JP2005250463A - 光学記録媒体及び光学記録方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】記録された信号強度が大きく、耐久性や着色安定性に優れた光学記録媒体、特に可干渉性な光の干渉による干渉縞を屈折率の差によって記録するホログラム記録媒体及び多光子吸収を利用して記録を行う光学記録媒体を提供する。
【解決手段】下記一般式(I)で表されるジアリールエテン誘導体を含む前駆体に、活性エネルギー線を照射することによって硬化させると共に着色させてなる記録層を有する光学記録媒体。
【化23】
Figure 2005250463

(上記(I)式中、置換基B及びBはそれぞれ独立に、置換基を有していても良い含硫黄不飽和五員環基を表し、nは2〜5の整数を表す。)
【選択図】なし

Description

本発明はフォトクロミック化合物を用いた光学記録媒体、特に可干渉性な光の干渉による干渉縞を屈折率の差によって記録する位相ホログラム記録媒体及び多光子吸収反応を用いた光学記録媒体に関するものである。本発明はまた、この光学記録媒体を用いた光学記録方法に関する。
フォトクロミック化合物は光の作用により着色状態の異なる2つの異性体を可逆に生成する化合物であり、光学記録媒体などへの応用を目指して研究開発が活発に進められている。そして、数あるフォトクロミック材料の中でも、ジアリールエテン化合物は、熱不可逆性に優れ、遮光下における着色安定性が高く、更に繰り返し耐久性にも優れているため、好ましいとされている。
一般的にフォトクロミック化合物を用いた光学記録媒体では、記録層としてフォトクロミック化合物を高分子バインダー中に分散させて使用することがほとんどである(特許文献1、非特許文献1,2)。しかし、このような構成では溶剤選択や乾燥工程などで記録層作成工程が複雑化し、記録層中のフォトクロミック化合物が劣化し易く、十分な着色安定性が得られない。
特許文献2には、フォトクロミック化合物である下記一般式(VI)で表される1,2−ジ(2,3,5−トリメチルチエニル)−1,2−ジシアノエテンを分散させた紫外線硬化樹脂を用いて紫外線照射により3次元架橋させることにより、上記フォトクロミック化合物の着色安定性を向上させた例が開示されている。しかしながら、特許文献2は「光メモリ素子の製造方法」に関するものであり、実施例に着色状態の熱安定性が記載されているに留まっている。また、一般的にジシアノ系ジアリールエテン化合物は着色体への変換効率が悪く分子吸光係数も低いため、光メモリとして用いる場合には記録による吸収強度や屈折率の変化が小さく、信号再生に必要なS/N比が十分ではないという問題点があり、実際にフォトクロミック化合物と紫外線硬化樹脂との組み合わせで、具体的に光学記録媒体として開示されている例はまだない。
Figure 2005250463
一方、大容量光メモリ素子の分野では、ホログラム技術を利用した多重メモリ及び多光子吸収反応を利用した多層メモリが将来有望であると期待されている。即ち、従来の光メモリ素子は、レーザー光を記録層上に集光して微少領域で吸収させ、熱に変換することにより微細なピットを形成して情報を記録するヒートモードタイプが一般的である。ヒートモードタイプは物理的な閾値を利用しているため、記録よりも小さいレーザー光出力で再生すれば非破壊読み出しが可能であり、光記録方法として簡便で信頼性も高いが、記録されるピット間で熱干渉が発生するため、ピットサイズを小さくするには限界があった。一方、光熱変換のような熱的プロセスを介さず、光(フォトン)のエネルギーで直接生じる様々な反応を用いてデータを記録する、いわゆるフォトンモードでは、より高密度で高感度、かつ高速応答性が期待されている。近年、加速度的な情報記憶量の増大に伴い、従来のヒートモードタイプよりも記憶容量の向上が可能であるフォトンモードタイプが多数提案されており、その中でも、干渉性の高いレーザー光を用いて干渉縞を多重記録するホログラム型光メモリ素子や多光子吸収反応を利用してビットデータを3次元的に記録する多層メモリ素子が活発に研究されている。
ホログラム記録は、干渉縞の記録形態により幾つかの種類に分類されるが、なかでも、近年、干渉縞を記録層内部の屈折率差で記録するいわゆる位相ホログラムが、その高い回折効率や優れた波長選択性により大容量光メモリ素子の用途に応用されつつある。
このような屈折率差を利用したホログラム記録用材料としては、各種検討がなされている。フォトクロミック化合物を含む記録用材料もその一例で、それらに用いられるフォトクロミック化合物として、例えばジアリールエテン化合物などが用いられることも知られている(非特許文献1、2参照)。
非特許文献1及び2には、ホログラム記録を行った例として、下記一般式(VII)及び(VIII)で表される無置換ベンゾチオフェン基が結合したジアリールエテン化合物が開示されている。
Figure 2005250463
また、多光子吸収、特に2光子吸収は、有機化合物が強い光と物質との相互作用に基づいて示す様々な現象すなわち非線形光学特性の中でも特に注目されている現象である。2光子吸収とは、化合物が2つの光子を吸収して基底状態から励起状態へ遷移する現象であり、1光子励起波長の2倍程度の波長の光を用いて、2個の光子を1つの分子に当てることにより励起させることができる。1個の分子に同時に2個の光子があたる確率は、光子密度の2乗に比例し、試料上でレーザー光が焦点を結ぶとき焦点面から離れるにつれ、光子密度は距離の2乗に比例して減少する。従って、2光子吸収の起こる確率は焦点面から離れるに伴い距離の4乗に比例して減少していく。この現象を利用して、光メモリー、2光子造形、2光子フォトダイナミックセラピー等の分野で2光子吸収の応用が期待されている。
フォトクロミック化合物を含む記録用材料もその一例であり、フォトクロミック化合物が光を吸収して構造変化する際に多光子吸収現象を利用する光学記録媒体について精力的に検討が行われている(特許文献3,4)。
特開昭64−87684号公報 特許第2662308号 特開2004−039009号公報 特開2004−308634号公報 Mol.Cryst.Liq.Cryst.,2000,Vol.344,pp.191-198 J.Opt.Soc.Am.B,2002,Vol.19(9),pp.2032-2038
しかしながら、これらのホログラム記録媒体の記録層は、ポリカーボネート樹脂やウレタン樹脂にフォトクロミック化合物を分散させたものであるため、上述の通り十分な着色安定性が得られない。また、バインダー樹脂を熱硬化や溶媒除去によって一旦固体化させ、その後に改めて紫外線照射によってフォトクロミック化合物を着色させることにより情報記録を行っているが、フォトクロミック化合物が着色する際には分子構造変化を伴うため、固体化した後ではバインダー樹脂によって分子構造変化を伴う着色が阻害され、着色効率が悪く、信号強度が小さいという問題点があった。例えば、非特許文献1では、具体的にホログラム記録が行われ、その特性評価が行われているが、回折効率が0.6%と非常に小さく、実際に多重記録を行ってホログラムを読み出すことは非常に困難であり、より回折効率が大きい優れた記録媒体の出現が望まれていた。
また、多光子吸収は、その効率が極めて小さいのが一般的であり、実際に多光子吸収を利用して記録を行うためには、高出力かつ極めて高価なチタンサファイアレーザーなどを使用する必要があるため、より高感度な光学記録媒体が求められている。
従って、本発明の目的は、着色効率が良く、記録された信号強度が大きく、耐久性や着色安定性に優れた光学記録媒体、特に可干渉性な光の干渉による干渉縞を屈折率の差によって記録するホログラム記録媒体及び多光子吸収を利用して記録を行う光学記録媒体と、この光学記録媒体を用いた光学記録方法を提供することにある。
本発明の光学記録媒体は、下記一般式(I)で表されるジアリールエテン誘導体を含む前駆体に、活性エネルギー線を照射することによって硬化させると共に着色させてなる記録層を有することを特徴とする。
Figure 2005250463
(上記(I)式中、置換基B及びBはそれぞれ独立に、置換基を有していても良い含硫黄不飽和五員環基を表し、nは2〜5の整数を表す。)
即ち、本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定構造のジアリールエテン化合物と重合性化合物とを組み合わせ、光による硬化と着色とを同時に行うことにより、ジアリールエテン化合物がバインダー樹脂の束縛を受けずに光異性化を起こし易い液体状態で活性エネルギー線を照射することにより、着色効率が向上し、この結果信号強度が高まり、かつ3次元架橋した重合物中に着色したジアリールエテン化合物が固定されて着色安定性と耐久性に優れた光学記録媒体となることを見出し、本発明を完成するに至った。
上記一般式(I)における置換基B及びBはそれぞれ独立に、下記一般式(II),(III),及び(IV)で表されるものから選ばれたものであることが好ましい。
Figure 2005250463
(上記(II)〜(IV)式中、置換基R,R,Rはアルキル基又はアルコキシ基を表し、置換基R〜R10は水素原子又は任意の置換基を表す。)
また、硬化が下記一般式(V)で表される分子構造を持つジ(メタ)アクリレート化合物の重合反応によることが好ましい。
Figure 2005250463
(上記(V)式中、置換基R11及びR14はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、連結基R12及びR13はそれぞれ独立に、単結合又は炭素数1〜4のアルキレン基を表す。)
本発明の光学記録媒体は、特に可干渉性な光の干渉による干渉縞を屈折率の差によって記録する位相ホログラム記録媒体及び多光子吸収反応を用いた光学記録媒体として有効である。
本発明の光学記録方法は、このような本発明の光学記録媒体を用いるものであり、記録された信号の強度、安定性、耐久性に優れる。
本発明によれば、記録された信号の強度が大きく、記録のS/N比、耐久性や着色効率、着色安定性に優れた光学記録媒体、特に可干渉性な光の干渉による干渉縞を屈折率の差によって記録する位相ホログラム記録媒体及び多光子吸収反応を用いた光学記録媒体が提供される。
例えば、後述の実施例の項で示すように、ホログラム記録媒体の特性を表す指標として、回折効率と記録感度がある。即ち、回折効率は信号強度を示すものであり、記録感度は信号を記録するのに必要なエネルギー量の逆数を示すものであり、着色効率が良いと、信号強度が大きくなるので、記録感度が向上する。
回折光強度を透過光強度と回折光強度の和で割った値を回折効率と定義し、記録感度を回折効率の平方根/露光エネルギー(露光強度×時間)で定義した場合、本発明によれば、最大回折効率が1%以上、特に5%以上を示し、記録感度が0.1cm/J以上、特に5cm/J以上であるようなホログラム記録媒体を実現することができる。また、後述の実施例におけるように、80℃/50%RHの環境下に100時間暴露した後、着色体残存率が25%以上、特に90%以上であるような着色安定性、耐久性に優れたホログラム記録媒体を実現することができる。ここで最大回折効率の定義は次の通りである。
最大回折効率の定義:
回折効率の時間の時間変化を測定していくと、光照射前には回折効率は0であるが、照射時間が長くなるにつれて次第に増加し、ある時点で最大値を示した後は次第に減少していく。この時の最大値を最大回折効率と定義する。最大回折効率はホログラムを多重記録する際の目安になり、この値が大きいほどホログラム記録特性が良好であることになる。
これに対して、従来のホログラム記録媒体は、殆どが最大回折効率1%未満、記録感度0.1cm/J未満であり、ホログラム記録性能が劣り、特に、両方が共に優れたものはなく、着色体残存率も25%程度未満と、耐久性も劣る。
また、本発明の光学記録媒体では、信号再生に必要なS/N比も十分に大きい。
同様に、後述の実施例の結果からも明らかなように、本発明によれば、多光子吸収反応を用いた光学記録媒体において、感度の向上を図ることができる。
以下、本発明の光学記録媒体及び光学記録方法を詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変形して実施することができる。
本発明の光学記録媒体の記録層を形成するための前駆体は、少なくとも特定のジアリールエテン誘導体を含み、活性エネルギー線照射により硬化すると共に着色する。好ましくは硬化が、重合性化合物によるものが良く、更に重合開始剤を含有するものが良い。
本発明で用いられるジアリールエテン化合物は、下記一般式(I)で表され、優れたフォトクロミック化合物である。
Figure 2005250463
(上記(I)式中、置換基B及びBはそれぞれ独立に、置換基を有していても良い含硫黄不飽和五員環基を表し、nは2〜5の整数を表す。)
上記一般式(I)において、置換基B,Bを示す含硫黄不飽和五員環基は、それぞれ独立にチエニル基、チアゾリル基等の芳香族性を有する基が好ましく、特に3−チエニル基、4−チアゾリル基が好ましく、これらの基は更に他の環と結合していても、置換基を有していてもよい。更に、B,Bはそれぞれ独立に、下記一般式(II),(III),(IV)で表されるものから選ばれるものであることが好ましい。
Figure 2005250463
上記一般式(II),(III),(IV)において、置換基R,R,Rはそれぞれ独立に任意のアルキル基又はアルコキシ基を表す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等の直鎖又は分岐又は環状のアルキル基が挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基等の直鎖又は分岐又は環状のアルコキシ基が挙げられる。R,R,Rとしては、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基が好ましく、メチル基又はメトキシ基が更に好ましい。
置換基R〜R10はそれぞれ独立に、水素原子又は任意の置換基を示す。任意の置換基としては、当該ジアリールエテン化合物の閉環反応及び開環反応の量子収率及び着色体の分子吸光係数を損なわない限り特に制限はないが、例えばフェニル基、トリル基、ジメチルアミノフェニル基、ジエチルアミノフェニル基、ジフェニルアミノフェニル基、ナフチル基、チエニル基、フリル基等の置換基を有しても良いアリール基;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等の直鎖又は分岐又は環状のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基等の直鎖又は分岐又は環状のアルコキシ基;スチリル基等の置換基を有しても良いエテニル基;フェニルエチニル基、4−メトキシフェニルエチニル基等の置換基を有しても良いエチニル基;アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基、ジオクチルアミノ基、フェニルアミノ基、フェニルメチルアミノ基、フェニルエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等のアルキル基又はアリール基で置換されていても良いアミノ基;シアノ基;ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペルフルオロヘキシル基等の直鎖又は分岐のフルオロアルキル基が挙げられる。
置換基R〜R10として好ましいものは、水素原子、置換基を有しても良いアリール基、炭素数1〜5のアルキル基、置換基を有していても良いアリール基であり、特に好ましいものは水素原子、フェニル基、ジフェニルアミノフェニル基、メチル基である。
一般式(I)において、nは2〜5の整数を表し、本発明で用いられるジアリールエテン化合物は、2重結合を有する4〜7員環を有する。このうち、nが3又は4である、5又は6員環が好ましく、特にnが3である5員環が好ましい。
一般式(I)で示される本発明に係るジアリールエテン化合物の好ましい例としては下記のものが挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない(なお、以下において、Meはメチル基を示す。)。
Figure 2005250463
Figure 2005250463
Figure 2005250463
Figure 2005250463
Figure 2005250463
本発明において、記録層中には、一般式(I)で表されるジアリールエテン化合物の1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
特に、本発明で使用するジアリールエテン化合物は、熱不可逆性を示すものであることが好ましい。なお、本発明において「熱不可逆性」とは、30℃の環境における閉環体の半減期が10日以上であることを意味するものとする。ジアリールエテン化合物が熱不可逆性を示すものでないと、閉環体が室温で容易に異性化反応を起こして開環体に転換してしまい、レーザー光等の照射によって生じた変色状態が安定に保たれない可能性があるため、光学記録媒体に使用した場合に記録したデータを保持することができず、不具合が生じる虞がある。
なお、前記一般式(I)で表される化合物、特に上記例示化合物は熱不可逆性を有し、本発明に好適である。
本発明において、硬化をさせる手段は活性エネルギー線照射によって硬化するものであれば特に限定されないが、重合性化合物を用いる場合、用いる重合性化合物は単官能又は多官能性の重合性モノマーや樹脂オリゴマーのいずれであっても良いが、記録層の架橋密度を上げて強度を保持するため、多官能成分を一定量以上、好ましくは全固形分に対して50重量%以上、特に80重量%以上含むものが好ましい。
重合性化合物の単官能モノマー成分としては、例えば、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシヘキサノリド(メタ)アクリレート、1,3−ジオキサンアルコールのε−カプロラクトン付加物の(メタ)アクリレート、1,3−ジオキソラン(メタ)アクリレート等が挙げられる(なお、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。)。
多官能モノマー成分としては、例えば、シクロペンテニール(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジシクロぺンタジエニルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートのジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート、2−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−5−ヒドロキシメチル−5−エチル−1,3−ジオキサンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン付加物、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールのテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。特に、これらのうち、とりわけ下記一般式(V)で表されるトリシクロ〔5.2.1.0 2,6〕デカン構造を持つジ(メタ)アクリレート系重合性化合物は、硬化物の耐熱性と光線透過性が高い上に、飽和吸水率が低く、またフォトクロミック化合物である前記一般式(I)で表されるジアリールエテン化合物との相溶性にも優れており、本発明に好適である。
Figure 2005250463
(上記(V)式中、置換基R11及びR14はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、連結基R12及びR13はそれぞれ独立に、単結合又は炭素数1〜4のアルキレン基を表す。)
なお、上記一般式(V)において、置換基R11,R14としては好ましくはメチル基であり、連結基R12,R13としては好ましくは炭素数が1又は2のアルキレン基である。
また、樹脂オリゴマー成分としては、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等の各種(メタ)アクリレートが挙げられ、好ましくはエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。
これらの重合性化合物は1種を単独で使用しても良いが、複数種を組み合わせて使用しても良い。
重合開始剤を用いる場合は、光ラジカル重合開始剤が好ましい。光ラジカル重合開始剤は工業的に広く用いられる高圧水銀ランプなどの紫外線や、電子線、可視光線等の活性エネルギー線の照射によって活性ラジカルを生成する。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4−ジエチルチオキサントン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンジル、2−クロロチオキサントン、ジイソプロピルチオザンソン、9,10−アントラキノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、4−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,6−ジメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等が挙げられ、好ましくは2,6−ジメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等のリン系重合開始剤である。これらの光ラジカル重合開始剤はいずれか1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
本発明の光学記録媒体の記録層の前駆体層において、前記一般式(I)で表されるジアリールエテン化合物の含有量は、全固形分の0.1重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましい。また、50重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましい。ジアリールエテン化合物の含有量が少な過ぎると十分な光記録を行えず、多過ぎると相対的に重合性化合物の含有量が少なくなり記録層の成膜性、及びジアリールエテン化合物の活性エネルギー線の吸収が大きくなり重合反応性が損なわれる。
また、本発明の光学記録媒体の記録層の前駆体層において、重合性化合物の含有量は、全固形分の50重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましい。また、99.8重量%以下であることが好ましく、99重量%以下であることがより好ましい。重合性化合物の含有量が多過ぎると相対的にジアリールエテン化合物の含有量が少なくなり十分な光記録を行えず、少な過ぎると記録層の成膜性が損なわれる。
また、重合開始剤を含んでいる場合、その含有量は、記録層の前駆体層の全固形分の0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上であることが良い。また、10重量%以下であることが好ましく、5重量%以下であることが好ましい。重合開始剤の含有量が少な過ぎると、ラジカルの発生量が少なくなるため、光重合の速度が遅くなり、逆に、多過ぎると光照射により発生したラジカル同士が再結合し、光重合に対する寄与が少なくなり、やはり光重合の速度が遅くなる場合がある。
本発明の光学記録媒体の記録層の前駆体層には、必要に応じて、更に連鎖移動剤、重合停止剤、保存安定剤、分散剤、消泡剤、可塑剤、重合性化合物以外のバインダー樹脂等の添加剤を加えても良い。これらの添加剤を加える場合の量は記録層の前駆体層の全固形分に対して0〜20重量%、好ましくは0〜10重量%である。
本発明の光学記録媒体の製造は、通常、前記一般式(I)で表されるジアリールエテン化合物、重合性化合物、重合開始剤及び必要に応じて添加される他の添加剤の所定量を混合してなる記録層形成組成物を無溶剤で支持体上に塗布するか、或いはこの記録層形成組成物に溶剤を加えて塗布液を調製し、これを支持体上に塗布、乾燥した後に、活性エネルギー線を照射して重合性化合物を硬化させると共に、フォトクロミック化合物のジアリールエテン化合物を着色させて記録層を形成する。
照射する活性エネルギー線は、前記重合性化合物を硬化させると同時にフォトクロミック化合物であるジアリールエテン化合物を着色させることができるのであれば良く、電子線、可視光線及び紫外線が挙げられるが、特に波長200〜400nmの紫外線が好ましい。使用するランプの具体例としては、ケミカルランプ、キセノンランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等を挙げることができる。
このように硬化させると同時に着色させる工程を導入することにより、ジアリールエテン化合物の着色効率を高めて信号強度を大きくする効果が得られる上に、記録媒体の作成工程を簡略化することができ、非常に有利である。
活性エネルギー線の照射量は、重合開始剤がラジカルを発生する範囲であれば任意であるが、極端に少ない場合は重合が不完全過ぎて記録層の耐熱性、機械特性が十分に発現されず、逆に極端に多い場合は記録層に含まれるフォトクロミック化合物や重合性化合物が光による劣化を生じるので好ましくない。従って、活性エネルギー線は、記録層形成組成物の組成、重合開始剤の種類、及び配合量等に合わせて通常、好ましくは0.1〜20J/cmの範囲で照射する。
記録層を形成する支持体は、通常必要な強度及び耐久性を有しているものであれば良く、透明であっても不透明であっても良い。透明支持体としては、透明なガラス板、アクリル板、ポリカーボネート板、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルムなどが用いられる。好ましくは、ガラス板、アクリル板、ポリカーボネート板である。不透明支持体としては、アルミ板等の金属板や、このような透明支持体上に金、銀、アルミ、等の金属を素材とする反射コート層、又はフッ化マグネシウムや酸化ジルコニウム等の誘電体層を単層あるいは多層にコーティングし、誘電体・反射コート処理を施したもの等が用いられる。これらの支持体には、データアドレス用のパターニングを設けたものであっても良い。パターニング方法としては、基板自体に凹凸を形成したり、反射コート層にパターンを形成したり、又はこれらを組み合わせた方法が可能である。
支持体の厚さは、0.2〜1mmであることが好ましい。支持体が薄すぎると機械的強度が足りず、厚すぎると機械的強度は問題ないが、コストが高くなる。
記録層形成組成物の塗布方法としては、従来公知の方法、例えば、回転塗布、ワイヤーバー塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ロール塗布、及びブレード塗布等を用いることができる。また、特に膜厚の厚い記録層を形成する場合、型に入れて成型する方法も用いることができる。なお、記録層形成組成物を溶剤に溶解して塗布液を調製する場合、溶剤としては、樹脂基板を侵さない溶媒が好ましく、例えば、ジアセトンアルコール、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン等のケトンアルコール系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;n−ヘキサン、n−オクタン等の鎖状炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、n−ブチルシクロヘキサン、tert−ブチルシクロヘキサン、シクロオクタン等の環状炭化水素系溶媒;テトラフルオロプロパノール、オクタフルオロペンタノール、ヘキサフルオロブタノール等のパーフルオロアルキルアルコール系溶媒;乳酸メチル、乳酸エチル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル等のヒドロキシカルボン酸エステル系溶媒等が挙げられる。耐溶剤性の高い基板を使用する場合には、塩化メチレン、シクロヘキサノン、キシレン、メチルイソブチルケトン、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等を用いることができ、塗布効率、取り扱い性の面から、固形分濃度1〜100重量%程度の塗布液を調製するのが好ましい。
このようにして形成される記録層の膜厚は、ホログラム記録媒体の場合には10μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましい。また、5mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがより好ましい。記録層が厚すぎるとホログラム記録媒体における多重記録の際、各ホログラムの選択性が低くなり多重記録の度合いが低くなる。また、記録層が薄すぎると記録層全体を均一に成形することが困難であり、各ホログラムの回折効率が均一で、かつS/N比の高い多重記録が難しくなる。
一方、多光子記録に用いる光学記録媒体の場合、記録層の膜厚は、記録方法などにより適した膜厚が異なるため、特に限定するものではないが、通常10nm以上、好ましくは30nm以上であり、また通常は100μm以下であり、好ましくは30μm以下である。
本発明の光学記録媒体は、酸素遮断のための保護層等を設けることもできる。
保護層としては、酸素による感度低下や保存安定性の劣化等の悪影響を防止するための公知技術、例えば、水溶性ポリマーの塗布等を採用することもできる。
また、記録層の上下に支持体を設けても良い。記録層の上下に支持体を設ける場合は、2つある上下の支持体のうち、少なくともどちらか一方は活性エネルギー線を透過させる透明体である必要がある。
記録層の両側に透明支持体を有する媒体の場合、透過型、又は反射型のホログラムが記録可能である。また、片側に不透明、又は反射型の支持体を有する場合は、反射型のホログラム記録及び多光子記録が可能である。
反射型記録媒体の場合、反射層は支持体と記録層との間に設けても良く、支持体の外側面(記録層形成面と反対側の面)に設けても良い。また、透過型、反射型記録媒体とも、記録光及び読み出し光が入射、及び出射する側、あるいは記録層と支持体との間に反射防止膜を設けても良い。これらの反射防止膜は、光の利用効率を向上させ、かつホログラム記録におけるゴースト像の発生を抑制する働きをする。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその趣旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下において「重量部」は「部」と記す。
{ホログラム記録の実施例及び比較例}
[実施例1]
(光学記録媒体の作製)
フォトクロミック化合物として下記化合物Aを1部、重合性化合物を含む紫外線硬化樹脂組成物として下記組成物アを100部、光重合開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製、ダロキュア1173)7.5部を添加し、超音波攪拌器にて45℃で2時間かけて攪拌混合した。
Figure 2005250463
<組成物ア>
ジシクロぺンタジエニルジアクリレート:32部
R−130(日本化薬、エポキシエステル3000A/トリメチロールプロパントリアクリレート=60/40):20部
ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート:28部
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート:20部
調合した溶液をスライドガラスに0.2cm滴下し、スライドガラスの両側にスペーサとして厚さ200μmのポリテトラフルオロエチレンフィルムを置き、別のスライドガラスでカバーした後にガラス面に対して垂直方向から下記操作条件にて紫外線を照射して硬化させ、厚さ200μmの記録層を有する光学記録媒体を得た。
<操作条件>
高圧水銀ランプ使用(アイグラフィックス社製、定格電力3kW、型番:H03−L−31)
ランプ出力:120W/cm
コンベア速度:1m/分
照射エネルギー:1J/cm
この紫外線照射により、紫外線硬化樹脂は硬化すると共に、フォトクロミック化合物である化合物Aも赤紫色に着色した。
(ホログラム記録特性の評価)
このようにして得られた光学記録媒体を、波長532nmのNd:YVOレーザーの第2高調波(コヒーレント社製固体レーザー、Compass Verdi 2W)を用いて、ビーム1本当たり露光パワー密度1W/cmで二光束干渉露光を行った。この二光束干渉露光の概念図を図1に示す。Nd:YVOレーザー1から露光する2本のビーム間角度は光記録媒体10の入射前で64度(θ=64°)に設定した。二光束干渉露光と同時に波長632.8nmのHe−Neレーザー(読み出しパワー密度0.05mW/cm)2で回折効率をモニターした。3はハーフミラー、4,5はミラー、6,7は検出器である。
ホログラム記録媒体の特性を表す指標として、回折効率と記録感度があるので、ここでは、回折光強度を透過光強度と回折光強度の和で割った値で、回折効率を定義した。また、露光を開始してから回折効率の時間変化を測定し、測定したグラフの直線部分の傾きから次式を用いて記録感度(S)を定義した。
記録感度(S)=回折効率の平方根/露光エネルギー(露光強度×時間)
露光開始後0.064秒で回折効率が0.1%に到達し(記録感度5.16cm/J)、更に露光開始後0.54秒で最大回折効率5.2%のホログラムが得られた。なお、記録感度は0.1cm/J以上であり、また、最大回折効率は1%以上であれば、十分に実用に耐えるものである。
また、この光学記録媒体を80℃/50%RHの環境下に100時間暴露した後、着色体残存率を測定したところ29.8%で良好であった。
[実施例2]
紫外線硬化樹脂組成物として下記化合物イを99部、光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキシド(BASF社製、ルシリンTPO)1部を用いた以外は、実施例1と同様にして光学記録媒体の作成とホログラム記録特性の評価を行った。
Figure 2005250463
その結果、露光開始後0.048秒で回折効率が0.1%に到達し(記録感度6.88cm/J)、更に露光開始後0.73秒で最大回折効率5.6%のホログラムが得られた。
また、この光学記録媒体を80℃/50%RHの環境下に100時間暴露した後、着色体残存率を測定したところ61.0%で良好であった。
[実施例3]
フォトクロミック化合物として下記化合物Bを用い、記録層の厚さを100μmとした他は、実施例2と同様にして光学記録媒体の作成とホログラム記録特性の評価を行った。
Figure 2005250463
その結果、露光開始後0.67秒で回折効率が0.1%に到達し(記録感度0.49cm/J)、更に露光開始後3.64秒で最大回折効率4.5%のホログラムが得られた。
また、この光学記録媒体を80℃/50%RHの環境下に100時間暴露した後、着色体残存率を測定したところ95.5%で良好であった。
[実施例4]
フォトクロミック化合物として下記化合物Cを用い、記録層の厚さを100μmとした他は、実施例2と同様にして光学記録媒体の作成とホログラム記録特性の評価を行った。
Figure 2005250463
その結果、露光開始後0.095秒で回折効率が0.1%に到達し(記録感度3.47cm/J)、更に露光開始後1.31秒で最大回折効率4.4%のホログラムが得られた。
また、この光学記録媒体を80℃/50%RHの環境下に100時間暴露した後、着色体残存率を測定したところ94.6%で良好であった。
[実施例5]
フォトクロミック化合物として下記化合物Dを用い、記録層の厚さを100μmとした他は、実施例2と同様にして光学記録媒体の作成とホログラム記録特性の評価を行った。
Figure 2005250463
その結果、露光開始後2.73秒で回折効率が0.1%に到達し(記録感度0.12cm/J)、更に露光開始後10.1秒で最大回折効率2.8%のホログラムが得られた。
また、この光学記録媒体を80℃/50%RHの環境下に100時間暴露した後、着色体残存率を測定したところ97.6%で良好であった。
[比較例1]
実施例1と同じフォトクロミック化合物Aを1重量部、アクリル樹脂(アクリペットVH−5、三菱レイヨン製)99部を有機溶媒(THF/トルエン=1/1(重量比))と混合し、固形分比率が20重量%になるように調整した。更に、超音波攪拌器にて45℃で4時間かけて攪拌混合し溶液を作成した。そして2昼夜風乾させてから更に80℃で4時間乾燥させて有機溶媒を除去した後、スライドガラスの両側にスペーサとして厚さ200μmのポリテトラフルオロエチレンフィルムを置き、別のスライドガラスでカバーした後にクリップではさみ、120℃で30分間加熱しながら所定の厚みになるまでヒートプレスを実施して光学記録媒体を得た。
この光学記録媒体に対して、実施例1と同じ条件で紫外線照射を行い、フォトクロミック化合物Aを着色させた後、同様にホログラム特性を評価した。
その結果、露光開始後0.14秒で回折効率が0.1%に到達し(記録感度2.36cm/J)、更に露光開始後0.93秒で最大回折効率1.2%のホログラムが得られた。
この光学記録媒体を80℃/50%RHの環境下に100時間暴露した後、着色体残存率を測定したところ着色はほとんど見られず測定不能であった。
[比較例2]
フォトクロミック化合物として化合物(VI)を用いた他は、実施例2と同様にして光学記録媒体の作成とホログラム記録特性の評価を行った。
その結果、回折効率は最大でも0.1%であり、記録感度の評価は不可能であった。
Figure 2005250463
以上の実施例1〜5と比較例1,2の結果を表1にまとめて示す。表1より、本発明の光学記録媒体は、ホログラム記録における信号強度及び耐久性と着色安定性に優れることが分かる。
Figure 2005250463
{多光子記録の実施例及び比較例}
[実施例6]
(光学記録媒体の作製)
フォトクロミック化合物として前記化合物Bを0.5部用い、記録層の厚さを50μmとした他は、実施例2と同様にして光学記録媒体を作成した。
(多光子記録特性の評価)
得られた光学記録媒体について、レーザー照射し、フィルムサンプルのレーザー照射部分で色変化が視認できるまでに要する時間を測定することにより、2光子吸収記録感度を評価した。
記録用レーザー光源にはフェムト秒チタンサファイアレーザー(波長:800nm、パルス幅:100fs、繰り返し周波数:1kHz、平均出力:2W、ピークパワー:20GW)を用いて平均出力を68mWに下げ、レーザー光を集光レンズでビーム径1mmに集光してフィルムサンプルに照射し、照射部分の色変化は目視で評価した。
その結果、2光子吸収記録感度(色変化までの時間)は1秒で、2光子吸収記録感度は良好であった。
[実施例7]
フォトクロミック化合物として前記化合物Cを用いた他は、実施例6と同様にして光学記録媒体の作成と多光子記録特性の評価を行った。
その結果、2光子吸収記録感度(色変化までの時間)は10秒であった。
[比較例3]
実施例6と同じフォトクロミック化合物Bを4重量%とアクリル樹脂(三菱レイヨン製、商品名:アクリペットVH−5)4重量%を有機溶媒(FHF/トルエン=1:1(重量比))に溶解して溶液を作成した。スライドガラス上にこの溶液を滴下後、アプリケーターで塗布し(ギャップ100μm)、100℃で30分間乾燥させ、厚さ1μmのフィルム状の光学記録媒体を作成した。この光学記録媒体の両面に下記操作条件にて紫外線を照射することによりフォトクロミック化合物Bを着色させた後、実施例6と同様にして多光子記録特性を評価した。
その結果、2光子吸収記録感度(色変化までの時間)は10秒であった。
<操作条件>
超高圧水銀ランプ使用(ウシオ電機製、型番:USH−500BY1)
照射強度:250mW・cm
波長:365nm
照射時間:1秒間
[比較例4]
フォトクロミック化合物として前記化合物Cを用いた他は、比較例3と同様にして光学記録媒体の作成と多光子記録特性の評価を行った。
その結果、2光子吸収記録感度(色変化までの時間)は20秒であった。
以上の実施例6,7と比較例3,4の結果を表2にまとめて示す。表2より、本発明の光学記録媒体は、多光子記録における記録感度に優れることが分かる。
Figure 2005250463
本発明の光学記録媒体は、三次元画像表示装置や回折光学素子、大容量メモリ、その他のホログラム記録分野や、光メモリー、2光子造形、2光子フォトダイナミックセラピー等の2光子吸収等の多光子記録分野に有用である。
二光束干渉露光の概念図である。
符号の説明
1 Nd:YVOレーザー
2 He−Neレーザー
3 ハーフミラー
4,5 ミラー
6,7 検出器
10 光学記録媒体

Claims (5)

  1. 下記一般式(I)で表されるジアリールエテン誘導体を含む前駆体に、活性エネルギー線を照射することによって、硬化させると共に着色させてなる記録層を有することを特徴とする光学記録媒体。
    Figure 2005250463
    (上記(I)式中、置換基B及びBはそれぞれ独立に、置換基を有していても良い含硫黄不飽和五員環基を表し、nは2〜5の整数を表す。)
  2. 請求項1において、前記一般式(I)における置換基B及びBがそれぞれ独立に、下記一般式(II),(III),及び(IV)で表されるものから選ばれたものであることを特徴とする光学記録媒体。
    Figure 2005250463
    (上記(II)〜(IV)式中、置換基R,R,Rはアルキル基又はアルコキシ基を表し、置換基R〜R10は水素原子又は任意の置換基を表す。)
  3. 請求項1又は2において、硬化が下記一般式(V)で表される分子構造を持つジ(メタ)アクリレート化合物の重合反応によるものであることを特徴とする光学記録媒体。
    Figure 2005250463
    (上記(V)式中、置換基R11及びR14はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、連結基R12及びR13はそれぞれ独立に、単結合又は炭素数1〜4のアルキレン基を表す。)
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項において、可干渉性な光の干渉による干渉縞を屈折率の差によって記録する光学記録媒体であることを特徴とする光学記録媒体。
  5. 請求項1ないし4のいずれか1項に記載の光学記録媒体を用いることを特徴とする光学記録方法。
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