JP2005053059A - 流れ錆抑制能に優れた塗膜処理鋼材及び安定錆形成剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】 初期の流れ錆の抑制能に優れた塗膜処理鋼材を提供する。
【解決手段】 安定錆を形成する為の塗膜が表面に形成されている塗膜処理鋼材であって、該塗膜は樹脂成分を100質量%としたとき0.03〜3.6質量%の硫酸チタンが配合されており、
さらに該塗膜は着色顔料及び平均粒径5μm以上の体質顔料を含有している。
【選択図】 なし

Description

本発明は安定錆を形成して腐食の進行を抑制するのに有効な塗膜被覆処理鋼材及び安定錆形成剤に関するものである。
鋼材は、強度、加工性、靭性などに優れ、しかも安価であることから橋梁や建築物などに広く利用されている。ただし鋼材は、そのままでは腐食するため、屋外で使用する場合にはめっきや塗装などで鋼材表面を被覆し、防錆対策を施すことが一般的である。しかし、めっきは処理コストが高く、また塗装は定期的に塗り直す必要がある。
そこで、めっきや塗装などの防錆対策を施すことなく鋼材を裸で使用しても、その表面に生成する鉄錆(安定錆)の保護作用で腐食の進行を抑制でき長期間に亘って使用できる耐候性鋼が開発されている(例えば、JIS G3114、JIS G3125、JIS G7101、JIS G7102など)。前記安定錆は、鋼材中のCu、P、Crなどによって緻密になっているため、鋼内部への腐食の進行を抑制できる。しかし、鋼材の形状や用途によっては安定錆が形成されない場合がある。例えば、L字部、排水口周辺などのように水が溜まりやすい部分、橋脚の天井部などのように海塩付着が多い部分では、腐食環境が通常とは異なり、安定錆が形成されないこともある。安定錆が形成されないと、腐食の進行が止まらないだけでなく、鋼材表面から錆汁が流れ出して周囲の美観も損ねる。
流れ錆を防止する為、積極的に安定錆を形成できる塗料で鋼材表面を処理することが提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。すなわち特許文献1や特許文献2は、カルボキシル基を有する樹脂、顔料、及びリン酸系化合物とで樹脂被膜を形成すると、前記樹脂及び顔料によって被膜の透湿性及び通気性を高められ、またリン酸化合物によって反応が促進されるため、速やかに安定錆を形成できるとしている。特許文献3は、有機樹脂被膜に硫酸クロム及びリン系防錆剤を配合すると、クロムイオンが鉄イオンの安定錆への変態を触媒的に加速でき、リン系防錆剤は安定錆に吸着して過度の腐食反応を抑制できるため、塩分過多の環境下でも安定錆を形成できるとしている。特許文献4は、モリブデン系化合物を含有するブチラール樹脂で被膜を形成すると、ブチラール樹脂は水透過性に優れているため安定錆の早期形成に有効であり、モリブデン系イオンも安定錆を早期に形成するのに有効であるため、流れ錆を防止できるとしている。
さらには上記リン酸イオン、クロムイオン、モリブデンイオン以外のイオンを利用した技術も知られている(例えば、特許文献5〜6)。すなわちこの特許文献5は、コバルト、マンガン、チタン、ジルコニウム、バナジウムなどの硫酸塩は、安定錆の生成促進に有効であるため流れ錆を抑制できるとしている。しかも安定錆を形成する為の塗膜の上に他の塗装を施した場合、上述したようなCrなどは塗膜下の腐食を促進してしまう虞があるのに対して、本文献5で使用されているCo、Mn、Ti、Zr、Vなどは、塗膜下の腐食を促進することがなく、塗膜のピンホールや疵部から塗膜膨れを生じることがないとされている。
特開2002−129355号公報(請求項1、段落0007、段落0008、段落0017) 特開2001−81580号公報(請求項1、請求項2、段落0017) 特開2002−20875号公報(請求項1,段落0013、段落0016) 特開2001−89877号公報(請求項1、段落0009、段落0011) 特開2000−61396号公報(請求項1、段落0006、段落0014〜0016) 特開2000−96254号公報(請求項1、段落0011〜0014)
上述したように、Co、Mn、Ti、Zr、Vなどの硫酸塩は特に優れた安定錆形成作用を有している。なかでもTiは、錆の核となってβ−FeOOHを緻密化するため、塩化物イオンや水の遮断効果がさらに高まり、腐食防止能に特に優れている。
しかしチタン硫酸塩は、前記の点では優れているものの、改善すべき点がある。すなわちチタン硫酸塩は上記特許文献5〜6に記載されているように、安定錆を形成して流れ錆を抑制するのには有効であるものの、本発明者らの検討によれば、該チタン硫酸塩は特に酸性が強いためか、腐食環境下への暴露初期に限定すれば流れ錆が出てしまうことが判明した。特に鋼材の安定錆形成過程が外部から見えると鋼材の美観を損ねるため、該鋼材を着色顔料によってマスクした場合に、初期の流れ錆が顕著になることが判明した。このことは、鋼材をコンクリートの上に固定して腐食環境下に暴露し、コンクリート上に付着する流れ錆を実際に観察することで初めて判ったことである。
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、初期の流れ錆の抑制能に優れた塗膜処理鋼材及び安定錆形成剤を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、鋼材の表面に塗布する安定錆形成用塗膜において、特定の粒径の体質顔料を添加すれば、酸性の強いチタン硫酸塩を使用した場合であっても初期の流れ錆を抑制できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明に係る塗膜処理鋼材は、安定錆を形成する為の塗膜が表面に形成されており、
該塗膜は樹脂成分(樹脂固形分)を100質量%としたとき0.03〜3.6質量%の硫酸チタンを含有しており、さらに該塗膜は着色顔料及び平均粒径5μm以上の体質顔料を含有している点に要旨を有するものである。また前記体質顔料の塗膜中の量は5〜55質量%であるのが望ましく、前記着色顔料は、鉄系顔料を含むものであるのが望ましい。前記塗膜は、さらにリン系防錆顔料を含有しているのが好ましく、前記塗膜の厚さは、例えば、5〜100μm程度である。
本発明には前記塗膜を形成するための安定錆形成剤(塗料)も含まれる。
なお本明細書では、用語「硫酸チタン」はその等価体(水分の存在下での解離等によってチタン原子含有イオンや硫酸イオンとなることができる物質)を含む意味で使用する。
本発明の塗膜処理鋼材は、特定の粒径の体質顔料を含有しているため、酸性の強いチタン硫酸塩を使用した場合であっても初期の流れ錆を抑制することができる。
本発明の鋼材は、安定錆を形成する為の塗膜が表面に形成されており、より詳細にはこの塗膜は、硫酸チタンを含有している。硫酸チタンは、水分の存在下でチタン原子含有イオン(チタンイオン、チタン酸イオンなど。特に4価のチタン原子含有イオン)及び硫酸イオン(オキシ硫酸イオン、亜硫酸イオンを含む;以下、同じ)を生成する物質であり、安定錆を形成可能である。チタン原子含有イオンは、鉄錆の結晶を微細化し、しかも安定な生成物であるα−オキシ水酸化鉄の生成を促進する為であり、硫酸イオンは触媒的に作用して安定錆の生成を促進する為である。
なお本発明では、通常、塗料中に硫酸チタン塩を添加し、該塗料を鋼材に塗布することによって塗膜を形成しているものの、必ずしも硫酸チタン塩を使用する必要はない。すなわち水分の存在下でチタン原子含有イオン及び硫酸イオンを生成可能であればよく、例えば、前記硫酸チタンは塩の形態で塗料に添加してもよく、水溶液の形態で塗料に添加してもよい。さらには添加した硫酸チタンは、再びチタン原子含有イオン及び硫酸イオンを生成可能である限り、一旦チタン原子含有イオン及び硫酸イオンに解離した後、塗料中又は鋼材中の他の成分と適当に結合・会合等していてもよい。加えて必ずしも硫酸チタンとして塗料に添加する必要はなく、硫酸(オキシ硫酸、亜硫酸を含む;以下、同じ)と、該硫酸によってイオン化可能なチタン化合物とを別々に添加してもよい。
いずれにせよ本発明の塗膜は、水分の存在下での解離等によってチタン原子含有イオンや硫酸イオンとなることができる物質(すなわち硫酸チタン及びその等価体)を含有している。塗膜中の硫酸チタン(等価体を含む。以下、同じ)の配合量は、樹脂成分(樹脂固形分)を100質量%としたとき、0.03質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上、特に1質量%以上である。なお固形分全体を100質量%としたときの量(塗膜中の濃度)に換算したときには、硫酸チタンは、通常、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上、特に0.15質量%以上(例えば、0.5質量%以上)程度であることが多い。
一方、硫酸チタンは、安定化錆を形成するのには有効であるが、上述したように初期の流れ錆を発生させる虞がある。そこで本発明では特定の体質顔料を使用して初期の流れ錆を防止しているが、硫酸チタンが過剰になると初期の流れ錆を防ぎきれなくなる。従って硫酸チタンの濃度は、樹脂成分(樹脂固形分)を100質量%としたとき、3.6質量%以下、好ましくは3.3質量%以下、さらに好ましくは3.0質量%以下とする。なお前記硫酸チタンの濃度は、塗膜中の濃度に換算したときには、1.5質量%未満、好ましくは1.47質量%以下、さらに好ましくは1.44質量%以下程度であることが多い。
なお硫酸とチタン化合物とを別々に添加する場合であっても、チタン原子含有イオンの濃度及び硫酸イオンの濃度を測定することによって、硫酸チタンとしての量を算出できる。前記チタン原子含有イオン濃度は、ICP(Inductively coupling plasma:誘導結合プラズマ)分析法によって求めることができる。また硫酸イオン濃度は、イオンクロマトグラフ法によって求めることができる。このイオンクロマトグラフ法によれば、後述する硫酸カルシウム系顔料、硫酸バリウム系顔料などと区別してチタン原子含有イオンと塩を形成可能な硫酸イオン(硫酸チタンなどに由来する硫酸イオンなど)の量を測定することができる。
そして前記塗膜は、所定粒径以上の体質顔料を含有している。所定粒径以上の体質顔料を使用することで、初期の流れ錆を防止できる。体質顔料の平均粒径(ストークス径)は、5μm以上、好ましくは6μm以上、さらに好ましくは7μm以上である。なお前記平均粒径の上限は特に限定されないが、塗膜面の美観を考慮すると、例えば30μm以下、好ましくは20μm以下、さらに好ましくは18μm以下が推奨される。
なお前記平均粒径(ストークス径)は、液中の粒子の動き易さと粒径との関係を規定するストークスの法則に基づいて算出される値であり、粒子のゆらぎ(ブラウン運動)から生じる乱れた光を測定することによって求めることができる。例えば、(株)堀場製作所製の「LA−500レーザー回折粒度分布測定装置」を用いることによって測定できる。
前記体質顔料とは、塗料の分野では、着色顔料とは異なる目的で使用されるものである。すなわち着色顔料が塗料の着色を目的とするのに対して、体質顔料は着色性とは無関係に使用される。この体質顔料は、着色の点以外では、着色顔料と類似の性質を持つ粉末であって、主として増量剤として使用されることが多く、被膜硬度を高めるために使用される場合もある。本発明では上述したように、初期の流れ錆を防止する為に使用する。
体質顔料としては、例えば、炭酸カルシウム系顔料(白亜、寒水クレー、ごふん、炭酸カルシウムなど)、硫酸カルシウム系顔料(せっこうなど)などのCa含有顔料;硫酸バリウム系顔料(バライト粉など)などのBa含有顔料;ケイ酸アルミニウム系顔料(クレイ、カオリンなど)、ケイ酸マグネシウム系顔料(タルクなど)、ケイ酸系顔料(けい石粉、けいそう土など)、シリカなどのSi含有顔料;水酸化アルミニウム系顔料(アルミナなど)などのAl含有顔料;酸化チタンなどのTi含有顔料;マイカなどが挙げられる。
前記所定粒径の体質顔料の量は、塗膜中、例えば5質量%以上(好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上)、55質量%以下(好ましくは53質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下)程度の範囲から設定できる。
なお本発明は、上記所定粒径未満の体質顔料の使用を排除するものではない。所定粒径未満の体質顔料を使用する場合でも、所定粒径の体質顔料は上記範囲で使用するのが望ましい。
さらに前記塗膜は、着色顔料をも含有している。塗膜に着色顔料を添加すると、鋼材表面の安定錆形成過程を外部から隠すことができ、鋼材の美観を高めることができる。また色は、塗膜が将来的に損傷又は剥落しても外観を損なわないようにするため、安定錆が形成された鋼材表面と類似の色が好まれる。従って着色顔料としては、例えば、黄・赤・褐色系顔料[酸化鉄黄、マース黄、べんがら、黄土、シーンナ、アンバーなどの鉄系顔料(Fe23系顔料)など]を、必要に応じて黒色顔料(カーボンブラック、アセチレンブラック、松煙、黒鉛、アイボリーブラック、ボーンブラック、パインブラックなどの炭素系黒色顔料;マンガン黒などのマンガン系黒色顔料;酸化鉄黒などの酸化鉄系黒色顔料;イルメナイトブラックなど)などが推奨される。該好ましい着色顔料は、他の着色顔料、体質顔料(所定粒径未満の体質顔料など)などと混合して色合いを調製した着色顔料混合物として使用するのが簡便である。
着色顔料の塗膜中の量(混合する場合は着色顔料の総量)は、目隠し効果を発揮できる限り特に限定されないが、例えば3〜40質量%程度、好ましくは5〜35質量%程度、さらに好ましくは8〜32質量%程度の範囲から選択できる。
本発明の塗膜は、必要に応じてリン系防錆顔料を含有しているのが望ましい。好ましいリン系防錆顔料は、Feよりも電位が卑な金属(Al、Mg、Ca、Znなど)と、リン含有酸[リン酸、ポリリン酸、リンモリブデン酸など]との塩である。これらリン系防錆顔料は、Feの溶出抑制能を有しており、またFeに吸着して鋼材の耐食性を高めるのに有効である。そのため安定錆による防錆効果と相俟って、さらに鋼材の防食性を高めることができる。
前記リン系防錆顔料としては、例えば、リン酸亜鉛、トリポリリン酸アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウムなどが挙げられる。
リン系防錆顔料は、粒径が小さい方が望ましい。粒径が小さいほど、比表面積を大きくでき、耐食向上効果を高めることができる。さらなる耐食向上効果を求める場合には、リン系防錆顔料の平均粒径(ストークス径)は、例えば、4μm以下程度、好ましくは0.01〜3μm程度、さらに好ましくは0.1〜2μm程度とするのが推奨される。
リン系防錆顔料の平均粒径(ストークス径)の測定原理は、上記体質顔料の平均粒径(ストークス径)の場合と同じであり、例えばベックマンコールター社製の「MODEL N4 SD」を用いて測定できる。
リン系防錆顔料の量は、塗膜中、例えば3〜30質量%程度、好ましくは5〜20質量%程度、さらに好ましくは8〜16質量%程度の範囲から設定できる。
なお全ての顔料(体質顔料、着色顔料、防錆顔料など)の塗膜中の総量は、塗料の塗布性を考慮して、例えば80質量%以下、好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下程度に設定しておくことが推奨される。
さらに前記塗膜は、必要に応じて、可塑剤、乾燥促進剤、界面活性剤、分散剤、酸化防止剤などの種々の添加剤を含有していてもよい。
前記塗膜を形成する樹脂は特に限定されず、熱可塑性樹脂であってもよく熱硬化性樹脂であってもよい。樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ポリウレタン樹脂、アルデヒド樹脂、ケトン樹脂、クマロン樹脂、マレイン酸樹脂、ビニル樹脂、ブチラール樹脂、フッ素樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリオレフィン樹脂、セルロース誘導体などが挙げられる。好ましい樹脂は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ブチラール樹脂、セルロース誘導体などである。本発明で使用される硫酸チタン及びその等価体(イオン性チタン)は、塗料調合中に塗料のゲル化を引き起こす可能性があるが、前記好ましい樹脂を使用すればこのような虞がない。また硫酸チタン及びその等価体は、前記好ましい樹脂とは相溶性にも優れている。
塗膜の膜厚は、安定錆を形成して防錆効果を発揮できる限り特に限定されないが、例えば5〜100μm程度、好ましくは10〜70μm程度、さらに好ましくは15〜50μm程度である。
塗膜は鋼材全体を被覆していてもよいが、所望により鋼材の一部を被覆していてもよい。
鋼材は、安定錆を形成可能である限り特に限定されない。安定錆を形成可能な鋼(耐候性鋼)としては、例えば、日本工業規格(JIS G3114、JIS G3125、JIS G7101、JIS G7102など)に規定されている耐候性鋼、海岸海浜耐候性鋼(例えば、前記日本工業規格に規定される耐候性鋼をベースに、Cuを0.5〜1.5%程度、Niを0.5〜1.5%程度、Tiを0.01〜0.1%程度に添加乃至制御した鋼;特に1%Cu−1%Ni−0.05%Ti添加鋼)などが好適に使用できる。
本発明の塗膜処理鋼材は、樹脂、硫酸チタン(その等価体を含む)、着色顔料、体質顔料、及び必要に応じて他の添加剤を適当な溶剤(有機溶剤、水系溶剤、エマルジョン系溶剤など)に溶解及び分散させて安定錆形成剤(塗料)を調合した後、該安定錆形成剤を鋼材表面に塗布し、乾燥、硬化等させることによって製造できる。安定錆形成剤中の各種成分(樹脂、硫酸チタン、着色顔料、体質顔料など)の濃度は、固形分の総量を100質量%としたときの濃度で考えれば、上記塗膜中の濃度と同等である。
本発明の塗膜処理鋼材は、橋梁、建築物などの屋外で使用される鋼構造物に好適に使用されるが、耐食性が求められる限り、用途は特に限定されない。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
実験例1〜21
黒色顔料(カーボン)及びFe23系顔料に、アルミナシリケート(平均粒径1.8μm)を加えて着色顔料混合物を予め調製した。
ポリビニルブチラール樹脂溶液、アクリル樹脂溶液、又はセルロース樹脂溶液に、硫酸チタン、前記混合着色顔料混合物、種々の粒径の体質顔料(硫酸バリウム)、他の顔料、及び必要に応じてリン系防錆顔料(平均粒径0.3μmのリン酸マグネシウム又は平均粒径1.6μmのトリポリリン酸2水素アルミニウム)を加えて塗料(溶剤はキシレン/トルエン=95/5(質量比)のキシレン−トルエン混合溶剤)を調製した。なお前記硫酸チタン、着色顔料、体質顔料、リン系防錆顔料の配合量は下記表1〜4に示した通りである。これらのうち硫酸チタンは水溶液として添加したが、硫酸チタン量は純分(添加量×水溶液中の濃度)で示す。また塗料中の全ての顔料の配合量[PWC;Pigment Weight Concentration。PWC=顔料の合計質量/(顔料の合計質量+樹脂固形分の質量)]は、約40〜70質量%にした。
得られた塗料をSPCC冷延鋼板(70mm×150mm×厚さ0.8mm)に塗布した後、乾燥した。膜厚は下記表1〜4に示した通りである。
試験例1[初期の流れ錆]
実験例1〜21で得られた被覆鋼材1の錆発生特性を図1に示すようにして評価した。すなわち被覆鋼材1の表面がコンクリートブロック2の側面とほぼ面一になるようにしながら、該被覆鋼材1をコンクリートブロック2の上に垂直に固定した。3%の塩水を1週間に1回の頻度で表面に噴霧し、3周間後のコンクリートブロック上に付着している錆(流れ錆)3の有無を観察し、下記基準で評価した。
◎:流れ錆無し
○:流れ錆軽微
△:流れ錆有り
×:流れ錆多い、又は鋼材表面に錆発生
結果を表1〜4に示す。
Figure 2005053059
Figure 2005053059
Figure 2005053059
Figure 2005053059
表4から明らかなように、体質顔料(硫酸Ba)の平均粒径が小さい例(No.16〜17、19、21)、並びに体質顔料(硫酸Ba)の平均粒径が適切であっても硫酸Tiが多すぎる例(No.18、20)では、初期に流れ錆が発生していた。
これに対して表1〜3から明らかなように、体質顔料(硫酸Ba)の平均粒径が適切であり、かつ硫酸Ti量が適切である例(No.1〜15)では、初期の流れ錆が抑制されていた。
試験例2[長期の外観変化]
実験例1〜15で得られた被覆鋼材(初期の流れ錆を抑制できる被覆鋼材)を、兵庫県加古川市の岸壁に設置し、3%の塩水を1週間に1回の頻度で鋼材表面に噴霧した。6ヶ月後の錆の発生状況を観察し、下記基準で評価した。
◎:錆の発生が観察されない
○:軽微な錆が発生しているのが認められる
×:全面に錆が発生しているのが認められる
結果は上記表1〜3に示した。
表1〜3から明らかなように、実験例1〜15の被覆鋼材は、初期の流れ錆を抑制できるだけでなく、安定錆が効果的に形成される為に塗膜の上からは錆の発生が観察されなかった。
図1は実施例の試験方法を説明するための概略斜視図である。
符号の説明
1: 被覆鋼材
2: コンクリートブロック
3: 流れ錆

Claims (6)

  1. 安定錆を形成する為の塗膜が表面に形成されている塗膜処理鋼材において、
    該塗膜は樹脂成分を100質量%としたとき0.03〜3.6質量%の硫酸チタンが配合されており、
    さらに該塗膜は着色顔料及び平均粒径5μm以上の体質顔料を含有していることを特徴とする流れ錆抑制能に優れた塗膜処理鋼材。
  2. 前記体質顔料の塗膜中の量は5〜55質量%である請求項1に記載の塗膜処理鋼材。
  3. 前記着色顔料は、鉄系顔料を含むものである請求項1又は2に記載の塗膜処理鋼材。
  4. 前記塗膜は、さらにリン系防錆顔料を含有している請求項1〜3のいずれかに記載の塗膜処理鋼材。
  5. 前記塗膜の厚さは5〜100μmである請求項1〜4のいずれかに記載の塗膜処理鋼材。
  6. 樹脂成分を100質量%としたとき0.03〜3.6質量%の硫酸チタンを含有しており、さらに着色顔料及び平均粒径5μm以上の体質顔料を含有していることを特徴とする安定錆形成剤。
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