JP2008208481A - 延伸ローラの表面管理装置及び表面管理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】セラミックコーティングの再施工を決められた期間が経過すれば自動的に行なうのではなく、良好な品質の糸が得られる間は、再コーティングを施すことなく、そのまま使用し続けることによって延伸ローラのセラミックコーティングに要する費用を低減できる延伸ローラの表面管理装置とその方法を提供する。
【解決手段】特定のクロムの多孔質皮膜、該多孔質皮膜に生成された空孔中に充填されると共に前記多孔質皮膜の表面を覆う、非晶質クロム酸化物微粒子からなる緻密化皮膜を有し、更に前記緻密化皮膜の途中に表面研磨加工が施された境界面が形成された延伸ローラと、前記延伸ローラを用いて熱可塑性合成繊維マルチフィラメント糸条を熱延伸する延伸装置と、前記延伸装置において発生した毛羽を検出する毛羽検出装置及び毛羽の発生頻度を監視する毛羽監視装置とを有する延伸ローラの表面管理装置。
【選択図】なし

Description

本発明は産業用ポリエステル繊維の熱延伸装置に用いる延伸ローラの表面状態を管理するための装置と方法に関する。
従来、産業用ポリエステル繊維の直接紡糸延伸装置などに用いられる延伸ローラの表面処理として、硬質クロムメッキ、あるいは、セラミック溶射法などによる各種セラミックコーティング処理が行なわれてきた。このうち、硬質クロムメッキを施した延伸ローラは、その表面硬度が不足しているために、産業用ポリエステル繊維を製造するためには、耐摩耗性が低く耐久性の点で問題があった。
そこで、特許文献1及び特許文献2などにおいて、耐久性を向上させる目的で、各種セラミックコーティングが採用されてきたが、このセラミックコーティングは、耐久性に優れているものの、その使用中に少しの磨耗が生じても糸条が走行するローラ表面の状態が変化し、その結果として、走行糸条にダメージを与え、毛羽を発生させたり、糸切れを発生させて、歩留まりを悪化させることが問題であった。
それ故に、非常に優れた耐久性があるとはいえ、定期的にセラミックコーティングを施したローラ表面を研磨して、所定の表面状態に仕上げることが行なわれる。しかしながら、このような研磨仕上げを行なった場合、その上を糸条が走行すると、単にローラ表面を洗浄したりして清浄にするだけでは対応できない、ローラ表面への汚れ付着が多くなり、やがて、付着蓄積した汚れによって、走行糸条がダメージを受けることになる。その結果、やはり毛羽や糸切れが発生して、製糸歩留まりを悪化させるという問題がある。
そこで、ある程度の安全を見込んで定期的に延伸ローラを交換し、取り外した延伸ローラに新たにセラミックコーティングを再施工することが行われているが、この再コーティングコストは非常に高いという問題がある。特に、ローラの表面磨耗を減らすことができ、更にその上、磨耗耐久性を向上させることができるセラミックコーティングほどそのコストが高いという問題がある。また、このような高性能な表面処理を延伸ローラに施すと、その耐用期間は延びるものの、その正確な期間を算出することが困難である。このため、未だ耐用期限が残っているにもかかわらず、どうしても安全を見込んで早め早めに延伸ローラの再コーティングを施さざる得ないのが現状である。
特開2002−212852号公報 特開2005−068618号公報
以上に述べた従来技術が有する問題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、「耐摩耗性を向上させるために延伸ローラの表面に施すセラミックコーティングの再施工を決められた期間が経過すれば自動的に行なうのではなく、得られる糸条の品質によって評価し、その評価が良好に維持されている間は再セラミックコーティングを施さずに使用し続けるなどの方法によって、再セラミックコーティングに要する費用を低減できる延伸ローラの表面管理装置とこれを用いた表面管理方法を提供すること」にある。
本発明者は、前述の課題を解決するために鋭意検討した結果、延伸ローラ上を走行する糸条に発生する毛羽の発生頻度を監視し、その値が予め設定した一定値以上となった際に延伸ローラを取り外し、取り外した延伸ローラの表面状態を更新することによって、延伸ローラを再使用できることを見出し、本発明に到達したものである。
ここに、「延伸ローラの表面管理装置」に係る発明として、
請求項1に記載の「酸化珪素−酸化クロム又は酸化珪素−酸化アルミニウム−酸化クロムからなる複合セラミックスの多孔質皮膜、該多孔質皮膜に生成された空孔中に充填されると共に前記多孔質皮膜の表面を覆う、非晶質クロム酸化物微粒子からなる緻密化皮膜を有し、更に前記緻密化皮膜の途中に表面研磨加工が施された境界面が形成された延伸ローラと、
前記延伸ローラを用いて熱可塑性合成繊維からなるマルチフィラメント糸条を熱延伸する延伸装置と、
前記延伸装置によって発生した毛羽を検出する毛羽検出装置と、
前記毛羽検出装置によって検出される毛羽の発生件数をカウントして毛羽の発生頻度を監視する毛羽監視装置とを有することを特徴とする延伸ローラの表面管理装置」が提供される。
このとき、請求項2に係る発明のように、「前記ローラが産業用ポリエステル繊維を直接紡糸延伸するための熱延伸ローラである、請求項1に記載の延伸ローラの表面管理装置」とすることが好ましい。
また、請求項3に係る発明のように、「前記多孔質皮膜と緻密化皮膜とからなる延伸ローラ母材上に形成する皮膜の膜厚が30〜80μmである、請求項1又は2に記載の延伸ローラの表面管理装置」とすることが好ましい。
そして、請求項4に係る発明のように、「前記延伸ローラの接糸面が最大表面粗さ(Rmax)が0.5〜5.0μmであり、その表面ビッカース硬度(H)が1200〜1800である、請求項1〜3の何れかに記載の延伸ローラの表面管理装置」とすることが好ましい。
また、「延伸ローラの表面管理方法」に係る発明として、
「産業用ポリエステル繊維からなるマルチフィラメント糸条の製造に使用する延伸ローラの表面に施したセラミックコーティング皮膜の磨耗の進行によって発生する毛羽の発生頻度を監視し、毛羽の発生頻度が予め設定したカウント値以上になると、延伸ローラの表面状態を更新することを特徴とする、延伸ローラの表面管理方法」が提供される。
このとき、請求項6に係る発明のように、「無水クロム酸水溶液に少なくともSiOからなる微粒子を加えて調整したスラリーを前記延伸ローラの接糸面に塗布した後、これを500〜600℃に加熱して複合セラミックスからなる多孔質皮膜を形成する第1処理に引き続いて、無水クロム酸水溶液を含浸又はスプレーした後に500〜600℃に加熱する第2処理を繰返し行うことによって酸化クロムを析出させ、更に、第3処理として第2処理の途中と最後において接糸面に対して表面研磨加工を施すことによって前記セラミックコーティング皮膜を形成した前記延伸ローラを使用することを特徴とする、請求項5に記載の延伸ローラの表面管理方法」とすることが好ましい。
また、請求項7に記載の発明のように、「前記第2処理を10〜20回繰返して行った前記延伸ローラを使用することを特徴とする、請求項5又は請求項6に記載の延伸ローラの表面管理方法」とすることが好ましい。
更には、請求項8に記載の発明のように、「毛羽の発生頻度が予め設定したカウント値以上になると前記延伸ローラを取り外し、取り外した延伸ローラを再セラミックコーティング処理に供さずに、そのコーティング皮膜の厚みが30μm以上、好ましくは50μm以上である間、該セラミック皮膜の表面状態を最大粗さ(Rmax)が0.5〜10μm、中心線平均粗さRaが0.03から0.10μmに研磨加工によって仕上げるだけで前記延伸ローラを再使用することを特徴とする、請求項5〜7の何れか一項に記載の延伸ローラの表面管理方法」とすることが好ましい。
そして、請求項9に記載の発明のように、「前記再研磨加工を行なう前に前記延伸ローラを加熱炉で熱処理することを特徴とする、請求項5〜8の何れか一項に記載の表面管理方法」とすることが好ましい。
本発明に係る「延伸ローラの表面管理装置及び表面管理方法」は、延伸ローラに施したセラミックコーティング皮膜の状態を製造しようとするマルチフィラメント糸条に発生する毛羽の発生頻度によって管理するものである。このために、従来のように、ある一定期間に亘って使用したら、自動的に延伸ローラに施したセラミックコーティングを再施工するという必要はなく、長期間に亘って、使用し続けることが可能となって、ローラへ施す再セラミックコーティングに要する費用を大幅に提言することができる。
しかも、本発明においては、製糸工程において熱可塑性合成繊維からなるマルチフィラメント糸条を熱延伸する延伸ローラに施すセラミックコーティングは、請求項1あるいは請求項6に記載のように施工されているために、十分な磨耗耐久性を有している。このため、糸条が高張力状態で走行し、ローラ自体も高温度に繰り返し加熱されたとしても、セラミックコーティング皮膜の表面状態がほとんど変化を受けずに長期間に亘って使用することができる。
さらに、延伸ローラに付着した汚れを除去するために、アルカリ液洗浄及び/又は酸洗浄を行なったとしても、延伸ローラに施されたセラミックコーティング皮膜には、空孔がほとんど形成されていない。このため、洗浄液が前記空孔からローラ母材とセラミックコーティング皮膜との界面に侵入して、コーティング皮膜が剥離しやすくなるという現象が起り難くなって、更にコーティング皮膜の耐久性が向上する。
その上、本発明の延伸ローラは、セラミックコーティング皮膜の表面が磨耗したとしても、再セラミックコーティングをする必要はなく、研磨仕上げによって、その好ましい表面状態を回復できる。このために、余分な再セラミックコーティングが必要でなくなり、そのコストを大幅に低減することができる。
本発明に係る延伸ローラは、ポリエステル、ポリアミドなどの熱可塑性合成繊維の製糸工程においてマルチフィラメント糸条を所定の倍率に延伸するためのローラとして使用される。その中でも、特に、産業用ポリエステル繊維を直接紡糸延伸する際に用いられる延伸ローラとして好適に使用できる。すなわち、近年、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などの合成繊維の製造工程、特に、タイヤコード、シートベルト、エアバック等の産業資材用繊維の製造工程において、紡糸した糸条を一旦巻き取ることなく、そのまま直接延伸する直接紡糸延伸工程において好適に使用できる。
このような製糸工程においては、一方では製糸速度が2000m/分以上と高速化するとともに、他方では高強力、高タフネスおよび高耐久性などの高品質の糸条を製造するための過酷な延伸熱処理が要求される。このため、過酷でかつ高速な延伸熱処理によって単繊維切れ(毛羽)が発生しやすい状況にある。このような毛羽の発生は生産工程調子の悪化を招くばかりでなく、産業資材用繊維としての品質面においても問題となる。
この毛羽の発生は、特に、延伸ローラの表面状態に大きく影響される。このために、延伸による高い張力で引張られながら、加熱されたローラ上を糸条が走行する過酷な条件下が長期間に亘って持続しても、その表面状態が変化しないように磨耗耐久性に優れたセラミックコーティングが施されることは、既に述べたとおりである。
本発明の延伸ローラの表面管理方法は、前述の産業用ポリエステル製の直接紡糸延伸工程に好適に使用することができるので、この直接紡糸延伸工程について、先ず図1を参照しながら説明する。
産業用ポリエステル繊維の直接紡糸延伸装置においては、溶融紡糸口金パック装置1から紡出された糸条は、引取りローラ3にて引取られ、次に得られた未延伸糸を一旦巻き取ることなく連続して、1段以上の延伸ローラで延伸した後、最終ローラを経由させて巻き取るが、例えば、該未延伸糸を予熱ローラ3で予熱し、第1延伸ローラ4との間で3.0〜4.0倍に1段目の延伸を行い、更に第2延伸ローラ5との間で全延伸倍率が5.0〜7.0倍になるように2段目の延伸を行い、最終ローラである弛緩ローラ6の間で9〜11%の弛緩熱処理を施し、糸条交絡付与装置7によって、糸条を構成するフィラメント群間に微小交絡を付与した後、巻取機8により巻き取る。
例えば、予熱ローラ3と第1延伸ローラ4、第1延伸ローラ4と第2延伸ローラ5の間で糸条は加熱された状態で延伸されるため、大きな張力と同時に高温に加熱されることによる大きな熱応力も作用する。このため、特に、第2延伸ローラ5に対して施されたセラミックコーティングの耐摩耗性と耐熱応力性に対する耐久性が求められ、その結果、この第2延伸ローラ5の表面処理として、各種セラミックコーティングが採用されるのである。
そこで、本発明者は、特に、このような耐久性が要求される延伸ローラ4,5に関して、その表面磨耗が進行するに従って、マルチフィラメントからなる糸条に発生する毛羽の発生頻度が上昇することに着目した。その結果、毛羽の発生頻度を監視することによって、延伸ローラ4,5の表面磨耗の進行状態を管理できることに着目した。そこで、本発明においては、前述の紡糸直接延伸工程のような製糸工程において発生する毛羽を監視する。なお、毛羽を監視するための装置としては、各種のものが提案されており、本発明に置いては、このような公知の毛羽検出器を使用することができる。
例えば、市販の非接触型光学方式の毛羽測定装置としては、Enka tecnica社製オンライン毛羽測定装置(型式:Fraytec V)がある。また、特開2003−301369号公報に提案されているように、糸条交絡装置7の後で直線状に走行する糸条に発生した毛羽を検出する装置を使用することができる。さらに、特開2000−199167号公報に提案されているように、高速走行する糸条がその走行方向を変える際に発生する遠心力を利用して、毛羽を遠心力によって糸条本体から遊離させ、遊離させた毛羽を検出する毛羽検出装置も使用することができる。
本発明においては、以上に説明したような毛羽検出装置を使用して、毛羽の発生頻度をカウントして、そのカウント値が一定値に達すると、延伸ローラ4,5のセラミックコーティングの更新を行なう。そこで、本発明では、このようなセラミックコーティングの更新時期を決定する目安として、例えば、毛羽の検出を開始してから検出した毛羽の発生件数のカウント値が10カウント/100万mを超えるまでの期間とする。
なお、当然のことながら、この毛羽の発生件数のカウント値は、得られる糸条の品質が問題とならない値から、品質が問題となる値との間の境界値に設定することが好ましい。なお、このような値は予め実験あるいは操業時の毛羽発生データなどから閾値(実験値)として求めて、管理目標値として設定することができる。
なお、本発明においては、毛羽の発生件数は、毛羽検出装置からの毛羽検出信号に基づいて、毛羽の発生が1件確認される度に、周知の記憶手段に1カウントづつ累積記憶されることはいうまでもない。そして、この記憶手段に記憶された毛羽発生件数が、前述の管理目標値に達すると、これを管理者が認識できるように、液晶モニターに管理目標値を超えたことを表示したり、紙にプリントアウトしたり、あるいは警告灯を点灯させたりなどして管理者に知らせる。
以上に説明したように、本発明においては、得られる糸品質、具体的には毛羽の発生頻度を監視することによって、延伸ローラ4,5のセラミックコーティングの更新を行なうが、当然のことながら、延伸ローラ4,5に施すセラミックコーティングも重要であることに変わりはない。そこで、以下に、本発明に好適に使用できるセラミックコーティングの例について図面を参照しながら説明するが、本発明は、本発明の主旨を満足する限りにおいて、これらの例によって限定されるものではない。
図2は、本発明に使用する延伸ローラに関して、これを接糸面に対して直角に輪切りした様子を例示した模式断面図である。図2において、参照符号10はローラシェルを示し、このローラシェル100には図示したように、その接糸面となる外周面にコーティング皮膜11が施工されている。なお、この図2に係る本発明の実施形態例では、前記ローラシェル100の材質としてクロムモリブデン鋼を使用したが、当然のことながらこれ以外の材質の鋼材も使用することができる。
このとき、前記コーティング皮膜11の厚さとしては、30〜80μmとすることが、その耐衝撃性の面から望ましい。この耐衝撃性は、延伸ローラに糸掛け具などが当ったときに、その衝撃によって欠けたりして損傷を起こさないためにも重要な値である。また、コーティング皮膜11の接糸面は、周知のように、その上を走行する糸条にダメージを与えないように、適当な表面粗さを有するように調整されていることが望ましいことは言うまでもない。例えば、その表面状態として、最大粗さ(Rmax)が0.5〜10μm、中心線平均粗さRaが0.03から0.10μmに仕上げることによって、毛羽の発生を抑制することができるローラ表面が得られる。
本発明においては、溶融した各種セラミックスを延伸ローラの表面へ溶射してセラミック皮膜を形成する溶射法によってセラミックコーティング皮膜11を形成することができる。ただし、この溶射法では、均一な厚さで精度良く平滑に延伸ローラ上にセラミックコーティング皮膜11を形成することが非常に困難である。このため、溶射皮膜の形成後に、研削加工を施工することが要求される。
しかしながら、研削加工を施すと、セラミック溶射皮膜の表面は、微細で鋭利な突起が無数に分布する状態となってしまう。したがって、通常、この研削加工の後に所定の表面粗さとなるように研磨加工を行うが、前述のような微細で鋭利な突起を完全には除去することが困難である。そうすると、その上を走行する糸条にダメージを与え、単糸切れ(フィラメント切れ)を起こし、毛羽の原因となるため問題である。
本発明の延伸ローラにおいては、先ず、鋼製母材からなるローラシェル10の外周処理面(接糸面)に対して、脱脂などの清浄化処理ならびに必要に応じてブラスト(アルミナのような硬質セラミックス粒子の吹き付け)などの粗面化処理を施す。そして、第1処理として、少なくとも、酸化珪素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)あるいは酸化クロム(Cr)等からなる微粉末セラミックスを無水クロム酸水溶液(無水クロム酸の結晶を水に溶解したもの)の中に均一分散させてセラミックス・スラリーを得る。ついで、得られたセラミックス・スラリーを前記鋼製ローラシェル10の母材に塗布し水分を揮発させた後、400〜600°Cの温度で0.5〜2時間に渡って焼成して、無機非金属質からなるコーティング皮膜を形成させる。
なお、このようなコーティング皮膜(複合セラミックス皮膜)は、無水クロム酸水溶液中に混合するセラミックス粉末の種類あるいは割合などによって異なるが、本発明においては、例えば、Cr−SiO,Al−SiO,Cr−Al−SiOなどの複合セラミックス皮膜を例示することができる。
中でも、SiOの単独粉末あるいはSiOとAlの混合粉末を混合して使用することが好ましく、この場合、SiO:50〜100重量%、Al:50〜0重量%とすることが好ましい。また、このようなセラミックス粉末の平均粒径は、5μm以下とすることが好ましい。しかしながら、平均粒子径を余りにも小さくすることはコストの増加を招くうえに、得られる効果がそれに相当する程度に得られないため、特に好ましくは、0.5〜2.0μmである。
なお、本発明で言う「平均粒径」は、島津製作所製CP-50型Centrifugal Particle Size Analyzerを用いて測定する。そして、この測定器によって得られる遠心沈降曲線をもとに算出した各粒径の粒子とその存在量とのcumulative曲線から、50mass percentに相当する粒径を読み取った値である(「粒度測定技術」日刊工業新聞社発行、1975年、頁242〜247参照)。
しかしながら、この処理工程によって形成される焼成後の前記複合セラミックス皮膜は、微細な気孔やクラックが生成して多孔質となっているので、この気孔やクラックから気体や液体が容易に鋼製母材にまで進入することができる。このために、例えば糸条に付着した油剤などが前記気孔やクラックから進入して母材に到達できる上に、更に、糸条の延伸張力が加わったり、あるいは加熱によって熱膨張したりするなどの諸要因が加わったりして皮膜が剥離し易い状況にある。
そこで、本発明の延伸ローラとこれを製造するための方法では、第2処理として、特開昭63−126682号公報などに開示されているように、母材表面に形成した前記セラミックス皮膜に形成された微細気孔やクラック中もしくはさらにその表面に、クロム酸溶液または可溶性クロム化合物溶液を含浸あるいはスプレーする。なお、前記クロム酸溶液または可溶性クロム化合物溶液としては、例えば無水クロム酸、重クロム酸アンモニウム、硫酸クロム、塩化クロム、硝酸クロム、酢酸クロム、クロム酸マグネシウム、クロム酸ナトリウム等の溶液を例示することができる。
そして、前記可溶性クロム化合物溶液が酸化クロム微粒子となり得る温度、例えば300〜450℃に加熱し、微粒子状の酸化クロムを生じさせ、前記セラミックス皮膜中の微細な気孔やクラック中に微粒子状の酸化クロムを析出させる。そうすると、微細な気孔やクラック中に析出して充填された酸化クロムによって微細な気孔やクラックを塞ぐことができる。
すなわち、このような第2処理を行うと、溶液中に含まれる水などの溶剤は揮散すると共に、加熱残渣としてクロム酸化物の微粒子を含む非晶質層が1〜3μm程度生成し、皮膜中の気孔やクラックのような空隙内に析出して空隙を塞ぐのである。このとき、同時に第1処理によって形成された複合セラミックス皮膜同士及び該皮膜とローラシェル(ローラ母材)の間の結合力も強める作用効果を奏する。
なお、前記のクロム酸溶液または可溶性クロム化合物溶液中には、必要に応じて、りん酸塩化合物、硼酸塩化合物、珪酸塩化合物などからなる結合助剤を含めることができる。これらの結合助剤、例えば,硼酸塩化合物、珪酸塩化合物、りん酸塩化合物などは焼成後に非晶質物質となるが、この非晶質物質は、前述の空隙中に析出するCr微細粒子間の結合を強める役割を果たすことは言うまでもない。この場合、これら結合助剤は焼成後にいずれも少なくとも一部が非晶質のガラス状を呈し、前記皮膜中の気孔やクラックなどの空隙中にも析出して侵入し、これらの空隙中に充填された状態となってこれらを封止する。
ここで、前記第2処理の好ましい例を説明するならば、前記第1処理で形成されたコーティング皮膜(例えば、SiO−Cr、SiO−Cr−Alなどからなる組成を有する複合セラミックス皮膜)中に生じた気孔やクラックを有する延伸ローラを無水クロム酸水溶液(CrO)中に30分間浸漬した後、550℃で焼成する処理を例示することができる。なお、この工程において、前記無水クロム酸水溶液(CrO)は、400℃以上の焼成で、Crとなることは言うまでもない。このとき、無水クロム酸水溶液(Cr)から析出した酸化クロム(Cr)微粒子が前記気孔やクラックを充填して前記気孔やクラックからなる空隙に充填され空隙を消滅させる。
通常、以上に述べた第2処理は、10〜20回繰返して行う。何故ならば、このような第2処理を繰返しても析出した酸化クロム(Cr)の空隙への充填と表面部への緻密な皮膜の形成は徐々にしか行われないからである。すなわち、第2処理による皮膜の成長はわずかであるために、必要とされる厚さを有する緻密な皮膜層を形成するために多くの繰返し操作が必要となるのである。
以上に述べたことからも明らかなように、第2処理によって形成させる緻密皮膜層は、第1処理でベース層として形成された複合セラミックスからなるコーティング皮膜の仕上げ状態に大きく左右される。そこで、本発明では、この複数回(好ましくは、10〜20回)行われる第2処理工程の少なくとも中間工程において、第3処理として、延伸ローラの接糸面をJIS B0601-1982に準拠した表面最大粗さ(Rmax)で表して、1.0〜10.0μmとなるように、ラップ加工、バフ加工等の研磨加工処理を施す。そうすると、前記第2処理で形成される非常に硬い緻密な上部皮膜層の仕上げ状態を所望の状態にすることができる。
つまり、本発明では、第2処理工程の途中でラップ加工、バフ加工等の研磨加工を施すと共に、第2処理が終わった時点においても再びラップ加工、バフ加工等の研磨加工処理を施すことによって、複合セラミックス皮膜の途中に表面研磨加工が施された境界面を形成させる。そうすると、このようにして研磨仕上げ加工が施された綺麗な境界面の上に緻密化皮膜層を再形成する。そうすると、第2処理が完了した後に最終的に形成された緻密化皮膜層の表面を研磨仕上げすることで、削り取り量をそれほど多くしなくても走行糸条に損傷を与えることがない、表面状態に仕上げることができる。
そして、これによって、延伸ローラの鋼製母材上に研削加工を施すことなく、加熱されたマルチフィラメント糸条がその上を高張力下で走行しても毛羽の発生がなく、しかも、耐摩耗性に優れ、かつ緻密で高い硬度を有する均一な複合セラミックス皮膜を延伸ローラ上に形成することができる。しかも、前記第1処理時に形成される複合セラミック皮膜層の表面状態は最適な状態に仕上げられている。
このために、第2処理で形成する緻密な硬質皮膜は、第1処理で形成される前記複合セラミックス皮膜の表面状態に左右されることなく、第2処理終了後に研磨加工を施すだけで、毛羽が発生することがない表面状態に容易に調整できる。なお、この延伸ローラ上を糸条が走行する接糸面の表面粗さに関しては、JIS B0601-1982で規定される最大表面粗さ(Rmax)で表して、0.5〜5.0μmとなるように、調整仕上げすることが好ましい。なお、最終的に、延伸ローラの接糸面の最大粗さとしてどのような値を採用するかについては、延伸ローラ上を走行する糸条の種類、性状、製糸条件などの要因によって異なるため、最終的には実験によって毛羽の発生をできるだけ抑制できるように、その都度最適な摩擦係数となるように決定されるべき設計事項である。
本発明においては、基本的に第1処理及び第2処理によって形成する前記複合セラミックス皮膜11の厚さは、本発明の要旨が満足される限りにおいて特に制限する理由はないが、20〜150μm(特に、30〜100μm)の範囲が好ましい。何故ならば、皮膜11の厚みが10μm未満であると、走行糸条との接触による摩擦による摩滅を考慮した場合に、耐摩耗性において長期間に渡って使用する上で問題となる。また、第2処理後に行う研磨加工において、研磨量の制限を受け、最適な表面状態に調整する上で問題となる。逆に、150μmを超えると、第2処理を繰返し行う回数が多くなり過ぎ処理コストと処理時間において問題となる。また、延伸ローラに糸条を巻廻する際に糸条を吸引保持するサクションガンなどの糸掛け具がローラに接触すると皮膜が破壊され易いという問題があるため、耐衝撃性を考慮すると膜厚を100μm以上にすると、この点で問題がある。
前述のようにして製造した延伸ローラは、無水クロム酸水溶液などを加熱することによって析出した非晶質クロム酸化物の皮膜11からなり、この複合酸化物皮膜11は、全体がSiO−Cr系あるいはSiO−Al−Cr系の酸化物材料で構成されているので、ビッカース硬さ(H)で表して,1000〜1500といった非常に硬い皮膜となっている。したがって、糸条が一年以上の長期間に渡って、この皮膜11の上を走行しても、摩滅しがたく、それ故に長期耐摩耗性にきわめて優れている。
このとき、前記被膜2の表面粗さ(Rmax)は、0.5〜10μmの間の適当な値に調整されていることが望ましい。なお、どの最大粗さを採用するかについては、延伸ローラ上を走行する糸条の種類、性情、製糸条件などの要因を考慮し、毛羽の発生をできるだけ抑制できるように、製糸実験などによって、その都度最適な摩擦係数となるように決定されるべき設計事項である。
なお、前述の延伸ローラの表面に施すセラミックコーティングの市販されている技術としては、例えば、トーカロ株式会社が提供するCDC−ZACコーティング(商品名:以下「ZACコーティング」と単に記す)を挙げることができる。このZACコーティングを施すことで、コーティング後に研削加工を行うことなく研磨加工を施すだけで、糸条にダメージを与えない表面粗さを持った仕上げ状態が得られるため好ましい。なお、このZACコーティングは、セラミック微粉末などからなるスラリーをコーティングし、これを焼成した後、化学緻密化処理を施すことで、ローラシェル100からなる母材に対して極めて高い密着性を持つ無気孔で高硬度なセラミック皮膜を形成するコーティング方法である。
本発明において、延伸ローラに施工するセラミックコーティングは、前述のZACコーティングのように、形成したセラミック皮膜に実質的に気孔が存在しないようにすることが好ましい。何故ならば、このように無気孔のセラミック皮膜を形成することで、延伸ローラの表面をアルカリ性洗浄液や酸性洗浄液で洗浄したとしても、気孔部から洗浄液が浸透してセラミック皮膜がはがれてしまうような事態が生じるからである。
そしてこのZACコーティングは表面硬度については、従来のセラミック溶射膜とほぼ同等であること、また、均一な厚さの平滑なコーティング表面を得ることができるため、コーティング後に研削加工を施す必要が無いなど、延伸ローラに適した表面処理方法である。すなわち、研削加工を施さないで、ZACコーティングにおける前記研磨工程によって、前述のように、その表面状態を最大粗さ(Rmax)が0.5〜10μm、中心線平均粗さRaが0.03から0.10μmに仕上げることができるという利点がある。
なお、従来の延伸ローラ用ZACコーティングでは、スプレーコーティング法によるセラミック皮膜の形成を採用してきたが、このスプレーコーティング法では、初期に得られるコーティング皮膜の表面の凹凸が大きく、その粗研磨が必要であった。このために、粗研磨、中研磨、仕上げ研磨という手順を踏んで、研磨加工を施工する必要があった。その結果、セラミックコーティング後の研磨加工に要する工数がかかり、コーティングコストが高いということが問題がある。
そこで、ディッピング法によってZACコーティングを延伸ローラに施工することが好ましい。このように、ディッピング法によってZACコーティングを行なった延伸ローラのセラミックコーティング皮膜の表面状態は、初期状態から非常に平滑であり、仕上げ研磨を施すのみで必要とする延伸ローラ表面を得ることができる。その結果、研磨加工に要する工数を大幅に低減することができ、製作コストを低減することができる。
以上に説明したようなセラミックコーティングにより、少なくともその接糸面にセラミック皮膜が形成された延伸ローラは、製糸に使用している間に極めてわずかづつではあるが、磨耗が進行する。そして、この磨耗がある程度進行すると、その表面仕上げ状態が最適な状態でなくなり、その結果、セラミックコーティング皮膜上を走行する糸条にダメージを与えるようになり、毛羽の発生頻度が上昇することになる。
そこで、本発明は、このとき生じる毛羽の発生頻度の上昇を検出して、延伸ローラの表面状態の更新を行なうことを大きな特徴とする。なお、毛羽の発生は、様々な要因によって生じるが、定常状態での操業中においては、主として延伸ローラの表面状態の悪化に起因する。しかし、この他の要因としては、糸条に付与する仕上げ剤などが延伸ローラに付着して、ローラ表面を汚す場合もある。ただし、このような場合においても、延伸ローラの表面状態が変化するため、毛羽の発生頻度が上昇するので、毛羽検出装置によって、これを検出することができる。
その際、ローラの表面汚れを原因とする毛羽の発生か、あるいは、ローラ磨耗による毛羽の発生かは、熟練した作業員の肉眼によるチェックか、光学顕微鏡や3次元表面粗さ測定装置によるチェックかによらず、ローラの表面状態を観察すれば識別できる。したがって、毛羽の発生頻度が一定値以上となると、延伸ローラを取り外し、取り外した延伸ローラの表面状態をチェックする。そして、単なるローラの表面汚れによる毛羽の発生であると識別された場合には、仕上げ剤などから由来のスカムをローラ表面から除去するために先ず熱処理を施した後、アルカリ液洗浄や酸性液洗浄などによって、その表面に付着した汚れを除去すれば良い。
ただし、毛羽の発生が延伸ローラ表面の磨耗に起因することが分かった場合には、予め前述のようなローラ表面に付着した汚れ落とし処理を行なった後、セラミック皮膜の表面状態を最大粗さ(Rmax)が0.5〜10μm、中心線平均粗さRaが0.03から0.10μmに研磨加工によって仕上げることによって、再コーティングを施すことなく、延伸ローラを再使用することができる。ただし、セラミック皮膜の膜厚が再研磨を施すと、所定の膜厚が維持できないような場合は、セラミックコーティングを延伸ローラに再施工しなければならないことは言うまでもない。
ここで、本発明の延伸ローラに前述のZACコーティングを施したものを産業用ポリエステル繊維の直接紡糸延伸工程に適用した具体例について説明する。なお、この実施形態例において使用した各特性は、次の方法にしたがって測定したものである。
(1)表面硬度 テストピースを作成しビッカース硬度をJIS Z2244に従い、300gの荷重で測定した。
(2)表面粗x セラミックコーティングを施工したローラ表面をJIS B0601に従い、触針走査式試験方法にて測定した。
(3)初期毛羽カウント値 ローラ使用開始直後に、走行している糸条を、非接触型光学方式の毛羽測定装置(Enka tecnica社製オンライン毛羽測定装置)を使用して測定し、100万mあたりの毛羽数として検出した。
(4)ローラ表面更新周期 使用開始してから毛羽カウント値が10カウント/100万mを超えるまでの期間とした。
図2に例示した延伸ローラの輪切り断面図のように、ローラシェル10の外周面にトーカロ株式会社が提供する前述のZACコーティング(商品名)を施し、その後研磨加工にて最大粗さ(Rmax)が1.0μm(1S)で、中心線平均粗さ(Ra)が0.05μmとなるように研磨された、厚さ50μmのコーティング皮膜11を有する延伸ローラを、図1に示す産業用ポリエステル繊維の直接紡糸延伸装置の第2延伸ローラ5に取り付けた。
このとき、表1に示したように、実験例1では、延伸ローラにZACコーティングを施した後、前述の直接紡糸延伸装置に取り付けて製糸を行なった。そして、毛羽の発生件数を連続して検出して、そのカウント値が10個/100万m以上となるまで使用した。このとき、同時に毛羽発生のカウント値が3個/100万mとなる期間を算出した。
次に、実験2は、実験1において、毛羽発生のカウント値が10個/100万m以上となった延伸ローラを直接紡糸延伸装置から取り外し、取り外した延伸ローラを例えば、水で洗浄した後、熱処理炉に入れて、ローラ表面に付着した仕上げ剤などに由来するスカムを除去して、改めてアルカリ液で洗浄して水洗後乾燥した後、実験例1と同様の表面状態にセラミックコーティング皮膜の表面を再研磨加工し、これを再び直接紡糸延伸装置に取り付けて製糸に供した。
そして、この再研磨加工を施しただけの延伸ローラの毛羽カウント値を検出したところ、3個/100万mの毛羽発生頻度に到達するまでの期間は、新品の延伸ローラにZACコーティングを施した場合と変わらなかった。その結果、糸条の接糸面が磨耗したローラに対して再セラミックコーティングを施工しなくても、再研磨加工によるローラ表面の更新だけで十分に延伸ローラとしての役割を果たし、得られる糸条の毛羽発生頻度も新品と同程度の効果が得られることが確認できた。
Figure 2008208481
本発明を用いる産業用ポリエステル繊維の直接紡糸延伸装置を模式的に示した概略図である。 本発明の延伸ローラ表面に施すコーティングを模式的に示した断面図である。
符号の説明
1:溶融紡糸口金パック装置
2:引取りローラ
3:予熱ローラ
4:第1延伸ローラ
5:第2延伸ローラ
6:弛緩ローラ
7:糸条交絡付与装置
8:巻取り装置
10:ローラシェル
11:コーティング皮膜

Claims (9)

  1. 酸化珪素−酸化クロム又は酸化珪素−酸化アルミニウム−酸化クロムからなる複合セラミックスの多孔質皮膜、該多孔質皮膜に生成された空孔中に充填されると共に前記多孔質皮膜の表面を覆う、非晶質クロム酸化物微粒子からなる緻密化皮膜を有し、更に前記緻密化皮膜の途中に表面研磨加工が施された境界面が形成された延伸ローラと、
    前記延伸ローラを用いて熱可塑性合成繊維からなるマルチフィラメント糸条を熱延伸する延伸装置と、
    前記延伸装置によって発生した毛羽を検出する毛羽検出装置と、
    前記毛羽検出装置によって検出される毛羽の発生件数をカウントして毛羽の発生頻度を監視する毛羽監視装置とを有することを特徴とする延伸ローラの表面管理装置。
  2. 前記延伸ローラが産業用ポリエステル繊維を直接紡糸延伸するための熱延伸ローラである、請求項1に記載の延伸ローラの表面管理装置。
  3. 前記多孔質皮膜と緻密化皮膜とからなる延伸ローラ母材上に形成する皮膜の膜厚が30〜80μmである、請求項1又は2に記載の延伸ローラの表面管理装置。
  4. 前記延伸ローラの接糸面が最大表面粗さ(Rmax)が0.5〜5.0μmであり、その表面ビッカース硬度(H)が1200〜1800である、請求項1〜3の何れかに記載の延伸ローラの表面管理装置。
  5. 産業用ポリエステル繊維からなるマルチフィラメント糸条の製造に使用する延伸ローラの表面に施したセラミックコーティング皮膜の磨耗の進行によって発生する毛羽の発生頻度を監視し、毛羽の発生頻度が予め設定したカウント値以上になると、延伸ローラの表面状態を更新することを特徴とする、延伸ローラの表面管理方法。
  6. 無水クロム酸水溶液に少なくともSiOからなる微粒子を加えて調整したスラリーを前記延伸ローラの接糸面に塗布した後、これを500〜600℃に加熱して複合セラミックスからなる多孔質皮膜を形成する第1処理に引き続いて、無水クロム酸水溶液を含浸又はスプレーした後に500〜600℃に加熱する第2処理を繰返し行うことによって酸化クロムを析出させ、更に、第3処理として第2処理の途中と最後において接糸面に対して表面研磨加工を施すことによって前記セラミックコーティング皮膜を形成した前記延伸ローラを使用することを特徴とする、請求項5に記載の延伸ローラの表面管理方法。
  7. 前記第2処理を10〜20回繰返して行った前記延伸ローラを使用することを特徴とする、請求項5又は請求項6に記載の延伸ローラの表面管理方法。
  8. 毛羽の発生頻度が予め設定したカウント値以上になると前記延伸ローラを取り外し、取り外した延伸ローラを再セラミックコーティング処理に供さずに、そのコーティング皮膜の厚みが30μm以上、好ましくは50μm以上である間、該セラミック皮膜の表面状態を最大粗さ(Rmax)が0.5〜10μm、中心線平均粗さRaが0.03から0.10μmに研磨加工によって仕上げるだけで前記延伸ローラを再使用することを特徴とする、請求項5〜7の何れか一項に記載の延伸ローラの表面管理方法。
  9. 前記再研磨加工を行なう前に前記延伸ローラを加熱炉で熱処理することを特徴とする、請求項5〜8の何れか一項に記載の表面管理方法。
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