JP4190212B2 - フォトクロミック材料及びこれを用いたカラー線量計 - Google Patents

フォトクロミック材料及びこれを用いたカラー線量計 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、放射線量測定に好適に用いられるフォトクロミック材料、及びこれを利用した、放射線量を簡便に測定できるカラー線量計に関する。
【0002】
【従来の技術】
X線やガンマ線などの放射線照射処理は、医療用具の滅菌を目的として従来より行なわれているが、近年は、輸血による移植片対宿主病(GVHD)の発病予防のため、輸血用血液に対しても行われている。
【0003】
一般に、必要量の放射線が被照射物に照射されたか否かを調べるために、放射線によって不可逆的に変色する物質を含むインジケータを被照射物の間に混在させ、放射線照射後、取り出してその変色により確認する方法が取られている。
【0004】
例えば、医療用具の放射線滅菌のインジケータとしては、ロイコ色素などの酸化還元色素とポリ塩化ビニルを用いたものが実用化されている。このインジケータは、放射線量が5000Gy以上のときに変色する。ところが、輸血用血液への放射線照射量は通常15〜50Gy程度であるため、照射の有無を検知できない。
【0005】
特開平2−201440号公報には、15〜50Gyの放射線照射で変色するインジケータとして、塩化カリウムなどのアルカリハライドにカルシウムなどの金属をドープした放射線変色組成物が開示されている。しかし、一般にアルカリ金属のハロゲン化物は水分に弱いことが知られており、水分に接触することの多い医療現場での利用には不利であった。また、変色部分が室内光等の環境光により退色しやすいという欠点があった。
【0006】
また、特開平2000−65932号公報には、放射線により電子受容性を示す有機化合物と、呈色性の電子供与性有機化合物からなる線量計が開示されている。しかし、開示されている電子供与性有機物は、一般的に水分や空気中の不純物に影響を受けやすいということが知られているものであり、これを用いた線量計は保存安定性が低いという欠点があった。また、このようなインジケータは消色不能で、再使用できないものが多い。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
こうした背景から、放射線感応性を示すとともに取扱が容易なフォトクロミック化合物を、線量計に使用することが提案されている。
【0008】
例えば、特開平2−216493号公報には、蛍光を発するシンチレータを含む層とこのシンチレータの発する蛍光に感応して変色するフォトクロミック高分子層とを有する積層体からなる放射線感応表示シートが開示されている。ただ、この文献に記載された2,4,5トリメチルチエニルマレイン酸無水物等のマレイン酸無水物系フォトクロミック化合物は、放射線に対する感度が充分でなく、また、マレイン酸無水物部分が水分によって加水分解するために保存安定性が悪いという欠点があった。
【0009】
また、特開平11−258348号公報には、熱不可逆性のフォトクロミック化合物を用いた線量計が記載されている。この技術によれば、熱的に安定かつ可逆的なフォトクロミック化合物を使用することで、比較的低線量でも正確に測定できるが、輸血用血液への一般的な照射量である15〜50Gy程度の低線量を測定するにはかなり厚みを増す必要があった。
【0010】
本発明は、フォトクロミック化合物を用いた線量計及びその材料であって、環境に左右されることなく使用でき、保存安定性もよく、且つ低線量でも検出可能な線量計及びその材料を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討の結果、特定の骨格を有するフォトクロミック化合物と無機蛍光体を併せて使用するとともに、これらを組成物とすることにより、又は、特定の骨格を有し、且つ、開環反応の量子収率が所定値以下のフォトクロミック化合物を、無機蛍光体と併せて使用することにより、放射線照射により照射線量を色の変化として表示するインジケータとして好適に使用でき、上述の課題が解決できることを見出して、本発明に至った。
【0012】
すなわち、本発明の要旨は放射線の照射により発光する発光体であって、原子番号19番以上の元素を含み、10nm〜400nmの紫外線波長帯域の光を発する無機紫外線発光蛍光体である発光体と、下記一般式(I−1)で表わされるジアリールエテン化合物とを少なくとも含有する組成物であって、該発光体の発光スペクトルと該ジアリールエテン化合物の開環体の吸収スペクトルとが10nm〜400nmの紫外線波長帯域内で重複していることを特徴とする、フォトクロミック材料に存する。
【0013】
【化11】
Figure 0004190212
【0014】
(上記一般式(I−1)において、基R 11 及び基R 12 は各々独立に、アルキル基又はアルコキシ基を表わす。
基X 11 及び基X 12 は、各々
−S−
を表わし、基Y 11 及び基Y 12 は、各々独立に、
【化12】
Figure 0004190212
を表わす。
基R 17 及び基R 18 は各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はシクロアルキル基を表わす。
基R 16 は各々独立に、水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基を表わす。)
【0015】
また、本発明の別の要旨は、前記フォトクロミック材料を含んで構成されたことを特徴とする、カラー線量計に存する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明の第1の要旨に係るフォトクロミック材料は、放射線の照射により発光する発光体と、後述の一般式(I)で表わされるジアリールエテン化合物とを少なくとも含有する組成物であって、該発光体の発光スペクトルと該ジアリールエテン化合物の開環体の吸収スペクトルとが重複していることを特徴とする。
また、本発明の第2の要旨に係るフォトクロミック材料は、放射線の照射により発光する発光体と、下記一般式(I)で表わされるジアリールエテン化合物とを少なくとも含有するとともに、該発光体の発光スペクトルと該ジアリールエテン化合物の開環体の吸収スペクトルとが重複しており、且つ、該ジアリールエテン化合物の開環反応の量子収率が10 -3 以下であることを特徴とする。
【0017】
(1−1)ジアリールエテン化合物
本発明におけるジアリールエテン化合物は、光や放射線の照射によって、光学的性質の異なる2種類の異性体を可逆的に生成する(すなわち、これらの異性体間を相互に可逆的に転換される)、いわゆるフォトクロミック化合物の一種である。
【0018】
本発明で使用するジアリールエテン化合物は、具体的には、下記一般式(I)で表わされる化合物である。
【0019】
【化13】
Figure 0004190212
【0020】
上記一般式(I)において、基R1及び基R2は各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基又はアルコキシ基を表わす。
【0021】
基X1、基X2、基Y1及び基Y2は、各々独立に、
【化14】
Figure 0004190212
の何れかを表わす。
【0022】
基R3は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよいシクロアルキル基を表わす。
【0023】
基R4は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよいシクロアルキル基を表わす。
【0024】
また、上記一般式(I)において、環Dは、基X1、基Y1及びこれらと結合する2つの炭素原子とともに形成された、置換されていてもよい5員環又は6員環の芳香族環を表わす。環Dには更に、置換されていてもよい5員環又は6員環の芳香族環が縮合していてもよい。
【0025】
更に、環Eは、基X2、基Y2及びこれらと結合する2つの炭素原子とともに形成された、置換されていてもよい5員環又は6員環の芳香族環を表わす。環Eには更に、置換されていてもよい5員環又は6員環の芳香族環が縮合していてもよい。
【0026】
環D及び環Eが有し得る置換基に特に制限は無いが、好ましくは基R13、R16〜R18、R25〜R27及びR29として後述する各基が挙げられる。
【0027】
なお、環D又は環Eに対して更に芳香族環が縮合している場合に、この縮合環が更に、アルケニル基、アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、アリルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ヘテロアリール基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、シアノ基、ニトロ基等の置換基を有していてもよい。
【0028】
上記一般式(I)で表わされる化合物として、具体的には、下記一般式(I−1)又は(I−2)で表わされる化合物が好ましい。
【0029】
【化15】
Figure 0004190212
【0030】
上記一般式(I−1)において、基R11及び基R12は各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基又はアルコキシ基を表わす。
【0031】
また、基X11及び基X12は各々独立に、
【化16】
Figure 0004190212
の何れかを表わすが、中でも
【化17】
Figure 0004190212
が好ましい。
【0032】
更に、基Y11及び基Y12は各々独立に、
【化18】
Figure 0004190212
の何れかを表わす。
【0033】
なお、上記各例示式において、基R13は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよいシクロアルキル基を表わすが、中でも、水素原子、置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよいアリール基が好ましい。また、基R16は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよいシクロアルキル基を表わす。
【0034】
基R17及び基R18は各々独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基又は置換されていてもよいシクロアルキル基を表わす。
【0035】
基R17及び基R18がアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はシクロアルキル基である場合に、これらの基が有していても良い置換基としては、アルケニル基、アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、アリルオキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
【0036】
基Y11及び/又は基Y12
【化19】
Figure 0004190212
である場合には、基R17及び/又は基R18が基R16と結合して、5員環又は6員環の芳香族環を形成していてもよい。
【0037】
該芳香族環が有していてもよい置換基としては、アルケニル基、アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、アリルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ヘテロアリール基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
【0038】
【化20】
Figure 0004190212
【0039】
上記一般式(I−2)において、基R21及び基R22は各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基又はアルコキシ基を表わす。
【0040】
また、基Y21及び基Y22は各々独立に、
【化21】
Figure 0004190212
の何れかを表わす。
【0041】
更に、基X21及び基X22は各々独立に、
【化22】
Figure 0004190212
の何れかを表わす。
【0042】
また、基R25及び基R26は各々独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基又は置換されていてもよいシクロアルキル基を表わす。
ここで、基X21及び/又は基X22
【化23】
Figure 0004190212
である場合には、基R25及び/又は基R26が基R29と結合して、5員環又は6員環の芳香族環を形成していてもよい。
【0043】
なお、上記各例示式において、基R27は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよいシクロアルキル基を表わすが、中でも、水素原子、置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよいアリール基が好ましい。また、基R29は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよいシクロアルキル基を表わす。
【0044】
前記一般式(I−2)において、基R25、R26がアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はシクロアルキル基である場合に、これらの基が有していてもよい置換基としては、アルケニル基、アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、アリルオキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
【0045】
また、基X21、X22が置換基R29を有する炭素原子であって、この置換基R29と基R25又は基R26が結合して5員環又は6員環の芳香環を形成する場合に、該芳香環は、アルケニル基、アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、アリルオキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、シアノ基、ニトロ基等の置換基を有していてもよい。
【0046】
前記一般式(I−1)及び(I−2)における基R13、R16、R27及びR29がアルキル基、アリール基又はシクロアルキル基である場合に、これらの基が有していてもよい置換基としては、アルケニル基、アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、アリルオキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
【0047】
前記一般式(I)における環D、環Eの具体例を以下に示す。
【化24】
Figure 0004190212
【0048】
【化25】
Figure 0004190212
【0049】
(上記各例示式において、基R13は、前記式(I−1)におけるものと同義であり、基R27は、前記一般式(I−2)におけるものと同義である。)
【0050】
これらの中でも、上記一般式(I−1)における、基X11及び基Y11を含む複素環、並びに基X12及び基Y12を含む複素環としては、次に挙げる置換基が好ましい。
【化26】
Figure 0004190212
【0051】
上記各例示式において、複素環に縮合しているベンゼン環は、基R17又は基R18が基R16と結合することにより形成された環である。
【0052】
また、前記一般式(I−2)における、基X21及び基Y21を含む複素環、並びに基X22及び基Y22を含む複素環としては、次に挙げる置換基が好ましい。
【0053】
【化27】
Figure 0004190212
【0054】
上記各例示式において、複素環に縮合しているベンゼン環は、基R25又は基R26が基R29と結合することにより形成された環である。
【0055】
前記一般式(I−1)で表わされる化合物の具体例を以下に示すが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
【化28】
Figure 0004190212
【0056】
【化29】
Figure 0004190212
【0057】
【化30】
Figure 0004190212
【0058】
【化31】
Figure 0004190212
【0059】
【化32】
Figure 0004190212
【0060】
【化33】
Figure 0004190212
【0061】
前記一般式(I−2)で表わされる化合物の具体例を以下に示す。
【化34】
Figure 0004190212
【0062】
【化35】
Figure 0004190212
【0063】
【化36】
Figure 0004190212
【0064】
【化37】
Figure 0004190212
【0065】
【化38】
Figure 0004190212
【0066】
【化39】
Figure 0004190212
【0067】
【化40】
Figure 0004190212
【0068】
【化41】
Figure 0004190212
【0069】
【化42】
Figure 0004190212
【0070】
【化43】
Figure 0004190212
【0071】
【化44】
Figure 0004190212
【0072】
【化45】
Figure 0004190212
【0073】
【化46】
Figure 0004190212
【0074】
上に挙げた各種のフォトクロミック化合物は、公知の手法を用いて適宜合成することが可能である。例えば、特開平9−241625号公報等の記載から適宜選択した手法により合成することができる。
【0075】
なお、本発明のフォトクロミック材料におけるジアリールエテン化合物については、前記一般式(I)で表わされる化合物から選択した一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いても良い。後者の場合、例えば前記一般式(I−1)で表わされる化合物群、前記一般式(I−2)で表わされる化合物群、それ以外の化合物群の何れか一群から複数種選択しても良く、また、これらの化合物群のうち二群以上から各一種以上を選択して使用してもよい。更に、前記一般式(I)で表わされる化合物群の中から選ばれた一種又は二種以上の化合物と、その他の任意の一種又は二種以上の化合物とを併用してもかまわない。
【0076】
また、本発明で使用するジアリールエテン化合物は、熱不可逆性を示すものであることが好ましい。本発明において「熱不可逆性」とは、30℃の環境における閉環体の半減期が10日以上であることを意味するものとする。ジアリールエテン化合物が熱不可逆性を示すものでないと、閉環体が室温で容易に異性化反応を起こして開環体に転換してしまい、放射線の照射によって生じた変色状態が安定に保たれない可能性があるため、本発明のフォトクロミック材料をカラー線量計に使用した場合に放射線量を正確に測定することができず、不具合が生じる虞がある。
【0077】
また、室内光などの環境光による着色を避けるためには、開環反応の量子収率が10-3以下であることが好ましい。より好ましくは10-4以下、特に好ましくは10-5以下である。特に、本発明の第2の要旨に係るフォトクロミック材料では、開環反応の量子収率が10 -3 以下であるジアリールエテン化合物を使用する。
【0078】
(1−2)発光体
本発明で使用する発光体は、放射線を照射した場合にこれを吸収して発光するものであれば、その種類は特に問わない。
本発明で使用する発光体が吸収する放射線の種類には特に制限はなく、紫外線、X線、γ線、α線、β線、電子線、中性子線等、様々な種類を挙げることができる。中でも、本発明のフォトクロミック材料が使用されるカラー線量計の主な用途に鑑みて、本発明で使用する発光体は、10-5〜10nmの波長帯域の放射線を吸収して発光を生じるものであることが好ましい。
【0079】
従来のフォトクロミック化合物を利用したカラー線量計では、紫外線よりも短波長の放射線、特にγ線、X線、中性子線等の透過力の強い放射線の線量測定が困難であった。しかし、本発明のフォトクロミック材料においては、一般にジアリールエテン化合物より原子量の大きい原子を含有する発光体を併用することにより、放射線を効率的に捕捉することが可能であり、また、励起状態の発光体からのエネルギー移動又は電子移動などによってジアリールエテン化合物の異性化反応が促進され、フォトクロミック材料の放射線に対する感度が向上する(増感作用)。
【0080】
本発明で使用する発光体が発する光の種類についても、特に限定されるものではないが、ジアリールエテン化合物の開環体の吸収スペクトルと重複する、発光スペクトルを有する必要がある。図3に、発光体の発光スペクトルとジアリールエテン化合物の吸収スペクトルとの重複を模式的に表した。
【0081】
中でも、紫外線波長領域に発光ピークを有する、つまり励起エネルギーのレベルがジアリールエテン化合物よりも高いと考えられる蛍光体(紫外線発光蛍光体)であることが好ましい。特に、10〜400nmの紫外線波長帯域の光を発するものであることが好ましい。
また、本発明で使用する発光体は、無機化合物であることが好ましい。
【0082】
また、本発明で使用する発光体は、本発明のフォトクロミック材料の趣旨に鑑みて、放射線に対する感度が高く、発光量が充分に大きいものであることが好ましい。中でも、一般に原子番号の大きい原子(重原子)ほど放射線に対する感受性が強いことから、こうした重原子を含む発光体であって、放射線の照射によって発光するものが、好適に使用できる。具体的には、原子番号が19番以上の元素を含む発光体が好ましく、中でも、原子番号が37番以上の元素を含む発光体がより好ましい。
【0083】
本発明で使用する発光体の具体例としては、3Ca3(PO42・Ca(F,Cl)2:Sb3+、3Ca3(PO42・Ca(F,Cl)2:Sb3+,Mn2+、Sr10(PO46Cl2:Eu2+、(Sr,Ca)10(PO46Cl2:Eu2+、(Sr,Ca)10(PO46Cl2・nB23:Eu2+、(Ba,Ca,Mg)10(PO46Cl2:Eu2+等のハロりん酸塩蛍光体、Sr227:Sn2+、Ba227:Ti4+、(Sr,Mg)3(PO42:Sn2+、Ca3(PO42:Tl+、(Ca,Zn)3(PO42:Tl+、Sr227:Eu2+、SrMgP27:Eu2+、Sr3(PO42:Eu2+、2SrO・0.84P25・0.16B23:Eu2+、LaPO4:Ce3+,Tb3+、La23・0.2SiO2・0.9P25:Ce3+,Tb3+、Zn3(PO42:Mn2+、(Sr,Mg)3(PO42:Cu+等のりん酸塩蛍光体、Zn2SiO4:Mn2+、CaSiO3:Pb2+,Mn2+、(Ba,Sr,Mg)3Si27:Pb2+、(Ba,Mg,Zn)3Si27:Pb2+、BaSi25:Pb2+、Sr2Si38・2SrCl2:Eu2+、Ba3MgSi28:Eu2+、(Sr,Ba)Al2Si28:Eu2+、Y2SiO5:Ce3+,Tb3+等のけい酸塩蛍光体、CaWO4、CaWO4:Pb2+、MgWO4等のタングステン酸塩蛍光体、LiAlO2:Fe3+、BaAl813:Eu2+、BaMgAl1017:Eu2+、BaMgAl1017:Eu2+,Mn2+、Sr4Al1425:Eu2+、SrMgAl1017:Eu2+、CeMgAl1119:Tb3+、CeMgAl1119、(Ce,Gd)(Mg,Ba)Al1119、Y23・Al23:Tb3+、Y3Al512:Ce3+等のアルミン酸塩蛍光体、その他Y23:Eu3+、YVO4:Eu3+、Y(P,V)O4:Eu3+、YVO4:Dy3+、Cd225:Mn2+、SrB47:Eu2+、SrB47F:Eu2+、GdMgB510:Ce3+,Tb3+、6MgO・As25:Mn4+、3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn4+、MgGa24:Mn2+、ZnS:Ag、(Zn,Cd)S:Ag、(Zn,Cd)S:Cu,Al、ZnS:Ag、ZnS:Cu,Al、ZnS:Au,Cu,Al、CsI:Na、CsI:Tl、BaSO4:Eu2+、Gd22S:Tb3+、La22S:Tb3+、Y22S:Tb3+、Y22S:Eu3+、LaOBr:Tb3+、LaOBr:Tm3+、BaFCl:Eu2+、BaFBr:Eu2+、HfP27、LiF、Li247:Mn2+、CaF2:Mn2+、CaSO4:Mn2+、CaSO4:Dy3+、Mg2SiO4:Tb3+、CaF2:Eu2+、LiI:Eu2+、TlCl:Be,I、CsF、BaF2、Bi4Ge312、Kl:Tl、CaWO4、CdWO4等、実用蛍光体として用いられている様々な発光体を挙げることができる。なお、これらの発光体は、公知の手法を用いて適宜合成することが可能である。これらの発光体は、その多くが上に述べた原子番号が19番以上の元素や原子番号が37番以上の元素を含んでいることから、放射線に対する感度が高く、発光量も充分に大きい。
【0084】
これらの中でも特に、Ca3(PO42:Tl+、(Ca,Zn)3(PO42:Tl+、SrMgP27:Eu2+、SrB47F:Eu2+、(Ba,Sr,Mg)3Si27:Pb2+、(Ba,Mg,Zn)3Si27:Pb2+、BaSi25:Pb2+、(Sr,Ba)Al2Si28:Eu2+、CeMgAl1119、(Ce,Gd)(Mg,Ba)Al1119、SrB47:Eu2+、CsF、BaF2、BaSO4:Eu2+、BaFCl:Eu2+、BaFBr:Eu2+、HfP27、LiF等の紫外線発光蛍光体が好ましい。
なお、上述の各種蛍光体に代表される発光体は、単独で使用してもよく、複数種併用してもよい。
【0085】
本発明に使用する蛍光体としては、照射光に対する発光効率が高いものが好ましい。つまり、例えば本発明のフォトクロミック材料を、後述するカラー線量計に使用する場合には、検出したい波長の光による刺激に対する、発光効率が高いものが好ましい。
また、蛍光体の密度が高い方が、検出したい光を細くする能力が高いため、好ましい。
【0086】
(1−3)ジアリールエテン化合物と発光体との組み合わせ
本発明のフォトクロミック材料は、発光体の発光スペクトルの一部又は全部が、ジアリールエテン化合物の開環体の吸収スペクトルと重なるように、上述したジアリールエテン化合物と発光体とを選択して組み合わせる点を特徴としている。この様に構成することで、本発明のフォトクロミック材料をカラー線量計に使用した場合に、放射線の照射によって発光体の電子が励起状態となり、その励起状態からエネルギー又は電子がジアリールエテン化合物へ移動し、励起状態が生成することによって、ジアリールエテン化合物の異性化反応が起こって変色するので、照射された放射線を効率的に検出することができ、その線量を高い感度で測定することが可能となる。
【0087】
例えば、ジアリールエテン化合物の開環体から閉環体への異性化反応を効率よく生じさせるには、10〜400nmの紫外線波長帯域が好ましい。よって、このジアリールエテン化合物との組み合わせで使用する発光体は、主にこの紫外線波長帯域に発光波長帯域を有することが好ましい(すなわち、先に列挙した紫外線発光蛍光体)、ということになる。
【0088】
特に、発光体の発光スペクトルと、ジアリールエテン化合物の開環体の極大吸収波長を含む吸収帯とは、できるだけ広い範囲にわたって重複していることが好ましい。
【0089】
また、発光体の発光スペクトルは、ジアリールエテン化合物の開環体の吸収スペクトルと重複することが好ましい。その理由としては、開環体は通常、放射線波長領域に吸収を有していること、開環反応より閉環反応の方が量子収率が高い場合が多いこと、閉環体の方が開環体より濃色である化合物が多いので、閉環体の生成で被爆を検出する方が容易であること、等が挙げられる。
【0090】
なお、本発明のフォトクロミック材料に用いる発光体は、一種類であっても二種類以上を併用しても良い。特に、ジアリールエテン化合物の吸収スペクトルピークがシャープである場合には、該ピーク波長に近い発光スペクトルを有する発光体を単独で使用することにより、特定波長領域において強い発光を得ることができ、放射線の検出感度を高めることができる。また、ジアリールエテン化合物の吸収スペクトルピークがブロードである場合には、異なる波長領域の発光を呈する2つ以上の発光体を併用すれば、幅広い波長領域において発光を得ることができ、放射線を効率的に検出することが可能となる。
【0091】
(2)フォトクロミック材料の態様とカラー線量計
本発明のフォトクロミック材料は、上述のジアリールエテン化合物と発光体とが相互に作用する態様であれば特に制限は無いが、中でも、上述のジアリールエテン化合物と発光体とを含有する組成物、又は、上述のジアリールエテン化合物を含有する層と発光体を含有する層とを含む積層体として構成することが好ましい。特に、本発明の第1の要旨に係るフォトクロミック材料は、上述のジアリールエテン化合物と発光体とを含有する組成物である。ここで、前者の組成物とは、上述のジアリールエテン化合物及び発光体が混合された状態で含まれる固体及び液体を広く指すものとする。具体的には、上述のジアリールエテン化合物を溶解又は分散させるとともに発光体を分散させたジアリールエテン化合物の溶液/分散液や、上述のジアリールエテン化合物と発光体とを含有する樹脂組成物、或いは、各々固体のジアリールエテン化合物と発光体とを混合して作成した成形体等が挙げられる。
【0092】
上述の各態様として構成された本発明のフォトクロミック材料は、その態様に応じた方法で、カラー線量計として使用することができる。
以下、本発明のフォトクロミック材料の態様及びカラー線量計としての利用方法について、各態様毎に詳しく説明する。
【0093】
(2−1)溶液又は分散液
本発明のフォトクロミック材料の一態様であるジアリールエテン化合物の溶液/分散液は、上述のジアリールエテン化合物を溶媒又は分散媒に溶解又は分散させるとともに、上述の発光体を前記の溶媒又は分散媒に分散させることにより、作成することができる。
【0094】
溶媒(分散媒)としては、上述のジアリールエテン化合物を好適に溶解或いは分散させるものであって、且つ、カラー線量計として用いた場合に放射線暴露に因るジアリールエテン化合物の変色状態の検出を妨げないものであれば、特に限定されない。具体的には、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶媒、ヘキサン等の脂肪族溶媒、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶媒、クロロホルム等の塩素系溶媒等、各種の有機溶媒が挙げられる。中でも、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶媒が好ましい。
【0095】
前述の溶媒(分散媒)に対して、上述のジアリールエテン化合物を溶解或いは分散させるとともに、上述の発光体を分散させて、ジアリールエテン化合物の溶液/分散液を作成する。ジアリールエテン化合物の添加量は、溶液又は分散液に対して10-5〜10mol/lの範囲が好ましく、発光体の添加量は、溶液又は分散液に対して0.5〜100重量%の範囲が好ましい。なお、上述のジアリールエテン化合物及び発光体を分散させる場合には、これを溶液又は分散液中に均一に分散させるために、公知の分散剤等を分有させてもよい。
【0096】
こうして作成されたジアリールエテン化合物の溶液又は分散液を、不純物を含まない石英セル等に封入すれば、カラー線量計となる。作成したセルを放射線に曝露すると、放射線の線量に応じて溶液又は分散液の色調が変化する。この吸収、透過又は反射スペクトルを測定し、吸光度、透過率又は反射率の変化量を計測することにより、放射線の線量を見積もることができる。
【0097】
(2−2)樹脂組成物
本発明のフォトクロミック材料の一態様である樹脂組成物は、例えば、(a)上述のジアリールエテン化合物及び発光体をベース樹脂とともに溶媒(分散媒)に溶解(分散)させるか、又は、(b)上述のジアリールエテン化合物及び発光体をベース樹脂に直接溶解(分散)させることにより、作成することができる。
【0098】
ベース樹脂としては、上述のジアリールエテン化合物を好適に溶解或いは分散させるものであれば、特に限定されない。具体的には、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリナフタレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等が挙げられる。
【0099】
前記(a)の手法により作成する場合、溶媒(分散媒)としては、上述のジアリールエテン化合物を好適に溶解或いは分散させるとともに、上述のベース樹脂を好適に溶解或いは分散させるもので、且つ、成膜加工の際の妨げにならないものであれば、特に限定されない。具体的には、ベンゼン、トルエン等の芳香族溶媒、ヘキサン等の脂肪族溶媒、THF等のエーテル系溶媒、クロロホルム等の塩素系溶媒等、各種の有機溶媒が挙げられる。
【0100】
この溶媒(分散媒)に上述のジアリールエテン化合物を溶解或いは分散させ、続いて上述の発光体を添加し分散させて、樹脂組成物を作成する。ジアリールエテン化合物の添加量は、ベース樹脂100重量部に対して0.2〜200重量部の範囲が好ましく、発光体の添加量は、ベース樹脂100重量部に対して1〜2000重量部の範囲が好ましく、5〜2000重量部の範囲がより好ましい。なお、公知の分散剤、酸化防止剤、酸素トラップ剤、可塑剤等を添加してもよい。
【0101】
一方、前記(b)の手法による場合は、上述のジアリールエテン化合物及び発光体を、上述のベース樹脂に直接練り混んで、樹脂組成物を作成する。
【0102】
こうして作成された樹脂組成物を、射出成形や押し出し成形、ヒートプレス法など公知の方法を用いて、フィルム状や棒状等に成形加工すれば、カラー線量計となる。特に、フィルム状に加工する場合には、キャスト法、スピンコート法、バーコーター法、ダイキャスト法など、種々の公知技術を用いて成膜加工することができる。膜の厚さは、カラー線量計としての趣旨を逸脱するものでなければ特に限定されないが、0.01〜10mmの範囲が好ましい。
【0103】
成形加工された樹脂組成物を放射線に曝露すると、放射線の線量に応じて色調が変化する。この吸収、透過又は反射スペクトルを測定し、吸光度、透過率又は反射率の変化量を計測することにより、放射線の線量を見積もることができる。
【0104】
(2−3)成形体
本発明のフォトクロミック材料の一態様である成形体は、上述のジアリールエテン化合物及び発光体を混合し、この混合物を圧縮して特定形状の固形物に成形することにより、作成することができる。
【0105】
具体的には、中央粒径10nm〜50μm程度に粒度を調整した発光体粉末、中央粒径10nm〜100μm程度に粒度を調整した上述のジアリールエテン化合物、及び、必要に応じて結合剤を十分に混合した後、混合粉末を成形型に充填し1MPa〜1GPaの圧力となるように圧縮成形する。発光体の中央粒径が10nmより小さいと、凝集した粉末となってしまうために、ジアリールエテン化合物との混合が十分になされない場合がある。一方、その中央粒径が50μmを越えると、成形体としての形状を保つことが困難となる虞がある。
【0106】
ジアリールエテン化合物の中央粒径は、通常10nm〜100μm程度であるが、発光体の隙間に入り込める粒径であればなお好ましい。よって好ましくは10nm〜50μm程度である。
【0107】
添加する結合剤は、無機粉末に用いられる結合剤として一般に知られているものであれば、特に限定されない。具体的には、水ガラス等の水溶性物質、シリカゾルやアルミナゾル等のゾル状物質、水和反応を起こす各種セメント等の無機系結合剤の他、硝化綿、酢酸セルロース、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、線状ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニリデン−塩化ビニルコポリマー、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリアルキル−(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、セルロースアセテートブチレート、ポリビニルアルコール、ゼラチン、デキストリン等のポリサッカライド、アラビアゴム等等の有機系結合剤が挙げられる。
【0108】
成形体の形状は、カラー線量計として使用する形状に合わせて、任意の形状のものを使用することができる。例えば、カラー線量計を平板状で使用する場合には、金型に混合粉末を充填した後に一軸成形機や二軸成形機を使用して圧縮して平板状に成形する。また、複雑形状に成形する場合には、複雑形状のゴム型に混合粉末を充填した後、静水圧プレス機を使用して圧縮し、複雑形状に成形する。圧縮成形圧力は、1MPa〜1GPaの面圧となるようにするのが好ましい。圧力が1MPaより小さいと、充分な機械的強度が付与されないため成形体がその形状を維持できない虞がある。一方、圧力が1GPaより大きいと、成形に必要以上の設備が必要となり、余分なコストが掛かってしまう可能性がある。
【0109】
一方、発光体粉末を成形し焼成して得た焼結体に上述のジアリールエテン化合物を含浸又は塗布することにより、強度の高い焼結体からなる成形体を作成することもできる。この場合は、上述の粒度に調整した発光体粉末、及び、必要に応じて上述の結合剤を充分に混合し、圧縮成形した後に、発光体の種類に合った焼成条件で成形体を焼成し、得られた緻密な焼結体の表面に上述のジアリールエテン化合物を塗布するか、もしくは得られた多孔質の焼結体の内部に上述のジアリールエテン化合物を含浸させる。塗布や含浸する際には、上述のジアリールエテン化合物を通切な溶媒に溶解又は分散させてから実施する。また、発光体の種類に合った焼成条件とは、発光体粉末を合成する際に採用される焼成温度、保持時間、雰囲気に近い条件が好ましい。好ましい焼成温度域は500〜1900℃、保持時間は10分間〜48時間、雰囲気は発光体組成と発光イオンの種類により酸化雰囲気、還元雰囲気、硫化雰囲気などに調整する。
【0110】
こうしてフィルム状や棒状、板状等、所望の形状に成形された成形体は、そのままカラー線量計として利用できる。作成した成形体を放射線に曝露すると、放射線の線量に応じて成形体の色調が変化する。この吸収、透過又は反射スペクトルを測定し、吸光度、透過率又は反射率の変化量を計測することにより、放射線の線量を見積もることができる。
【0111】
(2−4)積層体
本発明のフォトクロミック材料の一態様である積層体は、上述のジアリールエテン化合物を含有する層と発光体を含有する層とを、少なくとも有することを特徴としている。
【0112】
ここで、本発明のフォトクロミック材料の一態様である積層体の層構成の例を、図1及び図2を用いて説明するが、勿論これらに限定されるものではない。なお、図1及び図2は何れも、積層体の層構成の例を模式的に示す断面図である。
【0113】
図1に示す層構成の例では、支持体1上に上述の発光体を含有する発光層2を設け、該発光層2上に更に、上述のジアリールエテン化合物を含有するフォトクロミック層3を設けて、積層体10を作成する。また、こうして作成した積層体10を2つ用意し、各々の支持体1の面を互いに向かい合わせて2つの積層体10を密着させ、接着して一つの積層体(図示せず)としてもよい。
【0114】
図2に示す層構成の例では、図1に示す例と同様に支持体1、発光層2、フォトクロミック層3という層構成の積層体を作成するとともに、別に用意した支持体1'上に更に発光層2'を設けて別の積層体を作成する。前者のフォトクロミック層3と後者の発光層2'とを互いに向かい合わせてこれら2つの積層体を密着させ、接着して新たな積層体11を作成する。
【0115】
支持体1及び1'の材質は、発光層2及び2'並びにフォトクロミック層3の形状の安定性を確保できるものであって、本発明のカラー線量計の趣旨を損なわないものであれば、特に限定されない。具体的には、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリイミド、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリカーボネートなどの樹脂をフィルム状に成形したもの、バライタ紙、レジンコート紙、通常の紙、アルミニウム合金箔等が挙げられる。これらの中でも、樹脂フィルムや紙等の素材を使用する場合には、これらの素材にカーボンブラック等の光吸収物質や二酸化チタン、炭酸カルシウム等の光反射性物質を、直接練り込むなどして予め混入させておいてもよい。
【0116】
発光層2及び2'は、適当量の発光体を結合剤と混合し、これに有機溶剤を加えて適当な粘度の発光体塗布液を調製し、この塗布液をナイフコーターやロールコーター等によって支持体1又は1'上に塗布し、乾燥させることにより作成する。また、この発光体塗布液に、必要に応じてフタル酸、ステアリン酸等の分散剤や燐酸トリフェニル、フタル酸ジエチル等の可塑剤を添加してもよい。結合剤は、発光体の結合剤として一般に知られているものであれば、特に限定されない。具体的には、硝化綿、酢酸セルロース、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、線状ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニリデン−塩化ビニルコポリマー、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリアルキル−(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、セルロースアセテートブチレート、ポリビニルアルコール、ゼラチン、デキストリン等のポリサッカライド、アラビアゴム等が挙げられる。また、有機溶剤は、発光体を分散させるものであれば、特に限定されない。例えばエタノール等のアルコール系溶媒、メチルエチルエーテル等のエーテル系溶媒、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸ブチルや酢酸エチル等のエステル系溶媒、キシレン等の芳香族系溶媒等が挙げられる。支持体1又は1'上に塗布する発光体の最終的な重量としては、一般に30〜200mg/cm2が好ましい。塗布重量が30mg/cm2を下回ると、放射線に対する感受性が低下するために線量計の感度が低下する傾向があり、逆に200mg/cm2を上回ると、放射線に対する感受性が飽和するために線量計の感度の向上が頭打ちとなる虞がある。
【0117】
フォトクロミック層3は、必要に応じてベース樹脂等とともに、ジアリールエテン化合物を有機溶媒に溶解し、キャスト法、スピンコート法等の公知の技術を使ってフィルム状に加工することにより作成する。ベース樹脂を使用する場合、このベース樹脂は、ジアリールエテン化合物を溶解又は分散させるものであれば、特に限定されない。具体的には、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート類等、(2−2)樹脂組成物の項で挙げたベース樹脂が何れも挙げられる。ジアリールエテン化合物の含有量としては、ベース樹脂100重量部に対して0.1〜50重量部が好ましい。有機溶媒は、ジアリールエテン化合物を溶解又は分散し、ベース樹脂を溶解させるものであれば、特に限定されない。具体的には、トルエン、THF等、(2−2)樹脂組成物の項で挙げたものが何れもが挙げられる。また、ジアリールエテン化合物をベース樹脂に直接練り混み、押し出し成形法や射出成型法等の従来公知技術を使用して、フィルム状に加工することにより作成してもよい。層の厚さとしては、0.01〜10mmの範囲が好ましい。
【0118】
なお、支持体1又は1'と発光層2又は2'との間には、必要に応じて光反射層、光吸収層或いは金属箔層等を設けてもよい。この場合には、予め支持体1又は1'上に光反射層、光吸収層或いは金属箔層を設けておき、この上に前記発光体塗布液を塗布、乾燥することによって、発光層2又は2'を形成する。
【0119】
また、発光層2又は2'のフォトクロミック層3と接する面に、必要に応じて保護膜を形成してもよい。保護膜は、酢酸セルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート等のセルロース誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリカーボネート、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルホルマール、ポリウレタン等の樹脂を溶剤に溶解させて適当な粘度の保護膜塗布液を調製し、これを先に形成した発光層2又は2'上に塗布、乾燥することにより、或いは、予め成形された保護膜、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミドなどの透明フィルムを、先に形成した発光層2又は2'上にラミネートすることにより形成する。
【0120】
なお、この場合、発光層2又は2'は、上述した製造方法とは異なる方法によって製造することも可能である。即ち、予め平滑な支持基板上に保護膜を形成しておき、その上に発光層2又は2'を形成したのち、これを保護膜とともに該支持基板から剥離し、支持体1又は1'上に転写する。図2に示す層構成の場合、発光層2及び2'に用いる発光体は、同一であっても異なっていても良い。
【0121】
また、図2に示す層構成では、放射線曝露に伴うフォトクロミック層3の変色を積層体11の外部から視認及び計測できるようにするために、支持体1及び1'のうち少なくとも一方に、無色透明な材質を用いることが好ましい。その場合該透明支持体に、後述する紫外線防止の処置を施すことが好ましい。
【0122】
以上、図1及び図2を用いて説明した積層体10,11の層構成は、あくまでも好ましい例に過ぎず、その他にも上述した各層(図示した支持体1,1'、発光層2,2'、フォトクロミック層3に加え、光反射層、光吸収層、金属箔層、保護層等)を任意の組み合わせ及び順序で積層し、場合によっては新たな層を付加することによって、原理的には無数の層構成が可能である。
【0123】
こうして作成された積層体10,11をそのまま、或いは必要に応じて成形し、カラー線量計として用いることができる。作成された積層体10,11を放射線に曝露すると、放射線の線量に応じて色調が変化する。この吸収、透過又は反射スペクトルを測定し、吸光度、透過率又は反射率の変化量を機械的に、又は目視で計測することにより、放射線の線量を見積もることができる。
【0124】
なお、上述した積層体10,11の各層間を接着するのではなく、各層を分離可能に構成することもできる。具体的には、図2の層構成において、発光層2,2'とフォトクロミック層3との間を接着せずに構成すれば、積層体11は、支持体1及び発光層2からなる部分と、支持体1'及び発光層2'からなる部分と、フォトクロミック層3からなる部分に分離できることになる。これらの部分を全て積層した状態で放射線に曝露した後、フォトクロミック層3からなる部分のみを取り出して変色状態を測定する構成とすれば、積層体11の中央に存在するフォトクロミック層3の変色状態を外部から測定する必要が無いので、支持体1,1'や発光層2,2'を充分厚く構成することができ、ひいては、放射線の検出感度をより高めることが可能となる。
【0125】
なお、上述した本発明のフォトクロミック材料の実施態様のうち、放射線により励起された発光体からジアリールエテン化合物への、エネルギー移動又は電子移動が容易である点からは、(2−1)〜(2−3)に代表される組成物が好ましく、製造の容易さ、及びカラー線量計としたときの取扱の容易さからは、(2−2)樹脂組成物又は(2−3)成形体が好ましい。最も好ましいのは、(2−2)樹脂組成物である。
【0126】
本発明のフォトクロミック材料には、更に紫外線吸収剤を含有させても良い。具体的には、フォトクロミック材料が前記(2−1)〜(2−3)に代表される組成物の場合には、該組成物の1成分として含有させてもよいし、該組成物を用いて形成したカラー線量計の表面に、紫外線カット層を設けても良い。またフォトクロミック材料が積層体の場合には、該積層体を構成する何れかの層の中に紫外線吸収剤を含有させても良いし、積層体における検出用の放射線入射側に、紫外線カット層を更に積層させても良い。
【0127】
紫外線カット層は、波長10〜450nmの光をカットするものが好ましい。なお、本発明において、波長10〜450nmの光を「カットする」とは、該波長領域の光透過率を5%以下、好ましくは3%以下とすることを意味する。
【0128】
このような層を設けたり、紫外線吸収剤を含有させたりすることにより、検出すべき電離放射線による反応以外に、環境光中などに含まれる紫外線により化合物が反応することが防止され、線量検出の精度が向上する。
【0129】
環境光に含まれる、波長380nm〜波長450nm程度の光を吸収するためには、該波長領域に吸収をもつ色素、つまり黄色色素を併用することが好ましい。このような色素に特に制限はないが、例えばオリエント化学工業(株)製OIL YELLOW 3G、BASF社製Neptune (TM) Gelb 075、BAYEL LTD製 MACROLEX YELLOW 6Gなどが挙げられる。これらの色素は、その使用形態から、有機溶剤や樹脂になじみやすい油溶性樹脂であることが好ましい。
【0130】
環境光による線量検出精度への影響、及び性能劣化を防ぐためには、波長450nmを超える波長領域の光をも多少カットしてもかまわない。しかし、可視光波長領域の光をカットすることにより、該層が着色するため、カラー線量計における表示部分の色変化が判別し難くなる虞がある。より好ましくは、多くのジアリールエテン系フォトクロミック化合物に関し、開環体の最大吸収波長が存在する波長230〜420nmの光をカットする層を設けることが好ましい。
【0131】
紫外線カット層の形成方法に特に制限はなく、カラー線量計の形態に応じて、適宜形成すればよい。例えばカラー線量計表面に、公知の紫外線吸収剤を含む組成物を塗布・乾燥・硬化させることにより形成してもよく、また予め紫外線吸収剤を含むフィルムを形成し、これを線量計表面に貼り付けても良い。
【0132】
紫外線カット層に含有させる紫外線吸収剤、及び、本発明のフォトクロミック材料の一形態である組成物中に含有させる紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、アリールエステル系などの公知の化合物が挙げられる。
【0133】
具体的には、例えば、BASF社製UVINUL D-49,UVINUL D-50;ケミプロ化成(株)製Kemisorb1011,Kemisorb1001;アデカ・アーガス化学(株)製MARK LA-51,MARKLA-31;住友化学(株)製Sumisorb250;竹本油脂(株)社製UVA101;チバ スペシャルティ ケミカルズ社製Tinuvin213,Tinuvin327,Tinuvin1577,SandozのSandouvor3206などがあげられる。
【0134】
紫外線カット層の形成方法としては、市販の、或いは予め形成しておいた紫外線カットフィルムを貼付する方法も挙げられる。
【0135】
紫外線カットフィルムとしては、ポリイミドフィルムや紫外線吸収剤を塗布又は練り混んだフィルムなどがあげられる。例えば、富士写真フイルム(株)社製UVGard;3M社製Scotchtint (TM) スーパーレイヤーSCLARL150,SCLARL400,SCLARL600,ULTRA600,ムシクリアーEco RE80CLIS;三菱化学ポリエステルフィルム(株)社製のハローウインド−TKクリア、BZA-50Kなどの市販の紫外線カットフィルムを使用することができる。
【0136】
また、紫外線カットフィルムは適宜自製することもできる。バインダー樹脂、上記記載の紫外線吸収剤の他に適宜油溶性色素(前述の黄色色素)を添加して得られた組成物を用いて、公知の方法でフィルムを作成する。該組成物を適当な溶媒に溶解後、バーコーターやダイコーターなど公知の方法を用いて塗布することで作成できる。又はバインダー樹脂、紫外線吸収剤、適宜油溶性色素を混合し、熱を加えて樹脂に練り混み、押し出し成形機等公知技術でフィルム状に加工することでできる。バインダー樹脂としてはポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどがあげられる。紫外線吸収剤の含有量としては固形分の1〜30重量%が好ましい。
【0137】
油溶性色素は、黄色色素として前述した化合物をはじめ、市販のものから適宜選択すればよい。該色素の添加量としては固形分の0.01〜20重量%が好ましい。
【0138】
溶媒としてはバインダー樹脂、紫外線吸収剤、油溶性色素などを溶解するものであれば何でもよい。例えば、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン等の芳香族系溶媒、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、メチルアミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル−2−アセテート等のプロピレングリコール系溶媒などがあげられる。
【0139】
紫外線カットフィルムの厚みは、0.01μm〜500μm程度の範囲が好ましい。
【0140】
紫外線吸収剤や前記黄色色素は、それぞれ2種類以上混合して使用してもよい。複数種類を併用することにより、より広い範囲の光線を効率よく吸収できるため好ましい。
【0141】
本発明のフォトクロミック材料が、前記(2−1)〜(2−3)に代表される組成物である場合、前述のように、該組成物中に紫外線吸収剤を含有させてもよい。この紫外線吸収剤としては、紫外線カット層に含まれるものとして前記した化合物と同様の化合物が挙げられる。
【0142】
本発明のカラー線量計における、紫外線による劣化防止手段としては、紫外線カット層を設ける方法がより好ましい。
【0143】
本発明のカラー線量計は、(2−1)で説明したように、溶液又は分散液をセルに封入したものや、(2−2)で説明した樹脂組成物を所望の形状に成形したもの、(2−3)で説明した成形体を所望の形状に成形したもの、或いは(2−4)積層体などが挙げられる。中でも、輸血用血液などの医療用具への使用という観点からは、これらを用いたタグ状又はシール状のものが好ましい。
【0144】
具体的には、これらフォトクロミック材料を含むセルや成形物などを、フィルム状又は板状の基材の一部又は全面に貼付して、該基材をタグ状に形成し、輸血用血液バッグや医療用器具に結び付けることにより利用する方法が挙げられる。2枚の基材間にフォトクロミック材料を挟み、これをタグ状に形成しても良い。また、(2−4)積層体の支持層をタグ状に形成し、同様に血液バッグや医療用器具に結び付けて使用する方法が挙げられる。結び付ける方法に特に制限は無く、血液バッグや医療用危惧の形状に応じ、適宜選択すれば良い。
【0145】
シール状のカラー線量計としては、同様に、基材の一部又は全面にフォトクロミック材料をからなる層を設けて、或いはフォトクロミック材料含むセルや成形物を貼付して、裏面に接着剤層又は粘着剤層を形成した後、これを血液バッグや医療用器具に貼付して使用する方法が挙げられる。
【0146】
2枚の基材間にフォトクロミック材料を挟み、これをシール状に形成しても良い。また(2−4)積層体の支持層自体の裏面に、接着剤層又は粘着剤層を設けて、シール状にしてもよい。接着剤層及び粘着剤層は、接着剤や粘着剤を塗布することにより形成してもよく、また市販の両面テープなどを利用しても良い。
【0147】
図4(I)〜(III)は何れも、本発明のフォトクロミック材料を用いたシール状のカラー線量計の例を示す図である。(I)〜(III)の各々において、(a)はカラー線量計の正面図、(b)は断面図である。
【0148】
図4(I)に示すカラー線量計は、フォトクロミック材料4を遮光性基材5と紫外線吸収性の透明基材5’との間に狭んで接着して構成される。また、遮光性基材5のフォトクロミック材料4と接する面と反対側の面には、接着剤層又は両面テープ6を設け、この上を剥離紙7で被覆して保護する。カラー線量計の使用時には、剥離紙7を剥離して接着剤層又は両面テープ6を露出し、衣服や物品等の所望の箇所に貼付して使用する。
【0149】
図4(II)に示すカラー線量計は、図4(I)の紫外線吸収性の透明基材5’を使用する代わりに、紫外線吸収性の透明フィルム8をフォトクロミック材料4の上から遮光性基材5に接着することにより、フォトクロミック材料4を被覆して遮光性基材5に固定している。紫外線吸収性の透明フィルム8が接着されていない遮光性基材5の表面部は、日時や名前等の必要事項の記入に使用することができる。
【0150】
図4(III)に示すカラー線量計は、図4(II)の構成において、紫外線吸収性の透明フィルム8の上から、更に遮光性基材5を接着して強化を図ったものである。遮光性基材5のフォトクロミック材料4上に位置する部分には、開口部又は紫外線吸収剤を含有する透明部9が設けられ、被爆時の視認性が高められている。
【0151】
図5は、タグ状のカラー線量計の例を示す。本発明のフォトクロミック材料4を設けられたタグ状カラー線量計20,20’は、血液バッグ30の持ち手部分に一部を折り返して取り付けたり(符号20)、紐等を用いて取り付けたり(符号20’)することができる様に構成される。
【0152】
勿論、本発明のフォトクロミック材料を用いたカラー線量計は、上述の図4及び図5に図示した形態や、これらの図を用いて説明した形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、様々な形態として構成することが可能である。
【0153】
【実施例】
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0154】
・実施例1
【化47】
Figure 0004190212
【0155】
上記ジアリールエテン化合物(フォトクロミック化合物。開環反応の量子収率は1.3×10-2)(1) 0.02g及びポリスチレン樹脂0.2gをトルエン0.51gに溶解し、紫外発光蛍光体(発光体)としてCeMgAl1119 0.1gを加え撹拌した後、キャスト法により膜厚0.5mmの白色フィルムを作成した。作成したフィルムに対して、60Coを線源としてγ線を100Gy照射し、照射前後の可視領域の吸収スペクトルを測定した。測定には、「島津自動分光光度計UV−3100PC」((株)島津製作所製)を用い、化合物(1)の最大吸収波長である波長600nmにおける吸光度の変化を測定した。
結果を表1に示す。
【0156】
・実施例2
実施例1の紫外発光蛍光体(発光体)CeMgAl1119をSrB47:Eu2+に換えた他は、実施例1と同様の条件で実験を行なった。結果を後述する表1に示す。
【0157】
比較例0
紫外発光蛍光体(発光体)CeMgAl1119 4gとポリビニルブチラール0.5gをエタノール5mlに添加して撹拌後、透明なポリエチレンテレフタレート上に反射板としてアルミ箔を設けた支持体上に、バーコーター法を用いて塗布成膜を行ない、厚さ0.1mmの発光層を形成した。更にその上に、ポリスチレン樹脂0.2g、上記化合物(1)(フォトクロミック化合物)0.02gをトルエンに溶解させたものをキャストして、厚さ0.3mmのフォトクロミック層を形成した。作成したフィルムに対して、60Coを線源としてγ線を100Gy照射し、照射前後のフォトクロミック層の可視領域における吸収スペクトルを測定した。γ線の照射前後における波長600nmの吸光度変化を後述する表1に示す。
【0158】
・比較例1
実施例1の紫外発光蛍光体(発光体)CeMgAl1119を除いた他は、実施例1と同様の条件でフィルムを作成し、実施例1と同様な実験を行なった。結果を表1に示す。
【0159】
・比較例2
実施例1の紫外発光蛍光体(発光体)CeMgAl1119をHfO2に換えた他は、実施例1と同様の条件でフィルムを作成し、実施例1と同様な実験を行なった。結果を表1に示す。
【0160】
・比較例3
実施例1の紫外発光蛍光体(発光体)CeMgAl1119をBi23に換えた他は、実施例1と同様の条件でフィルムを作成し、実施例1と同様な実験を行なった。結果を表1に示す。
【0161】
・比較例4
実施例3の紫外発光蛍光体(発光体)CeMgAl1119を含有する発光層を除いた他は、実施例3と同様の条件でフィルムを作成し、実施例1と同様な実験を行なった。結果を表1に示す。
【0162】
・実施例4〜6
以下、CeMgAl1119を各々表1に示す蛍光体に変更した以外は、実施例1と同様にキャスト法でフィルムを作成した。これらについて、実施例1と同様にγ線照射前後の波長600nmにおける吸光度変化を測定した。その結果を表1に示す。
【0163】
【表1】
Figure 0004190212
【0164】
表1において、吸光度変化量の相対値(最右欄)が大きいほど、放射線(γ線)の検出感度が高いと考えられる。本発明のフォトクロミック材料を含むフィルム(実施例1,2,4〜6)の吸光度変化量の相対値は、本発明のフォトクロミック材料を含まないフィルム(比較例1〜4)の吸光度変化量の相対値よりも大きいことから、本発明のフォトクロミック材料を含有するフィルムは放射線の検出感度が高いことが分かる。また、ジアリールエテン化合物及び発光体をともに含む組成物である実施例1の吸光度変化量の相対値は、ジアリールエテン化合物を含む層と発光体を含む層とを積層した積層体である比較例0の吸光度変化量の相対値と比べて、二倍になっていることが分かる。
【0165】
次に、X線照射によるサンプルの吸光度変化を調べた。
・実施例7
実施例1で作成したサンプルに、ソフテックス(株)製 軟X線照射装置「SOFTEX M−80W 特型」(50kV、4mA)を使用して、45GyのX線を照射したところ、サンプルが青色に変色した。照射前後のサンプルの吸収スペクトルについて、波長600nmにおける吸光度変化を測定した。結果を表2に示す。
【0166】
・実施例8
蛍光体をCeMgAl1119からBaFCl:Eu2+に変更した他は、実施例1と同様にサンプルを作成し、実施例7と同様にX線を照射したところ、サンプルが青色に変色した。照射前後のサンプルの吸収スペクトルについて、波長600nmにおける吸光度変化を測定した。結果を表2に示す。なお、このサンプルは、100GyのX線を照射した場合にも変色しなかった。
【0167】
・比較例5
フォトクロミック化合物を下記化合物(2)に変更した他は、実施例7と同様にサンプルを作成し、実施例7と同様にX線を照射したところ、サンプルは変色しなかった。照射前後のサンプルの吸収スペクトルについて、波長600nmにおける吸光度変化を測定した。
【0168】
【化48】
Figure 0004190212
【0169】
結果を表2に示す。なお、上記化合物(2)を用いたサンプルは、100GyのX線を照射した場合にも、吸光度変化が見られなかった。
【0170】
・比較例6
比較例1で作成したサンプルに対し、実施例7と同様にX線を照射した。照射前後のサンプルの吸収スペクトルについて、波長600nmにおける吸光度変化を測定した。結果を表2に示す。
【0171】
【表2】
Figure 0004190212
【0172】
表2に示すように、一般式(I)に示すジアリールエテン化合物を使用しない場合、通常、輸血用血液に使用する程度の強度のX線照射では、変色を示さなかった。
【0173】
・実施例9
【化49】
Figure 0004190212
【0174】
上記ジアリールエテン化合物(3)(フォトクロミック化合物。開環反応の量子収率は1.7×10-5)0.02g及びポリスチレン樹脂0.2gをトルエン0.51gに溶解し、紫外発光蛍光体(発光体)としてBaFCl:Eu2+0.1gを加え攪拌した後、キャスト法により膜厚0.3mmの白色フィルムを作成した。
【0175】
作成したフィルムに対して、実施例7と同様のX線装置を用いて、X線を15Gy照射し、照射前後の可視光波長領域の反射スペクトルを測定した。測定には積分級付属装置「ISR−3100」((株)島津製作所製)を用い、化合物(3)の最大吸収波長である645nmにおける反射率を測定した。結果を表3に示す。
【0176】
・比較例7
蛍光体であるBaFCl:Eu2+を使用しない以外は、実施例9と同様に白色フィルムを作成し、波長645nmにおける反射率の変化を測定した。結果を下の表3に示す。
【0177】
【表3】
Figure 0004190212
【0178】
【発明の効果】
本発明のフォトクロミック材料及びこれを用いたカラー線量計によれば、特定の骨格を有するフォトクロミック化合物と無機蛍光体とを併せて使用するとともに、これらを組成物とすることにより、又は、特定の骨格を有し、且つ、開環反応の量子収率が所定値以下のフォトクロミック化合物と無機蛍光体とを併せて使用することにより、照射された放射線を効率的に検出することができ、その線量を高い感度で測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のカラー線量計としての積層体の層構成の一例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明のカラー線量計としての積層体の層構成の他の例を模式的に示す断面図である。
【図3】発光体の発光スペクトルと、ジアリールエテン化合物の吸収スペクトルとの重複を説明する図である。実線はジアリールエテン化合物の吸収スペクトル、点線は発光体の発光スペクトルを示す。
【図4】(I)〜(III)は何れも本発明のシール状カラー線量計の一例を示す図である。各々において(a)は正面図、(b)は断面図である。
【図5】本発明のタグ状カラー線量計の一例を示す図である。
【符号の説明】
1,1' 支持層
2,2' 発光層
3 フォトクロミック層
4 フォトクロミック材料
5 遮光性基材
5’ 紫外線吸収性の透明基材
6 接着剤層又は両面テープ
7 剥離紙
8 紫外線吸収性の透明フィルム
9 開口部又は紫外線吸収剤を含有する透明部
10,11 積層体(カラー線量計)
20,20’ タグ状カラー線量計
30 血液バッグ

Claims (12)

  1. 放射線の照射により発光する発光体であって、原子番号19番以上の元素を含み、10nm〜400nmの紫外線波長帯域の光を発する無機紫外線発光蛍光体である発光体と、下記一般式(I−1)で表わされるジアリールエテン化合物とを少なくとも含有する組成物であって、該発光体の発光スペクトルと該ジアリールエテン化合物の開環体の吸収スペクトルとが10nm〜400nmの紫外線波長帯域内で重複していることを特徴とする、フォトクロミック材料。
    Figure 0004190212
    (上記一般式(I−1)において、基R 11 及び基R 12 は各々独立に、アルキル基又はアルコキシ基を表わす。
    基X 11 及び基X 12 は、各々
    Figure 0004190212
    を表わし、基Y 11 及び基Y 12 は、各々独立に、
    Figure 0004190212
    を表わす。
    基R 17 及び基R 18 は各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はシクロアルキル基を表わす。
    基R 16 は各々独立に、水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基を表わす。)
  2. 放射線の照射により発光する発光体であって、原子番号19番以上の元素を含み、10〜400nmの紫外線波長帯域の光を発する無機紫外線発光蛍光体である発光体と、下記一般式(I−1)で表わされるジアリールエテン化合物とを少なくとも含有するとともに、該発光体の発光スペクトルと、該ジアリールエテン化合物の開環体の吸収スペクトルとが10nm〜400nmの紫外線波長帯域内で重複しており、且つ、該ジアリールエテン化合物の開環反応の量子収率が10-3以下であることを特徴とする、フォトクロミック材料。
    Figure 0004190212
    (上記一般式(I−1)において、基R 11 及び基R 12 は各々独立に、アルキル基又はアルコキシ基を表わす。
    基X 11 及び基X 12 は、各々
    Figure 0004190212
    を表わし、基Y 11 及び基Y 12 は、各々独立に、
    Figure 0004190212
    を表わす。
    基R 17 及び基R 18 は各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はシクロアルキル基を表わす。
    基R 16 は各々独立に、水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基を表わす。)
  3. 該発光体の発光スペクトルと、該ジアリールエテン化合物の開環体の吸収スペクトルの極大吸収波長とが10nm〜400nmの紫外線波長帯域内で重複していることを特徴とする請求項1または2に記載のフォトクロミック材料。
  4. 該発光体と該ジアリールエテン化合物とを含有する組成物であることを特徴とする、請求項2記載のフォトクロミック材料。
  5. 該組成物中に更に紫外線吸収剤を含有することを特徴とする、請求項1、3又は4に記載のフォトクロミック材料。
  6. 該発光体を含有する層及び該ジアリールエテン化合物を含有する層を有する積層体であることを特徴とする、請求項2記載のフォトクロミック材料。
  7. 一般式(I−1)における基R 11 及び基R 12 が各々独立にメチル基またはメトキシ基であり、基R 16 が水素原子、基R 17 および基R 18 が各々フェニル基であることを特徴とする、請求項1〜6の何れか一項に記載のフォトクロミック材料。
  8. 該ジアリールエテン化合物が熱不可逆性であることを特徴とする、請求項1〜の何れか一項に記載のフォトクロミック材料。
  9. 該発光体が、CeMgAl 11 19 、SrB 4 7 :Eu 2+ 、ZnS:Ag、CaWO 4 及びBaFCl:Eu 2+ のいずれかであることを特徴とする、請求項1〜8の何れか一項に記載のフォトクロミック材料。
  10. 請求項1〜の何れか一項に記載のフォトクロミック材料を含んで構成されたことを特徴とする、カラー線量計。
  11. シール状であることを特徴とする、請求項10記載のカラー線量計。
  12. タグ状であることを特徴とする、請求項10記載のカラー線量計。
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