JP2005082866A - カムシャフトの高周波誘導加熱装置 - Google Patents

カムシャフトの高周波誘導加熱装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 装置価格を廉価にすることができると共に、高周波誘導加熱時間を短縮することができるカムシャフトの高周波誘導加熱装置を提供する。
【解決手段】 第1〜第5の加熱導体部14a,14b,15a,15b,16の全体形状を断面円形ではなく矩形(具体的には、正方形又は長方形)に形成した直列接続構造体から成る高周波誘導加熱コイル11を用い、高周波誘導加熱すべきカムシャフト1の軸線αと高周波誘導加熱コイル11の軸線γとを互いに一致させた状態の下で、カムシャフト1を軸線α(γ)を中心に回転させながら、1台の高周波誘導加熱コイル11により、カムシャフト1の複数のカム部3及び複数のジャーナル部2の全箇所を順次に高周波誘導加熱する。
【選択図】 図4

Description

本発明は、内燃機関(エンジン)などに用いられるカムシャフトを焼入処理や焼戻処理などのために高周波誘導加熱するための高周波誘導加熱装置に関し、さらに詳しくは、カムシャフトのカム部の外周面とカムシャフトのジャーナル部の外周面とを1台の高周波誘導加熱コイルを用いて順次に高周波誘導加熱を行なうカムシャフトの高周波誘導加熱装置に関するものである。
図7は、内燃機関の構成部品であるカムシャフト(例えば4気筒エンジン用カムシャフト)1を示すものであって、このカムシャフト1は、同一の軸線αを有する互いに同軸状のジャーナル部2と、互いに隣り合うジャーナル部2の間の各ブロック毎に配設された複数のカム部3とをそれぞれ備えている。なお、互いに隣り合うジャーナル部2の間の各ブロックにおけるカム部3の数は、エンジンのシリンダに付随するバルブの数に対応している。また、上述のジャーナル部2は、前記軸線α(ジャーナル部2の中心軸)に直交する面上における断面形状が円形であるが(図9(a)参照)、カム部3の断面形状は、円形ではなく、図8(a)に示すように一方側に偏倚して突出するカムトップ部分3cを有する形状となされている。すなわち、カム部3は、一般的に、前記軸線αを中心とする半円弧状外周面を有するカムベース部分3bと、この半円弧形状のカムベース部分3bから偏倚して突出するカムトップ部分3cとから構成されている。
カムシャフト1のジャーナル部2及びカム部3については、通常、耐摩耗性の向上等の目的のためにそれらの外周面に焼入処理を施すようにしている。従来において、カムシャフト1のカム部を焼入する場合には、図8(a),(b)に示すような断面円形状(円環状)の高周波誘導加熱コイル5を用い、この高周波誘導加熱コイル5の軸線βをカムシャフト1の軸線αに対してオフセットした位置(オフセット距離;X,Y)に配置してカム部3の外周面3aの各部と高周波誘導加熱コイル5の内周面5aとの間の間隔を所要の距離に保持し、この状態の下で、高周波誘導加熱コイル5に高周波電源4から所定の高周波電流を供給して、カムシャフト1を回転させることなく静止状態のままカム部3の外周面3aを高周波誘導加熱し、しかる後に高周波誘導加熱コイル5の内周面5aに設けられた焼入冷却液噴射孔6から焼入冷却液を噴射することにより前記カム部3の外周面3aに所定の焼入硬化層を形成するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
また、カムシャフト1のカム部3とほぼ同じ幅を有するジャーナル部2を高周波誘導加熱する場合には(カム部3の幅W1=ジャーナル部2の幅W2)、図9(a),(b)に示すように、前記カム部3を高周波誘導加熱するために用いたものと同一の高周波誘導加熱コイル5を用いて高周波誘導加熱を行なうようにしている。なお、図10(a)〜(d)に示すように、ジャーナル部2の幅W3がカム部3の幅W1よりも広い場合には、高周波誘導加熱コイル5をカムシャフト1の軸線αに沿って平行にジャーナル部2の加熱対象領域の一端位置と他端位置との間を所要回数にわたり繰り返して移動させることにより、高周波誘導加熱を行なうようにしている(例えば、特許文献1参照)。
特開2002−356719号公報
しかしながら、図8(a)に示す如く断面円形の高周波誘導加熱コイル5の軸線βをカムシャフト1の軸線αに対してオフセットした位置に配置してカム部3の外表面3aの各部と高周波誘導加熱コイル5の内周面5aとの間の間隔を所要の距離に保持して高周波誘導加熱を行なうためには、以下の工程(動作)が必要である。
(ア) 高周波誘導加熱すべきカム部3のそれぞれについてカムトップ部分3cの位置を検出する工程。
(イ) オフセット方向にカムトップ部分3cを相合わせする工程。
(ウ) 高周波誘導加熱コイル5或いはカムシャフト1をオフセットする工程。
(エ) 高周波誘導加熱する工程。
(オ) オフセットを解除する工程。
従って、従来の高周波誘導加熱装置では、既述の如きオフセット動作が必要なため、高周波誘導加熱装置が高価なものとなり、さらに、工程数が多いので高周波誘導加熱に要する時間ひいては焼入・焼戻などの熱処理時間が長くなるという問題点がある。
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、装置価格を廉価にすることができると共に、高周波誘導加熱時間を短縮することができるカムシャフトの高周波誘導加熱装置を提供することにある。
上述の目的を達成するために、本発明では、カムシャフトのカム部の外周面と前記カムシャフトのジャーナル部の外周面とを1台の高周波誘導加熱コイルを用いて順次に高周波誘導加熱を行なうカムシャフトの高周波誘導加熱装置において、
(a) 高周波電源に接続された第1及び第2のリード部と、
(b) 前記第1及び第2のリード部にそれぞれ接続されると共に、互いに対称の関係をもって対向配置された直線形状の第1及び第2の加熱導体部と、
(c) 前記第1及び第2の加熱導体部に対してそれぞれ直角に接続されると共に、互いに平行に対向配置された直線形状の第3及び第4の加熱導体部と、
(d) 前記第3及び第4の加熱導体部に対して直角に接続されて前記第3及び第4の加熱導体部を互いに接続する直線形状の第5の加熱導体部と、
をそれぞれ有する直列接続構造体から成る高周波誘導加熱コイルを備え、
高周波誘導加熱すべきカムシャフトの軸線と前記高周波誘導加熱コイルの軸線とを互いに一致させた状態の下で、前記1台の高周波誘導加熱コイルにより、カム形状及びカム幅の異なるカム部、並びに、ジャーナル幅の異なるジャーナル部の全箇所を、前記カムシャフトを前記軸線を中心に回転させながら順次に高周波誘導加熱するようにしている。
また、本発明では、前記第1〜第5の加熱導体部の断面形状を矩形とし、前記カムシャフトに対向配置される前記第1〜第5の加熱導体部の内周側の導体面に対してそれぞれ直交する一対の導体面に磁性体を配置するようにしている。
また、本発明では、前記磁性体に円形のカムシャフト挿通孔を形成すると共に、前記カムシャフト挿通孔の内径を、前記第1及び第2の加熱導体部と前記第5の加熱導体部との間の距離、並びに、前記第3の加熱導体部と前記第4の加熱導体部との間の距離よりも短く設定するようにしている。
請求項1に記載の本発明は、第1〜第5の加熱導体部の全体形状を断面円形ではなく矩形(具体的には、正方形又は長方形)に形成した直列接続構造体から成る高周波誘導加熱コイルを備え、高周波誘導加熱すべきカムシャフトの軸線と高周波誘導加熱コイルの軸線とを互いに一致させた状態の下で、カムシャフトを軸線を中心に回転させながら、1台の高周波誘導加熱コイルにより、カムシャフトの複数のカム部及び複数のジャーナル部の全箇所を順次に高周波誘導加熱するようにしたものであるから、コイル形状を断面円形から矩形に変更したことにより、カム形状やカム幅の異なる複数のカム部及びジャーナル幅の異なる複数のジャーナル部の全箇所を順次に高周波誘導加熱する場合に、カムトップ部分が過熱状態になるのを回避し得てカムトップ部分からカムベース部分まで均一に高周波誘導加熱することができ、近接するカム部及びジャーナル部への熱影響がなく、1台の高周波誘導加熱コイルにてワークの軸線と高周波誘導加熱コイルの軸線をオフセットする動作を行なうことなく1本のカムシャフトを焼入処理などのために高周波誘導加熱することができる。そのため、本発明の高周波誘導加熱装置によれば、オフセット動作に伴う機械装置や制御装置及び監視装置が不要となり、ひいては高周波焼入装置の価格を下げることが可能となり、さらに、高周波誘導加熱に要する時間を短縮することが可能となる。
請求項2に記載の本発明によれば、第1〜第5の加熱導体部の断面形状を矩形とし、カムシャフトに対向配置される第1〜第5の加熱導体部の内周側の導体面に対してそれぞれ直交する一対の導体面に磁性体を配置するようにしたものであるから、加熱対象のカム部のカムトップ部分と磁性体との間のクリアランスを狭くすることにより、カム部についての加熱効率を上げることができる。
請求項3に記載の本発明によれば、磁性体に形成される円形のカムシャフト挿通孔の内径を、第1及び第2の加熱導体部と第5の加熱導体部との間の距離、並びに、第3の加熱導体部と第4の加熱導体部との間の距離よりも短く設定するようにしたものであるから、磁性体が加熱導体よりも加熱対象のカムトップ部分に近づいた位置に配置されることとなり、加熱対象のカムトップ部分を高周波誘導加熱する際に当該カムトップ部分に近接する別のカムトップ部分の角部への熱影響を緩和することができる。
以下、本発明の一実施形態について図1〜図6を参照して説明する。なお、図1〜図6において、図7〜図10と同一の部分には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係るカムシャフト高周波誘導加熱装置10に用いられている高周波誘導加熱コイル11を示すものである。本例の高周波誘導加熱コイル11は、図1に示すように、全体として矩形(本例では、正方形)の直列接続構造体から成る
コイル本体(加熱導体部)11aを有しており、このコイル本体11aに高周波電源12から高周波電流が供給されるように構成されている。
上述の高周波誘導加熱コイル11について具体的に述べると、本コイル11は、図1及び図2に示すように、高周波電源12に接続された第1及び第2のリード部13a,13bと、これらの第1及び第2のリード部13a,13bにそれぞれ接続されると共に、互いに対称の関係をもって対向配置された直線形状の第1及び第2の加熱導体部14a,14bと、これらの第1及び第2の加熱導体部14a,14bに対してそれぞれ直角に接続されると共に、互いに平行に対向配置された直線形状の第3及び第4の加熱導体部15a,15bと、これらの第3及び第4の加熱導体部15a,15bに対して直角に接続されて前記第3及び第4の加熱導体部15a,15bを互いに接続する直線形状の第5の加熱導体部16とをそれぞれ有する直列接続構造体として構成されている。
また、コイル本体10aを構成する第1〜第5の加熱導体部13a,13b、14a,14b、15a,15b、16は、図3に示すように、断面形状が矩形の導電材にてそれぞれ構成されており、カムシャフト1に対向配置される第1〜第5の加熱導体部13a,13b、14a,14b、15a,15b、16の内周側の導体面H1に対してそれぞれ直交する一対の導体面H2,H3に環状の磁性体17a,17bが配置されている。そして、図2に示すように、これらの磁性体17a,17bの外周形状は既述の矩形のコイル本体11aの外周形状に一致するように形成され、その中央部分には円形の内周面Rを有するカムシャフト挿通孔18a,18bがそれぞれ形成されている。なお、これらの磁性体17a,17bのカムシャフト挿通孔18a,18bを円形にしたのは、カム部3のカムトップ部分3cから磁性体17a,17bのカムシャフト挿通孔18a,18bの内周面Rまでのクリアランスをできるだけ狭くして加熱効率を上げるためである。
上述の如く一対の導体面H2,H3上に配置される磁性体17a,17bのカムシャフト挿通孔18a,18bの円筒面Rの内径は、図2及び図3に示すように、互いに対向して配置された第1及び第2の加熱導体部14a,14bと第5の加熱導体部16との間の距離、並びに、互いに対向して配置された第3の加熱導体部15aと第4の加熱導体部15bとの間の距離よりも短く設定され、これに応じて磁性体17a,17bの内周面Rを加熱導体よりも加熱対象のカムトップ部分3cに近づけた位置に配置せしめることにより、加熱対象のカムトップ部分3cを高周波誘導加熱する際に当該カムトップ部分3cに近接する別のカムトップ部分の角部M(図3参照)への熱影響を緩和するようにしている。
次に、上述の高周波誘導加熱コイル11を備えた高周波誘導加熱装置10にてカムシャフト1のカム部3及びジャーナル部2を例えば焼入処理(若しくは焼戻処理)する場合の手順及びその際の作用について述べると、以下の通りである。なお、1本のカムシャフト1の焼入に当たっては、複数箇所のカム部3を1つずつ処理した後に、複数箇所のジャーナル部2を処理する。
まず、カム部3の焼入に当たっては、カム部3を高周波誘導加熱コイル11の内側に加熱対象であるカムシャフト1を図3に示す如く貫通状態で配置して、に示すようにカムシャフト1の軸線αと高周波誘導加熱コイル11の軸線γとを一致させた状態でカムシャフト1の両端を図外の支持機構にて支持する(図4(a)〜(c)参照)。そして、図外のコイル移動機構により高周波誘導加熱コイル11を軸線α(γ)の方向に沿って移動させて、高周波誘導加熱コイル11を1つのカム部3に対応する位置に対応配置する。
上述の如くセッティングを行なった後に、カムシャフト1を図外の回転駆動機構により軸線αを中心に回転駆動すると共に、カムシャフト1を軸線α方向に沿って高周波誘導加熱コイル11に対して相対的に移動させた状態(移動加熱の場合)の下で、或いは、高周波誘導加熱コイル11に対して移動させない状態(一発加熱の場合)の下で、カム部3の外周面3aを所要の焼入温度に高周波誘導加熱する。しかる後に、図外の焼入冷却液噴射機構からカム部3の外周面3aに焼入冷却液を噴射する。これにより、当該カム部3の外周面3aに焼入硬化層が形成され、1つのカム部3の焼入処理(輪郭焼入)が完了される。なお、このような焼入処理は、他の残りの複数のカム部3に対して引き続いて1つずつ行なわれる。
このようなカム部3の焼入処理に際しての高周波誘導加熱は、図4(a),(b),(c)に示すような態様によって行なわれる。すなわち、図4(a)に示す如くカム部3のカムトップ部分3cの回転移動は、高周波誘導加熱コイル11の第5の加熱導体部16に最も近づいたときの「0°位置」から、図4(b)に示す如くカム部3のカムトップ部分3cが高周波誘導加熱コイル11の第5の加熱導体部16と第4の加熱導体部15bとにより構成された角部に最も近づいたときの「45°位置」を通って、図4(c)に示す如くカム部3のカムトップ部分3cが高周波誘導加熱コイル11の第5の加熱導体部16に最も近づいたときの「90°位置」に達するように行なわれる。
この場合、図4(a)に示す「0°位置」においては、カムトップ部分3cと第5の加熱導体部16との間のクリアランスL1が狭いため、カムトップ部分3cが高周波誘導加熱され易い。次の時点の図4(b)に示す「45°位置」においては、カムトップ部分3cと第5の加熱導体部16との間のクリアランスM1が広くなるため、カムトップ部分3cの加熱効率が既述の「0°位置」における場合よりも低下する。次の時点の図4(c)に示す「90°位置」においては、カムトップ部分3cと第4の加熱導体部15bとの間のクリアランスN1が狭くなるため、カムトップ部分3cが高周波誘導加熱され易い。以上のような態様は90°にわたる回転範囲において行なわれ、それ以後の90°〜360°の回転範囲においては上述の同様な態様でカムトップ部分3cの高周波誘導加熱が行なわれる。なお、図4におけるL2,M2,N2は、カムトップ3cとは反対側(180°異なる)のカムベース部分3bとの間の各位置でのクリアランスを示している。
従って、カムシャフト1の回転に伴い、図4(a),(b),(c)で示す態様の下での加熱状態が繰り返して行なわれ、カムトップ部分3cの加熱温度は、図4(a)の「0°位置」で上昇、図4(b)の「45°位置」で保温、図4(c)の「90°位置」で上昇となり、カムトップ部分3cが過熱状態になるのが防止されることとなる。
一方、この際には、カム部3のカムベース部分3bは、図4(a),(b),(c)にそれぞれ示す「0°位置」,「45°位置」,「90°位置」の何れにおいても第1〜第5の加熱導体部14a,14b,15a,15b,16との間のクリアランスL2,M2,N2が広いので、過熱されず、緩やかな温度上昇となる。
次に、本発明の高周波誘導加熱装置10を用いてカムシャフト1を焼入処理する実施例を以下に示す。
実施例
(1) ワーク : 6気筒エンジン用カムシャフト
(a) 材質 : SK−5
(b) カム部寸法 :
カムシャフトの軸線からカムトップ部分までの距離=53.1mm,50.5mm
カムシャフトの軸線からカムベース部分までの距離=40.0mm
カム幅=22mm,47mm
(c) ジャーナル部寸法 : 直径104mm×長さ54mm
(2) 高周波誘導加熱条件
〈1〉 燃料噴射カムを移動焼入
(a) 周波数 : 12.4kHz
(b) 出力 : 125kW
(c) 加熱時間 : 12sec
(d) 焼入冷却液の流量: 100 L/min
〈2〉 吸気カム及び排気カムを一発焼入
(a) 周波数 : 12.4kHz
(b) 出力 : 98kW
(c) 加熱時間 : 6.0sec
(d) 焼入冷却液の流量 : 100 L/min
〈3〉 ジャーナル部を移動焼入
(a) 周波数 : 12.4kHz
(b) 出力 : 123kW
(c) 送り速度 : 3mm/sec
(d) 焼入冷却液の流量 : 100 L/min
上記加工条件により、本発明の高周波誘導加熱装置10を使用してカム部3及びジャーナル部2を高周波誘導加熱して焼入処理したところ、図5(a),(b)及び図6(a),(b)にそれぞれ示す焼入硬化層パターンS1,S2が得られた。なお、図5(a),(b)は燃料噴射カムの焼入硬化層パターンS1であり、図6(a),(b)は吸気カム、排気カムの焼入硬化層パターンである。従って、本発明の高周波誘導加熱装置10を用いた焼入処理によれば、燃料噴射カム,吸気カム,及び排気カムの何れについても輪郭形状(外周面に沿って切れ目なく均一に連なる形状)となり、カム部3及びジャーナル部2に形成される焼入硬化層において所定の硬度が確保されていることが確認された。
以上の如き高周波誘導加熱装置10によれば、1つのブロックに複数個のカム部3を有すると共に、ジャーナル部2を介して複数のブロックが連結された構成を有するカムシャフト1において、カム形状(外周面形状)やカム幅の異なるカム部3と、ジャーナル幅の異なるジャーナル部2の全箇所を順次に高周波焼入する場合に、カム部3のカムトップ部分3cが過熱状態なることを回避し得てカムトップ部分3cからカムベース部分3bまで均一に高周波誘導加熱することが可能となり、近接するカム部3及びジャーナル部2への熱影響がなく、1台の高周波誘導加熱コイル11によりカムシャフト1の軸線αと高周波誘導加熱コイル11の軸線γとを互いにオフセットさせるための動作を行なうことなく、1本のカムシャフト1を焼入処理等のために高周波誘導加熱することができる。そのため、既述の高周波誘導加熱装置10によれば、オフセット動作に伴う機械装置や制御装置及び監視装置が不要となり、ひいては高周波焼入装置の価格を下げることが可能となり、さらに、高周波誘導加熱に要する時間を短縮することが可能となる。
以上、本発明の実施例につき述べたが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。例えば、高周波誘導加熱コイル11を1ターンとして構成したが、既述の第1及び第2のリード部13a,13b及び第1〜5の加熱導体部14a,14b,15a,15b,16を有するものであれば、2ターン,3ターン,或いはNターン(但し、Nは4以上の整数)としてもよい。また、既述の高周波誘導加熱コイル11は、その加熱導体部に高周波誘導加熱後のカムシャフト1ヘの焼入冷却液の噴射機能を備えていないが、加熱導体部に焼入冷却液の噴射孔を備えた一体構造のもとして構成することが可能である。また、高周波誘導加熱コイル11の第1〜第5の加熱導体部14a,14b,15a,15b,16の全体形状は正方形である必要はなく、場合によってはその全体形状を長方形にしてもよい。また、既述の実施形態の本装置では、前記カム部及び前記ジャーナル部の外周面の両方を高周波誘導加熱するようにしているが、前記カム部の外周面だけを高周波誘導加熱するようしても(すなわち、前記ジャーナル部の外周面については高周波誘導加熱しない場合)、何ら問題はない。
本発明の一実施形態に係るカムシャフトの高周波誘導加熱装置に用いられている高周波誘導加熱コイルの平面図である。 図1の高周波誘導加熱コイル上に配置された磁性体を示す平面図である。 カム部の高周波誘導加熱時における高周波誘導加熱コイルとカム部との配置関係を示す断面図であって、図2におけるA−A線拡大断面図である。 カムシャフトの回転に伴うカムトップ部分とカムベース部分との相対的な位置関係を説明するための図であって、図4(a)はカムシャフトが「0°位置」にある状態を示す図、図4(b)はカムシャフトが「45°位置」にある状態を示す図、図4(c)はカムシャフトが「90°位置」にある状態を示す図である。 本発明の高周波誘導加熱装置を用いて燃料噴射カムの焼入処理を行なった場合に得られた焼入硬化層パターンを示すものであって、図5(a)は燃料噴射カムのカム部の縦断面図、図5(b)は燃料噴射カムのカム部の横断面図である。 本発明の高周波誘導加熱装置を用いて吸気カム及び排気カムの焼入処理を行なった場合に得られた焼入硬化層パターンを示すものであって、図6(a)は吸気カム及び排気カムの縦断面図、図6(b)は吸気カム及び排気カムの横断面図である。 カムシャフトの平面図である。 従来の高周波誘導加熱コイルを用いてカムシャフトのカム部を高周波誘導加熱する際の状況を説明するためのものであって、図8(a)はカム部を断面円形の高周波誘導加熱コイル内においてオフセットした位置に配置した状態を示す側面図、図8(b)は同上の断面図である。 ジャーナル部の焼入幅がカム部の焼入幅とほぼ同じ場合に、従来の高周波誘導加熱コイルを用いてカムシャフトのジャーナル部を高周波誘導加熱する際の状況を説明するためのものであって、図9(a)は図8(a)と同様の側面図、図9(b)は図8(b)と同様の断面図である。 ジャーナル部の焼入幅がカム部の焼入幅よりも広い場合に、従来の高周波誘導加熱コイルを用いてカムシャフトのジャーナル部を高周波誘導加熱する際の状況を説明するためのものであって、図10(a)〜(d)はジャーナル部を高周波誘導加熱する際の高周波誘導加熱コイルの移動状況を示すための断面図である。
符号の説明
1 カムシャフト
2 ジャーナル部
3 カム部
3a 外周面
3b カムベース部分
3c カムトップ部分
10 高周波誘導加熱装置
11 高周波誘導加熱コイル
12 高周波電源
13a 第1のリード部
13b 第2のリード部
14a 第1の加熱導体部
14b 第2の加熱導体部
15a 第3の加熱導体部
15b 第4の加熱導体部
16 第5の加熱導体部
17a,17b 磁性体
18a,18b カムシャフト挿通孔
α カムシャフトの軸線
β,γ 高周波誘導加熱コイルの軸線

Claims (3)

  1. カムシャフトのカム部の外周面と前記カムシャフトのジャーナル部の外周面とを1台の高周波誘導加熱コイルを用いて順次に高周波誘導加熱を行なうカムシャフトの高周波誘導加熱装置において、
    (a) 高周波電源に接続された第1及び第2のリード部と、
    (b) 前記第1及び第2のリード部にそれぞれ接続されると共に、互いに対称の関係をもって対向配置された直線形状の第1及び第2の加熱導体部と、
    (c) 前記第1及び第2の加熱導体部に対してそれぞれ直角に接続されると共に、互いに平行に対向配置された直線形状の第3及び第4の加熱導体部と、
    (d) 前記第3及び第4の加熱導体部に対して直角に接続されて前記第3及び第4の加熱導体部を互いに接続する直線形状の第5の加熱導体部と、
    をそれぞれ有する直列接続構造体から成る高周波誘導加熱コイルを備え、
    高周波誘導加熱すべきカムシャフトの軸線と高周波誘導加熱コイルの軸線とを互いに一致させた状態の下で、前記カムシャフトを軸線を中心に回転させながら、前記1台の高周波誘導加熱コイルにより、前記カムシャフトの複数のカム部及び複数のジャーナル部の全箇所を順次に高周波誘導加熱するようにしたことを特徴とするカムシャフトの高周波誘導加熱装置。
  2. 前記第1〜第5の加熱導体部の断面形状を矩形とし、前記カムシャフトに対向配置される前記第1〜第5の加熱導体部の内周側の導体面に対してそれぞれ直交する一対の導体面に磁性体を配置したことを特徴とする請求項1に記載のカムシャフトの高周波誘導加熱装置。
  3. 前記磁性体に円形のカムシャフト挿通孔を形成すると共に、前記カムシャフト挿通孔の内径を、前記第1及び第2の加熱導体部と前記第5の加熱導体部との間の距離、並びに、前記第3の加熱導体部と前記第4の加熱導体部との間の距離よりも短く設定したことを特徴とする請求項1又は2に記載のカムシャフトの高周波誘導加熱装置。
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