JP3475908B2 - 亜鉛系めっき材の耐候性改善方法 - Google Patents

亜鉛系めっき材の耐候性改善方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は亜鉛または亜鉛合金
めっきが施された亜鉛系めっき材の耐候性を改善するた
めの方法と処理液、および耐候性が改善された亜鉛系め
っき材に関する。本発明は特に、無塗装で屋外に保管中
あるいは使用中の亜鉛系めっき製品の耐食性の劣化を防
止するのに有効である。
【0002】
【従来の技術】亜鉛または亜鉛合金めっきは、鉄鋼製品
の防錆力に優れ、安価であるため、鋼板や線材といった
一次加工品から、プレス成形等の各種成形加工法により
得られる大物〜小物部品といった二次加工品に至るま
で、鉄鋼のめっき法として最も広く利用されている。
【0003】特に近年では、自動車ボディーもめっき鋼
板の採用が普通になるなど、塗装下地にも亜鉛系めっき
を施すことが多く、亜鉛系めっきの適用部位が広がって
いる。また、特に自動車用の場合、ボルトやナットとい
った小物部品まで亜鉛系めっきを施して、部品からの耐
食性劣化を防ぐことも普通になってきている。
【0004】亜鉛系めっきの後処理として、耐食性、塗
装密着性、塗装後耐食性などのいずれか1または2以上
の特性を改善するため、化成処理と呼ばれる化学的処理
が施されることが多い。代表的な化成処理はクロメート
処理とリン酸塩処理である。クロメート処理は耐食性の
改善効果が大きい処理であり、リン酸塩処理は主に塗装
密着性の改善を目的とした処理である。
【0005】6価クロムを含有する処理液を使用するク
ロメート処理における作業環境の悪化や排水処理の煩雑
さを解消するため、3価クロムだけを含有する化成処理
液、さらにはクロムを全く含有しない、ノンクロムまた
はクロムフリーと呼ばれる化成処理液が開発された。最
近では、ノンクロム化成処理液の性能が向上し、クロメ
ート処理に劣らない耐食性改善効果が得られるようにな
ってきているので、亜鉛系めっき材にも適用されるよう
になってきた。
【0006】また、特に無塗装で使用されるか、成形加
工後に塗装される亜鉛系めっき材については、使用中ま
たは加工中のめっき表面の傷つき防止を主な目的とし
て、化成処理しためっき表面を、コーティングによって
硬質の薄い透明な無機もしくは有機皮膜で被覆すること
も行われている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】亜鉛系めっき材は前述
したように防錆力に優れ、特にその上に化成処理してか
ら塗装を施すと、塗装による保護効果もあって、耐食性
は非常に良好となる。しかし、最近になって、東南アジ
ア等の紫外線の強い地域への工場移転に伴って、このよ
うな地域で屋外環境にて保管または使用される亜鉛系め
っき材の耐食性能が経時的に劣化することが問題となっ
てきた。例えば、上記のように化成処理のみ、または化
成処理とコーティングによる後処理を施した亜鉛系めっ
き材を、このような地域で日光にさらされる環境で長期
保管してから塗装を行うと、耐食性の低下や塗装の剥離
といった現象が起こる。
【0008】つまり、亜鉛系めっき材の耐候性は、無塗
装の状態で東南アジア等の赤道に近い紫外線の強い地域
での屋外露出に耐えるほどの高さにはないということで
ある。亜鉛系めっき材の耐候性については、これまでほ
とんど着目されたことがなかった。しかし、例えば自動
車部品といった、亜鉛系めっき施した部品の東南アジア
への輸出が増え、部品の一部は屋外または屋外に近い環
境で保管されることが多いため、亜鉛系めっき材の耐候
性の改善が課題となってきた。
【0009】亜鉛系めっき材の耐候性の改善は、何も東
南アジアで重要なだけではない。国内においても、例え
ば、建築・土木材料として、比較的厚め付の亜鉛系めっ
き材が無塗装で屋外使用されることがある。この場合に
も、亜鉛系めっき材の耐候性の改善により、屋外への長
期露出中の耐食性の低下が防止され、製品の使用寿命が
延長されるといった利益が得られる。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、亜鉛系め
っき材を無塗装で屋外に長期露出した場合に耐食性の低
下が起こらないように、その耐候性を簡便な手法で改善
すべく検討した結果、亜鉛系めっきの後処理で使用する
化成処理液またはコーティング液に造膜成分の一部とし
てCoイオンおよび/またはMnイオンの供給源を添加し、
Coおよび/またはMnを含有する皮膜を亜鉛系めっき上に
形成することにより、耐候性が改善されることを見出し
た。
【0011】Coおよび/またはMnを含有する皮膜が亜鉛
系めっきの耐候性を改善する理由は解明されていない
が、CoやMnには下地と防錆皮膜(化成処理皮膜またはコ
ーティング皮膜)との密着性を向上させる働きがあり、
これが耐候性の向上に寄与しているのではないかと推測
される。
【0012】 ここに、本発明は、亜鉛または亜鉛合金
めっきが施された亜鉛系めっき材の表面上に、コバルト
および/またはマンガンを含有する少なくとも1層の皮
膜を形成することを特徴とする、亜鉛系めっき材の無塗
装での耐候性を改善する方法。
【0013】別の側面からは、本発明は、亜鉛または亜
鉛合金めっきが施された亜鉛系めっき材のめっき表面上
にコバルトおよび/またはマンガンを含有する少なくと
も1層の皮膜を有することを特徴とする、無塗装で屋外
環境に置くのに適した、耐候性に優れた亜鉛系めっき材
である。屋外環境とは、屋外のみならず、日差しが入り
込むすべての環境を意味する。
【0014】前記皮膜は化成処理皮膜とコーティング皮
膜のいずれか一方または両方でよい。即ち、化成処理皮
膜とコーティング皮膜の両方を形成する場合には、その
いずれか一方または両方にCoおよび/またはMnを含有さ
せればよい。
【0015】本発明により、Coイオンおよび/またはMn
イオンを造膜成分として含有することを特徴とする、亜
鉛系めっき材の耐候性を改善するための処理液もまた提
供される。この処理液の造膜は化成処理またはコーティ
ングによって行うことができる。
【0016】本発明において、「化成処理」とは下地
(亜鉛系めっき) と処理液成分との間の反応、特に酸化
還元反応、により造膜する処理を意味し、「コーティン
グ」とは、化成処理後に行う、保護皮膜の形成処理を意
味する。コーティングは、下地(化成処理皮膜) と処理
液成分との反応が起こる場合と、起こらない場合があ
る。本発明は無塗装の亜鉛系めっき材の耐候性を改善す
ることを目的とするものであるから、コーティングは着
色顔料を実質的に含有しない。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明で耐候性を改善する亜鉛系
めっき材は特に制限されない。その形態は、鋼板、線
材、管材などの一次加工品と、プレス成形、鋳造、鍛
造、切削、穿孔等の各種の成形加工により形状付与され
た二次加工品のいずれでもよい。二次加工品は最終製品
と未完成品のいずれも含み、また部品であってもよい。
【0018】亜鉛系めっき材の基材は通常は鉄鋼である
が、これに限られるものではない。めっき種は純亜鉛と
亜鉛合金のいずれもでもよく、めっき法は電気めっきと
溶融めっきのいずれでもよい。めっきに適した亜鉛合金
の代表例は、Zn−Ni、Zn−Fe、Zn−Alであるが、これら
に限られない。亜鉛合金めっきは、耐食性が高く、建材
等への適用が増えている、溶融Zn−55%Al合金めっきの
ように、Znが少量元素である亜鉛合金めっきも包含す
る。また、合金化溶融亜鉛めっきのように、めっき後に
熱処理を経た亜鉛系めっき材でもよい。亜鉛系めっきの
付着量は従来と同様でよいが、特に制限されるものでは
ない。亜鉛系めっき材は、めっきを2回以上行った複層
めっき材でもよく、その場合には少なくとも1層のめっ
きが亜鉛系めっきであればよい。
【0019】本発明によれば、Coイオンおよび/または
Mnイオンを含有する処理液を用いて亜鉛系めっき材の表
面上に、Coおよび/またはMnを含有する皮膜を形成す
る。この皮膜は、めっきに直接接触させて設ける必要は
ない。例えば、めっき上に2層の皮膜を形成した場合、
Coおよび/またはMnは上と下のいずれの皮膜に含有させ
てもよい。
【0020】Coイオンおよび/またはMnイオンを含有す
る処理液は、Coおよび/またはMnを含有する皮膜を形成
できる造膜機能を有していれば特に制限されるものでは
ない。しかし、亜鉛系めっきの後処理として使われる処
理液にCoイオンおよび/またはMnイオンを含有させれ
ば、耐候性改善のための工程を追加せずに、従来法をそ
のまま利用して耐候性の改善を図ることができ、有利で
ある。その意味で、めっき後に行う化成処理とコーティ
ングのいずれか一方または両方で使用する処理液にCoイ
オンおよび/またはMnイオンを含有させ、本発明の耐候
性改善のための処理も兼ねさせることが好ましい。以下
では、この態様について説明する。
【0021】化成処理とコーティングの両方を行う場合
には、めっき金属 (特にZn) との反応が必要な化成処理
を先に行い、コーティングは後から行う。化成処理およ
び/またはコーティングを利用し、本発明に従って耐候
性改善のためのCoおよび/またはMn含有皮膜を形成する
場合、Coイオンおよび/またはMnイオンの供給源となる
化合物を処理液に添加することを除いて、一般に従来と
同様に処理を行えばよい。従って、例えば、市販の化成
処理液またはコーティング液を利用し、これに適当なCo
イオンおよび/またはMnイオンの供給源を添加し、溶解
させてから、従来と同様に処理を進めることにより、本
発明の耐候性改善を達成することができる。即ち、この
供給源化合物の処理液への添加という作業を除いて、従
来と工程は全く同様であり、耐候性改善のために特別の
処理を行う必要はない。
【0022】化成処理では、亜鉛系めっき材と化成処理
液成分との間で反応が起こる。従って、必要に応じて、
化成処理前に、亜鉛系めっき材の表面から酸化物皮膜を
除去して表面を活性化する処理を行う。溶融めっきの直
後に化成処理を行う場合、あるいは電気めっきの場合で
も、鋼板等の連続電気めっきライン内で電気めっき直後
に化成処理する場合には、表面は活性であるので、活性
化処理は一般に不要である。電気めっき後に乾燥した場
合、未乾燥でも二次加工品を電気めっきした場合 (めっ
き表面が有機光沢剤を吸着していることが多い) 、さら
には溶融めっき後に長時間経過した場合には、活性化処
理を施すことが好ましい。この活性化は、酸水溶液を用
いて、浸漬、噴霧等により行うことができる。その前
に、亜鉛系めっき材の表面が油等で汚れていれば、アル
カリ脱脂などの脱脂を行うことが好ましい。
【0023】化成処理の種類は特に制限されない。クロ
メート処理、リン酸塩処理、3価クロム処理、ノンクロ
ム化成処理のいずれでもよい。また、その付着量や形成
方法、形成条件にも制限はない。一般に、化成処理液
は、めっき表面のZnを溶解して皮膜中に取り込むよう
に、酸性pHに調整される。
【0024】クロメート処理には、反応型 (浸漬型) 、
塗布型、電解型などの処理方法があるが、そのいずれで
もよい。リン酸塩処理としてはリン酸亜鉛処理が最もよ
く利用されているが、他のリン酸塩処理でもよい。
【0025】ノンクロム化成処理には多様な組成の処理
液を使用する方法があるが、そのどれを使用してもよ
い。最も一般的なノンクロム化成処理液はシリカゾル
(コロイダルシリカ、湿式シリカ等とも呼ばれる) また
はケイ酸塩 (例、ケイ酸のアルカリ金属塩) を主な造膜
成分とし、それに各種の金属イオンまたは金属化合物を
共存させ、酸性pHに調整したものである。主な造膜成
分として、シリカゾルの代わりに、チタニアゾル、ジル
コニアゾル等の他の金属酸化物ゾル、あるいはタングス
テン酸塩やモリブデン酸塩のような金属酸塩を使用した
処理液も使用可能である。
【0026】化成処理を行った後、水洗し、適当な温度
に加熱して乾燥すると、化成処理皮膜が形成される。た
だし、化成処理後にコーティングを行う場合には、水洗
した後、乾燥せずに直ちにコーティングを行うことが好
ましい。それにより、エネルギーコストのかかる乾燥工
程を1回省略でき、乾燥後の表面清浄化処理も不要にな
る。
【0027】コーティングは、前述したように、通常の
塗装ではなく、着色顔料を含有せず、一般に透明の、ご
く薄い保護皮膜である。但し、コーティングには、透明
性を阻害しないサブミクロンのシリカ、酸化チタン、ア
ルミナ等の微粒子を含有させてもよい。コーティングの
厚みは、通常は 0.5〜5μm程度である。コーティング
は、無機質、有機質、および両者の組合わせのいずれで
もよく、保護皮膜を形成できれば造膜成分は特に制限さ
れない。
【0028】無機質コーティングの造膜成分としては、
各種の金属塩 (例、ケイ酸塩、タングステン酸塩、モリ
ブデン酸塩等) 、金属酸化物ゾル (例、シリカ、アルミ
ナ、チタニア、ジルコニア等のゾル) またはその前駆体
である加水分解性有機金属化合物 (例、ケイ酸エステ
ル、シランカップリング剤、アルコキシチタン、アルコ
キシジルコニウム等) の溶液などが使用可能である。
【0029】有機質コーティングの造膜成分としては、
各種の熱可塑性または熱硬化性合成樹脂を使用すること
ができる。例えば、ポリエチレン等のポリオレフィン、
アクリル、エポキシ、ポリエステル、ポリウレタン、ポ
リイミド、ポリアミド等が使用できる。造膜成分が合成
樹脂だけである場合には、プライマーとして使用されて
いるような焼付け硬化型の樹脂、例えば、エポキシ、ポ
リエステル、ポリウレタン等が好ましい。合成樹脂以外
の有機質造膜成分も利用可能であり、その例として、タ
ンニン酸、フィチン酸、アルギン酸等の天然物由来の高
分子有機物がある。
【0030】コーティング液には、造膜成分に加えて、
染料等の着色剤、メチルセルロース等の増粘剤といった
添加剤を含有させることができるが、前述した微粒子を
除いて、顔料は含有させないことが好ましい。
【0031】コーティング液の塗布は、スプレー、浸
漬、ロール塗布、刷毛塗り等、慣用の塗布法のいずれで
行ってもよく、亜鉛系めっき材の形態に応じて適当な方
法を選択すればよい。コーティング液の塗布後、通常は
水洗を行わずに、そのまま乾燥して、コーティング皮膜
を形成する。但し、コーティング液が下地と反応性の場
合には、水洗しても造膜する。乾燥温度は、コーティン
グ液の造膜成分に応じて設定する。
【0032】化成処理液は一般に水性系である。コーテ
ィング液は溶剤系のものも使用できるが、水性系の方が
取り扱い易い。本発明によれば、亜鉛系めっき材の耐候
性を改善するために、化成処理液かコーティング液の少
なくとも一方に、Coイオンおよび/またはMnイオンの供
給源となる化合物を添加して、Coおよび/またはMnを含
有する化成処理皮膜および/またはコーティングを形成
する。
【0033】この添加化合物としては、CoまたはMnの水
酸化物、無機酸塩 (例、硝酸塩、硫酸塩、塩化物、炭酸
塩等) 、有機酸塩 (例、酢酸塩等) 、および錯体 (カル
ボニル錯体、アセチルアセトナート錯体) などが可能で
あるが、コストと扱い易さから無機酸塩が好ましい。
【0034】亜鉛系めっき材の耐候性改善効果を十分に
得るには、形成された化成処理皮膜および/またはコー
ティング中のCoおよび/またはMnの金属量が、0.2 mg/m
2 以上であることが好ましく、より好ましくは0.5 mg/m
2 以上である。上限は特に制限されず、10000 mg/m2
で増大させてもよい。Co化合物は高価であるので、Coは
500 mg/m2 以下とすることが好ましい。このようなCoお
よび/またはMnの付着量が得られるように、化成処理液
またはコーティング液へのCoおよび/またはMn化合物の
添加量を設定する。このためには、一般に液中のCoおよ
び/またはMnの金属としての含有量が0.2 g/L 以上とな
るようにすることが好ましい。液中の金属含有量は、Co
が5g/L 以下、Mnが100 g/L 以下とすることが好まし
い。
【0035】本発明に係る、Coおよび/またはMnを含有
する少なくとも1層の皮膜をめっき表面に有する亜鉛系
めっき材は、耐候性に優れ、東南アジアといった紫外線
の強い地域に無塗装で長期に屋外環境に保管されても、
耐食性の低下が非常に少ない。従って、その後に塗装し
ても、従来品で見られた、耐食性の低下や塗装の剥離と
いった問題が起こらない。
【0036】
【実施例】下記のA、B、Cの3種類の処理方法によ
り、亜鉛系めっきとその後の後処理を行った。使用した
亜鉛系めっき材とめっき後の乾燥条件、めっき法、処理
液組成、処理方法と条件等は、表1〜5にまとめて示し
た。使用した化成処理液とコーティング液はいずれも水
性であり、表示組成の残部は水である。実施例において
は、化成処理液とコーティング液の一方または両方がマ
ンガンおよび/またはコバルト化合物を含有していた。
比較のために、化成処理液とコーティング液のいずれも
マンガンまたはコバルト化合物を含有しない比較例の処
理も行った。実施例中の%は、特に指定しない限り質量
%である。
【0037】工程図 方法A:電気めっき→水洗→酸活性化→水洗→化成処理
→水洗→乾燥、 方法B:電気めっき→水洗→酸活性化→水洗→化成処理
→水洗→コーティング→乾燥、 方法C:溶融めっき→化成処理→水洗→コーティング→
乾燥。
【0038】方法A 冷間圧延鋼板またはボルトに、市販の亜鉛または亜鉛合
金めっき液を用いて電気亜鉛系めっき (付着厚み8μ
m) を施し、水洗した後、67.5%硝酸2mL/Lを含有する
酸水溶液に室温で5秒間浸漬して活性化処理を行った。
その後、水洗してから、所定組成の化成処理液 (いずれ
も水性) を用いて浸漬または電解により化成処理を行
い、水洗して、乾燥した。
【0039】方法B 方法Aと同様に電気亜鉛系めっき (付着厚み8μm) 、
水洗、酸による活性化処理、水洗、化成処理、および水
洗まで行った後、乾燥させる前に、所定組成のコーティ
ング液を浸漬またはスプレーにより塗布し、水洗せず
に、そのまま乾燥した。
【0040】方法C 溶融亜鉛または亜鉛合金めっきを施した鋼材 (アング
ル) を、所定組成の化成処理液を用いて化成処理を行
い、水洗した後、乾燥させる前に、所定組成のコーティ
ング液を浸漬により塗布し、水洗せずに、そのまま乾燥
した。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
【表5】 上記の実施例および比較例で得られた、後処理した亜鉛
系めっき材の耐候性を評価するため、供試材の一部につ
いて、JIS D0205 に準拠して、促進耐候性試験(サンシ
ャインカーボンアーク灯式耐候性試験)[WAN-1S] を300
時間行った。この試験では、供試材は高温多湿条件下で
強い紫外線にさらされる。
【0046】この促進耐候性試験を300 時間行った供試
材と、行わなかった供試材の両方について、塩水噴霧試
験(JIS Z2371) を24時間実施し、白錆発生面積率を測定
した。耐候性試験を実施した後の供試材の耐食性が、こ
れを行わずに塩水噴霧試験した供試材の耐食性に比べて
低下していれば、耐候性は悪いことになる。この耐食性
の結果を、処理液中の造膜成分と一緒に、次の表6にま
とめて示す。
【0047】
【表6】 表6に示したように、比較例1〜5の亜鉛系めっき材
は、化成処理とコーティングのいずれにもCoまたはMnを
添加しなかった点を除いて実施例のいずれかと同じもの
であった。これら比較例の亜鉛系めっき材は、いずれも
耐候性試験を実施する前は、塩水噴霧試験での白錆発生
面積率が0%と耐食性に優れていた。しかし、促進耐候
性試験を300 時間実施した後は、塩水噴霧試験での白錆
発生面積率が40〜90%と、耐食性が著しく低くなった。
耐食性が高いことで知られる6価クロメート処理液によ
り化成処理した比較例6でも、結果は同様であった。
【0048】この比較例の結果からわかるように、従来
あまり問題にされたことはないが、亜鉛系めっき材は実
は耐候性が十分ではなく、温度、湿度、日光により耐食
性が低下し、従来の化成処理または化成処理+コーティ
ングでは、亜鉛系めっき材を紫外線に対して十分に保護
することができず、なお耐候性は低いままである。
【0049】これに対し、同じ化成処理または化成処理
+コーティングを実施しても、本発明に従って、化成処
理液とコーティング液の一方または両方にCoイオンおよ
び/またはMnイオンを含有させて、これらの金属を含有
する皮膜をめっき表面に形成した実施例では、促進耐候
性試験を300 時間実施した後も、塩水噴霧試験での白錆
発生面積率が0%のままであり、良好な耐食性を保持し
ていた。即ち、化成処理皮膜またはコーティング皮膜に
Coおよび/またはMnを含有させただけで、亜鉛系めっき
材の耐候性が著しく改善された。
【0050】
【発明の効果】本発明によれば、亜鉛系めっき材の後処
理として行われる化成処理やコーティングの際に、使用
する化成処理液またはコーティング液にMnイオンおよび
/またはCoイオンの供給源となる化合物を少量添加する
だけで、亜鉛系めっき材の耐候性を著しく改善すること
ができ、未塗装の亜鉛系めっき材が高温多湿環境下で強
い紫外線にさらされても、その耐食性の低下が解消ない
し抑制される。即ち、耐候性改善のために特別の処理を
行わずに、亜鉛系めっき材の耐候性を改善することが可
能となる。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C23C 22/83 C23C 22/83 (72)発明者 神谷 成寿 愛知県刈谷市野田町場割50番地 ユケン 工業株式会社内 (56)参考文献 特開 平5−302179(JP,A) 特開 平11−335862(JP,A) 特開2001−115272(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 28/00 C23C 22/18 C23C 22/40 C23C 22/53 C23C 22/83

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 亜鉛または亜鉛合金めっきが施された亜
    鉛系めっき材の表面上に、コバルトおよび/またはマン
    ガンを含有する少なくとも1層の皮膜を形成することを
    特徴とする、亜鉛系めっき材の無塗装での耐候性を改善
    する方法。
  2. 【請求項2】前記皮膜を化成処理および/またはコーテ
    ィングにより形成する、請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】亜鉛または亜鉛合金めっきが施された亜鉛
    系めっき材のめっき表面上に、コバルトおよび/または
    マンガンを含有する少なくとも1層の皮膜を有すること
    を特徴とする、無塗装で屋外環境に置くのに適した、耐
    候性に優れた亜鉛系めっき材。
  4. 【請求項4】前記皮膜が化成処理皮膜および/またはコ
    ーティング皮膜である、請求項3記載の亜鉛系めっき
    材。
  5. 【請求項5】 Coイオンおよび/またはMnイオンを
    造膜成分として含有することを特徴とする、亜鉛または
    亜鉛合金めっきが施された亜鉛系めっき材の耐候性を改
    善するための造膜性処理液。
  6. 【請求項6】化成処理により造膜する請求項5記載の処
    理液。
  7. 【請求項7】コーティングにより造膜する請求項5記載
    の処理液。
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