JP2005036025A - ポリイミド樹脂組成物、それを用いた被膜形成材料、および電子部品 - Google Patents
ポリイミド樹脂組成物、それを用いた被膜形成材料、および電子部品 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】(A)一般式(I)
【化1】
(式中、複数個のRは、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキレン基を示し、複数個のXは、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキレン基又はアリーレン基を示し、m及びnは、それぞれ独立に1〜20の整数を示す)で表される繰り返し単位を有するポリイミド樹脂を含有してなるポリイミド樹脂組成物及びこのポリイミド樹脂組成物を用いて形成される被膜を有する被膜形成材ならびに電子部品。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリイミド樹脂組成物及びこれを用いて得られる被膜形成材料、電子部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子部品の分野においては、小型化、薄型化、高速化への対応から、耐熱性、電気特性及び耐湿性(耐PCT性)に優れる樹脂としてエポキシ樹脂に代わり、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂が使用されている。これらの樹脂は、樹脂構造が剛直であり、薄膜基材に用いた場合、硬化後の基材が大きく反り、硬化膜は柔軟性に欠け、屈曲性に劣る問題があった。
そこで、樹脂を可とう化及び低弾性率化したポリイミド樹脂が種々提案されている。
従来、ワニス化のための溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン等の高沸点含窒素系極性溶媒が用いられている。
一方、非含窒素系極性溶媒に可溶であり、低反り性及び柔軟性を有する樹脂として例えば、特許文献1、特許文献2にポリイミドシロキサンが開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平7−304950号
【特許文献2】特開平8−333455号
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
高沸点含窒素系極性溶媒を用いた場合、硬化時には200℃以上の高温硬化が必要となり、電子部材の熱劣化が生じる問題がある。また、基材へワニスを塗工した後、放置が長くなった場合、吸湿による塗膜の白化及びボイドが生じ、作業条件が煩雑になる問題がある。
一方、ポリイミドシロキサンを使用した場合、これらのポリイミドシロキサンは、低弾性率化のため、高価なジメチルシロキサン結合を有するジアミンを出発原料として用いており、経済性に劣っている。また、シロキサンの変性量の増加に伴い、封止材との密着性、耐溶剤性、耐薬品性(耐ハンダフラックス性)に加えてさらに耐PCT性が低下する問題がある。
本発明は、上記の従来技術の問題点を解消し、耐PCT性に優れ、しかも非含窒素系極性溶媒に可溶で低温硬化性を有し、耐熱性、電気特性、低反り性、柔軟性、封止材との密着性、耐溶剤性、耐薬品性、作業性及び経済性に優れるポリイミド樹脂組成物及びそれを用いた優れた前記特性を有する被膜形成材と電子部品を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(A)一般式(I)
【化4】
(式中、複数個のRは、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキレン基を示し、複数個のXは、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキレン基又はアリーレン基を示し、m及びnは、それぞれ独立に1〜20の整数を示す)で表される繰り返し単位を有するポリイミド樹脂を含有してなるポリイミド樹脂組成物に関する。また本発明は、(A)(a)一般式(II)
【化5】
及び(b)一般式(III)
【化6】
(式中、複数個のRは、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキレン基を示し、複数個のXは、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキレン基又はアリーレン基を示し、m及びnは、それぞれ独立に1〜20の整数を示す)で表されるジイソシアネートを必須成分として反応させて得られるポリイミド樹脂を含有してなるポリイミド樹脂組成物に関する。
また本発明は、前記(A)成分が、さらに(c)ポリイソシアネート化合物を反応成分として得られるものであるポリイミド樹脂組成物に関する。
また本発明は、有機溶媒として非含窒素系極性溶媒を含む前記のポリイミド樹脂組成物に関する。
また本発明は、前記(A)成分のポリイミド樹脂を製造する際の(b)成分及び(c)成分の配合割合が(b)成分及び(c)成分の当量比で0.1/0.9〜0.9/0.1であり、(b)及び(c)成分中のイソシアネート基の総数に対する(a)成分の酸無水物基の総数の比が0.6〜1.4であるポリイミド樹脂組成物に関する。
また本発明は、前記(A)ポリイミド樹脂100重量部並びに(B)エポキシ樹脂1〜50重量部を含有してなるポリイミド樹脂組成物に関する。
また本発明は、前記エポキシ樹脂(B)がエポキシ基を3個以上有するアミン型エポキシ樹脂であるポリイミド樹脂組成物に関する。
また、本発明は、前記の何れかに記載のポリイミド樹脂組成物を用いて形成される被膜を有する被膜形成材に関する。
また、本発明は、前記の何れかに記載のポリイミド樹脂組成物を用いて形成された電子部品に関する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明のポリイミド樹脂組成物は、前記の様な(A)ポリイミド樹脂を必須成分として含有する。
【0007】
本発明に用いる(A)成分のポリイミド樹脂は、酸無水物基を有する4価のポリカルボン酸とジイソシアネート成分とを反応させて得られる。酸無水物基を有する4価のポリカルボン酸としては、一般式(II)
【化7】
で表されるテトラカルボン酸二無水物を使用することができる。
【0008】
上記の一般式(II)で表される酸無水物基を有する4価のポリカルボン酸としては、例えば、大日本インキ化学工業(株)製の商品名、EPICLON B−4400として市販されているものが挙げられる。
【0009】
また、上記のテトラカルボン酸二無水物の他に必要に応じて、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビス{エキソービシクロ[2,2,1}ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物]スルホン、ビシクロ−(2,2,2)−オクト(7)−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物等のテトラカルボン酸二無水物、酸無水物基を有する3価のトリカルボン酸(トリメリット酸無水物等)、脂肪族又は芳香族二塩基酸などに置き換えてもよい。
【0010】
本発明において(b)成分として用いる前記一般式(III)で表されるジイソシアネートは、例えば、一般式(IV)
【化8】
(式中、複数個のRはそれぞれ独立に炭素数1〜18のアルキレン基を示し、mは、1〜20の整数である)で表されるカーボネートジオール類と一般式(V)
【化9】
[式中、Xは、炭素数1〜18のアルキレン基又はフェニレン基等のアリーレン基(これはメチル基等の炭素数1〜5の低級アルキル基を置換基として有していてもよい)を示す]で表されるジイソシアネート類とを無溶媒あるいは有機溶媒中で反応させることにより得られる。
【0011】
上記の一般式(IV)で表されるカーボネートジオール類としては、例えば、ダイセル化学(株)製の商品名、PLACCEL、CD−205、205PL、205HL、210、210PL、210HL、220、220PL、220HLとして市販されているのものが挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0012】
また、上記一般式(V)で表されるじイソシアネート類としては例えば、ジフェニルメタン−2,4‘−ジイソシアネート、3,2’−又は3,3‘−又は4,2’−又は4,3‘−又は5,2’−又は5,3‘−又は6,2’−又は6,3‘−ジメチルジフェニルメタン−2,4‘−ジイソシアネート、3,2’−又は3,3‘−又は4,2‘−又は4,3’−又は5,2‘−又は5,3’−又は6,2‘−又は6,3’−ジエチルジフェニルメタン−2,4‘−ジイソシアネート、3,2’−又は3,3‘−又は4,2‘−又は4,3’−又は5,2‘−又は5,3’−又は6,2‘−又は6,3’−ジメトキシジフェニルメタン−2,4‘−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4‘−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−3,3‘−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−3,4‘−ジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4、4‘−ジイソシアネート、ベンゾフェノン−4,4‘−ジイソシアネート、ジフェニルスルホン−4,4‘−ジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネート、トリレン−2,6−ジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、ナフタレン−2,6−ジイソシアネート、4,4‘−[2,2ビス(4−フェノキシフェニル)プロパン]ジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネートを使用することが好ましい。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0013】
また、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルメキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4‘−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、水添m−キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式イソシアネート及び3官能以上のポリイソシアネートを用いてもよく、経日変化を避けるために必要なブロック剤で安定化したものを使用してもよい。ブロック剤としては、アルコール、フェノール、オキシム等があるが、特に制限はない。
上記の一般式(IV)で表されるカーボネートジオール類と一般式(V)で表されるジイソシアネートの配合量は、水酸基数とイソシアネート基数の比率がイソシアネート基/水酸基=1.01以上なるようにすることが好ましい。
【0014】
反応は、無溶媒あるいは有機溶媒の存在下で行うことができる。反応温度は、60〜200℃とすることが好ましく、反応時間は、バッチの規模、採用される反応条件などにより適宜選択することができる。
【0015】
このようにして得られる(b)成分のジイソシアネートの数平均分子量は、500〜10,000であることが好ましく、1,000〜9,500であることがより好ましく、1,500〜9,000であることが特に好ましい。数平均ソシアネートの反応性が低下し、ポリイミド樹脂化することが困難となる傾向がある。なお、本明細書において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算した値である。
【0016】
本発明においては、さらに(c)成分として上記(b)成分以外のポリイソシアネート化合物を用いることが、耐熱性の点で好ましい。このようなポリイソシアネート成分としては、特に制限はなく、例えば、(b)成分で用いられる一般式(V)で表されるジイソシアネート類又は3価以上のポリイソシアネート類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。(c)成分のポリイソシアネート化合物としては、その総量の50〜100重量%が芳香族ポリイソシアネートであることが好ましく、耐熱性、溶解性、機械特性、コスト面などのバランスを考慮すれば、4,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネートが特に好ましい。
【0017】
本発明における(b)成分の一般式(III)で表されるジイソシアネートと(c)成分のポリイソシアネートの配合割合は、(b)成分/(c)成分の当量比で0.1/0.9〜0.9/0.1とすることが好ましく、0.2/0.8〜0.8/0.2とすることがより好ましく、0.3/0.7〜0.7/0.3とすることが特に好ましい。この当量比が0.1/0.9未満では、低弾性率化できず、反り性及び密着性が低下する傾向があり、0.9/0.1を超えると、耐熱性等の膜特性が低下する傾向がある。
【0018】
また、(a)成分の酸無水物基を有する4価のポリカルボン酸の配合割合は、(b)成分と(c)成分中のイソシアネート基の総数に対する(a)成分の酸無水物基の総数の比が0.6〜1.4となるようにすることが好ましく、0.7〜1.3となるようにすることがより好ましく、0.8〜1.2となるようにすることが特に好ましい。この比が0.6未満又は1.4を超えると、ポリイミド樹脂の分子量を高くすることが困難となる傾向がある。
【0019】
本発明のポリイミド樹脂の製造法における反応は、有機溶媒、好ましくは非含窒素系極性溶媒の存在下に、遊離発生してくる炭酸ガスを反応系より除去しながら加熱縮合させることにより行うことができる。
【0020】
上記非含窒素系極性溶媒としてはエーテル系溶媒、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコール ジエチルエーテル、トリエチレングリコール ジメチルエーテル、トリエチレングリコール ジエチルエーテル、含硫黄系溶媒、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホラン、エステル系溶媒、例えば、γ−ブチロラクトン、酢酸セロソルブ、ケトン系溶媒、例えば、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、芳香族炭化水素系溶媒、例えば、トルエン、キシレン等が挙げられ、これらは単独で又は2種類以上組み合わせて使用することができる。生成する樹脂を溶解する溶剤を選択して使用するのが好ましい。合成後、そのままワニスの溶媒として好適なものを使用することが好ましい。高揮発性であって、低温硬化性を付与でき、かつ効率良く均一系で反応を行うためには、γ−ブチロラクトンが最も好ましい。
【0021】
溶媒の使用量は、生成するポリイミド樹脂の0.8〜5.0倍(重量比)とすることが好ましい。0.8倍未満では、合成時の粘度が高すぎて、攪拌不能により合成が困難となる傾向があり、5.0倍を超えると、反応速度が低下する傾向がある。
反応温度は、80〜210℃とすることが好ましく、100〜190℃とすることがより好ましく、120〜180℃とすることが特に好ましい。80℃未満では反応時間が長くなり過ぎ、210℃を超えると反応中に三次元化反応が生じてゲル化がすることができる。また、必要に応じて、三級アミン類、アルカリ金属、アルカリ土類金属、錫、亜鉛、チタニウム、コバルト等の金属又は半金属化合物等の触媒存在下に反応を行っても良い。
【0022】
このようにして得られたポリイミド樹脂の数平均分子量は、4,000〜40,000であることが好ましく、5,000〜38,000であることがより好ましく、6,000〜36,000であることが特に好ましい。数平均分子量が4,000未満であると、耐熱性等の膜特性が低下する傾向があり、40,000を超えると、非含窒素系極性溶媒に溶解しにくくなり、合成中に不溶化しやすい。また、作業性に劣る傾向がある。
また、合成終了後に樹脂末端のイソシアネート基をアルコール類、ラクタム類、オキシム類等のブロック剤でブロックすることもできる。
【0023】
本発明に用いられる(B)成分のエポキシ樹脂としては、例えば、油化シェルエポキシ(株)性の商品名、エピコート828等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、東都化成(株)製の商品名、YDF−170等のビスフェノールF型エポキシ樹脂、油化シェルエポキシ(株)性の商品名、エピコート152、154、日本化薬(株)製の商品名、EPPN−201、ダウケミカル社製の商品名、DEN−438等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、日本化薬(株)製の商品名、EOCN−125S、103S、104S等のo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、油化シェルエポキシ(株)製の商品名、Epon1031S、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の商品名、アラルダイト0163、ナガセ化成(株)製の商品名、デナコールEX−611、EX−614、EX−614B、EX−622、EX−512、EX−521、EX−421、EX−411、EX−321等の多官能エポキシ樹脂、油化シェルエポキシ(株)製の商品名、エピコート604、東都化成(株)製の商品名、YH434、三菱ガス化学(株)製の商品名、TETRAD−X、TERRAD−C、日本化薬(株)製の商品名、GAN、住友化学(株)製の商品名、ELM−120等のアミン型エポキシ樹脂、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の商品名、アラルダイトPT810等の複素環含有エポキシ樹脂、UCC社製、商品名、ERL4234,4299、4221、4206等の脂環式エポキシ樹脂などが挙げられ、これらを単独で又は2種類以上組合せて使用することができる。
【0024】
本発明における(B)成分のエポキシ樹脂の使用量は、(A)成分のポリイミド樹脂100重量部に対して好ましくは1〜50重量部、より好ましくは2〜45重量部、さらに好ましくは3〜40重量部とされる。エポキシ樹脂の配合量が1重量部未満では、耐溶剤性、耐薬品性、耐湿性が低下する傾向にあり、50重量部を超えると、耐熱性及び粘度安定性が低下する傾向にある。
【0025】
エポキシ樹脂の添加方法としては、添加するエポキシ樹脂を予めポリイミド樹脂に含まれる溶媒と同一の溶媒に溶解してから添加してもよく、また、直接ポリイミド樹脂に添加してもよい。
【0026】
本発明のポリイミド樹脂組成物には、塗工時の作業性及び被膜形成前後の膜特性を向上させるため、必要に応じて、有機又は無機のフィラー類、消泡剤、レベリング剤等の界面活性剤類、染料又は顔料等の着色剤類、硬化促進剤、熱安定剤、酸化防止剤、難燃剤、滑剤を添加することができる。
【0027】
本発明のポリイミド樹脂組成物には、被膜形成材料として、例えば、半導体素子や各種電子部品用オーバーコート材、リジット又はフレキ基板分野などにおける層間絶縁膜、表面保護膜、ソルダレジスト層、接着層などや、液状封止材、エナメル線用ワニス、電気絶縁用含浸ワニス、注型ワニス、マイカ、ガラスクロス等の基材と組み合わせたシート用ワニス、MCL積層板用ワニス、摩擦材料用ワニスにも使用できる。本発明における被膜形成材は、上記組成物を用いて形成される被膜を有する、半導体素子、フレキシブル回路基板、積層板、エナメル線等を指す。
本発明におけるポリイミド樹脂組成物は、前記した(b)成分のジイソシアネートを用いて得られるポリイミド樹脂を用いること又はさらにエポキシ樹脂を用いることにより所期の目的の効果を得ることができる。
【0028】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
実施例1
攪拌機、油水分離器付き冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた5リットルの四つ口フラスコに、(b)成分としてPLACCEL CD−220(ダイセル化学(株)製1,6−ヘキサンジオール系ポリカーボネートジオールの商品名)1000.0g(0.50モル)及び4、4’−ジフェニルメタンジイソシアネート250.27g(1.00モル)と、γ−ブチロラクトン833.51gを仕込み、140℃まで昇温した。140℃で5時間反応させ、ジイソシアネート[一般式(I)において、Rがすべてヘキサメチレン基を示し、Xがジフェニルメタン基を示し、m=13、n=1であるジイソシアネート]を得た。
更に、この反応液に(a)成分として5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物264.25g(1.00モル、(c)成分として4、4’−ジフェニルメタンジイソシアネート125.14g(0.50モル)及びγ−ブチロラクトン584.97gを仕込み、160℃まで昇温した後、5時間反応させて、数平均分子量が16,000の樹脂を得た。得られた樹脂をγ−ブチロラクトンで希釈し、粘度90Pa・s、不揮発分52重量%のポリイミド樹脂溶液を得た。なお、(b)成分/(c)成分のモル比は、0.5/0.5である。
【0030】
実施例2
実施例1で得られたポリイミド樹脂溶液の樹脂分100重量部に対してYH−434(東都化成(株)製アミン型エポキシ樹脂の商品名、エポキシ当量約120、エポキシ基4個/分子)10重量部を加え、γ−ブチロラクトンで希釈して、粘度52Pa・s、不揮発分52重量%のポリイミド樹脂組成物を得た。
【0031】
実施例3
実施例2において、YH−434、10重量部の代わりに、エピコート828(油化シェルエポキシ(株)製ビスフェノールA型エポキシ樹脂の商品名、エポキシ当量約189、エポキシ基2個/分子)10重量部を用いた以外は、実施例1と全く同様の操作を行い、粘度46Pa・s、不揮発分52重量%の樹脂組成物を得た。
【0032】
比較例1
フラスコを3Lとした以外は実施例1と同様のフラスコに(a)成分として3,3‘,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物537.44g(1.50モル)、(c)成分として4、4’−ジフェニルメタンジイソシアネート382.9g(1.53モル)及びγ−ブチロラクトン1380.51gを仕込み、160℃まで昇温した。反応中、ワニスに濁りが生じ均一なポリイミド溶液を得ることはできなかった。
【0033】
比較例2
実施例1と同様のフラスコに(b)成分としてシリコーンジオールBX16−001(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製ジメチルポリシロキサン系ジオールの商品名)700g(0.50モル)及び4、4’−ジフェニルメタンジイソシアネート250.27g(1.00モル)と、γ−ブチロラクトン316.76g及びN―メチル―2―ピロリドン316.76gを仕込み、140℃まで昇温した。140℃で3時間反応させ、更に、この反応液に(a)成分として3,3‘,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物358.29g(1.00モル)、(c)成分として4、4’−ジフェニルメタンジイソシアネート125.14g(0.50モル)及びγ−ブチロラクトン269.75g及びN―メチル―2―ピロリドン269.75gを仕込み、160℃まで昇温した後、4時間反応させて、数平均分子量が15,000の樹脂を得た。得られた樹脂をγ−ブチロラクトンで希釈し、粘度30Pa・s、不揮発分52重量%のポリイミド樹脂溶液を得た。
【0034】
比較例3
比較例2得られたポリイミド樹脂溶液の樹脂分100重量部に対してYH−434を10重量部を加え、γ−ブチロラクトンで希釈して、粘度12Pa・s、不揮発分52重量%のポリイミド樹脂組成物を得た。
【0035】
上記の実施例及び比較例で得られたポリイミド樹脂溶液及びポリイミド樹脂組成物の物性を下記の方法で測定し、結果を表1に示した。
【0036】
(1)反り性
厚さ50μm、縦35mm、横20mmのポリイミドフィルム上に、得られたポリイミド樹脂組成物を塗布し、90℃で15分乾燥した後、空気雰囲気下、120℃で120分又は160℃で60分加熱し、得られた塗膜(厚さ:20μm)について、塗布面を下にして定盤上に置き、反り高さを評価した。
【0037】
(2)耐溶剤性
厚さ35μmの電解銅箔の粗面上に、得られたポリイミド樹脂組成物を塗布し、90℃で15分乾燥した後、空気雰囲気下、120℃で120分又は160℃で60分加熱し、得られた塗膜(厚さ:20〜30μm)について、室温でアセトン中に1時間塗膜を浸漬させ、塗膜外観の変化について下記基準で評価した。
○:外観変化なし
△:一部外観に変化あり
×:全面外観に変化あり
【0038】
(3)封止材に対する密着性
厚さ35μmの電解銅箔の粗面又は厚さ50μmのポリイミドフィルム上に、得られたポリイミド樹脂組成物を塗布し、90℃で15分乾燥した後、空気雰囲気下、120℃で120分又は160℃で60分加熱し、得られた塗膜(厚さ:20〜30μm)上に、エポキシ系封止材〔日立化成工業(株)製、商品名:CEL−C−5020〕を0.06gポッティングし、120℃で120分、さらに150℃で120分加熱する。得られた塗膜は、封止材側が外側になるように折り曲げ、剥離のモードを下記の基準で評価した。
○:基材/塗膜の界面剥離
△:塗膜/封止材の界面剥離
×:全く接着せず
【0039】
(4)耐PCT性
厚さ35μmの電解銅箔の粗面又は厚さ50μmのポリイミドフィルム上に、得られたポリイミド樹脂組成物を塗布し、90℃で15分乾燥した後、空気雰囲気下、120℃で120分又は160℃で60分加熱し、得られた塗膜(厚さ:20〜30μm)についてプレッシャークッカーテスト(PCTと略す、条件121℃、2.0265×105Pa、100時間)を行った後の塗膜外観変化について下記の基準で評価した。
○:外観変化なし
△:一部外観に変化あり
×:全面外観に変化あり
【表1】
【0040】
【発明の効果】
本発明のポリイミド樹脂組成物は、耐PCT性に優れ、しかも非含窒素系極性溶媒に可溶で低温硬化性を有し、耐熱性、電気特性、低反り性、柔軟性、封止材との密着性、耐溶剤性、耐薬品性、作業性及び経済性に優れるものである。
また、本発明のポリイミド樹脂組成物は被膜形成材料として、上記の優れた特性を有するものであり、半導体素子や各種電子部品用オーバーコート材、リジット又はフレキ基板分野などにおける層間絶縁膜、表面保護膜、ソルダレジスト層、接着層などや、液状封止材、エナメル線用ワニス、電気絶縁用含浸ワニス、注型ワニス、マイカ、ガラスクロス等の基材と組み合わせたシート用ワニス、MCL積層板用ワニス、摩擦材料用ワニスに好適に用いられる。被膜を形成して得られる各種電気部品、電子部品等の被膜形成材は、信頼性に優れる物となる。本発明のポリイミド樹脂組成物を用いた電子部品は信頼性に優れるものとなる。
Claims (9)
- (A)成分が、さらに(c)ポリイソシアネート化合物を反応成分として得られるものである請求項2のポリイミド樹脂組成物。
- 有機溶媒として非含窒素系極性溶媒を含む請求項1〜3の何れかに記載のポリイミド樹脂組成物。
- (A)成分のポリイミド樹脂を製造する際の(b)成分及び(c)成分の配合割合が(b)成分及び(c)成分の当量比で0.1/0.9〜0.9/0.1であり、(b)及び(c)成分中のイソシアネート基の総数に対する(a)成分の酸無水物基の総数の比が0.6〜1.4である請求項3記載のポリイミド樹脂組成物。
- (A)ポリイミド樹脂100重量部並びに(B)エポキシ樹脂1〜50重量部を含有してなる請求項1〜5の何れかに記載のポリイミド樹脂組成物。
- エポキシ樹脂(B)がエポキシ基を3個以上有するアミン型エポキシ樹脂である請求項6記載のポリイミド樹脂組成物。
- 請求項1〜7の何れかに記載のポリイミド樹脂組成物を用いて形成される被膜を有する被膜形成材。
- 請求項1〜7の何れかに記載のポリイミド樹脂組成物を用いて形成された電子部品
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