JP2005046879A - 炭酸ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤの鋼素線 - Google Patents

炭酸ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤの鋼素線 Download PDF

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Abstract

【要 約】
【課 題】 炭酸ガスを主成分とするシールドガスを用いる炭酸ガスシールドアーク溶接において、常に安定したスプレー移行が得られ、高入熱溶接におけるスパッタ発生の低減のみならず、優れた製造性が得られる溶接用鋼ワイヤの素材となる鋼素線を提供することを目的とする。
【解決手段】 C:0.20質量%以下、Si:2.5質量%以下、Mn:0.25〜3.5 質量%、O:0.0200質量%以下、Ca:0.0050質量%以下、希土類元素: 0.025〜0.050 質量%、P:0.05質量%以下、S:0.025質量%以下を含有し、F=10000×[REM ]×[S]で算出されるF値を6.0以下とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、炭酸ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤ(以下、溶接用鋼ワイヤという)の鋼素線に係り、特に希土類元素を均一に分布し、かつ優れた製造性を有し、溶接用鋼ワイヤとして用いると安定した溶滴移行が得られる溶接用鋼ワイヤの鋼素線に関する。
シールドガスとしてCO2 ガスを用いるガスシールドアーク溶接は、CO2 ガスが安価であるとともに、能率の良い溶接法であるので、鉄鋼材料の溶接に広く利用されている。特に自動溶接の急速な普及によって、造船,建築,橋梁,自動車,建設機械等の種々の分野で使用されている。造船,建築,橋梁の分野では厚板の高電流多層溶接に使用され、自動車,建築機械の分野では薄板の隅肉溶接に使用されることが多い。
ArガスとCO2 ガスとの混合ガス(CO2 の混合比率:2〜40体積%)をシールドガスとする溶接法(いわゆる混合ガスアーク溶接)は、溶滴が溶接ワイヤの直径よりも小さい微細なスプレー移行が可能となる。この溶滴のスプレー移行は、溶滴移行形態の中で最も優れており、スパッタの発生が少なく、溶接のビード形状が優れ、高速溶接にも適していることが知られている。そのため混合ガスアーク溶接は、高品質な溶接を必要とする分野で利用されている。
しかしながらArガスのコストは、CO2 ガスの5倍と高価であるから、実際の溶接施工においてはArガスの使用量を削減して、CO2 ガスの混合比率を50体積%以上とした混合ガスをシールドガスとして使用する場合が多い。このようなCO2 ガスの混合比率が50体積%以上のシールドガスを用いると、通常の混合ガスアーク溶接(シールドガスのCO2 混合比率:2〜40体積%)に比べて10〜20倍の粗大な溶滴が溶接ワイヤ先端に懸垂し、アーク力によって揺れ動きながら移行(いわゆるグロビュール移行)する。このようなグロビュール移行が生じると、母材(すなわち鋼板)との短絡や再アークによるスパッタが多量に発生し、ビード形状が安定しない。特に高速溶接においては、ビード形状が凹凸(いわゆるハンピングビード)になりやすいという問題があった。
この問題点に対して、特開2002-14408 号公報や特開昭63-281796 号公報に示されるように、希土類元素(以下、REM という)の添加によるガスシールドアーク溶接のアーク安定化の効果が開示されている。しかし、これらの技術では鋼素線の長手方向に均一に REMを分布させるのは困難である。そのため、CO2 ガスを主成分するシールドガス(シールドガスのCO2 混合比率:60体積%以上)を用いる炭酸ガスシールドアーク溶接では、安定した溶滴の移行を得ることは困難であった。
特開2002-14408 号公報 特開昭63-281796 号公報
本発明は上記の問題に鑑み開発されたもので、CO2 ガスを主成分とするシールドガス(シールドガスのCO2 混合比率:60体積%以上)を用いる炭酸ガスシールドアーク溶接において、常に安定したスプレー移行が得られ、高入熱溶接におけるスパッタ発生の低減のみならず、優れた製造性が得られる溶接用鋼ワイヤの素材となる鋼素線を提供することを目的とする。
なお通常の炭酸ガスシールドアーク溶接ではArガスとCO2 ガスとを混合したシールドガス(CO2 の混合比率:2〜40体積%)を用いるが、本発明では、CO2 ガスを主成分(すなわちCO2 の混合比率:60体積%以上)とするシールドガスを使用する。したがって本発明における炭酸ガスシールドアーク溶接とは、CO2 の混合比率が60体積%以上となるようにArガスとCO2 ガスとを混合したシールドガスと用いる炭酸ガスシールドアーク溶接を指す。
本発明者らは、CO2 を主成分(すなわちCO2 の混合比率:60体積%以上)とするシールドガスを用いる炭酸ガスシールドアーク溶接において、溶滴のスプレー移行を可能とし、スパッタ発生量を低減しかつビード形状を改善する技術について鋭意検討した。その結果、以下に述べる知見を得た。本発明は、これらの知見に基づいてなされたものである。
(a) 溶接用鋼ワイヤをマイナス極とする正極性の溶接を行ない、溶接用鋼ワイヤの鋼素線に REMを添加することによって、溶滴の安定したスプレー移行が可能となる。
(b) 鋼素線の REMとSの相互作用を考慮して、REMとSの含有量を調整することによって、鋼素線の製造段階での歩留りを向上し、かつREM を均一に分布させて、溶接用鋼ワイヤとして使用する際に安定した溶滴移行を得ることが可能となる。
すなわち本発明は、炭酸ガスシールドアーク溶接に使用する溶接用鋼ワイヤの鋼素線であって、C:0.20質量%以下、Si:2.5質量%以下、Mn:0.25〜3.5 質量%、O:0.0200質量%以下、Ca:0.0050質量%以下、希土類元素: 0.025〜0.050 質量%、P:0.05質量%以下、S:0.020質量%以下を含有し、下記の (1)式で算出されるF値が6以下である炭酸ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤの鋼素線である。
F=10000×[REM ]×[S] ・・・ (1)
[REM ]:鋼素線の希土類元素含有量(質量%)
[S] :鋼素線のS含有量(質量%)
前記した鋼素線の発明では、前記した組成に加えて、Al:0.02〜3.00質量%、Ti:0.02〜0.50質量%およびZr:0.02〜0.50質量%のうちの1種または2種以上を含有することが好ましい。
なお、ここで鋼素線からなる溶接用鋼ワイヤとは、溶接用フラックスを内装せず、素材となる鋼素線を主体とするワイヤ(いわゆるソリッドワイヤ)を指す。また本発明は、鋼素線の表面にめっきを施したり、あるいは潤滑剤を塗布したソリッドワイヤにも支障なく適用できる。
本発明によれば、正極性の炭酸ガスシールドアーク溶接において不可能とされてきた極低スパッタ化を達成でき、かつビード形状を改善でき、安定した厚鋼板継手溶接が可能となる。
まず本発明の炭酸ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤ(すなわち溶接用鋼ワイヤ)の鋼素線の成分を限定した理由について説明する。
C:0.20質量%以下
Cは、溶接金属の強度を確保するのに必要な元素であり、溶融メタルの粘性を低下させて流動性を向上させる効果がある。しかしC含有量が0.20質量%を超えると、溶滴および溶融メタルの挙動が不安定となるのみならず、炭酸ガスシールドアーク溶接に用いた場合の溶接金属の靭性低下を招く。したがって、Cは0.20質量%以下とした。一方、C含有量を過剰に減少させると溶接金属の強度を確保できない。そのため、 0.003〜0.20質量%とするのが好ましい。なお、0.01〜0.10質量%が一層好ましい。
Si:2.5 質量%以下
Siは、脱酸作用を有し、溶融メタルの脱酸に有効な元素である。 2.5質量%を超えると、溶接金属の靱性が著しく低下する。したがって、Siは2.5 質量%以下の範囲内を満足する必要がある。さらに正極性(すなわち溶接用鋼ワイヤをマイナス極)の炭酸ガスシールドアーク溶接におけるアークの広がりを抑え、溶滴の移行回数を増大させるためには、0.25質量%以上が望ましい。そのため、0.25〜2.5 質量%とするのが好ましい。
Mn:0.25〜3.5 質量%
Mnは、Siと同様に脱酸作用を有し、炭酸ガスシールドアーク溶接における溶融メタルの脱酸のためには不可欠な元素である。Mn含有量が0.25質量%未満では、溶融メタルの脱酸が不足し、溶接金属にブローホールが発生する。一方、 3.5質量%を超えると、溶接金属の靭性が低下する。したがって、Mnは0.25〜3.5 質量%の範囲内を満足する必要がある。なお、溶融メタルの脱酸を促進し、ブローホールを防止するためには、0.45質量%以上が望ましい。そのため、0.45〜3.5 質量%とするのが好ましい。
O:0.0200質量%以下
Oは、正極性の炭酸ガスシールドアーク溶接において溶接用鋼ワイヤの先端に懸垂した溶滴に発生するアーク点を不安定にし、溶滴を微細化する作用がある。しかし、O含有量が 0.0200質量%を超えると、正極性の高電流溶接におけるアークの安定化というREM 添加の効果が損なわれ、溶滴の揺動が増大してスパッタが多量に発生する。またOは、鋼素線の鋼材を溶製する製鋼段階で REMと激しく反応してスラグを形成する作用を有しており、O含有量が0.0200質量%を超えると、REM の歩留りが著しく低下する。したがって、Oは0.0200質量%以下とした。ただし、O含有量が0.0010質量%未満では、O添加の効果は充分に得られない。したがって、 0.0010〜0.0200質量%が好ましく、さらに0.0010〜0.0050質量%が一層好ましい。
REM : 0.025〜0.050 質量%
REM は、製鋼および鋳造時の硫化物の中央偏析を抑制し、その形態をフィルム状から球状に変化させることで、鋼材板厚方向の靱性改善のために有効な元素である。正極性(すなわち溶接用鋼ワイヤをマイナス極)の炭酸ガスシールドアーク溶接においては、溶滴移行を安定化するために不可欠な元素である。REM 含有量が 0.025質量%未満では、アークの安定化が十分ではなく、スプレー移行とグロビュール移行が混在した不安定な移行形態となる。しかしREM 硫化物は加工における延性が乏しく、REM含有量が0.050質量%を超えると、粗大な硫化物による鋼素線に表面欠陥が発生するばかりでなく、硫化物が不均一に分散することに起因して溶滴移行が不安定になる。また、後述するAl,Ti,Zrと結合して、さらに粗大な複合硫化物を形成しやすい。したがって、REM は 0.025〜0.050 質量%の範囲内を満足する必要がある。
ここで REMとは、周期表の3族に属する元素の総称である。本発明では、原子番号57〜71の元素を使用するのが好ましく、特にCe,Laが好適である。Ce,Laを鋼素線に添加する場合は、CeまたはLaを単独で添加しても良いし、CeおよびLaを併用しても良い。なお、CeおよびLaをともに添加する場合は、あらかじめCe:45〜80質量%,La:10〜45質量%の範囲内で混合して得られた混合物(たとえばミッシュメタル)を使用するのが好ましい。
P:0.05質量%以下
Pは、鋼の融点を低下させるとともに、電気抵抗率を向上させ、溶融効率を向上させる元素である。さらに正極性の炭酸ガスシールドアーク溶接において、溶滴を微細化し、アークを安定化する作用も有する。しかしP含有量が0.05質量%を超えると、正極性の炭酸ガスシールドアーク溶接において溶融メタルの粘性が著しく低下し、アークが不安定となり、小粒のスパッタが増加する。また、溶接金属の高温割れを生じる危険性が増大する。したがって、Pは0.05質量%以下とした。なお、好ましくは0.03質量%以下である。一方、 鋼素線の鋼材を溶製する製鋼段階でPを低減するためには長時間を要するので、生産性向上の観点から 0.002質量%以上が望ましい。そのため、 0.002〜0.03質量%とするのが好ましい。
Ca:0.0050質量%以下
Caは、製鋼および鋳造時に不純物として溶鋼に混入したり、あるいは伸線加工時に不純物として鋼素線に混入する。正極性の炭酸ガスシールドアーク溶接では、Ca含有量が0.0050質量%を超えると、高電流溶接におけるアークの安定化というREM 添加の効果が損なわれる。したがって、Caは0.0050質量%以下とするのが好ましい。
S:0.020質量%以下
Sは、溶融メタルの粘性を低下させ、溶接用鋼ワイヤの先端に懸垂した溶滴の離脱を促進し、正極性の炭酸ガスシールドアーク溶接においてアークを安定化する。しかしS含有量が0.020質量%を超えると、粗大なREM 硫化物を形成し、偏析に起因して表面の凹凸により鋼素線の歩留りを著しく低下させる。したがって、Sは0.020質量%以下とした。なお、好ましくは0.015質量%以下である。一方、 鋼素線の鋼材を溶製する製鋼段階でSを低減するためには長時間を要するので、生産性向上の観点から 0.001質量%以上が望ましい。そのため、 0.001〜0.015質量%とするのが好ましい。
さらに、鋼素線の鋼材を溶製する製鋼段階で REMの歩留り向上と均一分布を達成し、かつ加工性を向上させて優れた製造性を確保するためには、下記の (1)式で算出されるF値が6.0以下を満足する必要がある。
F=10000×[REM ]×[S] ・・・ (1)
[REM ]:鋼素線の希土類元素含有量(質量%)
[S] :鋼素線のS含有量(質量%)
F値が6.0を超えると、REM とSとが結合して粗大なREM 硫化物を形成し、その偏析に起因して鋼素線の歩留りを著しく低下させるとともに、鋼素線長手方向の REM分布が不均一になり、正極性の炭酸ガスシールドアーク溶接においてアークの安定化を阻害する。鋼素線の表面に凹凸を生じて、正極性の炭酸ガスシールドアーク溶接においてアークの安定化を阻害する。
さらに本発明では上記した組成に加えて、鋼素線が、Al:0.02〜3.00質量%,Ti:0.02〜0.50質量%およびZr:0.02〜0.50質量%のうちの1種または2種以上を含有することが好ましい。その理由について説明する。
Al,Ti,Zrは、いずれも強脱酸剤として作用するとともに、溶接金属の強度を増加する元素である。さらに溶融メタルの脱酸によって粘性を低下してビード形状を安定化(すなわちハンピングビードを抑制)する効果がある。このような効果を有する故に 350A以上の高電流溶接において有効な元素であり、必要に応じて添加する。Alが0.02質量%未満,Tiが0.02質量%未満,Zrが0.02質量%未満では、この効果は得られない。一方、 Alが3.00質量%を超える場合,Tiが0.50質量%を超える場合,Zrが0.50質量%を超える場合は、溶滴が粗大化して大粒のスパッタが多量に発生する。したがって、Al,Ti,Zrを含有する場合は、Al:0.02〜3.00質量%,Ti:0.02〜0.50質量%,Zr:0.02〜0.50質量%の範囲内を満足するのが好ましい。
さらに必要に応じて下記の元素を添加しても、本発明の効果を減じるものではない。
Cr:0.02〜3.0 質量%,Ni:0.05〜3.0 質量%,Mo:0.05〜1.5 質量%,Cu:0.05〜3.0 質量%,B:0.0005〜0.015 質量%,Mg: 0.001〜0.2 質量%
Cr,Ni,Mo,Cu,B,Mgは、いずれも溶接金属の強度を増加し、耐候性を向上させる元素である。これらの元素の含有量が微少である場合は、このような効果は得られない。一方、過剰に添加すると、溶接金属の靭性の低下を招く。したがって、Cr,Ni,Mo,Cu,B,Mgを含有する場合は、Cr:0.02〜3.0 質量%,Ni:0.05〜3.0 質量%,Mo:0.05〜1.5 質量%,Cu:0.05〜3.0 質量%,B:0.0005〜0.015 質量%,Mg: 0.001〜0.2 質量%の範囲内を満足するのが好ましい。
Nb: 0.005〜0.5 質量%,V: 0.005〜0.5 質量%
Nb,Vは、いずれも溶接金属の強度,靭性を向上し、アークの安定性を向上させる元素である。これらの元素の含有量が微少である場合は、このような効果は得られない。一方、過剰に添加すると、溶接金属の靭性の低下を招く。したがって、Nb,Vを含有する場合は、Nb: 0.005〜0.5 質量%,V: 0.005〜0.5 質量%の範囲内を満足するのが好ましい。
上記した鋼素線の成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。たとえば、鋼材を溶製する段階や鋼素線を製造する段階で不可避的に混入する代表的な不可避的不純物であるNは、0.020質量%以下に低減するのが好ましい。
次に、本発明の鋼素線の製造方法と、その鋼素線を用いた溶接用鋼ワイヤの製造方法について説明する。
転炉または電気炉等を用いて、上記した組成を有する溶鋼を溶製する。この溶鋼の溶製方法は、特定の技術に限定せず、従来から知られている技術を使用する。次いで、得られた溶鋼を、連続鋳造法や造塊法等によって鋼材(たとえばビレット等)を製造する。この鋼材を加熱した後、熱間圧延を施し、さらに乾式の冷間圧延(すなわち伸線)を施して鋼素線を製造する。熱間圧延や冷間圧延の操業条件は、特定の条件に限定せず、所望の寸法形状の鋼素線を製造する条件であれば良い。
さらに鋼素線は、焼鈍−酸洗−銅めっき−伸線加工−潤滑剤塗布の工程を必要に応じて順次施して、所定の製品すなわち溶接用鋼ワイヤとなる。
正極性の炭酸ガスシールドアーク溶接においては、逆極性の溶接に比べて、給電不良に起因してアークが不安定になりやすい。しかし、鋼素線の表面に厚さ 0.6μm以上の銅めっきを施すことによって、溶接用鋼ワイヤの給電不良に起因するアークの不安定化を防止できる。なお、銅めっきの厚さを 0.8μm以上とすると、給電不良防止の効果が顕著に発揮されるので一層好ましい。このようにして銅めっきを厚目付とすることによって、給電チップの損耗も低減できるという効果も得られる。
しかし鋼素線中のCu含有量も含めて、溶接用鋼ワイヤのCu量が 3.0質量%を超えると、溶接金属の靭性が著しく低下する。したがって、溶接用鋼ワイヤのCu量(すなわち鋼素線のCu含有量と銅めっきのCu含有量の合計)を 3.0質量%以下とするのが好ましい。
このようにして製造した溶接用鋼ワイヤを用いて炭酸ガスシールドアーク溶接を行なう際に、給電の安定性を高めて、溶滴のスプレー移行を安定して維持するために、溶接用鋼ワイヤの平坦度(すなわち実表面積/理論表面積)を1.01未満とすることが好ましい。溶接用鋼ワイヤの平坦度は、伸線加工におけるダイス管理を厳格に行なうことによって1.01未満の範囲に維持することが可能である。
溶接用鋼ワイヤの送給性を向上するために、溶接用鋼ワイヤの表面(すなわち鋼素線の表面あるいは銅めっきの表面)に潤滑油を塗布しても良い。潤滑油の塗布量は、溶接用鋼ワイヤ10kgあたり0.35〜1.7gの範囲内が好ましい。
なお、溶接用鋼ワイヤを製造する工程で、溶接用鋼ワイヤの表面に種々の不純物が付着する。特に固体の不純物の付着量を、溶接用鋼ワイヤ10kgあたり0.01g以下に抑制すると、給電の安定性が一層向上する。
このようして製造した溶接用鋼ワイヤを用いて正極性炭酸ガスシールドアーク溶接を行なう際の好適な溶接条件について、以下に説明する。
シールドガスは、ArとCO2 との混合ガスを用いる。シールドガス中のCO2 の混合比率は60体積%以上とする。なお、CO2 ガスを単独(すなわちCO2 の混合比率: 100体積%)でシールドガスとして使用しても、支障なく正極性炭酸ガスシールドアーク溶接を行なうことができる。
溶接電流は 300〜450 A,溶接電圧は27〜38V(電流とともに上昇),溶接速度は20〜250 cm/分,突き出し長さは15〜30mm,ワイヤ径は 0.8〜1.6mm ,溶接入熱は5〜40kJ/cmの範囲内が好ましい。厚さが10mm以上の厚鋼板の溶接を行なう場合は、多層溶接も可能である。溶接する母材(すなわち鋼板)の鋼種は特に限定されないが、JIS規格G3106 に規定されるSi−Mn系の溶接構造用圧延鋼材(SM材)や、JIS規格G3136 に規定される建築構造用鋼材(SN材)に適用するのが好ましい。厚さが10mm以上の厚鋼板の溶接を行なう場合は、多層溶接も可能である。
製鋼段階で成分を調整し、連続鋳造によって製造されたビレットを熱間圧延して、直径 5.5〜7.0mm の鋼素線とした。
得られた鋼素線の成分を表1〜3に示す。
Figure 2005046879
Figure 2005046879
Figure 2005046879
なお表1〜3中のCr含有量の−は<0.01,Ca含有量の−は<0.0001,Zr含有量の−は<0.01,B含有量の−は<0.0001を示す。
次いで冷間圧延(すなわち伸線)によって直径 2.0〜2.8mm の線材とした。
その後、これらの鋼素線を、露点−2℃以下,酸素濃度 200体積ppm 以下,二酸化炭素濃度 0.1体積%以下の窒素雰囲気中で焼鈍した。
このようにして焼鈍した後、必要に応じて鋼素線に酸洗を施し、次いで必要に応じて必要に応じて鋼素線の表面に銅めっきを施した。さらに冷間で伸線加工(乾式伸線)を施して、直径 0.8〜1.6mm の溶接用ワイヤを製造した。さらに、溶接用ワイヤの表面に潤滑油を溶接用ワイヤ10kgあたり 0.4〜0.8 g塗布した。
溶鋼から熱間圧延後の鋼素線までの歩留りを表4,5に示す。歩留りが90%以上を良(○),70%以上〜90%未満を可(△),70%未満を不可(×)として評価した。また、(1)式を用いて算出したF値を表4,5に示す。
Figure 2005046879
Figure 2005046879
表4,5から明らかなように、F値が6.0以下である発明例1〜26の歩留りは高かった。
これらの溶接用ワイヤを用いて正極性炭酸ガスシールドアーク溶接を行ない、溶接中に発生したスパッタを全量捕集して、その重量を測定した。スパッタ発生量が 0.35g/分以下を良(○), 0.35g/分超え〜 0.7g/分以下を可(△), 0.7g/分超えを不可(×)として評価した。その結果は表6,7に示す通りである。
なお、正極性炭酸ガスシールドアーク溶接の条件を表8に示す。
Figure 2005046879
Figure 2005046879
Figure 2005046879
表6,7から明らかなように、発明例は、高電流,高入熱の正極性炭酸ガスシールドアーク溶接において、スパッタ発生量は0.19〜0.67であり、スパッタ発生量が低下した。特に、鋼素線にAl,Ti,Zrのいずれかを 0.2質量%以上添加した発明例6〜26のスパッタ発生量は0.19〜0.35であり、スパッタ発生量を一層低減することができた。
一方、鋼素線の成分が本発明の範囲を外れる比較例では、スパッタ発生量は3.25〜6.05であった。

Claims (2)

  1. 炭酸ガスシールドアーク溶接に使用する溶接用鋼ワイヤの鋼素線であって、C:0.20質量%以下、Si:2.5 質量%以下、Mn:0.25〜3.5 質量%、O:0.0200質量%以下、Ca:0.0050質量%以下、希土類元素: 0.025〜0.050 質量%、P:0.05質量%以下、S:0.020質量%以下を含有し、下記の (1)式で算出されるF値が6以下であることを特徴とする炭酸ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤの鋼素線。
    F=10000×[REM ]×[S] ・・・ (1)
    [REM ]:鋼素線の希土類元素含有量(質量%)
    [S] :鋼素線のS含有量(質量%)
  2. 前記鋼素線が、前記組成に加えて、Al:0.02〜3.00質量%、Ti:0.02〜0.50質量%およびZr:0.02〜0.50質量%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の炭酸ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤの鋼素線。
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