JP2005081795A - 相変化型光情報記録媒体とその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 透明基板上に少なくとも第一誘電体層、記録層、第二誘電体層、反射層をこの順で積層すると共に、記録層に光エネルギーを加えることにより非晶質状態と結晶状態との間の相変化を可逆的に行なわせることができる書き換え可能な相変化型光情報記録媒体であって、記録層が、組成式GaαSbβ(α、βは原子%、α+β=100、11≦α≦13)で表される合金を主成分とする相変化記録材料からなり、記録線速14〜30m/sで記録できることを特徴とする相変化型光情報記録媒体。
【選択図】 図1
Description
これらの光情報記録媒体の構成は、透明基板上に誘電体層/記録層/誘電体層/反射層/耐環境保護層という基本構成になっている。CD系とDVD系の違いは、用いる半導体レーザーの波長やそのレーザー・スポット径の違い及び使用する透明基板の厚みであるが、原理的にはレーザー光により相変化記録材料に熱を加え、結晶相と非晶質相の間で相変化する記録材料の光学的な特性の変化をピットの反射率の差として検出し、二値化したデジタル信号に変換するという同一の原理により実現されている。また、現在要求されている高速化・高密度化について、高密度化はレーザー波長の短波長化によるレーザー・スポット径の微細化により実現し、高速化は相変化記録材料の改善や各層を構成する材料及び膜厚構成の改善により実現する方向にある。
これらの更なる高線速記録を目指した材料には次のような特性が要求される。
イ)短時間で相転移し易いこと(結晶化速度が速くかつ非晶質化もし易いこと)
ロ)結晶化温度及び融点が保存安定性が確保できる程度に高いこと
ハ)レーザー光の繰り返し照射に対する熱劣化が小さこと
また、構造的には、レーザー光で加熱された記録材料を急速に冷却し非晶質化できる急冷構造が好ましい。この急冷構造は、記録層の薄層化と熱伝導の良好な放熱反射層の組み合わせにより実現できる。
また、結晶化速度を向上する手段として、記録層材料が核形成し易い界面層を採用するなどの手段も検討されている(特許文献5)。
また、特許文献7においてもGaの組成比は40〜60原子%とかなり広い範囲である上に、本発明とは組成範囲が異なる。
従って、本発明は、保存安定性に優れ、DVD−ROMと同容量以上の高密度記録が可能であると共に、10m/s以上の高線速記録が安定して実現でき、更には、反射率が高くかつ均一であり、常に同一の特性が得られる相変化型光情報記録媒体とその製造方法の提供を目的とする。
1) 透明基板上に少なくとも第一誘電体層、記録層、第二誘電体層、反射層をこの順で積層すると共に、記録層に光エネルギーを加えることにより非晶質状態と結晶状態との間の相変化を可逆的に行なわせることができる書き換え可能な相変化型光情報記録媒体であって、記録層が、組成式GaαSbβ(α、βは原子%、α+β=100、11≦α≦13)で表される合金を主成分とする相変化記録材料からなり、記録線速14〜30m/sで記録できることを特徴とする相変化型光情報記録媒体。
2) 記録層が、組成式(GaαSbβ)100−γMγ〔MはGa、Sb以外の金属、α、β、γは原子%、α+β=100、11≦α≦13、0<γ≦10〕で表される合金を主成分とする相変化記録材料からなることを特徴とする1)記載の相変化型光情報記録媒体。
3) 金属Mが、Al、In、Ge、Sn、Ti、Zr、Nb、Ta、Teの中から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする2)記載の相変化型光情報記録媒体。
4) 光エネルギー源がレーザー光であり、該レーザー光の波長λが、630≦λ≦700(nm)であり、かつ、記録層の膜厚tが、6≦t≦25(nm)であることを特徴とする1)〜3)の何れかに記載の相変化型光情報記録媒体。
5) 第一誘電体層が、ZnSxSiO2y(x、yはモル%、x+y=100、30≦y≦50)で表される誘電体からなり、波長660nmにおける膜厚80nmでの透過率が75%以上であることを特徴とする1)〜4)の何れかに記載の相変化型光情報記録媒体。
6) 第二誘電体層がカルコゲン成分を含み、反射層がAgからなり、該第二誘電体層と反射層の間に、耐硫化バリア層が設けられていることを特徴とする1)〜5)の何れかに記載の相変化型光情報記録媒体。
7) 耐硫化バリア層が、Si、Ti、Ta、Zrから選ばれた少なくとも1種の金属の炭化物と酸化物の混合体からなることを特徴とする6)記載の相変化型光情報記録媒体。
8) 記録層の組成のばらつきが、0.5原子%以下であることを特徴とする1)〜7)の何れかに記載の相変化型光情報記録媒体。
9) 記録層を、Arガス圧が0.37〜0.85Paの範囲にある直流スパッタ法により製膜することを特徴とする8)記載の相変化型光情報記録媒体の製造方法。
10) 直流スパッタ法が、パルス状の波形を持つ直流スパッタ法であることを特徴とする9)記載の製造方法。
まず、本発明の相変化型光情報記録媒体の層構成について説明する。
図1は、本発明の相変化型光情報記録媒体の一実施形態を説明するための断面図である。即ち、相変化型光情報記録媒体10は、透明基板1上に第一誘電体層2、記録層3、第二誘電体層41、耐硫化バリア層42(但し、第二誘電体層が硫黄、セレン、テルル等のカルコゲン成分を含まない場合は不要)及び反射層5がこの順に形成され、反射層5上にはスピンコート法による紫外線(UV)硬化樹脂からなる環境保護層6が形成されており、更に、接着層7を介して第二透明基板8が貼り合わされている。
なお、主成分とは、記録材料としての機能を果たすのに十分な量を含有すること、即ち材料全体の80モル%以上、好ましくは90モル%以上を占めることを意味するが、通常は特に必要がない限り該合金のみを用いる。
図2に、GaSb合金の相図を示す。横軸の数字は、Sbの組成量を示し、その数値を100から差し引いた残量がGaの組成量となる。ラインの上側の塗りつぶし(黒い)部分は液体の状態を示し、ラインの下側の白い部分は固体状態を示す。境界部分は、その組成での融点となる。Ga50Sb50は化合物組成と言われ融点は712℃であり、Sb50原子%以上で589℃と書かれた数値は共晶組成のGaSbの融点を示し、その組成は横軸のSb組成量が88でありGa12Sb88を示す。
図4は、GaSbの組成を広く変えたときのGa量に依存した660nm波長における転移線速を示している。図から明らかな様に、Ga量15原子%以下で転移線速の変化が著しく、ある狭い特定の組成範囲でのみ線速範囲を設定したシステムが成り立つと言える。
また、金属Mとしては、Al、In、Ge、Sn、Ti、Zr、Nb、Ta、Teの中から選ばれた少なくとも1種の元素が好適である。Al、Inは反射率の増長に寄与し、Sn、Teは高線速記録特性の増長とレーザー初期化性の向上に寄与する。また、Geは保存特性の増長に寄与する。Ti、Zr、Nb、Taは繰り返し記録特性の増長に寄与する。
透明基板1としては、例えば表面にトラッキング用の案内溝を有する、加工性、光学特性に優れたポリカーボネート基板が好適である。
第一誘電体層2及び第二誘電体層41は、高線速での繰り返し記録に適した光学特性を有することが望ましく、好ましい材料としては、例えば(ZnS)80(SiO2)20が挙げられる。通常はこの組成比のものを用いるが、反射率がより高い媒体を得るには、透過率が高い誘電体膜の方が有利である。そのためには、SiO2の比率が高い方が望ましく、具体的には、30〜50モル%の範囲が良い。この範囲にあるとき波長660nmにおける膜厚80nmでの透過率は75%以上となる(図3参照)。50モル%を超えると成膜速度が小さくなるため製造コストが高くなる。そこで、少なくとも、第二誘電体層より膜厚が厚く高い反射率を得る上で寄与が大きい第一誘電体層を上記範囲の組成とすると良い。
炭化物はガラス・プレス・レンズの型材にも使われる材料であり、炭化物単体では、光情報記録媒体で通常良く用いられる誘電体材料(カルコゲン成分を含みSiO2、TiO2、ZnO等のガラス成分を含む混合体)との密着性が必ずしも良好でない。
耐硫化バリア層の好ましい膜厚は3〜5nm程度である。2nmでは耐硫化機能を発現しない場合があり、また、5nmを超えると耐硫化バリア層による光吸収が無視できないレベルになる。
反射層5には、熱伝導率が高いAg単体又はAg−Cu、Ag−Pd、Ag−Ti等のAg合金が適している。反射層は、通常、膜厚140nmで成膜されているが、120〜160nmの範囲で差し支えない。しかし、熱又は膜応力によりポリカーボネート基板が変形を生ずる程厚く成膜するの好ましくない。
環境保護層6は、公知の紫外線硬化樹脂の中から適宜選択して積層すればよい。
Ar粒子によるスパッタ収率〔但し、値は日本真空技術株式会社発行『真空ハンドブック(改訂版)』1985年5月1日発行、第2版、P202による計算値〕は図5の様になっている。図5から、スパッタ収率的には、同一のスパッタ条件ではSbよりもGaの方がスパッタされ易いということが分る。一方、蒸気圧に関しては、表1から、同じ蒸気圧となるのにSbよりもGaの方が高温を要することが分る。
更に、目的とする組成のGaSbを得るためには、このようなことをベースとして、予めターゲット組成をシフトさせておくことが考えられる。例えばGa組成を12原子%にしようとする場合には、ターゲット組成をその分シフトさせておくことによって12原子%を中心値として、ばらつき幅0.5原子%以下(即ち12±0.5原子%の範囲内)の確定組成を持つ記録層を作製することができる。
以上、説明した様に、スパッタするArガス圧により特定のばらつき範囲に収めることができると共に、成膜方法によってもGaSbの特定の組成範囲を狙って記録層を作製することができる。
図1(b)に示すような本発明の相変化型光情報記録媒体10を作製した。
図1(a)は貼り合わせる前の単板での状態を示している。図では、第二誘電体層41と反射層5との間に両者の反応を防止するための耐硫化バリヤ層42が設けられている。なお、この耐硫化バリヤ層42は、第二誘電体層41が硫黄、セレン、テルル等のカルコゲン成分を含まない場合は不要である。
透明基板1としては、深さ27〜31nm、幅0.25μm、ピッチ0.74μmの溝を有する厚さ0.6mmのポリカーボネート製透明基板を用いた。
この透明基板上に、下記の層を順次積層した。各層の成膜は、目標の膜組成となるようなターゲットを用いて枚様式多層積層用スパッタ装置により行った。
まず、第一誘電体層2として、ZnS(80モル%)−SiO2(20モル%)を膜厚60nmで形成した。
次に、記録層3として、スパッタ用Arガス圧を0.73Paに設定し、直流スパッタ法により、共晶組成のGa12Sb88(数字は原子%)を膜厚16nmで形成した。
次に、第二誘電体層41として、第一誘電体層2と同じ組成のZnS−SiO2を膜厚9nmで形成した後、耐硫化バリヤ層42としてSiOC(SiC70モル%、SiO230モル%)を膜厚4nmで形成し、更に反射層5として、Ag(純度99.99%)膜を140nmの膜厚で積層してスパッタ成膜を終了した。
次いで、環境保護層6上に、紫外線硬化型接着剤(日本化薬社製DVD003)からなる接着層7を介して、ポリカーボネート製の第二透明基板8を貼り合わせた。貼り合わせ前の第二透明基板8は、吸湿による変形が無いように記録媒体と同時に成形するか、予め成形しておき吸湿による変形が無いような条件で管理した。なお、透明基板1は、反射層5までの積層に伴う反りの方向及び環境保護層6を設けた後の反りの方向を予め計算し、成形時点で反りの方向をある程度調整することにより、反りや変形を抑えておいた。
その後、日立コンピューター製相変化型光ディスク用初期化装置(POP120−3Ra)を用いて、以下の条件により約100秒の処理時間でレーザー初期化を行った。即ちCLV(線速度一定)方式により記録媒体を回転させ、線速:9.0m/s、送り量:36μm/回転、初期化範囲:半径位置23〜58mm、レーザーパワー:1400mWとした。この装置のLDの中心発光波長は、810±10nm、スポットサイズは約1μm×96±5μmである。
第二透明基板を貼り合わせた後、反射率を測定したところ、20%であり、後でDCイレースした場合の約95%に相当する値であった。このときの記録媒体の反りは、ラジアル・チルト(radial tilt)が外周(半径58mm)において最大で0.4deg.(度)、タンジェンシャル・チルト(tangential tilt)が最大で0.2deg.(度)であった。また、面内の基板の振れ量は最大でも50μm以下であった。
記録ストラテジーは、記録パワー、消去パワー、消去パワーより低いボトムパワーの3つのパワーを制御し、パルス数はマーク長nT(n:マークの長さを示す自然数、Tは基準クロック)に対し(n−1)個で、個々のパルス長は、On、Offパルス長の和が1Tを基本とした。記録変調方式は、(8−17)変調とした。最短マーク長は0.4μm、線密度は0.267μm/ビットとした。記録パワー、消去パワー、ボトムパワーは、それぞれ、30mW、5mW、0.1mWとした。
このようにして記録した記録媒体について、再生線速度3.5m/s、再生パワー0.5mWで再生したところ、一回目記録のジッターが8.5%、変調度=〔(14Tスペースの反射率)−(14Tマークの反射率)〕/(14Tスペースの反射率)が58%、繰り返し記録1000回後のジッターが12%であった。また、最適な特性が得られたピックアップと光記録媒体のチルト角は、ラジアル方向で0.05deg.であり、非常に良好であった。
次に、この記録媒体を保存試験槽に投入した。条件として、80℃・85%RHの高温高湿槽に100時間保管し、再度ジッターとモジュレーションを測定したところ、それぞれ0.3%の上昇と2%の減少があったが、問題となるレベルの変化ではなかった。
第一、第二誘電体層の材料を、ZnS(60モル%)−SiO2(40モル%)に変えた点以外は、実施例1と同様にして相変化型光情報記録媒体を作製した。誘電体層の透過率を、膜厚80nm、波長660nmの条件で比較したところ、実施例1のZnS(80モル%)−SiO2(20モル%)の透過率が72%、本実施例のZnS(60モル%)−SiO2(40モル%)の透過率が78.5%であり、6.5%増大した。透過率の向上により、20%であった反射率が23%まで向上した。その他の記録・保存特性は、実施例1のものと変らなかった。
記録層材料を共晶組成より若干Sbの多いGa11Sb89(数字は原子%)にInを加えた(Ga11Sb89)95In5(数字は原子%)に変えた点以外は、実施例1と同様にして相変化型光情報記録媒体を作製し、その特性を測定したところ、反射率が1.5%上昇し21.5%となった。また、ジッター及びモジュレーションは変らず、それぞれ13%及び58%のままであった。但し、繰り返し記録特性を測定したところ、10回繰り返し後の反射率が0.5%低下し21%となったが、その後は安定していた。
記録層材料を共晶組成のGa12Sb88(数字は原子%)にAlを加えた(Ga12Sb88)95Al5(数字は原子%)に変えた点以外は、実施例1と同様にして相変化型光情報記録媒体を作製し、実施例1と同様にしてピックアップにより評価したところ、反射率が若干上がり、記録前で20.5%、DCイレース後で21.5%となった。また、Sb量が少なくなったにも拘わらず転移線速は変わらず、20m/sのままであった。記録後のジッター、モジュレーションは同等であった。
記録層材料を共晶組成より若干Sbの多いGa11Sb89(数字は原子%)にGeを加えた(Ga11Sb89)97Ge3(数字は原子%)に変えた点以外は、実施例1と同様にして相変化型光情報記録媒体を作製し、実施例1と同一のピックアップにより保存特性を評価したところ、Geの入らないGa11Sb89では、85℃相対湿度85%の高温高湿環境下における保存試験100時間経過後で、0.5%のジッター低下があったが、本実施例のGe入り組成では200時間経過後でも0.3%の低下に留まった。
記録層材料を共晶組成のGa12Sb88(数字は原子%)にSnを加えた(Ga12Sb88)90Sn10(数字は原子%)に変えた点以外は、実施例1と同様にして相変化型光情報記録媒体を作製し、実施例1と同様にして大口径レーザーによる初期化を行ったところ、添加物のSnの効果により、約3割速いスピードで初期化することができた。
即ち、CLV(線速度一定)方式により記録媒体を回転させ、線速:12m/s、送り量:36μm/回転、初期化範囲:半径位置23〜58mm、レーザーパワーは実施例1と同じ1400mWとした。
この相変化型光情報記録媒体を実施例1と同一のピックアップにより評価したところ、反射率が記録前で21%、転移線速は若干上がり29m/sであり、最適ストラテジーで記録後に再生線速度3.5m/s、再生パワー0.5mWで再生評価したところ、記録後のジッター及びモジュレーションは8.4%、59%であり実施例1の結果とほぼ同等であった。
記録層材料を実施例6のSnの代りに同量のTeを添加した(Ga12Sb88)90Te10(数字は原子%)(数字は原子%)に変えた点以外は、実施例6と同様にして相変化型光情報記録媒体を作製し、大口径レーザーにより初期化したところ、添加物のTeの効果により、約1割速いスピード、即ち10m/sで初期化できた。線速は28m/s、反射率は20.5%であり、記録再生の結果は、最適化されたストラテジーで記録した後の再生評価でジッターが8.7%、モジュレーションは57%であった。
記録層材料を共晶組成より若干Sbの多いGa11Sb89(数字は原子%)にTi、Zr、Nb、Taを加えた(Ga11Sb89)95Ti5(実施例8)、(Ga11Sb89)95Zr5(実施例9)、(Ga11Sb89)95Nb5(実施例10)、(Ga11Sb89)95Ta5(実施例11)に変えた(各組成式の数字は原子%)点以外は、実施例5と同様にして繰り返し特性を評価したところ、何れも添加無しの実施例1に比べてジッター上昇が緩和され、初期ジッター8.8%に対し、1000回後のジッターは11%であった。
実施例1と同じ共晶組成のGa12Sb88を用いて、0.5kWの直流スパッタ法により、ポリカーボネート基板上に16μmの厚みで記録層のみを、Arガス圧が1Paまでの真空度の条件で成膜した。このときのカソードサイズは200φ、カソード電圧は−336〜−398V、電流は1.48〜1.26Aであった。
このサンプルの記録層について、蛍光X線評価装置〔(株)理学電機製 波長分散型蛍光X線分析装置 SYSTEM3272〕により、その組成を分析した。結果を図6に示すが、Arガス圧0.37〜0.85Paの範囲において、Ga組成比率は12〜12.5原子%の範囲で安定していた。0.37Pa未満、及び0.85Pa超の圧力範囲では値がばらついた。
直流スパッタを、パルス状電圧波形を持つ直流スパッタに変えた点以外は、実施例5と同様にしてテストを行った。パルス波形の条件は、周期は100kHz、陰極となるスパッタ電極に負電圧を印加する時間比率は80%とした。また、カソード電圧は−428〜−511V、電流は1.16〜0.98Aであった。
実施例5と同様にして、蛍光X線評価装置〔(株)理学電機製 波長分散型蛍光X線分析装置 SYSTEM3272〕により、その組成を分析した。結果を図7に示すが、Arスパッタガス圧0.37〜0.85Paの範囲において、Ga組成比率は12.5〜13原子%の範囲で安定していた。0.37Pa未満、及び0.85Pa超の圧力範囲では値がばらついた。
実施例5及び6により、絶対値は異なるものの、変化幅が0.5原子%に収まるArガス圧範囲が判ったので、絶対値をシフトさせるためターゲット組成を共晶組成のGa12Sb88からずらし、Ga11.2Sb88.8という組成の合金を作製し、これをターゲットとしてパルス状電圧波形を持つ直流スパッタにより実施例6と同じテストを行った。その結果、Ga12原子%を中央値とし、変化幅が0.5原子%以内となる組成のGaSb記録層膜が得られた。
耐硫化バリヤ層42をTiOC(TiC80モル%、TiO220モル%)に変えた点以外は実施例1と同様にして光情報記録媒体を作製した。
初期評価の結果、最適化されたストラテジーで測定した後、3.5m/sで再度評価したジッター及びモジュレーションは、それぞれ8.4%及び59%であった。
次に、この記録媒体のAg反射膜に対する耐硫化性を調べるため、保存試験として、80℃・85%RHの高温高湿槽に100時間保管した後、再度ジッターとモジュレーションを測定したところ、それぞれ0.4%の上昇と3%の減少があったが、問題となるレベルの変化ではなかった。
耐硫化バリア層をZrOC(ZrC80モル%、Zr2O320モル%、実施例16)、TaOC(TaC70モル%、TaO230モル%、実施例17)に変えた点以外は実施例15と同様にして光情報記録媒体を作製し、評価を行った。
実施例15と同じ条件の保存試験を行い、ジッターとモジュレーションを測定したところ、それぞれ0.5%以下の上昇と3%の減少があったが、問題となるレベルの変化ではなかった。
記録層材料を共晶組成近傍のSb85Te15(結晶化温度105℃、数字は原子%)に変えた点以外は、実施例1と同様にして相変化型光情報記録媒体を作製し評価を行った。その結果、転移線速25m/s、ジッター8%台、モジュレーションも55%を実現でき、繰り返し記録特性も1000回までジッター上昇1%程度であった。しかし、80℃・85%RHの温・湿度で100時間の保存試験を実施したところ、記録マークは全て消失し、記録マークの保存信頼性が著しく低いことが分かった。
記録層材料を共晶組成近傍のGa20Sb80(数字は原子%)に変えた点、及び初期化線速をCLV8.0m/sと遅くして初期化し易くした点以外は、実施例1と同様にして相変化型光情報記録媒体を作製した。
初期化後、実施例1と同様にして特性を評価したところ、転移線速は8m/sと遅く、10m/s以上の高線速では記録できなかった。即ち、最適記録条件ではジッターが10%となったが、20m/sの記録線速ではジッターが25%と表示され、マークが確実に記録できているというレベルではなかった。
記録層材料を共晶組成近傍のGa9.5Sb90.5(数字は原子%)に変えた点、及び初期化線速をCLV8.5m/sと遅くして初期化し易くした点以外は、実施例1と同様にして相変化型光情報記録媒体を作製した。
初期化後、実施例1と同様にして特性を評価したところ、転移線速は38m/sと非常に高速となったが、初期ジッターが17%であった。続いて、繰り返し記録後のジッター特性を1000回の書き換えまで評価したところ、DOW(ダイレクトオーバーライト)10未満でジッターが一度22%まで上昇し、DOW10〜100の範囲では19〜20%であった。つまり、低ジッターが実現できなかった。
パルスDCスパッタに代えてRFスパッタとした点以外は、実施例1と同様にして光情報記録媒体を作製したところ、記録層の組成はGaリッチとなり、しかもGa/Sb組成比が経時的に変化した。その結果、安定して同一特性の光情報記録媒体を作製することができなかった。
2 第一誘電体層
3 記録層
41 第二誘電体層
42 耐硫化バリヤ層
5 反射層
6 環境保護層
7 接着層
8 第二透明基板(貼り合わせ基板)
10 相変化型光情報記録媒体(貼り合わせ後全体)
Claims (10)
- 透明基板上に少なくとも第一誘電体層、記録層、第二誘電体層、反射層をこの順で積層すると共に、記録層に光エネルギーを加えることにより非晶質状態と結晶状態との間の相変化を可逆的に行なわせることができる書き換え可能な相変化型光情報記録媒体であって、記録層が、組成式GaαSbβ(α、βは原子%、α+β=100、11≦α≦13)で表される合金を主成分とする相変化記録材料からなり、記録線速14〜30m/sで記録できることを特徴とする相変化型光情報記録媒体。
- 記録層が、組成式(GaαSbβ)100−γMγ〔MはGa、Sb以外の金属、α、β、γは原子%、α+β=100、11≦α≦13、0<γ≦10〕で表される合金を主成分とする相変化記録材料からなることを特徴とする請求項1記載の相変化型光情報記録媒体。
- 金属Mが、Al、In、Ge、Sn、Ti、Zr、Nb、Ta、Teの中から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項2記載の相変化型光情報記録媒体。
- 光エネルギー源がレーザー光であり、該レーザー光の波長λが、630≦λ≦700(nm)であり、かつ、記録層の膜厚tが、6≦t≦25(nm)であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の相変化型光情報記録媒体。
- 第一誘電体層が、ZnSxSiO2y(x、yはモル%、x+y=100、30≦y≦50)で表される誘電体からなり、波長660nmにおける膜厚80nmでの透過率が75%以上であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の相変化型光情報記録媒体。
- 第二誘電体層がカルコゲン成分を含み、反射層がAgからなり、該第二誘電体層と反射層の間に、耐硫化バリア層が設けられていることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の相変化型光情報記録媒体。
- 耐硫化バリア層が、Si、Ti、Ta、Zrから選ばれた少なくとも1種の金属の炭化物と酸化物の混合体からなることを特徴とする請求項6記載の相変化型光情報記録媒体。
- 記録層の組成のばらつきが、0.5原子%以下であることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の相変化型光情報記録媒体。
- 記録層を、Arガス圧が0.37〜0.85Paの範囲にある直流スパッタ法により製膜することを特徴とする請求項8記載の相変化型光情報記録媒体の製造方法。
- 直流スパッタ法が、パルス状の波形を持つ直流スパッタ法であることを特徴とする請求項9記載の製造方法。
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