JP2005290467A - 溶融金属形成用Ti系線材の製造方法及び溶融金属形成用Ti系線材 - Google Patents

溶融金属形成用Ti系線材の製造方法及び溶融金属形成用Ti系線材 Download PDF

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Abstract

【課題】 自然酸化膜よりも厚いTi系酸化膜を有しているにもかかわらず、線材の全酸素含有量を十分低減でき、ひいては該全酸素含有量を規格範囲内に容易に収めることができる溶融金属形成用Ti系線材を提供する。
【解決手段】 先端側から順次加熱溶融してTi系金属からなる溶融金属を形成するための溶融金属形成用Ti系線材であって、線材本体3がTi系金属にて構成され、該線材本体3の表面に自然酸化膜よりも厚いTi系酸化膜2が形成される。線材全体の全酸素含有率WOに規格上限値WOmaxが定められてなり、また全酸素含有率WOのうち、Ti系酸化膜2による酸素含有率への寄与をWOとして、該WOよりも大きい本体酸素上限調整代ΔWOを設定し、線材本体3の酸素含有率WOをWOmax−ΔWO以下に調整する。
【選択図】 図2

Description

本発明は、溶接や溶射等において溶融金属を形成するために使用されるTi系線材に関する。
欧州特許公開EP1277539A1号公報
Ti金属あるいはTi合金からなるTi系金属部材の溶接に際しては、工業用Ti系線材を用い、かつ活性金属であるTiの酸化を防止するために、溶接部位を不活性ガスで覆ってアーク溶接を行なうシールドアーク溶接が採用される。例えば、MIG溶接(Metal Inert Gas Arc Welding)においては、図14に示すように、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスIG雰囲気中で溶接用Ti系線材201と純チタン製又はチタン合金製母材WPとの間にアークARを発生させる。そして、送給ローラ202によって線材201の先端部をアークAR内に送給して溶融させながら溶接する。なお、符号205は先端から不活性ガスIGを噴出させるガスノズル(トーチ)であり、基端側に柔軟性を有するコンジットチューブ204を備える。符号206はトーチ205に固定され線材201を保持するとともに線材201に電流を供給する電極チップ(コンタクトチップ)であり、WMは溶接ビード、MPは溶融池である。MIG溶接によれば高能率化とともに、溶融エネルギーの向上により溶け込みが深くなって溶接不良の発生が抑えられ、また、トーチ205先端部が小型になって狭い場所での溶接が容易となる利点がある。
他方、大型部材の耐食性被覆等を目的として、Ti系金属の被覆層を溶射法にて形成することが行われている。この溶射の分野においては、上記溶接と同様のTi系線材を用い、溶射法、例えばアーク溶射法により溶射層を形成することが行われている。アーク溶射法は、2本のTi系線材を通電用のホルダに並行送給し、線材先端間にアーク放電ギャップを形成して溶融金属を作り、これを窒素やアルゴン等の不活性ガス、あるいは空気を媒体として噴射することにより、被処理物表面に溶射層を堆積させるようにする方法である。Ti系線材は、溶接の場合と同様に、コンジットチューブを介して溶射ガンに送給される。
ところで、近年ではTi溶接工程の高能率化及び溶接施工の短納期化を目指すため、線材201の送給速度はますます高速化する傾向にある。この場合、線材201の表面とコンジットチューブ204との間の摩擦力が大きいと、線材201の送給がスムーズになされなくなり、最悪の場合コンジットチューブ204内で線材201に詰まりや座屈が発生するおそれがある。
特に、従来の溶接用Ti系線材の場合、線材の表面を機械的あるいは化学的に研磨して、金属光沢仕上げとすることが行なわれているが、このような処理を施した線材は表面が粗く送給性に劣る難点がある。また、金属光沢状の外観を有する線材は、溶接時のアークの安定性が見かけほどには良好でなく、自動溶接機を用いたMIG溶接では、アークが安定点を求めて細かく移動するため、良好なビード形状が得られない問題がある。これは、送給速度が不安定化すると、溶融する線材先端と溶接される母材との間の距離が微妙に変化することも関係していると思われる。
なお、Fe系部材のMIG溶接においてはFe系溶接線材の表面に、摩擦低減のためにCuメッキを施したり、潤滑油を塗布したりすることが行なわれている。しかしながら、活性金属であるTiの溶接の場合、線材表面にCuメッキを施したり潤滑油を塗布したりすることは、脆弱なCu−Ti系金属間化合物や炭化物の形成により、溶接継手強度の低下を招くので採用することができない。他方、溶接時のアークの安定化を図る方法としては、シールドガス中に炭酸ガスや酸素を導入する方法が古くから採用されているが、この方法はシールドガスからの溶接ビードへの酸素の吸収が大きく、Ti溶接の場合は溶接継手の伸びの低下につながるため好ましくない。
また、Ti溶射を行なう場合においても、基本的には溶接の場合と同様の問題が生ずる。例えばアーク溶射の場合、2本のTi系線材間にアーク形成することから、一方の線材の供給速度が乱れるだけでもアーク放電ギャップ間隔が変化して、アークが不安定化する。従って、アーク安定性の問題は、溶接の場合よりもより生じやすいといえる。そこで、特許文献1には、Ti金属もしくはTiを主成分とするTi合金にて構成されるとともに、自然酸化膜よりも厚い酸素濃化層が線材表面に形成された溶接ないし溶射用のTi系線材が開示されている。このような酸素濃化層を有したTi系線材を用いることにより、コンジットチューブ等を介した線材の送給性を大幅に向上することができ、アークの安定性も大幅に改善することができる。
ところで、溶接用や溶射用に用いるTi系線材には、該線材を用いて形成される構造体の信頼性向上のために、酸素含有率の上限が規格により制限されていることが多い。例えばJIS;Z3331(2002)は、工業用純Tiワイヤの酸素含有率の上限値を規格品種毎に定めている。上記JIS規格の解説には、酸素含有率に規格上限を設ける理由として、チタン溶接中に吸収される酸素が極めて有害である反面、チタン母材中の酸素がチタン材料の引張強さを高める有用性についても説かれ、目的とする溶接継手の仕様に応じて、定められた酸素を含有するワイヤを使用することが重要であると結論付けている。
従って、チタン線材の購入者は使用目的に合致した規格を参照し、その規格に適合した線材を製造者から購入することになる。当然、販売しようとする線材の酸素量を規格内に収めることは、製造者にとって、顧客に対し果たすべき最重要の責任項目となることはいうまでもない。顧客が線材を購入しようとするとき、その線材の酸素含有量が規格を充足していなければ、たとえ性能面で全く問題を生じないものであっても、購入を見合わせるのは当然であるといえよう。
この場合、最終的に得るべき線材に形成される酸化膜が自然酸化膜程度のごく薄いものであれば、線材の製造者は、最終的に供給するTi系線材の対象規格を参照し、該対象規格の上限値以下に酸素含有率が収まっているTi母材を素材として、これを線材に加工することを考えればよかった。なぜなら、主要工程である伸線工程では、線材全体の酸素量が大幅に増加する懸念が本質的に存在せず、また焼鈍工程が含まれる場合でも最終工程において、表層に形成された酸化層を研磨または酸洗等により除去するようにしていたからである。しかし、特許文献1に開示されているTi系線材には、当該出願以前には知られていなかった構成要件として、線材の送給性及びアークの安定性改善のために、自然酸化膜よりも厚いTi系酸化膜が形成される。このような厚い酸化膜が形成されれば、従来のごとく、線材に加工する前のTi母材の段階で酸素含有率が規格上限値以内に収まっていても、Ti系酸化膜を厚く形成すると、その酸化膜により上乗せされる酸素含有率がもはや無視できなくなり、該Ti系酸化膜を含めた線材全体としての酸素含有率が規格上限値を超えてしまうこともありえる。
本発明の課題は、自然酸化膜よりも厚いTi系酸化膜を有しているにもかかわらず、線材の全酸素含有量を十分低減でき、ひいては該全酸素含有量を規格範囲内に容易に収めることができる溶融金属形成用Ti系線材と、その製造方法とを提供することにある。
課題を解決するための手段及び発明の効果
上記の課題を解決するために、本発明の溶融金属形成用Ti系線材は、先端側から順次加熱溶融してTi系金属からなる溶融金属を形成するための溶融金属形成用Ti系線材であって、線材本体がTi系金属にて構成され、該線材本体の表面に自然酸化膜よりも厚いTi系酸化膜が形成されてなり、
線材全体の全酸素含有率WOに規格上限値WOmaxが定められてなり、また全酸素含有率WOのうち、Ti系酸化膜による酸素含有率への寄与をWOとして、該WOよりも大きい本体酸素上限調整代ΔWOを設定し、線材本体の酸素含有率WOをWOmax−ΔWO以下に調整したことを特徴とする。
また、本発明の溶融金属形成用Ti系線材の製造方法は、上記本発明の溶融金属形成用Ti系線材の製造方法であって、
最終的に得るべき線材全体の全酸素含有率WOに規格上限値WOmaxが定められてなり、また全酸素含有率WOのうち、Ti系酸化膜による酸素含有率への寄与をWOとして、該WOよりも大きい本体酸素上限調整代ΔWOを設定し、
酸素含有率WOがWOmax−ΔWO以下に調整されたTi系金属からなる加工前線材を用意して、該加工前線材の表面に自然酸化膜よりも厚いTi系酸化膜を形成するTi系酸化膜形成工程と、
該Ti系酸化膜を形成した加工前線材を冷間伸線加工する冷間伸線加工工程と、
を有することを特徴とする。
なお、本明細書において「Ti系金属」とは、Ti金属もしくはTiを主成分(50質量%以上)とするTi合金のことをいう。また、Ti系酸化膜とは、カチオン元素の50質量%以上がTiである酸化物被膜のことをいう。さらに、「主成分」とは質量含有量の最も高い成分のことをいい、2種以上の成分からなる「主成分」とは、それらの成分の合計質量含有量が、他の成分の全てに対し、各単独の質量含有量を上回っていることをいう。
自然酸化膜よりも厚いTi系酸化膜を有したTi系線材を用いることにより、コンジットチューブ等を介した線材の送給性を大幅に向上することができ、アークの安定性も大幅に改善することができる。
そして、本発明の溶融金属形成用Ti系線材においては、線材全体の全酸素含有率WOに規格上限値WOmaxが定められてなり、また全酸素含有率WOのうち、Ti系酸化膜による酸素含有率への寄与をWOとして、該WOよりも大きい本体酸素上限調整代ΔWOを設定し、線材本体の酸素含有率WOをWOmax−ΔWO以下に調整する。また、これを製造するために、酸素含有率WOがWOmax−ΔWO以下に調整されたTi系金属からなる加工前線材を用意して、該加工前線材の表面に自然酸化膜よりも厚いTi系酸化膜を形成し、該Ti系酸化膜を形成した加工前線材を冷間伸線加工する。つまり、Ti系酸化膜の形成による酸素増加代を相殺・補償する本体酸素上限調整代ΔWOを設定し、母材となるTi系金属(得られる線材において、線材本体となる部分)として、始めから規格上限値WOmaxよりもΔWOだけの酸素含有率を低く調整したものを使用する。これにより、自然酸化膜よりも厚いTi系酸化膜を形成しても、線材本体の酸素含有率が低く抑えられているので、線材の全酸素含有量を十分低減でき、ひいては該全酸素含有量を規格上限値WOmax以下に容易に収めることができる。
本発明の適用される溶融金属形成用Ti系線材の、線材長手方向の引張強度は線径をDとすると、
Smin=−230D+850 (単位:MPa)
Smax=−620D+2000 (単位:MPa)
にて表されるSmin以上Smax以下の範囲内のものとするのがよい。そして、これと関連して、最終的に得られる溶融金属形成用Ti系線材のTi系酸化膜の膜厚は、1μm以上5μm以下とすることが望ましい。その理由は以下の通りである。
まず、前述のごとく、線材の引張強度が過度に小さいと、送給時に線材がコンジットチューブ等の内部で座屈変形を起しやすくなり、線材詰まり等の不具合を引き起こしやすくなる。他方、線材の引張強度が過度に大きいと線材の可撓性が不足し、コンジットチューブ等による曲がった経路に沿った線材のスムーズな送給が妨げられる場合がある。また、コンジットチューブ等の経路形成部材の屈曲が特に大きくなる部分では、剛性の高い線材との干渉のため、経路形成部材の内面が齧られたりする不具合も生じやすくなる。そこで、上記の不具合を抑制するために、線材の長手方向の引張強度は、線材の座屈強度を考慮して、線径に応じた上記範囲に規定するのがよいのである。
具体的には、自然酸化膜よりも厚いTi系酸化膜を、線材本体表面の酸化熱処理により形成したのち、適切な加工率(減面率)で冷間伸線加工することにより線材長手方向の引張強度を前述のSmin以上Smax以下の範囲にコントロールすることが可能となる。加工前線材の表面に形成してあるTi系酸化膜は、冷間伸線加工時において線材と伸線用ダイスとの間の潤滑機能を一部担うことにもなるが、該Ti系酸化膜が薄すぎると、この潤滑効果が不足して線材表面にダイスマークが深く刻まれやすくなり、不良の原因となる。他方、Ti系酸化膜が過度に厚すぎると、Ti系酸化膜の延性は本来あまり高くないことから、伸線用ダイスを通したときにTi系酸化膜の剥離を生じやすくなり、線材の全長にわたって均一なTi系酸化膜の被覆状態を得にくくなる。Ti系酸化膜は、延性が低いことに加え、下地となる線材本体との間の熱膨張係数の差も大きいため、膜厚が増加したときの密着力の低下が著しく、線材の繰り出し時やコンジットチューブ内での送給時にTi系酸化膜の脱落が生じやすい。また、冷間伸線加工によって相当量のクラックを生じてしまうこともある。クラックが著しく発生するとクラック内部に伸線時の潤滑剤などが残留しやすくなり、溶融金属中にそれらの不純物が混入する恐れがある。そこで、上記の不具合を抑制するために、溶融金属形成用Ti系線材(加工済み線材)のTi系酸化膜の厚さは1μm以上5μm以下に規定するのがよい。
以上をまとめると、長手方向の引張強度が前述のSmin未満では、線材の剛性不足により送給時の座屈変形、ひいてはコンジットチューブ等の内部での線材詰まり等を招きやすくなる。また、線材の長手方向の引張強度が前述のSmaxを超えると、曲がった経路に沿った線材のスムーズな送給が妨げられ、特に屈曲の大きい部位では、コンジットチューブ等の経路形成部材の内面が齧られたりする不具合を生じやすくなる。従って、線材の引張強度はSmin以上Smax以下の範囲に調整する必要があるが、このような強度のTi系線材は冷間伸線加工の加工率(減面率)を調整してやれば製造可能である。そして、Ti系酸化膜の厚さが1μm未満になると、伸線加工時の潤滑効果が不足して、得られる線材表面にダイスマークが深く刻まれ、線材表面の摩擦係数を悪化させる原因となる。他方、Ti系酸化膜の厚さが5μmを超えると、伸線用ダイスを通したときにTi系酸化膜の剥離を生じやすくなり、線材の全長にわたって均一なTi系酸化膜の被覆状態を得にくくなる。また、Ti系酸化膜と線材本体表面との密着性が低下し、線材使用時にTi系酸化膜の脱落が生じやすくなったり、クラックが著しく発生して伸線時に潤滑剤が残留しやすくなる。従って、Ti系酸化膜の厚さは1μm以上5μm以下とされ、これによって線材本体の表面に平滑で均一なTi系酸化膜を形成することが可能となる。この場合、Ti系酸化膜(自然酸化膜よりも厚い部分)による金属本体表面の被覆面積率は70%以上、望ましくは80%以上となっているのがよい。
なお、冷間伸線加工後において、線材本体に付加される熱履歴を300℃以下に留めることが望ましい。300℃を超える熱履歴が加わると、線材表面に密着性の劣る新たなTi系酸化膜が生成する惧れがある。また、熱履歴が300℃以下であれば、線材の引張強度はほとんど低下しない。線材本体に付加される熱履歴は、より望ましくは200℃以下に留めるのがよい。
溶融金属形成用Ti系線材として一般に多用される線径は、0.6mm以上2.0mm以下の範囲である場合、上記のごとく線材長手方向の引張強度を前述のSmin以上Smax以下の範囲とし、線材本体の表面にTi系酸化膜を1μm以上5μm以下の厚さにて形成する場合、線材本体(母材となるTi系金属)の酸素含有率WOは、WOmax−0.05(質量%)以下に設定することが、線材全体の酸素含有率を、規格上限値WOmax以下に確実に調整する観点において望ましい。
JIS(日本工業規格)の場合、そのZ3331(2002)には、ティグ溶接、ミグ溶接などのイナートガス溶接に使用するチタン及びチタン合金溶加棒とソリッドワイヤについての規定がなされ、その酸素含有率の上限値WOmaxが規格番号毎に、0.1質量%以上0.35質量%以下の範囲で個別に設定されてなり、該WOmax−ΔWO以下に酸素含有率が調整されたTi系金属を線材本体(母材となるTi系金属)の材料として用いることで、上記JISの酸素含有率の上限を満たした線材を容易に製造することができる。上記JISに開示されたTiワイヤの規格番号と、線材組成を表1に示す。
上記のように線材本体の酸素量を規制することで、線材全体の酸素量を、規格上限値WOmax以下に容易にコントロールできる。この場合、母材となるTi系金属として酸素偏析の少ないものを使用すれば、線材本体の長手方向の酸素量バラツキも抑制でき、線材の全長にわたって酸素含有率を規格上限値WOmax以下に制御できる。この場合、線材全体にわたって任意の単位長部分の全酸素含有率WOが規格上限値WOmax以下に制御されていることが望ましい。(例えば線材1kg単位ごとに分析して確認)
伸線加工時には、伸線ダイス内面と線材表面との潤滑を考慮する必要がある。Ti系酸化膜は、コンジットチューブとの内面摩擦低減効果を有していることから明らかな通り、表面が比較的平滑であり、伸線時の摩擦低減効果も多少は有しているが、それ単独では十分でなく、潤滑剤や前処理皮膜が必要となる。自然酸化膜よりも厚いTi系酸化膜を形成したTi系線材に冷間伸線加工を施すと、Ti系酸化膜にはクラックが生じやすく、このクラックに潤滑剤が保持されて残留しやすくなる。このような線材を用いて形成される溶接ビードや溶射層には、潤滑剤成分が不純物として混入し、強度や耐食性に悪影響を及ぼす可能性がある。また、こうした潤滑剤成分は、例えば金属せっけんの場合は、カルボン酸分子構造部分に酸素、炭素及び水素などを含む。従って、線材本体の酸素量を規制しても、該潤滑剤からの酸素が残留すれば、線材全体の酸素含有率を規格上限値内に収めることが難しくなる場合がある。また、Ti系酸化膜の形成とは無関係な、炭素や水素などの不純物が潤滑剤成分の形で残存すれば、線材全体の炭素含有率や水素含有率も規格上限値(表1参照:例えば水素の規格上限値は0.008質量%以上0.02質量%以下の範囲で設定され、炭素の規格上限値は0.03質量%以上0.1質量%以下の範囲で設定されている)内に収めることが難しくなる場合がある。
従って、(伸線後に)Ti系酸化膜に形成されるクラックの面積率は20%以下となるように制御することが望ましい。該クラックの面積率は、形成するTi系酸化膜の厚さと、伸線加工の減面率とによって調整できる。クラックの面積率はなるべく小さいほうが望ましいが、そのためにTi系酸化膜の厚さを減らしすぎれば、線材の送給性やアークの安定性向上といった効果が不十分になるし、伸線加工の減面率を小さくしすぎれば線材の製造能率の大幅な低下を招くので、こうした不具合が生じないように下限値は適宜定められることとなる。
加工前線材の表面にTi系酸化膜を1μm以上5μm以下の厚さにて形成し、該Ti系酸化膜表面に潤滑剤を付与する潤滑剤付与工程を実施するとともに、冷間伸線加工工程において、潤滑剤付与した加工前線材を、伸線ダイスを通すことにより、該伸線ダイスの内面と加工前線材の表面とを潤滑剤により潤滑しつつ冷間伸線加工を行なう場合、冷間伸線加工が終了した加工済み線材において、Ti系酸化膜上に残留した潤滑剤を、冷間伸線加工時にクラック内に保持された潤滑剤とともに除去する潤滑剤除去工程を実施することができる。クラック内の潤滑剤を十分に除去すれば、該線材を用いて形成される溶接ビードや溶射層への不純物としての混入も抑制できるので、該溶接ビードや溶射層の強度や耐食性に悪影響を与えることがない。さらに、金属せっけんなどの潤滑剤成分の残留が少なくなることで、該潤滑剤からの残留酸素も少なくなり、線材全体の酸素含有率を規格上限値内に収めることがより容易になる。また、Ti系酸化膜の形成とは無関係な、炭素や水素などの潤滑剤に含まれる不純物も潤滑剤残留量が減ることで減少でき、線材全体の炭素含有率や水素含有率も規格上限値(表1参照:例えば水素は0.008質量%以上0.02質量%以下、炭素は0.03質量%以上0.1質量%以下)内に容易に収めることができる。
クラック内に保持された潤滑剤を除去する際に、線材の表面に強い摩擦が作用すると、形成したTi系酸化膜に剥離を生ずる恐れがある。そこで、その剥離をなるべく抑制するために、加工済み線材を洗浄液中に浸漬して洗浄することが望ましい。潤滑剤除去工程は、より具体的には、加工済み線材を洗浄液中にて浸漬する洗浄工程と、洗浄液を除去する水洗または湯洗工程を有するものとして実施することが有効である。なお、洗浄効果を高めるために線材よりも軟質の拭き取り媒体にて摩擦することも可能であるが、酸化膜の剥離を招かないように十分に注意する必要がある。洗浄等が終了した最終的な線材は、前述の潤滑剤残留の不具合を顕在化させないために、潤滑剤の残留量が線材10kg当たり1g以下(ゼロgを含む)となっていることが望ましい。
また、線材の送給性やアークの安定性向上といった効果を顕著にするには、Ti系酸化膜による金属本体表面の被覆面積率を70%以上、望ましくは80%以上確保する必要がある。このような面積被覆率を達成するには、冷間伸線加工時の減面率を20%以上70%以下に調整することが望ましい。減面率が20%未満になると、線材にビビリや波打ちが発生しやすくなったり、寸法が不安定となったりしてアーク安定性を低下させる原因となる。また、純Ti線材などの場合、加工により導入される歪が十分でなくなり、線材長手方向の引張強度を前述のSmin以上に確保することが難しくなる。さらに、Ti系酸化膜の金属本体への食い込み力を高める効果、ひいては膜の密着性改善効果も期待できなくなるため、結果としてTi系酸化膜の被覆率を悪化させる結果を招くことがある。一方、減面率が70%を超えると、得られる溶融金属形成用Ti系線材のTi系酸化膜に形成されるクラックが20%を超える可能性が高まり、潤滑剤が多量に残留しやすくなるという不具合につながる。
なお、得られる線材のTi系酸化膜の厚さが上記のごとく1μm以上5μm以下と比較的薄い場合、酸化熱処理による形成時間は短くて済む。従って、加工前線材をストランド状態で酸化処理炉内に搬送して、該加工前線材の表面を酸化処理することによりTi系酸化膜を形成する方法を採用することが可能である。線材を酸化処理炉内に比較的大きな速度で連続的に搬送しながら酸化熱処理を行なうことができるので、Ti系酸化膜の形成処理を能率的に行なうことができ、また、ストランド状態で酸化熱処理を行なうので、Ti系酸化膜を線材表面に均一に形成することができる。
本発明の溶融金属形成用Ti系線材においては、Ti系酸化膜の厚さTwと線径Dwとの比Tw/Dwが、0.3×10−3〜1×10−1の範囲に調整されていることが望ましい。Ti系酸化膜の厚さTwと線径Dwとの比Tw/Dwが0.3×10−3(線径Dwの0.03%)未満になると、送給性改善効果が不十分となる。また、アークが不安定化しやすくなり、均一な溶接ビードや溶射層を形成する上で不利となる。他方、Tw/Dwが1×10−1(線径Dwの10%)以上とすることは、溶融金属への酸素混入比率が高くなり、溶接継手の機械的特性低下などの弊害につながる場合がある。なお、アーク安定化効果をより顕著なものとするためには、Ti系酸化膜の厚さTwと線径Dwとの比Tw/Dwを、1×10−3〜50×10−3の範囲に調整することがより望ましい。なお、Ti系酸化膜の厚さは以下のようにして特定することができる。すなわち、線材の断面を鏡面研磨し、EPMA(Electron Probe Micro Analysis)により酸素濃度分布を面分析するとともに、酸素濃度が7質量%以上となる周縁領域をTi系酸化膜として特定する。
本発明の溶融金属形成用Ti線材は、溶融金属として溶接金属を形成する溶接用Ti線材として使用することができる。また、溶融金属として溶射金属層を形成する溶射用Ti線材として使用することもできる。
また、本発明の溶融金属形成用Ti系線材はTiを主成分とするものである。本明細書にて「Tiを主成分とする」とは、最も含有率の高い成分がTiであることを意味し、望ましくは50質量%以上をTiとする。Ti合金を採用する場合、得られる溶接部や溶射層の強度あるいは延性向上等を目的として、種々の添加元素を副成分として含有させることができる。以下、採用可能な添加元素の例と望ましい添加量の範囲とを示す。
(1)Al:9質量%以下
AlはTiの低温相であるα相を安定化させるとともに、α相中に固溶してこれを強化する働きを有する。ただし、その含有量が9質量%を超えると、TiAl等の中間相(金属間化合物)が多量に形成され、靭性あるいは延性が阻害されることにつながる。他方、上記効果を顕著なものとするためには、1質量%以上は添加することが望ましく、より望ましくは2〜8質量%の範囲で添加するのがよい。
(2)N及びOの少なくともいずれか:合計で0.5質量%以下
N及びOも、Alと同様のα相安定化及び強化元素として機能し、特にOの添加効果が顕著である。ただし、その合計含有量が0.5質量%を超えると、靭性あるいは延性が阻害されることにつながる。他方、上記効果を顕著なものとするためには、合計で0.03質量%以上は添加することが望ましく、より望ましくは、合計で0.08〜0.2質量%の範囲で添加するのがよい。なお、ここでの酸素含有量は、いずれも、Ti系酸化膜以外の内層部の酸素含有量を意味する。
(3)V、Mo、Nb及びTaの1種又は2種以上:合計で45質量%以下
これらの元素は、いずれもTi高温相であるβ相の安定化元素であり、熱間加工性の向上と、熱処理性改善による高強度化を図る上で有効である。ただし、これらの元素はいずれも高比重かつ高融点であり、過剰な添加はTi合金特有の軽量及び高比強度の効果を損なわせることにつながるほか、合金融点の上昇により溶製による製造の困難化を招来するので、合計添加量の上限を45質量%とする。他方、上記効果を顕著なものとするためには、合計で1質量%以上は添加することが望ましい。また、MoやTaは、合金の耐食性改善のために少量添加される場合もある。
(4)Cr、Fe、Ni、Mn及びCuの1種又は2種以上:合計で15質量%以下
これらの元素もβ相の安定化効果を有し、熱間加工性の向上と、熱処理性改善による高強度化を図る上で有効である。ただし、いずれもTiとの間に中間相(例えば、TiCr、TiFe、TiNi、TiMnあるいはTiCuなど)を形成しやすく、過剰な添加は延性及び靭性を損なわせることにつながるために、合計添加量の上限を15質量%とする。他方、上記効果を顕著なものとするためには、合計で0.5質量%以上は添加することが望ましい。また、Niは合金の耐食性改善のために少量添加される場合もある。
(5)Sn及びZrの少なくともいずれか:合計で20質量%以下
これらの元素はα相とβ相との双方を強化する中性形添加元素として知られる。ただし、過剰な添加は効果の飽和を招くため、合計添加量の上限を20質量%とする。他方、上記効果を顕著なものとするためには、合計で0.5質量%以上は添加することが望ましい。
(6)Si:0.7質量%以下
合金の耐クリープ性(クリープラプチャ強度)を増し、耐熱性改善効果を有する。ただし、過剰な添加はTiSi等の金属間化合物の形成により、クリープラプチャ強度あるいは延性の低下を却って引き起こすため、添加量の上限を0.7質量%とする。他方、上記効果を顕著なものとするためには、0.03質量%以上は添加することが望ましく、より望ましくは、0.05〜0.5質量%の範囲で添加するのがよい。
(7)Pd及びRuの少なくともいずれか:合計で0.5質量%以下
合金の耐食性を改善する効果を有する。ただし、いずれも貴金属であり高価なことから、効果の飽和等も考慮して添加量の上限を0.5質量%とする。他方、上記効果を顕著なものとするためには、0.02質量%以上は添加することが望ましい。
具体的な合金組成として、以下のようなものを例示できる(なお、組成に関しては、主成分元素であるTiを先頭に、副成分元素を、質量%の単位を省略した組成数値とともにハイフンで結合して記載する(例えば、Ti−6質量%Al−4質量%V合金は、Ti−6Al−4Vと記載する))。
(1)α型合金
Ti−5Al−2.5Sn、Ti−5.5Al−3.5Sn−3Zr−1Nb−0.3Mo−0.3Si、Ti−2.5Cu
(2)ニアα型合金:Ti−6Al−2Sn−4Zr−2Mo−0.1Si、Ti−8Al−1Mo−1V、Ti−2.25Al−2Sn−4Zr−2Mo、Ti−6Al−2Sn−2Zr−2Mo−0.25Si、Ti−6Al−2Nb−1Ta−0.8Mo、Ti−6Al−2Sn−1.5Zr−1Mo−0.35Bi−0.1Si、Ti−6Al−5Zr−0.5Mo−0.2Si、Ti−5Al−6Sn−2Zr−1Mo−0.25Si
(3)α+β型合金
Ti−8Mn、Ti−3Al−2.5V、Ti−6Al−4V、Ti−6Al−6V−2Sn、Ti−7Al−4Mo、Ti−6Al−2Sn−4Zr−6Mo、Ti−6Al−2Sn−2Zr−2Mo−2Cr−0.25Si、Ti−10V−2Fe−3Al、Ti−4Al−2Sn−4Mo−0.2Si、Ti−4Al−4Sn−4Mo−0.2Si、Ti−2.25Al−11Sn−4Mo−0.2Si、Ti−5Al−2Zr−4Mo−4Cr、Ti−4.5Al−5Mo−1.5Cr、Ti−6Al−5Zr−4Mo−1Cu−0.2Si、Ti−5Al−2Cr−1Fe
(4)β型合金
Ti−13V−11Cr−3Al、Ti−8Mo−8V−2Fe−3Al、Ti−3Al−8V−6Cr−4Mo−4Zr、Ti−11.5Mo−6Zr−4.5Sn、Ti−11V−11Zr−2Al−2Sn、Ti−15Mo−5Zr、Ti−15Mo−5Zr−3Al、Ti−15V−3Cr−3Al−3Sn、Ti−22V−4Al、Ti−15V−6Cr−4Al
(5)ニアβ型合金:Ti−10V−2Fe−3Al、
(6)耐食合金(溶接用としても使用できるが、溶射により耐食被覆層を形成したい場合に、特に有用である)
Ti−0.15Pd、Ti−0.3Mo−0.8Ni、Ti−5Ta
本発明の溶融金属形成用Ti系線材においてTi系酸化膜は、Ti系金属線材を、酸素を含有した雰囲気中にて熱酸化処理することにより形成できる。酸素を含有した雰囲気としては、酸素含有窒素雰囲気(大気雰囲気を含む)あるいは酸素含有不活性ガス雰囲気のほか、水蒸気など、酸素化合物を含有した気体雰囲気を用いてもよい。必要十分な厚さのTi系酸化膜を効率的に形成するには、酸素分圧が5〜21×10Paの酸素含有雰囲気を用いるのがよく、処理温度は例えば500〜800℃に設定するのがよい。また、熱酸化処理以外に、電気化学的に表層を酸化する方法も採用可能である。具体的には、リン酸溶液中での陽極酸化法が有効である。
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
図1は、本発明の溶融金属形成用Ti系線材を用いてMIG溶接を行なう装置系の一例を示すものである。この装置300は、母材として例えば純チタン製又はチタン合金製のエンジン用エキゾーストパイプEPのMIG溶接を行なうものとして例示しているが、本発明はもちろん、これに限定されるものではない。また、溶融金属形成用Ti系線材(以下、単に線材ともいう)は、TiもしくはTi合金(例えば、Ti−6%Al−4%V等)より構成される。リール50から巻き出された線材301は、矯正ローラ303により線癖を矯正された後、送給ローラ302により可撓性を有するコンジットチューブ304内に導かれる。コンジットチューブ304の先端にはトーチ305が設けられ、コンジットチューブ304の後端側から導入されたアルゴン等の不活性ガスIGは、トーチ305の先端から被溶接部材であるエキゾーストパイプEPの溶接部位に吹き付けられてこれをガスシールドする。
トーチ305内には線材301の送りを許容した形でこれと導通する電極チップ306が設けられ、線材301の先端とエキゾーストパイプEPとの空隙に高圧を印加してアークARを発生させる。線材301はこのアークの熱エネルギーにより溶融し、溶接部位に滴下されて溶接ビードWMを形成する。なお、送給ローラ302は、線材301が溶融・消耗する速度に合わせてこれを連続的又は断続的にアークARに向けて送給する。なお、溶接ビードWMは、凝固直後は高温であり、すぐにシールドが破れると酸化が進行するので、溶接ビードWMの上方を覆うアフターシールド用ジグ307と、同じく溶接ビードWMの裏側を覆うバックシールド用ジグ308とが設けられている。
図2は、線材301の断面を模式的に示すものである。線材301は、線材本体3がTi金属にて構成され、線径Dが0.6mm以上2mm以下であり、線材長手方向の引張強度が、
Smin=−230D+850 (単位:MPa)
Smax=−620D+2000 (単位:MPa)
にて表されるSmin以上Smax以下の範囲である。線材本体3の表面にTi系酸化膜2が1μm以上5μm以下の厚さにて形成されている。また、Ti系酸化膜2の厚さTwと線径Dwとの比Tw/Dwは、0.3×10−3〜1×10−1、より好ましくは、1×10−3〜50×10−3の範囲に調整されている。
Ti系酸化膜2を有した線材301を用いることにより、アークの安定性が改善される。その理由は以下のように推察される。すなわち、線材301は、アーク発生時に表皮電流によって表層部から優先的に加熱され、温度的にも高温となる。その結果、表層部をなすTi系酸化膜2中に局在化した酸素は、アーク溶融の初期段階で蒸発してシールドガス雰囲気中に流出し、酸素を含有したシールドガスを用いた場合と同様の状態となって、アークが安定化するものと考えられる。また、従来のように、シールドガス自体に相当量の酸素が導入されるのと異なり、アーク安定化に必要十分な量の酸素が、Ti系酸化膜からの蒸発により直接補われるため、シールドガスへの酸素添加に比べ、少量でも有効に作用し、結果として溶接ビードに取り込まれる酸素量も従来の方法と比較して減ずることかでき、溶接継手強度の向上を図ることができるようになる。
また、Ti系酸化膜2が形成された線材表面の表面粗さは、最大高さをRyとして、10μm以下にすることが、線材301のコンジットチューブ304内の送給性を向上させる観点において望ましい。そして、前記したような厚さ及び酸素濃度にてTi系酸化膜2を形成することは、表面粗さがこのような数値に調整された線材表面を得る上でも当然に有利に作用する。また、上記表面粗さにおいては、算術平均粗さRaが0.5μm以下となっていることが望ましい。また、最大高さRy及び算術平均粗さRaの下限値については特に制限はなく、コストとの兼ね合いにより適宜設定される(本発明者らは、Ryが少なくとも1.0μm程度まで、Raが少なくとも0.1μm程度まで小さくできることを確認している)。なお、本明細書において表面粗さは、JIS:B0601(2001)に規定された方法により測定されたものを意味する。
線材301は、上記のようなTi系酸化膜2の形成により、線材表面の動摩擦係数を大幅に低減できる。具体的には、表面を研磨した従来型のTi線材の表面動摩擦係数は0.5〜0.6程度であるが、本発明の採用により、その動摩擦係数を、0.4以下、例えば0.2〜0.3程度に軽減することができる。そして、線材301として一般に多用される線径Dwは、0.6〜2.0mm程度の範囲であるが、このような線径Dwを採用する場合、Ti系酸化膜2の形成により、具体的に達成可能な送給安定性のレベルとして、例えば、線材送給装置における反力を測定した送給反力測定プロファイルの平均振幅にて15N以下を実現できる。送給反力をこのように小さくできることで、コンジットチューブ304内での線材301の詰まり等の発生を効果的に抑制することができる。
また、コンジットチューブ内304での線材301の挫屈を防止するためには、線材長手方向の引張強度が、前述のSmin以上Smax以下に調整されている必要がある。すなわち、長手方向の引張強度がSmin未満では、線材301の剛性不足により送給時の座屈変形、ひいてはコンジットチューブ304(図1)の内部での線材詰まり等を招きやすくなる。一方、線材301の長手方向の引張強度がSmaxを超えると、図1のごとく、自由に屈曲可能な可撓性のコンジットチューブ304内での線材のスムーズな送給が妨げられ、特に屈曲の大きい部位では、コンジットチューブ304の内面が齧られたりする不具合を生じやすくなる。
また、線材301は、内層部をなす線材本体3とTi系酸化膜2とからなるが、その合計の酸素含有率である、線材全体の全酸素含有率WOには、表1に示すような種々の値に規格上限値WOmaxが定められている。そして、該全酸素含有率WOのうち、Ti系酸化膜による酸素含有率への寄与をWOとして、該WOよりも大きい本体酸素上限調整代ΔWOが設定され、線材本体3の酸素含有率WOが、WOmax−ΔWO以下に調整されている。線材本体3は、伸線に供されるTi素材として、酸素含有率WOがWOmax−ΔWO以下に規制されたものを選定することにより、上記酸素含有率WOへの調整が可能である。
例えば、線材301の線径が1mmであり、Ti系酸化膜2が緻密なTiO膜として厚さ3μmにて形成されている場合、線材301の全酸素含有率WOに対するTi系酸化膜の寄与WOは約0.04%であり、前述のΔWOは少なくともこの値よりは大きく設定する必要がある。線径が0.6mm以上2mm以下であり、線材本体の表面にTi系酸化膜が1μm以上5μm以下の厚さにて形成されている場合、ΔWOを0.05質量%に設定すれば、線径及びTi系酸化膜の厚さにより上記WOの値が変化しても、ΔWOを常に該WOの値よりも大きくでき、ひいては全酸素含有率WOを規格上限値WOmaxよりも低く収めることができる。
上記のような強度の線材301は、冷間伸線加工により製造することができる。以下、具体的に説明する。まず、Tiインゴット(例えば工業用純チタン1種又は2種からなるもの)を原料素材として線材圧延後、脱スケールすることにより加工前線材301’を得る。前述のごとく、Ti系酸化膜を形成する前の加工前線材301’
(線材本体3となるべきTi系素材である)の酸素含有率は、WOmax−ΔWO(質量%)以下、具体的には、WOmax−0.05質量%以下に調整されたものを使用する。
図3に示すように、この加工前線材301’は、ストランド状態で熱酸化処理炉46内に連続的に搬送され、表面が酸化処理されて、Ti系酸化膜が形成される。酸化処理は、例えば酸素分圧が5〜21×10Paの酸素含有雰囲気、例えば酸素含有窒素雰囲気(大気雰囲気を含む)が使用され、処理温度は500℃〜800℃(例えば750℃)に設定される。加工前線材301’の表面に形成するTi系酸化膜の厚さは1μm以上5μm以下であり、該厚さを得るためには、上記処理温度に設定された酸化処理炉41の加熱区間の、加工前線材301’の通過時間が1〜10分間(例えば6分間)となるように、上記加熱区間の長さに応じて加工前線材301’の搬送速度が調整される。この熱処理により加工前線材は回復・再結晶により展延性が向上し、後工程の冷間伸線加工等が容易になる。本実施形態では、送り側ロール47に巻かれた加工前線材301’を、モータ48mにより受け側ロール48によりコイル状に巻き取りつつ上記搬送を行なうようにしている。
Ti系酸化膜形成前の状態で、その酸素含有率がWOmax−ΔWO(質量%)以下、ひいてはWOmax−0.05質量%以下に調整されたものを使用されているので、加工前線材301’に上記厚さのTi系酸化膜が形成されても、線材全体の酸素量は規格上限値WOmaxを超える惧れがない。
Ti系酸化膜を形成後の加工前線材301’は、図4に示すように、潤滑剤槽20内の、潤滑剤(粉末状)21内を通過し、表面に潤滑剤が付与される。該潤滑剤は、次の伸線工程において伸線ダイスとの間に潤滑作用を付与し、伸線性を向上させる。なお、加工前線材301’に対する潤滑剤21の付与は、図5に示すように、コイル状の線材を潤滑剤槽20内に装入して行なうこともできる。
潤滑剤は、種々の金属セッケン類のほか、フッ化グラファイト、二硫化モリブデンなどを使用でき、2種以上のものを組み合わせて使用することもできる。線材表面には後述する洗浄を行っても微量の潤滑剤が残留することがあり、特に溶接用線材の場合には、潤滑剤成分混入による溶接継手強度の低下やばらつきなどにつながることもある。そこで潤滑剤は、線材を溶融させたときに分解ないし蒸発が進みやすく、溶接金属中への混入を生じにくいものを使用することがより望ましいといえる。この観点において特に望ましい潤滑剤は、ステアリン酸カルシウム及び水酸化カルシウムの少なくともいずれか主成分として含有するものである。また、二硫化モリブデンを含有するものも採用できる。
なお、加工前線材301’の表面に形成したTi系酸化膜は平滑で摩擦係数も小さく、潤滑剤の付着性もそれほど良好でない。従って、加工前線材301’をそのまま潤滑剤粉末中に埋没させても、十分な量の潤滑剤を付着できないことがある。そこで、図7に示すように、散点状の凸部が一様に分散した形態を有する前処理皮膜49を形成し、その状態で該加工前線材301’を潤滑剤粉末21中にて長手方向へ移動させる方法を採用することが有効である。このようにすると、前処理皮膜49の凸部にて潤滑剤粉末21が連れ出されながら加工前線材301’の表面に付着し、潤滑剤粉末層321が形成される。前処理皮膜49の凸部により潤滑剤粉末21の引っ掛けによる連れ出し効果により、潤滑剤粉末量の付着量が大幅に増加し、また、凸部を線材表面に分散形成することで、潤滑剤粉末21を線材表面に一様に付着させることができる。
前処理皮膜49は、例えば前処理皮膜形成剤の溶液を加工前線材の表面に塗布し、これを乾燥させることにより、容易にかつ簡便に形成することができる。前処理皮膜形成剤としては、水溶性の金属硫酸塩、水溶性の金属炭酸塩、脂肪酸カルシウム及び水酸化カルシウムのいずれかを使用し、該前処理皮膜形成剤の水溶液を加工前線材の表面に塗布する方法を採用するとよい。上記の前処理皮膜形成剤は、線材を溶融させたときに分解ないし蒸発が進みやすく、溶接金属中への混入を生じにくい利点がある。
本実施形態では、Ti系金属線材を、酸素を含有した雰囲気中にて熱酸化処理することによりTi系酸化膜を加工前線材301’の表面に形成しているが、これを利用して、前処理皮膜49は次のような方法により形成することができる。すなわち、図3に示すように、該熱酸化処理後において昇温状態の加工前線材301’の表面に前処理皮膜形成剤の溶液を塗布し、該線材301’の余熱で該溶液の溶媒を蒸発させて前処理皮膜を形成する。この方法によると、Ti系酸化膜形成の熱履歴により線材301’は例えば500℃以上800℃以下の高温状態で溶液塗布されるので、その余熱により溶媒(水分)が速やかに蒸発し、図6に示すように、塗付装置147の下流側に乾燥装置を特に設けなくとも、前処理皮膜49を均一に分散した形で簡便に形成できる。また溶媒の蒸発も速やかに進むので、線材表面に前処理皮膜49を強固に密着させることができる。
この場合、図3に示すように、加工前線材301’の熱酸化処理炉46の直後に前処理皮膜形成剤の溶液の塗付装置147(本実施形態では溶液の噴霧ノズルを加工前線材301’の周囲に複数個配置したものとして構成している)を設け、加工前線材301’を長手方向に(ストランド状で)搬送しつつ熱酸化処理炉46内を通してTi系酸化膜を形成し、引き続き該Ti系酸化膜形成後の加工前線材301’を塗付装置147に搬送して前処理皮膜形成剤の溶液を塗布するようにすれば、線材301’の温度が十分高いうちに溶液の塗布を行なうことができるので、前処理皮膜をより確実に形成することができる。塗布装置147は、皮膜形成剤の溶液中に加工前線材301’を浸漬する方式で代用してもよい。
前処理皮膜形成済みの加工前線材301’は、図3に示すように受け側ロール48により巻き取られ、一時保管される。その後、ロール48から加工前線材301’を繰り出しつつ、前処理皮膜形成済みの加工前線材301’を潤滑剤槽20に供給し、図7に示す潤滑剤粉末層321を形成する。このとき、前述の水溶性の金属硫酸塩、水溶性の金属炭酸塩、脂肪酸カルシウム及び水酸化カルシウムなどからなる前処理皮膜形成剤は吸湿性が比較的高いので、加工前線材301’を予備乾燥炉45にて予備乾燥した後、潤滑剤槽20に供給すると潤滑性能向上が期待できる。
以上のようにして潤滑剤が付与された加工前線材301’は、ダイスホルダ31と、該ダイスホルダ31に固定された伸線ダイス32(例えば超硬合金製のものである)とを有する冷間伸線装置30に導入される。具体的には、加工前線材301’を、入口側よりも出口側が小径となるように断面がほぼ円錐状に形成された伸線ダイス32にのダイス孔に挿通し、常温下で出口側から引っ張ることにより、伸線ダイス32の出口の断面形状とほぼ同一断面を有する線材301が得られる。該線材301は、矯正部49を経て線材スプール50へ巻き取られ、前記したMIG溶接に使用される。
図8に示すように、加工前線材301’はTi系酸化膜2’の表面に潤滑剤層321が形成され、その状態で伸線ダイス32を用いて冷間伸線加工を施す。伸線ダイス32のダイス孔31hの孔径は、加工前線材301’の線径に応じ、冷間伸線加工の減面率が20%以上70%以下の範囲となるよう調整されている。該減面率は、Ti系酸化膜2の膜厚を考慮して、伸線後のクラックCKの面積率が20%以下となるように設定される。加工前線材301’の表面に付与された潤滑剤321’は、伸線の断面縮小時にTi系酸化膜2’にクラックCKが形成されると、そのクラックCK内に潤滑剤が押し込まれる。クラック内に残留した潤滑剤は線材表面に残留しやすいので、後述のごとく、Ti系酸化膜2の剥離抑制を考慮しつつ洗浄液中への浸漬により十分除去する必要がある。
酸化熱処理により加工前線材301’の表面に形成されたTi系酸化膜は、酸化時の体積膨張の影響などもあり、低密度で線材本体に対する密着力も低くなっていることが多い。しかし、上記のように冷間伸線加工を施すことにより、Ti系酸化膜2’は、伸線ダイス内にて線材縮径方向に圧縮されて高密度化し、かつ、金属からなる線材本体への食い込み効果により密着力が高められたTi系酸化膜2となる。
図13に示すごとく、加工前線材301’において、Ti系酸化膜2’は、延性が低いことに加え、下地となる線材本体3’との間の熱膨張係数の差も大きいため、Ti系酸化膜2’の厚さTw’が過度に、具体的には5μmを超えて大きくなっていると、膜中に相当量のクラック2cを生じていることも多い。このクラック2cは、潤滑剤を多量に保持するため、溶接ビードや溶射層へ混入する不純物量が増加するという悪影響を及ぼす。
一方、加工前線材301’のTi系酸化膜2’の厚さTw’が1μm未満に小さくなっていると、Ti系酸化膜2’による伸線加工時の潤滑効果への寄与が不足して、潤滑剤を塗付しても、得られる線材301の表面にダイスマークが深く刻まれ、線材表面の摩擦係数を悪化させる原因となる。従って、Ti系酸化膜2’の厚さは1μm以上5μm以下とされ、これによって線材本体3の表面に平滑で均一なTi系酸化膜2を形成することが可能となる。
前述のごとく、線材の引張強度は前述のSmin以上Smax以下に調整する必要がある。Ti系酸化膜2’の厚さは1μm以上5μm以下に調整され、加工前線材301’の線径は0.7mm以上2.5mm以下である。これを伸線により線径0.6mm以上2.0mm以下の線材301を得ようとする場合、冷間伸線加工の減面率を20%以上70%以下に調整する。なお、1回の伸線で望みの線径まで減面できないときは、ダイス径が順次縮小する複数のダイスを用いて、複数回の伸線を繰り返せばよい。
Ti系酸化膜2’の厚さは1μm以上5μm以下と小さいので、図10に示すように、加工前線材301’の断面の真円度が悪いと、真円度がそれよりは良好なダイス孔31hの内面と、加工前線材301’の外面との接触が不均一となる。その結果、線径が過剰となる領域はダイス孔31hの内面から十分な圧縮力を受けて、Ti系酸化膜2へのクラックCKの形成も促進される。一方、線径が不足する領域では、ダイス孔31hの内面から受ける圧縮力が不足して、Ti系酸化膜2へのクラックCKはあまり進まず、線材の表面肌が周方向で不均一となる。これはクラック部に残留する潤滑剤量にも影響を及ぼす。こうした不具合を防止するために、加工前線材301’が0.7mm以上2.5mm以下であって円形断面を有するものであり、これに20%以上の減面率で冷間伸線加工を施す場合、加工前線材301’の真円度を10μm以下に調整することが望ましい。この場合、加工前線材301’は、例えば次のようにして真円度を高めることができる。すなわち、図11に示すように、例えばロール孔型201g,201gを有した圧延ロール201,201を用いて、加工能率の高い線材圧延により、伸線直前の線径まで減面する。そして、Ti系酸化膜の形成前に、矯正用ダイス231を用い、真円度を10μm以下に調整するための矯正伸線加工(伸線加工の方が圧延よりも加工精度が高い)を施し、その後、Ti系酸化膜を形成すればよい。
図8に戻り、上記のごとく冷間伸線加工が終了した加工済み線材301は、クラックCK内に潤滑剤231が残留しやすい。また、Ti系酸化膜2上にも多少の潤滑剤が残留する場合がある。そこで、図9に示すように、加工済み線材301を洗浄槽56に導き、洗浄液57中に加工済み線材301を浸漬して洗浄する(洗浄工程)。洗浄液としては、例えば前述の潤滑剤の主体をなす金属せっけん等に対し溶解性を有するアルカリ系洗浄液(例えば界面活性剤を主体とするもの)を使用できる。この洗浄により、クラックCK以外の領域に付着した水溶性の前処理皮膜と潤滑剤とが除去できる。前処理皮膜形成剤として、水溶性の金属硫酸塩、水溶性の金属炭酸塩、脂肪酸カルシウム及び水酸化カルシウムを用いれば、上記の洗浄及び補助洗浄にて前処理皮膜形成剤を容易に溶解・除去することができ、処理後の線材表面への残留量も少なくできる。その結果、前処理皮膜形成剤からの残留酸素も少なくなり、線材全体の酸素含有率を規格上限値内に収めることがより容易になる。また、Ti系酸化膜の形成とは無関係な、炭素や水素などの不純物も、前処理皮膜形成剤の残留が減ることで減少し、線材全体の炭素含有率や水素含有率も規格上限値内に容易に収めることができる。なお、洗浄後は、下流側に設けられたエアー吹付け等による乾燥装置65により洗浄後の線材301を乾燥する。
他方、潤滑剤については、上記洗浄により、クラックCK以外の領域に付着したものは比較的容易に除去できるが、クラックCKの内部に保持されている潤滑剤は、洗浄のみで十分に除去することは困難な場合がある。そこで、洗浄工程後に、洗浄液にて湿潤した状態の加工済み線材301の表面を、線材よりも軟質の拭き取り媒体62にて摩擦することにより、クラックCK内に圧入された潤滑剤を拭き取り除去することが効果的である。この拭き取りにより、クラックCKからも潤滑剤が十分に除去され、線材301表面への潤滑剤残留量が大幅に減じられる。その結果、潤滑剤からの残留酸素が少なくなり、線材全体の酸素含有率を規格上限値内に収めることがより容易になる。また、Ti系酸化膜の形成とは無関係な、炭素や水素などの不純物も、潤滑剤の残留が減ることで減少し、線材全体の炭素含有率や水素含有率も規格上限値内に容易に収めることができる。この場合、拭き取り媒体62の材質、押し付け圧力を適切に選定し、Ti系酸化膜の剥離を招いてはならない。
本実施形態では、洗浄槽56の下流側に温水噴霧による補助洗浄槽150を設け、さらに、洗浄槽56及び補助洗浄槽50を通過して搬送される線材301に対し、線材搬送を継続しつつこれに帯状の拭き取り媒体62を当接させて線材表面の拭き取り処理を行なう拭取り装置60を設けている。
図8に戻り、上記のようにしてクラックCK内の残留潤滑剤を減少させることで、該線材を用いて形成される溶接ビードへの不純物としての混入も抑制でき、該溶接ビードの強度や特性に悪影響を及ぼすことはない。潤滑剤の残留量は、線材10kg当たり1g以下、望ましくは0.5g以下であるのがよい(ゼロgを含む)。また、クラックの形成面積率は20%以下に調整するのがよい。
なお、上記の線材301は、溶射用線材として用いることもできる。図15は、その溶射装置の一例を模式的に示す。溶射装置400は、溶射ガン302と、溶射ユニット303とを有する。溶射ユニット303内において、各々リール312,312に巻き取られた2本の線材301,301が、各々コンジットチューブ310を経て溶射ガン302に送給される。この実施形態では、線材301,301の送給は、溶射ガン302に設けられた送給ローラ308,308により、溶射ユニット303から線材301,301を引き込む形にて行っているが、溶射ユニット303に設けられた送りロールにより線材301,301を溶射ガン302に向けて送出するようにしてもよいし、両者を併用してもよい。
溶射ガン302内において線材301,301は、それぞれ独立した通電用ホルダ304,304内を、電気的導通状態にて通過した後、先端部同士が互いに接近する向きに送り出される。そして、溶射ユニット303側の直流アーク電源314により通電用ホルダ304,304を介して線材301,301に通電すると、線材301,301の先端間に形成されたギャップGにアーク放電が生じ、線材301,301の先端部が溶融して溶融金属を発生する。ギャップGに臨む位置には噴射ノズル310が配置され、溶射ユニット303側のコンプレッサー313により噴射媒体通路309を経て該噴射ノズル310に、空気あるいは窒素・アルゴン等の不活性ガスからなる噴射媒体が供給される。すると、ギャップGに形成された溶融金属が、該噴射媒体とともに霧状となって被処理物307の表面に溶射され、溶射層306を堆積させる。線材301,301は、アーク放電により先端側から逐次溶融しながらギャップGに連続的に送給されるので、噴射ノズルに媒体を供給し続けることにより、溶射を継続することができる。
このように、溶射の場合は2本の線材301,301が並列送給され、その先端間のギャップGにアーク形成することから、一方の線材301の供給速度が他方に対して進んだり遅れたりすると、ギャップGの間隔が変動し、アーク不安定が生じやすい。しかし、本発明の採用により、ギャップGに対する線材301,301の送給速度を安定的に保持できるので、アークの安定性を飛躍的に向上することができ、ひいては高品質の溶射層306を形成できる。
なお、以上説明した実施形態では、図2に示すように線材301の全体をTi金属にて構成していたが、図2に一点鎖線で示すように、線材301の表層部のみをTi金属にて形成し、内部に別の金属層4を形成した複合線材とすることもできる。例えば、溶接部ないし溶射層をTi合金製のものとしたいとき、その合金成分からなる金属層4(例えば、Al、V、Al−V合金など)を設けておき、溶融金属を形成する際に、外層部をなすTi金属と合金化することができる。外層部がTi系酸化膜2の形成されたTi金属層とされることで、線材全体を単一合金層とする場合よりも、線材の送給安定性及びアーク安定性を良好に確保することができる。また、金属層4の代わりに、セラミック粉末を充填した線材を用いれば、金属−セラミック複合材料(例えば、サーメット)を溶射することもできる。さらに、溶射方法はアーク溶射に限定されるものではなく、線状の溶射材料を用いることが可能であれば、例えばフレーム溶射、レーザー溶射、ガス溶射、プラズマ溶射などを採用することもできる。これらの溶射方法においても、線材の送給を安定化させる効果は同様に達成され、均一な溶射層を形成することに寄与する。
以下、本発明の効果を確認するために行なった実験結果について説明する。
(実施例1)
まず、素材としてJIS:H4670(1993)に規定されたチタン線素材(工業用純チタン1種に相当:線径1.6mm:酸素含有率0.04質量%)を、窒素雰囲気(酸素分圧21×10Pa)に維持された酸化処理炉を用いて、500〜800℃にて1分〜60分間酸化熱処理することにより、種々のTi系酸化膜を有する加工前線材を得た。加工前線材の真円度(JIS:B7451(1997)に規定の方法により測定)は8μmであった。なお、酸化熱処理後に、前処理前処理皮膜として硫酸塩を主成分とする水溶液を噴霧し、線材の余熱により乾燥させた。次いで、該前処理皮膜形成後の線材を潤滑剤粉末浴に通し、潤滑剤粉末層を形成させた。なお、使用した潤滑剤はステアリン酸カルシウムと水酸化カルシウムとを、混合配合したものを使用した。
上記潤滑剤粉末層を形成した線材に冷間伸線加工を施し、線径が1.0mm(最終段のダイス孔径による公称値)であって、表2に示す種々の厚さのTi系酸化膜を有する溶融金属形成用Ti系線材を得た(番号1〜7)。なお、伸線後は、図9の装置により、洗浄を行った。また、比較のため、チタン線素材を600℃にて1時間真空焼鈍後、番号3と同じ厚さのTi系酸化膜を形成するための酸化熱処理を伸線加工後に施した線材(番号7)を作成した。これらの線材につき、以下の測定及び評価を行なった。
(1)Ti系酸化膜の厚さTw
線材の断面(ランダムに抜き出した10箇所)を鏡面研磨し、EPMA(Electron
Probe Micro Analysis)により酸素濃度分布を面分析するとともに、酸素濃度が7%以上となる周縁領域をTi系酸化膜として特定し、周方向及び線長方向の平均厚さとして算出した。
(2)引張強さ
線材から長さ100mmの試験片を切り出し、インストロン型引張試験機を用いてクロスヘッド速度1.0mm/分にて引張を行い、応力−歪曲線を測定するとともに、その最大応力値を引張強さとして読み取った。
(3)表面粗さ
線材長手方向に評価長さを設定する形で、JIS:B0601(2001)に規定された方法により粗さ曲線を測定し、最大高さRy(μm)と、算術平均粗さRa(μm)の値をそれぞれ読み取った。
(4)送給安定性評価
線材を図1のMIG溶接装置300にセットして、線材送り速度75mm/秒、電流90Aにて溶接を実施した。コンジットチューブ304の長さは3mとし、線材送給にトラブルなく溶接可能な場合に○(送給性良好)、溶接開始時に線材に座屈が発生した場合に×(送給性不安定)として判定した。
(5)動摩擦係数
バウデン−リーベン型摩擦試験機を用いて測定した。具体的には、線材試料を試料台上に取り付け、上から押圧用の鋼材を重ね、その鋼材を一定重量の分銅にて押圧しながら試料台を一定速度で移動させたときの摩擦力を、歪ゲージ式の荷重検出器により検出する。
(6)伸線後のTi系酸化膜の被覆状態
伸線後の線材の全長にわたって含有酸素量の分布を調べ、線長方向の含有酸素量の変動率が5%以内に収まっているものを良(○)、5%を超え10%以下のものを可(△)、10%を超えるものを不良(×)として評価した。Ti系酸化膜の脱落が大きい線材は、脱落箇所での含有酸素量が大幅に低下するため、含有酸素量の変動率は大となる。
(7)伸線傷の有無
伸線後の線材を倍率10倍の拡大鏡を用いて目視観察し、ダイスマークの形成が認められないものを良好(○)、認められたものを不良(×)として判定した。
(8)線材送給時のTi系酸化膜の脱落の有無
(4)において、線材送給後のコンジット内に、脱落したTi系酸化膜の堆積がほとんど認められなかったものを良好(○)、顕著に認められたものを不良(×)として判定した。
以上の結果を表2に示す。
この結果によると、線材の送給安定性は、線材の引張強さが620MPa(前述のSminのD=1mmに対応する値である)以上の範囲において良好であることがわかる。そして、Ti系酸化膜の膜厚が1μm以上5μm以下のとき、伸線後のTi系酸化膜による被覆状態が良好となり、かつ伸線後のダイスマークの発生もなく、良好な性能の線材が得られていることがわかる。
(実施例2)
素材としてJIS:H4670(1993)に規定されたチタン線素材(工業用純チタン1種に相当:線径1.6mm:酸素含有率0.04質量%)を、窒素雰囲気(酸素分圧21×10Pa)に維持された酸化処理炉を用いて実施例1と同様に酸化熱処理することにより、厚さ3μmのTi系酸化膜を有する加工前線材を得た。加工前線材の真円度は5〜20μmにて種々の水準のものを用いた。酸化熱処理後に、前処理前処理皮膜として硫酸塩を主成分とする水溶液を噴霧し、線材の余熱により乾燥させた。次いで、該前処理皮膜形成後の線材を潤滑剤粉末浴に通し、潤滑剤粉末層を形成させた。なお、使用した潤滑剤はステアリン酸カルシウムと水酸化カルシウムとを、混合配合したものを使用した。
上記潤滑剤粉末層を形成した線材に冷間伸線加工を施した。減面率は9%と26%の2水準に設定し、最終線径が1.0mm、Ti系酸化膜の厚さは3μmの溶融金属形成用Ti系線材を得た。なお、伸線後は、図9の装置により洗浄を行った(番号1〜5)。こうして得られた各線材の表面はSEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)に観察し、Ti系酸化膜の被覆面積率を画像解析により測定し、70%以上を良好(○)、50〜70%を可(△)、50%以下を不可(×)として評価した。また、各番号とも線材の潤滑剤残留量を測定し、線材10kgあたり1gを超えたものを不可(×)、1g以下となったものを良好(○)とした。
この結果によると、伸線加工時の減面率が20%未満となる番号1は、Ti系酸化膜による被覆率が良好でなく、線材送給性が悪化していることがわかる。また、真円度が20μmと大きい番号4も、Ti系酸化膜による被覆率が良好でない。さらに、洗浄を行なわなかった番号5は、潤滑剤の残留が多くなっていることがわかる。
また、図12は、表3の番号2(洗浄あり)及び番号5(洗浄なし)の各線材表面の、SEM観察画像及びEDX分析結果を示す。いずれもTi系酸化膜には、多数のクラックが分散形成されていることがわかる。そして、洗浄を省略した番号5の線材は、潤滑剤由来の成分(Ca、Mo、C及びO)の大きなピークがEDXプロファイルに観察され、SEM画像においては、クラック内部に多量の潤滑剤粉末が食い込んでいるほか、Ti系酸化膜表面にも潤滑剤粉末の付着が認められる。これに対し、洗浄を行った番号2の線材は、EDXプロファイルに潤滑剤由来の成分(Ca、Mo、C及びO)のピークはほとんど見られず、SEM画像においても、Ti系酸化膜表面はもとよりクラック内部にも潤滑剤粉末が残留している気配はない。
(実施例3)
素材として、酸素含有率が0.05質量%以上0.15質量%以下の、種々の水準のものを使用した以外は、実施例2:表3の番号3の線材と同じ条件にて線材を製造した。また、全酸素含有率WOに対する規格上限値WOmaxを0.15質量%に定めた。線径が1mmであり、Ti系酸化膜が緻密なTiO膜として厚さ3μmに形成されることを考慮し、全酸素含有率WOに対するTi系酸化膜の寄与WOは約0.04%と見積もった。これにより、表4に示すごとく、本体酸素上限調整代ΔWOは、0質量%以上0.1質量%の種々の値にて調整されることとなった。各番号とも線材の総伸線長さを100mとし、5m毎に線材をサンプリングして化学分析により酸素量の平均値を分析した。以上の結果を表4に示す。
この結果からも明らかな通り、本体酸素上限調整代ΔWOをTi系酸化膜の寄与WO(=0.04質量%)よりも大きく設定した番号3,4及び5の線材は、全酸素含有率WOを、規格上限値WOmax(0.15質量%)以下に留めることができているのに対し、ΔWOをWO以下とした番号1及び番号2の線材は、いずれも規格上限値WOmaxを超える酸素量となっていることがわかる。
本発明の適用対象となるTiのMIG溶接装置の概略を示す模式図。 本発明の溶融金属形成用Ti系線材の断面模式図。 本発明の溶融金属形成用Ti系線材の製造工程説明図。 図3に続く説明図。 図4の別工程を示す説明図。 前処理皮膜の形成概念を説明する図。 前処理皮膜の効果説明図。 Ti系酸化膜の性状に伸線加工が及ぼす効果を説明する図。 伸線後の洗浄及び拭き取り工程の概念説明図。 加工前線材の断面真円度が潤滑剤分布に影響を与える様子を説明する図。 断面真円度を高めるための予備工程の説明図。 伸線後のTi系酸化膜の表面正常の一例を、洗浄・拭き取りの工程の潤滑剤残留状態に与える影響とともに示すSEM観察画像及びEDX分析プロファイル。 Ti系酸化膜を過度に厚く形成した場合の問題点を説明する図。 MIG溶接装置の要部を示す模式図。 本発明の適用対象となるTiのアーク溶射装置の概略を示す模式図。
符号の説明
2 Ti系酸化膜
3 内層部
21 潤滑剤
CK クラック
46 熱酸化処理炉
147 塗付装置
49 前処理皮膜
62 ベルト(拭き取り媒体)
301 溶融金属形成用Ti系線材
321 潤滑剤粉末層

Claims (15)

  1. 先端側から順次加熱溶融してTi系金属からなる溶融金属を形成するための溶融金属形成用Ti系線材であって、線材本体がTi系金属にて構成され、該線材本体の表面に自然酸化膜よりも厚いTi系酸化膜が形成されてなり、
    線材全体の全酸素含有率WOに規格上限値WOmaxが定められてなり、また前記全酸素含有率WOのうち、前記Ti系酸化膜による酸素含有率への寄与をWOとして、該WOよりも大きい本体酸素上限調整代ΔWOを設定し、前記線材本体の酸素含有率WOをWOmax−ΔWO以下に調整したことを特徴とする溶融金属形成用Ti系線材。
  2. 線径Dが0.6mm以上2mm以下であり、前記線材長手方向の引張強度が、
    Smin=−230D+850 (単位:MPa)
    Smax=−620D+2000 (単位:MPa)
    にて表されるSmin以上Smax以下の範囲にあり、線材本体の表面にTi系酸化膜が1μm以上5μm以下の厚さにて形成されてなり、前記線材本体の酸素含有率WOをWOmax−0.05(質量%)以下に調整した請求項1記載の溶融金属形成用Ti系線材。
  3. 前記Ti系酸化膜に形成されるクラックの面積率を20%以下とする請求項1又は請求項2に記載の溶融金属形成用Ti系線材。
  4. 前記潤滑剤の残留量が線材10kg当たり1g以下である請求項3に記載の溶融金属形成用Ti系線材。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の溶融金属形成用Ti系線材の製造方法であって、
    最終的に得るべき線材全体の全酸素含有率WOに規格上限値WOmaxが定められてなり、また前記全酸素含有率WOのうち、前記Ti系酸化膜による酸素含有率への寄与をWOとして、該WOよりも大きい本体酸素上限調整代ΔWOを設定し、
    酸素含有率WOがWOmax−ΔWO以下に調整されたTi系金属からなる加工前線材を用意して、該加工前線材の表面に自然酸化膜よりも厚いTi系酸化膜を形成するTi系酸化膜形成工程と、
    該Ti系酸化膜を形成した加工前線材を冷間伸線加工する冷間伸線加工工程と、
    を有することを特徴とする溶融金属形成用Ti系線材の製造方法。
  6. 前記加工前線材の表面にTi系酸化膜を1μm以上5μm以下の厚さにて形成し、該Ti系酸化膜表面に潤滑剤を付与する潤滑剤付与工程を有し、前記冷間伸線加工工程において、潤滑剤付与した加工前線材を、伸線ダイスを通すことにより、該伸線ダイスの内面と前記加工前線材の表面とを前記潤滑剤により潤滑しつつ冷間伸線加工を行なうとともに、前記冷間伸線加工が終了した加工済み線材において、前記Ti系酸化膜上に残留した潤滑剤を、前記冷間伸線加工時に前記クラック内に保持された潤滑剤とともに除去する潤滑剤除去工程を有する請求項5記載の溶融金属形成用Ti系線材の製造方法。
  7. 前記クラック内に保持された潤滑剤を除去するために、前記加工済み線材を洗浄液中に浸漬して洗浄する請求項6記載の溶融金属形成用Ti系線材の製造方法。
  8. 前記潤滑剤は、ステアリン酸カルシウム及び水酸化カルシウムの少なくともいずれかを主成分として含有するものが使用される請求項6又は請求項7に記載の溶融金属形成用Ti系線材の製造方法。
  9. 前記潤滑剤は二硫化モリブデンを主成分として含有するものが使用される請求項8記載の溶融金属形成用Ti系線材の製造方法。
  10. 前記加工前線材は0.7mm以上2.5mm以下であって円形断面を有するものであり、これに20%以上70%以下の減面率で前記冷間伸線加工を施すとともに、前記加工前線材の真円度を10μm以下に調整する請求項6ないし請求項9のいずれか1項に記載の溶融金属形成用Ti系線材の製造方法。
  11. 前記加工前線材は、前記Ti系酸化膜の形成前に、真円度を10μm以下に調整するための矯正伸線加工が施される請求項10記載の溶融金属形成用Ti系線材の製造方法。
  12. 前記加工前線材の前記Ti系酸化膜上に、散点状の凸部が一様に分散した形態を有する前処理皮膜を形成し、その状態で該加工前線材を潤滑剤粉末中にて長手方向へ移動させることにより、前処理皮膜の凸部にて前記潤滑剤粉末を連れ出しつつ前記加工前線材の表面に付着させて潤滑剤粉末層を形成する請求項6ないし請求項11のいずれか1項に記載の溶融金属形成用Ti系線材の製造方法。
  13. 前記前処理皮膜は前処理皮膜形成剤の溶液を前記加工前線材の表面に塗布し、これを乾燥させることにより形成されるとともに、前記前処理皮膜形成剤は水溶性の金属硫酸塩、水溶性の金属炭酸塩、脂肪酸カルシウム及び水酸化カルシウムのいずれかを使用し、前記洗浄工程にて冷間伸線加工後線材の該前処理皮膜を溶解除去する請求項12記載の溶融金属形成用Ti系線材の製造方法。
  14. Ti系金属線材を、酸素を含有した雰囲気中にて熱酸化処理することにより前記Ti系酸化膜を前記加工前線材の表面に形成するとともに、該熱酸化処理後において昇温状態の加工前線材表面に前記前処理皮膜形成剤の溶液を塗布し、該線材の余熱で該溶液の溶媒を蒸発させて前記前処理皮膜を形成する請求項12又は請求項13に記載の溶融金属形成用Ti系線材の製造方法。
  15. 前記加工前線材の熱酸化処理炉の直後に前記前処理皮膜形成剤の溶液の塗付装置を配置し、前記加工前線材を長手方向に搬送しつつ前記熱酸化処理炉内を通して前記Ti系酸化膜を形成し、引き続き該Ti系酸化膜形成後の加工前線材を前記塗付装置に搬送して前記前処理皮膜形成剤の溶液を塗布する請求項14記載の溶融金属形成用Ti系線材の製造方法。
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