JP2005082507A - ジアリールエテン化合物、フォトクロミック材料、カラー線量計および光メモリ素子 - Google Patents

ジアリールエテン化合物、フォトクロミック材料、カラー線量計および光メモリ素子 Download PDF

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Abstract

【課題】 室内光などの、小光量の環境光により退色しないジアリールエテン化合物とその用途を提供する。
【解決手段】 下記式一般式(I)で表されるジアリールエテン化合物。
Figure 2005082507

(式中、R1およびR2は、それぞれ独立にC1−C4のアルキル基を示す。R3およびR4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいナフチル基、置換基を有していてもよいスチリル基、置換基を有していてもよいフェニルエチニル基、一般式(A)で表される置換フェニル基を示す。)
【選択図】 なし

Description

本発明は、新規ジアリールエテン化合物および該化合物からなるフォトクロミック材料、該化合物を用いたカラー線量計、並びに該化合物を記録層に含有する光学記録材料に存する。
フォトクロミック材料とは、光の作用により色の異なる2つの異性体を可逆的に生成する化合物であり、調光レンズ、放射線線量計、光スイッチなどへの応用をめざして研究開発が進められている。
そして、数あるフォトクロミック材料の中でも、ジアリールエテン化合物は、熱不可逆性に優れ、遮光下における保存安定性が高く、更に繰り返し耐久性にも優れているため、好ましいとされている。
カラー線量計とは、電子線やガンマ線、X線などの放射線や紫外線などの人間の眼では通常捉えられない光線の存在を化学反応などを利用して可視化することにより、目視で光線の有無や照射量を容易に判別できるようにしたものである。これらの光線は人体に対して有害な場合が多く、被爆管理など現場でリアルタイムの線量測定が要求される用途においては特に有用である。例えば、近年、X線やガンマ線の放射線照射処理は、医療用具の滅菌を目的として従来より行われているが、近年は、輸血による移植片対宿主病(GVHD)の発症予防のため、輸血用血液に対しても行われている。
一般に、必要量の放射線が被照射物に照射されたか否かを調べるために、放射線によって不可逆的に変色する物質を含むインジケータを被照射物の間に混在させ、放射線照射後、取り出してその変色により確認する方法が取られている。
例えば、医療用具の放射線滅菌のインジケータとしては、ロイコ色素などの酸化還元色素とポリ塩化ビニルを用いたものが実用化されている。このインジケータは、放射線が5000Gy以上のときに変色する。ところが、輸血用血液への放射線照射量は通常15〜50Gy程度であるため、照射の有無を検知できない。
こうした背景から、放射線感応性を示すとともに取扱が容易なフォトクロミック材料を、線量計に使用することが提案されている。
例えば、蛍光を発するシンチレータを含む層とこのシンチレータの発する蛍光に感応して変色するフォトクロミック高分子層とを有する積層体からなる放射線感応表示シートが開示されている(特許文献1参照。)。ただ、この文献に記載された2,4,5−トリメチルチエニルマレイン酸無水物等のマレイン酸無水物系フォトクロミック材料は、放射線に対する感度が充分でなく、また、マレイン酸無水物が水分によって加水分解するために保存安定性が悪いという欠点があった。
例えば、以下の化学式(II)で示される熱不可逆性のフォトクロミック材料(以下化合物(II)という。)を用いた線量計が記載されている(特許文献2参照。)。
Figure 2005082507
この技術によれば、比較的低線量でも正確に測定できるが、輸血用血液への一般的な照射量である15〜50Gy程度の低線量を測定するには、感度の面で更なる改良が必要であった。また、化合物(II)の閉環体における開環反応時の量子収率(以下、「開環量子収率」と称す。)は10-2程度であり、この程度の開環量子収率では、閉環体は室内の蛍光灯の光により、数時間後にはほぼ完全に消滅してしまう。
本発明に類似した、1,2−ビス(2−アルコキシ−5−フェニル−3−チエニル)ペルフルオロシクロペンテン類も記載されている(非特許文献1及び2参照。)。その中でも以下の化学式(III)で示される化合物(以下「化合物(III)」という。)は1.7×10-5程度の開環量子収率を示すことが記されているが、化合物(III)でも室内光による表示の安定性は十分ではない。
Figure 2005082507
このようなことから、室内光等の小光量の可視光では開環体を生成しないという性質を備えたフォトクロミック材料が求められていた。
一方、光メモリ素子、特にフォトンモードを利用した光メモリ素子への利用という点でも、フォトクロミック材料は注目されている。
光メモリ素子とは、半導体レーザーや気体レーザー、固体レーザーなどを光源に用いて情報を記録するデバイスである。現在は、レーザー光を記録層上に集光して微少領域で吸収させ、熱に変換することにより微細なピットを形成して情報を記録するヒートモードタイプが一般的である。近年、加速度的な情報記憶量の増大に伴い、従来のヒートモードタイプよりも記憶容量の向上が可能であるフォトンモードタイプが活発に提案されており、その中でも、2光子吸収反応を利用した多層型光メモリ素子と干渉縞を多重記録するホログラム型光メモリ素子が中心になっている。従来のフォトクロミック材料を利用した光メモリ素子は、紫外線照射により化合物を閉環反応させて着色し、可視光波長の光線照射により開環反応させて消色することを繰り返し行うことにより、何回も情報の書き換えを行うタイプのものが殆どであった(非特許文献3参照。)。
しかしながら、光メモリ素子としては、書き換えタイプのものよりも、一度記録したデータを改竄することができないライトワンスタイプの方が需要は高く、実際、一度だけ記録できるコンパクトディスクであるCD−Rディスクは現在世界で年間数十億枚使われている。
ジアリールエテン化合物等のフォトクロミック材料を、ライトワンスタイプの光メモリ素子へ応用する場合の問題点は、該化合物の閉環体が、記録/再生光や室内光などの環境光に対して吸収を有するため、これらに長時間晒されることにより、レーザー光等の照射にて生じた(着色した)記録マークや、干渉縞などの記録部が消滅したり、未記録部分に意図せぬ着色が生じてしまうことである。
従って、光メモリ素子用途においても、室内光等の小光量の可視光では開環体を生成しないという性質を備えたフォトクロミック材料が求められていた。
特開平2−216493号公報 特開平11−258348号公報 Chemistry Letters,618(2001)、Chemistry Letters,572(2002) Journal of Organic Chemistry,67,4574(2002) 入江他、Chemical Review 100,p1685−1716(2000)
本発明の課題は、放射線に対して充分な感受性を有し、かつ環境光による退色の問題がないフォトクロミック材料と、該フォトクロミック材料を用いたカラー線量計および2光子吸収記録感度に優れた光メモリ素子を提供することにある。
本発明者等は上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、環境光による退色が少ないジアリールエテン化合物を見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の要旨は、下記一般式(I)で表されるジアリールエテン化合物、該ジアリールエテン化合物からなるフォトクロミック材料、該フォトクロミック材料を用いたカラー線量計および光メモリ素子に存する。
Figure 2005082507
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立にC1−C4のアルキル基を示す。R3およびR4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいナフチル基、置換基を有していてもよいスチリル基、置換基を有していてもよいフェニルエチニル基、または下記一般式(A)で表される置換フェニル基を示す。
Figure 2005082507
(式中、R9は置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアラ
ルキルオキシ基、置換基を有していてもよいチオアルキル基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有しても良いフェノキシ基、置換基を有しても良いフェニル基、置換基を有していてもよいアルキルアミノ基、または置換基を有していてもよいアリールアミノ基を示す。
7,R8,R10,R11はそれぞれ独立に、水素原子または任意の置換基を表す。但し、R7〜R11として前述した各基のうち、隣接する基同士が結合し、置換基を有していてもよ
い環を形成していても良い。)R5およびR6はそれぞれ独立に、水素原子または任意の置換基を表す。)
前述のごとく、非特許文献3および4には、化合物(III)として記載したように、チエニル基に無置換のフェニル基が結合したジアリールエテン化合物は開示されているが、本発明者らは更なる研究の結果、(1)フェニル基の、特にp−位を特定の基で置換すること、(2)該フェニル基を、ナフチル基、スチリル基、またはフェニルエチニル基に変更
すること、により、室内光などの環境光による退色が著しく改善されることを見いだし、本明に至った。
特定の構造のジアリールエテン化合物を用いることにより、環境光による退色の問題のないフォトクロミック材料が得られ、それを用いて環境光に対する表示の耐久性に優れた実用性の高いカラー線量計と、このカラー線量計に好適なフォトクロミック材料が提供される。
また本発明のジアリールエテン化合物は、環境光による退色の問題がほとんどなく、記録または表示された情報の長期安定性および記録感度に優れるため、カラー線量計のみならず、光メモリ媒体おるいは光表示材料、そのた新規光学素子への応用が期待される。
以下、本発明を詳細に説明する。
一般式(I)において、R1およびR2は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基等のC1−C4のアルキル基を示す。中でもメチル基が好ましい。
3およびR4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいナフチル基、置換基を有していてもよいスチリル基、置換基を有していてもよいフェニルエチニル基、または前記一般式(A)で表される置換フェニル基を示し、このうち、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有しても良いフェニルエチニル基、または前記一般式(A)で示される置換フェニル基が好ましい。
3またはR4が一般式(A)で示される場合、R9としては、例えばメトキシ基、エト
キシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブト
キシ基、tert−ブトキシ基等の、C1−C10のアルコキシ基;ベンジルオキシ基、α
−フェネチルオキシ基、β−フェネチルオキシ基など、C7−C10のアルコキシ基;メチ
ルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、イソブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基等の、C1−C10のアルコキシ基;メチル基、エ
チル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の、C1−C10のアルキル基;フェノキシ基;フェニル基;メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルエチルアミノ基等の、C1−C6のアルキル鎖部分を有するアルキルアミノ基;フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基等のアリールアミノ基;メチルフェニルアミノ基などのアルキルアリールアミノ基;
上記した各基は、いずれも置換基を有していてもよく、該置換基としては、本発明の化合物の性能を損なわない限り特に制限はないが、好ましくは、R9の例として前述した基
およびハロゲン原子から選択される。
9としては前述した基の中でも電子供与性であるアルコキシ基、アラルキルオキシ基
、チオアルキル基、アルキル基、フェノキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基が好ましく、これらはいずれも置換されていてもよい。さらに好ましくは、アルコキシ基、アルキル基、置換基を有していてもよいフェノキシ基、ジアルキルアミノ基またはジアリールアミノ基であり、特に好ましくはアルコキシ基である。
7,R8,R10,R11はそれぞれ独立に、水素原子または任意の置換基を表す。この任意の置換基は、本発明の化合物の性能を損なわない限り特に制限はないが、例えばR9
項で挙げた各基などが挙げられる。
なお、R7〜R11として前述した各基のうち、隣接する基同士、つまりR7とR8、R8とR9、R9とR10、R10とR11がそれぞれ結合して、環を形成しても良く、該環は置換基を有していてもよい。このような環として、例えば下記のものが挙げられる。
Figure 2005082507
上記例では記載を省略したが、R7〜R11のうち隣接する基同士が結合してなる環は、
本発明の化合物の特性を損なわない限り、任意の置換基を有していても良く、該置換基としては、例えば(環を形成しない場合の)R7〜R11として前述した各基が挙げられる。
7〜R11についても、前記一般式(A)のp−位の置換基であるR9と同様に、比較的電子供与性の基であることが好ましいため、R7〜R11に相当する任意の置換基として好
ましいものも、R9における好ましい基と同様の基、およびこれらが結合して形成する環
が挙げられる。
特に、R7およびR11としては水素原子が最も好ましく、R8およびR10としては、水素原子、アルコキシ基またはアルキル基が最も好ましい。
3およびR3が、各々独立に、置換基を有していてもよいナフチル基、置換基を有していてもよいスチリル基、または置換基を有していてもよいフェニルエチニル基を表す場合、該置換基としては、本発明の化合物の特性を損なわない限り、任意の置換基を有していても良く、具体的には、例えばR9の例として挙げたものと同様の基が挙げられる。中で
も、R9と同様に電子供与性の基が好ましいが、特に好ましくはアルコキシ基、アルキル
基、またはジアルキルアミノ基である。R3およびR4が、各々独立に、置換基を有していてもよいナフチル基、置換基を有していてもよいスチリル基、または置換基を有していてもよいフェニルエチニル基を表す場合、最も好ましくは、これらが無置換の場合である。
3および/またはR3が置換基を有していてもよいナフチル基を示す場合、ナフチル基としては2−ナフチル基がより好ましい。
3およびR3として、熱安定性および繰り返し耐久性の点からは置換基を有していてもよいナフチル基または前記一般式(A)で表される置換フェニル基が好ましい。
5およびR6は、各々独立に、水素原子であるか、本発明の性能を損なわない限り任意の置換基であってよいが、あまり嵩高い基ではない方が好ましいため、特に水素原子またはメチル基が好ましい。
1とR2、R3とR4、R5とR6はそれぞれ同一でも異なっても良いが、同一の方が好ましい。
一般式(I)で示される本発明の化合物の、好ましい例としては下記のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
Figure 2005082507
Figure 2005082507
Figure 2005082507
Figure 2005082507
Figure 2005082507
Figure 2005082507
Figure 2005082507
Figure 2005082507
一般式(I)で示される本発明の化合物は新規化合物であり、例えばR1とR2、R3
4、R5とR6、R7とR8がそれぞれ等しい場合には、下記反応に従って製造することが
できる。
Figure 2005082507
(上式中、R1、R3およびR5は前記一般式(I)で定義した通りである)
即ち、一般式(S−1)で示される臭化チエニルをn−ブチルリチウムと反応した後、ペルフルオロシクロペンテンと−100〜20℃で反応させる。この反応の溶媒としては
、例えばテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシエタン等のエーテル類が用いられる。これらのエーテル類に、ヘキサン、ペンタン等の炭化水素を混合して用いても良い。n−ブチルリチウムの使用量は、(S−1)に対して1.0−1.2倍モルであることが好ましい。ペルフルオロシクロペンテンの使用量は、(S−1)に対して0.5−0.8倍モル量であることが好ましい。反応終了後、水またはアルコール等を加えて反応を完了させ、抽出、カラムクロマトグラフィー、再結晶等の方法によって分離精製することにより、目的物である一般式(I−1)で示される化合物を得ることができる。
一般式(S−1)で示される化合物は、例えば2−チエニルボロン酸類とハロゲン化アリール類とのクロスカップリング反応、アリールボロン酸類とハロゲン化2−チエニル類とのクロスカップリング反応またはアリールGrignard反応剤とハロゲン化2−チエニル類とのクロスカップリング反応等で合成することができる。
本発明のジアリールエテン化合物は、優れたフォトクロミック材料である。これを後述するカラー線量計や光メモリ素子など各種用途に使用する場合には、前記一般式(I)で表わされる化合物から選択した一種類の化合物を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いても良い。
本発明で使用するジアリールエテン化合物は、熱不可逆性を示すものであることが好ましい。本発明において「熱不可逆性」とは、30℃の環境における閉環体の半減期が10日以上であることを意味するものとする。ジアリールエテン化合物が熱不可逆性を示すものでないと、閉環体が室温で容易に異性化反応を起こして開環体に転換してしまい、放射線の照射によって生じた変色状態が安定に保たれない可能性があるため、本発明のフォトクロミック材料をカラー線量計に使用した場合に放射線量を正確に測定することができず、不具合が生じる虞がある。
また、室内光などの環境光による着色を避けるためには、開環反応の量子収率が10-3以下であることが好ましい。より好ましくは10-4以下、特に好ましくは10-5以下である。
次に、本発明のカラー線量計について説明する。
(1)カラー線量計
本発明のカラー線量計は、前記一般式(I)で表される化合物を用いることを特徴とする。該カラー線量計の態様については後に詳述するが、例えば本発明のジアリールエテン化合物を含有する組成物、又は、該ジアリールエテン化合物を含有する層と発光体を含有する層とを含む積層体として構成することが好ましい。ここで、前者の組成物とは、前記ジアリールエテン化合物が含まれる固体及び液体を広く指すものとする。具体的には、本発明のジアリールエテン化合物を溶解又は分散させた溶液/分散液や、該ジアリールエテン化合物を含有する樹脂組成物、或いは、固体の該ジアリールエテン化合物とその他の任意成分を混合して作成した成形体等が挙げられる。
本発明のカラー線量計は、本発明のジアリールエテン化合物と、その実施態様に応じて適宜選択されるベース樹脂、溶剤、各種添加剤を含んで作成されるが、好ましくはこれに、発光体を併用して作成される。該発光体は、ジアリールエテン化合物と同じ系(同じ組成物中、同じ層中など)に含まれていてもよく、またジアリールエテン化合物を含む領域に接して、別の系として併用しても良い。
なお、前記ベース樹脂、溶剤、各種添加剤などの任意成分については、カラー線量計の実施態様と共に後に詳述するが、まずは以下に、本発明のジアリールエテン化合物と併用することが好ましい、発光体について説明する。
(1−1)発光体
本発明で使用する発光体は、放射線を照射した場合にこれを吸収して発光するものであれば、その種類は特に問わない。
本発明で使用する発光体が吸収する放射線の種類には特に制限はなく、紫外線、X線、γ線、α線、β線、電子線、中性子線等、様々な種類を挙げることができる。中でも、本発明のカラー線量計の主な用途に鑑みて、本発明で使用する発光体は、10-5〜10nmの波長帯域の放射線を吸収して発光を生じるものであることが好ましい。
従来のフォトクロミック材料を利用したカラー線量計では、紫外線よりも短波長の放射線、特にγ線、X線、中性子線等の透過力の強い放射線の線量測定が困難であった。しかし、一般にジアリールエテン化合物より原子量の大きい原子を含有する発光体を併用することにより、放射線を効率的に捕捉することが可能であり、また、励起状態の発光体からのエネルギー移動又は電子移動などによってジアリールエテン化合物の異性化反応が促進され、フォトクロミック材料の放射線に対する感度が向上する(増感作用)。
本発明で使用する発光体が発する光の種類についても、特に限定されるものではないが、ジアリールエテン化合物の開環体又は閉環体の吸収スペクトルと重複する、発光スペクトルを有する必要がある。図3に、発光体の発光スペクトルとジアリールエテン化合物の吸収スペクトルとの重複を模式的に表した。
中でも、紫外線波長領域に発光ピークを有する、つまり励起エネルギーのレベルがジアリールエテン化合物よりも高いと考えられる蛍光体(紫外線発光蛍光体)であることが好ましい。特に、10〜400nmの紫外線波長帯域の光を発するものであることが好ましい。
また、本発明で使用する発光体は、無機化合物であることが好ましい。
また、本発明で使用する発光体は、放射線に対する感度が高く、発光量が充分に大きいものであることが好ましい。中でも、一般に原子番号の大きい原子(重原子)ほど放射線に対する感受性が強いことから、こうした重原子を含む発光体であって、放射線の照射によって発光するものが、好適に使用できる。具体的には、原子番号が19番以上の元素を含む発光体が好ましく、中でも、原子番号が37番以上の元素を含む発光体がより好ましい。
本発明で使用する発光体の具体例としては、3Ca3(PO42・Ca(F,Cl)2:Sb3+、3Ca3(PO42・Ca(F,Cl)2:Sb3+,Mn2+、Sr10(PO46Cl2:Eu2+、(Sr,Ca)10(PO46Cl2:Eu2+、(Sr,Ca)10(PO46Cl2・nB23:Eu2+、(Ba,Ca,Mg)10(PO46Cl2:Eu2+等のハロりん酸塩蛍光体、Sr227:Sn2+、Ba227:Ti4+、(Sr,Mg)3(PO42:Sn2+、Ca3(PO42:Tl+、(Ca,Zn)3(PO42:Tl+、Sr227:Eu2+、SrMgP27:Eu2+、Sr3(PO42:Eu2+、2SrO・0.84P25・0.16B23:Eu2+、LaPO4:Ce3+,Tb3+、La23・0.2SiO2
・0.9P25:Ce3+,Tb3+、Zn3(PO42:Mn2+、(Sr,Mg)3(PO4
2:Cu+等のりん酸塩蛍光体、Zn2SiO4:Mn2+、CaSiO3:Pb2+,Mn2+
、(Ba,Sr,Mg)3Si27:Pb2+、(Ba,Mg,Zn)3Si27:Pb2+、BaSi2O:Pb2+、Sr2Si38・2SrCl2:Eu2+、Ba3MgSi28:Eu2+、(Sr,Ba)Al2Si28:Eu2+、Y2SiO5:Ce3+,Tb3+等のけい酸塩
蛍光体、CaWO4、CaWO4:Pb2+、MgWO4等のタングステン酸塩蛍光体、Li
AlO2:Fe3+、BaAl813:Eu2+、BaMgAl1017:Eu2+、BaMgAl1017:Eu2+,Mn2+、Sr4Al1425:Eu2+、SrMgAl1017:Eu2+、C
eMgAl1119:Tb3+、CeMgAl1119、(Ce,Gd)(Mg,Ba)Al1119、Y23・Al23:Tb3+、Y3Al5O112:Ce3+等のアルミン酸塩蛍光体、そ
の他Y23:Eu3+、YVO4:Eu3+、Y(P,V)O4:Eu3+、YVO4:Dy3+
Cd225:Mn2+、SrB47:Eu2+、SrB47F:Eu2+、GdMgB510:Ce3+,Tb3+、6MgO・As25:Mn4+、3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn4+、MgGa24:Mn2+、ZnS:Ag、(Zn,Cd)S:Ag、(Zn,Cd)S:Cu,Al、ZnS:Ag、ZnS:Cu,Al、ZnS:Au,Cu,Al、CsI:Na、CsI:Tl、BaSO4:Eu2+、Gd22S:Tb3+、La22S:
Tb3+、Y22S:Tb3+、Y22S:Eu3+、LaOBr:Tb3+、LaOBr:Tm3+、BaFCl:Eu2+、BaFBr:Eu2+、HfP27、LiF、Li247:M
2+、CaF2:Mn2+、CaSO4:Mn2+、CaSO4:Dy3+、Mg2SiO4:Tb3+、CaF2:Eu2+、LiI:Eu2+、TlCl:Be,I、CsF、BaF2、Bi4Ge312、Kl:Tl、CaWO4、CdWO4等、実用蛍光体として用いられている様々
な発光体を挙げることができる。なお、これらの発光体は、公知の手法を用いて適宜合成することが可能である。これらの発光体は、その多くが上に述べた原子番号が19番以上の元素や原子番号が37番以上の元素を含んでいることから、放射線に対する感度が高く、発光量も充分に大きい。
これらの中でも特に、Ca3(PO42:Tl+、(Ca,Zn)3(PO42:Tl+、SrMgP27:Eu2+、SrB47F:Eu2+、(Ba,Sr,Mg)3Si27:P
2+、(Ba,Mg,Zn)3Si27:Pb2+、BaSi25:Pb2+、(Sr,Ba
)Al2Si28:Eu2+、CeMgAl1119、(Ce,Gd)(Mg,Ba)Al11
19、SrB47:Eu2+、CsF、BaF2、BaSO4:Eu2+、BaFCl:Eu2+、BaFBr:Eu2+、HfP27、LiF等の紫外線発光蛍光体が好ましい。
なお、前記各種蛍光体に代表される発光体は、単独で使用してもよく、複数種併用してもよい。
本発明に使用する蛍光体としては、照射光に対する発光効率が高いものが好ましい。つまり、カラー線量計で検出したい波長の光による刺激に対する、発光効率が高いものが好ましい。
また、蛍光体の密度が高い方が、検出したい光を細くする能力が高いため、好ましい。
(1−2)ジアリールエテン化合物と発光体との組み合わせ
上記発光体は、その発光スペクトルの一部又は全部が、本発明のジアリールエテン化合物の開環体又は閉環体の吸収スペクトルと重なるものを選択することが好ましい。この様に構成することで、本発明のジアリールエテン化合物をカラー線量計に使用した場合に、放射線の照射によって発光体の電子が励起状態となり、その励起状態からエネルギー又は電子がジアリールエテン化合物の励起状態へ移動することによって、ジアリールエテン化合物の異性化反応が起こって変色するので、照射された放射線を効率的に検出することができ、その線量を高い感度で測定することが可能となる。
例えば、ジアリールエテン化合物の開環体から閉環体への異性化反応を効率よく生じさせるには、10〜400nmの紫外線波長帯域が好ましい。よって、このジアリールエテン化合物との組み合わせで使用する発光体は、主にこの紫外線波長帯域に発光波長帯域を有することが好ましい(すなわち、先に列挙した紫外線発光蛍光体)、ということになる。
特に、発光体の発光スペクトルと、ジアリールエテン化合物の開環体又は閉環体の極大吸収波長を含む吸収帯とは、できるだけ広い範囲にわたって重複していることが好ましい。
また、発光体の発光スペクトルは、ジアリールエテン化合物の開環体の吸収スペクトルと重複することが好ましい。その理由としては、開環体は通常、放射線波長領域に吸収を有していること、開環反応より閉環反応の方が量子収率が高い場合が多いこと、閉環体の
方が開環体より濃色である化合物が多いので、閉環体の生成で被爆を検出する方が容易であること、等が挙げられる。
なお、本発明に用いる発光体は、一種類であっても二種類以上を併用しても良い。特に、ジアリールエテン化合物の吸収スペクトルピークがシャープである場合には、該ピーク波長に近い発光スペクトルを有する発光体を単独で使用することにより、特定波長領域において強い発光を得ることができ、放射線の検出感度を高めることができる。また、ジアリールエテン化合物の吸収スペクトルピークがブロードである場合には、異なる波長領域の発光を呈する2つ以上の発光体を併用すれば、幅広い波長領域において発光を得ることができ、放射線を効率的に検出することが可能となる。
(2)フォトクロミック材料の態様とカラー線量計
前述したように、本発明のカラー線量計は、前記ジアリールエテン化合物を含む組成物や積層体を用いて形成される。発光体を併用する場合には、前記ジアリールエテン化合物と発光体とを含有する組成物、又は、該ジアリールエテン化合物を含有する層と発光体を含有する層とを含む積層体として構成することが好ましい。具体的には、前記ジアリールエテン化合物を溶解又は分散させるとともに発光体を分散させたジアリールエテン化合物の溶液/分散液や、前記ジアリールエテン化合物と発光体とを含有する樹脂組成物、或いは、各々固体のジアリールエテン化合物と発光体とを混合して作成した成形体等が挙げられる。
このように構成された組成物や積層体は、その態様に応じた方法で、カラー線量計として使用することができる。
以下、組成物や積層体、及びこれらのカラー線量計としての利用方法について、各態様毎に詳しく説明する。
(2−1)溶液又は分散液
ジアリールエテン化合物の溶液/分散液は、前記ジアリールエテン化合物を溶媒又は分散媒に溶解又は分散させるとともに、前記発光体を同じ溶媒又は分散媒に分散させることにより、作成することができる。
溶媒(分散媒)としては、前記ジアリールエテン化合物を好適に溶解或いは分散させるものであって、且つ、カラー線量計として用いた場合に放射線暴露に因るジアリールエテン化合物の変色状態の検出を妨げないものであれば、特に限定されない。具体的には、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶媒、ヘキサン等の脂族溶媒、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶媒、クロロホルム等の塩素系溶媒等、各種の有機溶媒が挙げられる。中でも、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶媒が好ましい。
前述の溶媒(分散媒)に対して、前記ジアリールエテン化合物を溶解或いは分散させるとともに、前記発光体を分散させて、ジアリールエテン化合物の溶液/分散液を作成する。ジアリールエテン化合物の添加量は、溶液又は分散液に対して10-5〜10mol/lの範囲が好ましく、発光体の添加量は、溶液又は分散液に対して0.5〜100重量%の範囲が好ましい。なお、前記ジアリールエテン化合物及び発光体を分散させる場合には、これを溶液又は分散液中に均一に分散させるために、公知の分散剤等を分有させてもよい。
こうして作成されたジアリールエテン化合物の溶液又は分散液を、不純物を含まない石英セル等に封入すれば、カラー線量計となる。作成したセルを放射線に曝露すると、放射線の線量に応じて溶液又は分散液の色調が変化する。この吸収、透過又は反射スペクトルを測定し、吸光度、透過率又は反射率の変化量を計測することにより、放射線の線量を見積もることができる。
(2−2)樹脂組成物
樹脂組成物は、例えば、(a)前記ジアリールエテン化合物及び発光体をベース樹脂とともに溶媒(分散媒)に溶解(分散)させるか、又は、(b)前記ジアリールエテン化合物及び発光体をベース樹脂に直接溶解(分散)させることにより、作成することができる。
ベース樹脂としては、前記ジアリールエテン化合物を好適に溶解或いは分散させるものであれば、特に限定されない。具体的には、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリナフタレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等が挙げられる。
前記(a)の手法により作成する場合、溶媒(分散媒)としては、前記ジアリールエテン化合物を好適に溶解或いは分散させるとともに、前記ベース樹脂を好適に溶解或いは分散させるもので、且つ、成膜加工の際の妨げにならないものであれば、特に限定されない。具体的には、ベンゼン、トルエン等の芳香族溶媒、ヘキサン等の脂肪族溶媒、THF等のエーテル系溶媒、クロロホルム等の塩素系溶媒等、各種の有機溶媒が挙げられる。
この溶媒(分散媒)に前記ジアリールエテン化合物を溶解或いは分散させ、続いて前記発光体を添加し分散させて、樹脂組成物を作成する。ジアリールエテン化合物の添加量は、ベース樹脂100重量部に対して0.2〜200重量部の範囲が好ましく、発光体の添加量は、ベース樹脂100重量部に対して1〜2000重量部の範囲が好ましく、5〜2000重量部の範囲がより好ましい。なお、公知の分散剤、酸化防止剤、酸素トラップ剤、可塑剤等を添加してもよい。
一方、前記(b)の手法による場合は、前記ジアリールエテン化合物及び発光体を、前記ベース樹脂に直接練り混んで、樹脂組成物を作成する。
こうして作成された樹脂組成物を、射出成形や押し出し成形、ヒートプレス法など公知の方法を用いて、フィルム状や棒状等に成形加工すれば、カラー線量計となる。特に、フィルム状に加工する場合には、キャスト法、スピンコート法、バーコーター法、ダイキャスト法など、種々の公知技術を用いて成膜加工することができる。膜の厚さは、カラー線量計としての趣旨を逸脱するものでなければ特に限定されないが、0.01〜10mmの範囲が好ましい。
成形加工された樹脂組成物を放射線に曝露すると、放射線の線量に応じて色調が変化する。この吸収、透過又は反射スペクトルを測定し、吸光度、透過率又は反射率の変化量を計測することにより、放射線の線量を見積もることができる。
(2−3)成形体
本発明のフォトクロミック材料の一態様である成形体は、前記ジアリールエテン化合物及び発光体を混合し、この混合物を圧縮して特定形状の固形物に成形することにより、作成することができる。
具体的には、中央粒径10nm〜50μm程度に粒度を調整した発光体粉末、中央粒径10nm〜100μm程度に粒度を調整した前記ジアリールエテン化合物、及び、必要に応じて結合剤を十分に混合した後、混合粉末を成形型に充填し1MPa〜1GPaの圧力となるように圧縮成形する。発光体の中央粒径が10nmより小さいと、凝集した粉末となってしまうために、ジアリールエテン化合物との混合が十分になされない場合がある。一方、その中央粒径が50μmを越えると、成形体としての形状を保つことが困難となる虞がある。
ジアリールエテン化合物の中央粒径は、通常10nm〜100μm程度であるが、発光体の隙間に入り込める粒径であればなお好ましい。よって好ましくは10nm〜50μm程度である。
添加する結合剤は、無機粉末に用いられる結合剤として一般に知られているものであれば、特に限定されない。具体的には、水ガラス等の水溶性物質、シリカゾルやアルミナゾル等のゾル状物質、水和反応を起こす各種セメント等の無機系結合剤の他、硝化綿、酢酸セルロース、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、線状ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニリデン−塩化ビニルコポリマー、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリアルキル−(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、セルロースアセテートブチレート、ポリビニルアルコール、ゼラチン、デキストリン等のポリサッカライド、アラビアゴム等等の有機系結合剤が挙げられる。
成形体の形状は、カラー線量計として使用する形状に合わせて、任意の形状のものを使用することができる。例えば、カラー線量計を平板状で使用する場合には、金型に混合粉末を充填した後に一軸成形機や二軸成形機を使用して圧縮して平板状に成形する。また、複雑形状に成形する場合には、複雑形状のゴム型に混合粉末を充填した後、静水圧プレス機を使用して圧縮し、複雑形状に成形する。圧縮成形圧力は、1MPa〜1GPaの面圧となるようにするのが好ましい。圧力が1MPaより小さいと、充分な機械的強度が付与されないため成形体がその形状を維持できない虞がある。一方、圧力が1GPaより大きいと、成形に必要以上の設備が必要となり、余分なコストが掛かってしまう可能性がある。
一方、発光体粉末を成形し焼成して得た焼結体に前記ジアリールエテン化合物を含浸又は塗布することにより、強度の高い焼結体からなる成形体を作成することもできる。この場合は、前記粒度に調整した発光体粉末、及び、必要に応じて前記結合剤を充分に混合し、圧縮成形した後に、発光体の種類に合った焼成条件で成形体を焼成し、得られた緻密な焼結体の表面に前記ジアリールエテン化合物を塗布するか、もしくは得られた多孔質の焼結体の内部に前記ジアリールエテン化合物を含浸させる。塗布や含浸する際には、前記ジアリールエテン化合物を通切な溶媒に溶解又は分散させてから実施する。また、発光体の種類に合った焼成条件とは、発光体粉末を合成する際に採用される焼成温度、保持時間、雰囲気に近い条件が好ましい。好ましい焼成温度域は500〜1900℃、保持時間は10分間〜48時間、雰囲気は発光体組成と発光イオンの種類により酸化雰囲気、還元雰囲気、硫化雰囲気などに調整する。
こうしてフィルム状や棒状、板状等、所望の形状に成形された成形体は、そのままカラー線量計として利用できる。作成した成形体を放射線に曝露すると、放射線の線量に応じて成形体の色調が変化する。この吸収、透過又は反射スペクトルを測定し、吸光度、透過率又は反射率の変化量を計測することにより、放射線の線量を見積もることができる。
(2−4)積層体
積層体は、前記ジアリールエテン化合物を含有する層と発光体を含有する層とを、少なくとも有することを特徴としている。
ここで、本発明のジアリールエテン化合物を用いた積層体の層構成の例を、図1及び図2を用いて説明するが、勿論これらに限定されるものではない。なお、図1及び図2は何れも、積層体の層構成の例を模式的に示す断面図である。
図1に示す層構成の例では、支持体1上に前記発光体を含有する発光層2を設け、該発光層2上に更に、前記ジアリールエテン化合物を含有するフォトクロミック層3を設けて、積層体10を作成する。また、こうして作成した積層体10を2つ用意し、各々の支持体1の面を互いに向かい合わせて2つの積層体10を密着させ、接着して一つの積層体(
図示せず)としてもよい。
図2に示す層構成の例では、図1に示す例と同様に支持体1、発光層2、フォトクロミック層3という層構成の積層体を作成するとともに、別に用意した支持体1'上に更に発
光層2'を設けて別の積層体を作成する。前者のフォトクロミック層3と後者の発光層2'とを互いに向かい合わせてこれら2つの積層体を密着させ、接着して新たな積層体11を作成する。
支持体1及び1'の材質は、発光層2及び2'並びにフォトクロミック層3の形状の安定性を確保できるものであって、本発明のカラー線量計の趣旨を損なわないものであれば、特に限定されない。具体的には、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリイミド、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリカーボネートなどの樹脂をフィルム状に成形したもの、バライタ紙、レジンコート紙、通常の紙、アルミニウム合金箔等が挙げられる。これらの中でも、樹脂フィルムや紙等の素材を使用する場合には、これらの素材にカーボンブラック等の光吸収物質や二酸化チタン、炭酸カルシウム等の光反射性物質を、直接練り込むなどして予め混入させておいてもよい。
発光層2及び2'は、適当量の発光体を結合剤と混合し、これに有機溶剤を加えて適当
な粘度の発光体塗布液を調製し、この塗布液をナイフコーターやロールコーター等によって支持体1又は1'上に塗布し、乾燥させることにより作成する。また、この発光体塗布
液に、必要に応じてフタル酸、ステアリン酸等の分散剤や燐酸トリフェニル、フタル酸ジエチル等の可塑剤を添加してもよい。結合剤は、発光体の結合剤として一般に知られているものであれば、特に限定されない。具体的には、硝化綿、酢酸セルロース、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、線状ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニリデン−塩化ビニルコポリマー、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリアルキル−(メタ)アクリレー
ト、ポリカーボネート、ポリウレタン、セルロースアセテートブチレート、ポリビニルアルコール、ゼラチン、デキストリン等のポリサッカライド、アラビアゴム等が挙げられる。また、有機溶剤は、発光体を分散させるものであれば、特に限定されない。例えばエタノール等のアルコール系溶媒、メチルエチルエーテル等のエーテル系溶媒、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸ブチルや酢酸エチル等のエステル系溶媒、キシレン等の芳香族系溶媒等が挙げられる。支持体1又は1'上に塗布する発光体の最終的な重量として
は、一般に30〜200mg/cm2が好ましい。塗布重量が30mg/cm2を下回ると、放射線に対する感受性が低下するために線量計の感度が低下する傾向があり、逆に200mg/cm2を上回ると、放射線に対する感受性が飽和するために線量計の感度の向上
が頭打ちとなる虞がある。
フォトクロミック層3は、必要に応じてベース樹脂等とともに、ジアリールエテン化合物を有機溶媒に溶解し、キャスト法、スピンコート法等の公知の技術を使ってフィルム状に加工することにより作成する。ベース樹脂を使用する場合、このベース樹脂は、ジアリールエテン化合物を溶解又は分散させるものであれば、特に限定されない。具体的には、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート類等、(2−2)樹脂組成物の項で挙げたベース樹脂が何れも挙げられる。ジアリールエテン化合物の含有量としては、ベース樹脂100重量部に対して0.1〜50重量部が好ましい。有機溶媒は、ジアリールエテン化合物を溶解又は分散し、ベース樹脂を溶解させるものであれば、特に限定されない。具体的には、トルエン、THF等、(2−2)樹脂組成物の項で挙げたものが何れもが挙げられる。また、ジアリールエテン化合物をベース樹脂に直接練り混み、押し出し成形法や射出成型法等の従来公知技術を使用して、フィルム状に加工することにより作成してもよい。層の厚さとしては、0.01〜10mmの範囲が好ましい。
なお、支持体1又は1'と発光層2又は2'との間には、必要に応じて光反射層、光吸収層或いは金属箔層等を設けてもよい。この場合には、予め支持体1又は1'上に光反射層
、光吸収層或いは金属箔層を設けておき、この上に前記発光体塗布液を塗布、乾燥することによって、発光層2又は2'を形成する。
また、発光層2又は2'のフォトクロミック層3と接する面に、必要に応じて保護膜を
形成してもよい。保護膜は、酢酸セルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート等のセルロース誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリカーボネート、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルホルマール、ポリウレタン等の樹脂を溶剤に溶解させて適当な粘度の保護膜塗布液を調製し、これを先に形成した発光層2又は2'上に塗布、乾燥することにより
、或いは、予め成形された保護膜、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミドなどの透明フィルムを、先に形成した発光層2又は2'
上にラミ
ネートすることにより形成する。
なお、この場合、発光層2又は2'は、上述した製造方法とは異なる方法によって製造
することも可能である。即ち、予め平滑な支持基板上に保護膜を形成しておき、その上に発光層2又は2'を形成したのち、これを保護膜とともに該支持基板から剥離し、支持体
1又は1'上に転写する。図2に示す層構成の場合、発光層2及び2'に用いる発光体は、同一であっても異なっていても良い。
また、図2に示す層構成では、放射線曝露に伴うフォトクロミック層3の変色を積層体11の外部から視認及び計測できるようにするために、支持体1及び1'のうち少なくと
も一方に、無色透明な材質を用いることが好ましい。その場合該透明支持体に、後述する紫外線防止の処置を施すことが好ましい。
以上、図1及び図2を用いて説明した積層体10,11の層構成は、あくまでも好ましい例に過ぎず、その他にも上述した各層(図示した支持体1,1'、発光層2,2'、フォトクロミック層3に加え、光反射層、光吸収層、金属箔層、保護層等)を任意の組み合わせ及び順序で積層し、場合によっては新たな層を付加することによって、原理的には無数の層構成が可能である。
こうして作成された積層体10,11をそのまま、或いは必要に応じて成形し、カラー線量計として用いることができる。作成された積層体10,11を放射線に曝露すると、放射線の線量に応じて色調が変化する。この吸収、透過又は反射スペクトルを測定し、吸光度、透過率又は反射率の変化量を機械的に、又は目視で計測することにより、放射線の線量を見積もることができる。
なお、上述した積層体10,11の各層間を接着するのではなく、各層を分離可能に構成することもできる。具体的には、図2の層構成において、発光層2,2'とフォトクロ
ミック層3との間を接着せずに構成すれば、積層体11は、支持体1及び発光層2からなる部分と、支持体1'及び発光層2'からなる部分と、フォトクロミック層3からなる部分に分離できることになる。これらの部分を全て積層した状態で放射線に曝露した後、フォトクロミック層3からなる部分のみを取り出して変色状態を測定する構成とすれば、積層体11の中央に存在するフォトクロミック層3の変色状態を外部から測定する必要が無いので、支持体1,1'や発光層2,2'を充分厚く構成することができ、ひいては、放射線の検出感
度をより高めることが可能となる。
なお、上述した各実施態様のうち、放射線により励起された発光体からジアリールエテ
ン化合物への、エネルギー移動又は電子移動が容易である点からは、(2−1)〜(2−3)に代表される組成物が好ましく、製造の容易さ、及びカラー線量計としたときの取扱の容易さからは、(2−2)樹脂組成物又は(2−3)成形体が好ましい。最も好ましいのは、(2−2)樹脂組成物である。
本発明のジアリールエテン化合物には、更に紫外線吸収剤を併用しても良い。
具体的には、前記(2−1)〜(2−3)に代表される組成物の場合には、紫外線吸収剤を該組成物の1成分として含有させてもよいし、該組成物を用いて形成したカラー線量計の表面に、紫外線カット層を設けても良い。また本発明のジアリールエテン化合物を用いて積層体を形成する場合には、該積層体を構成する何れかの層の中に紫外線吸収剤を含有させても良いし、積層体における検出用の放射線入射側に、紫外線カット層を更に積層させても良い。
紫外線カット層は、波長10〜450nmの光をカットするものが好ましい。なお、本発明において、波長10〜450nmの光を「カットする」とは、該波長領域の光透過率を5%以下、好ましくは3%以下とすることを意味する。
このような層を設けたり、紫外線吸収剤を含有させたりすることにより、検出すべき電離放射線による反応以外に、環境光中などに含まれる紫外線により化合物が反応することが防止され、線量検出の精度が向上する。
環境光に含まれる、波長380nm〜波長450nm程度の光を吸収するためには、該波長領域に吸収をもつ色素、つまり黄色色素を併用することが好ましい。このような色素に特に制限はないが、例えばオリエント化学工業(株)製OIL YELLOW 3G、BASF社製Neptune(TM) Gelb 075、BAYEL LTD製MACROLEX YELLOW 6Gなどが挙げられる。これらの色素は、その使用形態から、有機溶剤や樹脂になじみやすい油溶性樹脂であることが好ましい。
環境光による線量検出精度への影響、及び性能劣化を防ぐためには、波長450nmを超える波長領域の光をも多少カットしてもかまわない。しかし、可視光波長領域の光をカットすることにより、該層が着色するため、カラー線量計における表示部分の色変化が判別し難くなる虞がある。より好ましくは、多くのジアリールエテン系フォトクロミック材料に関し、開環体の最大吸収波長が存在する波長230〜420nmの光をカットする層を設けることが好ましい。
紫外線カット層の形成方法に特に制限はなく、カラー線量計の形態に応じて、適宜形成すればよい。例えばカラー線量計表面に、公知の紫外線吸収剤を含む組成物を塗布・乾燥・硬化させることにより形成してもよく、また予め紫外線吸収剤を含むフィルムを形成し、これを線量計表面に貼り付けても良い。
紫外線カット層に含有させる紫外線吸収剤、及び、本発明のジアリールエテン化合物を含む組成物や積層体に含有させる紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、アリールエステル系などの公知の化合物が挙げられる。
具体的には、例えば、BASF社製UVINUL D−49,UVINUL D−50;ケミプロ化成(株)製Kemisorb1011,Kemisorb1001;アデカ・アーガス化学(株)製MARK LA−51,MARKLA−31;住友化学(株)製Sumisorb250;竹本油脂(株)社製UVA101;チバスペシャルティ ケミ
カルズ社製Tinuvin213,Tinuvin327,Tinuvin1577,SandozのSandouvor3206などがあげられる。
紫外線カット層の形成方法としては、市販の、或いは予め形成しておいた紫外線カット
フィルムを貼付する方法も挙げられる。
紫外線カットフィルムとしては、ポリイミドフィルムや紫外線吸収剤を塗布又は練り混んだフィルムなどがあげられる。例えば、富士写真フイルム(株)社製UVGard;3M社製Scotchtint(TM)スーパーレイヤーSCLARL150,SCLARL400,SCLARL600,ULTRA600,ムシクリアーEco RE80CLIS;三菱化学ポリエステルフィルム(株)社製のハローウインド−TKクリア、BZA−50Kなどの市販の紫外線カットフィルムを使用することができる。
また、紫外線カットフィルムは適宜自製することもできる。バインダー樹脂、上記記載の紫外線吸収剤の他に適宜油溶性色素(前述の黄色色素)を添加して得られた組成物を用いて、公知の方法でフィルムを作成する。該組成物を適当な溶媒に溶解後、バーコーターやダイコーターなど公知の方法を用いて塗布することで作成できる。又はバインダー樹脂、紫外線吸収剤、適宜油溶性色素を混合し、熱を加えて樹脂に練り混み、押し出し成形機等公知技術でフィルム状に加工することでできる。バインダー樹脂としてはポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどがあげられる。紫外線吸収剤の含有量としては固形分の1〜30重量%が好ましい。
油溶性色素は、黄色色素として前述した化合物をはじめ、市販のものから適宜選択すればよい。該色素の添加量としては固形分の0.01〜20重量%が好ましい。
溶媒としてはバインダー樹脂、紫外線吸収剤、油溶性色素などを溶解するものであれば何でもよい。例えば、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン等の芳香族系溶媒、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、メチルアミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル−2−アセテート等のプロピレングリコール系溶媒などがあげられる。
紫外線カットフィルムの厚みは、0.01μm〜500μm程度の範囲が好ましい。
紫外線吸収剤や前記黄色色素は、それぞれ2種類以上混合して使用してもよい。複数種類を併用することにより、より広い範囲の光線を効率よく吸収できるため好ましい。
本発明のジアリールエテン化合物の使用形態が、前記(2−1)〜(2−3)に代表される組成物である場合、前述のように、該組成物中に紫外線吸収剤を含有させてもよい。この紫外線吸収剤としては、紫外線カット層に含まれるものとして前記した化合物と同様の化合物が挙げられる。
本発明のカラー線量計における、紫外線による劣化防止手段としては、紫外線カット層を設ける方法がより好ましい。
本発明のカラー線量計は、(2−1)で説明したように、溶液又は分散液をセルに封入したものや、(2−2)で説明した樹脂組成物を所望の形状に成形したもの、(2−3)で説明した成形体を所望の形状に成形したもの、或いは(2−4)積層体などが挙げられる。中でも、輸血用血液などの医療用具への使用という観点からは、これらを用いたタグ状又はシール状のものが好ましい。
具体的には、これらジアリールエテン化合物を含むセルや成形物などを、フィルム状又は板状の基材の一部又は全面に貼付して、該基材をタグ状に形成し、輸血用血液バッグや医療用器具に結び付けることにより利用する方法が挙げられる。2枚の基材間に、本発明のジアリールエテン化合物を含む積層体や組成物などを挟み、これをタグ状に形成しても良い。また、(2−4)積層体の支持層をタグ状に形成し、同様に血液バッグや医療用器具に結び付けて使用する方法が挙げられる。結び付ける方法に特に制限は無く、血液バッグや医療用危惧の形状に応じ、適宜選択すれば良い。
シール状のカラー線量計としては、同様に、基材の一部又は全面にジアリールエテン化合物を含む層を設けて、或いはジアリールエテン化合物を含むセルや成形物を貼付して、裏面に接着剤層又は粘着剤層を形成した後、これを血液バッグや医療用器具に貼付して使用する方法が挙げられる。
2枚の基材間に、本発明のジアリールエテン化合物を含む積層体や組成物などを挟み、これをシール状に形成しても良い。また(2−4)積層体の支持層自体の裏面に、接着剤層又は粘着剤層を設けて、シール状にしてもよい。接着剤層及び粘着剤層は、接着剤や粘着剤を塗布することにより形成してもよく、また市販の両面テープなどを利用しても良い。
図4(I)〜(III)は何れも、本発明のジアリールエテン化合物を用いたシール状の
カラー線量計の例を示す図である。(I)〜(III)の各々において、(a)はカラー線
量計の正面図、(b)は断面図である。
図4(I)に示すカラー線量計は、ジアリールエテン化合物を含む領域(以下、フォトクロミック領域と称す)4を遮光性基材5と紫外線吸収性の透明基材5’との間に狭んで接着して構成される。また、遮光性基材5のフォトクロミック領域4と接する面と反対側の面には、接着剤層又は両面テープ6を設け、この上を剥離紙7で被覆して保護する。カラー線量計の使用時には、剥離紙7を剥離して接着剤層又は両面テープ6を露出し、衣服や物品等の所望の箇所に貼付して使用する。
図4(II)に示すカラー線量計は、図4(I)の紫外線吸収性の透明基材5’を使用する代わりに、紫外線吸収性の透明フィルム8をフォトクロミック領域4の上から遮光性基材5に接着することにより、フォトクロミック領域4を被覆して遮光性基材5に固定している。紫外線吸収性の透明フィルム8が接着されていない遮光性基材5の表面部は、日時や名前等の必要事項の記入に使用することができる。
図4(III)に示すカラー線量計は、図4(II)の構成において、紫外線吸収性の透明
フィルム8の上から、更に遮光性基材5を接着して強化を図ったものである。遮光性基材5のフォトクロミック領域4上に位置する部分には、開口部又は紫外線吸収剤を含有する透明部9が設けられ、被爆時の視認性が高められている。
図5は、タグ状のカラー線量計の例を示す。本発明のフォトクロミック領域4を設けられたタグ状カラー線量計20,20’は、血液バッグ30の持ち手部分に一部を折り返して取り付けたり(符号20)、紐等を用いて取り付けたり(符号20’)することができる様に構成される。
勿論、本発明のジアリールエテン化合物を用いたカラー線量計は、前記図4及び図5に図示した形態や、これらの図を用いて説明した形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、様々な形態として構成することが可能である。
続いて、本発明の光メモリ素子について説明する。
前述のカラー線量計と同様、光メモリ素子の場合も、これに使用するジアリールエテン化合物は熱不可逆性であるものが好ましく、また開環量子収率が低い方が好ましい。好ましい開環量子収率の値は、カラー線量計の場合と同様である。
さらに、記録感度及び信号強度の点からは、開環体及び閉環体の分子吸光係数の大きな化合物であることが好ましい。特に、記録後の屈折率変化を大きくするために、閉環体の最大吸収波長ピークにおける分子吸光係数が10000以上であることが好ましい。前記一般式(I)で表される化合物は、分子吸光係数の大きな化合物を得る上でも好ましい。
次に、図面を参照して、本発明に係る光メモリ素子について説明する。
図1〜3は本発明に係る光メモリ素子の構成例を示す模式的な断面図である。
本発明の光メモリ素子の代表的なものとしては、(a)ピット記録方式と、(b)ホログラム記録方式のものが挙げられる。前者の例としては、CD−RやDVD−R等、現行の有機色素を使用した光ディスクが挙げられ、後者の例としては導波路型デバイス等が挙げられる。
まず、図6,7を参照して(a)ピット記録方式の光メモリ素子について説明する。
図6は、(a)タイプの光メモリ素子の層構成の一例を示す模式的な断面図である。この光メモリ素子は、基板41と、その上に設けられた、前記一般式(I)で表されるジアリールエテン系フォトクロミック材料を含む記録層42とを有する。図示はしないが、更に記録層42上に保護被膜を設けても良く、記録層と保護被膜との間に記録層と保護被膜層との混和を防止するための障壁層が設けられていても良い。また、基板41と記録層42との間に中間層が設けられても良く、記録層42のどちらか一方の面に反射層を設けても良い。
図7は、図6に示す光メモリ素子の記録層42に反射層43を積層したもの2枚を、反射層43側が対面するように接着剤層4で貼り合わせてなる、両面記録可能な光メモリ素子の断面図である。なお、1枚の基板の両面にそれぞれ記録層を形成して、両面記録可能な光メモリ素子としても良い。
このような光メモリ素子に対し、対物レンズにて集光された記録用レーザー光を照射することにより、記録層中に光学的特性が変化した部分(記録マーク)を形成し、マーク長変調(或いはマーク位置変調)記録を行うことができる。
以下に、図6,7の光メモリ素子を構成する各層について説明する。
1)基板について
本発明に係る光メモリ素子の基板材料としては、必要な強度、耐久性を有していれば特に限定されるものではなく、従来から光学的記録媒体の基板として用いられている材料、例えばアクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン系樹脂(特に非晶質ポリオレフィン)、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂からなるもの、ガラスからなるもの、ガラス上に光硬化性樹脂等の放射線硬化樹脂からなる樹脂層を設けたもの等がいずれも使用可能である。
なお、高生産性、コスト、耐吸湿性などの点からは、基板材料としては、射出成形ポリカーボネートが好ましく、耐薬品性、耐吸湿性などの点からは、非晶質ポリオレフィンが好ましく、また、高速回転時の機械的安定性などの点からは、ガラス基板が好ましい。
記録光及び再生光を基板の反対側から入射する場合には、基板が該波長に対して透過性である必要はないため、高速回転時の振動防止等のために、ポリカーボネート等の樹脂に、カーボンファイバー等のフィラーを入れて剛性を高めた材料を用いても良い。
基板の板面には、記録/再生光のトラッキング用案内溝やピット等が形成されていても良い。このような案内溝やピットは、基板の成形時に付与することが好ましいが、成形後の基板上に紫外線(UV)硬化樹脂層を形成して付与することもできる。案内溝がスパイラル状の場合、この溝ピッチは0.1〜1.6μm程度であることが好ましい。
2)記録層について
記録層は、基板上、又は基板上に必要に応じて任意の中間層等を設けた上に、本発明のジアリールエテン化合物含んで形成される。本発明のジアリールエテン化合物は、環境光による記録部の消滅(光退色)が抑えられ、かつ閉環体の最大吸収波長ピークにおける分子吸光係数が10000以上と大きいといった、優れた性能を有する化合物である場合が多い。このような化合物を用いることにより、記録後の屈折率変化が大きくなり、信号を読み取り易くなるという利点がある。
記録層の成膜方法としては、真空蒸着法、ドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法等、一般に行われている薄膜形成法が挙げられるが、量産性、コスト面からはスピンコート法が好ましい。また、厚みの均一な記録層が得られるという点からは、塗布法より真空蒸着法の方が好ましい。
スピンコート法による成膜の場合、回転数は10〜15000rpmが好ましく、スピンコートの後、加熱或いは溶媒蒸気に当てる等の処理を行っても良い。
ドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法等の塗布方法により記録層を形成する場合の塗布溶媒としては、基板を侵さない溶媒が好ましく、例えば、ジアセトンアルコール、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン等のケトンアルコール系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;nーヘキサン、n−オクタン等の鎖状炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、n−ブチルシクロヘキサン、tert−ブチルシクロヘキサン、シクロオクタン等の環状炭化水素系溶媒;テトラフルオロプロパノール、オクタフルオロペンタノール、ヘキサフルオロブタノール等のパーフルオロアルキルアルコール系溶媒;乳酸メチル、乳酸エチル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル等のヒドロキシカルボン酸エステル系溶媒等が挙げられる。
塩化メチレン、シクロヘキサノン、キシレン、メチルイソブチルケトン、トルエン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の、樹脂製の基板を侵す虞のある溶媒を使用する場合には、耐溶剤性が高い酸化ケイ素、窒化ケイ素、MgF2、SnO2等の無機物質や熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、UV硬化性樹脂等からなる中間層を予め形成しておき、該中間層上に各種塗布法により記録層を形成することが好ましい。
真空蒸着法の場合は、例えばジアリールエテン化合物と、必要に応じて各種添加剤等の記録層成分を、真空容器内に設置されたるつぼに入れ、真空容器内を真空ポンプで10-2〜10-5Pa程度にまで排気した後、るつぼを加熱して記録層成分を蒸発させ、るつぼと向き合って置かれた基板上に蒸着させることにより、記録層を形成する。
なお、記録層は、記録層の安定性や耐光性向上のために、一重項酸素クエンチャーとして遷移金属キレート化合物(例えば、アセチルアセトナートキレート、ビスフェニルジチオール、サリチルアルデヒドオキシム、ビスジチオ−α−ジケトン等)等や、記録感度向上のために金属系化合物等の記録感度向上剤を含有していても良い。ここで金属系化合物とは、遷移金属等の金属が原子、イオン、クラスター等の形で化合物に含まれるものを言い、例えばエチレンジアミン系錯体、フェナントロリン系錯体、ジヒドロキシアゾベンゼン系錯体、ジオキシム系錯体、ニトロソアミノフェノール系錯体、ピリジルトリアジン系錯体、アセチルアセトナート系錯体、メタロセン系錯体、ポルフィリン系錯体のような有機金属化合物が挙げられる。金属原子としては特に限定されないが、遷移金属であることが好ましい。
更に、記録層の成膜に際しては、必要に応じて、バインダー、レベリング剤、消泡剤等を併用することもできる。この場合、好ましいバインダーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ケトン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、ポリオレフィン等が挙げられ、特に、ポリスチレン系樹脂が好ましい。
記録層の膜厚は、記録方法などにより適した膜厚が異なるため、特に限定するものではないが、通常10nm〜5μm、好ましくは30nm〜3μmである。
3)反射層について
反射層は、必要に応じて、記録層に対し、記録/再生光入射面とは逆の面に、直接接するように、或いは、間接的(即ち、任意の層を介して)に形成される。その膜厚は通常5
0〜300nmである。
反射層の材料としては、再生光の波長で反射率の十分高いもの、例えば、Au、Ag、Cu、Ti、Al、Ni、Pt、Ta、Cr及びPdの金属を単独或いは合金にして用いることが可能である。この中でもAu、Al、Agは反射率が高く反射層の材料として適している。また、反射層の材料は、Au、Al、Agを主成分とし、これら以外に例えば、Mg、Se、Hf、V、Nb、Ru、W、Mn、Re、Fe、Co、Rh、Ir、Cu、Zn、Cd、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Bi、Ta、Ti、Pt、Pd、Ndなどの、金属及び半金属を1種又は2種以上含む合金であっても良い。なかでも、Agを主成分としているものはコストが安い点、高反射率が出やすい点等から特に好ましい。ここで主成分とは含有率が50原子%以上のものをいう。
なお、金属以外の材料からなる、低屈折率薄膜と高屈折率薄膜とを交互に積み重ねて多層膜を形成したものを、反射層として用いることも可能である。
反射層を形成する方法としては、例えば、スパッタ法、イオンプレーティング法、化学蒸着法、真空蒸着法等が挙げられる。
なお、基板の上や反射層の下に反射率向上、記録特性の改善、密着性の向上等のために公知の無機系又は有機系の中間層や接着層を設けることもできる。
4)障壁層について
障壁層は、後述する保護被膜の成膜時における、記録層のフォトクロミック材料等の保護被膜への拡散や、保護被膜形成用塗布液の記録層への浸透、或いは保護被膜接着時の接着剤成分の記録層への拡散、浸透などの混和現象を防止するためのものであり、保護被膜を記録層に接して設ける場合に特に有効である。
この障壁層を構成する材料は、酸化硅素、特に二酸化珪素や、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化イットリウム等の酸化物;硫化亜鉛、硫化イットリウムなどの硫化物;窒化珪素などの窒化物;炭化珪素;酸硫化物;及び後述の合金などが好適である。また、酸化珪素と硫化亜鉛との30:70〜90:10程度(重量比)の混合物も好適である。また、イットリウムの酸硫化物と酸化亜鉛との混合物(Y22S−ZnO)も好適である。
合金としては、銀を主成分とし、更にチタン、亜鉛、銅、パラジウム、及び金からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を0.1〜15原子%含有するものが好適である。また、銀を主成分とし、少なくとも1種の希土類元素を0.1〜15原子%含有するものも好適である。この希土類としては、ネオジウム、プラセオジウム、セリウム等が好適である。
この障壁層の厚みは2〜2000nm、好ましくは2〜20nm特に2〜10nm程度が好ましい。障壁層の厚さが過度に薄いと、上記の混和現象の防止が不十分となる。障壁層が過度に厚くても混和防止には不必要であるばかりでなく、光の透過率を低下させる恐れもある。特に、合金の場合は、光の透過率を過度に低下させるため2〜20nm特に2〜10nm程度の薄層として形成することが好ましい。
5)保護被膜について
保護被膜の材料としては、記録層を外力による損傷から保護するものであれば良く、特に限定されず、各種の有機物質又は無機物質が挙げられる。有機物質の保護被膜材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、UV硬化性樹脂等を挙げることができる。また、無機物質の保護被膜材料としては、酸化ケイ素、窒化ケイ素、MgF2
、SnO2等が挙げられる。
熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などよりなる保護被膜は、これらの樹脂を適当な溶剤に溶解して調製した塗布液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。UV硬化
性樹脂であれば、そのままもしくは適当な溶剤に溶解して塗布液を調製した後にこの塗布液を塗布し、UV光を照射して硬化させることによって保護被膜を形成することができる。UV硬化性樹脂としては、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレートなどのアクリレート系樹脂を用いることができる。これらの材料は単独で或いは混合して用いても良いし、1層だけではなく多層膜として形成しても良い。
塗布による保護被膜の形成方法としては、記録層と同様にスピンコート法やキャスト法等の塗布法が用いられるが、この中でもスピンコート法が好ましい。
また、保護被膜は、上記の樹脂よりなる薄いフィルム又はシート状の被膜を、接着剤で接着して設けることもできる。この場合の接着剤としては、常温硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、電子線硬化型接着剤、UV硬化型接着剤など各種のものを用いることができる。
保護被膜の膜厚は、0.1μm〜0.3mm特に0.1μm〜0.2mm程度が好ましい。
次に、図8を参照して(b)ホログラム記録方式の光メモリ素子について説明する。図8は、(b)タイプの光メモリ素子のうちのスラブ型導波路型デバイスの層構成の一例を示す模式的な断面図である。
導波路型デバイスは、情報の記録及び再生に必要な光を導く伝送路として、導波光(記録光や再生光)の波長における屈折率が異なる、複数の透明な材料を交互に積層した構造を持つことが特徴である。
具体的には、1)屈折率が相対的に大きい材料層(コア層)を、2)屈折率が小さい材料層(クラッド層)で挟んだ構造である。このような層構成の積層体に対して、コア層端面から入射された導波光は、コア層/クラッド層界面で材料の屈折率差により次々と全反射されながら、コア層内に閉じこめられて減衰することなく伝搬していく。
このような導波路型デバイスを、再生専用媒体ではなく記録可能な媒体とする場合、上記コア層及びクラッド層に加えて、又はコア層の代わりに、記録層を設ける。つまり、本発明の光メモリ素子がこのタイプである場合、記録層は、コア層及び/又はクラッド層に隣接して設けられ、具体的な積層例としては、図8に示す如く、(A)クラッド層46A/コア層47/記録層48/クラッド層46Bの順で積層したものと、クラッド層/記録層/クラッド層の順に積層したものとがある。
コア層及びクラッド層の構成材料はいずれも、記録光波長及び再生光波長において実質的に透明であり、その屈折率が(コア層)>(クラッド層)の関係を満たす材料であれば、特に制限はない。
例えば、熱可塑性樹脂(具体的にはポリカーボネート、ポリアリレート、ポリサルホン、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、熱硬化性樹脂(具体的には不飽和ポリエステル樹脂、ケイ素樹脂など)、紫外線硬化性樹脂(具体的にはアクリル系樹脂など)などの有機材料、金属や半導体の酸化物、硫化物、窒化物やCa、Mg、Li等のフッ化物(具体的にはZnS、Si、Ge、Al、Ti、Zr、Ta金属の酸化物、Si、Alなどの窒化物、Si、Ti、Zr、Hfなどの炭化物、アモルファス炭素膜、ダイヤモンド状炭素膜など)などの無機材料の中から、適宜選択される。
コア層及びクラッド層の構成材料は、好ましくは紫外線硬化性樹脂である。 (A)、(B)の積層部はそれぞれ一つの光導波部材49を形成しており、記録層48に光記録が行われた後、記録情報に応じた再生像(ホログラム像)を形成することとなる。なお、コア層47,クラッド層46A,46Bの膜厚については、コア層47,クラッド層46が
光導波路として機能するだけの膜厚であれば良い。即ち、コア層47の膜厚は通常10μm以下であり、更に、使用光波長域が可視光の波長域であればおおよそ1〜5μm程度になると考えられる。また、クラッド層46A,46Bの膜厚に関しては特に制限はないが、光メモリ素子全体の厚みを薄くすることを考慮すれば、各々100μm以下とすることが好ましい。あえて下限を規定するなら0.1μm以上になると思われる。通常5μm以上設ける。
記録層48の上にクラッド層46Bを形成する際に、特に、該層形成用の塗布液が記録層中に拡散、浸透する等の混和現象が起こりやすい。従って記録層は、少なくとも記録層の上に形成されるべき層の塗布液に対して難溶性であることが好ましい。
また、このような混和現象を防止する目的で、記録層と隣接する層の界面に障壁層を設けても良い。少なくとも、記録層48と、その後に形成するクラッド層46Bとのあいだに障壁層を設けるのが好ましい。障壁層は、前述したように記録層やクラッド層と相溶せず、かつ、ある程度の光透過性があればその構成材料は問わない。
上記光導波部材(A)及び(B)同士を、更に積層して複数の記録可能な層を有する光メモリ素子としても良い。光導波部材(A)は、該部材のどちらの面から記録光が入射するよう設けてもかまわない。なお、コア層及びクラッド層を樹脂製にすることにより、多層構造を簡易に形成できるので、限られた体積で大容量の情報を記録/再生できる光メモリ素子を容易、且つ安価に実現することができる。
図8において、記録層48は、ジアリールエテン化合物を含有し、記録可能な層である。
ここで、記録層48は、記録前又は記録後の屈折率が、光導波部材のコア層47又はクラッド層46を構成する材料の屈折率とほぼ同じであることが好ましい。また、記録層48に含まれるジアリールエテン化合物の記録前後の屈折率の変化は、約0.001〜約0.020、特に、約0.010であることが好ましい。
記録層48を、情報を1度だけ書き込み得る記録層(ライトワンス型記録層)として構成することにより、記録された情報が誤って消去されたり、変更されてしまったりするのを防止できる。また、記録された情報の改竄を防ぐこともできるため、著作権情報、ID情報及び暗号化の際に使われるキー情報等の情報の記録には特に好ましい。
図8の光メモリ素子を製造するには、例えば樹脂フィルム45A上に、光導波部材であるクラッド層46A及びコア層47を設け、該コア層47上に、前記一般式(I)で示されるジアリールエテン化合物を含有する組成物(塗布液)を塗布して、記録層48を形成する。
次に、クラッド層46B形成用の、例えば紫外線硬化性樹脂組成物(塗布液)を所定の膜厚(例えば、完全硬化時に約15〜約20μm)となるように塗布した後、樹脂フィルム45Aを載置し、紫外線を照射して完全に硬化させて樹脂製クラッド層46Aを形成する。
これにより、樹脂フィルム45A及びクラッド層46A上に、コア層47、記録層48、クラッド層46B及び樹脂フィルム45Bがこの順に積層され、光導波部材49のクラッド層46A,46Bの間にコア層47、記録層48が挟み込まれてなる光メモリ素子が形成される。
更に、ROM型の多層光メモリ素子に、光導波部材(A)及び/又は(B)を積層しても良い。これによれば、ROM型光メモリ素子において、記録可能な記録層を設けるので、複製防止(特に、不正コピー防止)やソフトウェアの不正使用防止等の著作権保護に利用可能な情報、シリアル番号等のような一枚一枚異なる情報等を書き込めるようにでき、
また、アップデートに必要なデータや正誤表データのような情報等を追記することが可能となり、これにより、例えば同一のコンテンツデータを光メモリ素子に書き込んで大量複製する場合であっても、例えばシリアル番号等のような一枚一枚異なる情報はコンテンツデータとは別に書き込めるようになる。
また、複製防止(特に、不正コピー防止)やソフトウェアの不正使用防止等の著作権保護に利用可能な情報として、著作権情報、ID情報、暗号化に際して用いられるキー情報等の情報を光メモリ素子に書き込んで、保護管理することができるようになる。このような記録層を設けることで、例えばROM型光メモリ素子の製造後に記録層にID情報等の情報を書き込むことができるようになる。
特に、光メモリ素子の製造後に記録層にID情報を記録すれば、一つ一つの光メモリ素子を識別可能となる。なお、ID情報は一般に情報量が少ないので、記録層の記録可能密度が低くても記録することができる。更に、アプリケーションソフトをアップデートするためのデータ(情報)や正誤表データのようなデータ(情報)を、ユーザー側(例えば出荷先)で追記情報として書き込めるようになる。
本発明の光メモリ素子は、カートリッジに収納した光学記録媒体としてもよい。
このカートリッジは、記録再生用の光の通過用の開口部と、該開口部を遮蔽し得る開閉部材とが設けられており、カートリッジ及び開閉部材は、光メモリ素子の記録層に含まれるジアリールエテン化合物の閉環光、即ち、ジアリールエテン化合物の開環体が吸収して閉環反応が起こり得る波長領域の光を実質的にカットするものである。
即ち、このカートリッジは内部に光メモリ素子を収納し、開閉部材でカートリッジの開口部を閉じた状態では、その全表面が閉環光を遮断し、内部の光メモリ素子が閉環光に照射されることを防止する。光メモリ素子の情報の記録再生時には、カートリッジの開閉部材を開けて開口部を露出させ、この開口部を通して光メモリ素子に直接、即ち光カット部材等を通さず記録/再生光を照射する。
前述の如く、ジアリールエテン化合物は光、特に紫外光によってフォトクロミズムを示すため、自然紫外線によって閉環反応を起こし、記録層が着色して記録部分の信号強度が低下する恐れがある。そこで本発明では、前述したように、特定のジアリールエテン化合物を用いることにより材料面からこれを防止し、さらに光メモリ素子を開環体が吸収して閉環反応(着色)が起こり得る波長領域の光を実質的にカットするカートリッジに収納することにより、この閉環光による閉環反応(着色)を防止するとより好ましい。カートリッジが遮断する開環光の波長範囲としては好ましくは450nm以下であり、特に波長420nm以下の光をカットするカートリッジであることが望ましい。なお、本発明において、光を実質的にカットするとは、具体的には上記波長範囲の光透過率を5%以下、好ましくは1%以下に抑制することを意味する。
本発明に係るカートリッジは、前記如く、開口部とこの開口部を遮蔽する開閉部材とを有し、開閉部材を閉じた状態でその全表面において閉環光を実質的にカットするものであれば良く、その形状や構造には特に制限はなく、公知のカートリッジを用いることができる。
以下に、図9を参照して本発明に好適なカートリッジを説明する。
図9は本発明の光記録媒体の実施の形態を示し、(a)図は平面図、(b)図は底面図である。
この光記録媒体は、カートリッジ52内に光メモリ素子50が収納されている。カートリッジ52は上シェル52Aと下シェル52Bとで構成されている。上シェルには開53
Aが形成されており、また、下シェル52Bには開口53B,53Cが設けられている。開口53A,53Bは光記録用のレーザーのアクセスのための開口であり、開口53Cは光メモリ素子50のクランピングプレート50aに作用して、光記録媒体を保持し、回転させるためのクランパ(図示せず)を光メモリ素子50にアクセスするための開口である。開口53A及び53Bは、開口53Cの中心を通る中心線上に配置され、しかも互いに対向して設けられている。
カートリッジ52は、これらの開口53A,53B及び53Cを閉じるためのシャッタ54を備えている。このシャッタ54は、開口53Aを遮蔽するためのシャッタ片54A及び開口53Bと開口53Cを同時に遮蔽するためのシャッタ片54Bを備えている。これらのシャッタ片54A,54Bは、互いに平行な状態で、それらの一端辺において、連結片によって連結されている。
上下シェル52A,52Bには、それぞれ浅い凹面のシャッタエリア55A,55Bが形成されており、シャッタ片54A,54Bがそれぞれ配置されている。これらのシャッタ片54A,54Bは、シャッタエリア55A,55B内を図9に示す開口遮蔽位置と開口から横にずれた開口開放位置の間でシャッタ全体として同時に摺動できるように構成されている。シャッタ54は、図9に示す位置にバネによって付勢されており、不使用時には常にカートリッジ52に形成された開口53A,53B,53Cを全て閉じるように構成されている。
本発明の光記録媒体は、このようなカートリッジ52及び開閉部材であるシャッタ片54A,54Bとして、光メモリ素子50の記録層に用いたジアリールエテン化合物の開環体が吸収して閉環反応が起こり得る波長領域の光を実質的にカットする材料(以下「閉環光カット材」)で構成されている。
この閉環光カット材としては、閉環光を実質的にカットするものであれば良く、一般的には紫外線吸収材を含む樹脂材料や金属薄板等が挙げられる。紫外線吸収材としては、例えばベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、アリールエステル系、オキザニリド系、ヒンダードアミン系など、などカラー線量計の説明の項で前述したものや、その他の有機系紫外線吸収剤;Ti、Si、Sb、Zn、Al、Pb、Zrなどの酸化物;カーボンブラック、炭素繊維、金属粉、金属繊維、金属フレークなどが挙げられる。なお、これらの紫外線吸収材は、樹脂材料中に混合されていても良いし、樹脂材料からなる成形体表面に積層(付着)されていても良い。
本発明においては、記録を行わない時には光メモリ素子全体を閉環光から保護するよう、閉環光をカットするカートリッジに格納し、記録/再生時には開閉部材を開けて、カートリッジの開口部から素通しの状態で、光を照射して記録/再生を行う。
次に、本発明の光メモリ素子の記録/再生方法について説明する。
本発明の記録/再生方法において使用される光源は、光メモリ素子の記録層に含まれるジアリールエテン化合物の閉環光、即ち、ジアリールエテン化合物の開環体が吸収して閉環反応が起こり得る波長450nm以下の光源が望ましい。具体的には、メタルハライドランプ、高圧及び低圧水銀ランプ、窒化ガリウム系半導体レーザー、赤外発光半導体レーザーを用いたSHGレーザー、エキシマレーザー、Nd:YAG高調波レーザー(3倍波、4倍波)などが挙げられる。この中でも、構造がシンプルかつ小型で信頼性が高いこと、取り扱いの容易さなどから窒化ガリウム系半導体レーザーや赤外発光半導体レーザーを用いたSHGレーザーが好適である。
また、本発明の光メモリ素子に対する光学的記録には、2光子吸収反応を使用することが考えられる。2光子吸収反応とは、ある分子が、1光子吸収の2倍の波長の光子を、2個同時に吸収して励起状態に到達する現象を指す。即ち、1光子のエネルギーでは起こら
ない反応が、2光子を同時に吸収することにより分子の励起1重項状態まで遷移し、それに引き続いて反応が誘起される機構である(この場合の中間準位は仮想準位であり、2光子吸収反応では準安定状態が必ずしも必要ではない。)。
通常、ジアリールエテン系化合物の開環体は、400nm以下のいわゆる紫外線波長領域に最大吸収波長を有し、可視光波長領域には殆ど吸収を有さない。一方、閉環体の最大吸収波長は400〜750nm程度のいわゆる可視光波長領域に存在する。これは本発明のジアリールエテン化合物も同様である。2光子吸収反応を利用することにより、開環体が吸収を有しない波長、例えば700nm以上の長波長のレーザー光によっても記録が可能となる。また、閉環体の吸収スペクトルの形状及び最大吸収波長の位置によっては、記録時と同じ波長(具体的には記録光波長の±5nm以内程度の波長)で再生を行うことも可能となる。
そして、このように記録光として開環体の最大吸収波長付近の光を使用しないため、該波長近辺の光を遮断することができる。そして、開環体の最大吸収波長近辺の波長の光を遮断することにより、環境光中に含まれる紫外線により、意図せぬ閉環反応が生じて記録層が着色し、信号強度が低下することを防ぐことが可能となる。
このような2光子同時吸収の遷移効率は、1光子吸収に較べて極めて低く、単位面積/単位時間当たりに極めて多くの光子を必要とするため、通常の光学的記録に使用されるレーザー光強度では殆ど無視される。しかし、遷移効率は光強度の2乗に比例して大きくなるので、ピーク光強度(最大発光波長における光強度)が極端に高いモード同期レーザーのようなフェムト秒程度の極超短パルスレーザーを用いると、十分観察される程度に起きることが実験的にも確かめられている。
この2光子吸収反応を利用して記録する場合には、該反応が起こり得る程度に強度が高いフェムト秒程度の超短パルスレーザーを使用しても良く、この場合の光源としては、CW受動モード同期色素レーザー、複合モード同期レーザー、CPMリング色素レーザー、ソリトン型受動モード同期チタンサファイアレーザー、複合共振器モード同期チタンサファイアレーザー、高速カーレンズモード同期チタンサファイアレーザー、エルビウムドープファイバーレーザーなどが挙げられる。この中でも、構造がシンプルで信頼性が高いこと、発振波長の可変範囲が広いこと、取り扱いの容易さなどからモード同期チタンサファイアレーザーやエルビウムドープファイバーレーザーが好適である。更に、この中でも、モード同期チタンサファイアレーザーの波長可変範囲は730〜800nm近辺であり、本発明に係るジアリールエテン化合物の開環体は実質的にこの範囲には吸収を持たず、記録層を多層化する場合にも好適である。
特に、本発明の光記録媒体への記録、及び本発明に係る光メモリ素子の記録においては、このようなフェムト秒程度の超短パルスレーザーが好ましい。
また、本発明のジアリールエテン化合物の場合、閉環体の最大吸収波長は600nm前後であることが多く、上記モード同期チタンサファイアレーザーの波長可変範囲である730〜800nm近辺では屈折率波長依存性のピ−クに近くなることから、記録前後の屈折率変化が大きくなり好適である。
本発明の光記録媒体及び光メモリ素子への記録は、カートリッジの開閉部材を開けて開口部を通じて光メモリ素子の基板の両面又は片面に設けた記録層に数μm〜数10μm程度に集束した上記レーザー光を直接照射することにより行う。記録層のレーザー光の照射された部分には、1光子又は2光子吸収によるジアリールエテン化合物の異性体化反応が起こり、記録部分の光学特性、特に吸収率や屈折率が変化する。
記録された情報の再生は、上記と同様にレーザー光を照射して光学特性の変化が起きて
いる部分と起きていない部分の吸収率や屈折率の違いを反射率や位相差として読みとることにより行う。
以下に図10を参照して前述の(b)のタイプの光メモリ素子の記録層への情報の記録方法について説明する。
図10は、図8に示した(b)タイプの光メモリ素子の記録層への情報の記録方法を説明する模式的な断面図であり、図10においては、光メモリ素子の光導波部材のみが示されている。
図10(a)に示す如く、光メモリ素子の記録層48の情報を記録すべき部分に局所的に、記録系レンズ60で集光したレーザー光(記録光)を照射して、その部分の記録層48の屈折率を変化させることによって、図10(b)に示す如く、屈折率の変化した記録マーク48Aとして情報を記録する。このように、記録層48Aの情報を記録すべき部分にレーザー光が局所的に照射されると、その部分の吸収率や屈折率が変化して記録層48に記録マーク(記録部)48Aが形成され、記録を行うことができる。
また、記録層48を複数層設ける場合には、各記録層毎にレーザー光の焦点の深さ(焦点深度)を変えながら情報を記録することになるが、各記録層48の記録感度の立ち上がりを急激にしておくことで、レーザー光のパワーが弱いとき(即ち、焦点が合ってないとき)には各色素記録層の吸収率や屈折率が変化しないようにすることができ、これにより、記録層48を複数層設ける場合に、情報を記録したい記録層48以外の層には情報が記録されないようにすることができる。
なお、記録層48への情報の記録方法は、これに限られるものではなく、波長の等しい2つの光(物体光と参照光)を干渉させて物体光の波面を干渉縞として記録層48に記録するようにしても良い。つまり、記録層48に、記録したい情報(像)を形成し得る記録光(物体光)を照射するとともに、記録層48に記録された情報を再生する際に入射される導入光(参照光)を照射することで、これらの記録光と導入光を干渉させて干渉縞を生じさせ、この干渉縞を記録層48に記録するようにしても良い。
また、記録層48に記録されたホログラムに元の参照光(導入光)と同一条件の光を当てることで、干渉縞による回折現象を生じさせ、元の記録光(物体光)と同一の波面を再生することができ、これにより、記録層48に記録された情報(像)を再生できることになる。
つまり、ジアリールエテン化合物の閉環反応により吸収率や屈折率が変化した記録マーク48Aの情報を再生する際に、クラッド層46A,46Bに挟み込まれたコア層47と記録層48に入射光を導入することにより、その導入光が記録マーク(記録部)48Aで散乱しながら光メモリ素子中を伝播する。
このときの散乱光が、導入光に対して上下方向(交差する方向)のそれぞれに伝播(透過)していき、最終的に光メモリ素子の両面部から外部へ放出され、記録マーク48Aに記録された情報に応じた画像が結像するようになっている。
このような記録方法によれば、記録層48に情報を記録する際に、記録層48の全面を一度に照射して情報を記録することができるため、短時間で大きな面積に対して情報を記録できるようになり、効率的に情報記録を行なえるようになる。
以上、詳細に述べたように、本発明のジアリールエテン化合物を用いることにより、従来にない優れたカラー線量計や光メモリ素子などを提供することが可能とある。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない
限りこれらの例に限定されるものではない。
実施例1:1,2−ビス[2−メトキシ−5−(4−メトキシフェニル)−3−チエニル]ペルフルオロシクロペンテン(表−1の化合物2)の合成
(1−1)3−ブロモ−2−メトキシ−5−(4−メトキシフェニル)チオフェンの合成
Figure 2005082507
4−メトキシフェニルボロン酸(1.52g,10mmol)、3,5−ジブロモ−2−メトキシチオフェン(2.72g,10mmol)、酢酸パラジウム(II)(0.045g,0.2mmol)、トリフェニルホスフィン(0.105g,0.4mmol)、エタノール(20ml)トルエン(10ml)および20%炭酸ナトリウム水溶液(10ml)の混合物を、窒素雰囲気下で3時間加熱還流した。反応液をセライト濾過し、母液を酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、3−ブロモ−2−メトキシ−5−(4−メトキシフェニル)チオフェン(1.61g、収率54%)を得た。
(1−2)1,2−ビス[2−メトキシ−5−(4−メトキシフェニル)−3
−チエニル]ペルフルオロシクロペンテン(表−1の化合物2)の合成
Figure 2005082507
3−ブロモ−2−メトキシ−5−(4−メトキシフェニル)チオフェン(2.99g,10.0mmol)とテトラヒドロフラン(THF)(20ml)の混合物に、窒素雰囲気下、ドライアイス−アセトン浴で冷却下に、n−ブチルリチウム(2.66mol/lヘキサン溶液,4.14ml,11.0mmol)を滴下し、30分間攪拌した。ペルフルオロシクロペンテン(1.06g,5.00mmol)のTHF(10ml)溶液を滴下し、2時間攪拌後、室温まで昇温し、メタノール(1.0ml)、水、酢酸エチルを順次加え、攪拌後、セライト濾過した。有機層を分離し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、得られた粉末をヘキサンとジクロロメタンの混合溶媒で懸濁洗浄して、1,2−ビス[2−メトキシ−5−(4−メトキシフェニル)−3−チエニル]ペルフルオロシクロペンテン(1.49g,収率49%)を得た。1H−NMR(δ,ppm)3.69(6H,s),
3.83(6H,s),6.90(4H,d,J=9.2Hz),7.01(2H,s),7.41(4H,d,J=9.2Hz)
実施例2:1,2−ビス(2−メトキシ−5−フェニルエチニル−3−チエニル)ペルフルオロシクロペンテン(表−1の化合物8)の合成
(2−1)3−ブロモ−2−メトキシ−5−フェニルエチニルチオフェンの合成
Figure 2005082507
エチニルベンゼン(1.1ml,10mmol)、3,5−ジブロモ−2−メトキシチオフェン(2.72g,10mmol)、酢酸パラジウム(II)(0.045g,0.2mmol)、トリフェニルホスフィン(0.105g,0.4mmol)、ヨウ化銅(I)(0.038g,0.2mmol)およびトリエチルアミン(20ml)の混合物を、窒素雰囲気下で30分間加熱還流した。減圧濃縮し、水を加え、セライト濾過した。母液を酢酸エチルで抽出し、希塩酸、水および飽和食塩水で順次洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、3−ブロモ−2−メトキシ−5−フェニルエチニルチオフェン(1.60g、収率55%)を得た。
(2−2)1,2−ビス(2−メトキシ−5−フェニルエチニル−3−チエニル)ペルフルオロシクロペンテン(表−1の化合物8)の合成
Figure 2005082507
3−ブロモ−2−メトキシ−5−フェニルエチニルチオフェン(0.88g,3.0mmol)とTHF(10ml)の混合物に、窒素雰囲気下、ドライアイス−アセトン浴で冷却下に、n−ブチルリチウム(2.6mol/lヘキサン溶液,1.27ml,3.3mmol)を滴下し、30分間攪拌した。ペルフルオロシクロペンテン(0.32g,1.5mmol)のTHF(2ml)溶液を滴下し、2時間攪拌後、室温まで昇温し、メタノール(0.5ml)と水を順次加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、得られた粉末をヘキサンで懸濁洗浄して、1,2−ビス(2−メトキシ−5−フェニルエチニル−3−チエニル)ペルフルオロシクロペンテノン(0.40g,収率
44%)を得た。1H−NMR(δ,ppm)3.73(6H,s),7.18(2H,
s),7.47−7.51(10H,m)
実施例3:1,2−ビス(2−メトキシ−5−スチリル−3−チエニル)ペルフルオロシクロペンテン(表−1の化合物9)の合成
(3−1)3−ブロモ−2−メトキシ−5−スチリルチオフェンの合成
Figure 2005082507
スチリルボロン酸(1.48g,10mmol)、3,5−ジブロモ−2−メトキシチオフェン(2.72g,10mmol)、20%炭酸ナトリウム水溶液(10mmol)およびTHF(10ml)の混合物に、窒素雰囲気下にテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.58g,0.5mmol)を加え、5時間加熱還流した。室温に冷却後、水および酢酸エチルを加え、分液した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、得られた粉末をヘキサンで懸濁洗浄して、3−ブロモ−2−メトキシ−5−スチリルチオフェン(2.15g,収率73%)を得た。1H−NMR(δ,ppm)1.40(3H,
s),6.71(1H,d,J=16Hz),6.73(1H,s),7.01(1H,d,J=16Hz),7.23−7.43(5H,m)
(3−2)1,2−ビス(2−メトキシ−5−スチリル−3−チエニル)ペルフルオロシクロペンテン(表−1の化合物9)の合成
Figure 2005082507
3−ブロモ−2−メトキシ−5−スチリルチオフェン(0.89g,3.0mmol)をTHF(10ml)に溶解し、ドライアイス−アセトン浴で冷却下に、n−ブチルリチウム(2.64mol/l,1.25ml,3.3mmol)を加え、10分間攪拌した。ペルフルオロシクロペンテン(0.32g,1.5mmol)のTHF(2ml)溶液を滴下し、1時間攪拌後、室温に昇温し、水を加え酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、得られた粉末をヘキサンで懸濁洗浄して、1,2−ビス(2−メトキシ−5−スチリル−3−チエニル)ペルフルオロシクロペンテン(0.38g,収率42%)を得た。1H−NMR(δ,ppm)3.72(6H,s),6.69(2H,d,J=16Hz),6.90(2H,s),7.08(2H,d,J=16Hz),7.20−7.45(10H,m)
実施例4:実施例1、2および3記載の方法に準じて、表−1の1、3〜7、10〜16に記載の各化合物を合成した。
Figure 2005082507
Figure 2005082507
実施例5(サンプル作成)
表−1の2、3、5〜9及び12〜16に記載の本発明の化合物0.3g、ポリスチレンHF77(商品名。A&Mスチレン社製)0.3gおよびBaFCl:Eu2+ 2.4gを、トルエン2gに入れ攪拌することにより樹脂ペーストを作成した。
このペーストを、ポリエチレンテレフラレート樹脂製薄膜上にバーコーターを用いて塗布後、80℃で3分間乾燥した。膜厚は100μmであった。この膜にイエローフィルター(450nm以下波長の光を99.9%カットするもの)をのせ放射線線量計とした。(X線照射試験)
上記で作成した線量計に対し、ソフテックス(株)製軟X線照射装置「SOFTEX M−80W 特型」(50kV、4mA)を使用して、15GyのX線を照射し、照射後の色相を調査した。結果を表−2に示す。
(セーフライトテスト)
X線照射後のサンプルを室内光下に放置しその消色寿命を調査した。結果を表−2に示す。
比較例1 本発明の化合物に替えて、下記化合物(III)を用いた他は、実施例5と同様にサンプルを作成し、評価を実施した。結果を表−2に示す。
Figure 2005082507
化合物(III)は室内光下では8時間で消色しているが、本発明の化合物はいずれもそれ以上の寿命を有しており、着色の安定性が良いことを示している。
実施例6(サンプル作成)
表−1の10に記載の本発明の化合物0.03g、ポリスチレンHF77(商品名。A&Mスチレン社製)0.27gおよびBaFCl:Eu2+ 2.7gを、トルエン2gに入れ攪拌することにより樹脂ペーストを作成した。
このペーストを、実施例5に記載と同様の方法で放射線線量計とし、X線照射試験及びセーフライトテストを行った。結果を表−3に示す。
比較例2 本発明の化合物に替えて、化合物(III)を用いた他は、実施例6と同様にサンプルを作成し、評価を実施した。結果を表−3に示す。
Figure 2005082507
化合物(III)は室内光下では24時間で消色しているが、本発明の化合物10はそ
れ以上の寿命を有しており、着色の安定性が良いことを示している。
また、上記実施例が示すように、着色の安定性が高い本発明の化合物は、本願明細書中に記載した各種光メモリ素子に使用した場合にも、同様に、環境光に対して高い安定性を示すことは明らかである。
実施例7(2光子吸収断面積測定)
表−1記載の本発明における化合物の2光子吸収効率を、Z−scan法と呼ばれる一般的な2光子吸収断面積測定方法を用いて調べた(例えば、IEEE J.Quantum Electro. Vol.26, No4 (1990) p760−769を参照)。
具体的な測定手順は以下のようにして行った。測定系の模式図を図11に示す。先ず、測定する化合物を溶解させた溶液をサンプルセル61に入れ、セルにTi:サファイアレーザー62(パルス幅:100fs、繰り返し周波数:1kHz、レーザー波長:800nm、レーザー出力:10.2mW)から出射されるレーザー光を照射する。そして、セルを透過してくるレーザー光強度をシリコン検出器65Bで測定し、レーザー光の透過率を算出した後、レーザー強度及び溶液濃度よりデータ処理を行い、2光子吸収断面積を求めた(なお、Ti:サファイアレーザー62からの光をビームスプリッター63で2つに分け、レーザー光強度のゆらぎを補正した。)。先ず、この測定系を用い、標準物質AF−50(N,N−ジフェニル−7−[2−(4−ピリジニル)エテニル]−9,9−ジ−n−デシルフルオレン−2−アミン)のベンゼン溶液(濃度3.3mM)を作成して2光子吸収断面積を測定した。この結果45.7[GM]であったことから、測定系としての精度は十分なものと確認された(1[GM]=1×10-50cm4.s.molecule-1 photon-1、標準物質AF−50の文献値は Chem.Mater.Vol.12, No.12 (2000)p284−286を参照)。
そこで、本願発明の化合物2のトルエン溶液(濃度2.5mM)を作成して同様に測定を行ったところ、2光子吸収断面積は9[GM]であった。測定後の溶液が淡黄色から黄緑色に変色していたことから、2光子吸収反応により化合物2の光異性化が起こっていることが確認された。化合物2を含むジアリールエテン化合物は,光異性化による吸収スペクトル変化に応じて吸光度や屈折率などの光学的な性質が光照射前後に大きく変化するため、このようなスイッチング現象を利用した様々な方式の光メモリ素子が提案されている。このことから、本発明の化合物を用いることにより、2光子吸収反応を利用した光メモリ素子が実現可能であることを示唆するものである。以下、同様にして表1の9及び14に記載の本発明における化合物について2光子吸収断面積を測定した。
比較例3 本発明の化合物に替えて化合物(III)のトルエン溶液(濃度9.99mM)を用いたこと以外は実施例と同様に測定を行ったところ、2光子吸収断面積は1[GM]であった。
本発明の化合物および比較例を用いて2光子吸収断面積を測定した結果をまとめたものが表−4である。このように、本発明のジアリールエテン化合物を用いることにより、従来よりも記録感度に優れた光メモリ素子と、この光メモリ素子に好適なフォトクロミック材料が提供される。
Figure 2005082507
特定の構造のジアリールエテン化合物を用いることにより、環境光による退色の問題のないフォトクロミック材料が得られ、それを用いて環境光に対する表示の耐久性に優れた実用性の高いカラー線量計と、このカラー線量計に好適なフォトクロミック材料が提供される。
また本発明のジアリールエテン化合物は、環境光による退色の問題がほとんどなく、記録または表示された情報の長期安定性および記録感度に優れるため、カラー線量計のみならず、光メモリ媒体おるいは光表示材料、そのた新規光学素子への応用が期待される。
本発明のカラー線量計としての積層体の層構成の一例を模式的に示す断面図である。 本発明のカラー線量計としての積層体の層構成の他の例を模式的に示す断面図である。 発光体の発光スペクトルと、ジアリールエテン化合物の吸収スペクトルとの重複を説明する図である。実線はジアリールエテン化合物の吸収スペクトル、点線は発光体の発光スペクトルを示す。 (I)〜(III)は何れも本発明のシール状カラー線量計の一例を示す図である。各々において(a)は正面図、(b)は断面図である。 本発明のタグ状カラー線量計の一例を示す図である。 本発明に係る光メモリ素子(タイプ(a))の、層構成の一例を示す模式的な断面図である。 本発明に係る光メモリ素子(タイプ(a))の、層構成の他の例を示す模式的な断面図である。 本発明に係る光メモリ素子(タイプ(b))の、層構成の一例を示す模式的な断面図である。 本発明の光記録媒体の実施の形態を示す図であり、(a)図は平面図、(b)図は底面図である。 本発明の実施の形態に係る光メモリ素子(タイプ(b))への記録方法を説明する模式的な断面図である。 本発明の実施の形態に係る2光子吸収断面積の測定方法を説明する模式的な図である。
符号の説明
1,1'支持層 2,2'発光層3 フォトクロミック層4 フォトクロミック材料5
遮光性基材5’ 紫外線吸収性の透明基材6 接着剤層又は両面テープ7 剥離紙8 紫外線吸収性の透明フィルム9 開口部又は紫外線吸収剤を含有する透明部10,11 積層体(カラー線量計)20,20’ タグ状カラー線量計30 血液バッグ41 基板
42 記録層43 反射層44 接着剤層45A,45B 樹脂フィルム46A,46B
クラッド層47 コア層48 記録層48A 記録マーク49 光導波部材50 光メモリ素子51 光記録媒体52 カートリッジ52A 上シェル52B 下シェル53A,53B,53C 開口54 シャッタ54A,54B シャッタ片55A,55B シャッタエリア60 記録系レンズ 61サンプルセル 62Ti:サファイアレーザー
63 ビームスプリッター 64A,64B NDフィルター 65A,65Bシリコン検出器 66A,66B増幅器 67ボックスカー積分器 68コンピュータ 69 NDフィルター+可視光カットフィルター 70集光レンズ

Claims (5)

  1. 下記式一般式(I)で表されるジアリールエテン化合物。
    Figure 2005082507
    (式中、R1およびR2は、それぞれ独立にC1−C4のアルキル基を示す。R3およびR4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいナフチル基、置換基を有していてもよいスチリル基、置換基を有していてもよいフェニルエチニル基、または下記一般式(A)で表される置換フェニル基を示す。
    Figure 2005082507
    (式中、R9は置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアラ
    ルキルオキシ基、置換基を有していてもよいチオアルキル基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有しても良いフェノキシ基、置換基を有しても良いフェニル基、置換基を有していてもよいアルキルアミノ基、置換基を有していてもよいアリールアミノ基、またはアルキルアリールアミノ基を示す。R7,R8,R10,R11はそれぞれ独立に、水素原子または任意の置換基を表す。但し、R7〜R11として前述した各基のうち、隣接す
    る基同士が結合し、置換基を有していてもよい環を形成していても良い。)R5およびR6はそれぞれ独立に、水素原子または任意の置換基を表す。)
  2. 一般式(I)において、R5およびR6は、それぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、R7,R8,R10,R11はそれぞれ独立に、R9が有しうる基として挙げた基から選ばれ
    たいずれかの基、または水素原子を示すか、R7〜R11として前述した各基のうち、隣接
    する基同士が結合し、置換基を有していてもよい環を形成する、請求項1記載のジアリールエテン化合物。
  3. 一般式(I)で表されるジアリールエテン化合物からなる、フォトクロミック材料。
  4. 一般式(I)で表されるジアリールエテン化合物を用いることを特徴とするカラー線量計。
  5. 一般式(I)で表されるジアリールエテン化合物を、記録層に含有することを特徴とする光メモリ素子。
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