JP5057615B2 - 溶接継手の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、消耗電極式ガスシールドアーク溶接法による溶接継手の製造方法に係り、とくに、横向き溶接、立向き溶接、上向き溶接における溶融金属の垂れ防止やビード形状の改善に関する。
【0002】
【従来の技術】
消耗電極式ガスシールドアーク溶接法は、シールドガス雰囲気中で、連続的に供給される消耗電極(溶接ワイヤ)と、被溶接材(母材)とをアーク溶融して溶接金属とする溶接方法で、シールドガスの種類によりMAG溶接、MIG溶接に分類される。MAG溶接は、炭酸ガス(100 %CO2 ) 、または炭酸ガスや酸素とアルゴンとの混合ガスのような酸化性(活性)のガスを用いるアーク溶接であり、安価なガスを用いることができることから、造船、橋梁、建築、貯糟、配管、水圧鉄管など種々の溶接施工分野で利用されている。一方、MIG溶接は、アルゴンやヘリウム等の不活性ガスを用いるアーク溶接であるが、アークの安定性の観点からこれらの不活性ガスに少量の炭酸ガスや酸素ガス等の活性ガスを混合したものを用いることが多い。
【0003】
このような炭酸ガスや酸素ガス等の活性ガスを混合したシールドガスを用いる消耗電極式ガスシールドアーク溶接法では、シールドガス中の炭酸ガスや酸素ガスから溶融金属中にOが混入し、溶融金属の粘性が低下するという問題がある。そのため、炭酸ガスや酸素ガス等の活性ガスを混合したシールドガスを用いる消耗電極式ガスシールドアーク溶接法で溶接継手を製造するに際し、横向き、立向き、上向き等の下向き以外の姿勢で溶接する場合に、大電流で高溶着速度の溶接条件で行うと、溶融金属の垂れやビード形状不良が多発する。
【0004】
したがって、炭酸ガスや酸素ガス等の活性ガスを混合したシールドガスを用いる消耗電極式ガスシールドアーク溶接法を用いて下向き姿勢以外の姿勢(横向き、立向き、上向き)を含む溶接施工を行う場合には、低電流で低溶着速度の溶接条件で行わざるを得なかった。
一方、シールドガスとして、活性ガスを用いる消耗電極式ガスシールドアーク溶接法(MAG溶接)でも、溶接ワイヤとしてフラックス入りワイヤを使用することにより、溶融金属よりも融点の低いスラグ層が溶融金属の外側に形成され溶融金属を保持するため、高電流で高溶着速度の溶接条件でも比較的良好なビード形状を得ることが可能である。しかし、積層溶接を行う場合には、溶接パス間でスラグを除去するスラグ除去作業を必要とする。このパス間でのスラグ除去作業は多大の工数を必要とする場合があり、溶接施工全体の能率を低下させる要因となる。
【0005】
さらに、フラックス入りワイヤを用いた消耗電極式ガスシールドアーク溶接法は、スラグ剥離性の観点から、狭い角度の開先を使用する溶接(狭開先溶接)への適用が困難となり、広い角度の開先を用いざるを得ない。広い角度の開先を使用する溶接は、溶着量を大きくする必要があり、 溶接能率の観点から不利となる。
【0006】
一方、特開平8-243783号公報には、C:0.15重量%以下、Si:0.3 〜1.10重量%、Mn:0.9 〜2.6 重量%、P:0.030 重量%以下、S:0.007 〜0.022 重量%を含有し残部Feおよび不可避的不純物からなり、直径2.0mm 以下のシールドガスアーク溶接用ワイヤが提案されている。この特開平8-243783号公報に記載された溶接用ワイヤは、全姿勢溶接の適用を余儀なくされる、例えば固定管の円周溶接等の溶接施工においても、上向から上進位置における溶接ビードの垂れや偏肉を回避して、良好なビード形状が得られるとされる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平8-243783号公報に記載された溶接ワイヤは、使用可能な電流範囲が 125〜 150Aと低く、高電流を用いた高能率溶接には適用できないという問題があった。
本発明は、上記のような従来技術の問題に鑑みてなされたものであり、消耗電極式ガスシールドアーク溶接用として好適な、少なくとも横向き、立向き、および上向きのうちの1姿勢を含む全姿勢溶接において、溶融金属の垂れを防止でき、良好なビード形状が得られ、高能率の溶接施工作業を可能とする、消耗電極式ガスシールドアーク法を用いたビード形状の優れた溶接継手の製造方法を提案することを目的とする。なお、本発明でいう、全姿勢とは、下向き姿勢、横向き姿勢、立向き姿勢、上向き姿勢を意味する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、横向き、立向き、および上向きを含む全姿勢溶接において良好な溶接ビード形状を得るためには溶融金属中のO量を低位に維持し、溶融金属の粘性を高く保持する必要があることに鑑みて、シールドガス中に炭酸ガス(CO2 )や酸素ガス(O2)を混合しない、不活性ガスのみのシールドガスとすることが有利であると考えた。しかし、シールドガスにCO2 やO2を混合しない場合には、溶融金属表面に、陰極点となる酸化被膜が形成されないため、アークが不安定となり、溶接作業が事実上できないか、あるいは溶接能率が著しく低下し、ビード形状が劣化するという問題があった。
【0009】
このような問題に対し、本発明者らは、シールドガスを不活性ガスのみとしてシールドガス溶接を行っても、希土類元素を適正量含有し、酸素(O)含有量を適正値以下に低減した鋼ワイヤを消耗電極として用いることにより、安定したアークで溶接することができることを見いだした。
また、希土類元素を適正量含有し、O含有量を低減した鋼ワイヤを用い、シールドガスを不活性ガスとすることにより、溶融金属へのOの混入が防止でき、溶融金属の粘性を高く維持でき、高電流で高溶着速度条件の横向き、立向き、および上向きのうちの少なくとも1姿勢を含む溶接施工を行っても、良好なビード形状を有する溶接継手が製造できることを知見した。
【0010】
本発明は、上記した知見に基づいて、完成されたものである。
すなわち、本発明の要旨はつぎのとおりである。
(1)固定管である鋼材を、直流の消耗電極式ガスシールドアーク溶接法を用いて円周溶接し、溶接継手を製造するに当り、消耗電極として、希土類元素を0.010〜0.300質量%、Oを0.01質量%以下含有する鋼ワイヤを、シールドガスとしてAr:80〜30体積%とし、残部をHeとする不活性ガスを、用い、溶接電流を150〜300A、溶接入熱を5.0〜25.0kJ/cmとして、横向き、立向き、上向きのうちの少なくとも1姿勢を含む姿勢で円周溶接することを特徴とするビード形状に優れた溶接継手の製造方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明で使用する溶接用鋼ワイヤは、希土類元素(Rare Earth Material 、以下、REM という)を0.010 〜0.300 質量%、Oを0.01質量%以下含有する鋼ワイヤである。まず、本発明で使用する溶接用鋼ワイヤの組成限定理由について説明する。なお、組成における質量%は単に%で記す。
【0012】
REM :0.010 〜0.300 %
REM は、シールドガスを不活性ガスとして消耗電極式ガスシールドアーク溶接(MIG 溶接)を行う場合に、溶融金属表面に陰極点を形成し、アークを安定化させる効果を有する。REM 含有量が0.010 %未満では、アークを安定させる効果が得られない。一方、0.300 %を超える含有は、溶接金属中の介在物が増加し溶接金属特性が低下するうえ、ワイヤ製造時に鋼塊割れ、伸線不良などの製造不良が発生する危険性が増加する。このため、本発明では、REM は0.010 〜0.300 %の範囲に限定した。なお、アークの安定性と溶接継手特性およびワイヤ製造時の製造歩留を高いレベルで両立させるという観点からは、REM は0.030 〜0.200 %の範囲とすることが好ましい。
【0013】
なお、REM は、Sc、Yあるいは原子番号57(La)〜原子番号71(Lu)の元素の総称であり、本発明ではこれらの元素のうちから1種または2種以上を用いることができる。なお、入手の容易さからは、LaあるいはCeとすることが好ましい。また、2種以上の元素を混合して使用する場合は、REM の含有量はそれらの合計量が0.010 〜0.300 %の範囲内とすることはいうまでもない。
【0014】
O:0.01%以下
Oは、溶融金属の粘性を低下させ、上向き、横向き、立向き姿勢溶接時に溶融金属の垂れやビード形成不良を発生させ、溶接品質および溶接能率を低下させる。このため、溶融金属中のO含有量はできるだけ低減することが好ましいが、シールドガスを不活性ガス雰囲気とした場合には、溶接用鋼ワイヤ中のO含有量が0.01%以下であれば、溶融金属の著しい粘性低下は避けられる。このようなことから、本発明では溶接用鋼ワイヤのO含有量を0.01%以下に限定した。なお、高電流で高溶着速度の溶接条件においても良好なビード形状の溶接継手を得るという観点からは、0.005 %以下とすることが好ましい。なお、ワイヤ製造時のO含有量低減にかかる経済的な負荷を低減する観点から、O含有量は0.0005%以上とすることが好ましい。
【0015】
本発明で使用する鋼ワイヤは、REM 、O以外の他の成分元素の含有量はとくに規定する必要はなく、他の成分元素の含有量は、用途(被溶接鋼材の種類)に応じ、適宜決定すればよい。
被溶接鋼材が軟鋼または高張力鋼等の普通鋼の場合には、REM 、O以外のC,Si,Mn 等の他の成分元素の含有量は、被溶接鋼材の強度に応じ、例えば、JIS Z3312 に規定される、YGW11 〜YGW24 の組成に準拠した範囲とすることができる。
【0016】
具体的な組成で例示すれば、被溶接鋼材が軟鋼、高張力鋼の場合には、REM :0.010 〜0.300 %、O:0.01%以下を含み、さらに、C:0.15%以下、Si:1.00%以下、Mn:2.50%以下、P:0.025 %以下、S:0.025 %以下を含有し、あるいはさらに、Cu:0.50%以下、Ni:0.80%以下、Mo:0.40%以下、Al:0.05%以下の1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成とすることが好ましい。
【0017】
また、被溶接鋼材がステンレス鋼の場合には、REM 、O以外のC,Si,Mn 等の他の成分元素の含有量は、被溶接鋼材の種類に応じ、例えば、JIS Z3321 に規定される、Y308,Y309,Y310,Y312,Y316,Y317,Y321,Y347,Y410,Y430 等の組成に準拠した範囲とすることができる。
具体的な組成で例示すれば、被溶接鋼材がマルテンサイト系ステンレス鋼の場合には、REM :0.010 〜0.300 %、O:0.01%以下を含み、さらに、C:0.15%以下、Si:1.00%以下、Mn:2.00%以下、Cr:11.00 〜15.00 %、P:0.025 %以下、S:0.025 %以下を含有し、あるいはさらにNi:8.00%以下、Mo:4.00%以下の1種または2種を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成とすることが好ましい。
【0018】
また、被溶接鋼材がフェライト系ステンレスの場合には、希土類元素:0.010 〜0.300 %、O:0.01%以下を含み、さらに、C:0.15%以下、Si:3.00%以下、Mn:1.00%以下、Cr:11.00 〜 30.00、P:0.025 %以下、あるいはさらにNi:8.00%以下、Mo:4.00%以下の1種または2種を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成とすることが好ましい。
【0019】
被溶接鋼材がオーステナイト系ステンレス鋼の場合には、REM :0.010 〜0.300 %、O:0.01%以下を含み、さらに、C:0.15%以下、Si:1.00%以下、Mn:2.50%以下、Cr:14.50 〜30.00 %、Ni:7.50〜15.00 %、P:0.025 %以下、S:0.025 %以下を含有し、あるいはさらに、Mo:4.00%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成とすることが好ましい。
【0020】
本発明の溶接継手の製造方法では、シールドガスとして不活性ガスを用いるが、不活性ガスとしてはAr、He、またはArとHeの混合ガスを用いることが好ましい。ArとHeの混合ガスを使用する場合には、その混合比は、アークの指向性と溶込み深さを確保する観点から、Ar:80〜30体積%とし、残部をHeとすることが好ましい。上記したようなシールドガスとすることにより、溶融金属のOが低位に抑制され、溶融金属の粘性を高く維持することができる。
【0021】
なお、ガスシールドアーク溶接を行う際の極性は、消耗電極である溶接ワイヤをプラス側とする逆極性が好ましい。逆極性のガスシールドアーク溶接を行うと、低電流から高電流まで安定したアークが得られ、溶込みが深くなるからである。
また、溶接入熱が、5.0kJ/cm未満では、ハンピングビードが発生し、一方、25.0kJ/cm を超えると、上向き姿勢や立向き姿勢でビードの垂れが発生するため、本発明では溶接入熱を5.0 〜25.0kJ/cm の範囲に限定した。
【0022】
本発明の溶接継手の製造方法によれば、被溶接材である鋼材としては、炭素鋼、高張力鋼等の普通鋼、および各種ステンレス鋼がいずれも好適に使用できる。とくに、全姿勢溶接が余儀無くされる、各種配管、パイプライン、水圧鉄管等の現地溶接施工に要求される鋼管の円周溶接、例えば、鋼管(鋼材)を水平方向、垂直方向あるいは傾斜方向に突き合わせて、端部同士の溶接を行う場合に好適である。
【0023】
本発明の溶接継手の製造方法によれば、少なくとも横向き、立向き、上向きのうちの1姿勢を含む溶接姿勢(全姿勢溶接)で溶接しても、良好なビード形状と、高溶着速度を達成できる。
【0024】
【実施例】
(実施例1)
表1に示す組成のマルテンサイト系ステンレス鋼鋼管(直径:178mm φ、肉厚:12.7mm)の端面同士を突き合わせて、表2に示す組成の鋼ワイヤを用い、表3に示す溶接条件で、消耗電極式ガスシールドアーク溶接を行い、溶接継手(鋼管円周継手)を作製した。なお、溶接は、鋼管を垂直姿勢に固定し、横向き姿勢で行う円周溶接とした。なお、開先形状は、図1に示す底面にR加工を施した開先とした。
【0025】
また、シールドガスとしては、ArとHeの混合ガス(不活性ガス)を使用した。なお、 シールドガスとして、ArとHeの混合ガス(不活性ガス)に少量(2体積%)の炭酸ガス(CO2 )を混合したガスも一部の溶接継手の製造において使用した。
なお、表3に示す溶接条件では、溶接電流値とそれに付随する溶着速度を変化させた。また、積層数が1〜7層となるように溶接速度を調整した。溶接入熱は4.7 〜33.3 kJ/cm であった。また、管内表面には、銅製の裏当てを装着し、管内面側のビード形成を行った。
【0026】
得られた溶接継手について、溶接の可否、およびビード形状を評価した。溶接の可否は、アークが安定しない場合もしくは溶融金属の垂れが著しくなり溶接作業の継続が不能の場合に不可とした。また、ビード形状は、各層ごとでかつ溶接長方向の4個所でビード表面の高低差をノギスで測定し、その平均値を使用した。ビードの垂落ちによりビードの高低差が3mmを超えた場合を不良、3mm以下の場合を良好とした。なお、ビードの高低差が3mmを超えない場合でも、溶接長手方向にビード高低差が2mm以上変動した場合も不良とした。ビードの高低差の測定方法を図1に模式的に示す。
【0027】
なお、いずれの溶接継手においても、スラグの生成量は極微量で、たがね等の金属工具で打撃を与えるスラグ剥離作業を必要としなかった。
得られた結果を表4に示す。
【0028】
【表1】
Figure 0005057615
【0029】
【表2】
Figure 0005057615
【0030】
【表3】
Figure 0005057615
【0031】
【表4】
Figure 0005057615
【0032】
本発明例(溶接継手No.1〜No.4)はいずれも、横向き姿勢の溶接にもかかわらず、150 〜300 Aという高溶接電流で高溶着速度溶接を行っても、溶融金属の垂れ等もなく良好なビード形状を有する溶接継手が得られている。
一方、本発明の範囲を外れる比較例は、溶接ができないか、或いは溶接ができても、溶融金属の垂れやハンピングが発生するなど、溶接作業、ビード形状に問題が生じている。
【0033】
溶接継手No.5は、溶接入熱が本発明方法の範囲を低く外れ、ビード形状がハンピングビードとなり、安定した溶接ができなかった。溶接継手No.6は、溶接入熱が本発明方法の範囲を高く外れ、ビードの垂れが観察され、ビード形状が不良となっている。また、溶接継手No.7は、シールドガスとして活性ガスを含む混合ガスとし本発明方法の範囲を外れたため、安定した溶滴移行が得られず、溶接作業が不可となった。溶接継手No.8は、使用した溶接用鋼ワイヤの組成(REM 含有量)が本発明方法の範囲を外れているため、安定した陰極点が形成されず、溶接が不可となった。溶接継手No.9は、使用した溶接用鋼ワイヤの組成(O含有量)が本発明方法の範囲を外れているため、溶融金属の垂れが観察され、ビード形状が不良となっている。
(実施例2)
表5に示すAPI 5L X65グレードの組成を有する炭素鋼鋼管(直径:610mm φ、肉厚:12.7mm)の端面同士を突き合わせて、表6に示す組成の鋼ワイヤを用い、表7に示す溶接条件で、消耗電極式ガスシールドアーク溶接を行い、溶接継手(鋼管円周継手)を作製した。なお、溶接は、鋼管を水平姿勢に固定された固定管とし、下向き姿勢、立向き姿勢および上向き姿勢からなる円周溶接を行った。なお、開先形状は、図2に示すV形開先とした。
【0034】
また、シールドガスとしては、実施例1と同様に、ArとHeの混合ガス(不活性ガス)を使用した。なお、 比較として一部の溶接継手においては、シールドガスとして、Arガス(不活性ガス)に20体積%の炭酸ガス(CO2 )を混合したガスを使用した。
なお、表7に示す溶接条件では、溶接電流値とそれに付随する溶着速度を変化させた。積層法は下進振分け法を用いた。また、溶接入熱は3.6 〜32.1 kJ/cm とした。また、管内表面には、銅製の裏当てを装着し、管内面側のビード形成を行った。
【0035】
得られた溶接継手について、実施例1と同様に、溶接の可否、およびビード形状を評価した。なお、評価方法は、 実施例1と同様とした。
得られた結果を表8に示す。
【0036】
【表5】
Figure 0005057615
【0037】
【表6】
Figure 0005057615
【0038】
【表7】
Figure 0005057615
【0039】
【表8】
Figure 0005057615
【0040】
本発明例(溶接継手No.21 〜No.23 )はいずれも、立向きおよび上向き姿勢の溶接にもかかわらず、150 〜250 Aという高溶接電流で高溶着速度溶接を行っても、溶融金属の垂れ等もなく良好なビード形状を有する溶接継手が得られている。なお、本発明例では、パス間でのスラグの生成も極微量で、スラグ剥離作業なしに、溶接が可能であった。このように、本発明によれば、下向き姿勢、立向きおよび上向き姿勢からなる円周溶接が高能率で可能となる。
【0041】
一方、本発明の範囲を外れる比較例は、溶接ができないか、或いは溶接ができても、溶融金属の垂れやハンピングが発生するなど、溶接作業、ビード形状に問題が生じている。
溶接継手No.24 は、溶接入熱が本発明方法の範囲を低く外れ、ビード形状がハンピングビードとなり、安定した溶接ができなかった。溶接継手No.25 は、シールドガスとして活性ガスを含む混合ガスとし本発明方法の範囲を外れたため、安定した溶滴移行が得られず、溶接作業が不可となった。溶接継手No.28 は、使用した溶接用鋼ワイヤの組成(O含有量)が本発明方法の範囲を外れているため、溶融金属の垂れが観察され、ビード形状が不良となっている。
【0042】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、上向き姿勢、横向き姿勢、 立向き姿勢等全姿勢溶接において、溶融金属の垂れ防止と良好な形状のビード形成ができ、さらには高電流で高溶着速度溶接が可能となり溶接作業の高能率化に伴い、溶接構造物の施工期間の短縮が可能となり、産業上格段の効果を奏する。
【0043】
なお、本発明は、橋梁、鉄構造物、貯糟、水圧鉄管など立向き、上向き、横向き姿勢溶接を含むあらゆる構造物の溶接施工に広く適用でき、開先形状にも特に制限は無い。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、実施例で使用した開先形状を示し、(b)は、ビード形状の測定位置を示す模式図である。
【図2】実施例で使用した開先形状を示す断面図である。

Claims (1)

  1. 固定管である鋼材を、直流の消耗電極式ガスシールドアーク溶接法を用いて円周溶接し、溶接継手を製造するに当り、消耗電極として、希土類元素を0.010〜0.300質量%、Oを0.01質量%以下含有する鋼ワイヤを、シールドガスとしてAr:80〜30体積%とし、残部をHeとする不活性ガスを、用い、溶接電流を150〜300A、溶接入熱を5.0〜25.0kJ/cmとして、横向き、立向き、上向きのうちの少なくとも1姿勢を含む姿勢で円周溶接することを特徴とするビード形状に優れた溶接継手の製造方法。
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