JP3941755B2 - 炭酸ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤおよびそれを用いた溶接方法 - Google Patents
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[REM ]:鋼素線の希土類元素含有量(質量%)
[O] :鋼素線のO含有量(質量%)
すなわち本発明は、正極性炭酸ガスシールドアーク溶接に使用する溶接用鋼ワイヤであって、C:0.20質量%以下,Si:0.05〜2.5 質量%,Mn:0.25〜3.5 質量%,O:0.0010〜0.0080質量%,希土類元素: 0.025〜0.100 質量%,P:0.05質量%以下,S:0.05質量%以下,Ca: 0.003質量%以下に加えて、Ti:0.02〜0.50質量%および/またはAl:0.02〜0.24質量%を含有するとともに、必要に応じてCr:0.02〜3.0 質量%,Ni:0.05〜3.0 質量%,Mo:0.05〜1.5 質量%,Cu:0.05〜3.0 質量%,B:0.0005〜0.015 質量%,Mg: 0.001〜0.2 質量%,Nb: 0.005〜0.5 質量%およびV: 0.005〜0.5 質量%の中から選ばれる1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物であり、かつ下記の (1)式で算出されるD値が0.00以上である鋼素線からなる炭酸ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤである。
[REM ]:鋼素線の希土類元素含有量(質量%)
[O] :鋼素線のO含有量(質量%)
また本発明は、炭酸ガスシールドアーク溶接方法において、C:0.20質量%以下,Si:0.05〜2.5 質量%,Mn:0.25〜3.5 質量%,O:0.0010〜0.0080質量%,希土類元素: 0.025〜0.100 質量%,P:0.05質量%以下,S:0.05質量%以下,Ca: 0.003質量%以下に加えて、Ti:0.02〜0.50質量%および/またはAl:0.02〜0.24質量%を含有するとともに、必要に応じてCr:0.02〜3.0 質量%,Ni:0.05〜3.0 質量%,Mo:0.05〜1.5 質量%,Cu:0.05〜3.0 質量%,B:0.0005〜0.015 質量%,Mg: 0.001〜0.2 質量%,Nb: 0.005〜0.5 質量%およびV: 0.005〜0.5 質量%の中から選ばれる1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物であり、かつ下記の (1)式で算出されるD値が0.00以上である鋼素線からなる炭酸ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤを使用し、CO2 ,O2 とArとを混合してCO2 濃度を60体積%以上とした混合ガスを用いてアーク点をシールドし、正極性で溶接を行なう炭酸ガスシールドアーク溶接方法である。
[REM ]:鋼素線の希土類元素含有量(質量%)
[O] :鋼素線のO含有量(質量%)
前記した炭酸ガスシールドアーク溶接方法の発明では、混合ガスのCO2 濃度が 100体積%(JIS K1106)であることが好ましい。
Cは、溶接金属の強度を確保するのに必要な元素であり、溶融メタルの粘性を低下させ流動性を向上させる効果がある。しかしC含有量が0.20質量%を超えると、溶滴および溶融メタルの挙動が不安定となるのみならず、溶接金属の靭性の低下を招く。したがって、Cは0.20質量%以下とした。一方、C含有量を過剰に減少させると溶接金属の強度を確保できない。そのため、 0.003〜0.20質量%とするのが好ましい。なお、0.01〜0.10質量%が一層好ましい。
Siは、脱酸作用を有し、溶融メタルの脱酸のためには不可欠な元素である。Si含有量が0.05質量%未満では、溶融メタルの脱酸が不足し、溶接金属にブロー欠陥が発生する。一方、 2.5質量%を超えると、溶接金属の靱性が著しく低下する。したがって、Siは0.05〜2.5 質量%の範囲内を満足する必要がある。さらに正極性(すなわち溶接用鋼ワイヤをマイナス極)の炭酸ガスシールドアーク溶接におけるアークの広がりを抑え、溶滴の移行回数を増大させるためには、0.25質量%以上が望ましい。そのため、0.25〜2.5 質量%とするのが好ましい。
Mnは、Siと同様に脱酸作用を有し、溶融メタルの脱酸のためには不可欠な元素である。Mn含有量が0.25質量%未満では、溶融メタルの脱酸が不足し、溶接金属にブローホールが発生する。一方、 3.5質量%を超えると、溶接金属の靭性が低下する。したがって、Mnは0.25〜3.5 質量%の範囲内を満足する必要がある。なお、溶融メタルの脱酸を促進し、ブローホールを防止するためには、0.45質量%以上が望ましい。そのため、0.45〜3.5 質量%とするのが好ましい。
REM は、製鋼および鋳造時の介在物の微細化,溶接金属の靱性改善のために有効な元素である。ただし、通常の逆極性(すなわち溶接用鋼ワイヤをプラス極)の炭酸ガスシールドアーク溶接においては、鋼素線中にREM を添加するとアークの集中が生じて、スパッタを低減する効果が得られない。しかし正極性の炭酸ガスシールドアーク溶接においては、溶滴移行を安定化するために不可欠な元素である。REM 含有量が 0.025質量%未満では、この溶滴移行の安定化効果が得られない。一方、 0.100質量%を超えると、溶接用鋼ワイヤの製造工程で割れが生じたり、溶接金属の靭性の低下を招く。したがって、REM は 0.025〜0.100 質量%の範囲内を満足する必要がある。
Pは、鋼の融点を低下させるとともに、電気抵抗率を向上させ、溶融効率を向上させる元素である。さらに正極性の炭酸ガスシールドアーク溶接において、溶滴を微細化し、アークを安定化する作用も有する。しかしP含有量が0.05質量%を超えると、正極性の炭酸ガスシールドアーク溶接において溶融メタルの粘性が著しく低下し、アークが不安定となり、小粒のスパッタが増加する。また、溶接金属の高温割れを生じる危険性が増大する。したがって、Pは0.05質量%以下とした。なお、好ましくは0.03質量%以下である。一方、 鋼素線の鋼材を溶製する製鋼段階でPを低減するためには長時間を要するので、生産性向上の観点から 0.002質量%以上が望ましい。そのため、 0.002〜0.03質量%とするのが好ましい。
Sは、溶融メタルの粘性を低下させ、溶接用鋼ワイヤの先端に懸垂した溶滴の離脱を促進し、正極性の炭酸ガスシールドアーク溶接においてアークを安定化する。またSは、正極性の炭酸ガスシールドアーク溶接においてアークを広げ、溶融メタルの粘性を低下させてビードを平滑にする効果も有する。しかしS含有量が0.05質量%を超えると、小粒のスパッタが増加するとともに、溶接金属の靭性が低下する。したがって、Sは0.05質量%以下とした。なお、好ましくは0.02質量%以下である。一方、 鋼素線の鋼材を溶製する製鋼段階でSを低減するためには長時間を要するので、生産性向上の観点から 0.002質量%以上が望ましい。そのため、 0.002〜0.02質量%とするのが好ましい。
Oは、正極性の炭酸ガスシールドアーク溶接において溶接用鋼ワイヤの先端に懸垂した溶滴に発生するアーク点を不安定にし、溶滴を微細化する作用がある。O含有量が、0.0010質量%未満では、そのような効果は得られない。一方、 0.0080質量%を超えると、正極性の高電流溶接におけるアークの安定化というREM 添加の効果が損なわれ、溶滴の揺動が増大してスパッタが多量に発生する。またOは、鋼素線の鋼材を溶製する製鋼段階で REMと激しく反応してスラグを形成する作用を有しており、O含有量が0.0080質量%を超えると、REM の歩留りが著しく低下する。したがって、Oは0.0010〜0.0080質量%の範囲内を満足する必要がある。なお、好ましくは0.0010〜0.0050質量%である。
[REM ]:鋼素線のREM 含有量(質量%)
[O] :鋼素線のO含有量(質量%)
D≧0.00 ・・・ (2)
なおD値は、好ましくはD≧0.05である。
Caは、製鋼および鋳造時に不純物として溶鋼に混入したり、あるいは伸線加工時に不純物として鋼素線に混入する。正極性の炭酸ガスシールドアーク溶接では、Ca含有量が 0.003質量%を超えると、高電流溶接におけるアークの安定化というREM 添加の効果とO添加による溶滴の微細化効果が損なわれる。したがって、Caは 0.003質量%以下とする。
Ti,Alは、いずれも強脱酸剤として作用するとともに、溶接金属の強度を増加する元素である。さらに溶融メタルの脱酸によって粘性を低下してビード形状を安定化(すなわちハンピングビードを抑制)する効果がある。このような効果を有する故に 350A以上の高電流溶接において有効な元素である。Tiが0.02質量%未満,Alが0.02質量%未満では、この効果は得られない。一方、 Tiが0.50質量%を超える場合,Alが0.24質量%を超える場合は、溶滴が粗大化して大粒のスパッタが多量に発生する。したがって、Ti,Alは、Ti:0.02〜0.50質量%,Al:0.02〜0.24質量%の範囲内を満足する必要がある。
K:0.0001〜0.015 質量%
Kは、正極性の炭酸ガスシールドアーク溶接においてアークを広げ、スプレー移行の低電流化を促進し、溶滴を微細化する効果を有する。そこで、必要に応じて鋼素線に添加する。K含有量が0.0001質量%未満では、この効果は得られない。一方、 0.015質量%を超えると、アーク長が長くなり、溶接用鋼ワイヤの先端に懸垂した溶滴が不安定となり、スパッタの発生量が増加する。したがって、Kは0.0001〜0.015 質量%の範囲内を満足するのが好ましい。なお、好ましくは0.0003〜0.003 質量%である。
Cr,Ni,Mo,Cu,B,Mgは、いずれも溶接金属の強度を増加し、耐候性を向上させる元素である。これらの元素の含有量が微少である場合は、このような効果は得られない。一方、過剰に添加すると、溶接金属の靭性の低下を招く。したがって、Cr,Ni,Mo,Cu,B,Mgを含有する場合は、Cr:0.02〜3.0 質量%,Ni:0.05〜3.0 質量%,Mo:0.05〜1.5 質量%,Cu:0.05〜3.0 質量%,B:0.0005〜0.015 質量%,Mg: 0.001〜0.2 質量%の範囲内を満足するのが好ましい。
Nb,Vは、いずれも溶接金属の強度,靭性を向上し、アークの安定性を向上させる元素である。これらの元素の含有量が微少である場合は、このような効果は得られない。一方、過剰に添加すると、溶接金属の靭性の低下を招く。したがって、Nb,Vを含有する場合は、Nb: 0.005〜0.5 質量%,V: 0.005〜0.5 質量%の範囲内を満足するのが好ましい。
Claims (3)
- 正極性炭酸ガスシールドアーク溶接に使用する溶接用鋼ワイヤであって、C:0.20質量%以下、Si:0.05〜2.5 質量%、Mn:0.25〜3.5 質量%、O:0.0010〜0.0080質量%、希土類元素: 0.025〜0.100 質量%、P:0.05質量%以下、S:0.05質量%以下、Ca: 0.003質量%以下に加えて、Ti:0.02〜0.50質量%および/またはAl:0.02〜0.24質量%を含有するとともに、必要に応じてCr:0.02〜3.0 質量%、Ni:0.05〜3.0 質量%、Mo:0.05〜1.5 質量%、Cu:0.05〜3.0 質量%、B:0.0005〜0.015 質量%、Mg: 0.001〜0.2 質量%、Nb: 0.005〜0.5 質量%およびV: 0.005〜0.5 質量%の中から選ばれる1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物であり、かつ下記の (1)式で算出されるD値が0.00以上である鋼素線からなることを特徴とする炭酸ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤ。
D=[REM ]−9×[O]+ 0.5 ・・・ (1)
[REM ]:鋼素線の希土類元素含有量(質量%)
[O] :鋼素線のO含有量(質量%) - 炭酸ガスシールドアーク溶接方法において、C:0.20質量%以下、Si:0.05〜2.5 質量%、Mn:0.25〜3.5 質量%、O:0.0010〜0.0080質量%、希土類元素: 0.025〜0.100 質量%、P:0.05質量%以下、S:0.05質量%以下、Ca: 0.003質量%以下に加えて、Ti:0.02〜0.50質量%および/またはAl:0.02〜0.24質量%を含有するとともに、必要に応じてCr:0.02〜3.0 質量%、Ni:0.05〜3.0 質量%、Mo:0.05〜1.5 質量%、Cu:0.05〜3.0 質量%、B:0.0005〜0.015 質量%、Mg: 0.001〜0.2 質量%、Nb: 0.005〜0.5 質量%およびV: 0.005〜0.5 質量%の中から選ばれる1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物であり、かつ下記の (1)式で算出されるD値が0.00以上である鋼素線からなる炭酸ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤを使用し、CO2 、O2 とArとを混合してCO2 濃度を60体積%以上とした混合ガスを用いてアーク点をシールドし、正極性で溶接を行なうことを特徴とする炭酸ガスシールドアーク溶接方法。
D=[REM ]−9×[O]+ 0.5 ・・・ (1)
[REM ]:鋼素線の希土類元素含有量(質量%)
[O] :鋼素線のO含有量(質量%) - 前記混合ガスのCO2 濃度が 100体積%であることを特徴とする請求項2に記載の炭酸ガスシールドアーク溶接方法。
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