JP7129831B2 - フェライト系ステンレス鋼用溶接ワイヤ、隅肉溶接方法及び自動車排気部品の製造方法 - Google Patents
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(2)質量%で、Ni:0.01~2.00%、Mo:0.01~3.00%、Cu:0.05~1.00%、Nb:0.20~0.80%、Ti:0.002~0.500%、B:0.0001~0.0030%、Co:0.05~1.00%、Ta:0.04~0.50%、V:0.05~1.00%、W:0.05~0.50%、Zr:0.0004~0.1000%、Sn:0.01~2.50%、REM:0.0004~0.0500%の1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)に記載のフェライト系ステンレス鋼溶接用ソリッドワイヤ。
(3)隅肉溶接用の前記(1)または(2)に記載のフェライト系ステンレス鋼溶接用ソリッドワイヤ。
(4)自動車排気部品用の前記(1)~(3)のうちいずれかに記載のフェライト系ステンレス鋼溶接用ソリッドワイヤ。
(5)(1)~(4)のうちいずれかに記載のフェライト系ステンレス鋼溶接用ソリッドワイヤを用いて重ね隅肉溶接を行うことを特徴とする隅肉溶接方法。
(6)(5)に記載の隅肉溶接方法を含むことを特徴とする自動車排気部品の製造方法。
まず、本発明のフェライト系ステンレス鋼用溶接ワイヤの基本的な元素成分の限定理由について述べる。なお、以下の%は「質量%」を意味する。
Cは溶接部の強度を確保する目的で一定量を含有させることが必要であるため、下限を0.003%とした。一方、Cr系炭化物を析出させて耐食性を低下させる元素であるため、上限を0.040%とした。
Siは脱酸元素であるとともに、溶融池の湯流れ性を向上させる元素であるため、下限を0.05%とした。しかしながら、その含有量が1.00%を超えると溶接部の延性が低下するため、上限を1.00%とした。好ましくは0.80%以下であり、より好ましくは0.50%以下である。
Mnは脱酸元素として作用するが、その含有量が0.05%未満では効果が十分に発揮されないため、下限を0.05%とした。一方、1.0%を超えて含有させると溶接部の延性が低下するため、上限を1.00%とした。好ましくは0.80%以下であり、より好ましくは0.50%以下である。
Sは本発明において最も重要な元素であり、溶鋼の表面張力を著しく低下させて、溶接ワイヤからの溶滴離脱を促進させ、短絡を防止して溶接部品の内部への溶鋼飛散を防止する作用がある。この効果は0.0050%未満では十分に得られないため、下限を0.0050%とした。一方、その含有量が0.0200%を超えると溶接高温割れが発生しやすくなるばかりか、溶接部の延性が低下するため、上限を0.0200%とした。好ましくは、0.015%である。
Crはフェライト生成元素であり、不働態皮膜を形成して溶接金属に耐食性を付与する主要元素である。13.0%未満では十分な耐食性が得られないため、下限を13.0%とした。一方、20.0%を超えて含有させても耐食性の向上はさほど得られず、コストの上昇を招くため、上限を20.0%とした。
Alは脱酸元素として作用するが、0.001%未満ではその効果は少ない。このため、下限を0.001%とした。一方、0.010%を超えて含有させると溶接部の延性が低下するとともに、スパッタが発生しやすくなる。このため、上限を0.010%とした。好ましくは0.005%以下である。
Caは脱酸元素として作用するが、0.0001%未満ではその効果は少ない。このため、下限を0.0001%とした。一方、0.0010%を超えて含有させると著しくスパッタ発生量が増大するため、上限を0.0010%とした。好ましくは0.0005%以下であり、より好ましくは0.0003%以下である。
Mgは脱酸元素として作用するが、0.0001%未満ではその効果は少ない。このため、下限を0.0001%とした。一方、0.0010%を超えて含有させると著しくスパッタ発生量が増大するため、上限を0.0010%とした。好ましくは0.0005%以下であり、より好ましくは0.0003%以下である。
OはSと同様に溶鋼の表面張力を低下させて溶接ワイヤからの溶滴離脱を促進させ、短絡を防止してスパッタ発生量を低減させる作用があるが、0.0020%以下ではその効果は少ない。したがって、下限を0.0020%とした。一方、0.0200%を超えて含有させると酸化物が多量に形成されて、溶接金属の延性、靭性が損なわれてしまう。したがって、その上限を0.0200%とした。
Nは溶接部の強度を確保するために一定量を含有させることが必要であるため、下限を0.003%とした。一方、その含有量が0.040%を超えるとCr窒化物を析出させて、溶接金属の耐食性を劣化させるため、上限を0.040%とした。
以上を本発明のフラックス入りワイヤの基本成分とするが、以下の成分を本発明のフェライト系ステンレス鋼用溶接ワイヤに選択的に添加できる。以下に、選択的な元素成分の限定理由について述べる。なお、以下の%は「質量%」を意味する。
Niはオーステナイト生成元素であり、溶接金属の延性、靭性を向上させるため、必要に応じて含有させてもよい。ただし、0.01%未満ではその効果は少ないため、下限を0.01%とした。一方で、過剰に含有させるとマルテンサイト相の生成を促進し、溶接金属の耐割れ性が低下するため、上限を2.00%とした。
Moはフェライト生成元素であり、耐食性および高温強度を高めるため、必要に応じて含有させてもよい。ただし、0.01%未満ではその効果は少ないため、下限を0.01%とした。一方、過剰に含有させると溶接金属の延性が低下するため、上限を3.00%とした。好ましくは2.00%以下であり、さらに好ましくは1.50%以下である。
Cuは溶接金属の耐食性および高温強度を高めるため、必要に応じて含有させてもよい。ただし、0.05%未満ではその効果は少ないため、下限を0.05%とした。一方、過剰に含有させても上記の効果は飽和するとともに、溶接金属の延性が低下しやすくなるため、上限を1.00%とした。
NbはC、Nと結合して安定化させ、Cr炭化物やCr窒化物の析出を抑制することにより、耐食性を高める元素である。ただし、0.20%未満ではその効果は少ないため、下限を0.20%とした。一方、過剰に含有させると溶接高温割れが発生しやすくなるため、上限を0.80%とした。
TiもNbと同様の作用によって、耐食性を高める元素である。ただし、0.002%未満ではその効果は少ないため、下限を0.002%とした。一方、過剰な添加は溶接部の延性を低下させるため、上限を0.500%とした。
Bは溶接金属の結晶粒微細化を促進させて靭性を向上させる効果があるため、必要に応じて含有させてもよい。ただし、0.0001%未満ではその効果は少ないため、下限を0.0001%とした。一方、0.0030%を超えて含有させても上記の効果は飽和してしまうため、上限を0.0030%とした。
Coは、溶接金属の高温強度や耐酸化性を向上させる元素であり、必要に応じて含有させてもよい。ただし、0.05%未満ではその効果は少ないため、下限を0.05%とした。一方、過剰な添加はコストの上昇を招くため上限を1.00%とした。
TaはNbと同じく周期律表のVa族元素であり、類似の性質を有する。すなわち、C、Nと結合して安定化させ、Cr炭化物やCr窒化物の析出を抑制することにより、耐食性を高める元素である。ただし、0.04%未満ではその効果は少ないため、下限を0.04%とした。一方、過剰に含有させてもその効果は飽和するとともに、溶接金属の延性が低下するため、上限を0.50%とした。
VはC、Nと結合してV炭化物、V窒化物を形成し、Cr炭化物の析出を抑制して耐食性を向上させるが、0.05%未満ではその効果は少ないため、下限を0.05%とした。一方、過剰に含有させると溶接金属の延性が低下するため、上限を1.00%とした。
Wは耐食性および高温強度を高める元素であり、必要に応じて含有させてもよい。ただし、0.05%未満ではその効果は少ないため、下限を0.05%とした。一方、その含有量が0.50%を超えると溶接金属の延性が低下するため、上限を0.50%とした。
Zrは溶接金属の結晶粒微細化を促進させる元素であり、必要に応じて含有させてもよい。ただし、0.0004%未満ではその効果は少ないため、下限を0.0004%とした。一方、0.1000%を超えて含有させてもその効果は飽和してしまうため、上限を0.1000%とした。
Snは耐食性を高めるのに有効な元素であり、必要に応じて含有させてもよい。ただし、0.01%未満ではその効果は少ないため、下限を0.01%とした。一方、過剰に含有させると熱間加工性が著しく低下するため、上限を2.50%とした。
REM(希土類元素)は、熱間加工性を向上させる元素であり、必要に応じて含有させてもよい。ただし、0.0004%未満ではその効果は少ないため、下限を0.0004%とした。一方、過剰に含有させると溶接金属の靭性が低下するため、上限は0.0500%であり、好ましくは0.0300%以下である。なお、「REM」とは、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素の総称であり、REMの含有量とはREMのうちの1種または2種以上の元素の合計含有量を指す。また、REMは一般的にミッシュメタルに含有されるため、ミッシュメタルの形で添加してREMの含有量が上記の範囲になるように含有させてもよい。
P:0.04%以下
Pは原料から鋼中に混入する不可避的不純物であり、その含有量が多くなると溶接高温割れを生じやすくなるとともに、溶接部の延性が低下するため、上限を0.04%以下とした。
本発明においては、金属板の隅肉継手に適用できる溶接方法のうち、溶接ワイヤを用いるアーク溶接、例えばMIG、MAG、TIG溶接に適用できる。
エキゾーストマニホールド、フロントパイプ、フレキシブルパイプ、触媒コンバータ、センターパイプ、メインマフラー、テールエンドパイプの溶接個所に、本発明のフェライト系ステンレス鋼溶接用ソリッドワイヤを用いて、前述した隅肉溶接方法を適用することによって、自動車排気部品を製造することができる。
2・・・部品(母材)
3・・・溶接ワイヤ
4・・・溶滴
5・・・溶融池
6・・・スパッタ
7・・・溶鋼飛散
8・・・ギャップ部
9・・・内面側
10・・・トーチ側の部品表面
Claims (6)
- 質量%で、
C:0.003~0.040%、
Si:0.05~1.00%、
Mn:0.05~1.00%、
S:0.0050~0.0200%、
Cr:13.0~20.0%、
Al:0.001~0.010%、
Ca:0.0001~0.0005%、
Mg:0.0001~0.0010%、
O:0.0020~0.0200%、
N:0.003~0.040%、
Nb:0.20~0.80%
を含有して「0.04<10S+O-2Al-15(Ca+Mg)」を満たし、
P:0.04%以下に制限され、
残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とするフェライト系ステンレス鋼溶接用ソリッドワイヤ。
ここで、上記数式中のS、O、Al、Ca、Mgは、各元素の含有量を質量%で表した値を意味する。 - 質量%で、
Ni:0.01~2.00%、
Mo:0.01~3.00%、
Cu:0.05~1.00%、
Ti:0.002~0.500%、
B:0.0001~0.0030%、
Co:0.05~1.00%、
Ta:0.04~0.50%、
V:0.05~1.00%、
W:0.05~0.50%、
Zr:0.0004~0.1000%、
Sn:0.01~2.50%、
REM:0.0004~0.0500%
の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼溶接用ソリッドワイヤ。 - 隅肉溶接用の請求項1または2に記載のフェライト系ステンレス鋼溶接用ソリッドワイヤ。
- 自動車排気部品用の前記請求項1~3のうちいずれか1項に記載のフェライト系ステンレス鋼溶接用ソリッドワイヤ。
- 請求項1~4のうちいずれか1項に記載のフェライト系ステンレス鋼溶接用ソリッドワイヤを用いて重ね隅肉溶接を行うことを特徴とする隅肉溶接方法。
- 請求項5に記載の隅肉溶接方法を含むことを特徴とする自動車排気部品の製造方法。
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