JP2005041704A - 無アルカリガラス基板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ガラスのβ−OH値が0.45/mm以上、好ましくは0.485/mm以上、さらには0.5/mm以上である。また質量%で、SiO2 50〜70%、Al2O3 10〜25%、B2O3 5〜20%、MgO 0〜10%、CaO 0〜15%、BaO 0〜15%、SrO 0〜10%、ZnO 0〜10%含有し、本質的にアルカリ金属酸化物を含まない。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、無アルカリガラス、特に液晶ディスプレイ等の透明ガラス基板として使用されている無アルカリガラス基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、液晶ディスプレイ等の透明ガラス基板として、無アルカリガラスが使用されている。ディスプレイ用途の無アルカリガラスには、表示欠陥となる泡がないことの他、耐酸性等の特性が要求される。
【0003】
このような無アルカリガラスとして、従来より種々のガラスが提案されており、例えば、特許文献1には、アルミノシリケート系の無アルカリガラスが開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平6−263473号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
液晶ディスプレイに使用される透明ガラス基板の表面には、金属膜やITO膜が成膜される。膜のパターンは、酸によるエッチングにて形成されるために、ガラスには高い耐酸性が要求される。この種の基板に用いられるガラスでは、ガラス中のB2O3量が耐酸性と密接に関係しており、B2O3量を低減すれば耐酸性を向上することが可能であることが知られている。
【0006】
またホウ素(B)はPRTR法の指定化学物質に挙げられており、環境面からもB2O3使用量を低減することが望まれている。
【0007】
ところがB2O3量を低減すると溶融性が低下し、泡が増加する等の問題が生じるおそれがある。
【0008】
本発明の目的は、溶融性を低下させることなく、耐酸性を向上させることが可能な無アルカリガラス基板を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、種々の検討を行った結果、ガラス中の水分量を一定値以上に調整することにより、上記目的が達成できることを見いだした。
【0010】
即ち、本発明の無アルカリガラス基板は、ガラスのβ−OH値が0.45/mm以上であることを特徴とする。
【0011】
また本発明の無アルカリガラス基板は、ガラスのβ−OH値が0.485/mm以上、さらには0.5/mm以上であることが好ましい。
【0012】
また本発明の無アルカリガラス基板は、質量%で、SiO2 50〜70%、Al2O3 10〜25%、B2O3 5〜20%、MgO 0〜10%、CaO 0〜15%、BaO 0〜15%、SrO 0〜10%、ZnO 0〜10%含有し、本質的にアルカリ金属酸化物を含まないことを特徴とする。
【0013】
また本発明の無アルカリガラス基板は、液晶ディスプレイの透明ガラス基板として用いられることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
一般的なガラスにおいては、アルカリ金属酸化物が代表的なフラックス成分であるが、無アルカリガラスでは、アルカリ土類金属酸化物やB2O3がフラックスとして働く。このためアルカリ土類金属酸化物やB2O3は、アルミノシリケート系の無アルカリガラスにおいてガラスの粘性を低下させるために、それぞれ特定量含有させる必要がある。このようなガラスにおいて、化学耐久性の向上や環境面からB2O3の含有量のみを減少させようとすると、ガラスの粘性が上昇し、ガラス溶融し難くなる。また、B2O3の減量分をアルカリ土類金属酸化物で補うことも考えられるが、アルカリ土類金属酸化物は熱膨張係数に大きな影響を与えるために、その含有量を変更することは困難である。
【0015】
そこで本発明では、ガラスの水分量を高め、B2O3含有量の減少に伴うガラス粘性の上昇を抑制しようとするものである。具体的には、ガラス中の水分量をβ−OH値で0.45/mm以上、好ましくは0.485/mm以上、さらに好ましくは0.5/mm以上に調整する。水分量が高くなるほどガラスの粘性が低下し、B2O3含有量の低減が容易になる。なおガラスのβ−OH値は、以下の式を用いて求めることができる。
β−OH値 = (1/X)log10(T1/T2)
X :ガラス肉厚(mm)
T1:参照波長3846cm−1における透過率(%)
T2:水酸基吸収波長3600cm−1付近における最小透過率(%)
【0016】
また本発明のガラス基板は、質量%で、SiO2 50〜70%、Al2O3 10〜25%、B2O3 5〜20%、MgO 0〜10%、CaO 0〜15%、BaO 0〜15%、SrO 0〜10%、ZnO 0〜10%含有し、本質的にアルカリ金属酸化物を含まない無アルカリガラスからなる。因みに、本質的にアルカリ金属酸化物を含まないとは、アルカリ金属酸化物(Li2O、Na2O、K2O)が0.2質量%以下であることを意味する。
【0017】
無アルカリガラスの組成を限定した理由は、次のとおりである。
【0018】
SiO2は、ガラスのネットワークとなる成分であり、その含有量は50〜70%である。SiO2が50%より少ないと耐薬品性が悪化すると共に、歪点が低下して耐熱性が悪くなる。70%より多くなると、高温粘度が高くなって溶融性が悪くなると共にクリストバライトの失透物が析出しやすくなる。SiO2の好ましい含有量は55〜70%である。
【0019】
Al2O3は、ガラスの耐熱性、耐失透性を高める成分であり、その含有量は10〜25%である。Al2O3が10%より少ないと失透温度が著しく上昇してガラス中に失透が生じやすくなり、25%より多いと耐酸性、特に耐バッファードフッ酸性が低下してガラス表面に白濁が生じやすくなる。Al2O3の好ましい含有量は10〜20%である。
【0020】
B2O3はフラックスとして働き、粘性を下げて溶融を容易にする成分であり、その含有量は5〜20%である。B2O3が5%より少ないとフラックスとしての効果が不十分となり、20%より多いと耐酸性が低下すると共に、歪点が低下して耐熱性が悪化する。B2O3の好ましい含有量は8.5〜15%である。
【0021】
MgOはフラックスとして働き、歪点を下げずに高温粘性を下げてガラスの溶融を容易にする成分であり、その含有量は0〜10%である。MgOが10%より多いと、ガラスの耐バッファードフッ酸性が著しく低下する。MgOの好ましい含有量は0〜3.5%である。
【0022】
CaOも、MgOと同様の働きをする成分であり、その含有量は0〜15%である。CaOが15%より多いと、耐バッファードフッ酸性が著しく低下する。CaOの好ましい含有量は0〜10%、より好ましい含有量は5〜10%である。
【0023】
BaOはフラックスとして働き、またガラスの耐薬品性を向上させると共に失透性を改善する成分であり、その含有量は0〜15%である。BaOが15%より多いと歪点が低下して耐熱性が悪くなる。またガラスの密度が大きくなる。BaOの好ましい含有量は0〜10%である。
【0024】
SrOも、BaOと同様の働きをする成分であり、その含有量は0〜10%である。SrOが10%より多いと失透性が増すため好ましくない。SrOの好ましい含有量は、0〜7%である。
【0025】
ところで携帯電話やノート型パソコンといった携帯型デバイスには、携帯時の利便性から機器の軽量化が要求されており、それに使用されるガラス基板にも軽量化を図るため、低密度化が要求されている。また、この種のガラス基板は、薄膜トランジスタ(TFT)材料との熱膨張係数が大きくなると、反りが発生するため、TFT材料の熱膨張係数(約30〜33×10−7/℃)に近似するような低膨張、具体的には28〜40×10−7/℃の熱膨張係数を有することが望ましい。BaOとSrOは、ガラスの密度と熱膨張係数にも影響を与える成分であり、低密度、低膨張のガラスを得るためには、これらを合量で15%以下、好ましくは10%以下に抑えるべきである。
【0026】
ZnOは、耐バッファードフッ酸性と失透性を改善する成分であり、その含有量は0〜10%である。しかしながらZnOが10%より多いと、逆にガラスが失透しやすくなり、また歪点が低下して耐熱性が悪くなる。ZnOの好ましい含有量は、0〜5%である。
【0027】
また本発明では、上記成分の他に、例えばZrO2、TiO2、Fe2O3、P2O5、Y2O3、Nb2O3、La2O3等を合量で5%まで、As2O3、Sb2O3、Cl2、SO3、SnO2等の清澄剤を合量で3%まで含有することができる。
【0028】
次に本発明の無アルカリガラス基板の製造方法を述べる。
【0029】
まず所望の組成を含有するガラスとなるようにガラス原料調合物を用意する。次いで調合したガラス原料調合物を溶融する。その後、溶融ガラスを所望の形状に成形し、ガラス基板を得る。ディスプレイ用途に使用する場合、オーバーフローダウンドロー法、スロットダウンドロー法、フロート法、ロールアウト法等の方法を用いて薄板状に成形すればよい。特にオーバーフローダウンドロー法によって成形すると、非常に表面品位に優れたガラス板が得られるため好ましい。
【0030】
なお無アルカリガラスの水分量を調整するには、含水量の高い原料(例えば水酸化物原料)を選択したり、原料中に水分を添加したり、塩素等のガラス中の水分量を減少させる成分の含有量を調整したり、ガラス溶融の際に酸素燃焼を採用して炉内雰囲気中の水分量を増加させたり、炉内に直接水蒸気を導入したり、溶融ガラス中で水蒸気バブリングを行う等の方法により行うことができる。
【0031】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明の無アルカリガラス基板を説明する。
【0032】
表1は、本発明の実施例(試料No.1、2)及び比較例(試料No.3、4)を示している。
【0033】
【表1】
【0034】
表中の各試料ガラスは、次のようにして作製した。
【0035】
まず表の組成となるようにガラス原料を調合し、混合した後、連続溶融炉にて溶融した。清澄剤に関しては、各試料同量を使用している。さらに溶融ガラスをオーバーフローダウンドロー法にて板状に成形し、切断することにより、ガラス基板を得た。なお試料No.1は水酸化原料の使用により、また試料No.2は水蒸気バブリングによりガラス中の水分量を増加させた。なおガラスのβ−OH値は、FT−IRを用いてガラスの透過率を測定し、下記の式を用いて求めた。
β−OH値 = (1/X)log10(T1/T2)
X :ガラス肉厚(mm)
T1:参照波長3846cm−1における透過率(%)
T2:水酸基吸収波長3600cm−1付近における最小透過率(%)
【0036】
次に、各試料の耐酸性(耐塩酸性)及び溶融性を評価したところ、本発明の実施例であるNo.1、2の試料は何れも良好であった。
【0037】
なお溶融性は、ガラス基板中の100μm以上の泡数をカウントし、1kg当たりの泡数に換算することにより評価した。耐塩酸性は、各試料ガラスの一部をマスキングし、80℃に保持された10質量%塩酸水溶液に24時間浸漬した。浸漬後の試料ガラスのマスキング面と侵食面の段差を接触式表面粗さ計で測定した。その差を侵食量として評価した。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の無アルカリガラス基板は、溶融性を低下させることなく、高い耐酸性を得ることが可能であるため、液晶ディスプレイの透明ガラス基板として好適である。また液晶ディスプレイ用途以外にも、エレクトロルミネッセンスディスプレイ等のその他の平面ディスプレイのガラス基板、電荷結合素子、等倍近接型固体撮像素子、CMOSイメージセンサ等の各種イメージセンサのカバーガラス、及びハードディスクやフィルタのガラス基板等として使用可能である。
Claims (5)
- ガラスのβ−OH値が0.45/mm以上であることを特徴とする無アルカリガラス基板。
- ガラスのβ−OH値が0.485/mm以上であることを特徴とする請求項1の無アルカリガラス基板。
- ガラスのβ−OH値が0.5/mm以上であることを特徴とする請求項1の無アルカリガラス基板。
- 質量%で、SiO2 50〜70%、Al2O3 10〜25%、B2O3 5〜20%、MgO 0〜10%、CaO 0〜15%、BaO 0〜15%、SrO 0〜10%、ZnO 0〜10%含有し、本質的にアルカリ金属酸化物を含まないことを特徴とする請求項1〜3の何れかの無アルカリガラス基板。
- 液晶ディスプレイの透明ガラス基板として用いられることを特徴とする請求項1〜4の何れかの無アルカリガラス基板。
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JP2003199985A JP2005041704A (ja) | 2003-07-22 | 2003-07-22 | 無アルカリガラス基板 |
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