JPH07195193A - 薄板高張力鋼用ソリッドワイヤ - Google Patents

薄板高張力鋼用ソリッドワイヤ

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Publication number
JPH07195193A
JPH07195193A JP5352098A JP35209893A JPH07195193A JP H07195193 A JPH07195193 A JP H07195193A JP 5352098 A JP5352098 A JP 5352098A JP 35209893 A JP35209893 A JP 35209893A JP H07195193 A JPH07195193 A JP H07195193A
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JP
Japan
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wire
strength
welding
solid wire
content
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Application number
JP5352098A
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English (en)
Inventor
Reiichi Suzuki
鈴木励一
Masato Konishi
小西正人
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Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
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Publication date
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Publication of JPH07195193A publication Critical patent/JPH07195193A/ja
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】 母材と溶接金属部の強度差が小さく、優れた
強度バランスを有し低コストの薄板高張力鋼溶接用ソリ
ッドワイヤ。 【構成】 C,Si,Mn,P,S,Alを特定し残部
が鉄及び不可避的不純物からなる鋼板の溶接用ワイヤで
あって、その組成がC,Si,Mn,P,Sが特定さ
れ、更に特定されたNi,Cr,Mo,V,Nb,T
i,Al,Zr,Cu,B,Ca,REMのうちの1種
又は2種以上を含み、かつWeq−BMeqが−0.3
5〜0.1%[ここで、Weq=〔C〕+〔Si〕/2
4+〔Mn〕/6+〔Ni〕/60+〔Cr〕/5+
〔Mo〕/4+〔V〕/14+〔Nb〕+〔Ti〕/1
4、BMeq={C}+{Si}/24+{Mn}/6
+{Ni}/60+{Cr}/5+{Mo}/4+
{V}/14+{Nb}×2.6+{Ti}×2を表
す]を満足し、残部が鉄及び不可避的不純物からなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は薄板高張力鋼の溶接用ソ
リッドワイヤに係り、更に詳しくは、母材と溶接金属部
の強度差が小さく均質で、低コストのソリッドワイヤに
関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】薄板高
張力鋼の溶接には、従来より、母材と同等以上の強度を
持ったソリッドワイヤが使われている。
【0003】しかし、薄板高張力鋼の溶接に鋼板と同等
の強度の溶材を使用すると、薄板の場合には母材希釈率
が高いため、溶接金属中の合金成分はワイヤから供給さ
れものに加えて、母材からも供給される。また、入熱も
小さいため、冷却速度が速く、結果的に過剰な強度にな
り、母材部と溶接金属部間で不均質な強度分布になると
共に、溶接割れの発生する危険性もある。また、鋼板と
同等の強度のワイヤの使用はコスト高である。これら
は、従来のソリッドワイヤが厚板を対象として設計され
たものであり、薄板特有の母材希釈率、入熱条件等を考
慮した溶接材料ではないためである。
【0004】本発明は、かゝる事情のもとで、薄板高張
力鋼の溶接において母材と溶接金属部の強度差が小さ
く、優れた強度バランスを有し且つ低コストの薄板高張
力鋼溶接用ソリッドワイヤを提供することを目的とする
ものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
を解決するために鋭意研究を重ねた結果、母材鋼板とソ
リッドワイヤの化学成分並びに両者の炭素当量差を規制
することにより、優れた強度バランスが得られ、しかも
溶接のコストを低減できることを見出し、ここに本発明
をなしたものである。
【0006】すなわち、本発明は、C:0.005〜0.
35%、Si:0.01〜2.0%、Mn:0.10〜3.0
%、P≦0.20%、S≦0.08%、Al:0.01〜
0.10%を含み、残部が鉄及び不可避的不純物からな
る鋼板の溶接用ワイヤであって、該ワイヤの組成が、
C:0.01〜0.20%、Si:0.05〜1.20%、
Mn:0.20〜2.00%、P≦0.050%、S≦0.
050%を含み、更に、Ni:0.5〜5.0%、Cr:
0.005〜0.80%、Mo:0.10〜0.80%、
V:0.01〜0.20%、Nb:0.01〜0.20%、
Ti:0.01〜0.30%、Al:0.01〜0.30%、
Zr:0.01〜0.30%、Cu:0.05〜1.00%、
B:0.0005〜0.0050%、Ca:0.001〜
0.010%、REM:0.001〜0.010%のうち
の1種又は2種以上を含み、かつ、下記の(1)式を満足
し、残部が鉄及び不可避的不純物からなることを特徴と
する薄板高張力鋼用ソリッドワイヤを基本とするもので
ある。 記 Weq−BMeq:−0.35〜0.1% ……(1) ここで、 Weq=〔C〕+〔Si〕/24+〔Mn〕/6+〔Ni〕/60+
〔Cr〕/5+〔Mo〕/4+〔V〕/14+〔Nb〕+〔Ti〕/
14 (式中の〔 〕はワイヤ中の各成分の含有量(wt%)を表
わす) BMeq={C}+{Si}/24+{Mn}/6+{Ni}/60+{Cr}/5
+{Mo}/4++{V}/14+{Nb}×2.6+{Ti}×2 (式中の{ }は母材中の各成分の含有量(wt%)を表わ
す)
【0007】
【作用】以下に本発明を更に詳細に説明する。まず、本
発明の知見を得るに至った基礎実験の結果を説明する。
【0008】本発明者らは、薄板高張力鋼の溶接に適し
たソリッドワイヤの組成を決定すべく、以下の試験を行
った。
【0009】一般に溶接金属部は母材よりも高い強度が
要求される。一方、著しく溶接金属部の強度が母材強度
よりも高い場合、オーバースペックとなるばかりでな
く、耐割れ性が劣ってしまう。材料の強度は硬度と一般
に密接な関係があり、溶接金属部と母材の強度差範囲を
硬度差範囲と置き換えることが可能である。このことか
ら、成分組成を種々変えたソリッドワイヤを用いて、重
ね継手及び突き合わせ継手を作製し、溶接金属の硬さ試
験を行った。
【0010】その結果、溶接金属の硬さ−母材の硬度=
Hv0〜Hv30の範囲が溶接金属と母材の強度バランス
として適切であることがわかった。そこで更に、この硬
度差とワイヤ組成及び母材組成との関係を調査した。
【0011】具体的には、本発明者らはソリッドワイヤ
成分に係る炭素当量(Weq)及び母材成分に係る炭素当量
(BMeq)を考案して、その炭素当量差と溶接金属の硬度
との相関を調査した。その結果、図1に示すように、ワ
イヤ及び母材の炭素当量差と溶接金属の硬度差に明確な
関係があり、上述の硬度差Hv0〜Hv30とするには、
炭素当量差(Weq−BMeq)を−0.35〜0.1の範囲に
コントロールすれば良いことがわかった。
【0012】本発明は、以上の知見に基づいて更に数多
くの実験研究により完成したものである。次にワイヤ及
び母材の化学成分等の限定理由について説明する。
【0013】(1)母材鋼板の化学成分 C:Cは鋼の強度を向上させる作用を有しているが、
0.005%未満では鋼板の所望の強度を確保すること
ができず、一方、0.35%を超えると溶接割れを発生
し易くなる。したがって、鋼板のC含有量は0.005
〜0.35%とする。
【0014】Si:Siは、固溶強化を通じ、微量添加で
あっても鋼の強度上昇と延性の向上に有効な働きをする
元素である。その効果は0.01%以上から得られる。
しかし、2.0%を超えて含有すると溶接性の劣化を招
くことになる。したがって、鋼板のSi含有量は0.01
〜2.0%とする。
【0015】Mn:Mnは固溶強化、変態強化、結晶粒微
細化強化により鋼の強度と靭性の両方を向上させる作用
がある。その含有量が0.10%未満では所望の効果が
得られず、一方、3.0%を超えて含有すると溶接性の
劣化を招くことになる。したがって、鋼板のMn含有量
は0.10〜3.0%とする。
【0016】P:Pは溶接割れを引き起こす元素であ
り、0.20%超えで特にその傾向が顕著である。した
がって、鋼板のP含有量は0.20%以下とする。
【0017】S:Sは、Mnと結合してA系介在物を生
じ、鋼板及び溶接金属部の延性の低下、耐食性の劣化及
び溶接金属部の耐縦割れ性の劣化を招くので、できるだ
け少ない方が好ましい。そのためには、鋼板のS含有量
は0.01%以下が好ましいが、経済性を考慮して0.0
8%以下とする。
【0018】Al:Alは、鋼の脱酸のために必要な元素
であり、十分な脱酸効果を確保するためには0.01%
以上の添加が必要である。一方、0.10%を超えて添
加するとその効果が飽和すると共に、クラスタ状の介在
物が多くなり、加工性が劣化すると共に靭性が劣化す
る。したがって、鋼板のAl含有量は0.01〜0.10
%とする。
【0019】更に必要に応じて、鋼板の機械的性質の改
善、特に強度と延性の向上、靭性の強化を図るために、
Ti、Mo、Nb、Ni、V、Cu、Cr、Zrのうちの1
種又は2種以上、或いはCa、REMの1種又は2
種、或いはBをそれぞれ適量にて単独又は複合して添
加することができる。勿論、〜群のうちの任意の成
分を他の群の成分と複合させることもできるのは云うま
でもない。
【0020】Cu:CuはPとの共存下で防食効果のある
皮膜の形成を促進する効果を発揮する。この皮膜は微細
で緻密な腐食の進行を抑制する非晶質の有効な錆びの成
長を確かなものにする。この効果は、Cu含有量が0.0
1%未満では認められず、1.00%を超えるとその効
果は飽和し、逆に溶接割れなどの弊害が生じる。したが
って、鋼板のCu含有量は0.01〜1.00%とする。
【0021】Nb、Zr:Nb、Zrは鋼板及び溶接金属部
に、微量添加で強度上昇と優れた低温靭性とを付与する
元素である。また、Nb、Zrは局部延性の改善に有効な
ベイナイトなどの低温生成相を生じ易くする元素であ
る。しかし、各々0.01%未満の含有量ではかかる効
果は十分に期待できず、一方、1.00%を超えて含有
すると溶接性が劣化する。したがって、鋼板のNb及び
Zr含有量は各々0.01〜1.00%とする。
【0022】Ti、V、Cr、Mo、Ni:Ti、V、Cr、
Mo、Niは鋼板及び溶接金属部の強靱化に有効な元素で
あるが、各々0.01%未満の含有量ではその効果は期
待できない。また、各々の含有量の上限は経済性を考慮
して3.00%とする。したがって、鋼板のTi、V、C
r、Mo、Ni含有量は各々0.01〜3.00%とする。
【0023】Ca、REM:Ca及びREMは、介在物の
形状制御により鋼の低温靭性、延性の向上に有効な元素
であり、そのためには各々0.001%以上含有させる
必要がある。しかし、0.010%より過度に添加する
と鋼中の非金属介在物が多くなり、延性を劣化させる。
したがって、鋼板のCa及びREM含有量は各々0.00
1〜0.010%とする。なお、REMは希土類元素を
表わす略語で、原子番号57〜71の全ての元素を指
す。
【0024】B:Bは鋼板に微量添加することで、組織
を微細にし、優れた低温靭性を付与する元素である。し
かし、0.0005%未満の含有量ではかかる効果は期
待できず、一方、0.0050%を超えて含有すると、
著しく耐溶接割れ性が悪化する。したがって、鋼板のB
の含有量は0.0005〜0.0050%とする。
【0025】(2)ソリッドワイヤの化学成分 C:Cは鋼の強度を向上させる作用を有しているが、ワ
イヤ成分の溶接金属中への歩留まりを考慮すると、0.
01%未満では溶接金属の所望の強度を確保することが
できず、一方、0.20%を超えると溶接性の劣化を招
くと共に高炭素マルテンサイトを生成し、靭性が悪化す
ることになる。したがって、ワイヤのC含有量は0.0
1〜0.20%とする。
【0026】Si:Siは鋼の強度上昇に有効な働きをす
る元素であると共に、強力な脱酸元素であり、気泡の発
生を防ぐ効果がある。その効果は0.05%以上から得
られる。しかし、1.20%を超えて含有すると溶接金
属の靭性が著しく劣化する。したがって、ワイヤのSi
含有量は0.05〜1.20%とする。
【0027】Mn:Mnは固溶強化、変態強化、結晶粒微
細化強化により鋼の強度と靭性の両方を向上させる作用
がある。しかし、その含有量が0.20%未満では所望
の効果が得られず、一方、2.00%を超えて含有する
と一次晶粒界が発達して粒界破壊を生じるようになり、
耐割れ性、靭性を著しく悪化させることになる。したが
って、ワイヤのMn含有量は0.20〜2.00%とす
る。
【0028】P:Pはフェライト中に固溶しマトリック
スの靭性を損なうのみならず、溶接割れを引き起こす元
素であり、0.050%超えで特にその傾向が顕著であ
る。したがって、ワイヤのP含有量は0.050%以下
とする。
【0029】S:SはPと同様、溶接金属部の延性の低
下、溶接金属部の耐割れ性の劣化を招くので、できるだ
け少ない方が好ましい。したがって、S含有量は、Pと
同様、0.050%以下とする。
【0030】更に必要に応じて、溶接金属の機械的性質
の改善、特に強度と延性の向上、靭性の強化を図るため
にNi、Cr、Mo、V、Nb、Ti、Al、Zr、Cu、B、
Ca、REMの1種又は2種以上を適量にて添加する。
【0031】Al:Alは鋼の脱酸のために必要な元素で
あり、十分な脱酸効果を確保するためには0.01%以
上の添加が必要であるが、一方、0.30%を超えて添
加すると脱酸生成物のAl23が溶接金属中に多く残存
するようになるため、脱酸効果が消失し、靭性が大幅に
劣化する。したがって、ワイヤのAl含有量は0.01〜
0.30%とする。
【0032】Ni:Niは溶接金属の靭性改善、高強度化
に有効な元素であり、その効果は0.5%以上で有効で
ある。しかし、5.0%を超えると一次晶粒界が発達
し、逆に脆化してしまう。したがって、ワイヤのNi含
有量は0.5〜5.0%とする。
【0033】Cr:Crは溶接金属部の強靱化と酸化物皮
膜による耐蝕性向上の効果がある。その効果は0.00
5%未満では期待できない。また、0.80%超えでは
耐割れ性が低下するため、ワイヤのCrの含有量は0.0
05〜0.80%とする。
【0034】Mo:Moは溶接金属の焼入れ性を高め、強
度向上のために有効であり、その効果は0.10%以上
で現われる。しかし、0.80%超えでは炭化物を生成
し、著しく靭性を低下させるので、ワイヤのMoの含有
量は0.1〜0.80%とする。
【0035】Ti、Zr:Ti、Zrは強脱酸剤であり、溶
着金属の酸化を防ぎ、かつ酸化物の生成により、析出硬
化による強度上昇、組織の微細化による靭性の改善に効
果がある。しかし、各々0.01%未満ではこれらの効
果が得られず、また、各々0.30%を超えると溶接性
の悪化、炭化物の形成による靭性の大幅な低下が生じ
る。したがって、ワイヤのTi、Zrの含有量は各々0.
01〜0.30%とする。
【0036】Nb、V:Nb、VはTi、Zrと同様に強度
上昇、靭性改善の目的で添加される。しかし、各々0.
01%未満ではこの効果は期待できず、また、各々0.
20%を超えると炭化物の生成により、靭性及び耐割れ
性の低下が生じる。したがって、ワイヤのNb、Vの含
有量は各々0.01〜0.20%とする。
【0037】Cu:Cuは防食効果のある非晶質の皮膜を
形成する働きがある。この効果は0.05%未満では認
められず、しかし、1.00%を超えるとその効果は飽
和し、逆に溶接割れなどの弊害が生じる。したがって、
ワイヤのCu含有量は0.05〜1.00%とする。
【0038】Ca及びREM:Ca及びREMは主に溶接
金属の強度上昇、延性の向上に有効な元素であり、その
ためには各々0.001%以上が必要である。しかし過
度に添加すると鋼中の非金属介在物が多くなり、延性を
劣化させる。したがって、ワイヤのCa及びREMの含
有量は各々0.001〜0.010%とする。
【0039】B:Bは微量添加することで、組織を微細
にし、優れた低温靭性を付与する元素である。しかし、
0.0005%未満の含有量ではかかる効果は期待でき
ず、一方、0.0050%を超えて含有すると著しく耐
溶接割れ性が悪化する。したがって、ワイヤのBの含有
量は0.0005〜0.0050%とする。
【0040】(3)Weq−BMeq:−0.35〜0.1% 図1で示したとおり、Weq−BMeqが−0.35%未満
では、ソリッドワイヤの合金元素量と鋼板の合金元素量
に差がありすぎ、溶接金属の強度が鋼板の強度を下回
る。一般に溶接金属の強度は母材の強度を上回るべきと
されているので、これを下限とする。また、Weq−BM
eqが0.1%超えでは、母材の鋼板に対し溶接金属が過
大強度なり、耐溶接割れ性が悪化すると共に、ソリッド
ワイヤのコスト高となる。したがって、Weq−BMeqは
−0.35〜0.1%とする。なお、Weq及びBMeqは本
発明者らの提案による前述の関係式によって定義される
炭素当量である。
【0041】(4)BMeq≧0.2% 溶接金属の合金成分にはワイヤの成分だけではなく、母
材の希釈による母材成分が含有される。本発明に係るソ
リッドワイヤの炭素当量Weqが鋼板の炭素当量BMeqよ
り小さい場合(0%>Weq−BMeq≧−0.35%)にお
いても、溶接金属が鋼板と同等以上の強度になる要因の
一つが、薄板溶接特有の大きな母材希釈による鋼板の合
金成分の流入である。しかし、鋼板の合金量が少ない場
合、この効果は薄くなってしまう。鋼板の炭素当量BM
eqが0.2%以上の場合、母材希釈による合金元素の流
入の効果が大きく非常に有効となる。
【0042】(5)1パス溶接 多層盛りの溶接では、下層に対し再熱が加わり、組織が
粗大化することにより、強度が低下する。逆に1パスの
みの溶接では、再熱が加わらないため、強度低下せず、
溶接金属の強度に対し、より効果的である。
【0043】(6)溶接入熱:1〜8kJ/cm、鋼板の
板厚:0.5〜7.0mm 溶接入熱が過大になると組織が粗大になり、強度は低下
するので、溶接入熱は8kJ/cm以下が好ましい。しか
し、溶接入熱が1kJ/cm未満ではビード形状不良にな
ってしまうことから、溶接入熱は1kJ/cm以上が好ま
しい。
【0044】鋼板の板厚は、薄い方が積層数が少なくて
済み、強度の低下を防ぐことにつながる。板厚が7.0m
m以下であれば1パスで溶接することが可能であるが、
0.5mm未満では、ソリッドワイヤによる一般のアーク
溶接では溶接不能とされているので、0.5mm以上が好
ましい。
【0045】なお、本発明のワイヤは、ソリッドワイヤ
を使用する種々の溶接法に適用できることはいうまでも
ない。例えば、ガスシールドアーク溶接の場合のシール
ドガスの種類(CO2のみ、Ar等の不活性ガス+CO2
合ガス、Ar等の不活性ガスのみ等々)、流量も適宜決め
られる。継手形状も重ね継手、突合せ継手等々が可能で
ある。
【0046】次に本発明の実施例を示す。
【実施例】
【0047】表1に示す化学成分の母材鋼板と表2に示
す化学成分のソリッドワイヤを用いて、表3に示す溶接
条件で重ね継手及び突合わせアーク溶接継手を作製し、
これらの溶接継手の溶接金属中心部のランダムな5点で
ビッカース硬さを測定した。試験結果の硬さはこの5点
のビッカース硬さの平均値とした。試験結果を表4及び
表5に示す。
【0048】本発明例No.T1〜T9、T11〜T1
2、T14、T16、T18〜T27、T30、T3
3、T34、T35は、鋼板及びソリッドワイヤの化学
成分、Weq−BMeqの値が本発明範囲を満足しており、
母材硬度と溶接金属硬度の差が0以上30以内の範囲に
収まっている。このため、溶接金属部と母材との強度バ
ランスが良好である。
【0049】これらに対し、比較例の試験No.T10、
T13、T15、T17、T28は、Weq−BMeqの値
が本発明範囲の下限を下回っているため、溶接金属硬度
−母材硬度の値が0未満となっていて、溶接継手として
不良である。
【0050】また、比較例の試験No.T29は、Weq−
BMeqの値が本発明範囲の上限を超えており、溶接金属
硬度−母材硬度の値が30を超え、オーバースペックと
なっている。
【0051】比較例の試験No.T31は、Weq−BMeq
の値は本発明範囲を満足しているものの、ソリッドワイ
ヤのMn量が本発明範囲を下回っているため、溶接中に
脱酸が有効にならず、溶接作業性が著しく劣った。更に
溶接金属中にO、Nが多量に含有され、靭性が著しく劣
り、また溶接金属のMnによる強度上昇の効果が非常に
小さいため、溶接金属の強度が母材の強度を下回り、不
良となった。
【0052】比較例の試験No.T32は、Weq−BMeq
の値は本発明範囲を満足しているもの、鋼板のS量が本
発明の限定範囲を超えているため、溶接金属の靭性、耐
溶接割れ性が著しく劣り、溶接部中央に高温割れが発生
した。したがって、溶接部として不良であり、硬度測定
は無意味とした。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
【表4】
【0057】
【表5】
【0058】
【本発明の効果】以上詳述したように、本発明によれ
ば、鋼板及びソリッドワイヤの化学成分と、鋼板及びソ
リッドワイヤの炭素当量差(Weq−BMeq)を−0.3
5〜0.1%に規制するので、溶接金属部と母材の硬度
差がHv0〜30とすることができ、溶接金属と母材の
強度バランスに優れ、かつ溶接のコストを下げることが
可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋼板及びソリッドワイヤの炭素当量差(Weq−
BMeq)と溶接金属部と母材の硬度差ΔHvの関係を示
す図である。
【図2】重ね隅肉継手の溶接要領を説明する図である。
【図3】突合せ継手の溶接要領を説明する図である。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で(以下同じ)、C:0.005〜
    0.35%、Si:0.01〜2.0%、Mn:0.10〜
    3.0%、P≦0.20%、S≦0.08%、Al:0.0
    1〜0.10%を含み、残部が鉄及び不可避的不純物か
    らなる鋼板の溶接用ワイヤであって、該ワイヤの組成
    が、C:0.01〜0.20%、Si:0.05〜1.20
    %、Mn:0.20〜2.00%、P≦0.050%、S≦
    0.050%を含み、更に、Ni:0.5〜5.0%、C
    r:0.005〜0.80%、Mo:0.10〜0.80%、
    V:0.01〜0.20%、Nb:0.01〜0.20%、
    Ti:0.01〜0.30%、Al:0.01〜0.30%、
    Zr:0.01〜0.30%、Cu:0.05〜1.00%、
    B:0.0005〜0.0050%、Ca:0.001〜
    0.010%、REM:0.001〜0.010%のうち
    の1種又は2種以上を含み、かつ、下記の(1)式を満足
    し、残部が鉄及び不可避的不純物からなることを特徴と
    する薄板高張力鋼用ソリッドワイヤ。 記 Weq−BMeq:−0.35〜0.1% ……(1) ここで、 Weq=〔C〕+〔Si〕/24+〔Mn〕/6+〔Ni〕/60+
    〔Cr〕/5+〔Mo〕/4+〔V〕/14+〔Nb〕+〔Ti〕/
    14 (式中の〔 〕はワイヤ中の各成分の含有量(wt%)を表
    わす) BMeq={C}+{Si}/24+{Mn}/6+{Ni}/60+{Cr}/5
    +{Mo}/4++{V}/14+{Nb}×2.6+{Ti}×2 (式中の{ }は母材中の各成分の含有量(wt%)を表わ
    す)
  2. 【請求項2】 前記鋼板が、更にTi:0.01〜3.0
    0%、Mo:0.01〜3.00%、Nb:0.01〜1.0
    0%、Ni:0.01〜3.00%、V:0.01〜3.0
    0%、Cu:0.01〜1.00%、Cr:0.01〜3.0
    0%、Zr:0.01〜1.00%のうちの1種又は2種
    以上を含む請求項1に記載のソリッドワイヤ。
  3. 【請求項3】 前記鋼板が、更にCa:0.001〜0.
    010%、REM:0.001〜0.010%の1種又は
    2種を含む請求項1又は2に記載のソリッドワイヤ。
  4. 【請求項4】 前記鋼板が、更にB:0.0005〜0.
    0050%を含む請求項1、2又は3に記載のソリッド
    ワイヤ。
  5. 【請求項5】 前記(1)式において、BMeq≧0.2で
    ある請求項1、2、3又は4に記載のソリッドワイヤ。
  6. 【請求項6】 1パスで溶接するためのワイヤである請
    求項1、2、3、4又は5に記載のソリッドワイヤ。
  7. 【請求項7】 鋼板の板厚:0.5〜7.0mm、溶接入
    熱:1〜8kJ/cmで溶接するためのワイヤである請求
    項1、2、3、4、5又は6に記載のソリッドワイヤ。
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