JP2008275674A - 光記録用組成物、ホログラフィック記録媒体および情報記録方法 - Google Patents

光記録用組成物、ホログラフィック記録媒体および情報記録方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高回折効率、良保存性、低収縮率、乾式処理、多重記録特性(高記録密度)などの特性に優れるとともに、再生用に照射される光に対する耐久性の高いホログラフィック記録媒体を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物を含む光記録用組成物。
Figure 2008275674

[一般式(1)中、Xn+はn価のカチオンを表し、nは1以上の整数を表し、Yは脱離基を表し、Zは置換基を表し、R1およびR2は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表し、A1およびA2は、それぞれ独立に置換基を表し、mは0〜5の範囲の整数を表し、lは0〜4の範囲の整数を表す。mが2以上の整数である場合、複数存在するA1はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、lが2以上の整数である場合、複数存在するA2はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。]
【選択図】なし

Description

本発明は、光記録用組成物、特に高密度光記録媒体や、3次元ディスプレイ、ホログラフィック光学素子等への応用可能なホログラフィック記録用組成物、ならびにホログラフィック記録媒体および前記媒体への情報記録方法に関するものである。
ホログラム作製に関する一般的原理は、いくつかの文献や専門書、たとえば「ホログラフィックディスプレイ」(辻内順平編、産業図書[非特許文献1])2章に記載されている。これらによれば、2光束のコヒーレントなレーザー光の一方を記録対象物に照射し、それからの全反射光を受け取れる位置に感光性のホログラム記録材料が置かれる。ホログラム記録材料には、対象物からの反射光の他に、もう一方のコヒーレントな光が、対象物に当たらずに直接照射される。対象物からの反射光を物体光、また直接記録材料に照射される光を参照光といい、参照光と物体光との干渉縞が画像情報として記録される。次に、処理された記録材料に参照光と同じ光(再生照明光)を照射すると、記録の際に対象物から記録材料に最初に到達した反射光の波面を再現するようにホログラムによって回折され、その結果、対象物の実像とほぼ同じ物体像を3次元的に観測することができる。
参照光と物体光を同じ方向からホログラム記録材料に入射させて形成されるホログラムを透過型ホログラムと呼ぶ。干渉縞は記録材料膜面方向に垂直または垂直に近い形で1mmに1000〜3000本程度の間隔で形成される。透過型ホログラムは、例えば特開平6−43634号公報[特許文献1]などで開示されている。
一方、互いにホログラム記録材料の反対側から入射させて形成したホログラムを、一般に反射型ホログラムと呼ぶ。干渉縞は記録材料膜面方向に平行または平行に近い形で1mmに3000〜7000本程度の間隔で形成される。反射型ホログラムは、例えば特開平2−3082号公報[特許文献2]、特開平3−50588号公報[特許文献3]などに開示されている。
一方、干渉縞間隔に対して膜厚が十分に厚い(通常は干渉縞間隔の5倍以上程度、または1μm以上程度の膜厚を言う)ホログラムを体積型ホログラムという。
それに対し膜厚が干渉縞間隔の5倍以下程度または1μm以下程度のホログラムを平面型または表面型という。
さらに、色素や銀などの吸収により干渉縞を記録するホログラムを振幅型ホログラムと呼び、表面レリーフまたは屈折率変調により記録するホログラムを位相型ホログラムと呼ぶ。振幅型ホログラムは光の吸収により、光の回折効率または反射効率が著しく低下するため光の利用効率の点で好ましくなく、通常は位相型ホログラムが好ましく用いられる。
体積位相型ホログラムでは、ホログラム記録材料中に光学的吸収ではなく屈折率の異なる干渉縞を多数形成することによって、光を吸収することなく光の位相を変調することができる。
特に反射型の体積位相型ホログラムはリップマン型ホログラムとも呼ばれ、ブラック回折による波長選択的反射により、高回折効率にてフルカラー化、白色再生、高解像度化が可能となり、高解像フルカラー3次元ディスプレイの提供が可能となる。
また最近ではその波長選択的反射を生かして、自動車搭載用のヘッドアップディスプレイ(HUD)、光ディスク用ピックアップレンズ、ヘッドマウントディスプレイ、液晶用カラーフィルター、反射型液晶反射板等に代表されるホログラム光学素子(HOE)に広く実用化されてきている。
他にも例えば、レンズ、回折格子、干渉フィルター、光ファイバー用結合器、ファクシミリ用光偏光器、建築用窓ガラス等に実用または応用が検討されている。
ところで、最近の高度情報化社会の流れの中で、インターネット等のネットワークやハイビジョンTVが急速に普及している。また、HDTV(High Definition Television)の放映も間近にひかえて、民生用途においても100GB以上の画像情報を安価簡便に記録するための高密度記録媒体の要求が高まっている。
さらにコンピューター高容量化等の流れの中で、コンピューターバックアップ用途や放送バックアップ用途等の業務用途においても、1TB程度あるいはそれ以上の大容量の情報を高速かつ安価に記録できる超高密度記録媒体が求められている。
従来、記録媒体としては、磁気テープ媒体およびハードディスクが広く用いられていたが、近年、可換かつランダムアクセス可能で小型、安価な光記録媒体がより注目されてきている。しかしながら、DVD−Rのような既存の2次元光記録媒体は物理原理上、たとえ記録再生波長を短波長化したとしても、達成可能と考えられる記録容量は片面25GB程度で、将来の要求に対応できる程の充分大きな記録容量が期待できるとは言えない状況である。
そこで、究極の超高密度記録媒体として、膜厚方向に記録を行う3次元光記録媒体が注目されてきている。その有力な方法として2光子吸収材料を用いる方法とホログラフィー(干渉)を用いる方法とがある。かかる状況下、体積位相型ホログラム記録材料は、3次元光記録媒体(ホログラフィックメモリ)として、最近俄然注目を集めるようになった。
体積位相型ホログラム記録材料を用いたホログラフィックメモリでは、3次元物体から反射する物体光の代わりに、DMDやLCDといった空間光変調素子(SLM)を用いた2次元デジタル情報(信号光と呼ぶ)を数多く記録していく。記録の際、角度多重、位相多重、波長多重、シフト多重などの多重記録を行うため1TBにも達する高容量化が可能となる。また、読み出しには通常CCDやCMOS等を用い、それらの並列書き込み、読み出しにより、1Gbpsにも達する高転送速度化も可能となる。
ところが、ホログラフィックメモリに用いるホログラム記録材料に求められる要件は、下記の如く3次元ディスプレイやHOE用途よりもさらに厳しいものである。
(1)高感度であること
(2)高解像力を有すること
(3)ホログラムの回折効率が高いこと
(4)記録時の処理が乾式であり迅速であること
(5)多重記録が可能であること(ダイナミックレンジが広いこと)
(6)記録後の収縮率が小さいこと
(7)ホログラムの保存性が良いこと
特に、(1)高感度であること に対し、(3)回折効率が高いこと、(4)乾式処理であること、(6)記録後の収縮率が低いこと、(7)保存性が良いこと、は化学的に考えて相反する物性であり、その両立は極めて困難である。
前述の体積位相型ホログラム記録材料としては、ライトワンス方式として重クロム酸ゼラチン方式、漂白ハロゲン化銀塩方式およびフォトポリマー方式などが知られ、リライタブル方式として、フォトリフラクティブ方式およびフォトクロミック高分子方式などが知られる。
しかし、上記体積位相型ホログラム記録材料において、特に高感度光記録媒体用途においては、求められる要件をすべて満たす材料は未だなく改良が望まれている。
具体的には、例えば、重クロム酸ゼラチン方式は高い回折効率と低ノイズ特性という長所を有するが、保存性が極めて悪く、湿式処理が必要で低感度という問題を有し、ホログラフィックメモリ用途には適さない。
漂白ハロゲン化銀方式は高感度という長所を有するが、湿式処理が必要でかつ漂白処理が煩雑であり、また、散乱が大きい、耐光性に劣るという問題点を有し、ホログラフィックメモリ用途にはやはり一般的に適さない。
フォトリフラクティブ材料は書き換え可能という長所を有するが、記録時に高電場印加が必要、記録保存性が悪いという問題点を有する。
アゾベンゼン高分子材料等に代表されるフォトクロミック高分子方式も書き換え可能という長所を有するが、感度が極めて低く記録保存性も悪いという問題点を有する。例えば、国際公開第97/44365号パンフレット[特許文献4]には、アゾベンゼン高分子(フォトクロミック高分子)の屈折率異方性と配向制御を用いた書き換え可能なホログラム記録材料が提示されているが、アゾベンゼン異性化の量子収率が低い上に配向変化を伴う方式であるがために感度が極めて低く、また書き換え可能であることとの相反で記録保存性も悪いという問題点を有し、実用には程遠い。
これに対し、前述の特許文献1〜3に開示された乾式処理フォトポリマー方式は、バインダー、ラジカル重合可能なモノマーおよび光重合開始剤を基本組成とし、屈折率変調を向上させるためにバインダーまたはラジカル重合可能なモノマーのどちらか一方に芳香環または塩素、臭素を有する化合物を用いて屈折率差を持たせる工夫をしており、その結果、ホログラム露光の際形成される干渉縞の明部にモノマーが、暗部にバインダーが集まりつつ重合が進行することにより屈折率差を形成することができる。したがって、高回折効率と乾式処理を両立でき得る比較的実用的な方式といえる。
しかしながら、漂白ハロゲン化銀方式に比べると感度が1000分の1程度であること、回折効率を高めるためには2時間近い加熱定着処理を必要とすること、ラジカル重合であるため、酸素による重合阻害の影響を受け、また露光、定着後記録材料の収縮を伴い、再生時の回折波長および角度が変化してしまう問題点があること、膜が柔らかいため保存性の点でも不足していること等からホログラフィックメモリ用途としては到底使用に耐えるものではない。
ここで一般に、ラジカル重合に対しカチオン重合、特にエポキシ化合物等の開環を伴うカチオン重合は、重合後の収縮が少なく、また酸素による重合阻害も受けず、剛性のある膜を与える。したがって、ホログラフィックメモリ用途としてはカチオン重合の方が適しているという指摘もある。
例えば、特開平5−107999号公報[特許文献5]、特開平8−16078号公報[特許文献6]等に、カチオン重合性化合物(モノマーまたはオリゴマー)をバインダーの代わりに用い、さらに増感色素、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、ラジカル重合性化合物を組み合わせたホログラム記録材料が開示されている。
また、特表2001−523842号公報[特許文献7]、特表平11−512847号公報[特許文献8]等に、ラジカル重合を用いずに、増感色素、カチオン重合開始剤、カチオン重合性化合物およびバインダーのみを用いたホログラム記録材料が開示されている。
しかしこれらのカチオン重合方式はラジカル重合方式に比べて、収縮率の改善が見られるものの、その相反として、感度が低下しており、実用の際には転送速度の点で大きな問題となると考えられる。また回折効率も低下しており、S/N比や多重記録の点で問題となると考えられる。
前述したように、フォトポリマー方式は物質移動を伴う方式であるため、ホログラフィックメモリへの応用を検討する際、保存性を良く、収縮性を小さくしようとすれば感度が低下し(カチオン重合方式)、逆に感度を向上させようとすれば、保存性、収縮性が悪化する(ラジカル重合方式)というジレンマに陥る。また、ホログラフィックメモリの記録密度を向上させるためには、50回を超えて好ましくは100回以上にも及ぶ多重記録が行われるが、フォトポリマー方式では記録に物質移動を伴う重合を用いるため、多重記録初期の記録速度に対して、多くの化合物の重合が進んだ後の多重記録後期の記録速度が低下してしまい、それを制御して露光量を調節すること、広いダイナミックレンジをとることが実用上大きな問題となっている。
このような高感度と良保存性、低収縮率、乾式処理のジレンマ、多重記録特性(高記録密度)の問題点は、従来のフォトポリマー方式を用いている限りは物理法則上避けがたいと考えられる。またハロゲン化銀方式にてホログラフィックメモリに求められる要件を満たすことも、特に乾式処理化の点で原理的に困難である。
そこで、ホログラム記録材料をホログラフィックメモリへ応用するためには、そのような課題を抜本的に解決した、とりわけ高感度と低収縮性、良保存性、乾式処理、多重記録特性(高記録密度)を両立できる全く新しい記録方式の開発が強く望まれていた。
一方、上記課題を抜本的に解決し得る記録方式として、色素の発色または消色反応による屈折率変調を用いたホログラム記録方式が、特開2005−99751号公報[特許文献9]、特開2005−99753号公報[特許文献10]、特開2005−309359号公報[特許文献11]、特開2005−17730号公報[特許文献12]などに開示されている。
これらの記録方式を用いることで、フォトポリマー方式の課題であった体積収縮を大幅に改善することができる。しかし上記記録方式では、色素の発色または消色反応により情報を記録した後、情報記録に使用した光と同じ波長の光を情報再生のために照射すると、この光照射により色素の反応が更に進行し、記録した情報が変化してしまう点が課題であった。そのため、再生用に照射される光に対する耐久安定性に関しては更なる改善が求められていた。
特開平6−43634号公報 特開平2−3082号公報 特開平3−50588号公報 国際公開第97/44365号パンフレット 特開平5−107999号公報 特開平8−16078号公報 特表2001−523842号公報 特表11−512847号公報 特開2005−99751号公報 特開2005−99753号公報 特開2005−309359号公報 特開2005−17730号公報 「ホログラフィックディスプレイ」、辻内順平編、産業図書
そこで本発明の目的は、高回折効率、良保存性、低収縮率、乾式処理、多重記録特性(高記録密度)などの特性に優れるとともに、再生用に照射される光に対する耐久性の高いホログラフィック記録媒体を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、下記一般式(1)で表される化合物を用いて形成した記録層は、体積収縮が少なく記録特性に優れること、更に、定着操作により再生用に照射される光に対する耐久性を高めることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、上記目的は、下記手段によって達成された。
[1]下記一般式(1)で表される化合物を含むことを特徴とする光記録用組成物。
Figure 2008275674
[一般式(1)中、Xn+はn価のカチオンを表し、nは1以上の整数を表し、Yは脱離基を表し、Zは置換基を表し、R1およびR2は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表し、A1およびA2は、それぞれ独立に置換基を表し、mは0〜5の範囲の整数を表し、lは0〜4の範囲の整数を表す。mが2以上の整数である場合、複数存在するA1はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、lが2以上の整数である場合、複数存在するA2はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。]
[2]酸発生剤を更に含む[1]に記載の光記録用組成物。
[3]マトリックスまたはマトリックス形成成分を更に含む[1]または[2]に記載の光記録用組成物。
[4]ホログラフィック記録用組成物である[1]〜[3]のいずれかに記載の光記録用組成物。
[5][4]に記載の光記録用組成物から形成された記録層を有するホログラフィック記録媒体。
[6]少なくとも、[5]に記載のホログラフィック記録媒体へ情報光および参照光を照射することにより、ホログラフィック記録媒体が有する記録層に干渉像を形成することを含む情報記録方法。
[7]干渉像が形成された記録層に対して定着操作を施すことを更に含む[6]に記載の情報記録方法。
[8]定着操作は、加熱および/または光照射により行われる[7]に記載の情報記録方法。
[9]定着操作に用いられる光は、情報光および参照光より短波長の光である[8]に記載の情報記録方法。
本発明によれば、再生用に照射される光に対して高い耐久性を有し、更に高回折効率、良保存性、低収縮率、乾式処理、多重記録特性(高記録密度)などの特性に優れるホログラフィック記録媒体を提供することができる。
[光記録用組成物]
本発明の光記録用組成物は、下記一般式(1)で表される化合物を含み、ログラフィック記録用組成物として好ましく用いられ、特にボリュームホログラフィック記録用組成物として好適である。ホログラフィック記録とは、情報を含んだ情報光と参照光とを記録層中で重ね合わせ、そのときにできる干渉像を記録層に書き込むことによって情報を記録する情報記録方法であり、ボリュームホログラフィック記録とは、ホログラフィック記録のなかでも記録層に三次元的に干渉像を書き込む情報記録方法である。
以下に、一般式(1)で表される化合物の詳細を説明する。
一般式(1)で表される化合物
Figure 2008275674
[一般式(1)中、Xn+はn価のカチオンを表し、nは1以上の整数を表し、Yは脱離基を表し、Zは置換基を表し、R1およびR2は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表し、A1およびA2は、それぞれ独立に置換基を表し、mは0〜5の範囲の整数を表し、lは0〜4の範囲の整数を表す。mが2以上の整数である場合、複数存在するA1はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、lが2以上の整数である場合、複数存在するA2はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。]
一般式(1)中、Xn+はn価のカチオンを表す。ここでいうカチオンとは、水素イオン、Li、Na、K、Rb、Csなどのアルカリ金属、Mg、Ca、Baなどのアルカリ土類金属など無機の陽イオン、置換または無置換のアンモニウムイオンやホスホニウムイオンなど有機の陽イオンなどを表す。Xn+は、好ましくはアルカリ金属の陽イオン、または置換もしくは無置換のアンモニウム塩である。
nは1以上の整数であり、化合物の電荷を中和するために必要な数値となる。nは1であることが好ましい。
一般式(1)中、Yは脱離基を表す。本発明において脱離基とは、該基に水素イオンが付加して形成される化合物(Y−H)のpKa値が10以下になる基を意味する。ここでpKaとは、酸の強さを定量的に表す1つの指標であり、Y−Hから水素イオンが放出される解離反応を考えた場合、その平衡定数Kaの負の常用対数で定義される。Yで表される脱離基の具体例としては、アシルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子、アリールオキシ基、アリールチオ基などが挙げられる。Yで表される脱離基は、好ましくは、アシルオキシ基またはハロゲン原子であり、アシルオキシ基がより好ましい。
一般式(1)中、Zは置換基を表す。置換基としては、例えばハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、N−ヒドロキシカルバモイル基、N−アシルカルバモイル基、N−スルホニルカルバモイル基、N−カルバモイルカルバモイル基、チオカルバモイル基、N−スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、カルボキシ基(およびその塩を含む)、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、ホルミル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、シリルオキシ基、ニトロ基、アミノ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、N−ヒドロキシウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、ヒドラジノ基、アンモニオ基、オキサモイルアミノ基、N−(アルキルまたはアリール)スルホニルウレイド基、N−アシルウレイド基、N−アシルスルファモイルアミノ基、ヒドロキシアミノ基、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基、イミダゾリオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基)、イソシアノ基、イミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)ジチオ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基(およびその塩を含む)、スルファモイル基、N−アシルスルファモイル基、N−スルホニルスルファモイル基(およびその塩を含む)、シリル基などが挙げられる。なおここで塩とは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、重金属などの陽イオンやアンモニウムイオン、ホスホニウムイオンなどの有機の陽イオンとの塩を意味する。なお、これら置換基は更にこれら置換基で置換されていてもよい。
本発明においてZはアルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基が好ましく、アリール基またはヘテロ環基がより好ましい。
アリール基は、好ましくは炭素数6〜30の置換または無置換のアリール基、例えばフェニル基、p−トリル基、ナフチル基、m−クロロフェニル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基である。ヘテロ環基とは、例えば、窒素原子、酸素原子、および硫黄原子のうち少なくとも一つを含む5〜7員環の、置換もしくまたは無置換の、飽和もしくまたは不飽和のヘテロ環である。これらは単環であってもよいし、更に他のアリール環もしくまたはヘテロ環と共に縮合環を形成してもよい。ヘテロ環基として好ましくは5〜6員のものであり、例えばピロリル基、ピロリジニル基、ピリジル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、インドリル基、インダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、フリル基、ピラニル基、クロメニル基、チエニル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、モルホリノ基、モルホリニル基などが挙げられる。
一般式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表す。R1およびR2が置換基を表す場合、その具体例は先にZの説明で挙げた置換基と同じものが挙げられる。R1およびR2は、水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基であることが好ましく、R1がアルキル基であり、R2が水素原子である場合がより好ましい。
アルキル基は、直鎖、分岐または環状の置換または無置換のアルキル基であることができる。前記アルキル基は、好ましくは炭素数1〜30の置換または無置換の直鎖または分岐のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、2−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、t−オクチル基、2−エチルヘキシル基、1,5ジメチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、ソディウムスルホエチル基、ジエチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、ブトキシプロピル基、エトキシエトキシエチル基、n−ヘキシルオキシプロピル基等)、炭素数3〜18の置換または無置換の環状アルキル基(例えばシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、アダマンチル基、シクロドデシル基等)である。なお、本発明におけるアルキル基には、ビシクロアルキル基、好ましくは炭素数5〜30の置換または無置換のビシクロアルキル基(つまり炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基であり、例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含される。
一般式(1)中、A1およびA2は、それぞれ独立に置換基を表す。置換基の具体例は先にZの説明で挙げた置換基と同じものが挙げられる。A1およびA2は、好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボキシ基(およびその塩を含む)、シアノ基、ホルミル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、ニトロ基、アミノ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基(およびその塩を含む)、スルファモイル基などであり、より好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボキシ基(およびその塩を含む)、シアノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、アシルオキシ基、ニトロ基、アミノ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基(およびその塩を含む)、スルファモイル基などである。
更に好ましくはハロゲン原子、アルキル基(直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜30の置換もしくは無置換の直鎖または分岐のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、2−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、t−オクチル基、2−エチルヘキシル基、1,5ジメチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、ソディウムスルホエチル基、ジエチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、ブトキシプロピル基、エトキシエトキシエチル基、n−ヘキシルオキシプロピル基など、炭素数3〜18の置換もしくは無置換の環状アルキル基、例えばシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、アダマンチル基、シクロドデシル基など、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、更に環構造が多いトリシクロ構造など)、アルコキシカルボニル基(炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基であり、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、n−オクタデシルオキシカルボニル基など)、アリールオキシカルボニル基(炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基であり、例えばフェノキシカルボニル基、o−クロロフェノキシカルボニル基、m−ニトロフェノキシカルボニル基、p−t−ブチルフェノキシカルボニル基など)、カルバモイル基(炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイル基であり、例えばカルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基など)、シアノ基、アルコキシ基(炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルコキシ基であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基など)、アリールオキシ基(炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基であり、例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−t−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基など)、アシルオキシ基(ホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、もしくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基であり、例えばアセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基など)、ニトロ基、アシルアミノ基(ホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、もしくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基であり、例えばアセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基など)、スルホンアミド基(炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、もしくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ基であり、例えばメチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基など)、スルファモイル基(炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイル基であり、例えばN−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル基など)などである。
mは0〜5の範囲の整数を表し、lは0〜4の範囲の整数を表す。mおよびlがそれぞれ2以上の整数である場合、複数のA1およびA2はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。本発明においてmは0〜3の範囲の整数であることが好ましく、lは0〜2の範囲の整数であることが好ましい。
以下に、一般式(1)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。また、立体異性体が複数存在し得る化合物については、その立体構造を限定するものではない。
Figure 2008275674
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一般式(1)で表される化合物は、公知の種々の方法により合成することができ、個々の化合物によってその合成法として最適なものを選択すればよい。例えば、Journal of the American Chemical Society 2005年, 127巻, 7698ページに記載された方法を参考にして合成することができる。
本発明の光記録用組成物は、少なくとも一般式(1)で表される化合物を含有する。本発明の光記録用組成物における一般式(1)で表される化合物の含有量は、例えば1〜50質量%であり、1〜30質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることが更に好ましい。
一般式(1)で表される化合物は、カルボン酸基が解離しない低pH雰囲気(例えばpH3以下)においては光に対して非常に安定であるが、カルボン酸基が解離する高pH雰囲気(例えばpH7以上)では光照射により脱炭酸反応が進行すると共に脱離基Yの脱離反応が進行することで、下記一般式(2)で表される化合物が生成する。
Figure 2008275674
一般式(2)において、Z、R1、R2、A1、A2、m、lは、それぞれ一般式(1)における定義と同義である。なお、一般式(2)で表される化合物にはZおよびR2の立体配置について幾何異性体が存在するが、一般式(2)においてはどちらかの幾何異性体に限定するものではない。即ち、本発明の光記録組成物を用いて形成された記録層に対して、ホログラム露光を行うと、干渉縞明部において、一般式(1)で表される化合物が一般式(2)で表される化合物に変換されることで干渉縞記録が行われる。更に、例えば酸発生剤の反応などにより記録媒体中で酸を発生させるような定着操作を行うことで、記録媒体中に残存する一般式(1)で表される化合物のカルボン酸基が非解離状態となり、光に対して安定となるため、再生用に照射される光に対する耐久性を向上することができる。
本発明の光記録用組成物は、該組成物から形成される記録層の再生用に照射される光に対する耐久性を高めるために、酸発生剤を含むことが好ましい。本発明において、「酸発生剤」とは、光反応や熱反応などの化学反応により酸を発生することができる化合物を意味する。酸発生剤としては、ジアリールヨードニウム塩、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩、金属アレーン錯体、トリハロメチル置換トリアジン、スルホン酸エステルまたはイミドスルホネートなどが好ましく、ジアリールヨードニウム塩またはスルホニウム塩がより好ましい。なお、これらの酸発生剤は必要に応じて任意の比率で2種以上の混合物として用いてもよい。
酸発生剤は、加熱によって酸を発生するタイプのものであってもよく、光照射により酸を発生するタイプ(光酸発生剤)のものでもよい。加熱により酸を発生させる場合、加熱温度は、好ましくは40℃〜160℃、より好ましくは60℃〜130℃の範囲である。光により酸を発生させる場合、照射する光としては、紫外光または可視光のいずれでもよく、使用する酸発生剤の種類に応じて選択すればよい。用いる光源として好ましくは、可視光レーザー、紫外光レーザー、カーボンアーク、高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、蛍光ランプ、タングステンランプ、LED、有機ELなどが挙げられる。
また、酸発生剤は、光照射により直接励起するものでもよく、増感色素を併用し、増感色素に光照射して光励起状態とし、この光励起状態の増感色素からの電子移動またはエネルギー移動により酸を発生するものでもよい。増感色素の好ましい具体例としては、特開2005−99751号公報などに記載されている例が挙げられる。
本発明の光記録用組成物に使用する酸発生剤の好ましい例としては、具体的には、例えば特開2005−99753号公報に記載されている例が挙げられる。以下に、本発明の光記録用組成物において使用する酸発生剤として好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
Figure 2008275674
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上記酸発生剤は、いずれも市販品として入手可能であるか、または公知の方法により合成することができる。光記録用組成物中の酸発生剤の含有量は、例えば、0.1〜30質量%とすることができ、0.5〜20質量%とすることが好ましい。
また、本発明の光記録用組成物は、酸発生剤に加えて酸増殖剤を含んでもよい。酸増殖剤とは、酸の存在しない状態では安定であるのに対し、酸存在下では分解して酸を放出し、その酸でまた別の酸増殖剤を分解させてまた酸を放出する、というように酸発生剤により発生した少量の酸をトリガーとして酸を増殖する化合物である。酸増殖剤の好ましい具体例としては、例えば特開2005−17730号公報に記載されている例が挙げられる。
マトリックス、マトリックス形成成分
ホログラフィック記録媒体の記録層には、一般にマトリックスと呼ばれる記録や保存に関わるモノマーや光重合開始剤を保持するためのポリマーが含まれる。マトリックスは、塗膜性、膜強度、およびホログラム記録特性向上の効果を高める目的で使用されるものである。本発明の光記録用組成物は、マトリックスまたはマトリックス形成成分(具体的には硬化性化合物)を含むことができる。
マトリックスとして使用されるポリマーは低屈折率でも高屈折率でもよく、好ましい低屈折率ポリマーの具体例としては、アクリレートおよびアルファ−アルキルアクリレートエステルおよび酸性重合体およびインターポリマー(例えばポリメタクリル酸メチルおよびポリメタクリル酸エチル、メチルメタクリレートと他の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体)、ポリビニルエステル(例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸/アクリル酸ビニル、ポリ酢酸/メタクリル酸ビニルおよび加水分解型ポリ酢酸ビニル)、エチレン/酢酸ビニル共重合体、飽和および不飽和ポリウレタン、ブタジエンおよびイソプレン重合体および共重合体およびほぼ4,000〜1,000,000の質量平均分子量を有するポリグリコールの高分子量ポリ酸化エチレン、エポキシ化物(例えば、アクリレートまたはメタクリレート基を有するエポキシ化物)、ポリアミド(例えば、N−メトキシメチルポリヘキサメチレンアジパミド)、セルロースエステル(例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートサクシネートおよびセルロースアセテートブチレート)、セルロースエーテル(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルベンジルセルロース)、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール(例えば、ポリビニルブチラールおよびポリビニルホルマール)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。また、フッ素原子含有高分子も低屈折率ポリマーとして好ましい。好ましいものとしては、フルオロオレフィンを必須成分とし、アルキルビニルエーテル、アリサイクリックビニルエーテル、ヒドロキシビニルエーテル、オレフィン、ハロオレフィン、不飽和カルボン酸およびそのエステル、およびカルボン酸ビニルエステルから選ばれる1種もしくは2種以上の不飽和単量体を共重合成分とする有機溶媒に可溶性の重合体である。好ましくは、その質量平均分子量が5,000から200,000で、またフッ素原子含有量が5ないし70質量%であることが望ましい。前記したフッ素原子含有高分子の具体例として、例えば水酸基を有する有機溶媒可溶性の「ルミフロン」シリーズ(例えばルミフロンLF200、質量平均分子量:約50,000、旭硝子社製)が挙げられる。この他にも、ダイキン工業(株)、セントラル硝子(株)、ペンウオルト社などからも有機溶媒可溶性のフッ素原子含有高分子が上市されており、これらも使用することができる。またポリ(ジメチルシロキサン)などのケイ素化合物や芳香族を含まないシリコンオイル等も好ましい例として挙げられる。また他に、芳香族を含まないエポキシオリゴマー化合物も低屈折率反応性ポリマーとして使用することができる。
好ましい高屈折率ポリマーの例としては少なくとも1個以上のアリール基、芳香族ヘテロ環基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、硫黄原子を含むポリマーであることが好ましく、アリール基を含むポリマーであることがより好ましい。好ましい高屈折率ポリマーの具体例としては、ポリスチレン重合体、並びに例えばアクリロニトリル、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸およびそのエステルとの共重合体、塩化ビニリデン共重合体(例えば、塩化ビニリデン/アクリロニトリル共重合体、ビニリデンクロリド/メタクリレート共重合体、塩化ビニリデン/酢酸ビニル共重合体)、ポリ塩化ビニルおよび共重合体(例えば、ポリビニルクロリド/アセテート、塩化ビニル/アクリロニトリル共重合体)、ポリビニルベンザル合成ゴム(例えば、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体、メタクリレート/アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体、2−クロロブタジエン−1,3重合体、塩素化ゴム、スチレン/ブタジエン/スチレン、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体)、コポリエステル(例えば、式HO(CH2)nOH(式中nは、2〜10の整数である)のポリメチレングリコール、並びに(1)ヘキサヒドロテレフタル酸、セバシン酸およびテレフタル酸、(2)テレフタル酸、イソフタル酸およびセバシン酸、(3)テレフタル酸およびセバシン酸、(4)テレフタル酸およびイソフタル酸の反応生成物から製造されたもの、並びに(5)該グリコールおよび(i)テレフタル酸、イソフタル酸およびセバシン酸および(ii)テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸およびアジピン酸から製造されたコポリエステルの混合物)、ポリN−ビニルカルバゾールおよびその共重合体、炭酸エステルとビスフェノールから成るポリカーボネートなどが挙げられる。またポリ(メチルフェニルシロキサン)や、1,3,5−トリメチル−1,1,3,5,5−ペンタフェニルトリシロキサンなどのケイ素化合物、芳香族を多く含むシリコンオイル等も好ましい例として挙げられる。また他に、芳香族を多く含むエポキシオリゴマー化合物も高屈折率反応性ポリマーとして使用することができる。
本発明の光記録用組成物は、マトリックス形成成分として熱硬化性化合物を含むことが好ましい。熱硬化性化合物から形成されるマトリックスとしては、例えば、イソシアネート化合物とアルコール化合物から形成されるウレタン樹脂やオキシラン化合物から形成されるエポキシ化合物、メラミン化合物、フォルマリン化合物、(メタ)アクリル酸やイタコン酸等の不飽和酸のエステル化合物やアミド化合物を重合して得られる重合体などが挙げられる。それらは、熱により硬化してもよく、触媒などを使用して光硬化させてもよい。中でもイソシアネート化合物とアルコール化合物から形成されるポリウレタンマトリックスが好ましく、記録の保持性から考えて、多官能イソシアネートと多官能アルコールから形成される3次元ポリウレタンマトリックスが最も好ましい。
以下に、ポリウレタンマトリックスを形成することができる多官能イソシアネートおよび多官能アルコールについて具体例を述べる。
前記多官能イソシアネートとしては、具体的には、ビスシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、フェニレン−1,3−ジイソシアネート、フェニレン−1,4−ジイソシアネート、1−メトキシフェニレン−2,4−ジイソシアネート、1−メチルフェニレン−2,4−ジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、ビフェニレン−4,4'−ジイソシアネート、3,3'−ジメトキシビフェニレン−4,4'−ジイソシアネート、3,3'−ジメチルビフェニレン−4,4'−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4'−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、3,3'−ジメトキシジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、3,3'−ジメチルジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、シクロブチレン−1,3−ジイソシアネート、シクロペンチレン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート、1−メチルシクロヘキシレン−2,4−ジイソシアネート、1−メチルシクロヘキシレン−2,6−ジイソシアネート、1−イソシアネート−3,3,5−トリメチル−5−イソシアネートメチルシクロヘキサン、シクロヘキサン−1,3−ビス(メチルイソシアネート)、シクロヘキサン−1,4−ビス(メチルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4'−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、ドデカメチレン−1,12−ジイソシアネート、フェニル−1,3,5−トリイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4,4'−トリイソシアネート、ジフェニルメタン−2,5,4'−トリイソシアネート、トリフェニルメタン−2,4',4"−トリイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4',4"−トリイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4,2',4'−テトライソシアネート、ジフェニルメタン−2,5,2',5'−テトライソシアネート、シクロヘキサン−1,3,5−トリイソシアネート、シクロヘキサン−1,3,5−トリス(メチルイソシアネート)、3,5−ジメチルシクロヘキサン−1,3,5−トリス(メチルイソシアネート)、1,3,5−トリメチルシクロヘキサン−1,3,5−トリス(メチルイソシアネート)、ジシクロヘキシルメタン−2,4,2'−トリイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4,4'−トリイソシアネートリジンジイソシアネートメチルエステル、またはこれらの有機イソシアネート化合物の化学量論的過剰量と多官能性活性水素含有化合物との反応により得られる両末端イソシアネートプレポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、ビスシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートが特に好ましい。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記多官能アルコールとは、多官能アルコール単独であってもよく、他の多官能アルコールと混合状態であってもよい。多官能アルコールとしては、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等のグリコール類;ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、テトラメチレングリコール等のジオール類;ビスフェノール類、またはこれらの多官能アルコールをポリエチレンオキシ鎖やポリプロピレンオキシ鎖で修飾した化合物、グリセリン、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、ペンタントリオール、ヘキサントリオール、デカントリオール等のトリオール類などのこれらの多官能アルコールをポリエチレンオキシ鎖やポリプロピレンオキシ鎖で修飾した化合物などが挙げられる。
本発明の光記録用組成物中の前記マトリックス(またはマトリックス形成成分)の含有量は、10〜95質量%が好ましく、35〜90質量%がより好ましい。前記含有量が10質量%以上であれば、安定な干渉像を得ることができ、95質量%以下であれば、回折効率の点で望ましい性能を得ることができる。
本発明の光記録用組成物には、保存時の保存性を向上させるために熱安定剤を添加することができる。熱安定剤としては、はハイドロキノン、フェニドン、p−メトキシフェノール、アルキルおよびアリール置換されたハイドロキノンとキノン、カテコール、t−ブチルカテコール、ピロガロール、2−ナフトール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、フェノチアジン、およびクロルアニールなどが好ましい。
本発明の光記録用組成物には、形成される記録層の接着性、柔軟性、硬さ、およびその他の機械的諸特性を調整するために可塑剤を添加してもよい。可塑剤としては例えば、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、ジエチルセバケート、ジブチルスベレート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリクレジルホスフェート、ジブチルフタレート、アルコール類、フェノール類等が挙げられる。
本発明の光記録用組成物は、上記各成分を混合して調製することができる。また、塗布時の粘度調整等のために、必要に応じて溶媒を添加してもよい。溶媒として好ましくは、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールジアセテート、乳酸エチル、セロソルブアセテートなどのエステル系溶媒、シクロヘキサン、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジメチルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール系溶媒、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールなどのフッ素系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、N、N−ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル系溶媒が挙げられる。
本発明の光記録用組成物は、ホログラム記録前後で収縮等を起こさず信号再生時のS/N比を向上させるために、膨張剤を添加してもよく、耐収縮性を有するバインダーを使用してもよい。膨張剤としては、たとえば特開2000−86914号公報に記載の膨張剤を用いることができる。また、耐収縮性を有するバインダーとしては、特開2000−250382号公報、特開2000−172154号公報、特開平11−344917号公報記載のものを挙げることができる。また、特開平3−46687号公報、特開平5−204288号公報、特表平9−506441号公報等記載の拡散要素を用いて干渉縞間隔を調節することも好ましい。
本発明の光記録用組成物は、情報を含んだ光の照射によって該情報の記録を行える各種のホログラフィック記録用組成物に利用可能であって、特に、ボリュームホログラフィック記録用組成物として好適である。
[ホログラフィック記録媒体]
更に本発明は、本発明の光記録用組成物から形成された記録層を有するホログラフィック記録媒体に関する。
前記記録層は、通常の製膜方法によって形成することができる。例えば、前記のマトリックスや各成分を溶媒等に溶かしてスピンコーターまたはバーコーター等を用いて塗布してもよい。本発明の光記録用組成物を、スピンコーター、ロールコーターまたはバーコーターなどを用いることによって基板上に直接塗してもよく、またはフィルムとしてキャストし、次いで通常の方法により基板にラミネートすることもできる。
ここで、「基板」とは、任意の天然または合成支持体、好適には柔軟性または剛性フィルム、シートまたは板の形態で存在することができるものを意味する。
基板として好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、樹脂下塗り型ポリエチレンテレフタレート、火炎または静電気放電処理されたポリエチレンテレフタレート、セルロースアセテート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ガラス等である。溶媒を使用した場合、溶媒は、記録層塗布後の乾燥時に蒸発除去することができる。蒸発除去には加熱や減圧を用いてもよい。
また、マトリックスを含む光記録用組成物を、マトリックスのガラス転移温度または融点以上の温度にしてメルトさせ溶融押し出しまたは射出成型して製膜し、記録層を形成してもよい。その際、マトリックスとして反応性架橋マトリックスを使用し、押し出しまたは成型後に架橋させて膜を硬化させ、膜強度を増してもよい。その場合、架橋反応にはラジカル重合反応、カチオン重合反応、縮合重合反応、付加重合反応等が使用できる。また、特開2000−250382号公報、特開2000−172154号公報等記載の方法も好ましく使用することができる。
また、マトリックス形成成分を含む光記録用組成物を基板上等に塗布した後、加熱または光照射することにより、マトリックス形成成分を熱重合または光重合させてポリマーとし、マトリックスとして使用する方法も好ましく使用できる。その際の重合法としても、ラジカル重合反応、カチオン重合反応、縮合重合反応、付加重合反応等が使用できる。
さらに、記録層の上に酸素遮断のための保護層を形成してもよい。保護層は、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレートまたはセロファンフィルムなどのプラスチック製のフィルムまたは板を静電的な密着、押し出し機を使った積層等により貼合わせるか、前記ポリマーの溶液を塗布してもよい。また、ガラス板を貼合わせてもよい。また、保護層と記録層の間および/または、基板と記録層の間に、気密性を高めるために粘着剤または液状物質を存在させてもよい。
なお、本発明の光記録用組成物から形成された記録層への情報記録は、乾式で行うことができる。湿式処理を行わずに記録ができることは、迅速性の点で好ましい。
本発明のホログラフィック記録媒体は、書き換えできない方式の記録媒体として好適である。なおここで、書き換えできない方式とは、不可逆反応により記録される方式であり、一度記録されたデータは、さらに上書き記録して書き換えしようとしても書き換えされることなく保存できる方式を示す。したがって重要でかつ長期保存が必要なデータの保存に適する。ただし無論、まだ記録されていない領域に新たに追記して記録していくことは可能である。そのような意味で、上記方式は、一般に「追記型」または「ライトワンス型」と呼ばれる。
本発明のホログラフィック記録媒体へ情報を記録するために使用される光(情報光および参照光)は、好ましくは波長200〜2000nmの紫外光、可視光、赤外光のいずれかであり、より好ましくは波長300〜700nmの紫外光または可視光であり、さらに好ましくは400〜700nmの可視光である。
さらに、情報記録のために使用される光としては、コヒーレントな(位相および波長のそろった)レーザー光が好ましい。用いられるレーザーとしては、固体レーザー、半導体レーザー、気体レーザー、液体レーザーのいずれでもよいが、好ましいレーザー光としては、例えば、532nmのYAGレーザー2倍波、355nmのYAGレーザー3倍波、400〜415nm付近のGaNやInGaN等の半導体レーザー、650〜660nm付近のAlGaInP等の半導体レーザー、488または515nmのArイオンレーザー、632または633nmのHe−Neレーザー、647nmのKrイオンレーザー、694nmのルビーレーザーや636、634、538、534、442nmのHe−Cdレーザーなどが挙げられる。
また、ナノ秒やピコ秒オーダーのパルスレーザーを用いることも好ましい。
中でも、532nmのYAGレーザー2倍波または400〜415nm付近のGaNやInGaNレーザー、650〜660nm付近のAlGaInP等の半導体レーザーを用いることが好ましい。
ホログラム露光(記録)に用いる光の波長に対し、ホログラム再生に用いる光の波長は同じであるか、長波長であることが好ましく、同じであることがより好ましい。
なお、干渉縞記録の際の屈折率変調量は0.00001〜0.5であることが好ましく、0.0001〜0.3であることがより好ましい。また、記録層の膜厚が厚い程、屈折率変調量は少ない方が好ましく、記録層の膜厚が薄い程、屈折率変調量は多い方が好ましい。
記録層の(相対)回折効率ηは以下の式で与えられる。
η=Idiff/Io (式1)
ここでIoは回折されない透過光の強度であり、Idiffは回折(透過型)または反射(反射型)された光強度である。回折効率は0〜100%のいずれかの値を取るが、30%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることが最も好ましい。
記録層の感度は、一般に単位面積当たりの露光量(mJ/cm2)で表され、この値が小さい程感度が高いと言える。しかし、どの時点の露光量をもって感度とするかは、文献、特許によってまちまちであり、記録(屈折率変調)のはじまる露光量とする場合、最大回折効率(屈折率変調)を与える露光量とする場合、最大回折効率の半分の回折効率を与える露光量とする場合、露光量Eに対し、回折効率の傾きが最大となる露光量とする場合などある。
また、クーゲルニックの理論式より、ある回折効率を与えるための屈折率変調量Δnは膜厚dに反比例する。つまり、ある回折効率を与えるための感度は膜厚によっても異なり、膜厚dが厚くなる程少ない屈折率変調量Δnで済む。したがって、膜厚等の条件を揃えない限り、感度は一概には比較することはできない。
本発明においては、感度は「最大回折効率の半分の回折効率を与える露光量(mJ/cm2)」と定義する。本発明のホログラフィック記録媒体の感度は、例えば記録層の膜厚が10〜200μm程度の場合、2J/cm2以下であることが好ましく、1J/cm2以下であることがより好ましく、500mJ/cm2以下であることがさらに好ましく、200mJ/cm2以下であることが最も好ましい。
本発明のホログラフィック記録媒体には、DMDやLCDといった空間光変調素子(SLM)を用いて2次元デジタル情報(信号光と呼ぶ)を数多く記録していくことが好ましい。記録には記録密度を上げるために多重記録を用いることが好ましく、多重記録の方法には、角度多重、位相多重、波長多重、シフト多重などの多重記録を行う方法があるが、角度多重記録またはシフト多重記録を用いることが好ましい。また、再生される2次元データの読み出しにはCCDやCMOSが好ましく用いられる。
本発明のホログラフィック記録媒体に対し多重記録を行うことにより、記録容量(記録密度)を向上させることができる。その際、10回以上の多重記録を行うことがより好ましく、50回以上の多重記録を行うことがさらに好ましく、100回以上の多重記録を行うことが最も好ましい。さらに、多重記録の際の露光量がいずれの多重記録の際も終始一定のまま多重記録できることが記録システム簡略化、S/N比向上等の点でより好ましい。
なお、本発明のホログラフィック記録媒体は、保存時は遮光カートリッジ内に保存されていることが好ましい。また、記録光および再生光波長以外の紫外光、可視光、赤外光の波長域の一部をカットすることができる遮光フィルターを媒体の表面、裏面またはその両面に備え付けていることも好ましい。
本発明のホログラフィック記録媒体の形状は、特に限定されず、ディスク状、カード状、テープ状等のいずれの形状であってもよい。
本発明のホログラフィック記録媒体は、特開2004−265472号公報記載の媒体構成としてもよい。その際は特開2004−335044号公報記載のシステムを用いて記録再生を行うことが好ましい。また、特開2004−177958号公報、特開2004−272268号公報等記載のシステムを用いて記録再生を行うことも好ましい。
本発明のホログラフィック記録媒体は、前記記録層(ホログラフィック記録層)を有し、好ましくは、下側基板と、フィルタ層と、ホログラフィック記録層と、上側基板とを有し、必要に応じて、反射膜、フィルタ層、第1ギャップ層、第2ギャップ層等のその他の層を有することができる。
以下に、本発明のホログラフィック記録媒体に含まれ得る基板および各層の詳細を順次説明する。
−基板−
基板は、その形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。その形状としては、例えば、ディスク形状、カード形状などが挙げられ、ホログラフィック記録媒体の機械的強度を確保できる材料のものを選定すべきである。また、記録および再生に用いる光が基板を通して入射する場合は、用いる光の波長領域で十分に透明であることが好ましい。基板材料の詳細は、先に説明した通りである。
基板には、通常、半径方向に線状に延びる複数の位置決め領域としてのアドレス−サーボエリアが所定の角度間隔で設けられ、隣り合うアドレス−サーボエリア間の扇形の区間がデータエリアになっている。アドレス−サーボエリアには、サンプルドサーボ方式によってフォーカスサーボおよびトラッキングサーボを行うための情報とアドレス情報とが、予めエンボスピット(サーボピット)等によって記録されている(プリフォーマット)。なお、フォーカスサーボは、反射膜の反射面を用いて行うことができる。トラッキングサーボを行うための情報としては、例えば、ウォブルピットを用いることができる。なお、ホログラフィック記録媒体がカード形状の場合には、サーボピットパターンは無くても構わない。
基板の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1〜5mmが好ましく、0.3〜2mmがより好ましい。基板の厚みが、0.1mm以上であれば、ディスク保存時の形状の歪みを抑えることができ、5mm以下であれば、ディスク全体の質量が大きくなってドライブモーターに過剰な負荷がかかることを回避することができる。
−記録層−
記録層は、本発明の光記録用組成物から形成され、ホログラフィを利用して情報が記録され得るものである。記録層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。記録層の厚みが1〜1,000μmの範囲であれば、10〜300多重のシフト多重を行っても十分なS/N比を得ることができ、100〜700μmの範囲であればそれが顕著である点で有利である。
−反射膜−
反射膜は、基板のサーボピットパターン表面に形成することができる。
反射膜の材料としては、情報光や参照光に対して高い反射率を有する材料を用いることが好ましい。情報光および参照光として使用する光の波長が400〜780nmである場合には、例えば、Al、Al合金、Ag、Ag合金、などを使用することが好ましい。情報光および参照光として使用する光の波長が650nm以上である場合には、Al、Al合金、Ag、Ag合金、Au、Cu合金、TiN、などを使用することが好ましい。
なお、反射膜として、光を反射すると共に、追記および消去のいずれかが可能な光記録媒体、例えば、DVD(ディジタル ビデオ ディスク)などを用いることにより、ホログラムをどのエリアまで記録したか、いつ書き換えたか、どの部分にエラーが存在し交替処理をどのように行ったか、などのディレクトリ情報などをホログラムに影響を与えずに追記および書き換えすることも可能となる。
反射膜の形成方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、各種気相成長法、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法、光CVD法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法などが用いられる。これらの中でも、スパッタリング法が、量産性、膜質等の点で優れている。
反射膜の厚みは、十分な反射率を実現し得るように、50nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましい。
−フィルタ層−
フィルタ層は、基板のサーボピット上、反射層上または後述する第一ギャップ層上に設けることができる。
フィルタ層は、複数種の光線の中から特定の波長の光のみを反射する、波長選択反射機能を有し、第一の光を透過し、第二の光を反射する。特に、入射角が変化しても選択反射波長にずれが生じることなく、情報光および参照光による記録媒体の反射膜からの乱反射を防止し、ノイズの発生を防止する機能もあり、記録媒体にフィルタ層を積層することにより、高解像度、回折効率の優れた光記録を行うことができる。
フィルタ層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ダイクロイックミラー層、色材含有層、誘電体蒸着層、単層または2層以上のコレステリック層および必要に応じて適宜選択したその他の層の少なくともいずれかを積層した積層体により形成することができる。その厚さは、特に限定されないが、例えば0.5〜20μm程度である。
フィルタ層は、記録層などと共に、直接基板上に塗布などにより積層してもよく、フィルム等の基材上に積層してフィルタ層を作製し、これを基板上に積層してもよい。
−第1ギャップ層−
第1ギャップ層は、必要に応じてフィルタ層と反射膜との間に設けられ、下側基板表面を平滑化する目的で形成される。また、記録層内に生成されるホログラムの大きさを調整するためにも有効である。即ち、記録層は、記録用参照光および情報光の干渉領域をある程度の大きさに形成する必要があるので、記録層とサーボピットパターンとの間にギャップを設けることが有効となる。
第1ギャップ層は、例えば、サーボピットパターンの上から紫外線硬化樹脂等の材料をスピンコート等で塗布し、硬化させることにより形成することができる。また、フィルタ層として透明基材の上に塗布形成したものを使用する場合には、該透明基材が第1ギャップ層としても働くことになる。
第1ギャップ層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1〜200μmが好ましい。
−第2ギャップ層−
第2ギャップ層は、必要に応じて記録層とフィルタ層との間に設けられる。
第2ギャップ層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリスルホン(PSF)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリメタクリル酸メチル=ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のような透明樹脂フィルム、または、JSR社製商品名ARTONフィルムや日本ゼオン社製商品名ゼオノアのような、ノルボルネン系樹脂フィルム、などが挙げられる。これらの中でも、等方性の高いものが好ましく、TAC、PC、商品名ARTON、および商品名ゼオノアが特に好ましい。
第2ギャップ層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1〜200μmが好ましい。
以下に、本発明のホログラフィック記録媒体について、具体的態様に基づき更に詳しく説明する。ただし、本発明は下記具体的態様に限定されるものではない。
<第一の実施形態>
図1は、第一の実施形態にかかるホログラフィック記録媒体の構成を示す概略断面図である。第一の実施形態にかかるホログラフィック記録媒体21では、ポリカーボネート樹脂製基板またはガラス基板1にサーボピットパターン3が形成され、該サーボピットパターン3上にアルミニウム、金、白金等でコーティングして反射膜2が設けられている。なお、図1では下側基板1全面にサーボピットパターン3が形成されているが、サーボピットパターンは周期的に形成されていてもよい。また、このサーボピットパターン3の高さは、通常1750Å(175nm)であり、基板を始め他の層の厚みに比べて充分に小さいものである。
第1ギャップ層8は、紫外線硬化樹脂等の材料を下側基板1の反射膜2上にスピンコート等により塗布して形成される。第1ギャップ層8は、反射膜2を保護すると共に、記録層4内に生成されるホログラムの大きさを調整するためにも有効である。つまり、記録層4とサーボピットパターン3との間にギャップを設けることは、記録層4において記録用参照光と情報光の干渉領域をある程度の大きさに形成するために有効である。
第1ギャップ層8上にはフィルタ層6が設けられ、該フィルタ層6と上側基板5(ポリカーボネート樹脂基板やガラス基板)によって記録層4を挟むことによってホログラフィック記録媒体21が構成される。
図1において、フィルタ層6は、赤色光のみを透過し、それ以外の色の光を通さないものである。従って、情報光、記録および再生用参照光は緑色または青色の光であるので、フィルタ層6を透過せず、反射膜2まで達することなく、戻り光となり、入出射面Aから出射することになる。
このフィルタ層6は、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した多層蒸着膜である。
この多層蒸着膜からなるフィルタ層6は、第1ギャップ層8上に真空蒸着により直接形成してもよいし、基材上に多層蒸着膜を形成したフィルムをホログラフィック記録媒体形状に打ち抜いて配置してもよい。
本実施形態におけるホログラフィック記録媒体21は、ディスク形状でもいいし、カード形状であってもよい。カード形状の場合にはサーボピットパターンは無くてもよい。また、このホログラフィック記録媒体21では、下側基板1は0.6mm、第1ギャップ層8は100μm、フィルタ層6は2〜3μm、記録層4は0.6mm、上側基板5は0.6mmの厚みであって、合計厚みは約1.9mmとなっている。
次に、図3を参照して、ホログラフィック記録媒体21への情報の記録および再生に使用可能な光学系について説明する。
まず、サーボ用レーザーから出射した光(赤色光)は、ダイクロイックミラー13でほぼ100%反射して、対物レンズ12を通過する。対物レンズ12によってサーボ用光は反射膜2上で焦点を結ぶようにホログラフィック記録媒体21に対して照射される。つまり、ダイクロイックミラー13は緑色や青色の波長の光を透過し、赤色の波長の光をほぼ100%反射させるようになっている。ホログラフィック記録媒体21の光の入出射面Aから入射したサーボ用光は、上側基板5、記録層4、フィルタ層6、および第1ギャップ層8を通過し、反射膜2で反射され、再度、第1ギャップ層8、フィルタ層6、記録層4、および上側基板5を透過して入出射面Aから出射する。出射した戻り光は、対物レンズ12を通過し、ダイクロイックミラー13でほぼ100%反射して、サーボ情報検出器(不図示)でサーボ情報が検出される。検出されたサーボ情報は、フォーカスサーボ、トラッキングサーボ、スライドサーボ等に用いられる。記録層4を構成するホログラム材料が、赤色の光では感光しないものであれば、サーボ用光が記録層4を通過したり、サーボ用光が反射膜2で乱反射したとしても、記録層4には影響を与えない。また、サーボ用光の反射膜2による戻り光は、ダイクロイックミラー13によってほぼ100%反射するようになっているので、サーボ用光が再生像検出のためのCMOSセンサまたはCCD14で検出されることはなく、再生光に対してノイズとなることもない。
また、記録用/再生用レーザーから生成された情報光および記録用参照光は、偏光板16を通過して線偏光となり、ハーフミラー17を通過して1/4波長板15を通った時点で円偏光になる。ダイクロイックミラー13を透過し、対物レンズ12によって情報光と記録用参照光が記録層4内で干渉パターンを生成するようにホログラフィック記録媒体21に照射される。情報光および記録用参照光は入出射面Aから入射し、記録層4で干渉し合って干渉パターンをそこに生成する。その後、情報光および記録用参照光は、記録層4を通過し、フィルタ層6に入射するが、該フィルタ層6の底面までの間に反射されて戻り光となる。つまり、情報光と記録用参照光は反射膜2までは到達しない。フィルタ層6は高屈折率層と低屈折率層とを交互に複数積層した多層蒸着層であり、赤色光のみを透過する性質を有するからである。
<第二の実施形態>
図2は、第二の実施形態にかかるホログラフィック記録媒体の構成を示す概略断面図である。この第二の実施形態に係るホログラフィック記録媒体22では、ポリカーボネート樹脂またはガラス基板1にサーボピットパターン3が形成され、該サーボピットパターン3表面にアルミニウム、金、白金等でコーティングして反射膜2が設けられている。また、このサーボピットパターン3の高さは、通常1750Å(175nm)である点については、第一の実施形態と同様である。
第二の実施形態と第一の実施形態の構造の差異は、第二の実施形態にかかるホログラフィック記録媒体22では、フィルタ層6と記録層4との間に第2ギャップ層7が設けられていることである。この第2ギャップ層7には、情報光および再生光がフォーカシングするポイントが存在する。
高屈折率層と低屈折率層とを交互に複数積層した多層蒸着膜であるフィルタ層6は、第1ギャップ層8を形成した後、該第1ギャップ層8上に形成され、前記第一実施形態と同様のものを用いることができる。
また、第二実施形態のホログラフィック記録媒体22では、下側基板1は1.0mm、第1ギャップ層8は100μm、フィルタ層6は3〜5μm、第2ギャップ層7は70μm、記録層4は0.6mm、上側基板5は0.4mmの厚みであって、合計厚みは約2.2mmとなっている。
次に、情報の記録または再生を行う場合、上記のような構造を有する第二実施形態のホログラフィック記録媒体22に対して、赤色のサーボ用光および緑色の情報光並びに記録および再生用参照光が照射される。サーボ用光は、入出射面Aから入射し、記録層4、第2ギャップ層7、フィルタ層6、および第1ギャップ層8を通過して反射膜2で反射して戻り光となる。この戻り光は、再度、第1ギャップ層8、フィルタ層6、第2ギャップ層7、記録層4および上側基板5をこの順序で通過して、入出射面Aより出射する。出射した戻り光は、フォーカスサーボやトラッキングサーボ等に用いられる。記録層4を構成するホログラム材料が、赤色の光では感光しないものであれば、サーボ用光が記録層4を通過したり、サーボ用光が反射膜2で乱反射したとしても、記録層4には影響を与えない。緑色の情報光等は、入出射面Aから入射し、記録層4、第2ギャップ層7を通過して、フィルタ層6で反射して戻り光となる。この戻り光は、再度、第2ギャップ層7、記録層4および上側基板5をこの順序で通過して、入出射面Aより出射する。また、再生時についても再生用参照光はもちろん、再生用参照光を記録層4に照射することによって発生する再生光も反射膜2に到達せずに入出射面Aから出射する。なお、ホログラフィック記録媒体22周辺(図3における対物レンズ12、フィルタ層6、検出器としてのCMOSセンサまたはCCD14)での光学的動作は、第一の実施形態と同様なので説明を省略する。
[情報記録方法]
更に本発明は、本発明のホログラフィック記録媒体への情報記録方法に関する。本発明の情報記録方法は、少なくとも、ホログラフィック記録媒体へ情報光および参照光を照射することにより、ホログラフィック記録媒体が有する記録層に干渉像を形成すること(以下、「干渉像形成工程」ともいう)を含む。更に、干渉像が形成された記録層に対して定着操作を施すこと(以下、「定着工程」ともいう)を含むことができる。特に、干渉像形成のために照射する光と同じ波長の光を用いて再生を行う場合は、定着工程を行うことが好ましい。これは、情報再生のための光照射により、一般式(1)で表される化合物の反応が更に進行することを防ぐためである。
干渉像形成工程の詳細は、先に説明した通りである。干渉像形成工程後の定着工程は、干渉像を形成した媒体を加熱するか(熱定着)、媒体に対して光を照射する(光定着)ことにより行うことができる。または熱定着と光定着の両方を行ってもよい。光定着は、媒体全域に紫外光または可視光を全面照射(非干渉露光)することにより行うことができる。熱定着と光定着を両方行う場合は、光と熱を同時に加えてもよく、別々に加えてもよい。この定着操作は、干渉像を定着させる作用があり、更に記録層に酸発生剤が含まれる場合は、酸を発生させ、記録層中を、一般式(1)で表される化合物のカルボン酸基が解離しない低pH雰囲気(例えばpH3以下)に維持し、光に対する安定性を高める作用がある。ただし、干渉像形成工程で酸発生剤から酸が発生すると、記録層中が高pH雰囲気となり干渉像形成の妨げとなるおそれがある。そのため、光照射により酸を発生する酸発生剤を使用する場合や光照射により増感色素を励起させる場合、干渉像形成に使用される光とは異なる波長の光に反応する酸発生剤や増感色素を用いることが好ましく、干渉像形成に使用される光より短波長の光に反応する酸発生剤や増感色素を用いることが更に好ましい。具体的には、定着操作に使用される光の波長は、200〜400nm程度とすることが好ましい。また、熱定着を行う場合の加熱温度は酸発生剤が酸を発生する温度とすればよく使用する酸発生剤の種類に応じて設定することができる。加熱温度については、先に説明した通りである。熱定着のための加熱時間は、敵後設定すればよいが、例えば1〜120分程度とすることができる。光定着のための光照射時間も、適宜設定すればよいが、例えば1〜120分程度とすることができる。
上記方法により形成された干渉像に参照光を照射することにより、情報を再生することができる。書き込んだ情報を読み出す(再生する)際には、記録時と同様の配置で参照光のみを記録層に照射し、記録層内部に形成された光学特性分布に対応した強度分布を有する再生光が記録層から出射される。
次に、本発明のホログラフィック記録媒体への情報の記録および再生に好適に使用される光記録再生装置について、図4を参照して説明する。
図4に示す光記録再生装置100は、ホログラフィック記録媒体20が取り付けられるスピンドル81と、このスピンドル81を回転させるスピンドルモータ82と、ホログラフィック記録媒体20の回転数を所定の値に保つようにスピンドルモータ82を制御するスピンドルサーボ回路83とを備えている。
また、光記録再生装置100は、ホログラフィック記録媒体20に対して情報光と記録用参照光とを照射して情報を記録すると共に、ホログラフィック記録媒体20に対して再生用参照光を照射し、再生光を検出して、ホログラフィック記録媒体20に記録されている情報を再生するためのピックアップ31と、このピックアップ31をホログラフィック記録媒体20の半径方向に移動可能とする駆動装置84とを備えている。
光記録再生装置100は、ピックアップ31の出力信号よりフォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TE、および再生信号RFを検出するための検出回路85と、この検出回路85によって検出されるフォーカスエラー信号FEに基づいて、ピックアップ31内のアクチュエータを駆動して対物レンズ(不図示)をホログラフィック記録媒体20の厚み方向に移動させてフォーカスサーボを行うフォーカスサーボ回路86と、検出回路85によって検出されるトラッキングエラー信号TEに基づいてピックアップ31内のアクチュエータを駆動して対物レンズをホログラフィック記録媒体20の半径方向に移動させてトラッキングサーボを行うトラッキングサーボ回路87と、トラッキングエラー信号TEおよび後述するコントローラからの指令に基づいて駆動装置84を制御してピックアップ31をホログラフィック記録媒体20の半径方向に移動させるスライドサーボを行うスライドサーボ回路88とを備えている。
光記録再生装置100は、更に、ピックアップ31内のCMOSまたはCCDアレイの出力データをデコードして、ホログラフィック記録媒体20のデータエリアに記録されたデータを再生したり、検出回路85からの再生信号RFより基本クロックを再生したりアドレスを判別したりする信号処理回路89と、光記録再生装置100の全体を制御するコントローラ90と、このコントローラ90に対して種々の指示を与える操作部91とを備えている。コントローラ90は、信号処理回路89より出力される基本クロックやアドレス情報を入力すると共に、ピックアップ31、スピンドルサーボ回路83、およびスライドサーボ回路88等を制御するようになっている。スピンドルサーボ回路83は、信号処理回路89より出力される基本クロックを入力するようになっている。コントローラ90は、CPU(中央処理装置)、ROM(リード オンリ メモリ)、およびRAM(ランダム アクセス メモリ)を有し、CPUが、RAMを作業領域として、ROMに格納されたプログラムを実行することによって、コントローラ90の機能を実現することができる。
以下、実施例に基づき本発明について更に説明する。但し、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。
1.ホログラフィック記録用組成物の調製
赤色灯下にて、表1に示した一般式(1)で表される化合物、酸発生剤、マトリックスPMMA−EA(ポリ(メチルメタクリレート−5%エチルアクリレート)共重合体、質量平均分子量=101000)を2〜4倍質量の塩化メチレンに溶解し、ホログラム記録用組成物101、102を調液した。なお、%は全てPMMA−EAに対する質量%を表す。
Figure 2008275674
2.ホログラフィック記録媒体の作製
ホログラム記録用組成物101、102を、厚さが約80μmになるようにブレードを用いてガラス基板に塗布(必要なら重ね塗り)し、記録層を形成した後、40℃で2日間乾燥して溶媒を留去した。さらに記録層上をTAC膜で覆うことにより、ホログラム記録媒体101、102を作製した。
3.回折効率および収縮率の評価
ホログラム記録媒体101、102を、図5に示す透過型ホログラム記録用の2光束光学系により、光源としてYAGレーザー2倍波(532nm、出力2W)を用いて露光し記録した。物体光と参照光のなす角は30度とした。ビームは0.6cmの直径と8mW/cm2の強度とを有しており、ホログラフィー露光時間を0.1〜2000秒の範囲(照射エネルギーにして0.8〜16000mJ/cm2の範囲)変化させて露光した。ホログラムに露光している間、He−Neレーザー632nmのビームをブラック角にて露光領域の中心に通し、その透過光に対する回折光の比(相対回折効率)を実時間で測定した。なお632nmには記録素材の吸収がないため、He−Neレーザーは記録層を感光させない。
ホログラム記録媒体101、102における最大回折効率ηおよび収縮率の評価結果を表2に記す。最大回折効率ηは、透過光に対する回折光の比(相対回折効率)を実時間で測定した結果から求め、収縮率は反射型ホログラムを記録した際の最大回折波長の変化から求めた。
特開平6−43634号公報の実施例1に記載のラジカル重合フォトポリマー方式ホログラム記録用組成物を比較試料Aとして、特開2005−99751号公報の実施例1に記載のホログラム記録用組成物101を比較試料Bとして、同様の方法で媒体(比較媒体A、B)を作製し最大回折効率と収縮率を測定した。結果を表2に示す。
Figure 2008275674
表2から、比較媒体Aは、回折効率は高いもののラジカル重合を伴うフォトポリマー方式であるため5%を越える大きな収縮を伴い、特にホログラフィックメモリ用途としてはS/N比が極めて悪化し不向きであることがわかる。これに対し、ホログラム記録媒体101、102は、比較媒体Bと同様に物質移動と重合を用いないで屈折率変調によるホログラム記録を行うため、高い回折効率と0.1%以下の極めて小さい収縮率を両立できることが分かり、特にホログラフィックメモリ用途に適していることが分かる。
4.再生光に対する耐久性評価
前記ホログラム記録材料101、102および比較媒体A、Bに対してホログラム記録後に、350nm光を10分照射し、その後に532nmレーザー光を用いて回折効率測定を行った。結果を表3に示す。
Figure 2008275674
ホログラム記録媒体101、102は、比較媒体Aと共に、再生光として記録波長と同じ532nm光を用いた回折効率評価においても632nmレーザー光を用いた時とほぼ同じ回折効率が得られた。この結果から、ホログラム記録媒体101、102は、記録光と同じ波長の光を用いた再生において耐久性に優れることが分かる。これは干渉像形成後の350nm光の照射により、酸発生剤から酸が発生して記録層中が低pHとなり、記録材料(PD-12、PD-19)が安定化したためと考えられる。これに対し、比較媒体Bにおいては回折光が観測されない。これは、再生光として情報記録用の光と同じ波長の光を使用したため、情報再生用の光照射により記録材料の反応が進行したためと考えられる。
本発明のホログラフィック記録媒体は、高密度画像記録が可能なボリュームホログラム型の各種光記録媒体として好適である。
第一の実施形態にかかるホログラフィック記録媒体の一例を示す概略断面図である。 第二の実施形態にかかるホログラフィック記録媒体の一例を示す概略断面図である。 ホログラフィック記録媒体への情報の記録および再生に使用可能な光学系の一例を示す説明図である。 本発明のホログラフィック記録媒体への情報の記録および再生に好適に使用される記録再生装置の全体構成の一例を表すブロック図である。 ホログラム露光用の2光束光学系を説明する概略図である。
符号の説明
1 下側基板
2 反射膜
3 サーボピットパターン
4 記録層
5 上側基板
6 フィルタ層
7 第2ギャップ層
8 第1ギャップ層
12 対物レンズ
13 ダイクロイックミラー
14 検出器
15 1/4波長板
16 偏光板
17 ハーフミラー
20 ホログラフィック記録媒体
21 ホログラフィック記録媒体
22 ホログラフィック記録媒体
31 ピックアップ
81 スピンドル
82 スピンドルモータ
83 スピンドルサーボ回路
84 駆動装置
85 検出回路
86 フォーカスサーボ回路
87 トラッキングサーボ回路
88 スライドサーボ回路
89 信号処理回路
90 コントローラ
91 走査部
100 光記録再生装置
A 入出射面
FE フォーカスエラー信号
TE トラッキングエラー信号
RF 再生信号
110 YAGレーザー
112 レーザービーム
114 鏡
120 ビームスプリッター
122 ビームセグメント
124 鏡
126 空間フィルター
128 試料
130 ホログラム記録材料
132 He−Neレーザービーム
134 He−Neレーザー
136 検出器
138 回転ステージ
140 ビームエキスパンダー

Claims (9)

  1. 下記一般式(1)で表される化合物を含むことを特徴とする光記録用組成物。
    Figure 2008275674
    [一般式(1)中、Xn+はn価のカチオンを表し、nは1以上の整数を表し、Yは脱離基を表し、Zは置換基を表し、R1およびR2は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表し、A1およびA2は、それぞれ独立に置換基を表し、mは0〜5の範囲の整数を表し、lは0〜4の範囲の整数を表す。mが2以上の整数である場合、複数存在するA1はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、lが2以上の整数である場合、複数存在するA2はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。]
  2. 酸発生剤を更に含む請求項1に記載の光記録用組成物。
  3. マトリックスまたはマトリックス形成成分を更に含む請求項1または2に記載の光記録用組成物。
  4. ホログラフィック記録用組成物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の光記録用組成物。
  5. 請求項4に記載の光記録用組成物から形成された記録層を有するホログラフィック記録媒体。
  6. 少なくとも、請求項5に記載のホログラフィック記録媒体へ情報光および参照光を照射することにより、ホログラフィック記録媒体が有する記録層に干渉像を形成することを含む情報記録方法。
  7. 干渉像が形成された記録層に対して定着操作を施すことを更に含む請求項6に記載の情報記録方法。
  8. 定着操作は、加熱および/または光照射により行われる請求項7に記載の情報記録方法。
  9. 定着操作に用いられる光は、情報光および参照光より短波長の光である請求項8に記載の情報記録方法。
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