JP4639598B2 - エレクトロガスアーク溶接方法 - Google Patents

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Description

本発明は、エレクトロガスアーク溶接用鋼ワイヤとそれを用いた溶接方法に係り、特にアークの安定性に優れたエレクトロガスアーク溶接方法に関するものである。
エレクトロガスアーク溶接は、高電流(溶接電流300A以上),高入熱(入熱350kJ/cm以上)の溶接法であり、高能率な溶接方法として知られている。エレクトロガスアーク溶接で使用される消耗電極(すなわち溶接ワイヤ)は、特開平10−109189号公報に示されるように、通常、アーク安定性に優れるフラックス入りワイヤが用いられている。フラックス入りワイヤは、鋼製の外殻の内側に溶接用フラックスを充填したワイヤであり、フラックスコアードワイヤとも呼ばれている。ここではフラックス入りワイヤ(すなわちフラックスコアードワイヤ)をFCワイヤと記す。
このFCワイヤは高価であるので、エレクトロガスアーク溶接の施工コスト削減の観点から、比較的安価なソリッドワイヤを使用する試みがなされている。
しかしエレクトロガスアーク溶接は、大きな溶融メタル上にアークを発生させ、溶融メタルの増加とともにゆっくりと上進させる溶接法であるから、溶接ワイヤと溶融メタルとが接触(短絡)しやすい。FCワイヤは、溶接用フラックス中にアーク安定剤を含有させることで溶滴の微細移行を達成し、短絡や再アーク時の過大電流の発生を抑制し、スパッタの発生を抑制し、電流電圧の変動を低減することができる。
一方、エレクトロガスアーク溶接でソリッドワイヤを使用した場合には、再アークによって大粒のスパッタが発生するばかりでなく、電流電圧が大きく変動するのは避けられない。このようなソリッドワイヤの問題点を解決してFCワイヤと同等のアーク安定性が得られるなら、安価なソリッドワイヤを使用することによってエレクトロガスアーク溶接の施工コストの削減が可能となる。
特開平10−109189号公報
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、安価なソリッドワイヤを用いて優れたアークの安定性が得られるエレクトロガスアーク溶接用鋼ワイヤを用いた溶接方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、エレクトロガスアーク溶接へのソリッドワイヤの適用について、スパッタ低減と溶接電流電圧変動抑制の観点から鋭意検討した。従来は、主にエレクトロガスアーク溶接用鋼ワイヤの表面処理、あるいは潤滑剤の組成について検討されてきたのに対し、本発明者らは視点を変えて、エレクトロガスアーク溶接用鋼ワイヤの素材となる鋼素線の成分および溶接の極性について詳細に調査した。その結果、以下に述べる知見を得た。
(1) エレクトロガスアーク溶接用鋼ワイヤの鋼素線に、希土類元素(以下、REM という)を添加することによって溶滴の微細移行が可能になる。その結果、エレクトロガスアーク溶接におけるスパッタの低減と溶接電流電圧の変動を抑制することができる。
(2) 鋼素線に、REM を添加し、かつAl,O,Ca,Ti,Zrの含有量を規定することによって、アークをさらに安定させ、スパッタを一層低減することができる。
(3) 鋼素線に、さらにMo,Bを添加することによって、高入熱の溶接においても優れた強度と靭性を確保できる。
(4) REM を添加した鋼素線からなるエレクトロガスアーク溶接用鋼ワイヤを使用し、かつ2個以上の電極(すなわち2本以上のエレクトロガスアーク溶接用鋼ワイヤ)のうちの1個または2個以上をマイナス極とする正極性のエレクトロガスアーク溶接を行なうことによって、安定した溶滴移行が可能となる。
本発明は、これらの知見に基づいてなされたものである。
すなわち本発明は、2個以上の電極を用いてエレクトロガスアーク溶接を行なうエレクトロガスアーク溶接方法において、前記電極のうちの1個または2個以上を正極性とし、かつ前記正極性の電極にCを0.20質量%以下、Siを0.05〜2.5質量%、Mnを0.25〜3.5質量%、REMを0.015〜0.100 質量%、Pを0.05質量%以下、Sを0.02質量%以下、Oを0.0080質量%以下、Alを0.005〜3.00質量%、Caを0.0008質量%以下含有し、残部がFeおよび不可避的不純物である鋼素線からなるエレクトロガスアーク溶接用鋼ワイヤを使用するエレクトロガスアーク溶接方法である。
本発明のエレクトロガスアーク溶接方法では、鋼素線が、前記した組成に加えてTi:0.02〜0.50質量%およびZr:0.02〜0.50質量%のうちの1種または2種を含有する組成を有することが好ましい。また鋼素線が、前記した組成に加えて、Mo:0.05〜1.5 質量%,B:0.0005〜0.015 質量%を含有することが好ましい。
また本発明のエレクトロガスアーク溶接方法では、2個の電極を用いて、一方を正極性とし、他方を逆極性とすることが好ましい
なお、ここで鋼素線からなるエレクトロガスアーク溶接用鋼ワイヤとは、溶接用フラックスを内装せず、素材となる鋼素線を主体とするワイヤ(いわゆるソリッドワイヤ)を指す。また本発明は、鋼素線の表面にめっきを施したり、あるいは潤滑剤を塗布したエレクトロガスアーク溶接用鋼ワイヤにも支障なく適用できる。
本発明によれば、ソリッドワイヤを用いてエレクトロガスアーク溶接を行なうにあたって、アークの安定性を大幅に向上できる。
本発明のエレクトロガスアーク溶接用鋼ワイヤ(以下、溶接用鋼ワイヤという)は、ソリッドワイヤとFCワイヤに大別される溶接ワイヤのうち、ソリッドワイヤを対象とする。
まず、本発明の溶接用鋼ワイヤの素材となる鋼素線の成分を限定した理由について説明する。
REM: 0.015〜0.100 質量%
希土類元素(すなわちREM )は、製綱および鋳造時の介在物微細化,溶接金属の靭性改善のために有効な元素である。ただし、通常の逆極性(すなわち溶接用鋼ワイヤをプラス極)のエレクトロガスアーク溶接においては、鋼素線に REMを添加するとアークの集中が生じて、スパッタを低減する効果が得られない。しかし、正極性(すなわち溶接用鋼ワイヤをマイナス極)のエレクトロガスアーク溶接においては、溶滴の微細化と移行の安定化を図るために不可避的な元素である。この溶滴の微細移行と電流変動に対する溶滴移行の安定化によって、スパッタの発生を抑制し、安定したエレクトロガスアーク溶接が可能となる。REM含有量が 0.015質量%未満では、この溶滴の微細移行の安定化効果が得られない。一方、 0.100質量%を超えると、溶接用鋼ワイヤの製造工程で割れが生じたり、溶接金属の靭性の低下を招く。したがって、REM は 0.015〜0.100質量%の範囲を満足する必要がある。なお、好ましくは 0.025〜0.050 質量%である。
ここで REMとは、周期表の3族に属する元素の総称である。本発明では、原子番号57〜71の元素を使用するのが好ましく、特にCe,Laが好適である。Ce,Laを鋼素線に添加する場合は、CeまたはLaを単独で添加しても良いし、CeおよびLaを併用しても良い。なお、CeおよびLaをともに添加する場合は、あらかじめCe:40〜90質量%,La:10〜60質量%の範囲内で混合して得られた混合物を使用するのが好ましい。
なお本発明の溶接用鋼ワイヤの鋼素線は、基本的成分としてC,Si,Mn,P,Sを下記の通り含有する。
C:0.20質量%以下
Cは、溶接金属の強度を確保するために重要な元素であり、溶融メタルの粘性を低下させて流動性を向上する効果がある。しかしC含有量が0.20質量%を超えると、正極性の溶接において溶滴および溶融メタルの挙動が不安定となるのみならず、溶接金属の靭性の低下を招く。したがって、Cは0.20質量%以下とした。一方、C含有量を過剰に減少させると溶接金属の強度を確保できない。そのため、 0.003〜0.20質量%とするのが好ましい。なお、0.01〜0.10質量%が一層好ましい。
Si:0.05〜2.5 質量%
Siは、脱酸作用を有し、溶融メタルの脱酸のためには不可欠な元素である。エレクトロガスアーク溶接では、Si含有量が0.05質量%未満では、溶融メタルの脱酸が不足し、溶接金属にブローホールが発生する。さらに正極性のエレクトロガスアーク溶接におけるアークの広がりを抑え、溶滴を微細化し挙動を安定化する作用を有する。一方、 2.5質量%を超えると、溶接金属の靭性が著しく低下する。したがって、Siは0.05〜2.5 質量%の範囲内を満足する必要がある。ただしSi含有量が0.65質量%を超えると、小粒のスパッタが増加する傾向が現われるので、0.05〜0.65質量%の範囲内が好ましい。
Mn:0.25〜3.5 質量%
Mnは、Siと同様に脱酸作用を有し、溶融メタルの脱酸のためには不可欠な元素である。Mn含有量が0.25質量%未満では、溶融メタルの脱酸が不足し、溶接金属にブローホールが発生する。一方、3.5 質量%を超えると、溶接金属の靭性が低下する。したがって、Mnは0.25〜3.5 質量%の範囲内を満足する必要がある。なお、溶融メタルの脱酸を促進し、ブローホールを防止するためには、0.45質量%以上が望ましい。そのため、0.45〜3.5 質量%とするのが好ましい。
P:0.05質量%以下
Pは、鋼の融点を低下させるとともに、電気抵抗率を向上させ、溶融効率を向上させる元素である。さらに正極性のエレクトロガスアーク溶接において、溶滴を微細化し、アークを安定化させる作用も有する。しかしP含有量が 0.05質量%を超えると、正極性のエレクトロガスアーク溶接における溶融メタルの粘性が著しく低下し、アークが不安定となり、小粒のスパッタが多量に発生する。また、溶接金属の高温割れを生じる危険性が増大する。したがって、Pは0.05質量%以下とした。なお、好ましくは0.03質量%以下である。一方、鋼素線の鋼剤を溶製する製鋼段階でPを低減するためには長時間を要するので、生産性向上の観点から 0.002質量%以上が好ましい。そのため、 0.002〜0.03質量%とするのが一層好ましい。
S:0.02質量%以下
Sは、溶融メタルの粘性を低下させ、溶接用鋼ワイヤの先端に懸垂した溶滴の離脱を促進し、正極性のエレクトロガスアーク溶接においてアークを安定化する。またSは、正極性のエレクトロガスアーク溶接においてアークを広げ、溶融メタルの粘性を低下させてビードを平滑にする効果も有する。しかしS含有量が0.02質量%を超えると、小粒のスパッタが増加するとともに、REM 析出物が粗大化し鋼材の加工性および歩留りが低下する。したがって、Sは0.02質量%以下とした。一方、鋼素線の鋼剤を溶製する製鋼段階でSを低減するためには長時間を要するので、生産性向上の観点から 0.002質量%以上が好ましい。そのため、 0.002〜0.02質量%とするのが好ましい。
さらに本発明では、上記した組成に加えて、鋼素線がAl,O,Caを含有する。
Al: 0.005〜3.00質量%
Alは、強脱酸剤として作用するとともに、溶接金属の強度を増加する元素である。さらに溶融メタルの脱酸によって粘性を低下してビード形状を安定化(すなわちハンピングビードを抑制)する効果がある。逆極性のエレクトロガスアーク溶接では、明確な溶滴移行の安定化効果は認められないが、正極性のエレクトロガスアーク溶接では、350A以上の高電流溶接において溶滴移行の安定化効果が顕著に発揮される。一方、低電流溶接においては、短絡移行回数を増加させて溶滴移行の均一化とビード形状の改善を達成できる。また、Oとの親和力によって、溶接用鋼ワイヤの製造段階における REMの酸化ロスを低減する効果を有する。Alが 0.005質量%未満では、このような効果は得られない。一方、Alが3.00質量%を超える場合は、溶接金属の結晶粒が粗大化し、靭性が著しく低下する。したがって、Alは 0.005〜3.00質量%の範囲内が好ましい。
O:0.0080質量%以下
Oは、正極性のエレクトロガスアーク溶接において溶接用鋼ワイヤの先端に懸垂した溶滴に発生するアーク点を不安定にするとともに、溶滴の挙動を不安定にする作用がある。しかし、O含有量が0.0080質量%を超えると、正極性の高電流溶接におけるアーク安定化というREM 添加の効果が損なわれ、溶滴の揺動が増大してスパッタが多量に発生する。またOは、鋼素線の鋼材を溶製する製鋼段階で REMと激しく反応してスラグを形成する作用を有しており、O含有量が0.0080質量%を超えると、REM の歩留りが著しく低下する。したがって、Oは0.0080質量%以下が好ましい。ただし、O含有量が0.0010質量%未満では、O添加の効果は十分に得られない。したがって、0.0010〜0.0080質量%が好ましく、さらに0.0010〜0.0050質量%が一層好ましい。
Ca:0.0008質量%以下
Caは、製綱および鋳造時に不純物として溶鋼に混入したり、あるいは伸線加工時に不純物として鋼素線に付着する。正極性のエレクトロガスアーク溶接では、Caが0.0008質量%を超えると、高電流溶接におけるアークの安定化というREM 添加の効果が損なわれる。したがって、Ca0.0008質量%以下が好ましい。
さらに本発明では上記した組成に加えて、鋼素線が、Ti:0.02〜0.50質量%およびZr:0.02〜0.50質量%のうちの1種または2種を含有することが好ましい。
Ti、Zrは、いずれも強脱酸剤として作用するとともに、溶接金属の強度を増加する元素である。さらに溶融メタルの脱酸によって粘性を低下してビード形状を安定化(すなわちハンピングビードを抑制)する効果がある。このような効果を有する故に350A以上の高電流溶接においては有効な元素であり、必要に応じて添加する。Tiが0.02質量%未満,Zrが0.02質量%未満では、この効果が得られない。一方、Tiが0.50質量%を超える場合,Zrが0.50質量%を超える場合は、溶滴が粗大化して大粒のスパッタが多量に発生する。したがって、Ti,Zrを添加する場合は、Ti:0.02〜0.50質量%,Zr:0.02〜0.50質量%の範囲内を満足するのが好ましい。
Mo:0.05〜1.5 質量%
Moは、アシュキュラーフェライトの安定化元素としてオーステナイト粒の粗大化を抑制し、オーステナイト粒径を微細化すると同時に、オーステナイトからαフェライトへの変態時には焼入れ性増大元素として有効に機能し、結晶粒内のベイナイトあるいはアシュキュラーフェライトの生成を促進するので、本発明の大入熱溶接となるエレクトロガスアーク溶接における溶接金属の靭性向上のために重要な元素である。この効果を得るためには、0.05質量%以上含有する必要がある。しかし、過剰な添加は、著しい靭性低下を招くので 1.5質量%以下とする必要がある。したがってMoを含有させる場合は、0.05〜1.5 質量%の範囲内を満足するのが好ましい。
B:0.0005〜0.015 質量%
Bは、溶接金属中のオーステナイト粒界に偏析してオーステナイト粒界における靭性に有害な初析フェライトの変態を抑止する働きがある。しかし、0.0005質量%未満ではこの抑止効果がない。また、過剰な添加は、著しい靭性低下を招くので 0.015質量%以下とする必要がある。したがってBを含有させる場合は、0.0005〜0.015 質量%の範囲内を満足するのが好ましい。
さらに必要に応じて以下の元素を含有させても、本発明の効果を減じるものではない。
Cr:0.02〜3.0 質量%,Ni:0.05〜3.0 質量%,Cu:0.05〜3.0 質量%,Mg: 0.001〜0.20質量%
Cr,Ni,Cu,Mgは、いずれも溶接金属の強度を増加し、耐候性を向上させる元素である。これらの元素の含有量が微少である場合は、このような効果が得られない。一方、過剰に含有すると、溶接金属の靭性の低下を招く。したがって、Cr,Ni,Cu,Mgを含有させる場合、Cr:0.02〜3.0 質量%,Ni:0.05〜3.0 質量%,Cu:0.05〜3.0 質量%,Mg: 0.001〜0.20質量%の範囲内を満足するのが好ましい。
Nb: 0.005〜0.5 質量%,V: 0.005〜0.5 質量%
Nb,Vは、いずれも溶接金属の強度,靭性を向上し、アークの安定性を向上させる元素である。これらの元素の含有量が微少である場合は、このような効果が得られない。一方、過剰に添加すると、溶接金属の靭性の低下を招く。したがって、Nb,Vを含有する場合は、Nb: 0.005〜0.5 質量%,V: 0.005〜0.5 質量%の範囲内を満足するのが好ましい。
上記した鋼素線の成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。たとえば、鋼材を溶製する段階や鋼素線を製造する段階で不可避的に混入する代表的な不可避的不純物であるNは、 0.020質量%以下に低減するのが好ましい。
次に、本発明の溶接用鋼ワイヤの製造方法について説明する。
転炉または電気炉等を用いて、上記した組成を有する溶鋼を溶製する。この溶鋼の溶製方法は、特定の技術に限定せず、従来から知られている技術を使用する。次いで、得られた溶鋼を、連続鋳造法や造塊法等によって鋼材(たとえばビレット等)を製造する。この鋼材を加熱した後、熱間圧延を施し、さらに乾式の冷間圧延(すなわち伸線)を施して鋼素線を製造する。熱間圧延や冷間圧延の操業条件は、特定の条件に限定せず、所望の寸法形状の鋼素線を製造する条件であれば良い。
さらに鋼素線は、焼鈍−酸洗−銅めっき−伸線加工−潤滑剤塗布の工程を必要に応じて順次施して、所定の製品すなわち溶接用鋼ワイヤとなる。なお本発明では、必ずしも鋼素線に銅めっきを施す必要はなく、鋼素線の表面に潤滑剤を塗布した溶接用鋼ワイヤであっても何ら問題なく使用できる。
鋼素線の表面に潤滑剤を安定して付着させ、給電の安定性を向上するために、鋼素線の平坦度(=実表面積/理論表面積)を1.0005以上、1.0100未満とするのが好ましい。鋼素線の平坦度は、伸線加工で使用するダイスの管理を厳格に行なうことによって、1.0005以上、1.0100未満に維持することが可能である。
鋼素線の表面に銅めっきを施す場合は、厚さ 0.6μm以上の銅めっきを施すことによって、溶接用鋼ワイヤの給電不良に起因するアークの不安定化を防止できる。なお、銅めっきの厚さを 0.8μm以上とすると、給電不良防止の効果が顕著に発揮されるので一層好ましい。このようにして銅めっきを厚目付とすることによって、給電チップの損耗も低減できる。
溶接用鋼ワイヤの送給性を向上するために、溶接用鋼ワイヤの表面(すなわち鋼素線の表面あるいは銅めっきの表面)に潤滑剤を塗布しても良い。潤滑剤の塗布量は、溶接用鋼ワイヤ10kgあたり0.35〜1.70gの範囲内が好ましい。
なお、溶接用鋼ワイヤを製造する工程で、溶接用鋼ワイヤの表面に種々の不純物が付着する。特に固体の不純物の付着量を、溶接用鋼ワイヤ10kgあたり0.01g以下に抑制すると、給電の安定性が一層向上する。
このようにして製造した溶接用鋼ワイヤを使用してエレクトロガスアーク溶接を行なう際の好適な溶接条件について、以下に説明する。
1パスで2個以上の電極(すなわち溶接用鋼ワイヤ)を用いてエレクトロガスアーク溶接を行なうにあたって、これらの2個以上の電極のうち、1個または2個以上を正極性で使用する。その他の電極は、逆極性で使用する。なお、電極を全て正極性で使用しても、何ら支障なくエレクトロガスアーク溶接を行なうことができる。
ただし、正極性で使用する電極(すなわち溶接用鋼ワイヤ)のシールドガスは、CO2 を60体積%以上含有するガスを用いる。シールドガスの残部(すなわち40体積%以下)はArを混合するのが好ましい。なお、CO2 ガスを単独(すなわちCO2 の混合比率: 100体積%)でシールドガスとして使用しても、支障なく正極性エレクトロガスアーク溶接を行なうことができる。
一方、逆極性で使用する電極のシールドガスは、特定の種類に限定せず、従来から知られているガスが使用できる。ただし、正極性で使用する電極のシールドガスと逆極性で使用する電極のシールドガスが異なる場合は、溶接施工中にシールドガスが混合されてガス成分が変化し、ビードの形状や溶接金属の特性に悪影響を及ぼす恐れがある。したがって逆極性で使用する電極のシールドガスは、正極性で使用する電極と同じシールドガスを使用するのが好ましい。
溶接電流は300〜450A、溶接電圧は27〜45V(電流とともに上昇)、ワイヤ径は 1.2〜1.6 mm、溶接入熱は40〜1000kJ/cmの範囲内が望ましい。溶接する母材(すなわち鋼材)の鋼種は特に限定されないが、JIS規格G3106 に規定されるSi−Mn系の溶接構造用圧延鋼材(SM材)や、JIS規格G3136 に規定される建築構造用鋼材(SN材)、あるいはYP390 ,SA440 に適用するのか好ましい。
製鋼段階で成分を調整し、連続鋳造によって製造したビレットを熱間圧延して、直径 5.5〜7.0mm の線材とした。次いで冷間圧延(すなわち伸線)によって直径 2.0〜2.8mm とし、必要に応じて窒素雰囲気中で焼鈍して酸洗を施し、次いで必要に応じてCuめっきを施した。さらに冷間で伸線加工(すなわち湿式伸線)を施して、直径 0.8〜1.4mm の鋼素線を製造した。得られた鋼素線の成分は、表1に示す通りである。
Figure 0004639598
この鋼素線に潤滑剤を塗布(溶接用鋼ワイヤ10kgあたり 0.6〜0.8 g)することによって、十分な送給性を確保できるように調整した。
これらの溶接用鋼ワイヤを使用して、Cu製捕集容器内でエレクトロガスアーク溶接を行なった。正極性の電極には、上記の溶接用鋼ワイヤを使用した。その他の電極は逆極性とし、溶接用鋼ワイヤは表1中の比較例(すなわち番号11)の鋼素線からなる溶接用鋼ワイヤを使用した。シールドガスは、全ての電極で 100体積%CO2 ガスを使用した。その他の溶接条件は表2に示す通りである。
Figure 0004639598
このようにしてCu製捕集容器内でエレクトロガスアーク溶接を行ないながら飛散したスパッタを回収し、捕集したスパッタの重量を測定した。スパッタの発生量が、溶接時間1分あたり 0.6g/分以下のものを良(○), 0.6g/分超え〜1.00g/分以下のものを可(△),1.00g/分超えのものを不可(×)として評価した。
アークの安定性を評価した。アークの停止が生じなかったものを良(○),アークの停止が1〜3回発生したものを可(△),アークの停止が4回以上発生したものを不可(×)として評価した。その結果を表3に示す。
表3中の試験番号1〜10は、正極性の電極として鋼素線番号1〜10の溶接用鋼ワイヤを使用し、逆極性の電極として鋼素線番号11の溶接用鋼ワイヤを使用した例である。試験番号11は、正極性の電極および逆極性の電極すべて鋼素線番号11の溶接用鋼ワイヤを使用した例である。
Figure 0004639598
表3から明らかなように、発明例(すなわち試験番号2〜8)は、スパッタ発生量の低減とアークの安定化を達成できた。一方、比較例(すなわち試験番号1,9)は、鋼素線の成分が本発明の範囲を外れる溶接用鋼ワイヤを正極性の電極で使用したので、スパッタが多量に発生した。

Claims (4)

  1. 2個以上の電極を用いてエレクトロガスアーク溶接を行なうエレクトロガスアーク溶接方法において、前記電極のうちの1個または2個以上を正極性とし、かつ前記正極性の電極にCを0.20質量%以下、Siを0.05〜2.5質量%、Mnを0.25〜3.5質量%、希土類元素を0.015〜0.100 質量%、Pを0.05質量%以下、Sを0.02質量%以下、Oを0.0080質量%以下、Alを0.005〜3.00質量%、Caを0.0008質量%以下含有し、残部がFeおよび不可避的不純物である鋼素線からなるエレクトロガスアーク溶接用鋼ワイヤを使用することを特徴とするエレクトロガスアーク溶接方法
  2. 前記鋼素線が、前記組成に加えて、Ti:0.02〜0.50質量%およびZr:0.02〜0.50質量%のうちの1種または2種を含有することを特徴とする請求項1に記載のエレクトロガスアーク溶接方法
  3. 前記鋼素線が、前記組成に加えて、Mo:0.05〜1.5 質量%、B:0.0005〜0.015 質量%を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のエレクトロガスアーク溶接方法
  4. 前記電極を2個使用して、一方を正極性とし、他方を逆極性とすることを特徴とする請求項1、2または3記載のエレクトロガスアーク溶接方法
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