JP3618228B2 - 錆安定化処理鋼材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は錆安定化処理鋼材に関し、詳細には橋梁や建造物等の屋外で使用される鋼構造物に好適な腐食の進行を抑制する錆安定化処理鋼材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鋼材は、強度,靱性,加工性等に優れ、しかも安価であることから橋梁や建造物等に広く利用されているが、そのままでは腐食するので、屋外使用物の場合には、めっきや塗装などで鋼材表面を覆い防錆処理を施すことが一般的である。しかし、めっき等の防錆処理はコストが高く、また塗装では定期的に塗り直し等の補修が必要である。
【0003】
そこで塗装やめっき等の防錆処理をすることなく、裸使用し、その表面に生成する鉄錆の保護作用により長期間に亘って使用するという考えの鋼材として耐候性鋼が開発されている。この鋼材は鋼中にCu,P,Cr等を含有させることにより、その表面に生成した鉄錆が緻密な安定錆となるようにし、鋼内部の腐食を抑制しようとするものである。
【0004】
但し、耐候性鋼表面に安定錆が生成するには通常数年の期間が必要とされ、安定錆が生成するまでの期間は鋼材表面から錆汁が流れ周囲を汚染し美感的にも評判が悪い。また海塩粒子の飛散が多い海岸近郊や、雨水が溜って乾燥しない様な場所等では安定錆が生成せず問題となっている。
【0005】
このため、耐候性鋼表面に安定錆を生成させる処理として過去から種々の技術が提案されてきた。例えば特公昭53−22530号公報には、安定錆の主成分である酸化第一鉄及び酸化第二鉄と、PbやNi等の耐候性を有する元素の単体または化合物とブチラール樹脂等を有する混合処理液を表面処理に施すことにより人工的に安定錆を形成する方法が開示されている。また特開平6−226198号公報には、硫酸クロム及び/又は硫酸銅を含む有機樹脂塗料で表面を被覆することにより耐候性を向上させる表面処理鋼材が開示されている。
【0006】
しかし、前者の技術において塗布物は一種の塗料であり、その下の鋼表面に錆が生成し安定化するまで十か月以上の長期間が必要である。従って、本技術は一種の下塗り塗装と見なされており、実際には本処理液の上に更に上塗り塗装を施して使用されている場合がほとんどである。
【0007】
また耐候性鋼は必ずしも無塗装で使用されるわけではなく、塗装される場合もある。これは、前述のように、使用場所や使用部位によっては安定錆とならない環境があるためである。特に水が溜りやすいフランジ上部や排水溝の周辺等は裸使用の場合でも部分塗装して腐食を抑制することが効果的に耐候性鋼を使用する場合のポイントとなる。
【0008】
錆安定化処理は鋼材を橋梁等の構造物に加工し、現地で施工した後、処理される場合もあるが、最近では製鉄所でミルスケールを除去し錆安定化処理を行ってから出荷する所謂プライマー鋼材の形態を取る場合が多い。このプライマー鋼材の場合には鋼材全面に錆安定化処理を行うことが原則となるため、部分塗装する場合には錆安定化処理の上に更に塗装を塗り重ねることになる。このような部分塗装部は塗装のピンホールや疵等の欠陥部から塗装の膨れが発生し、劣化していくが、後者の先行技術(特開平6−226198号公報)に係る有機樹脂塗料が下層にあると、欠陥部からの塗膜膨れが一般の下塗り塗料より大きい。これは、塗膜を透過した水に溶解した3価クロムイオンや銅イオンが鋼と塗装界面でのpHを低下させ、鋼の溶解を促進する結果塗膜膨れが大きくなるものと推定される。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に着目してなされたものであって、裸使用時には錆安定化を促進し、流れ錆を生成せず、黒褐色の安定錆を早期に生成せしめると共に、塗装使用の場合には塗膜のピンホールや疵からの塗膜膨れを効果的に抑制せしめる錆安定化処理された鋼材を提供しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決した本発明の錆安定化処理鋼材とは、鋼材上に、Tiおよび/またはZrの硫酸塩(オキシ硫酸塩や亜硫酸塩を含む。但し、Tiの硫酸塩を除く)を0.1〜50g/m2塗布してなることを要旨とするものである。
【0011】
また、前記Tiおよび/またはZrの硫酸塩を0.5〜50重量%含有し、乾燥膜厚が5〜100μmである樹脂膜を鋼材表面に形成したものであってもよく、その場合には、樹脂膜に用いる樹脂の数平均分子量は500〜30000が望ましい。
【0012】
更に上記の本発明に係る錆安定化処理鋼材には、厚さ10〜300μmの塗装が施されていても良い。
【0013】
前記鋼材としては、Co,Ti,Zr,Vよりなる群から選択される1種以上を合計で0.05重量%以上含有し、更にPを0.05〜0.4重量%含有してなる鋼であることが推奨される。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、耐候性鋼に形成される安定錆の生成促進を図る技術について鋭意研究を重ねた結果、Co,Mn,Ti,Zr,Vの硫酸塩を鋼材上に塗布すれば、安定錆生成を飛躍的に促進することができることを見出し、本発明に想到した。
【0015】
これらの硫酸塩を鋼材表面に塗布することによって安定化錆の早期生成を図れるのは、次のような作用によるものと推測される。すなわち、これらの硫酸塩は鋼材表面に塗布されると、雨や結露等による水分にて溶解し、陽イオンであるCo,Mn,Ti,Zr,Vの金属イオンと、陰イオンである硫酸イオンとに解離する。上記Co等の金属イオンは、鋼材の腐食によって生成する鉄イオンが、α,β,γのオキシ水酸化鉄や四三酸化鉄等の鉄錆となって鋼材表面に付着する際に、鉄錆の結晶を微細化するという作用を有し、しかも安定な生成物であるα−オキシ水酸化鉄の生成を促進するという作用を有しており、生成する錆の安定性やバリア性を高める効果を発揮するものである。上記のCo,Mn,Ti,Zr,Vの金属イオンの中でも、Co(II),Mn(II),Ti(IV),Zr(IV),V(IV)の硫酸塩は、特に効果的であることから望ましい。
【0016】
一方、陰イオンである硫酸イオンは、一旦は腐食反応により生成する鉄イオンと結合して硫酸鉄となるが、水酸化鉄と硫酸に加水分解され、この硫酸が素地鋼を侵食して腐食を促進させる。この様に、硫酸イオンは、鉄錆生成において、一種の触媒として作用し、結果的には安定錆の生成促進に寄与しているのである。但し、このような硫酸イオンの触媒的作用は塗装使用の場合には、塗膜下の腐食を促進し、塗膜のピンホールや、疵部からの塗膜膨れを促進することがある。Cr(III)やCu(II)などのイオンはこのような塗膜下腐食を促進するので好ましくない。一方、Co,Mn,Ti,Zr,Vの金属イオンにはこの様な塗膜下腐食促進作用がないので好ましい。
【0017】
これら硫酸塩の塗布量としては、Co,Mn,Ti,Zr,Vの硫酸塩の1種または2種以上を0.1〜50g/m2 鋼材に塗布する必要がある。これは硫酸塩が0.1g/m2 未満では裸使用時に錆安定化作用がないためであり、50g/m2 を超えると雨水等に溶出して環境を汚染する恐れが生じると共に、塗装使用時には塗膜膨れが増加するためである。
【0018】
この様なCo,Mn,Ti,Zr,Vの硫酸塩は、鋼材表面を研削,ショットブラスト,酸洗いなどにより脱スケールしたのち、上記硫酸塩を水溶液として鋼材表面に塗布し乾燥すれば、鋼材表面に付着させることができる。但し、この様な方法では、鋼材表面に多量の硫酸塩を一度に塗布できないばかりでなく、塗布した鋼材に、雨や結露などにより水分がかかった際には、硫酸塩が一度に溶解して流れ出し、表面に付着した硫酸塩が無駄になるのみならず、流れ出した水に溶解した硫酸塩は環境を汚染する。
【0019】
このため、硫酸塩を樹脂中に含有させ、この樹脂を鋼板に塗布する方法は、重ね塗りや厚塗りができて鋼材表面に多量の硫酸塩を塗布することができ、しかも雨水などによって鋼材表面の硫酸塩が一度に流出することも防止できるので好ましい方法として推奨される。
【0020】
樹脂の種類としては、特に限定されるものではなく、例えばエポキシ樹脂,アクリル樹脂,不飽和ポリエステル樹脂,アルキド樹脂,フェノール樹脂,アミノ樹脂,ポリウレタン樹脂,アルデヒド樹脂,ケトン樹脂,クマロン樹脂,マレイン酸樹脂,ビニル樹脂,ブチラール樹脂,フッ素樹脂,メラミン樹脂,尿素樹脂,ポリオレフィン樹脂などが使用可能であるが、この中でもエポキシ樹脂,アクリル樹脂,不飽和ポリエステル樹脂,ウレタン樹脂が本発明において好適に使用される。本発明に係る金属の硫酸塩は、雨や結露等による水に溶解して金属陽イオンを生成する。かかる金属陽イオンは樹脂とカップリング反応を起こしやすく、カップリング反応が起きると、樹脂は高分子化しゲル化してしまうため、本発明の効果を得られなくなるおそれがある。このため、本発明で用いる樹脂は、上記金属陽イオンとカップリング反応を生じず、かつ上記金属陽イオンと相溶解性がある樹脂が望ましく、上記のようにエポキシ樹脂,アクリル樹脂,不飽和ポリエステル樹脂,ウレタン樹脂が本発明において好適に使用されるのである。また、この上に塗装する場合のことを考慮すると、塗料との密着性の良好な樹脂であるエポキシ樹脂等が好ましい。
【0021】
また、樹脂の形態も有機溶剤系,水溶性,エマルジョン系とも使用可能であるが、Co,Mn,Ti,Zr,Vの硫酸塩が水に可溶性であることから、水溶液の状態で混合するのに適した水溶性やエマルジョン系の樹脂が好ましい。また溶剤系樹脂の場合には、水と相溶性のあるアルコール系,ケトン系,エステル系の溶剤を用いることが好ましい。
【0022】
硫酸塩を樹脂に含有させてから鋼材に塗布する場合には、樹脂中の硫酸塩含有量は、0.5〜50重量%であることが望ましい。これは、含有量が0.5%未満では樹脂中を透過した水分により硫酸塩が溶解する量が少なく、鋼材表面に安定錆を生成するのに効果があるだけの硫酸塩を供給できないため、安定錆生成効果が少ないためである。一方、硫酸塩含有量が50%を超えると樹脂中に硫酸塩を安定な状態で含有させることが困難である。
【0023】
また樹脂の数平均分子量は500以上30000以下のものが好ましい。数平均分子量が500未満では、紫外線による樹脂分解が早く、錆安定化作用が発揮されないことがあり、数平均分子量が30000を超えると、高分子量であるため樹脂の溶液粘度が高くなりすぎ、鋼材表面への塗装作業性が低下する等樹脂の取扱いが困難になる。
【0024】
前記樹脂膜の乾燥膜厚は5μm以上100μm以下であるのがよい。乾燥膜厚が5μm未満では錆安定化作用が少なくなり、他方100μmを超えると樹脂中に含有させた硫酸塩が雨水等に溶出して環境を汚染するおそれが生じるためである。樹脂膜の膜厚を所望の範囲とするには、1回当たりの塗布量を調整する、あるいは複数回塗布を繰り返すことにより調整すればよい。
【0025】
樹脂膜中には、本発明の効果を損なわない範囲において、着色剤や可塑剤、乾燥促進剤、界面活性剤等の補助成分を添加してもよい。例えば、錆が生成する前後の色調差を小さくすることを目的として、樹脂中に酸化鉄やカーボンブラック等を混合して予め茶褐色、黒褐色の錆色を着色してもよく、更には、シリカ,炭酸カルシウム,硫酸カルシウム,硫酸バリウム,二酸化チタンなどの顔料を添加してもよい。
【0026】
以上述べた硫酸塩を塗布した鋼材には、その上に塗装を施しても塗膜ふくれが大きくなる等の不都合は生じない。塗膜の厚さは防錆の観点から10μm以上が好ましく、また経済性からは300μm以下が望ましい。
【0027】
塗料の種類は、特に限定されるものではないが、フタル酸系,塩化ゴム系,エポキシ系,ウレタン系等の塗料が使用できる。
【0028】
次に、母材である鋼材の成分として特に限定されるものではなく、どの様な鋼材でも本処理を行えば、裸使用の際の安定錆生成と塗料使用の際の塗膜膨れ抑制の両作用があるが、鋼材の成分としてCo,Ti,Zr,Vを合計で0.05重量%以上含有し、更にPを0.05〜0.4重量%含有する場合には、鋼材表面に塗布したCo,Ti,Zr,Vの硫酸塩との相乗効果により、裸使用の際の安定錆生成と塗装使用の際の塗膜膨れ抑制の両効果を更に促進させる。
【0029】
これは、腐食により鋼材に含有されるCo,Ti,Zr,V,Pが腐食により溶解してCo,Ti,Zr,V,りん酸の各イオンとなり、これらのイオンが表面に塗布したCo,Mn,Ti,Zr,Vの硫酸塩が溶解して生成したイオンと混合されて、すでに述べた作用により裸使用の際の安定錆生成と塗装使用の際の塗膜膨れ抑制の両効果をさらに促進させるのである。
【0030】
また本発明で使用する鋼材としては、軌条,棒鋼,形鋼,線材,厚板,薄板,ブリキ,高級仕上げ鋼板,ケイ素鋼板,鋼管,外輪等いかなる種類であってもよい。
【0031】
本発明の錆安定化処理鋼材は、樹脂膜に使用する樹脂を溶解した有機溶剤中に、本発明に係る硫酸塩及び必要によりその他の添加剤を添加して処理溶液とし、かかる処理溶液を鋼材表面に塗布することにより製造することができる。
【0032】
このとき、密着性の点から鋼材表面の素地調整をしておくことが望ましい。すなわち、溶剤洗い法や溶剤蒸気脱脂法、アルカリ脱脂法等による油脂類の除去;ブラスト法や手作業法,酸洗い法,電解酸洗い法等による錆の除去といった鋼材表面の素地調整を行うことにより、鋼材と樹脂膜との密着性が増し、長期耐久性が保持できるようになる。
【0033】
ここで有機溶剤は、使用する樹脂の種類によって決定されるものであるが、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;n−ヘキサン,ミネラルスピリット,3号揮発油,灯油等の脂肪族系溶剤;アセトン,メチルエチルケトン,シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;メタノール,エタノール,イソプロパノール,ブタノール等のアルコール系溶剤;酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸ブチル等のエステル系溶剤;エーテル,グリコール・モノメチルエーテル,グリコール・ジメチルエーテル等グリコールエーテル系溶剤が挙げられる。
【0034】
鋼材表面への該処理溶液の塗布は、公知の塗布方法を使用することができ、例えば刷毛塗り,ローラ塗り,カーテンフロー塗り,エアスプレー,エアレススプレー,流し塗り,つけ塗り,タンポずり等を用いることができる。
【0035】
Co,Mn,Ti,Zr,Vの硫酸塩の少なくとも一方を表面樹脂膜中に含有させた本発明の鋼材は、例えば建築用鉄筋材,機械,船舶用,ボルト,リベット,橋梁,車両,鉄塔,鉱山施設,ドラム缶,亜鉛メッキ原板,自動車用部品,鉄扉,家具類,ガス管等に広く用いることができる。
【0036】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の主旨に徴して設計変更することはいずれも本発明の技術的範囲内に含まれるものである。
【0037】
【実施例】
実施例1
表1に成分を示す5種の鋼材を厚さ4mm,幅50mm,長さ150mmのサイズに切断し、表面を研削加工して試験片とした(尚、鋼種Aは普通鋼、鋼種Bは耐候性鋼である)。
【0038】
【表1】
【0039】
上記試験片に表2に示す種々の硫酸塩を用い、水溶液として上記試験片の表面に塗布するか、或いは樹脂に含有させて上記試験片の表面に塗布した。
【0040】
塗布後の鋼材は屋外に6ヶ月暴露試験して裸使用の状態での耐食性を調査した。腐食を促進するため毎週1回0.1%食塩水を噴霧した。評価は外観を目視で観察し、流れ錆,色調,剥離の3項目について行った。
【0041】
尚、流れ錆は、サンプル端部のシール材下部における流れ錆の付着状況を以下の様に評価した。
◎:流れ錆なし
○:流れ錆極僅か
△:流れ錆あり
×:流れ錆多量
また、暴露試験後の試験片を布で軽くこすって錆の剥離の有無(○:剥離なし,×:剥離あり)を調べた。
【0042】
更に、一部の鋼材は、上記硫酸塩を塗布した後、鉛系錆止めペイント(35μm×2回)と、長油性フタル酸樹脂塗料(中塗り30μm、上塗り25μm)を塗布した後、その表面に鋼素地まで達するクロスカットを入れ、兵庫県加古川市において屋外に6ヶ月暴露した。腐食を促進するため毎週1回0.1%食塩水を噴霧した。塗装後耐食性の評価を目的としてクロスカットからの膨れ幅を測定した。
結果は表2に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
No.1〜5,No.7〜8,No.10〜16の試験片では、裸暴露材の表面に黒褐色の剥離しない安定錆が生成しているが、No.6の比較例では茶褐色の剥離錆となり錆は安定化していなかった。
【0045】
またNo.9の硫酸塩塗布量が過大なものは塗装後の膨れが大きくなっている。
【0046】
No.17以降の硫酸塩を樹脂に混合したものは、流れ錆が全く発生しておらず、裸使用時の錆安定性が樹脂を使用しないものより更によい。
【0047】
No.14〜16,No.29〜31,No.35の中にCo,Ti,Zr,Vを0.05%以上含有し更にPを0.05〜0.4%の範囲で含有する鋼を使用した場合には塗装板のクロスカットからの膨れ幅がこれ以外の鋼の場合に比べ小さくなっている。
【0048】
上記の如く本発明の鋼材は裸使用時の錆安定性と塗装使用時の塗膜膨れの両方に優れており、橋梁等の構造物その他への広い応用が期待できる。
【0049】
実施例2
エポキシ系樹脂をメチルエチルケトン(MEK)に溶解し、硫酸チタンの0.5wt%水溶液をさらに添加して処理溶液を作成した。この処理溶液を表1の鋼種Cの表面に、バーコーターを用いて乾燥膜厚が20μmとなるように塗布し、室温で24時間乾燥させて、鋼材上に硫酸チタン塩を含有した樹脂膜を形成し、No.41の試験片を得た。
【0050】
更に、表3及び表4に示す様に、硫酸塩の種類と含有量、樹脂の種類と数平均分子量及び膜厚を種々に変えて、No.42〜62,No.71〜87の試験片を作製した。
【0051】
この様にして樹脂膜を形成した上記試験片を用いて、兵庫県加古川市において屋外で6ヶ月間の暴露試験を行い、鋼材の裸使用状態での耐腐食性を調査した。この間、腐食を促進させるために、0.1%の食塩水を鋼材に週1回継続して噴霧した。
【0052】
処理溶液の安定性と鋼材の塗装外観を下記の様にして評価すると共に、実施例1と同様にして6ヶ月後の鋼材の流れ錆、剥離錆、色調を目視により評価した。結果は表3及び表4に示す。尚、表3中においてPE系とはポリエステル系を意味し、EP系とはエポキシ系を示し、AC系はアクリル系を意味する。
【0053】
(処理溶液の安定性)
処理溶液を作成した直後の溶液粘度をB型粘度計で測定し、24時間経過後に再度溶液粘度を測定して、溶液粘度の変化から以下の様に評価した。
○:24時間経過後の溶液粘度が、処理溶液作成直後の溶液粘度の2倍未満
×:24時間経過後の溶液粘度が、処理溶液作成直後の溶液粘度の2倍以上
【0054】
(塗装外観)
試験片表面に処理溶液をバーコート塗装し、乾燥した後塗膜表面を目視観察して以下の様に評価した。
○:外観良好
×:バー目が発生し、表面に凹凸が発生して外観不良
【0055】
【表3】
【0056】
【表4】
【0057】
No.41〜64は、いずれも本発明例であり、処理溶液は良好な安定性を示し、これら実施例のサンプル鋼材表面には黒褐色の剥離しない安定錆が生成しており良好な耐候性を示した。
【0058】
一方、No.71〜85は、本発明の要件を満足しない比較例であり、No.71〜83では、処理溶液は良好な安定性を示しているものの、サンプル鋼材表面には茶褐色の剥離錆が生成し、またNo.84〜85は、処理溶液の安定性が悪く、塗装外観も悪かった。
【0059】
【発明の効果】
本発明は以上の様に構成されているので、裸使用時には錆安定化を促進し、流れ錆を生成せず、黒褐色の安定錆を早期に生成せしめると共に、塗装使用の場合には塗膜のピンホールや疵からの塗膜膨れを効果的に抑制せしめる錆安定化処理された鋼材が提供できることとなった。
Claims (5)
- 鋼材上に、Tiおよび/またはZrの硫酸塩(但し、Tiの硫酸塩を除く)を0.1〜50g/m2塗布してなることを特徴とする錆安定化処理鋼材。
- Tiおよび/またはZrの硫酸塩を0.5〜50重量%含有する樹脂膜が鋼材表面に形成され、かつ該樹脂膜の乾燥膜厚が5〜100μmであることを特徴とする錆安定化処理鋼材。
- 前記樹脂膜に用いる樹脂の数平均分子量が500〜30000である請求項2に記載の錆安定化処理鋼材。
- 更に厚さ10〜300μmの塗装が施されてなる請求項1〜3のいずれかに記載の錆安定化処理鋼材。
- 前記鋼材が、Co,Ti,Zr,Vよりなる群から選択される1種以上を合計で0.05重量%以上含有し、更にPを0.05〜0.4重量%含有してなる鋼である請求項1〜4のいずれかに記載の錆安定化処理鋼材。
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