JP2005036377A - 製糸用糸道部材およびその製造方法ならびにそれを用いた合成繊維の製糸方法 - Google Patents

製糸用糸道部材およびその製造方法ならびにそれを用いた合成繊維の製糸方法 Download PDF

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Abstract

【課題】
長期に亘る操業運転によっても製糸糸道部品であるガイドローラー、糸道規制ガイド、および糸条交絡ガイド等であって、摩耗せずに長期間使用でき、糸条に損傷を与えないため糸切れや毛羽を発生させることなく、かつ該糸道部品の表面が汚れ難いため清掃の頻度を大幅に減少できる等の効果を有する糸道部材を提供する。即ち、耐摩耗性、低摩擦性および離型性に優れた表面を有する糸道部材を提供することにある。
【解決手段】
合成繊維を製造するための紡糸、延伸および巻き取り装置群からなる製糸ロセスにおいて、製糸用糸道部材として用いられるガイドローラー、糸道規制ガイド、および糸条交絡付与エアーガイドと繊維糸条が接触する部分の少なくとも一部が、蒸着膜で形成されており、その蒸着膜の被膜硬度(常温HV)が1500〜6000であることを特徴とする製糸用糸道部材。
【選択図】なし

Description

本発明は、合成繊維を製造するための紡糸、延伸および巻き取り装置群からなる製糸プロセスにおいて用いられる製糸用糸道部材、特にガイドローラー、糸道規制ガイド、または糸条交絡ガイド等に関する。詳しくは、糸条と接触する製糸用糸道部材の表面が耐摩耗性、低摩擦性および離型性に優れている高硬度の蒸着膜によって形成されており、該糸道部品の表面が汚れ難く、糸切れや毛羽が大幅に減少できる製糸用糸道部材およびその製造方法ならびにそれを用いた合成繊維の製糸方法に関する。
合成繊維の製造において、紡糸、延伸および巻き取り装置群からなる製糸ブロセスに用いられている製糸用糸道部材、例えばガイドローラー、糸道規制ガイド、および糸条交絡付与エアーガイドは、製糸中に走行糸条を損傷しないよう該糸道部材の表面は低摩擦力の材質が用いられている。例えば、ジルコニヤ、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化アルミナ等のセラミックおよび金属基材にクロムめっきしたものなどが好んで採用されている。その中でも安価でありながら、表面粗さを任意で選定できる梨地クロムめっきが最も好んで用いられている。梨地クロムめっきの表面特性について述べると、クロムめっきの製造方法は、まず指定される表面粗さにするために基材に砂等でブラスト処理を施し粗面化する。これが表面粗さの元になる。次に電解析出工程に移る。基材を浴槽のクロム酸を含む溶液の中に浸け、浴槽と基材に通電しクロム酸をイオン化し基材にクロムを電解析出させる。粗面化されたダル(突起)にクロムが析出成長し表面が球状(まるびを帯びた状態)に変化することから繊維糸条との摩擦抵抗を極力下げることができ、従って単糸切れ、毛羽等の製糸性を重視した結果、この梨地クロムめっきを好んで用いられていた。しかし、近年は走行糸条の高速化が進み、さらには高硬度の金属類(酸化チタン酸化鉄、酸化マグネシウム等)やカーボンブラック等を含む溶融ポリマーを紡糸することも多く、繊維糸条を高速で且つ高張力で巻取ると、繊維糸条と接触する梨地クロムめっきした表面が摩擦により著しく摩耗してしまうといった問題があった。その理由として硬質クロムめっきの硬度(常温HV800〜950)が低いことが挙げられ、上述するような耐摩耗性を改善する技術が望まれていた。
製糸用糸道部材ではないが、製糸プロセスで用いられる加熱ローラーの表面を高硬度のコーティング層で被覆された加熱ローラー装置とそれを用いたポリエステル繊維の製造方法は、特許文献1に開示されている。
特許文献1は、高速で延伸熱処理される直接紡糸延伸において、十分な熱処理効果を発揮する加熱ローラー装置を提供すること。また、上記加熱ローラー装置を用い、高タフネスであると共に高温での寸法安定性に優れたポリエステル繊維を、直接紡糸延伸法により効率的に製造する方法を提供することを課題とし、内部に加熱手段と熱媒を封入できる中空のジャツケット室を備え、熱伝導度が5.0W/m2K以上、気孔率が1.0%未満、ビッカース硬度HV300が1000以上であるコーティング層でローラー表面の一部または全部が被覆された加熱ローラー装置とする。また、ポリエチレンテレフタレート系ポリエステルを溶融紡糸し、得られた未延伸糸を一旦巻き取ることなく連続して1段以上の延伸ローラーで延伸した後、最終ローラーを経由させて巻き取るに際し、最終段の延伸ローラー速度が3000m/分以上であり、かつ少なくとも該最終段の延伸ローラーに、上記加熱ローラーを使用することを解決手段とするものである。
また同様に、製糸用糸道部材ではないが、製糸プロセスで用いられる特定の表面粗度を有するセラミック製加熱ローラー装置を用いたポリエステル糸条の直接紡糸延伸方法が、特許文献2に開示されている。
特許文献2は、長期に亘る操業運転によっても引き取りローラーおよび延伸ローラーの表面状態が油剤の影響を殆ど受けず、またさらに長期に亘って使用してもローラー表面が摩耗せず、均染性が良く、かつ、糸切れや毛羽の発生が極めて少ない完全延伸糸(FDY)が得られるポリエステル糸条の直接紡糸延伸する方法を提供することを課題とし、紡糸口金から溶融紡糸しオイリング装置で油剤を付与したポリエステル糸条を、4500m/分以上の引き取り速度で回転される非加熱引き取りローラーに0.5〜2.5回に亘り捲回し、次いでセラミックコーティングされた加熱延伸ローラーに3.5〜6.5回に亘り捲回して、引き取りローラーおよび延伸ローラー間で1.1〜1.5倍に延伸することを解決手段とするものである。
しかしながら、上記従来の技術は、加熱ローラー用としては目的とする効果が得られるものの、該表面コーティング技術を加熱ローラー以外の製糸用糸道部材に適用しても、低摩擦性、耐摩耗性および離型性を兼備していないため、製糸用糸道部材の長期使用、糸切れや毛羽の減少などの目的とする効果が得られなかった。また、この糸道部材は、加熱ローラーに比べ著しく曲率半径が小さいため、加熱ローラーより一層の低摩擦性が要求されるが、従来技術では達成できなかった。
特開2000−256916号公報 特開2002−212852号公報

本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題とするものである。 従って本発明の課題は合成繊維を製造する際、製糸用糸道部材であるガイドローラー、糸道規制ガイド、または糸条交絡付与エアーガイド等に汚れなどの離型性に優れ、耐腐蝕性、耐摩耗性に優れた高硬度の蒸着膜を施したことで、製糸糸道部品が長期間使用可能になり、また、糸条との摩擦抵抗が優れており、糸条へのダメージが少なくなるため糸切れや毛羽を発生を減少させ、長期に亘る操業運転が可能になる等、著しい効果をあげる製糸用糸道部材およびその製造方法ならびにそれを用いた合成繊維の製糸方法を提供することである。
上記の課題を解決するため、本発明の製糸用糸道部材は、合成繊維を製造するための紡糸、延伸および巻き取り装置群からなる製糸プロセスにおいて用いられる製糸用糸道部材、特にガイドローラー、糸道規制ガイド、または糸条交絡付与エアーガイド等の繊維糸条と接触する部分が被膜硬度(常温HV)1500〜6000の蒸着膜で形成されていることを特徴とする製糸用糸道部材である。
そして、本発明の製糸用糸道部材においては、次の(1)〜(7)がそれぞれ好ましい態様として挙げられる。
(1)前記蒸着膜のJIS−B0601:2001規定による表面粗さを、算術平均粗さRaが0.3〜5μmで且つ、形態の相対負荷長さRmrを表わす負荷長さ率(%)と切断レベル(%)との直行座標点(0,0)(100,100)を結ぶ直線aと負荷長さ率が0%の線と切断レベルが50%の線とに囲まれた三角総面積をA、該直交座標の切断レベル0〜50%の領域において、前記直線aと相対負荷長さ曲線bとに囲まれた総面積をBとするとき、その面積比B/Aが10〜35%であること。
(2)前記蒸着膜表面と水との接触角が65〜115゜であること。
(3)前記蒸着膜表面の糸との摩擦抵抗値が40〜70gfであること。
(4)前記蒸着膜の膜厚が0.5〜20μmであること。
(5)前記蒸着膜が梨地クロムめっき層の上に形成されていること。
(6)前記蒸着膜がFHC(フローリックハードコート)、CFC(フッ化カーボンコート)、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、TiBN(窒化チタン硼素)、CrBN(窒化クロム硼素)、SiBN(窒化シリコン硼素)、CrN(窒化クロム)から選ばれた少なくとも1種からなること。
(7)前記製糸用糸道部材がガイドローラー、糸道規制ガイド、および糸条交絡付与エアーガイドのうちのいずれか1種であること。
また、本発明の製糸用糸道部材の製造方法は、有機ガスを原料とする蒸着膜を蒸着する製糸用糸道部材の製造方法において、製糸用糸道部材表面の少なくとも一部に、真空下で基材の加速電圧を−100〜−3kVの範囲に維持するとともに、CF系ガスまたはCH系ガスの有機ガス成分をイオン化し、蒸着膜を形成することを特徴とする。そして、本発明の製糸用糸道部材の製造方法は、金属を原料とする蒸着膜を蒸着する製糸用糸道部材の製造方法において、該製糸用糸道部材表面の少なくとも一部に真空下で基材の加速電圧を−50〜−2kVの範囲に維持するとともに、B(硼素)、Ti(チタン)、Cr(クロム)、Si(シリコン)から選ばれた少なくとも一種の金属成分をイオン化し、さらに窒素置換して、蒸着膜を形成することを特徴とする。
これらの本発明の製糸用糸道部材の製造方法において、次の(8)〜(12)がそれぞれ好ましい態様として挙げられる。
(8)前記蒸着膜がFHC(フローリックハードコート)、CFC(フッ化カーボンコート)、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)から選ばれるいずれか一種であること。
(9)前記FHC(フローリックハードコート)もしくはCFC(フッ化カーボンコート)中のフッ素含有量が2%以上であること。
(10)前記B(硼素)、Ti(チタン)、Cr(クロム)、Si(シリコン)の不純物含有率が0.01%以下であること。
(11)前記蒸着膜が、TiBN(窒化チタン硼素)、CrBN(窒
化クロム硼素)、SiBN(窒化シリコン硼素)、CrN(窒化クロム)から選ばれた少なくとも1種からなること。
(12)製糸用糸道部材がガイドローラー、糸道規制ガイド、および糸条交絡付与エアーガイドのうちのいずれか1種であること。
更に、本発明の合成繊維繊糸条の製糸方法は前記した製糸用糸道部材を用いることを特徴とする。更には前記合成繊維糸条が繊度200〜3000dtex、強度6.0〜10.0cN/dtexであり、巻取速度2000〜6000m/分、20〜300gfで巻き取ることでより目的とする効果を得ることが出来る。
本発明は、合成繊維を製造するための紡糸、延伸および巻き取り装置群からなる製糸プロセスにおいて、製糸用糸道部材として用いられるガイドローラー、糸道規制ガイド、および糸条交絡ガイド等が、耐摩耗性、低摩擦性および離型性に優れるため、糸道部材が摩耗せずに長期間使用でき、糸条に損傷を与えないため糸切れや毛羽を発生を減少させ、かつ該糸道部材の表面が汚れ難いため清掃の頻度を大幅に削減できる等の効果を有する。
本発明における合成繊維は、熱可塑性ポリマーを溶融紡糸して得られる合成繊維であって、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスルフィド、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルニトリル等からなる合成繊維である。また、上記ポリマーを主成分とする共重合ポリマー、および上記2種以上のポリマーのブレンドまたは複合によって得られる合成繊維等でもなんら問題ない。
合成繊維を製造するための製糸プロセスは図1に示した紡糸、延伸および巻き取り装置群からなる製糸プロセスである。本発明は、前記製糸プロセスにおいて用いられる製糸用糸道部材、特にガイドローラー、糸道規制ガイド、または糸条交絡付与エアーガイド等であって、繊維糸条と接触する部分の表面が蒸着膜で形成されており、その蒸着膜の被膜硬度(常温HV)が1500〜6000であることを特徴とする製糸用糸道部材である。
図2〜4は本発明の製糸用糸道部材の一態様の正面図と繊維糸条と接触する部の断面図であるが、本発明において繊維糸条と接触する部の表面とは図5に示す太線部分である。図2〜4に於ける繊維糸条と接触する太線部分が蒸着膜形成されていれば良い。なお、本発明の効果を損なわない限り、上記部分以外の部分が蒸着膜形成されていたとしてもなんら問題ない。
また、本発明の製糸用糸道部材の蒸着膜硬度(常温HV)は1500〜6000である。好ましくは2000〜5000である。1500未満では、繰り返し使用した時に機械的損傷を受け易く、また繊維糸条の通過により糸道部や交絡付与のためのエアーノズル付近で攪乱された糸条が接する糸道部が摩耗し易く、本発明効果が得られない。さらには例えば、溶融ポリマーに酸化チタン、酸化マグネシウム、カーボンブラック、およびベンガラ等の無機の添加剤を含む繊維糸条を延伸する場合に摩耗が顕著に起きる。
一方、6000を越えると耐摩耗性は一層良好となるものの、現状の技術で実現することは困難である。なお、蒸着膜硬度は主に蒸着の製膜成分の種類で決定される。したがって、製糸用糸道部材の蒸着膜形成部分の蒸着膜硬度を1500〜6000の範囲にするには、これに合った製膜成分の種類を選定することが重要である。なお、蒸着槽を高真空にし10−3Torr以上の環境でイオンクリーニングを実施し密着力を高めることが好ましく、基材にイオン注入することがさらに好ましい。そのためには基材の加速電圧を基材の材質に合わせて設定し、クリーンなプラズマを発生させ蒸着することが最も重要である。また、不純物含有率0.01%以下の高純度の蒸着用金属原料を用いることがさらに好ましい条件である。
なお、本発明において金属原料の不純物含有率は、例えば島津製作所製EPMA−8705型の電子線マイクロアナライザーによる定量分析、分析条件が加速電圧8kV、試料電流50nA、ビーム径φ100μmにて行うことにより測定できる。また、蒸着金属に微量に含まれる不純物としては、具体的にはFe(鉄)、K(カリウム)、Ca(カルシウム)、Na(ナトリウム)等が挙げられる。
次に本発明に於ける繊維糸条と接触する表面の特性は、JIS−B0601:2001規定された方法で表示するとき、下記のようにしたことで特徴づけられる。このときの粗さ測定は触針走査式粗さ測定器を用いる。まず触針走査式粗さ測定器で繊維糸条の接触する表面の粗さ曲線を得て、その粗さ曲線から求められた算術平均粗さRaを0.3〜5μmの範囲にすることである。さらに繊維糸条の接触する表面を一定量づつ平らにカットオフしながら、各カットオフ毎に触針走査式粗さ測定器で表面粗さを求め、その時の切断レベル(%)と累積相対負荷長さRmrの負荷長さ率(%)を求る。このようにして得られた測定値を、図7に例示するように負荷長さ率(%)と切断レベル(%)との直行座標にプロットして相対負荷長さ曲線をbを得る。そして、この負荷長さ率(%)と切断レベル(%)との直行座標において、二つの座標点(0,0)(100,100)を結ぶ直線aと負荷長さ率が0%の線と切断レベルが50%の線とに囲まれた三角総面積をA、該直交座標の切断レベル0〜50%の領域において、前記直線aと相対負荷長さ曲線をbとで囲まれる総面積をBとする時、その面積比B/Aを10〜35%の範囲にすることにある。
上述した表面粗さにおいて、前記の算術平均粗さRaは製糸用糸道部材の表面の粗さを表す。この算術平均粗さRaが0.3μm未満であると、殆ど表面が凸凹してない状態、つまり平滑状態であることを表し、製糸用糸道部材に対する糸条の接触面積が増加し、摩擦抵抗が高くなる。このような表面形態の製糸用糸道部材で糸条を延伸すると、例えば図1に示す上下で1セットからなる2段配列式の延伸ローラーでは、表面の摩擦抵抗が高いことで、糸条を数回、捲回した加熱延伸ローラー上で徐々に糸条を延伸することができず、熱セットしてない加熱延伸ローラー間(1段目と2段目)で急激に延伸することになり糸切れが増加する上、規定の品質が得られない。これらは、延
伸ローラーの配列が2段配列式でなく、それ以上の段数でも同様な現状が発生する。
また、図2に示すガイドローラーでは、非加熱方式を採用し、これらの駆動方式はモーター方式や空気軸受け方式を一般的に採用している。モーター駆動が必要なガイドローラーは、加熱延伸ローラーに糸条を搬送する際に、搬送角度を変化させるところに配置し、その角度は最大180°変換させるものである。そのような箇所では、延伸ローラーや弛緩ローラー間が長いため糸条の弛みが発生することが経験的に知られている。従ってその間にモーター駆動方式のガイドローラーを配置し、その回転速度は、糸条速度より数%高い回転数で設定し糸条弛みを抑制している。該ガイドローラーの糸条と接触する表面に、摩擦抵抗の高い表面粗さを選定すると、搬送糸条が通過する際に糸条が物理的ダメージを受け、単糸切れや毛羽および糸切れを発生させる。また、その他のエアー軸受けガイドローラーは、近年、省エネと云う観点から実用化が急速に進められてきている。一般的に糸条巻取機の直前のガイドローラーに配置する。その理由として、糸条巻取機にて規定時間巻き取られた糸条は、糸を切り上げることなく自動で待機する紙管に糸切り替えを行う。その際に巻取機の糸切り替え成功性と云う観点から、糸条速度より切り替え待機側の紙管(ボビン)の周速、即ち回転速度を数十%高く設定する必要がある。そこで上述するような設定を行うと、巻取機直前の糸条速度は糸切り替え前後で変化することになる。ここでエアー軸受けガイドローラーに要求することは、変化する糸条速度に追従して回転数を変化させることである。該エアー軸受けガイドローラーの糸条と接触する表面が、摩擦抵抗の高い表面粗さを選定すると、糸切り替え時の糸条速度の変化に追従して回転数を変化させるとき急激に糸条速度に反応して回転数が反応してしまう。このような現状が起きると、弛緩ローラーと該エアー軸受けガイドローラー間で糸弛みが発生し、弛緩ローラーに糸条が巻き付き、糸切れを来すことになる。
次に図3に示す糸道規制ガイドの目的は、糸条の糸幅、搬送糸条のピッチ、搬送糸条の走行角度の変更等を規制することであり、該糸道規制ガイドは一般的には串状の固定したガイドバーや小型の回転ローラーが用いられる。該糸道規制ガイドは、搬送している糸条と相対速度差が大きいため極力、摩擦抵抗を軽減させなければならない。摩擦抵抗が高い表面粗さを選定すると、搬送糸条が通過する際に糸条が物理的ダメージを受け、単糸切れや毛羽等が発生する上、規定倍率まで延伸することができず糸切れに至る。
次に図4に示す糸条交絡付与エアーガイドの目的は、溶融紡糸された多数本のフィラメントからなる合成繊維糸条の集束性が乏しい場合に、製造工程に於ける糸条走行時や巻上げた糸パッケージから糸条を連続的に取出す解舒時、さらには、織、編加工時に、糸切れが生じやすくなり、糸条自体あるいはそれから得られる加工製品の生産性が低下することを防止することである。該エアーガイドでの交絡付与のメカニズムについて述べると、一般的にエアーガイドは2対の加圧流体を噴射するノズルを有する部材と該ノズル毎に前記噴射ノズルに対向して設けられた糸条通路部材からなる。加圧流体は該ノズル部材の底面に配置する加圧流体導入管から供給される。糸条は絶え間なく糸条通路部材を通過し、該糸条通路部材に向けてノズル部材から加圧流体を噴射し、糸条のフィラメント相互を加圧流体の作用により激しく攪乱し、即ち、交絡処理する。なお、搬送された糸条は、エアーガイド内で激しく攪乱され交絡処理した際に、該糸条通路部材の内壁に衝突しながら搬送方向に進行する。糸条と接触する糸条通路部材の内面表面に摩擦抵抗の高い表面粗さを選定すると、搬送糸条が通過する際に糸条が物理的ダメージを受け、単糸切れや毛羽等が発生する上、規定倍率まで延伸することができず糸切れに至る。
従って、上述した種々の製糸用糸道部材の表面粗さを算術平均粗さRaが0.3μm未満であると、製糸用糸道部材に対する糸条の接触面積が増加し摩擦抵抗が高くなることから該部材の通過性が悪くなり、糸弛み、単糸切れ、毛羽および糸切れを発生させてしまう。
上述した表面粗さにおいて、面積比B/Aは製糸用糸道部材の表面粗さの突起(ダル)の形状の鋭利度を表す。この面積比B/Aを求めるため使用される切断レベル(%)は、上記のようにカットオフ処理していく時の表面形状の深さを表し、切断レベル0%はカットオフ前の状態であって、山形状の頂点を示し、また切断レベル100%は粗さ曲線で最も深い谷部を示す。また、負荷長さ率(%)は、各切断レベルにカットしたとき面内の基準長さ内に現れる切断長さの和(累積負荷長さ)の基準長さに対する比の百分率で求められた値であって(基準長さとして25mmを選択するものとする。)、製糸用糸道部材の表面の形状を表す指数になる。つまりこの負荷長さ率が(%)の値が小さいほど製糸用糸道部材の表面がギザギザの山形状に尖っていることを意味し、またこの値が大きいほど製糸用糸道部材の表面が丸びを帯びている形状を示していることを意味する。従って、上述定義の面積比B/Aは、ダル先端の鋭角の度合いを表しており、面積比B/Aが大きいほどダル先端が鋭利になって糸条を傷つけやすくなりまた小さいほどダル先端が丸くなっていて糸条を傷つけ難くなることを意味する。本発明の製糸用糸道部材の表面粗さの面積比B/Aは、百分率で10〜35%に設定されている。この面積比B/Aが35%を超えると表面の凹凸のダルが鋭利化して糸条を傷つけ、単糸切れや毛羽立ち易くなる。また、単糸繊度が小さい糸条はでは、単糸がダルの谷間に落ち込んで摩擦抵抗が高くなる。また、面積比がB/Aが10%未満であると、製糸用糸道部材の表面の平滑性は十分であるが、現在の加工技術では困難な領域になる。
なお、本発明において上記面積比B/Aを規定するに当たり、切断レベル0〜50%の範囲に限ったのは、作用効果との関係で表面粗さのダル頂点の状態を特定するには、切断レベル50%までを測定すれば十分であり、それ以上を測定してもあまり意味がないからである。また、上記の面積Bについては、図7において相対負荷長さ曲線bが直線aよりも上方側に膨らむ場合もあるが、現在の加工技術では得られないので、対象外にしてある。
蒸着膜表面と水との接触角が65〜115゜であることが好ましい。また、蒸膜を形成させる範囲は少なくとも製糸用糸道部材一部であり、糸条走行もしくは糸条が接する部分であり、その一部分が蒸着膜で形成されていればよい。そして、該蒸着膜表面と糸条が擦過した際に発生する汚れとの離型性は、該蒸着膜表面の水との接触角が65〜115゜とすることによって特定される。好ましくは80〜105°である。65°未満では本発明の目的とする糸条が擦過した際に発生する汚れとの離型性が得られない。一方、115°を越える接触角はより好ましい離型性を意味するが、現在実用技術として達成することは困難である。なお、接触角は蒸着膜の材質に大きく影響される。なかでも、FHCやCFCのようにフッ化物からなる蒸着膜は非常に撥水性、離型性に優れるため好ましい。さらに、当然のことながら蒸着方法や蒸着装置によっても得られる表面形態が異なるが、接触角は蒸着膜の表面粗さの影響も受ける。
本発明の製糸用糸道部材の製造方法は、有機ガスを原料とする蒸着膜を蒸着する製糸用糸道部材の製造方法において、製糸用糸道部材表面の少なくとも一部に、真空下で基材の加速電圧を−100〜−3kVの範囲に維持するとともに、CF系ガスまたはCH系ガスの有機ガス成分をイオン化し、蒸着膜を形成するかまたは、有機ガスを原料とする蒸着膜を蒸着する製糸用糸道部材の製造方法において、製糸用糸道部材表面の少なくとも一部に、真空下で基材の加速電圧を−100〜−3kVの範囲にコントロールするとともに、CF系ガスまたはCH系ガスの有機ガス成分をイオン化し、蒸着膜を形成する。
例えば蒸着膜の原料は有機ガス等のガス系や単一金属や合金からなる金属系に大別できるが、一般的にガス系をイオン化して蒸着させる方が蒸着膜表面の粗さが粗くなることなく蒸着膜表面の仕上げが反映される。なお、さらに蒸着後の蒸着膜表面の仕上がりを向上させるには、基材の加速電圧を−100〜−3kVの範囲にコントロールし、さらにフッ素添加量を2%以上に保つことがさらに好ましい条件である。なお、本発明において蒸着膜のフッ素添加量は、例えば島津製作所製EPMA−8705型の電子線マイクロアナライザーによる定量分析を、分析条件が加速電圧8kV、試料電流50nA、ビーム径φ100μmにて行うことにより測定することができる。
一方、金属系を蒸着させる際には、イオン化した金属を基材との強い電位エネルギーの差を利用して物理的に基材表面に衝突させものである。従ってこの衝撃エネルギーが強いほど蒸着膜と基材の密着力が上がることになる。よって得られた蒸着膜表面はガス系より比較的粗い表面に仕上がる。そこで表面粗さをガス系同様に仕上げるためにイオン化した金属の照射量や照射スピードをコントロールして改善している。なお、さらに蒸着後の蒸着膜表面の仕上がりを向上させるには、基材の加速電圧を−50〜−2kVの範囲にコントロールすることがさらに好ましい条件である。さらに得られた蒸着膜をラッピングして表面を仕上げることも工夫して行っている。
次に、本発明において、蒸着膜の糸との摩擦抵抗値は好ましくは40〜70gf、さらに好ましくは40〜50gfである。40gf未満の摩擦抵抗の蒸着は現時点では実用化が難しい。現状クロムめっきの表面粗さを算術平均粗さRaを0.3〜5μmの範囲にすると、糸との摩擦抵抗を図6の糸摩擦測定装置で測定すると50gf±5gfであるので蒸着膜形成後45gf以下であればクロムめっきのみを使用していたときより、さらに糸条にストレスを与えることなく高品質の糸条を巻き取ることができる。一方、55〜70gfの領域では、クロムめっきの新品時と比べると若干摩擦抵抗が高く繊維糸条にストレスを与えることとなるが品質が生産管理値以内であることから何ら問題なく生産が可能である。さらに70gfを超える摩擦抵抗は、現在生産管理値で定める範囲を超える。70gfを超える領域では毛羽立ちや単糸切れまた、品質面では、強度(cN/dtex)等の低下が発生する可能性が極めて高くなることが分かっている。
次に、本発明において蒸着膜の厚みは、好ましくは0.5〜20μm、さらに好ましくは1〜15μmである。0.5μm未満の厚みの蒸着は現時点では実用化が難しい。膜厚さの不均一性や打撲等機械的に損傷を受けたり不十分である。一方、20μmを越える厚みは、既に効果が飽和しており、蒸着コストが高くなるため、経済的効果の点からみればあまり好ましくない。
本発明の製糸用糸道部材である延伸ローラー、ガイドローラー、糸道規制ガイド、および交絡付与エアーガイドの蒸着膜の表面の特性は上記の通りであるが、具体的な蒸着膜成分および蒸着方法等は以下の通りである。
繊維糸条と接触する製糸用糸道部材である延伸ローラー、ガイドローラー、糸道規制ガイド、および交絡付与エアーガイドは、金属であれば特に限定されないが、好ましくは従来から用いられたステンレススチールや一般構造用圧延鋼材、機械構造用炭素鋼鋼材、SCM、SPCC、SK等の金属が好んで用いられている。
本発明の製糸用糸道部材に蒸着形成させる蒸着膜の成分はフロン系、フッ素系化合物のFHC(フローリックハードコート)、CFC(フッ化カーボンコート)、カーボン系のDLC(ダイヤモンドライクカーボン)、硼素系のTiBN(窒化チタン硼素)、CrBN(窒化クロム硼素)、SiBN(窒化珪素硼素)、Cr系のCrN(窒化クロム)、チタン合金系のTiCN(炭窒化チタン)、TiN(窒化チタン)、TiALN(窒化チタンアルミ)、その他のSiC(炭化珪素)等から選ばれた金属加工物類およびセラミック化合物類である。
これらの蒸着膜は、製糸用糸道部材と糸条が通過時に擦過することで発生する汚れとさらに糸条延伸時に付与する油剤との離型性に優れるとともに酸やアルカリ水溶液などの耐腐蝕性に優れている。特にフロン系、フッ素系化合物のFHC(フローリックハードコート)、CFC(フッ化カーボンコート)、カーボン系のDLC(ダイヤモンドライクカーボン)、硼素系のTiBN(窒化チタン硼素)、CrBN(窒化クロム硼素)、SiBN(窒化珪素硼素)、Cr系のCrN(窒化クロム)は、より優れた耐腐蝕性を示す。
本発明の製糸用糸道部材である延伸ローラー、ガイドローラー、糸道規制ガイド、および交絡付与エアーガイドと繊維糸条が接触する表面に蒸着膜を形成する具体的な方法は、例えば以下の通りである。
まずは、PVD法(Phisical Vapor Deposition Process:物理的気相蒸着)またはCVD法(Chemical Vapor Deposision Process:化学的気相蒸着)のいずれかの方法によって行うことができる。しかしながら、PVD法(物理的気相蒸着)の方がCVD法に比べ蒸着時の処理温度が低いため、本発明の製糸用糸道部材に蒸着する方法としては好ましい。しかし、CVD法の中でもP−CVD法(プラズマCVD)においてはPVD法と同等の低温環境下での蒸着が可能であるので、PVD法同様に好ましい処理方法として用いられる。
本発明の製糸用糸道部材に蒸着膜を形成する具体的な方法は、例えば以下の通りである。まず、蒸着に先立つ金属基材の前処理として、金属基材の表面に蒸着膜を形成し易くするために基材の洗浄を行う。基材の洗浄にはエタノール、シンナー等の溶剤を用い、その後に水中で超音波洗浄して細孔部等に入り込んでいる異物を除去する。さらに仕上げ洗浄水には純水や整水を用いる。
上記前処理を適正に実施すれば、蒸着膜の密着力を損なうようなことはないが、さらに好ましい基材洗浄方法としてイオンクリーニングを行うと良い。真空炉を用い、炉内の真空度を10−2〜10−7Torrまで真空引きし、イオン源となるイオンガンや高周波(RF)またはDC電圧で基材や電極に印加し、その後アルゴンガス(Ar)を導入しプラズマを発生させる。アルゴンイオン(Ar)を基材に電位差で衝突させ、その衝突エネルギーで基材表面の酸化膜や付着物を除去する。
次に、蒸着加工時に使用する真空炉内も充分に清掃する。以前に蒸着処理した金属や金属酸化物が真空炉内に付着していると、蒸着時にベーパー化し不純成分として基材に蒸着されてしまうからである。それを防止するため真空炉内面に薄い金属板を張り付け蒸着後に取り替えるか、または真空炉内面に離型剤をコーティングして酸化物の付着防止等を行うなど清掃することが好ましい。複雑形状でマスキング等ができない箇所にはサンドブラストでショットし物理的衝撃で前回の膜を除去する方法もある。
また、真空炉を真空引きする条件、即ち真空度に応じて真空ポンプタイプを選定しなければならない。真空度が高真空(10−1Torr以上)の環境下で用いる際は、油回転ポンプなのどの潤滑オイルが真空により炉内に逆流しないようにターボ分子ポンプやクライオポンプを用いるとよい。ポンプの整備状態もコーティングの品質に対しては極めて大きなウエイトを持つので充分に整備する必要がある。
本発明の製糸用糸道部材に形成する蒸着法について、PVD法およびCVD法について以下に詳述する。
(1)PVD法:主な装置としてイオン化蒸着装置、イオンプレーティング蒸着装置、スパッタリング装置、アークイオンプレーティング装置等を用いる。蒸着させたい金属基材に真空環境下でプラス電荷を帯びた原子をイオン状態にして、これを強い電位のエネルギーを利用してマイナス電圧を金属基材に印加し金属基材表面に高速でイオンを引き寄せ蒸着コーティングさせる。
PVD法で用いる装置は、真空炉によって真空環境下で処理を行うものであり、その真空度は一旦10−5〜10−7Torrに到達させて、Ti、窒素ガス、炭化水素系ガス(アセチレンガス)等の反応ガスもしくはキャリアガスとしてアルゴンガス等のガスを導入し、最終的には10−2〜10−4Torrで処理する。処理温度は100〜400℃、好ましくは100〜280℃である。この温度範囲で処理することにより、蒸着膜の機械的特性の劣化、熱変形、あるいは金属基材の複雑な形状部への応力集中による亀裂、破損などを防ぐことができる。また蒸着処理時間は蒸着の厚みにもよって変化させるが、通常は1〜5時間である。
(2)CVD法:PVD法と同じく真空炉を用い、例えば、熱CVD装置または直流プラズマCVD装置、高周波プラズマCVD装置などが用いられる。蒸着させたい金属基材に常圧、減圧容器内で高温に加熱し金属基材に原料ガスを接触させて化学反応によって金属基材表面に蒸着コーティングさせる方法である。この時の真空度は、先ず1〜10−5Torrに到達させた後、反応ガスを導入し最終的には常圧〜10−3Torrで処理する。熱プラズマ装置での処理温度は500〜1200℃、好ましくは500〜600℃である。また、直流プラズマCVD装置、高周波プラズマCVD装置での処理温度は100〜400℃であり、PVD装置と同等の低温成膜が可能である。蒸着処理時間は蒸着膜の厚みにもよって変化させるが、通常は1〜5時間である。
熱CVD装置は高温環境下で成膜処理するため機械的特性の劣化、熱歪みによる変形、複雑な形状の場合は応力集中による亀裂、破損等が起こり易い。従って、比較的簡単な形状、あまり精度を要求しない用途に使われる方法である。 なお、上記いずれの方法を用いるにしても、本発明の製糸用糸道部材の蒸着においては、製糸用糸道部材の複雑な形状の内部まで蒸着膜を形成させる場合もあり、CVD法のように反応ガスから成膜させる方法が好ましい。PVDのスパッタなどのように、真空炉内で金属を溶融し、スパッタなどのようにイオンが直線的にしか進行できないため製糸用糸道部材の複雑な形状の内部にまで到達することが困難である。そのため、蒸着原料をガス系のものを選ぶか、金属系の蒸着原料を選らぶ際には、イオン源と金属基材の配置を工夫したり、製糸用糸道部材の複雑な形状の内部に、より蒸着膜を形成させるため数回に亘り機材を配置する角度を変え蒸着処理を行う。
次に本発明の製糸用糸道部材の蒸着膜として好ましい7つの例について、その蒸着膜の製造方法を以下に例示する。
(1)FHC(フローリックハードコート):PVD法のイオンプレーティング装置で成膜処理する。真空炉の回転テーブルに製糸用糸道部材をセットし30〜100rpmで正逆転のいずれか一定方向に回転させる。真空ポンプにて真空引きして真空度を10−3〜10−6Torrにし、アルゴンガス(Ar)を導入し、真空度を10−2〜10−3Torrに制御しイオンクリーニングする。CF系ガス(CFまたはC)を導入ノズルより真空炉内に導入する。熱フィラメントで電圧もしくは高周波をかけることでプラズマを発生させCF系ガスをイオン化する。活発に運動する熱電子に正の電圧をかけることで陽イオンとなった蒸発粒子は、直流の負電圧にバイアスされた製糸用糸道部材に向かって加速し衝突する。製糸用糸道部材表面に到達した蒸発粒子は急速に冷却されて固化し成膜する。また、処理時の真空炉の温度は100〜400℃、好ましくは100〜250℃で処理する。
(2)CFC(フッ化
カーボンコート):CVD法のP−CVD装置で成膜処理する。真空炉の回転テーブルに製糸用糸道部材をセットし30〜100rpmで正逆転のいずれか一定方向に回転させる。真空ポンプにて真空引きし、真空度を10−3〜10−6Torrにして、アルゴンガス(Ar)を導入し、真空度を10−2〜10−3Torrに制御しイオンクリーニングする。CF系ガス(CFまたはC)とCH系ガス(C、CまたはCH)を導入ノズルより真空炉内に導入する。製糸用糸道部材に13.56MHzまたは27.12MHzの高周波もしくはDC電圧を印加し、あるいは、電極に高周波を印可し、さらに製糸用糸道部材にDC電圧を印可し、製糸用糸道部材の周辺にプラズマを発生させCFガスとCH系ガスをイオン化する。CFガスとCH系ガスは直流の負電圧にバイアスされた製糸用糸道部材に向かって電界加速され直進する。製糸用糸道部材表面に到達した蒸発粒子は急速に冷却されて固化し成膜する。また、処理時の真空炉の温度は100〜400℃、好ましくは100〜250℃で処理する。
(3)DLC(ダイヤモンドライクカーボン):PVD法のイオンプレーティング装置で成膜処理する方法とCVD法のP−CVD装置で成膜する方法がある。まず該PVD法のイオンプレーティング装置で成膜処理する。真空炉の回転テーブルに製糸用糸道部材をセットし30〜100rpmで正逆転のいずれか一定方向に回転させる。真空ポンプにて真空引きし真空度を10−3〜10−6Torrにし、アルゴンガス(Ar)を導入し、真空度を10−2〜10−3Torrに制御しイオンクリーニングする。CH系ガス(C、CまたはCH)を導入ノズルより真空炉内に導入する。熱フィラメントで電圧もしくは高周波をかけることでプラズマを発生させCH系ガスをイオン化する。活発に運動する熱電子に正の電圧をかけることで陽イオンとなった蒸発粒子は、直流の負電圧にバイアスされた製糸用糸道部材に向かって加速し衝突する。製糸用糸道部材表面に到達した蒸発粒子は急速に冷却されて固化し成膜する。また、処理時の真空炉の温度は100〜400℃、好ましくは100〜250℃で処理する。次にCVD法のP−CVD装置で成膜する方法では、真空炉の回転テーブルに製糸用糸道部材をセットし30〜100rpmで正逆転のいずれか一定方向に回転させる。真空ポンプにて真空引きし、真空度を10−3〜10−6Torrにして、アルゴンガス(Ar)を導入し、真空度を10−2〜10−3Torrに制御しイオンクリーニングする。CH系ガス(C、CまたはCH)を導入ノズルより真空炉内に導入する。製糸用糸道部材に13.56MHzまたは27.12MHzの高周波もしくはDC電圧を印加し、あるいは、電極に高周波を印可し、さらに製糸用糸道部材にDC電圧を印可し製糸用糸道部材の周辺にプラズマを発生させる。CFガスとCH系ガスは直流の負電圧にバイアスされた製糸用糸道部材に向かって電界加速され直進する。製糸用糸道部材表面に到達した蒸発粒子は急速に冷却されて固化し成膜する。また、処理時の真空炉の温度は100〜400℃、好ましくは100〜250℃で処理する。
(4)TiBN(窒化チタン硼素):PVD法のアークイオンプレーティング蒸着装置(AIP)またはスパッタリング蒸着装置で成膜処理する。真空炉の回転テーブルに製糸用糸道部材をセットし30〜100rpmで正逆転のいずれか一定方向に回転させる。真空ポンプにて真空引きして真空度を10−3〜10−6Torrにし、アルゴンガス(Ar)を導入し、真空度を10−2〜10−3Torrに制御しイオンクリーニングする。電極に電圧を加えるとグロー放電が起き、スパッタガスにはアルゴン(Ar)を用い、硼素(B)と窒化チタン(TiN)の金属をターゲットを用いるか、TiB(チタン硼素)またはTiBN(窒化チタン硼素)の金属ターゲットを用いる。前記金属ターゲット表面をプラズマが激しくスパッタすることで金属ターゲットの原子をはじき出し蒸着粒子がイオンとなる。そこに窒素ガスを導入する。真空炉の温度は200〜400℃、好ましくは200〜250℃で処理する。これを強い電位のエネルギーを利用してマイナス電荷を製糸用糸道部材に流し金属基材表面に高速で原子を引き寄せ、製糸用糸道部材表面に成膜する。
(5)CrBN(窒化クロム硼素):PVD法のアークイオンプレーティング蒸着装置(AIP)またはスパッタリング蒸着装置で成膜処理する。真空炉の回転テーブルに製糸用糸道部材をセットし30〜100rpmで正逆転のいずれか一定方向に回転させる。真空ポンプにて真空引きして真空度を10−3〜10−6Torrにし、アルゴンガス(Ar)を導入し、真空度を10−2〜10−3Torrに制御しイオンクリーニングする。電極に電圧を加えるとグロー放電が起き、スパッタガスにはアルゴン(Ar)を用い、硼素(B)と窒化クロム(CrN)の金属をターゲットを用いるか、CrB(クロム硼素)またはCrBN(窒化チタン硼素)の金属ターゲットを用いる。もしくは硼素(B)とクロム(Cr)ターゲットを用いる前記金属ターゲット表面をプラズマが激しくスパッタすることで金属ターゲットの原子をはじき出し蒸着粒子がイオンとなる。そこに窒素ガスを導入する。真空炉の温度は200〜400℃、好ましくは200〜250℃で処理する。これを強い電位のエネルギーを利用してマイナス電荷を製糸用糸道部材に流し金属基材表面に高速で原子を引き寄せ、製糸用糸道部材表面に成膜する。
(6)SiBN(窒化シリコン硼素):PVD法のアークイオンプレーティング蒸着装置(AIP)またはスパッタリング蒸着装置で成膜処理する。真空炉の回転テーブルに製糸用糸道部材をセットし30〜100rpmで正逆転のいずれか一定方向に回転させる。真空ポンプにて真空引きし真空度を10−3〜10−6Torrにし、アルゴンガス(Ar)を導入し、真空度を10−2〜10−3Torrに制御しイオンクリーニングする。電極に電圧を加えるとグロー放電が起き、スパッタガスにはアルゴン(Ar)を用い、硼素(B)と窒化シリコン(SiN)の金属ターゲットを用いるか、SiB(クロム硼素)またはSiBN(窒化シリコン硼素)の金属ターゲットを用いる。もしくは硼素(B)とシリコン(Si)ターゲットを用いる前記金属ターゲット表面をプラズマが激しくスパッタすることで金属ターゲットの原子をはじき出し蒸着粒子がイオンとなる。そこに窒素ガスを導入する。真空炉の温度は200〜400℃、好ましくは200〜250℃で処理する。これを強い電位のエネルギーを利用してマイナス電荷を製糸用糸道部材に流し金属基材表面に高速で原子を引き寄せ、製糸用糸道部材表面に成膜する。
(7)CrN(窒化クロム):PVD法のアークイオンプレーティング蒸着装置で成膜処理する。真空炉の真空度を10−6〜10−7Torrにし、そこに窒素ガスを導入する。真空炉の温度は200〜400℃、好ましくは200〜250℃で処理する。真空炉内のセンターにクロムを配置しアーク電源にてCrを局部的に溶融する。溶融されたクロムは真空環境下でベーパー化し、プラス電荷を帯びたクロム原子をイオン状態にして、これを強い電位のエネルギーを利用してマイナス電荷を製糸用糸道部材に流し金属基材表面に高速で原子を引き寄せ、製糸用糸道部材表面に成膜する。
本発明の、繊維糸条が接触する製糸用糸道部材であるガイドローラー、糸道規制ガイド、または交絡付与エアーガイド等の表面を蒸着処理した製糸用糸道部材糸を用いた産業用ナイロン66繊維の製糸方法を例にとって以下に概説する。
硫酸相対粘度3.2〜3.8のナイロン66チップを用いてエクストルダー型紡糸機で溶融紡糸する。紡糸温度は280〜310℃とし、紡糸パックには15μmの金属不織布フイルターを用いて濾過した後、口金細孔を通して紡糸する。紡出糸条は、口金直下に設置された長さ10〜50cmの加熱筒によって囲まれ、270〜350℃に加熱された高温雰囲気中を通過した後、常温の10〜25℃の冷風によって冷却固化される。次いで、糸条は平滑剤、静電剤、界面活性剤を主成分とする油剤を付与された後、引き取りローラーに捲回され、所定の引き取り速度で引き取られる。引き取り速度は300〜3000m/分、通常は500〜2000m/分である。引取り糸条は一旦巻き取ることなく、順次高速で回転する複数の対ローラーに捲回させ、該対ローラーの速度差によって延伸する。通常は2段または3段延伸したのち、弛緩処理をして巻き取る。延伸はガラス転移温度以上で熱延伸を行い、最終の延伸および熱セット温度は230〜250℃の高温で行う。延伸倍率は2〜6倍の範囲で行われ、巻き取り速度は2000〜6000m/分あり、巻取張力が20〜300gfの条件下で、巻取機で巻き取った。
次に、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、上記本文および以下の実施例に用いた各特性の評価方法を示す。
(1)蒸着膜の厚み:(株)小坂研究所製の”Surfcorder”(SE1700)触針走査式粗さ測定器を用いて測定した。テストピースの一部にマスキングしておいて、蒸着真空炉にて蒸着加工を行う。蒸着処理後にテストピースを取り出し、蒸着部とマスキング部との段差を触針走査粗さ測定器で測定した。
(2)蒸着膜硬度:JIS−B7734のビッカース硬さ試験法で測定した。ビッカース硬さ試験機は(株)明石製作所製"MVKーE"を用いた。
(3)糸/金属摩擦抵抗:図4に示す摩擦抵抗測定装置を用いて測定した。なお、テストピースは、φ20×80LでJIS−B0601:2001規定による表面粗さを、算術平均粗さRaが1.0μmのクロムめっきを施し且つ、形態の相対負荷長さRmrを表わす負荷長さ率(%)と切断レベル(%)との直行座標点(0,0)(100,100)を結ぶ直線aと負荷長さ率が0%の線と切断レベルが50%の線とに囲まれた三角総面積をA、該直交座標の切断レベル0〜50%の領域において、前記直線aと相対負荷長さ曲線bとに囲まれた総面積をBとするとき、その面積比B/Aが20±5%であるものを用い、その表面に種々の蒸着膜を施したものを用いた。
摩擦抵抗測定装置は、糸パッケージPからテスト糸Yの解舒速度Vを10m/分とし、動滑車1に荷重W(gf)を負荷し、一定位置に固定した糸条案内羽根2にテスト糸Yを通過させながら、その時の張力を張力ピックアップ3で検知し、それを摩擦抵抗値(gf)として表した。
(4)水との接触角:糸条延伸装置の各部と同材質で製作したテストピース上に蒸留水2.5ccを滴下して、その接触角を接触角自動測定器にて測定した。測定は温度24±2℃、湿度60±5%の環境下で行った。接触角自動測定器は、”ACT−PRODUCTS”(VCA−OPTIMA装置)を用いた。
(5)ガイドローラーの交換周期(摩耗寿命):蒸着膜の耐摩耗性に指標として、糸とガイドローラーの摩擦抵抗の使用限界値70gfに至るまでの経過日数を測定し、従来技術による比較例3の寿命を1として本発明の効果を相対的に評価した。
(6)糸道規制ガイドの交換周期(摩耗寿命):蒸着膜の耐摩耗性に指標として、糸と延伸ローラーの摩擦抵抗の使用限界値70gfに至るまでの経過日数を測定し、従来技術による比較例3の寿命を1として本発明の効果を相対的に評価した。
(7)交絡付与エアーガイドの交換周期(摩耗寿命):交絡付与エアーガイドに施した蒸着膜の摩耗消滅状態を目視で定期的に観察し、一部でも摩耗消滅の部分が発見されるまでの延紡糸日数を算出し寿命とした。延紡糸日数とは「紡糸日数×紡糸回数」である。なお、従来技術による比較例3の寿命を1として本発明の効果を相対的に示した。
(8)単糸切れ発生:単糸切れの発生:10個の糸パッケージの表面を肉眼で観察し下記の評価基準でランク付けした。
A・・・毛羽が全く見られない
B・・・毛羽が3個/糸パッケージ未満見られる
C・・・毛羽が3個/糸パッケージ以上見られる。
(実施例1〜22、比較例1〜3)
酢酸銅を銅として67ppm、沃化カリウム0.1重量%および臭化カリウム0.1重量%を含む硫酸相対粘度3.7のナイロン66ポリマーを、溶融温度300℃で溶融紡糸した。紡糸機はエクストルーダー型紡糸機を用いて溶融し、溶融紡糸パック中で15μmの金属不織布フィルターを通して濾過したのち、吐出孔から紡糸した。また、紡糸口金は外径190φで、吐出孔径が0.25φで204ホールの口金を用いた。紡糸口金から紡糸された糸条は、300℃に加熱された高温雰囲気を通過した後、冷風によって冷却固化され、油剤を付与された後、所定の速度で回転する引き取りローラーに捲回して引き取った。該引き取り糸は連続して、順次速度をアップしたネルソン型回転ローラーに捲回して延伸した。引き取りローラーは無加熱、フィードローラーは45℃、1段延伸ローラーは150℃、2段延伸ローラーは230℃として、2段熱延伸をした。熱延伸後の糸条は120℃に加熱した弛緩ローラーとの間で6%の弛緩を与えた後、巻取り速度は3500m/分、巻取張力を200gfの条件下で、巻取機で巻き取った。なお、上述した実施例の製糸用糸道部材であるガイドローラー、糸道規制ガイド、および交絡付与エアーガイドには、種々の蒸着膜を表1〜5に示す条件で形成させて製糸した。
その中でも実施例1〜11には、製糸用糸道部材の基材表面に電気めっきで算術平均粗さRa1.0μm、膜厚さ50μmの梨地状態のクロムメッキを施した上に各種蒸着膜を形成させた。また、実施例12〜22においては、下地の電気クロムめっきを施すことなく蒸着膜を形成させた。
その結果、実施例1〜11および12〜22はいずれも表1〜5に示すように、従来技術である比較例3に比べ製糸用糸道部材の寿命が大幅改善されたことが分かる。また、比較例1、2は、実施例の何れよりも製糸用糸道部材の寿命が劣り、また摩擦抵抗値が高く単糸切れが多く、製糸性は大幅に劣る結果であった。
Figure 2005036377
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繊維プロセス装置の一例を示す説明図である。 ガイドローラーの一例の正面図と蒸着例(太線部)を示す図である。 糸道規制ガイドの一例の正面図と蒸着例(太線部)を示す図である。 交絡付与エアーガイドの一例の正面図と蒸着例(太線部)を示す図である。 蒸着膜と基材の断面図を示す図である。 相対負荷長さ曲線に関する負荷長さ−切断レベル関係図である。 摩擦抵抗測定装置を示す説明図である。
符号の説明
1 糸条
2 糸道規制ガイド
3 ガイドローラー
4 フィードローラー
5 交絡付与エアーガイド
6 延伸ローラー
7 巻取機
8 糸パッケージ
9 基材
10蒸着膜 (太線部分)
11動滑車
12テストピース
13張力ピックアップ
W 荷重

Claims (16)

  1. 合成繊維を製造するための紡糸、延伸および巻き取り装置群からなる製糸プロセスにおいて用いられる製糸用糸道部材であって、繊維糸条と接触する部分が被膜硬度(常温HV)1500〜6000の蒸着膜で形成されていることを特徴とする製糸用糸道部材。
  2. 前記蒸着膜のJIS−B0601:2001規定による表面粗さを、算術平均粗さRaが0.3〜5μmで且つ、形態の相対負荷長さRmrを表わす負荷長さ率(%)と切断レベル(%)との直行座標点(0,0)(100,100)を結ぶ直線aと負荷長さ率が0%の線と切断レベルが50%の線とに囲まれた三角総面積をA、該直交座標の切断レベル0〜50%の領域において、前記直線aと相対負荷長さ曲線bとに囲まれた総面積をBとするとき、その面積比B/Aが10〜35%であることを特徴とする請求項1に記載の製糸用糸道部材。
  3. 前記蒸着膜表面と水との接触角が65〜115゜であることを特徴とする請求項1または2に記載の製糸用糸道部材。
  4. 前記蒸着膜表面の糸との摩擦抵抗値が40〜70gfであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製糸用糸道部材。
  5. 前記蒸着膜の膜厚が0.5〜20μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製糸用糸道部材。
  6. 前記蒸着膜が梨地クロムめっき層の上に形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の製糸用糸道部材。
  7. 前記蒸着膜がFHC(フローリックハードコート)、CFC(フッ化カーボンコート)、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、TiBN(窒化チタン硼素)、CrBN(窒化クロム硼素)、SiBN(窒化シリコン硼素)、CrN(窒化クロム)から選ばれた少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の製糸用糸道部材。
  8. 前記製糸用糸道部材がガイドローラー、糸道規制ガイド、および糸条交絡付与エアーガイドのうちのいずれか1種であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の製糸用糸道部材。
  9. 有機ガスを原料とする蒸着膜を蒸着する製糸用糸道部材の製造方法において、製糸用糸道部材表面の少なくとも一部に、真空下で基材の加速電圧を−100〜−3kVの範囲に維持するとともに、CF系ガスまたはCH系ガスの有機ガス成分をイオン化し、蒸着膜を形成することにより請求項7記載の製糸用糸道部材を製造することを特徴とする製糸用糸道部材の製造方法。
  10. 前記蒸着膜がFHC(フローリックハードコート)、CFC(フッ化カーボンコート)、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)から選ばれるいずれか一種であることを特徴とする請求項9記載の製糸用糸道部材の製造方法。
  11. 前記FHC(フローリックハードコート)もしくはCFC(フッ化カーボンコート)中のフッ素含有量が2%以上であることを特徴とする請求項10記載の製糸用糸道部材の製造方法。
  12. 金属を原料とする蒸着膜を蒸着する製糸用糸道部材の製造方法において、該製糸用糸道部材表面の少なくとも一部に真空下で基材の加速電圧を−50〜−2kVの範囲に維持するとともに、B(硼素)、Ti(チタン)、Cr(クロム)、Si(シリコン)から選ばれた少なくとも一種の金属成分をイオン化し、さらに窒素置換して、蒸着膜を形成することにより請求項7記載の製糸用糸道部材を製造することを特徴とする製糸用糸道部材の製造方法。
  13. 前記B(硼素)、Ti(チタン)、Cr(クロム)、Si(シリコン)の不純物含有率が0.01%以下であることを特徴とする請求項12記載の製糸用糸道部材の製造方法。
  14. 前記蒸着膜が、TiBN(窒化チタン硼素)、CrBN(窒化クロム硼素)、SiBN(窒化シリコン硼素)、CrN(窒化クロム)から選ばれた少なくとも1種からなることを特徴とする請求項12記載の製糸用糸道部材の製造方法。
  15. 前記請求項1〜8のいずれか1項に記載の製糸用糸道部材を用いることを特徴とする合成繊維の製糸方法。
  16. 前記合成繊維糸条を繊度200〜3000dtex、強度6.0〜10.0cN/dtexであり、巻取速度2000〜6000m/分、巻取張力20〜300gfで巻き取ることを特徴とする請求項15記載の合成繊維の製糸方法。
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