JP2005095718A - 酸素分離膜エレメント及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明によって提供される酸素分離膜エレメントは、多孔質支持体が酸素イオン伝導性を有する酸化物、例えば一般式:La1−xAexMO3で示される複合酸化物、安定化ジルコニア、及び酸化セリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物から実質的に構成されている。特に前記多孔質支持体は、平均細孔径rが0.1μm<r<20μmの範囲であり、気孔率pが5%≦p≦60%の範囲であることが好ましい。
【選択図】 図1
Description
また、このような酸素イオン伝導体から形成されたセラミック材は、炭化水素の部分酸化反応等の酸化用反応装置にも利用することができる。例えば、このセラミック材を膜状(薄い層状のものを包含する。)に形成し、その一方の表面を酸素を含むガスに接触させ、他方の表面を炭化水素(メタン等)を含むガスに接触させる。これにより、膜状セラミック材の一方の表面からこのセラミック材を透過して供給される酸素イオンによって、セラミック材の他方の表面に接触した炭化水素を酸化させることができる。
そこで本発明は、前記課題を解決し、酸素分離性能に優れた酸素分離膜エレメント及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、酸素分離膜エレメントにおける酸素分離膜の支持体として酸素分離性能を向上可能な多孔質支持体について鋭意検討した。この結果、酸素イオン伝導性を有する酸化物多孔質体から構成させることにより、支持体においても酸素イオン伝導性を得ることに成功した。従って酸素分離膜とともに酸素分離可能な面積を増大させて、酸素分離性能を向上することができる。即ち、本発明の酸素分離膜エレメントにおける多孔質支持体は、酸素分離膜の強度向上に加えて、酸素分離膜とともに酸素分離性能を発揮することができる。このため、本発明の酸素分離膜エレメントは、従来得ることができなかった優れた酸素分離性能を有する。
ここで式中、Aeは、Ba、Sr及びCaからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであり、MはFe、Mn、Ga、Ti、Co、Zr、Ni、Al、In及びSnからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであり、xは0<x<1を満たす;
で示される複合酸化物から実質的に構成されている。
本発明の酸素分離膜エレメントとしてさらに他の好ましいものは、前記多孔質支持体が、酸化セリウムから実質的に構成されている。
また、本発明の酸素分離膜エレメントとしては、前記多孔質支持体が、前記La1−xAexMO3で示される複合酸化物、安定化ジルコニア、及び酸化セリウムからなる群から選ばれるいずれか2種以上の組み合わせから実質的に構成されていてもよい。
ここで式中、Aeは、Ba、Sr及びCaからなる群から選ばれる1種又は2
種以上の組み合わせであり、MはFe、Mn、Ga、Ti、Co、Zr、Ni、Al、In及びSnからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであり、xは0<x<1を満たす;
で示される複合酸化物から実質的に構成されている。
本発明の酸素分離膜エレメントとして他の好ましいものは、前記酸素分離膜が、安定化ジルコニアから実質的に構成されている。
本発明の酸素分離膜エレメントとして他の好ましいものは、前記酸素分離膜が、酸化セリウムから実質的に構成されている。
また、本発明の酸素分離膜エレメントとしては、前記酸素分離膜が、前記一般式:La1−xAexMO3で示される複合酸化物、安定化ジルコニア、及び酸化セリウムからなる群から選ばれる2種以上の組み合わせから実質的に構成されていてもよい。
酸素分離膜と多孔質支持体とが同じ組成で構成されていることにより、その性質(典型的には化学的性質)を同等とすることができる。このため、焼成収縮率差を近似させることができ、焼成時や高温での使用時における膜の剥離、クラック等の発生をより効果的に防止することができる。従って、機械的強度及び耐久性に特に優れた酸素分離膜エレメントとして好適である。また、膜と支持体の反応により、膜の導電性が低下するという問題も解消し得る。
多孔質支持体と酸素分離膜とが互いに異なる組成の酸化物により構されていることにより、膜焼成時や高温での使用時における多孔質支持体の緻密化を抑制し、この結果酸素透過性に優れる気孔率を保持し、酸素透過性の低下を防止することができる。
ここで式中、Aeは、Ba、Sr及びCaからなる群から選ばれる1種又は2
種以上の組み合わせであり、MはFe、Mn、Ga、Ti、Co、Zr、Ni、Al、In及びSnからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであり、xは0<x<1を満たす;
で示される複合酸化物から実質的に構成されている。
ここで式中、Aeは、Ba、Sr及びCaからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであり、MはFe、Mn、Ga、Ti、Co、Zr、Ni、Al、In及びSnからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであり、xは0<x<1を満たす;
で示される複合酸化物、安定化ジルコニア、及び酸化セリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む原料粉末であって、平均粒径10μm以上の原料粉末を用意する工程と、
該原料粉末を所定形状の成形体に成形する工程と、
該成形体を1200〜1800℃にて酸化性雰囲気又は不活性ガス雰囲気下で焼成して多孔質支持体を得る工程と、
該多孔質支持体の表面部の少なくとも一部に、一般式:La1−xAexMO3
ここで式中、Aeは、Ba、Sr及びCaからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであり、MはFe、Mn、Ga、Ti、Co、Zr、Ni、Al、In及びSnからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであり、xは0<x<1を満たす;
で示される複合酸化物、安定化ジルコニア、及び酸化セリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物から実質的に構成される酸素分離膜を形成するための前駆体を付与する工程と、
該前駆体を1200〜1800℃にて酸化性雰囲気又は不活性ガス雰囲気下で加熱して、前記多孔質支持体の表面部に酸素分離膜を形成する工程と、
を包含する。
尚、ここで、平均粒径とは、レーザー回折式粒度分布計を用いて測定した「平均粒径(D50)」をいう。
ここで式中、Aeは、Ba、Sr及びCaからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであり、MはFe、Mn、Ga、Ti、Co、Zr、Ni、Al、In及びSnからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであり、xは0<x<1を満たす;
で示される複合酸化物、安定化ジルコニア、及び酸化セリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む原料粉末であって、平均粒径10μm以上の原料粉末を用意する工程と、
該原料粉末を所定形状の成形体に成形する工程と、
該成形体の表面部の少なくとも一部に、一般式:La1−xAexMO3
ここで式中、Aeは、Ba、Sr及びCaからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであり、MはFe、Mn、Ga、Ti、Co、Zr、Ni、Al、In及びSnからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであり、xは0<x<1を満たす;
で示される複合酸化物、安定化ジルコニア、及び酸化セリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物から実質的に構成される酸素分離膜を形成するための前駆体を付与する工程と、
前記成形体及び前記前駆体を1200〜1800℃にて酸化性雰囲気又は不活性ガス雰囲気下で同時焼成して、多孔質支持体及びその表面部に酸素分離膜を形成する工程と、
を包含する。
かかる平均粒径を有するものを用いることにより、高温焼成時及び使用時における多孔質体の緻密化防止効果を向上させ得る。このため、酸素イオン伝導性に優れた支持体として最適な気孔率と平均細孔径とを保持することができる。
ここで開示される酸素分離膜エレメントの製造方法の他の好ましいものは、前記多孔質支持体と前記酸素分離膜とを、同じ組成の酸化物から実質的に構成させる。
酸素分離膜と多孔質支持体とを同じ組成の酸化物で構成させることにより、その性質(典型的には化学的性質)を同等とすることができる。このため、熱膨張係数を近似させ、膜焼成時や高温での使用時に膜の剥離やクラック等の発生を効果的に防止することができる。従って、機械的強度及び耐久性に特に優れた酸素分離膜エレメントを製造することができる。また、膜と支持体の反応により、膜の導電性が低下するという問題も解消し得る。
多孔質支持体と酸素分離膜とを異なる組成の酸化物により構成させることにより、膜焼成時や高温での使用時における多孔質支持体の緻密化を抑制することができる。この結果酸素透過性に優れる気孔率を保持し、酸素透過性の低下を防止する。
前記所定範囲の膜厚で酸素分離膜を形成することにより、優れた酸素イオン伝導性を得ることができる。このため、酸素分離性能に優れた最適な酸素分離膜エレメントを製造することができる。
式中、Aeとしては、Ba、Sr及びCaからなる群から選ばれるいずれであってもよく、これらのうちの1種又は2種以上の組み合わせであってもよく、特に制限されない。このうち、Sr又はCaあるいはSrとCaとの2種の組み合わせが好ましく、かかる元素の含有率の高い組成のものが好適である。特に、MがSrであるか、あるいはSrの含有率が高いこと(例えば、Ae中においてSrが50モル%以上含まれること)が好適である。
次に、式中、Mとしては、Fe、Mn、Ga、Ti、Co、Zr、Ni、Al、In及びSnからなる群から選ばれるいずれであってもよく、これらのうちの1種又は2種以上の組み合わせであってもよく、特に制限されない。このうち、Fe、Mn、Ga、又はTiのうちのいずれか、あるいはこれらのいずれか2種の組み合わせが好ましく、特にGa及び/又はFe、或いはTi及び/又はFeが好適である。
また、式中のxとしては、0<x<1の範囲内であればいずれの数をとってもよく、即ち、本発明の目的に応じてLa(1-x)とAe(x)との組成比は適宜選択される。同様に、前記式中のyとしては、0<y<1の範囲内であればよい。
さらに、ここで開示される酸素分離膜エレメントに係る多孔質支持体を構成するものとして好ましい他の1種は、酸化セリウムである。
なお、多孔質支持体には、その性能(酸素イオン伝導性、電子伝導性、クラック発生防止性等)を顕著に損なわない範囲で、前記各酸化物以外の成分を含有することができる。また、前記各酸化物のいずれの2種以上の組み合わせとすることもできる。
酸素分離膜は、酸素イオン伝導性を有する酸化物であればよく、特定のいくつかの化合物に限定されるものではなく、従来公知のいずれの酸素イオン伝導性を有する酸化物を使用可能である。このような酸化物のうち、好ましい酸化物は、前記酸素分離膜エレメントに係る多孔質支持体において説明した酸化物と同様なものが挙げられる。即ち、一般式:La1−xAexMO3で示される複合酸化物、安定化ジルコニア、及び酸化セリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物から実質的に構成されるものが挙げられる。このうち、特に好適なものについては、前記多孔質支持体と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
また、酸素分離膜には、その性能(酸素イオン伝導性、電子伝導性、クラック発生防止性等)を顕著に損なわない範囲で、前記各酸化物以外の成分を含有することができる。
本発明に係る製造方法によれば、まず、多孔質支持体を製造する。使用する原料粉末は、酸素イオン伝導性を有する酸化物粉末(即ち、前記本発明の酸素分離膜エレメントにおいて説明した一般式:La1−xAexMO3で示される複合酸化物、安定化ジルコニア、及び酸化セリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の原料粉末)であれば、いずれの入手可能な粉末を用いてもよい。市販品をそのまま用いてもよい。特に、膜焼成時における支持体の緻密化を防止するため、前記平均粒径範囲、即ち10μm以上に属する平均粒径を有することが好ましい。
なお、使用する原料粉末には、その性能(酸素イオン伝導性、電子伝導性、クラック発生防止性等)を顕著に損なわない範囲で、前記各酸化物以外の成分を含有することができる。
さらに酸素イオン伝導性を有する酸化物を原料として用いているために、酸素イオン伝導性を有する酸素分離膜用支持体を得ることができる。
具体的には、原料粉末に分散媒、例えば、水及び/又は有機有機溶剤、具体的には、ポリビニルアルコール、メチルセルロース類、ポリエチレングリコール類、プロピレングリコール、グリセリン等、さらに必要ならば、バインダー、分散剤、可塑剤等を加えて混合し、ボールミルを用いてよく混練する。得られた前駆体(原料粉末)を分散したコーティング液(スラリー)中に多孔質支持体をディップ(浸漬)する。ディップ時間は、数秒〜1分程度でよい。5〜30秒程度が好ましい。このことによって酸素分離膜前駆体を多孔質支持体の表面部に均等に積層することができる。
尚、酸素分離膜は、用途に応じて多孔質支持体の一方の表面にのみ形成してもよく、或いは多孔質支持体の両側に形成することもできる。
この態様の製造方法では、前記製造方法と同様に、前記のような酸素イオン伝導性を有する酸化物であって、かつ所定の平均粒径を有する原料粉末を用意して所定形状の成形体に成形する。次いで、この成形体を焼成せずに、前記のような酸素分離膜を形成するための前駆体を付与する。その後、前記と同様な焼成手段により成形体及び前駆体を同時焼成して、多孔質支持体とその表面部に酸素分離膜とを形成する。
尚、本発明では、前記触媒担持法に限定されるものではなく、例えば、支持体において空気側と反応側のいずれにも担持することができる。また、前記以外の従来公知のいずれの触媒材料を適用することも可能である。
市販の(La0.7,Sr0.3)(Ga0.6,Fe0.4)O3粉末をバインダー及び分散剤と混合し、ボールミルを用いてよく混練した。その後、100℃にて24時間乾燥し、同組成の凝集体を得た。次に該凝集体を仮焼して解砕し、表1に示す粒径の各原料粉末を得た。尚、(La0.7,Sr0.3)(Ga0.6,Fe0.4)O3原料粉末の粒径は、レーザ回折式粒度分布計を用いて測定し、あわせて平均粒径を求めた。
これを100MPaの圧力下にプレス押出し機においてプレス押出しし、直径約20mm、厚さ約3mmの円板状に成形した。
得られた成形体を大気中においてまず200〜500℃に昇温し、10時間保持して、有機物を分解除去した。その後大気中において1500まで昇温し、3時間保持して成形体を焼成した。
市販の(La0.7,Sr0.3)(Ga0.6,Fe0.4)O3粉末の代わりに、市販の(La0.6,Sr0.4)(Ti0.3,Fe0.7)O3粉末を用いた以外は、前記実施例1と同様にして多孔質支持体を得た。
市販の(La0.7,Sr0.3)(Ga0.6,Fe0.4)O3粉末の代わりに、市販のLa0.85 Sr0.15MnO3粉末を用いた以外は、前記実施例1と同様にして多孔質支持体を得た。
市販の(La0.7,Sr0.3)(Ga0.6,Fe0.4)O3粉末の代わりに、市販の安定化ジルコニア粉末を用いた以外は、前記実施例1と同様にして多孔質支持体を得た。尚、安定化ジルコニアには、安定化剤として酸化イットリウムを3モル%含む。
市販の(La0.7,Sr0.3)(Ga0.6,Fe0.4)O3粉末の代わりに、市販の酸化セリウム粉末を用いた以外は、前記実施例1と同様にして多孔質支持体を得た。
前記実施例1〜5において得られたそれぞれの多孔質支持体について、平均細孔径及び気孔率を水銀圧入法により測定した。また、三点曲げ強度をJIS R1601に従い測定した。結果を表1に示す。
また、実施例1のNo.2の支持体について、電子顕微鏡(SEM)によりその破断面を観察した。その写真を図1(a)に示す。
また、機械的強度を示す三点曲げ強度も全ての実施例において15MPa以上の強度を示し、支持体として十分な強度を有することが判る。
また、図1(a)から明らかなように、実施例1のNo.2の支持体は、緻密化されずに十分な大きさの平均細孔径及び気孔率を有することが観察される。この大きさは、原料粉末の平均粒径に依存し、原料粉末の平均粒径が大きくなるに従い、平均細孔径及び気孔率が増大する傾向にある。
このため、実施例1〜5の支持体全ては、優れた平均細孔径及び気孔率とともに、高い機械的強度を有し、酸素分離膜用支持体として好適に使用可能である。
実施例1のNo.2の多孔質支持体を用いて、その一方の表面上に(La0.7,Sr0.3)(Ga0.6,Fe0.4)O3酸素分離膜を形成し、酸素分離膜エレメントを製造した。
平均粒径が1μmである市販の(La0.7,Sr0.3)(Ga0.6,Fe0.4)O3粉末を酸素分離膜用の原料粉末として用意し、これをバインダー及び分散剤とボールミルを用いてよく混練し、(La0.7,Sr0.3)(Ga0.6,Fe0.4)O3スラリーを調製した。
さらに得られたスラリー液中に、前記実施例1のNo.2で得られた支持体の表面部を20秒間ディップ(浸漬)しスラリーを多孔質支持体の表面部に均等に積層した。その後、多孔質支持体をスラリー液から引き上げ、60℃で4時間乾燥した。そして、大気中においてまず200〜500℃に昇温し、10時間保持して、有機物を分解除去した。さらに大気中において1500℃まで昇温し、3時間保持することにより、スラリーを焼成した。その後放冷して多孔質支持体の表面部上に(La0.7,Sr0.3)(Ga0.6,Fe0.4)O3酸素分離膜を形成した。尚、酸素分離膜の厚さは電子顕微鏡(SEM)により観察して測定したところ、60μmであった。
尚、実施例1のNo.2の多孔質支持体の代わりに、実施例1のNo.1、3又は4の多孔質支持体を同様に用いて酸素分離膜エレメントを製造することもできる。
市販の(La0.7,Sr0.3)(Ga0.6,Fe0.4)O3粉末の代わりに、平均粒径が1μmである市販の(La0.6,Sr0.4)(Ti0.3,Fe0.7)O3粉末を用い、かつ多孔質支持体として実施例1のNo.2の代わりに実施例2のNo.2を用いた以外は、前記実施例7と同様にして、(La0.6,Sr0.4)(Ti0.3,Fe0.7)O3多孔質支持体表面上に(La0.6,Sr0.4)(Ti0.3,Fe0.7)O3酸素分離膜を形成した。
尚、実施例2のNo.2の多孔質支持体の代わりに、実施例2のNo.1、3又は4の多孔質支持体を同様に用いて酸素分離膜エレメントを製造することもできる。
多孔質支持体として実施例1のNo.2の代わりに実施例3のLa0.85Sr0.15MnO3支持体を用いた以外は、前記実施例7と同様にして、La0.85Sr0.15MnO3多孔質支持体表面上に(La0.7,Sr0.3)(Ga0.6,Fe0.4)O3酸素分離膜を形成した。
多孔質支持体として実施例2のNo.2の代わりに実施例3のLa0.85Sr0.15MnO3支持体を用いた以外は、前記実施例8と同様にして、La0.85Sr0.15MnO3多孔質支持体表面上に(La0.6,Sr0.4)(Ti0.3,Fe0.7)O3酸素分離膜を形成した。
多孔質支持体として実施例1のNo.2の代わりに実施例4のNo.2の安定化ジルコニア支持体を用いた以外は、前記実施例7と同様にして、安定化ジルコニア多孔質支持体表面上に(La0.7,Sr0.3)(Ga0.6,Fe0.4)O3酸素分離膜を形成した。
尚、実施例4のNo.2の多孔質支持体の代わりに、実施例4のNo.1、3又は4の多孔質支持体を同様に用いて酸素分離膜エレメントを製造することもできる。
多孔質支持体として実施例2のNo.2の代わりに実施例4のNo.2の安定化ジルコニア支持体を用いた以外は、前記実施例8と同様にして、安定化ジルコニア多孔質支持体表面上に(La0.6,Sr0.4)(Ti0.3,Fe0.7)O3酸素分離膜を形成した。
尚、実施例4のNo.2の多孔質支持体の代わりに、実施例4のNo.1、3又は4の多孔質支持体を同様に用いて酸素分離膜エレメントを製造することもできる。
多孔質支持体として実施例1のNo.2の代わりに実施例5の酸化セリウム支持体を用いた以外は、前記実施例7と同様にして、酸化セリウム多孔質支持体表面上に(La0.7,Sr0.3)(Ga0.6,Fe0.4)O3酸素分離膜を形成した。
多孔質支持体として実施例2のNo.2の代わりに実施例5の酸化セリウム支持体を用いた以外は、前記実施例8と同様にして、酸化セリウム多孔質支持体表面上に(La0.6,Sr0.4)(Ti0.3,Fe0.7)O3酸素分離膜を形成した。
実施例8において得られた(La0.6,Sr0.4)(Ti0.3,Fe0.7)O3酸素分離膜エレメントに触媒を担持した。
まず、多孔質支持体中に酸素イオン透過促進触媒を担持した。
市販のLa0.6Sr0.4Co酸化物粉末(粒径;2μm)に、分散媒としての水、バインダー、及び分散剤を添加して混合し、ボールミルを用いてよく混練した。次いで得られたスラリー液を、エレメントの支持体内に3時間含浸させた後、100℃で5時間乾燥した。さらに大気中電気炉において1℃/分の昇温速度にて1000℃まで昇温し、この温度にて1時間保持することによりスラリーを焼成した。
酸化ニッケル粉末(粒径;5μm)を水に分散してスラリーを得た。このスラリーを酸素分離膜の表面部に均等に塗布した。その後、酸素分離膜を乾燥した。さらに大気中電気炉において1℃/分の昇温速度にて1000℃まで昇温し、この温度にて1時間保持することによりスラリーを焼成した。
尚、同様に、実施例7及び9〜14において得られた酸素分離膜エレメントについても、触媒を担持することができる。
前記実施例7の酸素分離膜エレメントの製造において得られた酸素分離膜と酸素分離膜エレメントの破断面を電子顕微鏡(SEM)により観察した。結果を図1に示す。図1(b)に酸素分離膜の破断面を示す。図1(c)に酸素分離膜と多孔質支持体とが積層された酸素分離膜エレメントの破断面を示す。図1(b)から明らかなように、酸素分離膜は緻密な構造を有していることが判る。一方、図1(c)から明らかなように、エレメントは膜と支持体とが良好に接合されていることが判る。また、酸素分離膜は60μm、多孔質支持体は3mmの厚さに形成されていることが判る。
(La0.7,Sr0.3)(Ga0.6,Fe0.4)O3粉末の代わりに、市販のマグネシア粉末を用いた以外は、前記実施例1と同様にしてマグネシア多孔質支持体を得た。得られたマグネシア多孔質支持体の平均細孔径及び気孔率は、前記実施例6と同様に測定したところ、実施例1のNo.2とほぼ同等な平均細孔径及び気孔率を有していた。結果を表1に示す。
次いで、実施例1のNo.2により得られた多孔質支持体の代わりに、得られたマグネシア多孔質支持体を用いた以外は、前記実施例7の(La0.7,Sr0.3)(Ga0.6,Fe0.4)O3酸素分離膜エレメントの製造と同様にして、酸素分離膜を形成した。
(La0.6,Sr0.4)(Ti0.3,Fe0.7)O3粉末の代わりに、市販のマグネシア粉末を用いた以外は、前記実施例2と同様にしてマグネシア多孔質支持体を得た。得られたマグネシア多孔質支持体の平均細孔径及び気孔率は、前記実施例6と同様に測定したところ、実施例2のNo.2とほぼ同等な平均細孔径及び気孔率を有していた。結果を表1に示す。
次いで、実施例2のNo.2により得られた多孔質支持体の代わりに、得られたマグネシア多孔質支持体を用いた以外は、前記実施例8の(La0.6,Sr0.4)(Ti0.3,Fe0.7)O3酸素分離膜エレメントの製造と同様にして、酸素分離膜を形成した。
市販のマグネシア粉末の代わりに、市販のアルミナ粉末を用いた以外は、前記比較例1と同様にして酸素分離膜エレメントを製造した。尚、得られたアルミナ多孔質支持体の平均細孔径及び気孔率は、前記実施例6と同様に測定したところ、実施例1のNo.1或いはNo.2とほぼ同等な平均細孔径及び気孔率を有していた。結果を表1に示す。
市販のマグネシア粉末の代わりに、市販のアルミナ粉末を用いた以外は、前記比較例2と同様にして酸素分離膜エレメントを製造した。尚、得られたアルミナ多孔質支持体の平均細孔径及び気孔率は、前記実施例6と同様に測定したところ、実施例2のNo.1とほぼ同等な平均細孔径及び気孔率を有していた。結果を表1に示す。
前記実施例7〜15及び比較例1〜2において得られた酸素分離膜エレメントの酸素イオン伝導性について試験した。
図2にその説明図を示す。前記実施例7〜15及び比較例1〜2の酸素分離膜エレメント円板1を、酸素分離膜3側を燃料側、支持体5側を空気側として配置した。そして、図示するように、燃料(反応)側のアルミナ製円筒管7及び空気側のアルミナ製円筒管9の間に挟んで配置した。これらアルミナ製円筒管7,9及び酸素分離膜エレメント円板1の接触部をガラス系シール11で密閉した。また、燃料側及び空気側のアルミナ製円筒管7,9には、ともにガス導入路としてアルミナ内管13,15を設置した。このように構成される酸素イオン伝導性評価用モジュール17を、例えばヒータ18により1000℃まで加熱した。実施例15の酸素分離膜エレメントにあっては、燃料側のアルミナ内管13から混合ガス(水素10%+アルゴン90%)を導入し、Ni酸化物を還元した。次いで、燃料側のアルミナ内管13から純メタンガスを20cc/分で導入し、空気側のアルミナ内管15からは空気を20cc/分で導入した。尚、実施例15の酸素分離膜エレメントにあっては、メタンガス流量を200cc/分とした。この試験を3時間連続して行った。この間にアルミナ製円筒管7から放出された合成ガスをガスクロマトグラフで測定した。合成ガス中の酸素及びメタンガスによる反応生成物中の酸素濃度と流量及び酸素分離膜エレメント円板1の酸素透過部面積より酸素透過速度を算出した。結果を表2に示す。
前記実施例7〜14及び比較例1〜4において得られた酸素分離膜エレメントの支持体及び酸素分離膜のそれぞれの原料粉末について1000℃における熱膨張係数を一般的な示差膨張方式に基づき測定した。結果を表3に示す。
表3の結果から明らかなように、比較例3及び4の酸素分離膜エレメントは、多孔質支持体と酸素分離膜との熱膨張係数差が約0.6×10−5/K以上であってその差が大きいために、酸素分離膜にクラックが生じ、リークが発生している。これに対して実施例7〜14の酸素分離膜エレメントは、多孔質支持体と酸素分離膜との熱膨張係数差が0.2×10−5/K以内の範囲であっていずれも近似しているため、酸素分離膜の剥離やクラック等がほぼ認められなかった。このうち、特に実施例7及び8の酸素分離膜エレメントは、支持体と酸素分離膜とを同じ組成の酸化物により構成しているために、熱膨張係数が極めて近似しており、酸素分離膜の剥離やクラック等の発生が見られなかった。
市販の(La0.7,Sr0.3)(Ga0.6,Fe0.4)O3粉末をバインダー及び分散剤と混合し、ボールミルを用いてよく混練した。その後、100℃にて24時間乾燥し、同組成の凝集体を得た。次に該凝集体を仮焼して解砕し、平均粒径80μmの支持体用原料粉末、さらに平均粒径10μmの酸素分離膜用原料粉末を得た。尚、(La0.7,Sr0.3)(Ga0.6,Fe0.4)O3原料粉末の粒径は、レーザ回折式粒度分布計を用いて測定し、あわせて平均粒径を求めた。
次いで、得られた支持体用原料粉末をバインダー及び分散剤と混合し、ボールミルを用いてよく混練した。その後、100℃にて24時間乾燥し、同組成の凝集体を得た。これをボールミルを用いて解砕した。
これを100MPaの圧力下にプレス押出し機においてプレス押出しし、直径約20mm、厚さ約3mmの円板状に成形した。
得られたスラリー液中に、前記により得られた多孔質支持体の片面を20秒間ディップ(浸漬)しスラリーを多孔質支持体の一方の表面部に均等に積層した。その後、多孔質支持体をスラリー液から引き上げ、60℃で4時間乾燥した。そして、大気中においてまず200〜500℃に昇温し、10時間保持して、有機物を分解除去した。さらに大気中において1500℃まで昇温し、3時間保持することにより、多孔質支持体前駆体及びスラリーを焼成した。その後放冷して多孔質支持体及びその表面部上に(La0.7,Sr0.3)(Ga0.6,Fe0.4)O3酸素分離膜を形成した。尚、酸素分離膜の厚さは電子顕微鏡(SEM)により観察して測定したところ、60μmであった。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
3・・酸素分離膜
5・・多孔質支持体
7,9・・アルミナ製円筒管
11・・ガラス系シール
13,15・・アルミナ内管
17・・酸素イオン伝導性評価用モジュール
Claims (14)
- 多孔質支持体上に酸素イオン伝導性を有する酸素分離膜を形成した酸素分離膜エレメントにおいて、
前記多孔質支持体が酸素イオン伝導性を有する酸化物多孔質体から実質的に構成されている、酸素分離膜エレメント。 - 前記多孔質支持体が、一般式:La1−xAexMO3
ここで式中、Aeは、Ba、Sr及びCaからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであり、MはFe、Mn、Ga、Ti、Co、Zr、Ni、Al、In及びSnからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであり、xは0<x<1を満たす;
で示される複合酸化物、安定化ジルコニア、及び酸化セリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物から実質的に構成されている、請求項1記載の酸素分離膜エレメント。 - 前記酸素分離膜が、一般式:La1−xAexMO3
ここで式中、Aeは、Ba、Sr及びCaからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであり、MはFe、Mn、Ga、Ti、Co、Zr、Ni、Al、In及びSnからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであり、xは0<x<1を満たす;
で示される複合酸化物、安定化ジルコニア、及び酸化セリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物から実質的に構成されている、請求項1又は2記載の酸素分離膜エレメント。 - 前記多孔質支持体と前記酸素分離膜とは、同じ組成の酸化物から実質的に構成されている、請求項1〜3のうちのいずれかに記載の酸素分離膜エレメント。
- 前記多孔質支持体と前記酸素分離膜とは、互いに異なる組成の酸化物から構成されている、請求項1〜3のうちのいずれかに記載の酸素分離膜エレメント。
- 前記多孔質支持体は、一般式:La1−xSrxMnO3で示される複合酸化物(但しxは0<x<1を満たす)、安定化ジルコニア、及び酸化セリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物から実質的に構成されており、
前記酸素分離膜は一般式:La1−xAexMO3
ここで式中、Aeは、Ba、Sr及びCaからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであり、MはFe、Mn、Ga、Ti、Co、Zr、Ni、Al、In及びSnからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであり、xは0<x<1を満たす;
で示される複合酸化物から実質的に構成されている、請求項1記載の酸素分離膜エレメント。 - 前記多孔質支持体は酸化セリウムから実質的に構成されている、請求項6記載の酸素分離膜エレメント。
- 前記多孔質支持体は、平均細孔径rが0.1μm<r<20μmの範囲であり、気孔率pが5%≦p≦60%の範囲である、請求項1〜7のうちのいずれかに記載の酸素分離膜エレメント。
- 一般式:La1−xAexMO3
ここで式中、Aeは、Ba、Sr及びCaからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであり、MはFe、Mn、Ga、Ti、Co、Zr、Ni、Al、In及びSnからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであり、xは0<x<1を満たす;
で示される複合酸化物、安定化ジルコニア、及び酸化セリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む原料粉末であって、平均粒径が10μm以上の原料粉末を用意する工程と、
該原料粉末を所定形状の成形体に成形する工程と、
該成形体を1200〜1800℃にて、酸化性雰囲気又は不活性ガス雰囲気下で焼成して多孔質支持体を得る工程と、
該多孔質支持体の表面部の少なくとも一部に、一般式:La1−xAexMO3
ここで式中、Aeは、Ba、Sr及びCaからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであり、MはFe、Mn、Ga、Ti、Co、Zr、Ni、Al、In及びSnからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであり、xは0<x<1を満たす;
で示される複合酸化物、安定化ジルコニア、及び酸化セリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物から実質的に構成される酸素分離膜を形成するための前駆体を付与する工程と、
該前駆体を1200〜1800℃にて、酸化性雰囲気又は不活性ガス雰囲気下で加熱して、前記多孔質支持体の表面部に酸素分離膜を形成する工程と、
を包含する、酸素分離膜エレメントの製造方法。 - 一般式:La1−xAexMO3
ここで式中、Aeは、Ba、Sr及びCaからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであり、MはFe、Mn、Ga、Ti、Co、Zr、Ni、Al、In及びSnからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであり、xは0<x<1を満たす;
で示される複合酸化物、安定化ジルコニア、及び酸化セリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む原料粉末であって、平均粒径が10μm以上の原料粉末を用意する工程と、
該原料粉末を所定形状の成形体に成形する工程と、
該成形体の表面部の少なくとも一部に、一般式:La1−xAexMO3
ここで式中、Aeは、Ba、Sr及びCaからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであり、MはFe、Mn、Ga、Ti、Co、Zr、Ni、Al、In及びSnからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであり、xは0<x<1を満たす;
で示される複合酸化物、安定化ジルコニア、及び酸化セリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物から実質的に構成される酸素分離膜を形成するための前駆体を付与する工程と、
前記成形体及び前記前駆体を1200〜1800℃にて、酸化性雰囲気又は不活性ガス雰囲気下で同時焼成して、多孔質支持体及びその表面部に酸素分離膜を形成する工程と、
を包含する、酸素分離膜エレメントの製造方法。 - 前記原料粉末の平均粒径が50〜100μmである、請求項9又は10記載の酸素分離膜エレメントの製造方法。
- 前記多孔質支持体と前記酸素分離膜とを、実質的に同じ組成の酸化物に構成させる、請求項9〜11のうちのいずれかに記載の酸素分離膜エレメントの製造方法。
- 前記多孔質支持体と前記酸素分離膜とを、互いに異なる組成の酸化物に構成させる、請求項9〜11のうちのいずれかに記載の酸素分離膜エレメントの製造方法。
- 前記酸素分離膜を10〜200μmの膜厚に形成する、請求項9〜13のうちのいずれかに記載の酸素分離膜エレメントの製造方法。
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