JP3945396B2 - 炭酸ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤおよびそれを用いた溶接方法 - Google Patents

炭酸ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤおよびそれを用いた溶接方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、最も安定な溶滴の移行形態とされるスプレー移行が得られる炭酸ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤ(以下、溶接ワイヤという)と、その溶接ワイヤを用いた溶接方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
シールドガスとしてCO2 ガスを用いるガスシールドアーク溶接は、炭酸ガスが安価であるとともに、能率の良い溶接法であるので、鉄鋼材料の溶接に広く利用されている。特に自動溶接の急速な普及により、造船,建築,橋梁,自動車,建設機械等の種々の分野で使用されている。造船,建築,橋梁の分野では、厚板の高電流多層溶接に使用され、自動車,建設機械の分野では、薄板の隅肉溶接に使用されることが多い。
【0003】
Ar−(2〜40体積%)CO2 からなるArガスとCO2 ガスとの混合ガスをシールドガスとする溶接法(いわゆる混合ガスアーク溶接)は、溶滴が溶接ワイヤの直径よりも小さい微細なスプレー移行が可能となる。この溶滴のスプレー移行は、溶滴移行形態の中で最も優れており、スパッタの発生が少なく、ビード形状に優れ、高速溶接にも適していることが知られている。そのため混合ガスアーク溶接は、高品質な溶接を必要とする分野で利用されている。
【0004】
しかしながらArガスのコストは、CO2 ガスの5倍と高価であるから、実際の溶接施工においてはArガスの使用量を削減して、CO2 ガスの混合比率を50体積%以上とした混合ガスをシールドガスとして使用する場合が多い。このようなCO2 ガスの混合比率が50体積%以上のシールドガスを用いると、Ar−(2〜40体積%)CO2 からなるシールドガスを用いる溶接法(いわゆる混合ガスアーク溶接)に比べて10〜20倍の粗大な溶滴が溶接ワイヤ先端に懸垂し、アーク力によって揺れ動きながら移行(いわゆるグロビュール移行)する。このようなグロビュール移行が生じると、母材(すなわち鋼板)との短絡や再アークによるスパッタが多量に発生し、ビード形状が安定しない。特に高速溶接においては、ビード形状が凹凸(いわゆるハンピングビード)になりやすいという問題があった。
【0005】
この問題点に対して、Kの添加によってスパッタ発生量を低減する方法が特開平6-218574号公報に開示されている。しかしこの技術では、溶接速度を増加する場合やシールドガス中のCO2 を増加する場合には必ずしもスパッタ発生量の低減やビード形状の安定の効果は得られなかった。
【0006】
【特許文献1】
特開平6-218574号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように、CO2 ガスの混合比率が50体積%以上のシールドガスを用いると、通常の混合ガスアーク溶接(CO2 の混合比率2〜40体積%)に比べて、粗大な溶滴が溶接ワイヤ先端に懸垂し、アーク力によって揺れ動く。その結果、高速溶接では母材(すなわち鋼板)との不規則な短絡や再アークによるスパッタが増加し、ビード形状が不安定となるという問題があった。
【0008】
CO2 ガスを主成分(CO2 の混合比率50体積%以上)とするシールドガスを用いる場合の、このような問題点を解決するためには、溶滴のスプレー移行を達成する必要がある。
ところが、溶滴のスプレー移行は通常の混合ガスアーク溶接(CO2 の混合比率2〜40体積%)では可能であるが、CO2 ガスの混合比率が50体積%以上のシールドガスを用いて溶接を行なう場合にスプレー移行を達成することは極めて困難であった。
【0009】
本発明は上記の問題点に鑑み開発されたもので、CO2 ガスを主成分(CO2 の混合比率50体積%以上)とするシールドガスを用いる炭酸ガスシールドアーク溶接において、溶滴のスプレー移行を可能とし、高速溶接を行なってもスパッタ発生の低減のみならず、優れたビード形状が得られる溶接ワイヤ、およびその溶接ワイヤを用いた溶接方法を提案することを目的とするものである。
【0010】
本発明における炭酸ガスシールドアーク溶接とは、いわゆる混合ガスアーク溶接で用いるArガスとCO2 ガスとを混合したシールドガス(CO2 の混合比率2〜40体積%)に比べて、CO2 ガスを主体とするガス(CO2 の混合比率60体積%以上)をシールドガスとする溶接法を指す。なお本発明における炭酸ガスシールドアーク溶接は、主にCO2 ガスを用いる溶接法(いわゆる炭酸ガスアーク溶接)を指す。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、スパッタ発生の低減が可能な炭酸ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤ(すなわち溶接ワイヤ)の組成、およびその溶接ワイヤを用いた溶接方法について鋭意検討した。その結果、
(a) 希土類元素(以下、REM という)を溶接ワイヤに添加し、Ca含有量を規定することによって、陰極におけるアーク発生点を集中かつ安定させることが可能である、
(b) シールドガス中のCO2 を増加しても、通常とは逆の正極性(すなわち溶接ワイヤを陰極)とすることによって、スパッタ発生を低減することが可能である、
(c) 強脱酸元素であるTi,Zr,Alを溶接ワイヤに添加することによって、更に安定した溶接性が得られる
ことを見出した。本発明は、これらの知見に基づいてなされたものである。
【0012】
すなわち本発明は、正極性炭酸ガスシールドアーク溶接で用いられる溶接用鋼ワイヤであって、C:0.20質量%以下,Si:0.05〜2.5 質量%,Mn:0.25〜3.5 質量%,希土類元素: 0.025〜0.050 質量%,P:0.05質量%以下,S:0.05質量%以下,Ca:0.0008質量%以下を含有するとともに、 Ti 0.02 0.50 質量%、 Zr 0.02 0.50 質量%および Al 0.02 3.00 質量%のうちの1種または2種以上を含有し、必要に応じてK: 0.0001 0.0150 質量%、 Cr 0.02 3.0 質量%、 Ni 0.05 3.0 質量%、 Mo 0.05 1.5 質量%、 Cu 0.05 3.0 質量%、B: 0.0005 0.015 質量%、 Mg 0.001 0.20 質量%、 Nb 0.005 0.05 質量%およびV: 0.005 0.05 質量%の中から選ばれる1種または2種以上を含有し、残部が Fe および不可避的不純物からなる組成の鋼素線からなる炭酸ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤである。
【0013】
た本発明は、上記した炭酸ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤを用いて、CO2 60体積%以上のガスでアーク点をシールドし、正極性で溶接する炭酸ガスシールドアーク溶接方法である。
【0014】
なお、ここで鋼素線からなる溶接ワイヤとは、溶接用フラックスを内装せず、素材となる鋼素線を主体とするワイヤ(いわゆるソリッドワイヤ)を指す。 また本発明は、鋼素線の表面にめっきを施したり、あるいは潤滑剤を塗布したソリッドワイヤにも支障なく適用できる。
【0015】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の溶接ワイヤの素材となる鋼素線の成分を限定した理由について説明する。
C:0.20質量%以下
Cは、溶接金属の強度を確保するために重要な成分であるが、溶融メタルの粘性を低下させ流動性を向上させる作用を有する元素である。しかし多量に含有すると溶滴および溶融プールの挙動が不安定になるのみならず、溶接金属の靭性が低下する。したがって、Cは0.20質量%以下に限定した。なお、好ましくは0.01〜0.10質量%である。
【0016】
Si:0.05〜2.5 質量%
Siは、脱酸作用を有し、 溶接金属の脱酸のためには不可欠な元素である。Si含有量が0.05質量%未満では、溶融メタルの脱酸が不足し、溶接金属にブローホールが発生する。一方、 2.5質量%を超えると、溶接金属の靭性が著しく低下する。したがって、Siは0.05〜2.5 質量%の範囲内を満足する必要がある。
【0017】
Mn:0.25〜3.5 質量%
Mnは、Siと同様に、脱酸作用を有し、 溶融メタルの脱酸のためには不可欠な元素である。Mn含有量が0.25質量%未満では、溶融メタルの脱酸が不足し、溶接金属にブローホールが発生する。一方、 3.5質量%を超えると、溶接金属の靭性が低下する。したがって、Mnは0.25〜3.5 質量%の範囲内を満足する必要がある。
【0018】
REM : 0.025〜0.050 質量%
REM は、製鋼および鋳造時の介在物微細化および鋼素線の靭性向上に有用な元素である。ただし逆極性(すなわち溶接ワイヤを陽極)の炭酸ガスシールドアーク溶接においては、アーク集中に起因するスパッタの発生が増大するので、積極的には鋼素線に添加されない。しかし本発明の正極性の炭酸ガスシールドアーク溶接においては、溶滴のスプレー移行を促進するために不可欠の元素である。REM 含有量が 0.025質量%未満では、このような正極性の炭酸ガスシールドアーク溶接における効果が得られない。一方、 0.050質量%を超えると、溶接ワイヤの製造工程で割れの発生あるいは溶接の際の溶接金属の靭性低下を招く。したがって、REM は 0.025〜0.050 質量%の範囲内を満足する必要がある
【0019】
希土類元素(すなわち REM)は、周期表の3族に属する元素の総称である。本発明では、原子番号57〜71の元素を使用するのが好ましく、特にCe,Laが好適である。これらの元素を混合して使用する場合は、Ce:45〜80質量%,La:10〜45質量%含有する混合物が好ましい。
P:0.05質量%以下
Pは、鋼素線の融点を低下させるとともに電気抵抗率を向上させて、溶接ワイヤの溶融効率を向上させる元素である。さらに正極性の炭酸ガスシールドアーク溶接においては、アークを安定させる作用も有する。P含有量が0.05質量%を超えると、正極性の炭酸ガスシールドアーク溶接における溶融メタルの粘性が低下して、アークが不安定となる。その結果、小粒のスパッタが多量に発生するのみならず、溶接金属に高温割れが発生する危険性が増大する。したがって、Pは0.05質量%以下に限定した。
【0020】
S:0.05質量%以下
Sは、溶融メタルの粘性を低下させ、溶接ワイヤ先端に懸垂した溶滴の離脱を助け、正極性の炭酸ガスシールドアーク溶接においてアークを安定化する。また、溶融メタルの粘性を低下させてビードを平滑にし、溶落ちを抑制する作用も有する。S含有量が0.05質量%を超えると、小粒のスパッタが多量に発生するのみならず、溶接金属の靭性が低下する。したがって、Sは0.05質量%以下に限定した。
【0021】
Ca:0.0008質量%以下
Caは、製鋼および鋳造時に溶鋼に混入したり、あるいは伸線加工時に鋼素線に混入する不純物である。しかし正極性の炭酸ガスシールドアーク溶接では、高電流溶接においてスプレー移行の安定性を阻害する作用を有する。Ca含有量が0.0008質量%を超えると、REM 添加による安定なスプレー移行が得られない。したがってCa含有量は、0.0008質量%以下とした。
【0022】
K:0.0001〜0.0150質量%
Kは、正極性の炭酸ガスシールドアーク溶接でアークを広げ、低電流でも溶滴のスプレー移行を可能とする元素であり、溶滴そのものを微細化する作用を有する。そこで必要に応じて鋼素線にKを添加する。ただしKを添加する場合に、K含有量が0.0001質量%未満では、これらの効果が得られない。 一方、 0.0150質量%を超えると、溶接を行なう際にアーク長が増加し、溶接ワイヤの先端に懸垂した溶滴が不安定となり、スパッタが多量に発生する。したがってKを添加する場合は、Kが0.0001〜0.0150質量%の範囲内を満足するのが好ましい。なお、より好ましくは0.0003〜0.0030質量%である。なお、Kは沸点が約 760℃と低いので、鋼材を溶製する段階でKを添加すると、歩留りが著しく低い。そこで鋼素線を製造する段階で、鋼素線の表面にカリウム塩溶液を塗布して焼鈍を施すことによって、Kを鋼素線に安定して含有させることができる。
【0023】
さらに本発明では、鋼素線の成分は、上記した組成に加えて、Ti:0.02〜0.50質量%,Zr:0.02〜0.50質量%およびAl:0.02〜3.00質量%のうちの1種または2種以上を含有することが好ましい。 その理由について説明する。
Ti,Zr,Alは、いずれも強脱酸剤として作用し、さらに溶接金属の強度を増加する元素である。さらに溶融メタルの脱酸による粘性向上によってビード形状を安定化(すなわちハンピングビードを抑制)する作用も有する。このような効果を有する故に 300A以上の高電流溶接においては有効な元素であり、必要に応じて添加する。Ti含有量が0.02質量%未満,Zr含有量が0.02質量%未満,Al含有量が0.02質量%未満では、この効果が得られない。一方、Ti含有量が0.50質量%を超える場合,Zr含有量が0.50質量%を超える場合,Al含有量が3.00質量%を超える場合は、溶滴が粗大化して大粒のスパッタが多量に発生する。したがって、Ti,Zr,Alを添加する場合は、Ti:0.02〜0.50質量%,Zr:0.02〜0.50質量%,Al:0.02〜3.00質量%の範囲内を満足するのが好ましい。
【0024】
さらに必要に応じて以下の元素を含有させても良い。
Cr:0.02〜3.0 質量%,Ni:0.05〜3.0 質量%,Mo:0.05〜1.5 質量%,Cu:0.05〜3.0 質量%,B:0.0005〜0.015 質量%,Mg: 0.001〜0.20質量%
Cr,Ni,Mo,Cu,B,Mgは、いずれも溶接金属の強度を増加させ、かつ耐候性を向上させる元素である。これらの元素の含有量が微少である場合は、このような効果が得られない。一方、過剰に含有させると、溶接金属の靭性低下を招く。
したがってCr,Ni,Mo,Cu,B,Mgを含有させる場合は、それぞれCr:0.02〜3.0 質量%,Ni:0.05〜3.0 質量%,Mo:0.05〜1.5 質量%,Cu:0.05〜3.0 質量%,B:0.0005〜0.015 質量%,Mg: 0.001〜0.20質量%の範囲内を満足するのが好ましい。
【0025】
Nb: 0.005〜0.05質量%,V: 0.005〜0.05質量%
Nb,Vは、いずれも溶接金属の強度,靭性を増加させ、かつアークの安定性を向上させる元素である。これらの元素の含有量が微少である場合は、このような効果が得られない。一方、過剰に含有させると、溶接金属の靭性低下を招く。したがってNb,Vを含有させる場合は、それぞれNb: 0.005〜0.05質量%,V: 0.005〜0.05質量%の範囲内を満足するのが好ましい。
【0026】
上記した鋼素線の成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。たとえばOあるいはNが代表的な不可避的不純物であり、鋼材を溶製する段階や鋼素線を製造する段階で不可避的に混入する。 Oは 0.030質量%以下,Nは 0.020質量%以下に低減するのが好ましい。
次に、本発明の溶接ワイヤの製造方法について説明する。
【0027】
転炉または電気炉等を用いて、上記した組成を有する溶鋼を溶製する。この溶鋼の溶製方法は、特定の技術に限定せず、従来から知られている技術を使用する。次いで、得られた溶鋼を、連続鋳造法や造塊法等によって鋼材(たとえばビレット等)を製造する。 この鋼材を加熱した後、熱間圧延を施し、さらに乾式の冷間圧延(すなわち伸線)を施して鋼素線を製造する。 熱間圧延や冷間圧延の操業条件は、特定の条件に限定せず、所望の寸法形状の鋼素線を製造する条件であれば良い。
【0028】
さらに鋼素線は、焼鈍−酸洗−銅めっき−伸線加工−潤滑剤塗布の工程を必要に応じて施して、所定の製品すなわち溶接ワイヤとなる。
正極性の炭酸ガスシールドアーク溶接では、逆極性に比べて、給電不良に起因してアークが不安定になりやすい。しかし、鋼素線の表面に厚さ 0.6μm以上のCuめっきを施すことによって、給電不良を防止できる。なおCuめっきの厚さ 0.8μm以上とすると、給電不良防止の効果が顕著になるので一層好ましい。このようにCuめっきを厚目付とすることによって、給電チップの損耗を低減するという効果も得られる。
【0029】
しかし鋼素線のCu含有量およびその表面のめっき層のCu含有量が合計 3.0質量%を超えると、溶接金属の靭性が著しく低下する。したがって溶接ワイヤのCu含有量(すなわち鋼素線中のCuとめっき層中のCuの合計)を 3.0質量%以下とするのが好ましい。
また給電の安定性を高めて、溶滴のスプレー移行を促進するために、溶接ワイヤ表面の平坦度(すなわち実表面積/理論表面積)を1.01未満とすることが肝要である。溶接ワイヤ表面の平坦度は、鋼組成の伸線加工におけるダイス管理を厳格に行なうことによって、1.01未満に維持することが可能である。
【0030】
鋼素線の表面に潤滑油を塗布した溶接ワイヤあるいは鋼素線表面のCuめっき層に潤滑油を塗布した溶接ワイヤを用いると、溶接ワイヤの送給性を向上できる。
潤滑剤の塗布量は、溶接ワイヤ10kgあたり0.35〜1.7 gの範囲内を満足するのが好ましい。
このようにして溶接ワイヤを製造する過程で、溶接ワイヤの表面に種々の不純物が付着する。特に固体の不純物の付着量を溶接ワイヤ10kgあたり0.01g以下に抑制すると、給電の安定性が一層向上する。
【0031】
【実施例】
連続鋳造によって製造されたビレットを熱間圧延して、直径 5.5〜7.0mm の線材とした。次いで冷間圧延(すなわち伸線)によって直径 2.0〜2.8mm の鋼素線とし、さらに2〜30体積%のクエン酸3カリウム水溶液を鋼素線1kgあたり30〜50g塗布した。
【0032】
その後、この鋼素線を、露点−2℃以下,酸素濃度 200体積ppm 以下,二酸化炭素濃度 0.1体積%以下の窒素雰囲気中で焼鈍した。このとき、鋼素線の直径,クエン酸カリウム塩水溶液の濃度,焼鈍温度,焼鈍時間を調整して、鋼素線の内部酸化によるK含有量,O含有量を調整した。
このようにして焼鈍した後、 鋼素線に酸洗を施し、次いで必要に応じて鋼素線の表面にCuめっきを施した。さらに冷間で伸線加工(湿式伸線)を施して、直径 0.8〜1.6mm の溶接ワイヤを製造した。この溶接ワイヤの表面に潤滑油を塗布(溶接ワイヤ10kgあたり 0.4〜0.8 g)した。伸線することによって、十分な送給性を確保できるように調整した。
【0033】
得られた溶接ワイヤの鋼素線の成分は、表1に示す通りである。
【0035】
【表1】
Figure 0003945396
【0036】
これらの溶接ワイヤを用いて正極性の炭酸ガスシールドアーク溶接を行ない、溶滴の移行形態およびビード形状を調査した。その結果は表に示す通りである。
【0037】
【表2】
Figure 0003945396
【0038】
なお、溶滴の移行形態およびビード形状は以下の要領で評価した。
(A) 溶滴の移行形態
板厚19mm,幅70mm,長さ500mm の鋼板(SM490B相当)を用いて、突き出し20mm,溶接速度40cm/min ,アーク電圧30Vでビードオン溶接を行なった。溶接電流 230Aでスプレー移行が確認できたものを優(◎),溶接電流 250Aでスプレー移行が確認できたものを良(○),溶接電流 270Aでスプレー移行が確認できたものを可(△),溶接電流 300Aでもプレー移行が確認できなかったものを不可(×)として評価した。
【0039】
(B) ビード形状
板厚19mm,幅70mm,長さ500mm の鋼板(SM490B相当)を用いて、突き出し20mm,溶接速度40cm/min ,アーク電圧30V,溶接電流 300Aでビードオン溶接を行なった。溶接が終了した後、溶接ビードの断面を観察し、溶接ビードの長手方向に凹凸の現われたものを不可(×),その他を良(○)として評価した。
【0040】
なお、これらの溶接試験で用いた共通の溶接条件は表に示す通りである。
【0041】
【表3】
Figure 0003945396
【0042】
から明らかなように、発明例では安定なスプレー移行が可能であった。特に、鋼素線中の REM含有量を 250質量ppm 以上とすることによって、低電流でのスプレー移行が可能となった。また、Kを1質量ppm 以上とすることによって、さらに低電流でのスプレー移行が可能となった。
鋼素線中のTi,Zr,Al含有量を、それぞれ0.02質量%以上とすることによって、良好なビード形状が得られた。
【0043】
一方、 鋼素線の成分が本発明の範囲を外れる比較例では、溶接電流 300Aでもスプレー移行を確認できなかった。
【0044】
【発明の効果】
本発明では、正極性の炭酸ガスシールドアーク溶接において、アークの安定性に優れたスプレー移行を達成でき、薄鋼板や厚鋼板の安定した継手溶接が可能である。しかも平滑なビード形状を得ることができる。

Claims (2)

  1. 正極性炭酸ガスシールドアーク溶接で用いられる溶接用鋼ワイヤであって、C:0.20質量%以下、Si:0.05〜2.5 質量%、Mn:0.25〜3.5 質量%、希土類元素: 0.025〜0.050 質量%、P:0.05質量%以下、S:0.05質量%以下、Ca:0.0008質量%以下を含有するとともに、 Ti 0.02 0.50 質量%、 Zr 0.02 0.50 質量%および Al 0.02 3.00 質量%のうちの1種または2種以上を含有し、必要に応じてK: 0.0001 0.0150 質量%、 Cr 0.02 3.0 質量%、 Ni 0.05 3.0 質量%、 Mo 0.05 1.5 質量%、 Cu 0.05 3.0 質量%、B: 0.0005 0.015 質量%、 Mg 0.001 0.20 質量%、 Nb 0.005 0.05 質量%およびV: 0.005 0.05 質量%の中から選ばれる1種または2種以上を含有し、残部が Fe および不可避的不純物からなる組成の鋼素線からなることを特徴とする炭酸ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤ。
  2. 請求項1に記載の炭酸ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤを用いて、CO2 ガスでアーク点をシールドし、正極性で溶接することを特徴とする炭酸ガスシールドアーク溶接方法。
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