JP4132930B2 - 光記録媒体及び光記録/再生方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フォトクロミック化合物の2光子光反応を用いた光記録に供する光記録媒体に関する。詳しくは、フォトクロミック化合物を含む光メモリー層と、1光子フォトクロミック反応が誘起される波長域の光を実質的に遮蔽するカット層を設けたことを特徴とする光記録媒体、当該光記録媒体を含有する光記録基板、及びその記録/再生方法に関する。さらに、詳細には、該カット層は2光子フォトクロミック反応を誘起可能な波長域の光は透過することを特徴とする光記録媒体と2光子光反応を用いた光記録/再生方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フォトクロミック材料とは、光の作用により色の異なる2つの異性体を可逆的に生成する分子または分子集合体を含む材料を言う。このフォトクロミック材料は、光照射により、色のみならず屈折率、誘電率、酸化/還元電位など様々の物性が可逆に変化することから、光機能材料としての応用が期待されている.特に期待されているのは、光記録媒体への応用である。
【0003】
現在市場に出ている追記型・書き換え可能型の光ディスクは、いずれもヒートモード記録である。すなわち、レーザ光を細く絞り込み記録媒体中で熱に変換し、熱プロセスによる記録層の物性変化等により記録している。追記型では、記録薄膜の熱による溶融、昇華、分解に伴う穴形成・変形等により記録を行っている。光磁気記録では、磁化薄膜に磁場を与えながらレーザ光で加熱し、磁化反転させることにより記録を行い、読み出しは再生光の偏光面の回転を用いている。相変化記録は、非晶質と結晶の間、あるいは2つの結晶構造の間の相変化を、熱反応により誘起し、そのことによる光の反射率の違いを記録に用いている。
いずれも光エネルギーを熱エネルギーに変換して用いているため、光が本来備えている種々の特性(波長、偏光、位相など)を記録に十分活かすことができていない。また、従来は主に光の短波長化によって記録密度を向上させてきたが、この方法には限界がある。
このような光磁気記録材料や相変化記録材料などの光のエネルギーを熱に変換して記録を行うヒートモード記録に対して、フォトクロミツク分子材料は、光反応により可逆的に構造が変化し、吸収スペクトルその他の特性が変化する材料であり、このような光反応を直接利用する光メモリーは、「フォトンモード記録」と呼ばれている。フォトンモード記録は、
(1)波長、偏光や非線型光学特性などの光が有する、あるいは光が関わる種々の特性を直接利用するため記録の高密度化、大容量化ができる。
(2)光反応は分子−フォトンレベルでの反応であり、また熱拡散・物質移動を伴わないため、分子レベルの極めて高い解像度の記録ができる。
(3)光反応であるため、高感度で超高速(10−9sec以下)の記録が可能で ある。
などのヒートモード記録にない特徴があり、将来の光記録方式として注目されている。
【0004】
図1に代表的なフォトクロミック材料、およびその反応を示す。フォトクロミック反応は、光の作用により単一の化学種が分子量を変えることなく、化学結合の組み替えにより、吸収スペクトルの異なる2つの異性体を可逆的に変化する現象であり、これら2つの異性体は、分子構造が異なっていることから、吸収スペクトルのみならず、蛍光特性,屈折率,双極子モーメントなどの様々な分子物性が異なっている。例えば、チオインジゴのトランス体は、量子収率0.6と高い蛍光量子収率を持つが、そのシス体は無蛍光性である。アゾベンゼンのトランス体の双極子モーメントは、0.5Dであるのに対し、そのシス体は3.1Dと大きな極性を持つ。これらの分子物性の変化が単に照射波長を変えるだけで得られるところにフォトクロミック反応の特徴があり、これらの分子物性変化を活かせる方向にフォトクロミズムの応用分野がある。光記録はその1つである。
繰り返し耐久性のあるフォトクロミック分子として最初に報告されたのは、図1に示すスピロピランの類縁体であるナフトオキサジン系化合物である。この分子は、繰り返し耐久性には優れていたが、光生成した光着色体が熱的に不安定であり、暗所に放置していても元の異性体へ戻る性質を持つ。このことは、記録の不安定性を意味し、メモリ材料としては実用的なものではなかった。光着色体を安定化させるために、フォトクロミック分子を高分子媒体に分散させ、高分子の分子運動性を制御することにより反応を制御する方法などが数多く試みられてきたがいずれも十分に安定化させることに成功していない。
フォトクロミック分子における熱的安定性を根本的に解決してきたのが、図1に示されるフルギド誘導体やジアリールエテン誘導体であり、これらのフォトクロミック分子を用いたメモリー材料の開発が行われている。
【0005】
さらに、フォトクロミック材料を光記録媒体へ応用する際の最大の問題点は、光記録が室内光などの環境光で消滅することである。フォトクロミック反応は、可逆反応であり、太陽光や蛍光灯などの可視光線や紫外線などを吸収して逆反応による記録の消滅が発生することである。フォトクロミック反応により生成した着色異性体の光退色反応の量子収率が10−2程度であると、通常室内の蛍光灯で数時間後には、ほぼ退色してしまう。このことを防ぐ方法として2つの方法が考えられる。一つは、フォトクロミック反応を誘起する波長域の光を遮断することであり、もう一つは、光退色反応の量子収率が10−3以下の化合物を設計、合成することである。
しかしながら、フォトクロミック反応を誘起する波長域の光を遮断すると情報の記録ができなくなり、また量子収率が10−3以下の化合物を用いた場合には、書き込んだ情報記録を変更することが困難になる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、室内光などの環境光により光退色することのない光記録媒体を提供することにある。このような光記録媒体を用い、記録および消去に2光子反応を利用すればライトワンス型、又は書き換え可能型の光メモリーシステムの実現を可能とすることができる。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、フォトクロミック反応において2光子反応を利用することにより、環境光に影響される1光子フォトクロミック反応を抑制して光退色を防ぎ、なおかつ、2光子反応を妨げないカット層として、ロングパスフィルムフィルターを用いることが有効であることを見出した。
【0008】
即ち、本発明は、フォトクロミック化合物を含有してなる光メモリー層を有する光記録媒体において、1光子フォトクロミック反応が誘起される波長域の光を実質的に遮蔽するカット層を設けたことを特徴とする光記録媒体に関する。より詳細には、本発明は、フォトクロミック化合物を含有してなる光メモリー層を有する光記録媒体において、1光子フォトクロミック反応が誘起される波長域の光を実質的に遮蔽することができ、かつフォトクロミック化合物の2光子フォトクロミック反応を誘起することができる波長の光を透過することができるカット層を設けたことを特徴とする光記録媒体に関する。
また、本発明は、前記した本発明の光記録媒体が、基板上に設けられている光記録基板に関する。
さらに、本発明は、光メモリー素子の情報の記録/再生方式において、2光子光反応記録のための光および再生光として、フォトクロミック化合物の長波長側に吸収をもつ異性体の吸収波長よりも長波長の光を用い、かつ当該光がフォトクロミック化合物の吸収波長を実質的に遮蔽しているカット層を通して照射されることを特徴とする光メモリー素子の記録/再生方法に関する。
【0009】
本発明の詳細を図2に基づいて説明する。図2の細い実線及び破線は、それぞれフォトクロミック化合物の両異性体AおよびBの吸収スペクトルを示し、太い実線及び破線はカット層がフィルターXの場合とYの場合のそれぞれの光特性を例示したものである。また、フォトクロミック化合物A及びBのそれぞれの吸収波長領域がλ(A)及びλ(B)で示されている。λ(P)は2光子反応の場合の高強度短パルスレーザー光の波長を示している。この波長はフォトクロミック化合物Aの吸収波長の2倍の波長である。カット層がフィルターXの場合はλ(B)よりも長波長の光は透過するが、それよりも短い波長の光は完全に遮蔽するものであり、カット層がフィルターYの場合はλ(A)よりも長波長の光は透過するが、それよりも短い波長の光は完全に遮蔽するものである。
図2のλ(P)は、A→Bのフォトクロミック反応を2光子反応により誘起できる光の波長を示している。この波長域の光はフィルターX及びYは透過することができるので、この波長λ(P)を用いれば、2光子反応によりAからBへの光記録が可能になり、フィルターXを用いれば、その記録は室内光などの環境光により消滅させられることなく安定に存在し続けることになる。
【0010】
本発明の光記録媒体は、フィルターXをカット層として使用した場合には、1光子フォトクロミック反応のA→Bの反応(本明細書では、この反応を1光子フォトクロミック反応の光着色反応、又は単に光着色反応という。)も、1光子フォトクロミック反応のB→Aの反応(本明細書では、この反応を1光子フォトクロミック反応の光退色反応、又は単に光退色反応という。)も防止することができる。しかし、波長λ(P)を用いた2光子反応によりAからBへの光記録は可能となる構造になっている。
また、フォトクロミック化合物として光退色反応(B→Aの1光子フォトクロミック反応)の量子収率が10−3以下のフォトクロミック化合物を用いる場合には、通常の環境光での光退色反応は生起しないと考えられることから、フィルターYをカット層として使用することができる。即ち、光退色反応(B→Aの1光子フォトクロミック反応)の量子収率が10−3以下であることから、環境光によるB→Aの1光子フォトクロミック反応は現実的には無視することができ、A→Bの1光子フォトクロミック反応(1光子フォトクロミック反応の光着色反応)が生起するλ(A)の波長領域のみを完全に遮蔽することができれば、環境光による影響を遮断することが可能となる。
【0011】
2光子反応とは、1光子フォトクロミック反応における吸収波長よりも長波長(通常は吸収波長の2倍の波長)の高強度で短いパルスレーザー光で光励起した場合に、1光子フォトクロミック反応と同じ光反応が実現する。例えば、365nmに吸収波長を有するフォトクロミック化合物を、730nmの高強度で短いパルスレーザー光で光励起させると、365nmの光を照射したのと同じ光反応が実現する。このような吸収波長よりも長波長の高強度で短いパルスレーザー光で光励起を2光子反応という。2光子反応は、通常、高強度で短いパルス状の光によってのみ生起するものであり、通常の環境光のような弱くてパルス状でない光によっては生起しないとされている。したがって、原理的には2光子反応の波長λ(P)は可視領域や紫外領域などのいずれの領域であってもよいが、2光子反応の波長λ(P)は通常フォトクロミック化合物の吸収波長の約2倍の波長を使用することから、可視長波長域、赤外あるいは遠赤外領域などの領域になる。
【0012】
以下に本発明を詳しく説明する。ここでは、フォトクロミック化合物の両異性体を次式の反応で示されるAおよびBとする。Aが短波長域に吸収スペクトルを与え、Bが長波長域に吸収スペクトルを与えるとする。
【0013】
【化3】
Figure 0004132930
【0014】
1光子フォトクロミック反応とは、AからBへの光着色反応と、その逆のBからAへの光退色反応からなっている。
AからBへの光着色反応(記録書き込みに相当する)は、Aの吸収端近くの波長の2倍の波長の短パルスレーザを照射すると、2光子反応が誘起され光着色体Bが生成し記録が書き込まれることになる。カット層を設けないと、この光着色体は室内光などの環境光による光退色反応により徐々に消滅する。しかし、光着色体Bの吸収スペクトルを遮蔽するカット層を設けると、光退色反応を誘起する波長域の光がとどかないため、光着色体Bは光を吸収することなく、安定に存在する。記録の読み出しは、記録書き込みと同じ波長の光もしくはカット層による吸収もなく屈折率変化の大きい波長域の光を用いて行う。消去は、光着色体の吸収極大波長の2倍の波長の短パルスレーザを照射することにより、光着色体が光励起され消去される。
【0015】
また、2光子反応を用いると光メモリ層表面のみならず深さ方向へ多層3次元記録することも可能になる。2光子反応では光のパワー密度の二乗に比例して反応が進むため、光の集光スポット部でのみ効率よく2光子反応による情報の記録(例えば、AからBへの反応)が形成されることになる。また、2光子反応で使用使用される光の波長は、フォトクロミック化合物の吸収がない波長であるために、厚い記録層の深層部分に書き込みを行う場合でも、光のロスなしにエネルギーが光記録媒体のメモリー層の深部にまで伝達させることができる。
【0016】
例えば、フォトクロミック化合物Aとして450nm以下の波長域に吸収を有する次式で示される
【0017】
【化4】
Figure 0004132930
【0018】
ジアリールエテン分子を用いた場合、光着色体Bはより長波長域の500〜600nm付近にも吸収が生じる。そこで化合物Aの状態を初期状態として、Tiサファイアレーザの波長760nmのパルス光を用いて2光子反応により分子をB状態へと光異性化させて記録が行われた。再生には両状態とも1光子吸収を有しない波長633nmのレーザー光を用いて、反射型共焦点顕微鏡の光学系により屈折率変化を検出した。
記録の書き込みは、波長760nmのパルスレーザー光の集光スポット部を、第1層、第2層、及び第3層(面内間隔5μm、層間隔20μm)とした。これらの各層にそれぞれ異なるデータを記録し読み出すことに成功しているが、さらなる多層化も可能である。この三次元記録によりテラバイトクブスのメモリを実現することも可能となる。
この例の場合には、600nm付近にで光の吸収が変化するフィルターをカット層に設けることにより、600nm以下の波長による環境光の影響を受けない本発明の光記録媒体とすることができる。
【0019】
本発明の光記録媒体の例を図3及び図4に例示する。図3に例示される本発明の光記録媒体は、光記録媒体の基板3とフォトクロミック化合物を含む光メモリ層2からなる光記録媒体において、フィルターなどからなるカット層1を有することを第一の特徴とするものであり、さらに当該カット層1が光メモリ層2のフォトクロミック化合物の1光子フォトクロミック反応が誘起される波長域の光を遮蔽するものであることを第二の特徴とするものである。
図4に示される本発明の他の態様は、光メモリー層2の両側にロングパスフィルターなどからなるカット層1及びカット層4を有するものであり、基板3側からの光の入射もカットできる構造になっている。
【0020】
本発明のメモリー層に使用されるフォトクロミック化合物としては、2光子反応によるフォトクロミック反応を生起することができるものであれば、特に制限はない。ライトワンス記録には、光退色反応の量子収率が10−3以下のフォトクロミック化合物を用いることができる。このようなフォトクロミック化合物を用いた場合には、カット層として図2におけるフィルターYが使用可能となる。熱退色反応をしないフォトクロミック化合物としては、図1に示されるフォトクロミック化合物にうち、フルギド系化合物あるいはジアリールエテン系化合物が挙げられる。さらに、下記一般式(I)〜(IV)で示されるジアリールエテン系フォトクロミック化合物がより繰り返し耐久性が高いことから好ましい。
【0021】
【化5】
Figure 0004132930
【0022】
(式中、Xは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリール基、置換スルフォニル基を表し、A及びBは、それぞれ独立して次式[i]または[ii]、
【0023】
【化6】
Figure 0004132930
【0024】
(式中、Rは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシル基、ハロゲン原子、シアノ基又は、式Q−Ar(式中、Arは置換基を有してもよいアリール基を表し、Qは化学結合、又はリンカー基を表す。)を表し、R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、又は式−Q−Ar(式中、Arは置換基を有してもよいアリール基を表し、Qは化学結合、又はリンカー基を表す。)を表し、Yは−O−または−S−を表す。)を表す。)
【0025】
前記式におけるアルキル基としては、炭素数1〜30、炭素数1〜20、又は炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状の低級アルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、i−プロピル基などが挙げられる。アルコキシ基としては、前記したアルキル基からなる炭素数1〜30、炭素数1〜20、又は炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状の低級アルコキシ基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、i−プロポキシ基などが挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが挙げられる。
また、アリール基としては、炭素数5〜30、炭素数5〜20、又は炭素数5〜15の単環式、多環式、若しくは縮合環式、又はこれらの組み合わせからなる芳香族炭素環式基、又はこれらの炭素原子の中の1個以上の炭素原子が酸素原子、窒素原子又は硫黄原子で置換された芳香族複素環式基が挙げられる。アリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、チエニル基、ピロリル基、フリル基などが挙げられる。
式Qで示されるリンカー基としては、炭素数1〜10、炭素数1〜5、又は炭素数2〜4の直鎖状又は分枝状の低級炭化水素基、例えば、低級アルキレン基、低級アルケニレン基、低級アルキニレン基であり、これらの炭素原子の1個以上が酸素原子、窒素原子又は硫黄原子で置換されていてもよい。好ましいリンカー基としては、エチレン基、エチニレン基、酸素原子、窒素原子などのπ電子系を形成し得るものが挙げられる。
【0026】
前記したアルキル基やアルコキシ基は無置換のものであってもよいが、置換基を有していてもよい。このような置換基としては、1個又は2個以上のフッ素原子や塩素原子などのハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アミド基、アルコキシ基、アルキルチオ基などが挙げられる。好ましい置換基としてはハロゲン原子やシアノ基が挙げられる。例えば、フッ化アルキル基、クロロアルキル基などのハロゲン化アルキル基、シアノアルキル基、アルコキシアルキル基、フッ化アルコキシ基、クロロアルコキシ基などのハロゲン化アルコキシ基、シアノアルコキシ基、アルコキシアルコキシ基などが挙げられる。
前記したアリール基は無置換のものであってもよいが、置換基を有してもよい。このような置換基としては、1個又は2個以上のアルキル基、アルコキシ基、フッ素原子や塩素原子などのハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アミド基、アルキルチオ基などが挙げられる。例えば、アルキルアリール基、アルコキシアリール基、フッ化アリール基、クロロアリール基などのハロゲン化アリール基、シアノアリール基、ニトロアリール基などが挙げられる。
【0027】
上記したジアリールエテン系の化合物の内、Rにメトキシ基、Rにフェニル基を持つジアリールエテン化合物は、その開環量子収率が10−3以下と極端に小さい(K.Shibata et al. Chem. Lett. 618 (2001))。この場合には、カット層のフィルターとして、開環体の吸収スペクトルを遮蔽するだけで十分である(図2参照)。長波長側に吸収をもつ異性体(閉環体)の吸収スペクトルよりも長波長の光により無色開環体から青色長波長側に吸収をもつ異性体(閉環体)への2光子フォトクロミック反応を誘起させ、光記録を行い、読み出しは長波長側に吸収をもつ異性体(閉環体)の吸収スペクトル域における吸収強度の変化を検出すれば、ライトワンス記録が可能になる。この場合は、開環反応量子収率が低いことから、環境光下においても記録は消滅することはなく、また、読み出しにより記録が消滅することもない。
【0028】
本発明のカット層は、フォトクロミック化合物の1光子フォトクロミック反応が誘起される波長域の光を実質的に遮蔽するもの、即ち、通常の室内の使用において、環境光による光退色反応に必要な光量を、それ以下の光量に遮断できるものである。また、本発明のカット層は、フォトクロミック化合物の光退色反応の量子収率が10−3以下の場合には、環境光による光退色が実質的に起こらないのので、1光子フォトクロミック反応の光着色反応が誘起される波長域の光のみを実質的に遮蔽するカット層(例えば、図2のフィルターY)であってもよい。そして、本発明のカット層は、フォトクロミック化合物の2光子フォトクロミック反応を誘起することができる波長の光を透過するものである。本発明のカット層におけるカットする特定の波長は、前記した図2に示したように、メモリー層に使用するフォトクロミック化合物の吸収波長に応じて設定することができる。本発明のカット層に使用されるフィルターの具体例としては、光学機器で使用されているロングパスフィルムフィルターが挙げられる。このようなロングパスフィルムフィルターは、各波長に対応したものが既に市販されており、市販のフィルターを使用することができる。
本発明のカット層は、図3に示されるようにメモリー層の片側に設けられていてもよいが、より完全に環境光を遮蔽するために図4に示されるようにメモリー層の両側に設けられていてもよい。
【0029】
本発明の光記録媒体は、コンピューター関係におけるビットの記録媒体として使用することもできる。また、環境光により消滅することのない2光子ホログラム記録への応用も可能である。さらに、記録により着色することから、各種の光学材料として応用することもできる。
また、本発明の光記録媒体は、図3及び図4に示されるように基板に固着して使用するのが好ましい。このように、本発明は、本発明の光記録媒体を基板上に固着した光記録基板を提供するものでもある。図3及び図4では基板は光の入射側と反対方向に設けられている例を示しているが、基板が光の入射方向の側に有ってもよい。この場合には、本発明のカット層はメモリー層の両側に設けなければならない。また、メモリー層の側面からの環境光を遮蔽するためにカット層をさらに側面に設けることが必要な場合もある。さらに、基板自体の光のフィルター作用がある場合には、基板自体を本発明のカット層として使用することも可能である。
本発明の光記録基板は、基板、メモリー層、カット層の他に、さらに表面に保護層を有してもよい。さらに、基板の内容を示す印刷層を設けてもよい。
【0030】
本発明は、光メモリー素子の情報の記録/再生方式において、2光子光反応記録のための光および再生光として、フォトクロミック化合物の長波長側に吸収をもつ異性体の吸収波長よりも長波長の光を用い、かつ当該光がフォトクロミック化合物の吸収波長を実質的に遮蔽しているカット層を通して照射されることを特徴とする光メモリー素子の記録/再生方法を提供するものである。本発明の記録/再生方法としては、従来のような単層方式でもよいが、前記したように2光子光反応によれば、多層三次元記録方式とすることもでき、いずれの記録/再生方式も採用することができる。
【0031】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0032】
実施例1
(1)光記録媒体の調製
下記のジアリールエテン(1)をPMMAに重量分率10%で混入した薄膜(厚さ約1mm)を光メモリ層とした。
【0033】
【化7】
Figure 0004132930
【0034】
光メモリ層は、PMMA 900mgとジアリールエテン(1)100mgを酢酸エチルに溶解し、それをテフロン(登録商標)板上にキャストして作製した。この薄膜表面に、フィルムフィルター(FUJIFILM FILTER SC 62)を貼り付けカット層とした。光記録媒体の構成は図3のようになる。記録および再生光はカット層側から入射した。
(2)記録/再生/消去光
書き込みには、エルビウムドープファイバーレーザーを用いた。波長は780nm、発振周波数50MHz、パルス幅160fs、平均強度14mW、ピーク強度1.8kWを用いた。約80msの光照射によりスポット書き込みは完了した。書き込まれたスポットは、反射型共焦点顕微鏡により、633nmの波長の光により読み出すことが出来た。用いたフィルムフィルターの633nmの透過率は70%以上であった。600nm以下の波長において、その透過率が0.01%以下であったことから、書き込まれたスポットは、室内光の元で、1週間放置しても、消えることはなかった。比較実験として行ったカット層を設けない場合には、スポット記録は2時間で消滅した。スポット記録は、1064nmの短パルス光照射により消去可能になる。
【0035】
実施例2
(1)光記録媒体の調製
下記のジアリールエテン(2)を重量分率で10%混入したポリスチレン薄膜(厚さ約1mm)を光メモリ層とした。
【0036】
【化8】
Figure 0004132930
【0037】
光メモリ層は、ポリスチレン900mgとジアリールエテン(2)100mgをトルエンに溶解し、それをテフロン(登録商標)板上にキャストして作製した。この薄膜両面に、フィルムフィルター(FUJIFILM FILTER SC 42)を貼り付けカット層とした。光記録媒体の構成は図4のようになる。記録および再生光はカット層側から入射した。
(2)記録/再生/消去光
記録書き込みには、チタンサファイアレーザー780nm、発振周波数80MHz、パルス幅90fs、平均出力900mWを約100ms照射した。照射焦点位置が青く着色し、書き込みが確認された。再生には、633nmの吸収変化を用いた。書き込み点では透過率が10〜15%減少していた。このスポット記録は、室内光に1ヶ月放置しても消えることはなかった。比較実験として行ったカット層を設けていない場合は、室内光照射下約3時間で全体が青く着色して、記録スポットが確認できなくなった。
【0038】
【発明の効果】
本発明は、フォトクロミック材料によるフォトンモード記録の最大の欠点であった環境光による記録の書き換えの問題を解決したものであり、フォトンモード記録による大容量の光記録媒体の実用化に大きく貢献するものである。また、本発明の光記録媒体は2光子反応による三次元記録方式にも対応しており、多層光記録媒体の実用化を可能にするものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、種々のフォトクロミック化合物及びそのフォトクロミック反応を示す。
【図2】図2は、本発明のカット層の機能を説明する図である。細実線及び破線はフォトクロミック化合物A及びBの吸収スペクトルを示し、太実線及び破線はカット層の光特性を示す。図2の横軸は波長を示す。
【図3】図3は、本発明の光記録媒体の積層構造を例示したものである。
【図4】図4は、本発明の光記録媒体の積層構造を例示したものである。
【符号の説明】
1は、カット層を示す。
2は、光メモリー層を示す。
3は、光記録媒体の基板を示す。
4は、光メモリー層の基板側に設けられたカット層を示す。

Claims (10)

  1. フォトクロミック化合物がジアリールエテン系フォトクロミック化合物であるフォトクロミック化合物を含有してなる光メモリー層を有する光記録媒体において、1光子フォトクロミック反応が誘起される波長域の光を実質的に遮蔽するカット層を設けたことを特徴とする光記録媒体。
  2. カット層が、フォトクロミック化合物の光退色反応の量子収率が10−3以下の場合には、1光子フォトクロミック反応の光着色反応が誘起される波長域の光のみを実質的に遮蔽するカット層である請求項1に記載の光記録媒体。
  3. カット層が、フォトクロミック化合物の2光子フォトクロミック反応を誘起することができる波長の光を透過するものである請求項1又は2に記載の光記録媒体。
  4. カット層が、ロングパスフィルムフィルターからなる請求項1〜3のいずれかに記載の光記録媒体。
  5. カット層が、メモリー層の両側に設けられている請求項1〜4のいずれかに記載の光記録媒体。
  6. ジアリールエテン系フォトクロミック化合物が、次式で示される一般式[I]〜[IV]、
    Figure 0004132930
    (式中、Xは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリール基、置換スルフォニル基を表し、A及びBは、それぞれ独立して次式[i]または[ii]、
    Figure 0004132930
    (式中、Rは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシル基、ハロゲン原子、シアノ基又は、式Q−Ar(式中、Arは置換基を有してもよいアリール基を表し、Qは化学結合、又はリンカー基を表す。)を表し、R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、又は式−Q−Ar(式中、Arは置換基を有してもよいアリール基を表し、Qは化学結合、又はリンカー基を表す。)を表し、Yは−O−または−S−を表す。)を表す。)
    で表されるジアリールエテン系フォトクロミック化合物である請求項に記載の光記録媒体。
  7. 請求項1〜のいずれかに記載の光記録媒体が、基板上に設けられている光記録基板。
  8. 光記録基板が、表面に保護層を有するものである請求項に記載の光記録基板。
  9. 光メモリー素子の情報の記録/再生方式において、2光子光反応記録のための光および再生光として、フォトクロミック化合物がジアリールエテン系フォトクロミック化合物であるフォトクロミック化合物の長波長側に吸収をもつ異性体の吸収波長よりも長波長の光を用い、かつ当該光がフォトクロミック化合物の吸収波長を実質的に遮蔽しているカット層を通して照射されることを特徴とする光メモリー素子の記録/再生方法。
  10. 記録/再生が、多層三次元記録方式である請求項に記載の方法。
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