JP2016002576A - フェライト系ステンレス鋼溶接ワイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】フェライト系ステンレス鋼からなる構造物の溶接に用いることができ、しかも、耐溶接割れ性及び耐食性に優れた溶接部を得ることが可能なフェライト系ステンレス鋼溶接ワイヤを提供すること。【解決手段】フェライト系ステンレス鋼溶接ワイヤは、フェライト系ステンレス鋼からなり、該フェライト系ステンレス鋼は、0.003≦C≦0.030mass%、0.1≦Si≦1.0mass%、0.1≦Mn≦0.8mass%、P≦0.04mass%、S≦0.010mass%、0.01≦Cu≦0.25mass%、14.0≦Cr≦21.0mass%、0.01≦Ti≦0.80mass%、0.048≦Nb≦0.80mass%、0.02≦Mo≦0.25mass%、及び、0.003≦N≦0.05mass%を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなり、8?([C]+[N])≦[Nb]を満たす。【選択図】なし

Description

本発明は、フェライト系ステンレス鋼の溶接に用いられるフェライト系ステンレス鋼溶接ワイヤに関する。
フェライト系ステンレス鋼は、オーステナイト系ステンレス鋼に比較して、安価であり、塩環境下での耐応力腐食性割れ性に優れている。さらに、フェライト系ステンレス鋼は、熱膨張係数が小さいことから、熱疲労特性にも優れている。そのため、フェライト系ステンレス鋼は、自動車への適用が拡大している。
フェライト系ステンレス鋼を用いて各種の構造物を製造する場合、溶接法を用いることが多い。フェライト系ステンレス鋼の溶接には、通常、フェライト系ステンレス鋼からなる溶接ワイヤが使用される。このような溶接ワイヤに関し、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、所定量のC、Si、Mn、Cr、及びNを含有し、さらに、Nb及び/又はTiを含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、(C+N)が0.03%以下、かつ、(Nb+Ti)/(C+N)が12以上であるフェライト系ステンレス鋼溶接用ソリッドワイヤが開示されている。
同文献には、(C+N)及び(Nb+Ti)/(C+N)を所定の範囲とすることによって、溶接金属の耐食性を確保できる点が記載されている。
特許文献2には、所定量のC、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、Co、Cu、Al、及びTiを含み、さらに、Nb及び/又はTaを含み、残部がFe及び不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス鋼溶接ワイヤが開示されている。
同文献には、このような溶接ワイヤを用いることによって、溶接金属の結晶粒を微細化でき、耐割れ性、曲げ性、高温までの引張強さ、耐食性、及び耐酸化性を改善できる点が記載されている。
さらに、特許文献3には、所定量のC、Si、Mn、Cr、Ni、及びCuを含み、残部が実質的にFeからなるフェライト系ステンレス鋼のワイヤと、ワイヤの表面にメッキされたCuメッキ層とを備えた溶接ワイヤが開示されている。
同文献には、このような溶接ワイヤを用いることによって、溶接ビードの割れを抑制し、かつ、溶接部の靱性を高めることができる点が記載されている。
溶接構造物としてフェライト系ステンレス鋼が使用される場合、溶接ワイヤには、通常、溶接構造物と同一又は類似の組成を有するフェライト系ステンレス鋼が使用される。しかしながら、その際、溶接部の高温割れや耐食性の低下が問題となる。
このような溶接部の問題点を改善するため、溶接ワイヤにCu、Mo、Ti等を添加して溶接金属の粒径を制御したり、Tiの安定化元素を溶接ワイヤに添加することが提案されている。しかしながら、これらの従来技術を用いても、問題が生じることが多い。
特開2008−132515号公報 特開2006−231404号公報 特開2000−256809号公報
本発明が解決しようとする課題は、フェライト系ステンレス鋼からなる構造物の溶接に用いることができ、しかも、耐溶接割れ性及び耐食性に優れた溶接部を得ることが可能なフェライト系ステンレス鋼溶接ワイヤを提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係るフェライト系ステンレス鋼溶接ワイヤは、
フェライト系ステンレス鋼からなり、
前記フェライト系ステンレス鋼は、
0.003≦C≦0.030mass%、
0.1≦Si≦1.0mass%、
0.1≦Mn≦0.8mass%、
P≦0.04mass%、
S≦0.010mass%、
0.01≦Cu≦0.25mass%、
14.0≦Cr≦21.0mass%、
0.01≦Ti≦0.80mass%、
0.048≦Nb≦0.80mass%、
0.02≦Mo≦0.25mass%、及び、
0.003≦N≦0.05mass%
を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなり、
8×([C]+[N])≦[Nb]を満たす
ことを要旨とする。
フェライト系ステンレス鋼において、Cuは、主に室温における強度と耐食性を向上させる作用がある。Moは、主に塩化物環境下における耐応力腐食割れ性を向上させる作用がある。しかしながら、これらの元素を添加するだけでは、溶接部の高温割れや耐食性の低下を抑制することはできない。
一方、Ti及びNbは、いずれも溶接部に含まれるCやNと結合する。そのため、これらは、粒界にCr系の炭化物や窒化物が析出することに起因する溶接部の耐食性の低下を抑制する作用がある。しかしながら、Nbのみを添加すると、溶接部が高温割れを起こしやすくなる。一方、Tiのみを添加すると、TiO2となって溶接部から排出されやすくなる。
これに対し、フェライト系ステンレス鋼からなる溶接ワイヤにおいて、添加元素としてCu、Mo、Ti、及びNbを組み合わせ、かつ、これらの添加量を最適化すると、室温における強度や耐応力腐食割れ性に優れるだけでなく、耐溶接割れ性及び耐食性に優れた溶接部を得ることができる。
図1(a)は、ローラー曲げ試験に用いた試験板の模式図である。図1(b)は、試験板の溶接方法を説明するための模式図である。図1(c)は、ローラ曲げ試験法の模式図である。 図2(a)は、耐溶接割れ性試験に用いた試験板の模式図である。図2(b)は、試験ビードの溶接方法を説明するための模式図である。
以下に、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. フェライト系ステンレス鋼溶接ワイヤ]
本発明に係るフェライト系ステンレス鋼溶接ワイヤは、以下の構成を備えている。
(1)前記フェライト系ステンレス鋼溶接ワイヤは、フェライト系ステンレス鋼からなる。
(2)前記フェライト系ステンレス鋼は、
0.003≦C≦0.030mass%、
0.1≦Si≦1.0mass%、
0.1≦Mn≦0.8mass%、
P≦0.04mass%、
S≦0.010mass%、
0.01≦Cu≦0.25mass%、
14.0≦Cr≦21.0mass%、
0.01≦Ti≦0.80mass%、
0.048≦Nb≦0.80mass%、
0.02≦Mo≦0.25mass%、及び、
0.003≦N≦0.05mass%
を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなり、
8×([C]+[N])≦[Nb]を満たす。
[1.1. フェライト系ステンレス鋼溶接ワイヤの組成]
本発明に係るフェライト系ステンレス鋼溶接ワイヤを構成するフェライト系ステンレス鋼は、以下のような元素を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる。添加元素の種類、その成分範囲、及び、その限定理由は、以下の通りである。
[1.1.1. 構成元素]
(1)0.003≦C≦0.030mass%:
Cは、溶接部の強度確保の観点から、ある程度の含有が必要である。そのためには、C量は、0.003mass%以上である必要がある。C量は、さらに好ましくは、0.008mass%以上、さらに好ましくは、0.012mass%以上である。
一方、C量が過剰になると、溶接後の冷却過程でマルテンサイトが形成される。その結果、溶接部が脆くなり、延性、靱性が低下する。また、これによって溶接割れが発生しやすくなる。従って、C量は、0.030mass%以下である必要がある。C量は、さらに好ましくは、0.025mass%以下、さらに好ましくは、0.020mass%以下である。
(2)0.1≦Si≦1.0mass%:
Siは、溶製時に脱酸剤として添加される。酸素量を低減するためには、Si量は、0.1mass%以上である必要がある。Si量は、さらに好ましくは、0.2mass%以上、さらに好ましくは、0.3mass%以上である。
一方、Si量が過剰になると、溶接部の延性、靱性が低下する。従って、Si量は、1.0mass%以下である必要がある。Si量は、さらに好ましくは、0.8mass%以下、さらに好ましくは、0.6mass%以下である。
(3)0.1≦Mn≦0.8mass%:
Mnは、溶製時に脱酸剤として添加される。酸素量を低減するためには、Mn量は、0.1mass%以上である必要がある。Mn量は、さらに好ましくは、0.2mass%以上、さらに好ましくは、0.3mass%以上である。
一方、Mn量が過剰になると、溶接部の延性、靱性が低下する。従って、Mn量は、0.8mass%以下である必要がある。Mn量は、さらに好ましくは、0.7mass%以下、さらに好ましくは、0.6mass%以下である。
(4)P≦0.04mass%:
P量が過剰になると、冷間加工性が低下し、溶接ワイヤの製造が困難となる。また、過剰のPを含む溶接ワイヤを用いて溶接すると、溶接部の延性、靱性が低下する。従って、P量は、0.04mass%以下である必要がある。P量は、さらに好ましくは、0.03mass%以下、さらに好ましくは、0.02mass%以下である。
(5)S≦0.010mass%:
S量が過剰になると、冷間加工性が低下し、溶接ワイヤの製造が困難となる。また、過剰のSを含む溶接ワイヤを用いて溶接すると、溶接部の延性、靱性が低下する。従って、S量は、0.010mass%以下である必要がある。S量は、さらに好ましくは、0.008mass%以下、さらに好ましくは、0.006mass%以下である。
(6)0.01≦Cu≦0.25mass%:
Cuは、引張強度と耐食性を高めるために必要である。このような効果を得るためには、Cu量は、0.01mass%以上である必要がある。Cu量は、さらに好ましくは、0.04mass%以上、さらに好ましくは、0.08mass%以上である。
一方、Cu量が過剰になると、効果が飽和するとともに、延性、靱性が低下する。従って、Cu量は、0.25mass%以下である必要がある。Cu量は、さらに好ましくは、0.23mass%以下、さらに好ましくは、0.20mass%以下である。
(7)14.0≦Cr≦21.0mass%:
Crは、耐食性を付与する主要元素である。高い耐食性を得るためには、Cr量は、14.0mass%以上である必要がある。Cr量は、さらに好ましくは、14.5mass%以上、さらに好ましくは、15.0mass%以上である。
一方、Cr量が過剰になると、材料が硬化し、溶接ワイヤの製造が困難となる。従って、Cr量は、21.0mass%以下である必要がある。Cr量は、さらに好ましくは、20.5mass%以下、さらに好ましくは、20.0mass%以下である。
(8)0.01≦Ti≦0.80mass%:
Tiは、溶接部の耐食性を高めるために必要な元素である。Tiを含む溶接ワイヤを用いて溶接を行うと、溶接部に含まれるC、NがTiと結合する。その結果、粒界にCr系の炭化物や窒化物が析出することに起因する溶接部の耐食性の低下が抑制される。このような効果を得るためには、Ti量は、0.01mass%以上である必要がある。Ti量は、さらに好ましくは、0.20mass%以上、さらに好ましくは、0.30mass%以上である。
一方、Ti量が過剰になると、溶接部の延性、靱性が低下する。従って、Ti量は、0.80mass%以下である必要がある。Ti量は、さらに好ましくは、0.65mass%以下、さらに好ましくは、0.45mass%以下である。
(9)0.048≦Nb≦0.80mass%:
Nbは、溶接部の耐食性を高めるために必要な元素である。Nbを含む溶接ワイヤを用いて溶接を行うと、溶接部に含まれるC、NがNbと結合する。その結果、粒界にCr系の炭化物や窒化物が析出することに起因する溶接部の耐食性の低下が抑制される。このような効果を得るためには、Nb量は、0.048mass%以上である必要がある。Nb量は、さらに好ましくは、0.2mass%以上、さらに好ましくは、0.35mass%以上である。
一方、Nb量が過剰になると、溶接部の耐割れ性、延性、靱性が低下する。従って、Nb量は、0.80mass%以下である必要がある。Nb量は、さらに好ましくは、0.7mass%以下、さらに好ましくは、0.55mass%以下である。
(10)0.02≦Mo≦0.25mass%:
Moは、塩化物環境下での耐孔食性を高めるために必要な元素である。このような効果を得るためには、Mo量は、0.02mass%以上である必要がある。Mo量は、さらに好ましくは、0.04mass%以上、さらに好ましくは、0.08mass%以上である。
一方、Mo量が過剰になると、溶接部の延性、靱性が低下する。従って、Mo量は、0.25mass%以下である必要がある。Mo量は、さらに好ましくは、0.23mass%以下、さらに好ましくは、0.20mass%以下である。
(11)0.003≦N≦0.05mass%:
Nは、溶接部の強度確保の点からある程度の含有が必要である。そのためには、N量は、0.003mass%以上である必要がある。N量は、さらに好ましくは、0.005mass%以上、さらに好ましくは、0.007mass%以上である。
一方、N量が過剰になると、溶接後の冷却過程で溶接部にマルテンサイトが形成される。その結果、溶接部が脆くなり、延性、靱性が低下する。また、これによって溶接割れが発生しやすくなる。従って、N量は、0.05mass%以下である必要がある。N量は、さらに好ましくは、0.045mass%以下、さらに好ましくは、0.04mass%以下である。
[1.1.2. 成分バランス]
上述したように、Nbは、溶接部に含まれるC、Nと結合し、溶接部の耐食性の低下を抑制する作用がある。そのため、Nb量がC及びNの総量に対して相対的に少なくなると、耐食性の低下が顕著となる。従って、フェライト系ステンレス鋼中のNb量(mass%)は、8×([C]+[N])≦[Nb]を満たしている必要がある。ここで、[X]は、元素Xの含有量(mass%)を表す。
[1.2. フェライト系ステンレス鋼溶接ワイヤの形状]
フェライト系ステンレス鋼溶接ワイヤは、フェライト系ステンレス鋼のみからなるもの(いわゆる、「ソリッドワイヤ」)ものでも良く、あるいは、フラックスを含むもの(いわゆる、「フラックス入りワイヤ」)であっても良い。
また、溶接ワイヤの直径や長さは、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な値を選択することができる。
[2. 作用]
フェライト系ステンレス鋼において、Cuは、主に室温における強度と耐食性を向上させる作用がある。Moは、主に塩化物環境下における耐応力腐食割れ性を向上させる作用がある。しかしながら、これらの元素を添加するだけでは、溶接部の高温割れや耐食性の低下を抑制することはできない。
一方、Ti及びNbは、いずれも溶接部に含まれるCやNと結合する。そのため、これらは、粒界にCr系の炭化物や窒化物が析出することに起因する溶接部の耐食性の低下を抑制する作用がある。しかしながら、Nbのみを添加すると、溶接部が高温割れを起こしやくなる。一方、Tiのみを添加すると、TiO2となって溶接部から排出されやすくなる。
これに対し、フェライト系ステンレス鋼からなる溶接ワイヤにおいて、添加元素としてCu、Mo、Ti、及びNbを組み合わせ、かつ、これらの添加量を最適化すると、室温における強度や耐応力腐食割れ性に優れるだけでなく、耐溶接割れ性及び耐食性に優れた溶接部を得ることができる。
特に、Ti量を0.30≦Ti≦0.45mass%とし、かつ、Nb量を0.35≦Nb≦0.55mass%とすると、高い耐食性を維持したまま、溶接部の延性、靱性が向上する。これは、高温割れが生じない程度にNb量を低減しているため、及び、Nbの低減により低下した耐食性をTiで補っているため、である。
(実施例1〜16、比較例1〜16)
[1. 試料の作製]
表1に示す組成の合金を溶製した。得られた鋳塊の熱間加工及び冷間加工を行い、溶接ワイヤ(ソリッドワイヤ)を得た。
[2. 試験方法]
[2.1. ローラー曲げ試験]
[2.1.1. 試験板の作製]
図1(a)に、ローラー曲げ試験に用いた試験板の模式図を示す。図1(b)に試験板の溶接方法を説明するための模式図を示す。母材には、板厚:1.5mmのSUS430板を用いた。母材から図1(a)に示す寸法の板を切り出した。図1(b)に示すように、重ね部の幅が10mmとなるように2枚の板を重ね合わせ、各種の溶接ワイヤを用いてすみ肉溶接を行った。母材間のギャップ:0mm、トーチ回転角:45°とし、ルート部を狙って溶接した。溶接条件は、以下の通りである。
シールドガス: 96.5%Ar+3.5%O2、流量20L/min
溶接電流: 170A
アーク電圧: 21.5V
溶接速度: 80cm/min
[2.1.2. 評価方法]
図1(c)に、ローラ曲げ試験法の模式図を示す。溶接ビードが一対のローラのほぼ中央に来るように、かつ、溶接ビードの表側が下になるように、試験板を一対のローラの上に載せ、押しジグの雄型で試験板を下方に押し込んだ。押し込み速度は10mm/min、押し込み量は35mm又は70mmとした。曲げ試験後、浸透探傷試験により溶接ビードの表面割れを調査した。判定基準は、以下の通りである。
◎: 亀裂なし
○: 長さ1mm未満の亀裂が1個以下
△: 長さ1mm未満の亀裂が2個以下
×: 長さ1mm以上の亀裂、または3個以上の亀裂
[2.2. 耐溶接割れ性試験]
[2.2.1. 試験板の作製]
図2(a)に、耐溶接割れ性試験に用いた試験板の模式図を示す。図2(b)に、試験ビードの溶接方法を説明するための模式図を示す。
母材には、厚さ9mmのSUS410Lを用いた。母材から図2(a)に示す寸法の板を切り出した。横板と縦板を密着させて両端面をタック溶接した後、下向姿勢1パスでビードS1を置き、ただちにS1と反対側にのど厚がS1より小さい試験ビードS2を置いた。S1及びS2の溶接は、試験板のほぼ全長にわたって行った。
溶接条件は、以下の通りである。
シールドガス: 96.5%Ar+3.5%O2
シールドガス流量: 20L/min
溶接方法: パルスミグ溶接
溶接電流: 約260A(S1)、約250A(S2)
アーク電圧: 約26V(S1)、約25.5V(S2)
溶接速度: 40cm/min
Ext.: 15mm
[2.2.2. 評価方法]
溶接後、浸透探傷試験により溶接ビードの表面割れの個数をカウントした。
[2.3. 耐食性(1):塩水噴霧試験]
[2.3.1. 試験板の作製]
ローラー曲げ試験と同様にして、試験板を作製した。
[2.3.2. 評価方法]
溶接後、塩水噴霧試験を行った(JIS Z2371、100時間)。判定基準は、以下の通りである。
○: 錆び発生なし
×: 錆び発生あり
[2.4. 耐食性(2):しゅう酸エッチング試験]
[2.3.1. 試験板の作製]
ローラー曲げ試験と同様にして、試験板を作製した。
[2.3.2. 評価方法]
溶接後、溶接部の横断面について、樹脂埋込試料を作製した。これを用いて、ステンレス鋼のしゅう酸エッチング試験を行った(JIS G0571)。判定基準は、以下の通りである。
○: 段状組織
△: 部分的に溝状組織が認められる
×: すべての結晶粒界で溝状組織が認められる。
[3. 結果]
表1に、結果を示す。なお、表1には、各溶接ワイヤの組成も併せて示した。表1より、以下のことがわかる。
Figure 2016002576
(1)比較例1は、ローラ曲げ試験時に亀裂が発生した。これは、Cが過剰であるために、溶接後の冷却過程でマルテンサイトが形成されたためと考えられる。また、比較例1は、溶接割れも発生した。これは、Cが過剰であるために、溶接後の冷却過程で粒界に炭化物が析出したためと考えられる。
(2)比較例2〜6は、ローラー曲げ試験時に亀裂が発生した。これは、Si、Mn、P、S、又はCuが過剰であるためと考えられる。
(3)比較例7は、耐食性が低い。これは、Crが少ないためと考えられる。
(4)比較例8〜10は、しゅう酸に対する耐食性が低い。これは、Ti及び/又はNbが少ないためと考えられる。
(5)比較例11〜13は、ローラー曲げ試験時に亀裂が発生し、溶接割れも発生した。これは、Ti及び/又はNbが過剰であるためと考えられる。
(6)比較例14は、塩水環境下での耐食性が低い。これは、Moが少ないためと考えられる。
(7)比較例15は、ローラー曲げ試験時に亀裂が発生した。これは、Moが過剰であるためと考えられる。
(8)比較例16は、ローラー曲げ試験時に亀裂が発生し、溶接割れも発生した。これは、Nが過剰であるためと考えられる。
(9)実施例1〜16は、いずれもローラー曲げ試験時に大きな亀裂が発生せず、かつ溶接割れも発生しなかった。さらに、塩水環境下及びしゅう酸環境下のいずれにおいても、高い耐食性を示した。
(10)Ti量を0.30≦Ti≦0.45mass%とし、かつ、Nb量を0.35≦Nb≦0.55mass%とすると、溶接部の延性、靱性がさらに向上した(実施例7〜9、実施例11〜12、実施例14)。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は、上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係るフェライト系ステンレス鋼溶接ワイヤは、フェライト系ステンレス鋼からなる各種構造物の溶接に用いることができる。

Claims (2)

  1. フェライト系ステンレス鋼からなり、
    前記フェライト系ステンレス鋼は、
    0.003≦C≦0.030mass%、
    0.1≦Si≦1.0mass%、
    0.1≦Mn≦0.8mass%、
    P≦0.04mass%、
    S≦0.010mass%、
    0.01≦Cu≦0.25mass%、
    14.0≦Cr≦21.0mass%、
    0.01≦Ti≦0.80mass%、
    0.048≦Nb≦0.80mass%、
    0.02≦Mo≦0.25mass%、及び、
    0.003≦N≦0.05mass%
    を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなり、
    8×([C]+[N])≦[Nb]を満たす
    フェライト系ステンレス鋼溶接ワイヤ。
  2. 前記フェライト系ステンレス鋼は、
    0.30≦Ti≦0.45mass%、及び、
    0.35≦Nb≦0.55mass%
    である請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼溶接ワイヤ。
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