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、燐酸カリウム、硼酸カリウム、亜硝酸カリウム、炭酸カリウムの1 種または2 種以上が選択される。これらの軟化点調整剤を添加することで、銅めっきを有しないソリッドワイヤの高速伸線が可能となる。
更に、特にローラダイスにおける伸線性を補完し、ローラダイス面を保護するために、潤滑性向上剤として少量のMoS2、WS2 、BN、ZnS 、グラファイト、などから選択された1種または2種以上の極圧剤を含有させることが好ましい。
このような組成の伸線潤滑剤は、ローラダイス伸線後の前記インラインにおける洗浄において、製品溶接用ワイヤ表面に微量残留したとしても、アーク安定性に影響を与えない利点がある。言い換えると、オフラインでの前記煩雑な洗浄工程を採らずとも、後述するインラインによる簡易な洗浄処理により、アーク安定性が良好な製品溶接用ワイヤが製造可能となる利点がある。
なお、本発明乾式固形潤滑剤に対し、潤滑水溶液、あるいは潤滑油などの、湿式潤滑剤では、銅めっきを有しない高強度溶接用ソリッドワイヤをローラダイスで高速伸線する場合、良好な潤滑性を発揮できない。これは、銅めっきを有しない高強度溶接用ソリッドワイヤが、ローラダイスで高速伸線される際に、湿式潤滑剤では、ローラダイス面における潤滑層に負荷される剪断力に対し、潤滑皮膜切れの問題が発生しやすいからである。
また、通常、銅めっきを有しないワイヤを孔ダイス伸線する場合に使用されるステアリン酸カルシウム系の潤滑剤 (カルシウム石鹸) を含有する乾式固体潤滑剤は、前記した通り、潤滑性は良好である。しかし、Caは製品溶接用ワイヤ表面に微量残留しても、アーク安定性に顕著な悪影響を及ぼす。このため、製品溶接用ワイヤ表面への微量残留が許容できない。したがって、ローラダイス伸線後のインラインによる簡易な洗浄処理が適用できない。言い換えると、ローラダイス伸線伸線完了後に、焼鈍、アルカリ脱脂、酸洗処理、有機系洗浄剤による洗浄といった、煩雑なオフラインでの除去処理が必要となり、製造コスト面および環境面での問題がある。
以下に、上記した溶接用ソリッドワイヤの製造工程における好ましい態様について説明する。
(鋼素線の伸線前の前処理)
本発明では、前記した通り、鋼素線や伸線中のワイヤ表面との密着性に優れる、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウムなどのステアリン酸系石鹸を主成分とする乾式固体潤滑剤を用いる。このために、前記した通り、銅めっきを有しないワイヤの伸線前の原線処理として、通常の孔ダイス伸線する場合に必要となる、前記した所謂原線処理は基本的に必要ない。
本発明で前処理の必要性があるとすれば、溶接用ワイヤの素線である、圧延線材や冷間伸線材などの鋼線材に、元々加工油や汚れ、あるいはスケール (酸化皮膜) などが多く付着している場合である。この場合には、これら付着物の除去のために、オフライン、あるいは伸線工程上のインライン (オンライン) で、洗浄を行なう。洗浄自体は、酸洗洗浄や拭き取り、機械的研磨など、公知の手段が採用できる。
(鋼素線の孔ダイス伸線)
本発明では、前記した好ましい態様として、前記ローラダイスによる伸線の前あるいは中間に、鋼素線径の減径率の総和ΣRdが0.5 〜78% の範囲となる、鋼素線の孔ダイス伸線を行なって、孔ダイス伸線後のワイヤ表面に、本発明に係る乾式固体潤滑剤を塗り込めても良い。この固体潤滑剤塗り込め用の孔ダイスの配置は、例えば、前記図2 の態様においては、一次伸線(B) におけるローラダイス線引き装置201 の前段 (上流側) や、二次伸線(C) におけるローラダイス線引き装置401 の前段 (上流側) に配置する。この態様では、孔ダイス伸線によって、後段のローラダイス伸線にて新たな乾式固体潤滑剤を、伸線用に塗布することなく、伸線が可能なように、孔ダイス伸線後のワイヤ表面に全周均一に塗り込めることが可能となる。乾式固体潤滑剤がワイヤ表面に塗り込められることによって、ローラダイス伸線にて必要な潤滑剤の密着性と量とが確保でき、ローラダイス伸線のより高速化が可能となる。
この孔ダイス伸線によって、ローラダイス伸線に必要な量と密着性とを確保できれば、ローラダイス伸線工程、孔ダイスによる仕上げ伸線工程、伸線ワイヤから前記乾式固体潤滑剤を除去する工程、d:溶接用ソリッドワイヤ送給用潤滑剤を伸線ワイヤ表面に塗布する工程、の各工程を順にインラインにて行ないやすくなる効果もある。即ち、この本発明態様では、伸線潤滑剤の塗布は、基本的に孔ダイス工程のみで実施するので、ローラダイスの良好な伸線性を得るために十分な量の伸線潤滑剤を、孔ダイス工程でワイヤ表面に固着させつつ、潤滑剤消費量を極力少なくすることができる。したがって、ローラダイスにおける、孔ダイスと同様の伸線の潤滑の問題、伸線潤滑剤が過剰残留して、製品ワイヤの送給性や給電安定性を阻害する問題が解決できる。更に、これらの問題を、ローラダイス伸線工程で解決する際の問題、即ち、これら潤滑剤を均一に塗布し、均一に残留させ、洗浄工程において均一に除去する際に、伸線効率が低下しやすいという問題が解決できる。
また、通常、圧着ローラーや強制潤滑ノズルにより潤滑剤をワイヤに付着( 塗布) させるための潤滑剤ボックスはダイス入口に隣接する。孔ダイスの場合、潤滑剤ボックス出口は孔ダイスによるワイヤ圧延部に相当しており、潤滑剤の飛散の発生がない。これに対し、ローラダイスの場合は、ローラダイスの構造上の問題で、潤滑剤ボックス出口を完全にシールすることが出来ないために、潤滑剤が飛散し、潤滑剤消費量の増加および生産環境の悪化の問題が発生しやすい。したがって、孔ダイス伸線によって、ワイヤ表面に潤滑剤を塗り込めることで、ローラダイス伸線前の潤滑剤付着が不要となり、上記問題が無くなる利点もある。
この態様では、孔ダイス伸線とローラダイス伸線とを組み合わせて行なうものである。ただ、この態様は、孔ダイス伸線を、後続するローラダイス伸線の潤滑に必要な潤滑剤の付着量と、ローラダイス伸線の潤滑に必要な潤滑剤の密着性とを、両方確保するように、活用することを特徴とする。言い換えると、この態様は、孔ダイスに、本来の伸線機能を期待するものではなく、ローラダイス伸線にて新たな乾式固体潤滑剤を塗布することなく伸線が可能なように、孔ダイス通過中に、乾式固体潤滑剤を、ワイヤ表面に密着させる機能をもたせることを特徴とする。
この本発明の態様では、孔ダイス伸線に、本来の伸線機能は持たせない。但し、特に良好な潤滑剤の塗り込めを行なうためには、孔ダイスの減面率は、ある程度高くすることが必要となる。
この態様において、孔ダイス伸線によって乾式固体潤滑剤を鋼素線表面に塗り込めるとは、ローラダイス伸線に必要な、ワイヤ表面における潤滑剤の付着量と潤滑剤の密着性とを両者孔ダイス伸線によって確保することを意味する。そして、孔ダイス伸線によって乾式固体潤滑剤が孔ダイス伸線後のワイヤ表面に塗り込められたか否かは、後段のローラダイス伸線にて、新たな乾式固体潤滑剤を塗布することなく、銅めっきを有しない溶接用ソリッドワイヤの伸線が、高速度化と高精度化、更には、送給性などの溶接特性を両立させて可能であるか否かで判断される。
この本発明態様において、孔ダイス伸線によって乾式固体潤滑剤を伸線後のワイヤ表面に塗り込めるためには、孔ダイスにおける減径率の総和ΣRdが0.5 〜78% の範囲となるように伸線する。
ここで、ローラダイス伸線前に孔ダイス伸線される場合、鋼素線径は2 〜8 mmφ程度であり、また表面粗度はJIS B0601-1994で規定されるRaでワイヤ長手方向(L方向)の測定値(以下Ra[L] と言う)が0.3 μm 以上のものが好ましい。これは素線1の表面には、後述するように、孔ダイス伸線後のローラダイス伸線時の潤滑性や、溶接用ワイヤの送給性などに好ましい、ワイヤ表面粗度の形成に必要な初期条件としての粗度(凹凸)が必要であることによる。
孔ダイス伸線によって、乾式固体潤滑剤を伸線後のワイヤ表面に塗り込めるためには、固体潤滑剤の種類や塗布量などの他に、全体の伸線工程に対する孔ダイス伸線工程の割合、すなわち以下に定義する「ワイヤ減径率」の「孔ダイス分総和」が大きく影響する。
このワイヤ減径率Rd(% )は、伸線工程のn番目のダイスにおける伸線加工による線径の減少量Dr (n)と、素線径:Di(mm)と製品径:Do(mm)とによって、Rd(% )=Dr(n) /(Di−Do)×100
で規定される。
今、対象となる孔ダイスが、k 番目に配置されている場合、孔ダイス分の減径率総和は、
ΣRd(% )=ΣDr(k) /(Di−Do)×100 (k=1,2,3・・・但し連数の必要はない)で規定される。
例えば、図2 において、5個の孔ダイスを、一次伸線工程(B) の1,2,3,4 番目(201、202 、203 、204)のローラダイスおよび二次伸線工程(C) の10番目(404 )のローラダイスの代わりに置き換えて使用した伸線工程では、孔ダイス分のワイヤ減径率総和ΣRd(% )は、
ΣRd(% )=(Dr1+Dr2 +Dr3 +Dr4 +Dr10) /(Di−Do)×100
で規定される。
更に、ローラダイスの場合のローラダイス分の減径率総和は、同様に、
Σrd(%)=ΣDr(k) /(Di−Do)×100 (k=1,2,3・・・但し連数の必要はない)で規定される。ローラダイスは、後述する図5 に示すように、線引き装置4aとして複数個を1 組として配置したローラダイス列 (線引き装置列)4として用いる。したがって、ローラダイスのDr(k) は、伸線工程のダイス列のk 番目に配置されたローラダイス列を通過する前のワイヤ外径から、ローラダイス列を通過した後のワイヤ外径を差し引いた値とする。なお、この伸線中のワイヤは真円ではないので、ワイヤ外径は実際には外接円の直径で測定する。これらは上記孔ダイスの場合でも同様である。
なお、連続的な伸線機群(列)における孔ダイスやローラダイスの構成比率について評価する場合、従来からワイヤの減面率が使用されていた。ただし、この減面率は、伸線工程の分割数(連続的に伸線する一次や二次などの工程数)および連続的に伸線する一伸線工程内でのブロック数と、この各ブロックの減面率の設定に連動する。このため、各伸線ダイスの減面率の総和が100%を越える場合が生じ、各伸線ダイスの減面率を加算出来ず、正確な評価が出来なかった。この点、上記ワイヤの減径率であれば、孔ダイス群における、上記潤滑剤の塗り込めに対する、必要かつ適正な加工率の設計が可能となる。
この本発明態様では、連続的に孔ダイス群が複数群配列するにせよ、一個の孔ダイスとするにせよ、これら孔ダイスにおける減径率総和ΣRdを0.5 〜78% とする。これによって、孔ダイス伸線において、乾式固体潤滑剤をワイヤ表面に塗り込め、ローラダイス伸線に必要なワイヤ表面における潤滑剤の付着量と潤滑剤の密着性とを両者確保できる。即ち、後段のローラダイス伸線にて新たな乾式固体潤滑剤を塗布することなく伸線が可能なように、孔ダイス伸線後のワイヤに良好な伸線性が具備される。
より具体的には、上記減径率総和ΣRdの範囲とすることで、孔ダイス群 (列) において、伸線中に、ワイヤ表面の凹凸の凹みの中に前記潤滑剤が強く押し込まれる結果、孔ダイス伸線後のワイヤ表面は、素線と略同程度の粗度が形成できる効果を得る。この結果、ワイヤ表面に、適度な凹凸を有する粗面が形成されるとともに、この表面凹凸の凹みの中に伸線性に富んだ前記乾式固体潤滑剤が強く押し込まれる。したがって、孔ダイス伸線後のワイヤ表面に、後段のローラダイス伸線にて新たな乾式固体潤滑剤を塗布することなく伸線が可能な前記潤滑剤の量と密着性とが確保される。また、前記潤滑剤の皮膜がワイヤ円周方向に均一に形成される。
更に、孔ダイス伸線後のワイヤ表面は、前記した通り、素線であるワイヤ (鋼線材) と略同程度の粗度が形成できることで、後段のローラダイス伸線と合わせて、製品溶接用ワイヤ表面にワイヤ送給用潤滑剤溜まりとして有効な表面粗度が形成される。この結果、塗布されるワイヤ送給用潤滑剤が、ワイヤ長手方向に均一にかつ安定して付着でき、溶接用ワイヤが良好なワイヤ送給性を具備するようになる効果もある。
上記減径率総和ΣRdが0.5%未満では、伸線条件や潤滑剤条件を調整しても、前記潤滑剤の密着性と潤滑剤皮膜のワイヤ円周方向の均一性とが確保できない。但し、ΣRdが0 の場合は全てローラダイス伸線を意味するのであるが、ワイヤ断面の真円性では劣るものの、潤滑皮膜が全周均一でなくとも伸線が可能である利点がある。
一方、上記減径率総和ΣRdが78% を越えた場合、孔ダイス群 (列) において前記潤滑剤が多く消費され、後段のローラダイス伸線にて新たな乾式固体潤滑剤を塗布することなく伸線が可能な前記潤滑剤の量が不足する可能性がある。また、孔ダイス群で実質的な伸線を行なうこととなり、従来の孔ダイス主体の伸線と変わらなくなり、従来と同様に、伸線速度を低下せざるを得ない。したがって、後段のローラダイス伸線を含めた、伸線工程全体の高速化が達成できない。
(ローラダイス伸線)
次に、本発明で用いるローラダイス伸線の好ましい態様について説明する。
本発明において、孔ダイス伸線によって、乾式固体潤滑剤をワイヤ表面に塗り込める場合には、ローラダイス伸線にて、新たな乾式固体潤滑剤を塗布する必要は基本的には無い。但し、孔ダイス伸線による乾式固体潤滑剤の塗り込めを用いない、あるいは孔ダイス伸線による乾式固体潤滑剤の塗り込めが最低限である場合などは、ローラダイス伸線における伸線性向上のために、後段の洗浄工程でインラインにて連続的に除去可能な乾式固体潤滑剤の量を、ローラダイス伸線において塗布しても良い。
(ローラダイス線引き装置)
本発明で用いるローラダイス伸線の好ましい装置 (以下、ローラダイス線引き装置とも言う) の態様について以下に説明する。
(ローラダイス枠体剛性)
先ず、特に、ローラダイスを支持する枠体における剛性について説明する。
ローラダイスを支持する前記一体型の枠体は、伸線時のローラダイスの剛性を確保する重要な役割を果たす。この一体型の枠体の剛性が低い場合、一体型の枠体は容易に変形し、変形量が大きくなる。このため、ローラダイスの固定強度も低く、変形しやすくなり、ローラ自身が伸線の際の回転時に振動しやすくなる。これにより、伸線の際の溶接用ワイヤの振動が励起され、ローラの型孔と断続的に接触し、溶接用ワイヤ表面に打痕傷が発生する。したがって、溶接用ワイヤの線径精度や形状精度が出なくなる、ワイヤの肌荒れが生じる、などの問題が起こり易くなる。特に高強度の溶接用ワイヤの伸線ほどこの傾向が強い。このため、特に高強度の溶接用ワイヤの伸線はできない、あるいは例えできても、伸線速度を低くせざるを得なくなる。
これに対し、本発明の好ましい態様のように、一体型の枠体の剛性を高めることで、伸線時の負荷に対し、枠体の変形が防止できる。これによって、ローラダイスの固定強度を高め、高強度の溶接用ワイヤの伸線であっても、伸線速度や形状精度を向上させることができる。
一体型の枠体の剛性は、図6(a)に示すような引張試験装置20を用いて、線引き装置の内の一体型の枠体のみの引張試験を行ない、この枠体単独の伸び量で表す。この計測方法と伸び量とが最も計測が簡便であり、実際の高強度の溶接用ワイヤの伸線における高速度化と高精度化と良く対応する。
引張試験の際の枠体に負荷する引張荷重は、実際に使用する線引き装置から、ローラダイスやベアリングボックスなどの枠体の支持対象物を取り外し、一体型の枠体のみに対し、ローラダイスのワイヤへの荷重方向に10000N( ニュートン) の引張荷重を、枠体の中央部に付加して拡張した際の、枠体の伸び量を計測する。この一体型の枠体のみの、そして枠体中央部の伸び量は、一体型の枠体が最も大きく変形する最大変形量を示している。枠体の伸び量を計測するに際して、敢えて、ローラダイスやベアリングボックスなどの枠体の支持対象物を取り外したのは、これら支持対象物による枠体剛性への影響を排除して、高強度の溶接用ワイヤの伸線状態に大きく寄与する枠体のみ( 枠体単独) の剛性を評価するためである。
図6(a)の引張試験装置20は、基本的には、基台22上に設置された枠体24と、この枠体24に垂直方向に設置された引張試験機21a 、21b から構成され、通常の引張試験機と基本的に同じ構成である。要は、通常の引張試験片が、線引き装置の一体型枠体に置き替わった点のみが相違し、この一体型枠体の引張試験のための上下取り付け乃至固定方法を、一体型枠体9 の内の枠体9d、9b側の中央部 (一体型枠体9 の上下軸心) に設けたボルト23a 、23b によっている点が相違する。なお、図6(a)の測定用の一体型枠体9 は、引張荷重方向を、ローラダイス線引き装置のワイヤへの荷重方向とするため、後述する図3 に示した一体型枠体9 の向きに対し、90度横に傾けた状態としている。図6(b)に、この一体型枠体9 の平面図 (上方から一体型枠体9 を見た図) を示す。図6(b)のように、一体型枠体9 の上下軸心あるいは上下軸心に近い位置である、枠体9dの中央部c で引張荷重を負荷する。この枠体9dの中央部c に、既に線引き装置としての位置調整用のボルトなどがある場合には、上記引張試験用の固定ボルト23a の代わりに、これを利用して固定すれば良い。また、このような引張試験用の固定ボルトやボルト孔が無い場合には、枠体9dの中央部c に、引張試験用の固定ボルト23a を挿入する孔を新たに設ける。これは他方の枠体9bの場合も同様である。なお、これらいずれの場合でも、引張試験用の固定ボルトは10000Nの引張荷重に十分耐える太さなり強度を有する必要があることは言うまでもない。
そして、引張り荷重を負荷する前の枠体9 中央部の (枠体9 の上下軸心方向の) 枠体の外形距離をL0、引張り荷重を負荷した後の枠体中央の枠距離をL1として、L1−L0を求めて、枠外形距離の伸び量とする。この一体型の枠体9 のみの伸び量は、前記した通り、一体型の枠体9 が最も大きく変形する最大変形量を示している。この距離L0、L1はマイクロメータ、レーザ式距離測定器、ダイヤルゲージ、歪み式ギャップ測定器、等を用いてμm 単位で測定する。
本発明では、このような引張試験における一体型枠体の伸び量が20〜150 μm の範囲の高剛性を有することが好ましい。例えば、伸線工程における複数群のローラダイスの内、例え1 群 ( 1列) のローラダイスでも、その一体型枠体の伸び量が150 μm を越えた場合、特に高強度の溶接用ワイヤを伸線する場合に、一体型の枠体の剛性とローラダイスの固定強度が不足する。このため、伸線時のワイヤに打痕疵が発生する、線径精度や形状精度が出なくなる、ワイヤの肌荒れが生じるなどの問題が起こり易くなる。特に高強度の溶接用ワイヤの伸線ほどこの傾向が強い。このため、特に高強度の溶接用ワイヤの伸線では、伸線できない、あるいはできても、伸線速度を低くせざるを得なくなる。この結果、特に高強度の溶接用ワイヤの伸線において、高速度化と高精度化 (高形状精度化) とが両立できない。
一方、一体型枠体の伸び量が20μm 未満では、比較的伸線しやすい、軟鋼ソリッドワイヤや軟鋼フープのFCW などの伸線であっても、ローラダイスへの負荷が高まりすぎる。このため、ローラダイスがWC-Co 系超硬製であっても、ローラダイスの疲労強度が低下し、破壊されやすくなり、寿命が大幅に低下する。したがって、一体型枠体の伸び量は20〜150 μm の範囲とする。
(ローラダイス線引き装置構造)
以上のローラダイスを支持する枠体の高剛性化を前提に、以下に、図面を用いて、ローラダイス線引き装置の好ましい基本構造の実施の形態を説明する。図3 は好ましい態様の線引き装置の正面図である。図4 は図3 のローラダイス線引き装置におけるローラダイスの要部拡大正面図である。
先ず、図3 において、ローラダイス線引き装置4aは、基本的に、ローラダイス1 、ベアリングボックス (ベアリングカバー)7a 、7b、7c、7d、ベアリング固定用梁8a、8b、一体型矩形枠体9a、9b、9c、9dなどから構成される。一体型矩形枠体を構成する各枠体の素材は、機械構造用炭素鋼、合金鋼、ステンレス鋼、工具鋼などの比較的高強度の鋼から構成されることが好ましい。
ローラダイス1 は左右一対の2 個のローラ2a、2bからなる。各ローラ2a、2bの軸 (シャフト)6a 、6bは、ベアリングボックス7a、7b、7c、7d内の (図示しない) ベアリング (軸受け) によって各々回転自在に軸支されている。このベアリングは4 個のベアリングボックス7a、7b、7c、7d内に保持収容されている。ベアリングボックス7a、7cと、7b、7dとは、各々2 本のベアリング固定用梁8a、8bに結合、固定され、これらの梁を各々介して、4 本の枠体9a、9b、9c、9dに各々固定されている。これらのベアリング固定用梁8a、8bは各々後述する調整用のボルトを介して、枠体9a、9b、9c、9dに各々固定されている。
図3 において、11a 、11b 、11c 、11d はローラダイス1 のローラ軸方向 (図の上下方向) の位置調整用のボルトであり、12a 、12b 、および 13a、13b 、13c 、13d はローラギャップ (ローラ間距離) 調整用のボルトである。これら調整用のボルトは、押しネジや引きネジなどから構成され、枠体9a、9b、9c、9dと、ベアリング固定用梁8a、8bとに各々結合している。そして、これらのボルトは、これらベアリング固定用梁と、この梁に固定された前記ベアリングボックスを介して、ローラ2a、2bにおける、伸線の際の溶接用ワイヤに対する、ローラ軸方向の位置やローラギャップを制御している。これによって、溶接用ワイヤに対するローラダイスの荷重および加工率、および溶接用ワイヤの形状や線径を制御する。
一方、ローラダイス1 を支持しつつ囲む枠体9a、9b、9c、9dは、ボルト10群などによって互いに結合され、一体型の矩形枠体を構成している。一体型の枠体の全体形状は、ローラダイス1 を四方より支持するためには、略矩形形状を有することが合理的である。27は、後述する図5 に示すように、ローラダイス線引き装置4aを溶接用ワイヤ5 に対して直列に複数個配置した線引き装置列 (群)4として用いる場合に、線引き装置4a同士を積層、固定するための固定シャフト用孔群である。これら固定シャフト用孔27は、上記した線引き装置4aの構成や機能を阻害しないように、各々一体型枠体の四隅 (枠体9a、9cの隅角部) に配置されている。
図4 に拡大して示すローラダイス1 を構成する、左右一対のローラ2a、2bは、各々半割りの型孔3a、3bを有する。そして、この型孔3a、3bで一体に形成する型孔3 内にワイヤ5 ( 図示しているのはソリッドワイヤ) を挟持して、ワイヤ5 を伸線する。この際、前記した図3 のボルト11a 、11b 、11c 、11d によって、ローラ2a、2bのローラ軸方向( 図の上下方向) の位置調整を行なう。また、図3 のボルト12a 、12b 、および 13a、13b 、13c 、13d によって、ローラギャップ (図の左右方向) の調整を行なう。
以上の好ましい基本構成であれば、後述する設計条件をも含めて、一体型の矩形枠体9a、9b、9c、9dの必要剛性と、それに伴う、伸線時のローラダイス1 の固定強度が基本的に確保されやすい。したがって、高強度の溶接用ワイヤの伸線であっても、一体型の矩形枠体9a、9b、9c、9dの変形が防止できる。また、これによって、ローラダイス1 の固定強度を高め、高強度の溶接用ワイヤの伸線であっても、伸線速度や形状精度を向上させることができる。
線引き装置4aにおけるローラダイス1 の固定強度 (剛性) は、これらローラダイス1 、ベアリングボックス7 、ベアリング固定用梁8 、矩形枠体9 の構成要素自身の強度、矩形枠体への固定強度、及び矩形枠体の強度が互いに相乗されて決まる。本発明では、これらの要素の内、特に、最も影響が大きい一体型の矩形枠体9 の強度 (剛性) を前記所定のレベルに高めて、ローラダイス1 の固定強度を高めている。したがって、線引き装置4aがこのような好ましい基本構成であっても、一体型枠体の伸び量が150 μm を越えて剛性が低下した場合には、特に高強度の溶接用ワイヤの伸線時の一体型の枠体の剛性とローラダイスの固定強度が不足する。
このような構成のローラダイス線引き装置4aを実際に溶接用ワイヤの伸線に用いる場合には、図5 に示すように、溶接用ワイヤ5 に対して直列に複数個配置した線引き装置列 (群)4として用いる。図5 の場合には、溶接用ワイヤ5 を形状精度良く伸線するために、同じ構成で、かつローラ2a、2bの向きを互いに90度ずつ角度をずらした線引き装置4aを4 個、交互に配置している。そして、これら各々の線引き装置4aの固定シャフト用孔( 前記図1 に記載した固定シャフト用孔27) に、固定シャフト28a 、28b を貫通させて、固定板29 (線引き装置4aの底部の支持部を含めて L字状を有する) に固定するとともに、線引き装置4 として一体化させている。なお、図5 における伸線方向は図の右から左への方向となる。
(ローラダイス材質)
本発明で使用するローラダイス1 ( ローラ2a、2b) は、超硬製 (超硬材料製) からなることが好ましい。これ以外の材料では、特に高強度で高速の溶接用ワイヤ伸線では、ローラダイスの疲労強度が低下し、破壊されやすくなり、寿命が大幅に低下する可能性が大きい。この超硬材料としては、WC基超硬合金製、TiC 基超硬合金製、TiCN基サーメット製などがあり、これら超硬材料に、ZrC 、HfC 、TaC 、NbC 、VC、Cr3C2 などが適宜分散されるとともに、バインダーとしてCoおよび/ またはNiで焼結したものなどが多々ある。
ただ、本発明で使用するローラダイス1 には、これら超硬材料の中でも、粒径が0.1 〜20μm の微細なWC粒子をバインダーとしてCo、またはCoおよび Ni で焼結した組成のものが好ましい。このようなWC基超硬合金であるWC-Co 系超硬材料からなるローラダイスは、硬度や剛性が高く、溶接用ワイヤの強度や硬度が高くなっても、ローラダイス1 の固定強度が基本的に確保される。また、伸線後の溶接用ワイヤ表面の仕上がり性が確保され、溶接用ワイヤを溶接機に供給する際のワイヤ送給性などが向上する利点もある。更に、ローラの型孔表面の摩耗が防止でき長期間安定した伸線が行える。
なお、このことは、本発明で使用する前記各孔ダイスについても同じことが言える。したがって、本発明で使用する前記各孔ダイスについても、超硬材料製、中でもWC-Co 系超硬材料製が好ましい。更に、耐磨耗性に優れるダイヤモンド製孔ダイスを用いても良い。
(ローラダイス伸線後の工程)
更に、ローラダイス伸線(C)後の、インラインにて施される工程の好ましい態様について、以下に説明する。
(乾式仕上げ伸線)
ローラダイス伸線(C)されたワイヤは、引き続き、形状精度を向上させるために、孔ダイス501 による乾式仕上げ伸線(D)を施される。ここでは、ワイヤ径の減少は小さく、真円度などの形状精度がより向上される。図2 における仕上げ伸線されてコイル化された製品溶接用ワイヤ110 の形状精度は、ワイヤ送給性に影響するとともに、このワイヤ110 をワイヤスプールに巻回あるいはペールパックに装填する際の作業性にも大きく影響する。ローラダイスによって製品径まで伸線されたワイヤを、最終的に孔ダイス501 によって仕上げ伸線しても、当該孔ダイスでの加工量は少ないため、ローラダイス伸線工程全体の高速性や連続性に対して影響を与えることは無い。但し, 前記した通り、この孔ダイスによる仕上げ伸線D が無い二次伸線工程も、当然選択できる。
これら伸線されたワイヤの洗浄 (槽) 工程108 について説明する。
洗浄工程108 では、ワイヤ表面に残留する前記伸線用乾式固形潤滑剤がインラインで、連続的に除去される。この洗浄工程108 において、ワイヤ表面に付着した伸線用潤滑剤だけではなく、伸線工程で形成されたワイヤ表面の凹凸の、特に凹みの中に押し込まれた伸線用潤滑剤も除去されることが好ましい。一方、ワイヤ表面の前記凹みは、洗浄工程108 によっても、なお、残留することが好ましい。このワイヤ表面に残留する凹みは、ワイヤ送給性用の潤滑剤溜めとして有効である。したがって、この洗浄工程108 は、物理的、機械的な洗浄にせよ、湿式による洗浄にせよ、ワイヤ表面に前記凹みを残留させうる方法が好ましい。この点でも、本発明の前記した潤滑剤組成であれば、有機系洗剤および酸もしくはアルカリを含まない簡易な洗浄槽によって、このような除去が可能である。
これに続く、ワイヤ送給用潤滑剤塗布工程109 では、インラインで、連続的に、ワイヤ送給性向上用の潤滑剤が、上記ワイヤ表面の潤滑剤溜め (凹み) を中心に塗布される。ここでの送給用潤滑剤は、基油に固形潤滑剤を添加したものが好ましい。ここでの塗布手段は、高速で搬送 (移動) 中のワイヤ表面に、少量の潤滑剤を均一に、かつ短時間で塗布する必要があるために、静電塗装などの手段を用いることが好ましい。
この潤滑油などの潤滑剤はワイヤ送給性を向上のために不可欠であるものの、水素源となって溶接部の気孔発生要因となるため、ワイヤ送給性を向上のための最低限必要な付着量とする。したがって、この潤滑剤としては、少量の塗布で良好なワイヤ送給性を得るものが好ましい。この点、植物油、動物油、鉱物油および合成油の1 種または2 種以上からなる油分に、更に、MoS2、WS2 、ZnS 、グラファイトから選択された1 種または2 種の固形潤滑剤 (極圧剤) を含有させた潤滑剤を用いることが好ましい。
以下に本発明の実施例を示す。
前記した図2 の溶接用ソリッドワイヤの製造工程に従い、一次伸線工程(B) 、二次伸線工程(C) とも全てローラダイス伸線にて行ない、5.5 mmΦの高強度鋼線材素線から1.2mm Φの製品径のワイヤまで伸線した。この際、一次伸線工程(B) 前の素線表面と、二次伸線工程(C) 前のワイヤ表面とに、各々伸線用乾式固形潤滑剤を付着(塗布)した。なお、本実施例1 では、図2 における伸線後の孔ダイス501 による仕上げ伸線は行なわなかった。
上記伸線後の製品径ワイヤを、有機系洗剤および酸もしくはアルカリを含まない簡易な洗浄液槽108 による洗浄工程E で洗浄し、ワイヤ表面に残留した伸線用潤滑剤を除去した。その後塗油工程E にて、ワイヤ送給用潤滑剤をワイヤ表面に塗布し、これら一連の処理をインラインで行なった後に、1.2mm Φの線径の製品溶接用ワイヤF としてコイル110 に巻き取り、銅めっきを有しない溶接用ソリッドワイヤを製造した。
この際、ローラダイス伸線に用いた伸線潤滑剤 (一次伸線工程、二次伸線工程とも同じ組成とすることを前提) の組成を変化させ、伸線性や製品溶接用ワイヤの特性を評価した。結果を表 1に示す。
素線は、JIS Z3312 YGW12 相当の化学成分組成を有し、引張強度500MPaの高強度鋼線材を用いた。ローラダイス (線引き装置) としては、全て、図3 および図5 に示した構造の線引き装置4 を用いた。また、全てのローラダイスを、前記したWC-Co 系超硬材料製とした。ワイヤ送給用潤滑剤は、合成油85質量% 、更に、MoS215質量% からなる潤滑剤を、ワイヤ10kg当たり1.0g塗布した。なお、MoS2は5 〜25% の含有範囲で潤滑性が有効となる。
これらの製造方法において、表1 に示すように、伸線条件を同一とした場合の、伸線用潤滑剤の組成による、ローラダイス伸線性と、溶接用ソリッドワイヤ特性への影響を評価した。
表1(後述する表2 〜4 を含めて) の伸線用潤滑剤で、ST-Na 、ST-K、ST-Ca は、各々ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸カルシウムの石鹸の意味であり、GFはグラファイト、A は亜硝酸ナトリウムと燐酸ナトリウムとを1:1 に配合した軟化点調整剤の意味である。
ここで、伸線用潤滑剤が単体の各石鹸の場合は勿論石鹸が100 質量% である。また、石鹸−軟化点調整剤A −MoS2、WS2 、BN、ZnS 、グラファイト(GF と表示) などの極圧剤グループの、3 種のグループの場合は、共通して石鹸65質量% 、軟化点調整剤A は12質量% 、極圧剤グループは総量で23質量% の組成とした。石鹸−極圧剤の2 種のグループの場合は、共通して石鹸85質量% 、極圧剤グループは総量で15質量% の組成とした。石鹸−軟化点調整剤A の2 種のグループの場合は、共通して石鹸75質量% 、軟化点調整剤A は25質量% の組成とした。
本実施例では、二次伸線において最も伸線速度が速くなるローラダイス群 (線引き装置群)405のみの前記一体型枠体の剛性を変化させた。なお、ここで、405 における図5 のように4 個配列されたローラダイス同士の枠体剛性は同じとした。この一体型枠体の剛性は、前記一体型枠体のみの引張試験における伸び量 (μm)を、図6 の引張試験装置を用いて測定した結果で表す。一次および二次伸線における、前記405 以外の他のローラダイス( 線引き装置) の前記一体型枠体の剛性は、全て、この一体型枠体の伸び量で60μm のものを使用した。これは、後述する実施例2 でも同じ条件とした。
ローラダイス伸線性の評価は、一次伸線における1 時間当たりのワイヤの伸線量を1700kg/H (伸線速度は800m/ 分) および二次伸線における1 時間当たりのワイヤの伸線量を500kg/H(伸線速度は1000m/分) と想定した際の、伸線安定性を各々評価した。即ち、上記各想定伸線量において、安定して上記所定量の伸線量が行なえたものを○、伸線を安定させるために、伸線速度を落とす必要性などが生じて、上記所定量の伸線量を下回る量しか達成できなかったものを△、安定した伸線が行なえず、全くか、ごく僅かな量しか伸線ができなかったものを×、として各々評価した。なお、一次伸線性が×のもので、特に線荒れの程度が悪いものについては、二次伸線を行なわなかった。
ワイヤ表面の打痕疵は、ローラダイスの各伸線中、あるいは各伸線後に、ワイヤ表面の打痕疵発生状況を目視観察して評価した。打痕疵発生が無いものを○、打痕疵が若干発生しているものか発生する可能性があるものを△、打痕疵が大きく発生したものを×と評価した。
製品溶接用ワイヤの特性評価は、1 時間当たりのワイヤの二次伸線量を500kg/H とした場合についてのみ行ない、軟鋼板(2.4mmt)同士の重ねすみ肉溶接時のワイヤ送給性と、溶接性 (アーク安定性) とについて評価した。
ワイヤ送給性については、市販のワイヤ供給機を用い、6mの間で2 箇所の曲がり部を有する場合のCO2 ガスシールド溶接機へのワイヤ送給性を評価した。そして、ワイヤ供給が途切れずに行なえたものを○、溶接作業中に1 〜2 回程度ワイヤ供給が途切れかけたが溶接作業は途切れずに行なえたものを△、溶接作業中に頻繁にワイヤ供給が途切れ、溶接作業が中断したものを×として評価した。なお、このワイヤ送給性が良ければ、ワイヤの真円度や径寸法などの形状精度が高精度化されていると認められる。
溶接用ワイヤのアーク安定性については、溶接作業中のアークを目視評価し、一貫してアークが安定しているものを○、一部アークが安定しなかったものを△、一貫してアークが安定しなかったものを×、と各々評価した。なお、前記したような、一次伸線性が悪く、二次伸線を行なわなかった例については、評価はせず、表では「−」とした。
溶接の条件は、溶接電流: 260 A 、溶接電圧:32V、溶接速度:70cm/min.、CO2 シールドガス25L/min.とした。これらの結果を表1 に示す。尚、これらの条件は実施例2、3でも共通である。
表1 から明らかな通り、発明例1 〜19は、ステアリン酸ナトリウムかステアリン酸カリウムの石鹸と、軟化点調整剤A および/ または、MoS2、WS2 、BN、ZnS 、GFから選択された極圧剤の本発明伸線潤滑剤範囲内の組成からなる。この結果、伸線条件が同じ例同士の比較において、ステアリン酸ナトリウムかステアリン酸カリウムの石鹸を含まない比較例20〜23に比して、概ね、銅めっきを有しない溶接用ソリッドワイヤのローラダイス伸線性と、高形状精度化の評価でもあるワイヤ送給性などの溶接性とが両者優れる。これらは、本発明組成の伸線潤滑剤が、製品の形状精度が良く、打痕疵が無いことなどを含めて、高速伸線を可能とすることを示している。また、本発明組成の伸線潤滑剤が、上記伸線潤滑剤のインライン除去によって、実質的に除去されているか、あるいは微量残留しても溶接性を阻害しないことを示している。
但し、発明例1 、2 のように、上記ステアリン酸系石鹸の単体を潤滑剤とした場合、潤滑剤の軟化点が低い。このため、一次伸線量が1700kg/Hにおける一次伸線速度が800m/ 分の場合など、より高速で伸線する場合の伸線性が、他の発明例に比して比較的劣る。
これに対して、比較例24のステアリン酸カルシウムの石鹸では、一次伸線量が1700kg/H (伸線速度が800m/ 分) の場合でも伸線性が優れるが、ワイヤ送給性に劣り、溶接部の欠陥が多く、溶接性に劣る。これは、上記伸線潤滑剤のインライン除去によっても、微量のステアリン酸カルシウムが残留し、これが上記ワイヤ送給性や溶接性を阻害したものである。したがって、以上の結果から、本発明における、伸線潤滑剤を、ステアリン酸ナトリウムかステアリン酸カリウムの石鹸とすることの意義が分かる。
また、ステアリン酸ナトリウムかステアリン酸カリウムの石鹸を含まない潤滑剤を用いた比較例20〜23は、一次伸線量が1700kg/Hの一次伸線速度が速い(800m/分) 場合、打痕疵が実際に発生しているなど、一次伸線性が劣り、二次伸線自体が困難で、使用に耐えないものであった。
更に、ローラダイスの枠体の前記伸び量が好ましい上限値150 μm の発明例19は、本発明内組成の潤滑剤を用いているものの、枠体の前記伸び量が低く( 枠体の剛性が高く) 、他は同じ条件の発明例5 に比して、伸線性が劣る。発明例19はワイヤの打痕疵までは至っていないものの、一次伸線や二次伸線において、打痕疵に到る可能性のあるワイヤの振動が若干発生していた。また、前記伸び量が好ましい上限値を越える160 μm である比較例25は、一次伸線において、ワイヤの打痕疵まで生じ、二次伸線自体ができなかった。
一方、前記伸び量が20μm である発明例18は、ローラダイスへの負荷が高まりすぎていた。このため、伸線中にローラダイスの疲労強度が低下し、WC-Co 系超硬工具製ローラダイス表面破壊が懸念されたため、伸線速度を下げざるを得なかったされた。したがって、安定して伸線できる伸線速度やワイヤ量が比較的少なかった。
一次伸線工程(B) を、素線径から減径率の総和ΣRdが50.7% となるまで、孔ダイス伸線が連続する工程とし、他は実施例1の条件と同様に、5.5 〜 2.4mmΦの各高強度鋼線材素線から1.2mm Φの銅めっきを有しない溶接用ソリッドワイヤを製造した。この際、孔ダイス一次伸線工程(B) 前の素線表面にのみ、各々の伸線用乾式固形潤滑剤を付着(塗布)させる一方、ローラダイス二次伸線工程(C) では、新たな伸線用乾式固形潤滑剤を用いず、孔ダイス一次伸線工程でワイヤ表面に残った潤滑剤のみとした。また、一次伸線工程(B) は、4 列 (個) のWC-Co 系超硬材料製孔ダイスを順に直列した孔ダイスと、この孔ダイス後段に3 列 (3 群) のローラダイスとを配置して、伸線を行なうものとした。
そして、鋼素線の孔ダイス伸線を行ない、伸線条件を同一とした場合の、伸線用潤滑剤の組成による、ローラダイス二次伸線性と、溶接用ソリッドワイヤ特性への影響を、実施例1 と同様に、測定評価した。これらの結果を表2 に示す。なお、ローラダイス二次伸線における1 時間当たりのワイヤの伸線量は実施例1と同じく500kg/H(伸線速度は1000m/分) とした。
また、伸線用潤滑剤を本発明組成内の石鹸:ST-Na、軟化点調整剤:A、極圧剤:MoS2 の3 種のグループの同一組成とし、孔ダイス伸線における鋼素線径の減径率の総和ΣRdを各々変化させた場合の、ローラダイス二次伸線性と、溶接用ソリッドワイヤ特性への影響を、実施例1 と同様に、測定評価した。これらの結果を表3 、4(表3 、4 は続き) に示す。なお、この表3 、4 の例では、各伸線工程 (分割された各伸線工程) におけるダイス列数と、このダイス列におけるローラダイスR と孔ダイスD との配列状態とを各々変えている。
このため、表3 、4 では、各伸線工程におけるダイス列数と、このダイス列におけるローラダイスR と孔ダイスD との配列状態とを各々示している。例えば、分割された伸線工程の内、一次伸線のダイス列数が7 列、二次伸線のダイス列数が 8列である場合は、一次伸線 7列+二次伸線 8列と記載している。また、伸線工程を分割しない単一の伸線工程の場合は、単一の伸線工程と記載している。更に、この各伸線工程におけるダイス配列状態を、一個のローラダイス列 (図5 の線引き装置4)を示すR と、一個の孔ダイスを示すD とを、ダイスの配列順に、ダイスの配列個数分だけ記載している。例えば、一次伸線工程の7 列のダイスが全てローラダイスの場合は、R を7 個並べてRRRRRRR と記載している。また、二次伸線工程の8 列のダイスの内、前段の7 列がローラダイスで、最後の1 列のみが孔ダイスの場合( 形状精度を上げる仕上げ伸線を孔ダイスで行なう場合) は、RRRRRRRDと記載している。また、表3 、4 において、二次伸線工程あるいは単一の伸線工程の最後の列のD は、前記図2 のような仕上げ伸線用の孔ダイス501 を示し、孔ダイスによる仕上げ伸線を施していることを表す。
これら表2 、3 、4 のローラダイス伸線性の評価と、製品溶接用ワイヤの特性評価は、実施例1 と同じ条件である。
先ず、表2 から明らかな通り、発明例26〜44は、ステアリン酸ナトリウムかステアリン酸カリウムの石鹸と、軟化点調整剤A および/ または、MoS2、WS2 、BN、ZnS 、GFから選択された極圧剤の組成からなる。この結果、伸線条件が同じ例同士の比較において、ステアリン酸ナトリウムかステアリン酸カリウムの石鹸を含まない比較例45〜48に比して、概ね、銅めっきを有しない溶接用ソリッドワイヤのローラダイス伸線性と、高形状精度化の評価でもあるワイヤ送給性などの溶接性とが両者優れる。これらは、本発明組成の伸線潤滑剤が、製品の形状精度が良く、打痕疵が無いことなどを含めて、高速伸線を可能とすることを示している。また、本発明組成の伸線潤滑剤が、上記伸線潤滑剤のインライン除去によって、実質的に除去されているか、あるいは微量残留しても溶接性を阻害しないことを示している。
但し、発明例26、27のように、上記ステアリン酸系石鹸の単体を潤滑剤とした場合、潤滑剤の軟化点が低い。このため、伸線量が500kg/H における伸線速度が1000m/分の場合など、より高速で伸線する場合の伸線性が、他の発明例に比して比較的劣る。
これに対して、比較例49のステアリン酸カルシウムの石鹸では、二次伸線量が500kg/H (二次伸線速度が1000m/分) の場合伸線性が優れる。しかし、ワイヤ送給性に劣り、溶接部の欠陥が多く、溶接性に劣る。これは、上記伸線潤滑剤のインライン除去によっても、微量のステアリン酸カルシウムが残留し、これが上記溶接性を阻害したものである。
また、ステアリン酸ナトリウムかステアリン酸カリウムの石鹸を含まない潤滑剤を用いた比較例45〜48は、伸線量が1700kg/Hの伸線速度が速い(800m/分) 場合、打痕疵が実際に発生しているなど、一次伸線性が劣り、二次伸線自体が困難で、使用に耐えないものであった。
したがって、以上の結果は、実施例1 と同様の傾向を示しており、これらの結果から、本発明における、伸線潤滑剤を、ステアリン酸ナトリウムかステアリン酸カリウムの石鹸とすることの意義が分かる。そして、これらの結果は、素線径が5.5mm Φ、2.2mm Φと異なる場合でも同じである。
更に、ローラダイスの枠体の前記伸び量が好ましい上限値150 μm の発明例44は、本発明内組成の潤滑剤を用いているものの、枠体の前記伸び量が低く( 枠体の剛性が高く) 、他は同じ条件の発明例30に比して、伸線性が劣る。発明例44はワイヤの打痕疵までは至っていないものの、一次伸線や二次伸線において、打痕疵に到る可能性のあるワイヤの振動が若干発生していた。また、前記伸び量が好ましい上限値を越える160 μm である比較例50は、一次伸線において、ワイヤの打痕疵まで生じ、二次伸線自体ができなかった。
一方、前記伸び量が20μm である発明例43は、ローラダイスへの負荷が高まりすぎていた。このため、伸線中にローラダイスの疲労強度が低下し、WC-Co 系超硬工具製ローラダイス表面破壊が懸念されたため、伸線速度を下げざるを得なかった。したがって、安定して伸線できる伸線速度やワイヤ量が比較的少なかった。
次に、表3 、4 から明らかな通り、孔ダイス伸線における鋼素線径の減径率の総和ΣRdが0.5 〜78% の範囲にある発明例51〜77は、前記減径率の総和ΣRdが78% を越える発明例78〜84に比して、概ねローラダイス伸線性と溶接用ソリッドワイヤ特性とが両者優れる。そして、これらの結果からも、孔ダイス伸線後のワイヤ表面の乾式固体潤滑剤の付着量と密着性とが、ローラダイス伸線時の潤滑必要量からして、概ね満足していると判断される。
但し、発明例55、69のように、前記減径率の総和ΣRdの上限値か、この上限値に近い例では、前記減径率の総和ΣRdが高いほど、特に伸線速度が速くなるワイヤ二次伸線量が500kg/H では、他の条件が同じ他の発明例に比して、伸線性が低下している。これらの結果から、発明例55、69では、孔ダイス一次伸線後の乾式固体潤滑剤の密着性か、または付着量とが、ローラダイス二次伸線時の潤滑必要量からして、不足していると判断される。
これに対して、発明例78〜84は、孔ダイス伸線時の前記減径率の総和ΣRdが78% を越えるために、孔ダイス伸線時に消費される乾式固体潤滑剤量が多くなり、ローラダイス伸線時の必要乾式固体潤滑剤量が不足したものである。したがって、本発明において、孔ダイス伸線をローラダイス潤滑剤塗り込めるために用いる場合、ローラダイス二次伸線に必要な乾式固体潤滑剤の量と密着性とに、孔ダイス伸線の前記減径率の総和ΣRdが大きく影響することが分かる。また、ローラダイス伸線に必要な乾式固体潤滑剤の量と密着性とが、前提条件として、前記減径率の総和ΣRdが78% 以下の領域で達成できることが分かる。
また、他に、表4 から分かることとして、比較例85は、前記減径率の総和ΣRdが100.0%であり、実質的に、孔ダイス一次伸線にて、製品径まで伸線している。このため、ワイヤ二次伸線量が500kg/H の場合は不可能となっている。これは、前記した通り、ローラダイスに比して、孔ダイスの伸線可能速度が著しく遅いからである。
したがって、以上の結果は、上記表2 や、実施例1 と同様の傾向を示しており、これらの結果から、本発明における、伸線潤滑剤を、ステアリン酸ナトリウムかステアリン酸カリウムの石鹸とすることの意義が分かる。そして、これらの結果は、素線径が5.5mm Φ、3.2mm Φ、2.8mm Φ、2.4mm Φと異なる場合でも同じである。
本発明によれば、銅めっきを有しない溶接用ソリッドワイヤの製造において、鋼素線を全てローラダイスにて製品径若しくは製品径直前のワイヤ径まで高速で伸線するとともに、この伸線工程や、伸線潤滑剤の洗浄工程、溶接用ワイヤ送給用の潤滑剤を塗布する工程などを含めて、これらの工程を全てインラインで連続的に行なう、高効率の製造方法を提供できる。したがって、軟鋼ソリッドワイヤだけでなく、ハイテン、合金鋼、ステンレス鋼などの、より高強度の、銅めっきを有しない溶接用ソリッドワイヤの伸線高速度化に適用できる。
本発明の一実施態様を示すフロー図である。 図1の工程図である。 本発明に用いるローラダイス線引き装置の一例を示す正面図である。 図3の要部を示す正面図である。 本発明に用いるローラダイス線引き装置の使用態様を示す正面図である。 図6(a)はローラダイス一体型枠の引張試験装置を示す正面図、図6(b)は図6(a)における試験用枠体を示す平面図である。
符号の説明
1:ローラダイス、2:ローラ、3:型孔、4:線引き装置 (列) 、5:ワイヤ、
6: ローラ軸、7:ベアリングボックス、8:ベアリング固定用梁、9:枠体、
10: ボルト、11: 調整ボルト、12: 調整ボルト、13: 調整ボルト、
20: 引張試験装置、21: 引張試験機、22: 基台、23: ボルト、24: 枠体、
100:素線コイル、201 〜206 、401 〜405 : ローラダイス線引き装置 (列) 、
106:ワイヤコイル、107:ワイヤ、108:洗浄装置、109:塗油装置、501:孔ダイス、110:製品溶接用ワイヤコイル、111:キャプスタン

Claims (7)

  1. 鋼素線をローラダイスにて製品径ワイヤまで伸線する銅めっきを有しない溶接用ソリッドワイヤの製造方法において、伸線用乾式固形潤滑剤として、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウムから選択された1 種または2 種の石鹸を用い、伸線後のワイヤ表面から前記潤滑剤を除去した後、この伸線ワイヤ表面に溶接用ソリッドワイヤ送給用潤滑剤を塗布する工程を、前記伸線と同じ工程で行なうことを特徴とした溶接用ソリッドワイヤの製造方法。
  2. 鋼素線を製品径直前までローラダイスにて伸線し、円形を整える目的のために孔ダイスで仕上げ伸線を行なう請求項1に記載の溶接用ソリッドワイヤの製造方法。
  3. 前記ローラダイスによる伸線の前工程または中間段階で、減径率の総和ΣRdが0.5 〜78% の範囲となる孔ダイス伸線を行ない、この孔ダイス伸線によって、後段のローラダイス伸線にて新たな乾式固体潤滑剤を塗布することなく伸線が可能なように、前記乾式固体潤滑剤をワイヤ表面に塗り込める請求項1または2に記載の溶接用ソリッドワイヤの製造方法。
  4. 前記ローラダイスを支持する枠体に対し、ローラダイスの線引き荷重方向に10000Nの引張荷重を付加して拡張した際の、枠体の伸び量が20〜150 μm の範囲の高剛性を前記枠体が有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の溶接用ソリッドワイヤの製造方法。
  5. 前記伸線用乾式固形潤滑剤が、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウムから選択された1 種または2 種の石鹸に、燐酸ナトリウム、硼酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、燐酸カリウム、硼酸カリウム、亜硝酸カリウム、炭酸カリウムから選択された1 種または2 種以上の軟化点調整剤を含有させたものである請求項1乃至4のいずれか1項に記載の溶接用ソリッドワイヤの製造方法。
  6. 前記伸線用乾式固形潤滑剤が、MoS2、WS2 、BN、ZnS 、グラファイトから選択された1種または2種以上の極圧剤を含有させたものである請求項1乃至5のいずれか1項に記載の溶接用ソリッドワイヤの製造方法。
  7. 前記溶接用ソリッドワイヤ送給用潤滑剤として、植物油、動物油、鉱物油および合成油の1 種または2 種以上からなる油分に、MoS2、WS2 、ZnS 、グラファイトから選択された1 種または2 種の固形潤滑剤を含有させた潤滑剤を用いる請求項1乃至6のいずれか1項に記載の溶接用ソリッドワイヤの製造方法。
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