JP2022089304A - オーステナイト系ステンレス鋼溶接継手、溶接構造物、および母鋼材、ならびにオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法。 - Google Patents

オーステナイト系ステンレス鋼溶接継手、溶接構造物、および母鋼材、ならびにオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法。 Download PDF

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Mitsuki Matsumoto
正治 秦野
Masaharu Hatano
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Abstract

【課題】耐水素脆化性に加え、耐高温割れ性と耐候性とに優れるオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手を提供する。【解決手段】溶接金属部の化学組成が、質量%で、C:0.15%以下、Si:1.0%以下、Mn:8.0~10.0%、P:0.030%以下、S:0.0030%以下、Cr:15.0~18.0%、Ni:7.0~9.0%、N:0.15~0.35%、B:0.0002~0.01%、Mg:0.0001~0.01%、Al:0.005~0.20%、Cu:1.0%未満、Mo:3.0%以下、O:0.080%以下、Ca:0.0005~0.01%、任意元素、残部:Feおよび不純物であり、f値が、29.5超36.0未満である、オーステナイト系ステンレス鋼溶接継手。【選択図】 なし

Description

本発明は、オーステナイト系ステンレス鋼溶接継手、溶接構造物、および母鋼材、ならびにオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法に関する。
近年、二酸化炭素等の温室効果ガスを排出しないクリーンなエネルギーとして、水素エネルギーが注目されている。しかしながら、水素エネルギーを活用する上で、水素製造装置等では、水素ガスに起因し、材料が脆化する、いわゆる水素脆化が問題になることがある。
そこで、水素脆化を抑制すべく、様々な素材が開発されている。例えば、特許文献1および2には、Mn含有量を高め、耐水素脆化特性を向上させたオーステナイト系ステンレス鋼が開発されている。
このような水素関連技術に用いられるオーステナイト系ステンレス鋼は、部品および部材として製造される際に、溶接され、溶接継手として使用される。そして、溶接継手においては、溶接時に溶融し、その後、凝固した溶接金属部において、性能の低下が生じやすくなることから、溶接継手の状態でも、耐水素脆化性を向上させることが重要である。このため、特許文献3および4には、耐水素脆化性を向上させたオーステナイト系ステンレス鋼の溶接継手が開示されている。
特開2019-143227号公報 特開2019-143228号公報 国際公開第2018/180788号 特開2015-171729号公報
ところで、オーステナイト系ステンレス鋼の溶接継手には、耐水素脆化性だけでなく、耐高温割れ性および耐候性も要求される。耐高温割れ性が不良であると、溶接後に、割れおよび溶接金属部における延性の低下が生じやすくなるからである。また、耐候性が不良であると、劣化しやすくなり、部材および部品としての寿命が低下するからである。
しかしながら、特許文献3および4においては、耐高温割れ性および耐候性についての言及がなく、特許文献3および4に開示されたオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手においては、上記特性について、さらに、改善の余地がある。
本発明は、上記の課題を解決し、耐水素脆化性に加え、耐高温割れ性と耐候性とに優れるオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手を提供することを目的とする。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、下記のオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手、溶接構造物、および母鋼材、ならびにオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法を要旨とする。
(1)母材と溶接金属部とを有する、溶接継手であって、
前記溶接金属部の化学組成が、質量%で、
C:0.15%以下、
Si:1.0%以下、
Mn:8.0~10.0%、
P:0.030%以下、
S:0.0030%以下、
Cr:15.0~18.0%、
Ni:7.0~9.0%、
N:0.15~0.35%、
B:0.0002~0.01%、
Mg:0.0001~0.01%、
Al:0.005~0.20%、
Cu:1.0%未満、
Mo:3.0%以下、
O:0.080%以下、
Ca:0.0005~0.01%、
Nb:0~1.0%、
Ti:0~1.0%、
V:0~1.0%、
W:0~2.0%、
Zr:0~1.0%、
Co:0~2.0%、
Ga:0~0.10%、
Hf:0~0.10%、
REM:0~0.10%、
残部:Feおよび不純物であり、
下記(i)式で算出されるf値が、29.5超36.0未満である、オーステナイト系ステンレス鋼溶接継手。
f値=Ni+0.72Cr+0.88Mo+1.11Mn-0.27Si+12.93C+7.55N ・・・(i)
但し、上記(i)式中の各元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
(2)前記化学組成が、質量%で、
Nb:0.01~1.0%、
Ti:0.01~1.0%、
V:0.01~1.0%、
W:0.001~2.0%、
Zr:0.01~1.0%、
Co:0.01~2.0%、
Ga:0.001~0.10%、
Hf:0.01~0.10%、および
REM:0.01~0.10%、
から選択される一種以上を含有する、上記(1)に記載のオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手。
(3)前記化学組成が、下記(ii)式を満足し、
前記溶接金属部のN含有量と、前記母材のN含有量との比が、下記(iii)式を満足する、上記(1)または(2)に記載のオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手。
0.15≦N+20×O-Al ・・・(ii)
0.90≦N/N≦2.00 ・・・(iii)
但し、上記式中の各元素記号は鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとし、上記式中の各記号は、以下のように定義される。
:溶接金属部のN含有量(質量%)
:母材のN含有量(質量%)
(4)薄鋼板を用いた上記(1)~(3)のいずれか1項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手。
(5)水素製造装置に用いられる、上記(1)~(4)のいずれか1項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手。
(6)上記(1)~(5)のいずれか1項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手を有する溶接構造物。
(7)上記(1)~(5)のいずれか1項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手に用いられる母鋼材であって、
化学組成が、質量%で、
C:0.15%以下、
Si:1.0%以下、
Mn:8.0~10.0%、
P:0.030%以下、
S:0.0030%以下、
Cr:15.0~18.0%、
Ni:7.0~9.0%、
N:0.15~0.25%、
B:0.0002~0.01%、
Mg:0.0001~0.01%、
Al:0.005~0.20%、
Cu:1.0%未満、
Mo:3.0%以下、
O:0.005%以下、
Ca:0.0005~0.01%、
Nb:0~1.0%、
Ti:0~1.0%、
V:0~1.0%、
W:0~2.0%、
Zr:0~1.0%、
Co:0~2.0%、
Ga:0~0.10%、
Hf:0~0.10%、
REM:0~0.10%、
残部:Feおよび不純物である、オーステナイト系ステンレス母鋼材。
(8)上記(3)に記載のオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法であって、
シールドガスにNガスまたはNを含むガスを用いる、製造方法。
(9)上記(3)に記載のオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法であって、
前記シールドガスは、トーチガス、バックガス、およびアフターガスの3種類に分類されるガスであり、
前記トーチガスに、体積%で、1.0%以上のNを含有するガスを使用し、溶接を行う、上記(8)に記載の製造方法。
本発明によれば耐水素脆化性に加え、耐高温割れ性と耐候性とに優れるオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手を得ることができる。
図1は、実施例におけるI開先を示した模式図である。 図2は、実施例におけるY開先を示した模式図である。
本発明者らは、オーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の耐水素脆化性、耐高温割れ性および耐候性について検討を行い、以下の(a)~(c)の知見を得た。
(a)安定度の低いオーステナイト相に加工を加えると、転位密度が高いオーステナイト相の領域と、転位密度が低いオーステナイト相の領域とが形成する。転位密度が高いオーステナイト相の領域では、オーステナイト相が加工誘起マルテンサイトに変態すると同時に、水素脆化の起点を生じさせる。そこで、溶接金属部の化学組成において、オーステナイト相の安定度の指標であるf値を制御することで、オーステナイト相の安定性を調整し、局所的な転位密度の上昇を抑制するのが望ましい。これにより、水素脆化の起点が形成されるのを抑制できるからである。
(b)Cuは、局所的な転位密度の上昇を抑制して、均一なオーステナイト相の加工組織を形成するのに有効である。このため、水素脆化を抑制するのに有効な元素である。その一方、Cuを過剰に含有させた場合、耐高温割れ性が低下する場合もある。融点が比較的低いCuは、溶接金属部の凝固過程において液相が残存しやすく、割れを誘発する。
そこで、耐水素脆化性を確保しつつ耐高温割れ性を改善するために、溶接金属部の化学組成において、Cu含有量を一定範囲に制限しつつも、オーステナイト相の安定度を高めるため、f値の値が適切範囲となるよう調整するのが好ましい。具体的には、Mn、Ni、およびN含有量を調整して、f値を高めるといった方法が望ましい。さらに耐高温割れ性の改善には、割れの発生を招きやすいPおよびSを低減するのが有効である。また、微量に、Al、Ca、B、およびMgを含有することで、低融点元素の粒界偏析を低減して、割れの発生を抑制するのが望ましい。
(c)耐候性を確保するためには、溶接金属部において、Cr、Mo、およびNの含有量を所定の範囲に制御するのが好ましい。Cr、Mo、およびNのうち、CrおよびMoは、母材と溶接金属部の濃度変化が極めて小さく、母鋼材の含有量を調整することで、耐候性を高める元素である。その一方、Nは、溶接金属部において、溶融時に脱窒して母鋼材の化学組成からの変化が大きい。このため、溶融時に脱窒を抑制するためには、溶接金属部の化学組成を制御するのに加え、シールドガスの種類を調整することが好ましい。
具体的には、シールドガスの中でもトーチガスに、Nガスまたは1.0%以上のNガスを含有したガスを使用して溶接を行うことが望ましい。また、Nガスを含有しないシールドガスで溶接を行う場合は、溶接金属部のN、およびO等の含有量を適正範囲に制御し、溶接部の溶け込み性を高めることでも有効である。これら方法により、脱窒を抑制し、母材のN含有量に対する溶接金属部のN含有量を0.90以上とすることができる。
本発明は上記の知見に基づいてなされたものである。以下、本発明の各要件について詳しく説明する。
1.溶接継手
本発明に係る溶接継手は、母材と溶接金属部とを有する、溶接継手である。母材は、溶接熱の影響を受けない原質部と、溶接熱の影響を受ける溶接熱影響部とからなる。原質部は、溶接熱の影響を受けないため、溶接継手の素材である母鋼材から化学組成および金属組織、その他特性を引き継ぐ。このため、原質部の化学組成および金属組織、その他特性は、母鋼材と等しくなる。溶接熱影響部も、母材の一部であり、溶融はしていないものの、溶接熱により、金属組織が原質部から変化したものである。したがって、溶接熱影響部は、母鋼材と比較し、金属組織は異なるものの、化学組成においては、母鋼材と等しくなる。また、溶接金属部とは、溶接した際に、溶接中に溶融して凝固した金属部分のことをいう。そして、溶接金属部と溶接熱影響部とを合わせて、溶接部と呼ぶ。
1-1.溶接金属部の化学組成
溶接金属部の化学組成における各元素の限定理由は下記のとおりである。なお、以下の説明において含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。また、溶接金属部の化学組成とは、酸化皮膜を除去した溶接金属部全体の平均の化学組成である。
C:0.15%以下
Cは、オーステナイト相の安定化に有効な元素であり、耐水素脆化性の向上にも寄与する。しかしながら、Cを過剰に含有させると、Cr系炭化物が粒界析出するのを促進し、耐候性、耐高温割れ性、および靭性を低下させる。このため、C含有量は、0.15%以下とする。C含有量は、0.10%以下とするのが好ましく、0.07%以下とするのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、C含有量は、0.01%以上とするのが好ましい。
Si:1.0%以下
Siは、脱酸に有効な元素であり、耐水素脆化性の向上にも寄与する。しかしながら、Siを過剰に含有させると、σ相などの金属間化合物の生成を助長し、耐候性、耐高温割れ性、および靭性を低下させる。このため、Si含有量は、1.0%以下とする。Si含有量は、0.7%以下とするのが好ましい。一方、上記効果を得るためには、Si含有量は、0.3%以上とするのが好ましい。
Mn:8.0~10.0%
Mnは、オーステナイト相の安定化に有効な元素であり、耐水素脆化性の向上に寄与する。また、Nの固溶限を大きくするため、高価なNiの節減に間接的に寄与する。このため、Mn含有量は、8.0%以上とする。Mn含有量は、8.5%以上とするのが好ましく、9.0%以上とするのがより好ましい。しかしながら、Mnを過剰に含有させると、水素脆化感受性の高いε相の生成を助長し、却って耐水素脆化性を低下させる。このため、Mn含有量は、10.0%以下とする。
P:0.030%以下
Pは、不純物として鋼に含有される元素であるが、凝固の最終過程で濃化して、鋼の融点を下げ、高温割れ(凝固割れ)を助長する場合がある。このため、P含有量は、0.030%以下とする。P含有量は、耐高温割れ性改善の点から、0.025%以下とするのが好ましく、0.015%以下とするのがより好ましい。一方、Pを過剰に低減すると、溶接継手に用いる母鋼材の製造コストが増加することから、P含有量は、0.005%以上とするのが好ましい。
S:0.0030%以下
Sは、不純物として鋼に含有される元素であり、Pと同様に高温割れを助長する場合がある。このため、S含有量は、0.0030%以下とする。S含有量は、0.0020%以下とするのが好ましく、0.0010%以下とするのがより好ましい。しかしながら、Sを過剰に低減すると、母鋼材の製造コストが増加する。このため、S含有量は、0.0001%以上とするのが好ましい。
Cr:15.0~18.0%
Crは、ステンレス鋼において、一定量含有させる元素であり、耐候性を向上させる効果を有する。このため、Cr含有量は、15.0%以上とする。しかしながら、Crは、フェライト形成元素である。このため、Crを過剰に含有させると、オーステナイト相を不安定化させ、耐水素脆化性を低下させる。また、熱間加工性をも低下させる。このため、Cr含有量は、18.0%以下とする。Cr含有量は、17.0%以下とするのが好ましく、16.0%以下とするのがより好ましい。
Ni:7.0~9.0%
Niは、Mnとともに、耐水素脆化性および耐高温割れ性を確保するために必要な元素である。このため、Ni含有量は、7.0%以上とする。しかしながら、過剰にNiを含有させると、母材の製造コストが増加する。このため、Ni含有量は、9.0%以下とする。Ni含有量は、8.5%以下とするのが好ましく、8.0%以下とするのがより好ましい。
N:0.15~0.35%
Nは、MnおよびNiと同様に、耐水素脆化性および耐候性の向上に有効な元素である。このため、N含有量は、0.15%以上とする。しかしながら、過剰なNの含有は、ブローホール等、内部欠陥が発生する場合があり、耐高温割れ性を低下させる。また、Cr窒化物を形成して耐候性を低下させる。このため、N含有量は、0.35%以下とする。N含有量は、0.30%以下とするのが好ましく、0.20%以下とするのがより好ましい。
B:0.0002~0.01%
Bは、粒界を強化し、強度を向上させるとともに、割れの発生を抑制する効果を有する。このため、B含有量は、0.0002%以上とする。B含有量は、0.0003%以上とするのが好ましい。しかしながら、Bを過剰に含有させても、その効果が飽和するばかりか、ボロン化合物(BN、BC、CrB)の粒界析出を促進して、耐高温割れ性も低下させる。このため、B含有量は、0.01%以下とする。B含有量は、0.006%以下とするのが好ましく、0.002%以下とするのがより好ましい。
Mg:0.0001~0.01%
Mgは、脱酸効果に有効な元素であり、溶接性を向上させる効果を有する。このため、Mg含有量は、0.0001%以上とする。Mg含有量は、0.0003%以上とするのが好ましい。しかしながら、Mgを過剰に含有させるには、母材の精錬など製造性等が低下し、製造コストが増加する。このため、Mg含有量は、0.01%以下とする。Mg含有量は、0.006%以下とするのが好ましく、0.003%以下とするのがより好ましい。
Al:0.005~0.20%
Alは、有効な脱酸元素であることに加え、低融点元素の粒界偏析を抑制して、粒界を強化する効果を有する。この結果、耐高温割れ性等が向上し、割れの発生が低減される。このため、Al含有量は、0.005%以上とする。Al含有量は、0.010%以上とするのが好ましい。しかしながら、Alを過剰に含有させると、溶接の溶け込みを阻害して溶接性を低下させる。このため、Al含有量は、0.20%以下とする。Al含有量は、0.08%以下とするのが好ましく、0.06%以下とするのがより好ましい。
Cu:1.0%未満
Cuは、スクラップ等の原料から混入する元素であり、オーステナイト相を安定化させて、耐水素脆化性の向上に有効な元素である。その一方、Cuは、低融点元素であり、粒界に偏析し、PおよびSによる高温割れを助長し、割れを生じやすくする。このため、Cu含有量は、1.0%未満とする。Cu含有量は、0.5%以下とするのが好ましい。しかしながら、Cuの過剰な低減は、母鋼材の溶解原料の制約を招き、製造コストが増加する。このため、Cu含有量は、0.01%以上とするのが好ましい。
Mo:3.0%以下
Moは、スクラップ等の原料から混入し、耐候性の向上に有効な元素であるが、過剰に含有させると、δフェライト相の生成を促進させ、耐水素脆化性を低下させる。このため、Mo含有量は、3.0%以下とする。Mo含有量は、2.0%以下とするのが好ましい。一方、Moの過剰な低減は、母材の溶解原料の制約を招き、製造コストが増加する。このため、Mo含有量は、0.01%以上とするのが好ましい。また、耐候性の向上の観点からは、Mo含有量は、0.50%以上とするのがより好ましく、1.0%以上とするのがさらに好ましい。
O:0.080%以下
Oは、不純物として鋼中に含まれる元素であり、溶接金属部の靭性を低下させる。このため、O含有量は、0.080%以下とする。O含有量は、0.010%以下とするのが好ましく、0.005%以下とするのがより好ましい。しかしながら、Oを過剰に低減すると、溶接時に、溶け込みを阻害して溶接性を低下させる。このため、O含有量は、0.0005%以上とするのが好ましい。
Ca:0.0005~0.01%
Caは、低融点元素の粒界偏析を抑制して、粒界を強化する効果を有する。この結果、耐高温割れ性等が向上し、割れの発生が低減される。このため、Ca含有量は、0.0005%以上とする。Ca含有量は、0.0020%以上とするのが好ましい。しかしながら、Caを過剰に含有させると、介在物の形成により、却って熱間加工性等が低下し、割れが発生しやすくなる。このため、Ca含有量は、0.01%以下とするのが好ましい。
上記の元素に加えて、さらにNb、Ti、V、W、Zr、Co、Ga、Hf、およびREMから選択される一種以上を、以下に示す範囲において含有させてもよい。各元素の限定理由について説明する。
Nb:0~1.0%
Nbは、炭窒化物を形成し、結晶粒を微細化し、粒界を強化する効果を有する。この結果、溶接時の割れの発生を抑制する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Nbを過剰に含有させると、固溶N濃度が低下して、耐候性の低下を招くとともに、母鋼材において熱間圧延の際の製造性および加工性が低下する。そのため、Nb含有量は、1.0%以下とする。Nb含有量は、0.50%以下とするのが好ましい。一方、上記効果を得るためには、Nb含有量は、0.01%以上とするのが好ましい。
Ti:0~1.0%
Tiは、炭窒化物を形成し、結晶粒を微細化し、粒界を強化する効果を有する。この結果、Tiは、溶接時の割れの発生を抑制する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Tiを過剰に含有させると、固溶N濃度が低下して、耐候性の低下を招くとともに、母鋼材において熱間圧延の際の製造性および加工性が低下する。そのため、Ti含有量は、1.0%以下とする。Ti含有量は、0.50%以下とするのが好ましい。一方、上記効果を得るためには、Ti含有量は、0.01%以上とするのが好ましい。
V:0~1.0%
Vは、鋼中に固溶または炭窒化物として析出し、強度を向上させる効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Vを過剰に含有させると、炭窒化物が過剰に形成し、母鋼材において熱間圧延の際の製造性が低下する。そのため、V含有量は、1.0%以下とするのが好ましい。一方、上記効果を得るためには、V含有量は、0.01%以上とするのが好ましい。
W:0~2.0%
Wは、強度および耐候性を向上させる効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Wを過剰に含有させると、母鋼材の製造コストが増加するため、W含有量は、2.0%以下とする。一方、上記効果を得るためには、W含有量は、0.001%以上とするのが好ましい。
Zr:0~1.0%
Zrは、脱酸効果を有する。また、耐候性を向上させる効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Zrを過剰に含有させると、靭性および加工性が低下する。そのため、Zr含有量は、1.0%以下とする。Zr含有量は、0.50%以下とするのが好ましい。一方、上記効果を得るためには、Zr含有量は、0.01%以上とするのが好ましい。
Co:0~2.0%
Coは、耐食性を向上させ、オーステナイト相を安定化させる効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Coを過剰に含有させると、母鋼材の製造コストが増加する。そのため、Co含有量は、2.0%以下とする。一方、上記効果を得るためには、Co含有量は、0.01%以上とするのが好ましい。
Ga:0~0.10%
Gaは、熱間加工性を向上させる効果を有する。このため、必要に応じて、含有させてもよい。しかしながら、Gaを過剰に含有させると、製造性を低下させる。このため、Ga含有量は、0.10%以下とする。一方、上記効果を得るためには、Ga含有量は、0.001%以上とするのが好ましい。
Hf:0~0.10%
Hfは、脱酸効果を有し、溶接性を向上させる効果を有する。このため、必要に応じて、含有させてもよい。しかしながら、Hfを過剰に含有させると、精錬など製造性が低下する。このため、Hf含有量は、0.10%以下とする。一方、上記効果を得るためには、Hf含有量は、0.01%以上とするのが好ましい。
REM:0~0.10%
REMは、脱酸効果を有し、溶接性を向上させる効果を有する。また、耐食性を向上させる効果も有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、REMを過剰に含有させると、その効果が飽和するばかりか、精錬等で、却って製造性が低下する。このため、REM含有量は、0.10%以下とする。一方、上記効果を得るためには、REM含有量は、0.01%以上とするのが好ましい。
REMは、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素を指し、上記REM含有量はこれらの元素の合計含有量を意味する。REMは、工業的には、ミッシュメタルの形で添加されることが多い。
本発明の化学組成において、残部はFeおよび不純物である。ここで「不純物」とは、オーステナイト系ステンレス鋼溶接継手を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
f値
本発明に係るオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手では、生成するオーステナイト相の安定性を表す指標として、以下に算出されるf値を要件とする。具体的には、下記(i)式で算出されるf値を、29.5超36.0未満とする。
f値=Ni+0.72Cr+0.88Mo+1.11Mn-0.27Si+12.93C+7.55N ・・・(i)
但し、上記(i)式中の各元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
ここで、f値が29.5以下であると、オーステナイト相の安定性が低く、溶接金属部の耐水素脆化性が低下する。このため、f値は、29.5超とする。しかしながら、f値が36.0以上であると、高合金化により溶接性が低下する。また、原料コストが増加し、製造性も低下する。このため、f値は、36.0未満とする。耐水素脆化性、耐高温割れ性、および経済性の観点から、f値は、30.0~35.0の範囲とするのが好ましい。
また、本発明に係るオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手では、溶接金属部の化学組成が、下記(ii)式を満足するのが好ましい。
0.15≦N+20×O-Al ・・・(ii)
但し、上記式中の各元素記号は鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
(ii)式右辺値が、0.15未満であると、後述する(iii)式を満足しにくくなり、耐候性が向上しにくくなる。このため、(ii)式右辺値は、0.15以上とするのが好ましく、0.17以上とするのがより好ましく、0.19以上とするのがさらに好ましい。なお、(ii)式右辺値の上限は、通常、1.95程度となる。
1-2.窒素濃度比
本発明に係るオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手は、良好な耐候性を得るために、溶接金属部のN含有量と、母材のN含有量との比が、下記(iii)式を満足するのが好ましい。この理由は、溶接の際に、耐候性の向上に有効なNが抜け、所謂、脱窒が生じやすくなるが、下記(iii)式を満足することで、この脱窒を抑制し、耐候性を維持することができるからである。
0.90≦N/N≦2.00 ・・・(iii)
上記式中の各記号は、以下のように定義される。
:溶接金属部のN含有量(質量%)
:母材のN含有量(質量%)
溶接金属部のN含有量と母材のN含有量との比である、(iii)式中辺値が、0.90未満であると、溶接の際に脱窒が生じ、良好な耐候性を得にくくなる。このため、(iii)式中辺値は、0.90以上とするのが好ましい。(iii)式中辺値は、1.00以上とするのがより好ましく、1.10以上とするのがさらに好ましい。一方、(iii)式中辺値が、2.00を超えると、溶接金属部にブローホールなどの内部欠陥が生じやすくなる。このため、(iii)式中辺値は、2.00以下とするのが好ましく、1.80以下とするのがより好ましく、1.60以下とするのがさらに好ましい。
1-3.母材
本発明に係る溶接継手において、母材の化学組成は、特に限定しないが、例えば、母材の化学組成を以下に示す範囲に調整するのが好ましい。母材の化学組成は、質量%で、C:0.15%以下、Si:1.0%以下、Mn:8.0~10.0%、P:0.030%以下、S:0.0030%以下、Cr:15.0~18.0%、Ni:7.0~9.0%、N:0.15~0.25%、B:0.0002~0.01%、Mg:0.0001~0.01%、Al:0.005~0.20%、Cu:1.0%未満、Mo:3.0%以下、O:0.005%以下、Ca:0.0005~0.01%、Nb:0~1.0%、Ti:0~1.0%、V:0~1.0%、W:0~2.0%、Zr:0~1.0%、Co:0~2.0%、Ga:0~0.10%、Hf:0~0.10%、REM:0~0.10%、残部:Feおよび不純物であるのが好ましい。なお、母材の化学組成は、素材である母鋼材と同様の化学組成となる。なお、母材において、原質部は、主として、オーステナイト相が形成した母鋼材と同様の組織となるが、熱影響部は、溶接熱の影響を受けるため、母鋼材から金属組織が変化する。
2.用途
本発明に係る溶接継手は、水素製造装置等の耐水素脆化性が要求される、水素関連機器に用いられるのが好ましい。また、溶接継手は、薄鋼板を母鋼材として、製造されるのが好ましい。また、本発明に係る溶接継手を用いて、溶接構造物を製造することもできる。
3.製造方法
本発明に係る溶接継手の好ましい製造方法について説明する。本発明に係る溶接継手は、製造方法によらず、上述の構成を有していれば、その効果を得られるが、例えば、以下のような製造方法により、製造することができることが確認された。
最初に、溶接継手の素材となる母鋼材を用意する。母鋼材の化学組成は、母材の化学組成と同様、質量%で、C:0.15%以下、Si:1.0%以下、Mn:8.0~10.0%、P:0.030%以下、S:0.0030%以下、Cr:15.0~18.0%、Ni:7.0~9.0%、N:0.15~0.25%、B:0.0002~0.01%、Mg:0.0001~0.01%、Al:0.005~0.20%、Cu:1.0%未満、Mo:3.0%以下、O:0.005%以下、Ca:0.0005~0.01%、Nb:0~1.0%、Ti:0~1.0%、V:0~1.0%、W:0~2.0%、Zr:0~1.0%、Co:0~2.0%、Ga:0~0.10%、Hf:0~0.10%、REM:0~0.10%、残部:Feおよび不純物であるオーステナイト系ステンレス鋼であるのが好ましい。
溶接においては、必要に応じて、溶加材を用いてもよい。溶接継手の化学組成は、母鋼材の化学組成だけでなく、溶加材の化学組成も影響を受けることがある。このため、溶接において、溶加材を用いる場合は、溶加材の化学組成は、溶接金属の化学組成を満足する様、調整するのが好ましい。
なお、母鋼材となるオーステナイト系ステンレス鋼の形状は、特に限定しないが、例えば、鋼板(薄鋼板または厚鋼板)、パイプ、棒等であるのが好ましい。また、溶接のために、母鋼材を加工し、母鋼材に開先を設けてもよい。開先形状は、特に限定されないが、例えば、I形、Y形、V形、逆台形、U形などの形状がある。母鋼材の厚さについても特に限定しないが、通常、0.5~50.0mmの範囲となる。
続いて、母鋼材に溶接を行い、必要に応じて溶加材を用いながら、溶接金属部を形成し、溶接継手を製造する。この際の溶接方法は、特に限定されないが、ガスタングステンアーク溶接(TIG溶接)法を用いるのが好ましい。その他の溶接法としては、被覆アーク溶接(SMAW)、フラックス入りワイヤアーク溶接(FCAW)、ガスメタルアーク溶接(GMAW)、サブマージアーク溶接(SAW)等が挙げられる。
溶接の際の条件は、特に限定しないが、例えば、溶接速度は、10~200cm/分とするのが好ましい。電流値は、50~300Aとするのが好ましい。また、溶接の際には、シールドガスを使用して溶接するのが好ましい。ここで、シールドガスには、溶接の際、大気を遮断するために用いられるガスであり、トーチガス、バックガスおよびアフターガスの3種類に分類されるガスである。
トーチガスとは、溶接の際用いるトーチから噴出されるガスのことをいう。また、アフターガスとは、トーチガスだけでは、溶接部のビード表面を十分シールドすることができない場合に、溶接部のビード表面を大気から保護するために用いられるシールドガスである。バックガスとは、溶接部の裏面のビードを大気から保護するために用いられるシールドガスである。
ここで、本発明に係る溶接継手においては、シールドガスは、Nガス、ArガスおよびCOガスから選択される1種以上を用いるのが好ましく、特に、脱窒を抑制する点から、Nガス、またはNガスを含むガスとするのが好ましい。
加えて、トーチガスに、Nガス、もしくは、体積%で1.0%以上のNを含有したNガスとArガスとの混合ガス、体積%で1.0%以上のNを含有したNガスとCOガスとの混合ガス、体積%で1.0%以上のNを含有したNガスとArガスとCOガスとの混合ガスを用いるのが好ましい。シールドガスを全量、Nガスとするのが最も好ましい。なお、シールドガスの流量は、特に限定しないが10~40L/分の範囲とするのが好ましい。その他、条件についても、適宜、他の条件を考慮し、設定すればよい。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に示す化学組成を有するオーステナイト系ステンレス鋼の母鋼材(A1~A20)を用意した。これらの母鋼材の厚さは、それぞれ、1.2mm、2.5mm、4.0mmとした。これらの母鋼材について、表2に示す溶接条件で、TIG溶接を行い、溶接継手を製造した。溶接の際、1.2mmと2.5mm厚の母鋼材は、図1のようにI開先で突き合わせて、溶接を行い、4.0mm厚の母鋼材は、図2のように、ルート面が1.5mmのY開先で突き合わせて、共金を用いて1パスの溶接を行った。共金は、母鋼材と同じ組成とした。なお、シールドガスの流量はいずれも共通で、トートガスが10L/分、バックガスが15L/分、アフターガスが30L/分とした。その他、先端角度は40°、トーチ角度は90°、突き出し長さは5.0mmとした。アーク長はI開先が1.0mm、Y開先が2.0mmとした。
Figure 2022089304000001
Figure 2022089304000002
溶接継手の溶接金属部における化学組成は、表3に示す通りであり、表3に示された各組成は、酸化皮膜を除去した溶接金属部全体の平均の化学組成である。溶接金属部全体の平均の組成である。また、溶接継手において、溶接金属部以外の溶接熱影響部と母材の化学組成は、母鋼材と同様であった。得られた溶接継手について、耐水素脆化性、耐候性、および耐高温割れ性について評価を行った。
Figure 2022089304000003
(耐水素脆化性)
耐水素脆化性については、以下の手順で測定を行った。平行部4mm幅×20mm長さの中央に溶接部を有する引張試験片を採取した。続いて、上記引張試験片を室温、70MPa水素中および大気中において、歪速度5×10-5/sの低歪速度引張試験(以下、単に「SSRT試験」と記載する。)を行った。SSRT試験の評価で、引張破断強さと引張破断伸びとを測定した。耐水素脆化性は、耐水素脆性評価値を用いて評価した。耐水素脆性評価値は以下の式に基づいて、算出することができる。
耐水素脆性評価値={(70MPa水素中の引張破断強さ、または破断伸び)/(0.1MPa窒素中の引張破断強さ、または破断伸び)}×100(%) ・・・(a)
上記式から算出された引張破断強さの耐水素脆性評価値が95%以上かつ引張破断伸びの耐水素脆性評価値が80%以上の場合を、良好な耐水素脆化性を有するとして、〇と記載した。一方、耐水素脆性評価値が上記数値に満たない場合を耐水素脆化性が不良であるとして、×と記載した。
(耐候性)
耐候性は、JASO M 610-92に準拠したJASO-CCT試験により評価した。試験片は、幅中央に溶接部を有する50mm幅×100mm長さの板を用いた。評価面は表ビード側とし、600番の湿式研磨仕上げとした。試験条件は、5質量%NaCl水溶液噴霧(35℃/2h)、乾燥(60℃/4h)、湿潤(50℃/95%RH/2h)の計8hを1cyとし、30cyまで実施した。JASO-CCT試験の判定基準は、JIS G 0595:2004に準拠するレイティングナンバで耐候性を判定した。
母材と溶接部(溶接金属部および溶接熱影響部)のレイティングナンバの差が、1.0未満である例は、高い耐候性を有するとして◎と記載し、1以上2未満であった例は、良好な耐候性を有するとして○と記載した。2以上2.5未満であった例は許容される耐候性の低下として△とした。2.5を超える例は、母鋼材と比較して明らかに、耐候性が低下しているとして、×と記載した。
(耐高温割れ性)
耐高温割れ性は、溶接部のV曲げ試験により評価した。V曲げ試験は、溶接部の表ビードが曲げの外面となるようにVブロックに設置し、曲げ角度を90°、曲げ半径を母鋼材の板厚と同じとした。曲げ試験後の曲げ部の外面について、割れの有無を目視判定した。前述した曲げ試験片の外面に目視で割れが認められない場合は、耐高温割れ性を有するとして○と記載し、割れが認めれたものは耐高温割れ性が不良だったとして×と記載した。以下、結果を纏めて表4に示す。
Figure 2022089304000004
本発明の規定を満足する溶接継手B0~B15は、耐水素脆化性および耐候性、耐高温割れ性がいずれも良好であった。B5は、本発明の規定を満足するするものの、N/Nが1.0未満であり、耐候性は他の本発明例と比較して僅かに劣る結果となった。また、B6は本発明の規定を満足するものの、N/Nおよび(ii)式の要件を満足していなかったため、耐候性は他の本発明例と比較して劣る結果となった。
その一方、本発明の規定を満足しない溶接継手B16~B23は、耐水素脆化性と耐候性性、耐高温割れ性の少なくとも1つが不良であった。B16~B19は、耐候性に係るC、N、Cr、Ti、およびNbのいずれかが本発明の規定を満足しなかったため、耐候性が低下した。B20は、各元素の化学組成は、本発明の規定を満足したが、f値が規定の値を下回ったため、耐水素脆化性が低下した。B16およびB21~23は耐高温割れ性に係る、C、P、S、Cu、Al、Ca、B、Mgのいずれかが本発明の規定を満足しなかったため、耐高温割れ性が低下した。

Claims (9)

  1. 母材と溶接金属部とを有する、溶接継手であって、
    前記溶接金属部の化学組成が、質量%で、
    C:0.15%以下、
    Si:1.0%以下、
    Mn:8.0~10.0%、
    P:0.030%以下、
    S:0.0030%以下、
    Cr:15.0~18.0%、
    Ni:7.0~9.0%、
    N:0.15~0.35%、
    B:0.0002~0.01%、
    Mg:0.0001~0.01%、
    Al:0.005~0.20%、
    Cu:1.0%未満、
    Mo:3.0%以下、
    O:0.080%以下、
    Ca:0.0005~0.01%、
    Nb:0~1.0%、
    Ti:0~1.0%、
    V:0~1.0%、
    W:0~2.0%、
    Zr:0~1.0%、
    Co:0~2.0%、
    Ga:0~0.10%、
    Hf:0~0.10%、
    REM:0~0.10%、
    残部:Feおよび不純物であり、
    下記(i)式で算出されるf値が、29.5超36.0未満である、オーステナイト系ステンレス鋼溶接継手。
    f値=Ni+0.72Cr+0.88Mo+1.11Mn-0.27Si+12.93C+7.55N ・・・(i)
    但し、上記(i)式中の各元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
  2. 前記化学組成が、質量%で、
    Nb:0.01~1.0%、
    Ti:0.01~1.0%、
    V:0.01~1.0%、
    W:0.001~2.0%、
    Zr:0.01~1.0%、
    Co:0.01~2.0%、
    Ga:0.001~0.10%、
    Hf:0.01~0.10%、および
    REM:0.01~0.10%、
    から選択される一種以上を含有する、請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手。
  3. 前記化学組成が、下記(ii)式を満足し、
    前記溶接金属部のN含有量と、前記母材のN含有量との比が、下記(iii)式を満足する、請求項1または2に記載のオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手。
    0.15≦N+20×O-Al ・・・(ii)
    0.90≦N/N≦2.00 ・・・(iii)
    但し、上記式中の各元素記号は鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとし、上記式中の各記号は、以下のように定義される。
    :溶接金属部のN含有量(質量%)
    :母材のN含有量(質量%)
  4. 薄鋼板を用いた請求項1~3のいずれか1項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手。
  5. 水素製造装置に用いられる、請求項1~4のいずれか1項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手。
  6. 請求項1~5のいずれか1項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手を有する溶接構造物。
  7. 請求項1~5のいずれか1項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手に用いられる母鋼材であって、
    化学組成が、質量%で、
    C:0.15%以下、
    Si:1.0%以下、
    Mn:8.0~10.0%、
    P:0.030%以下、
    S:0.0030%以下、
    Cr:15.0~18.0%、
    Ni:7.0~9.0%、
    N:0.15~0.25%、
    B:0.0002~0.01%、
    Mg:0.0001~0.01%、
    Al:0.005~0.20%、
    Cu:1.0%未満、
    Mo:3.0%以下、
    O:0.005%以下、
    Ca:0.0005~0.01%、
    Nb:0~1.0%、
    Ti:0~1.0%、
    V:0~1.0%、
    W:0~2.0%、
    Zr:0~1.0%、
    Co:0~2.0%、
    Ga:0~0.10%、
    Hf:0~0.10%、
    REM:0~0.10%、
    残部:Feおよび不純物である、オーステナイト系ステンレス母鋼材。
  8. 請求項3に記載のオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法であって、
    シールドガスにNガスまたはNを含むガスを用いる、製造方法。
  9. 請求項3に記載のオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法であって、
    前記シールドガスは、トーチガス、バックガス、およびアフターガスの3種類に分類されるガスであり、
    前記トーチガスに、体積%で、1.0%以上のNを含有するガスを使用し、溶接を行う、請求項8に記載の製造方法。
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