JP6750289B2 - 熱硬化性樹脂組成物及びフレキシブル配線板 - Google Patents

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Description

本発明の実施形態は、熱硬化性樹脂組成物、硬化物、フレキシブル配線板、及びフレキシブル配線板の製造方法に関する。
近年、フレキシブル配線板等の電子部品の分野においては、小型化、薄型化、及び高速化への対応のために、電子部品に用いられる樹脂組成物(例えば、封止剤、ソルダーレジスト等の保護膜)に、より優れた絶縁信頼性(電気特性)が求められている。そのため、樹脂組成物を構成する樹脂として、エポキシ樹脂に代わり、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、及びポリアミド樹脂が使用されるようになってきた。しかし、これらの樹脂は、樹脂構造が剛直であり硬化膜が柔軟性に欠けることから、屈曲性に劣るという問題がある。そこで、屈曲性に優れる樹脂組成物として、ウレタン結合を有するポリウレタンと熱硬化性成分とを含む熱硬化性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2006−117922公報
フレキシブル配線板には、通常、半導体装置等との接続のためにめっき層が設けられている。めっき層を形成する方法として、保護膜を形成する前にめっき処理を行う方法(先めっき処理)と、保護膜を形成した後にめっき処理を行う方法(後めっき処理)とがある。先めっき処理では、熱硬化性樹脂組成物を硬化させる際の加熱により、めっき層の溶出、拡散等の発生が懸念されるが、後めっき処理ではその懸念がない。また、コスト面でも後めっき処理のほうが有利である。その一方で、後めっき処理では、めっき処理液に保護膜中の成分が溶出し、保護膜の絶縁信頼性等の特性が低下する恐れがある。
そこで、本発明の実施形態は、優れた絶縁信頼性及び耐屈曲性を有する熱硬化性樹脂組成物及び硬化物を提供することを目的とする。また、本発明の他の実施形態は、優れた信頼性及び耐屈曲性を有するフレキシブル配線板及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の発明者らは、熱硬化性樹脂組成物に特定のカルボン酸化合物を含有させることによって、後めっき処理後にも優れた絶縁信頼性及び耐屈曲性を示す硬化物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の実施形態は、脂環式ジオールに由来する構成単位を含むポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、3価以上の脂環式ブロックカルボン酸、及び、充填材を含有する、熱硬化性樹脂組成物に関する。
また、本発明の他の実施形態は、前記熱硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化物に関する。
また、本発明の他の実施形態は、配線パターンが形成された基材、前記配線パターンの少なくとも一部を覆う保護膜、及び、前記配線パターンの少なくとも一部を覆うめっき層を備え、前記保護膜が、前記硬化物である、フレキシブル配線板に関する。
さらに、本発明の他の実施形態は、配線パターンが形成された基材を準備する工程、前記配線パターンの少なくとも一部を覆うように前記熱硬化性樹脂組成物を印刷する工程、印刷された熱硬化性樹脂組成物を硬化させて保護膜を形成する工程、前記配線パターンの少なくとも一部を覆うようにめっき層を形成する工程を含む、フレキシブル配線板の製造方法に関する。
本発明の実施形態によれば、優れた絶縁信頼性及び耐屈曲性を有する熱硬化性樹脂組成物及び硬化物を提供することができる。また、本発明の他の実施形態によれば、優れた信頼性及び耐屈曲性を有するフレキシブル配線板及びその製造方法を提供することができる。
実施例において評価に用いられた試験片を示す模式図である。
以下、本発明の実施形態を説明する。本発明の実施形態は以下に限定されない。
<熱硬化性樹脂組成物>
本発明の実施形態である熱硬化性樹脂組成物は、脂環式ジオールに由来する構成単位を有するポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、3価以上の脂環式ブロックカルボン酸、及び、充填材を含有する。熱硬化性樹脂組成物は、これらの成分を、それぞれ1種のみ含有しても、又は、2種以上含有してもよい。
[ポリウレタン樹脂]
ポリウレタン樹脂は、脂環式ジオールに由来する構成単位を含む。ポリウレタン樹脂は、更にアミド結合(アミド基)及び/又はイミド結合(イミド基)を有することが好ましい。ポリウレタン樹脂が脂環式ジオールに由来する構成単位を含むことによって、耐屈曲性に優れ、タックの低い硬化物を得ることができる。また、脂環式ジオールに由来する構成単位は、優れた絶縁信頼性を得る観点からも好ましい構造である。
ポリウレタン樹脂は、例えば以下の2つの方法で合成することができる。
(1)脂環式ジオール及び/又は脂環式ジオールに由来する構成単位を有するポリカーボネートジオールを含むジオールと、イソシアネート基を有するポリイソシアネートとを反応させて、ウレタン結合を有するポリイソシアネートを得、これをカルボン酸化合物と反応させる。
(2)脂環式ジオール及び/又は脂環式ジオールに由来する構成単位を有するポリカーボネートジオール、並びにカルボキシル基を有するジヒドロキシ化合物を含むジオールと、イソシアネート基を有するポリイソシアネートとを反応させる。
(合成法(1))
(1)の合成法では、先ず、脂環式ジオール、及び、脂環式ジオールに由来する構成単位を有するポリカーボネートジオールから選ばれる少なくとも1種のジオールと、イソシアネート基を有するポリイソシアネートとを反応させて、脂環式骨格及びウレタン結合を有するポリイソシアネート(以下、「(A−1)化合物」という。)を合成する。脂環式骨格は、好ましくは脂環式飽和炭化水素骨格である。ジオール及び/又はポリイソシアネートは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
(ジオール)
脂環式ジオールは、脂環式炭化水素基を有する2価の有機基を有するジオールであり、脂環式炭化水素基の炭素数は、好ましくは5〜10である。脂環式ジオールは、例えば、1,2−シクロペンタンジメタノール、1,3−シクロペンタンジメタノール、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.0]デカン等の5員環ジオール;及び、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン等の6員環ジオールから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。これらの中で、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、及び1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましく、1,4−シクロヘキサンジメタノールが特に好ましい。
1,4−シクロヘキサンジメタノールは、工業生産品であり入手が容易である。しかも、メチロール基がパラ位にあるために反応性が高くて高重合度のポリウレタン樹脂が得られ易く、また、得られたポリウレタン樹脂のガラス転移温度が高いなどの利点を有している。1,4−シクロヘキサンジメタノールのtrans体とcis体の比率(モル比)は、通常trans体/cis体=60/40〜100/0である。
脂環式ジオール由来の構成単位を含むポリカーボネートジオールとしては、例えば、下記式(1A)で表される化合物及び下記式(1B)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0006750289
式(1A)中、Rは炭素数5〜10の脂環式炭化水素基を有する2価の有機基を示し、nは1〜30の数を示す。同一分子中に含まれるRは同一でも異なっていてもよい。Rとしては、例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノール残基(即ち1,4−シクロヘキサンジメタノールから2つのOHを除いた部分)が挙げられる。式(1A)で表される化合物は、例えば、宇部興産社製の「UC−100」として商業的に入手可能である。
Figure 0006750289
式(1B)中、Rは炭素数5〜10の脂環式炭化水素基を有する2価の有機基、又は、炭素数1〜18の直鎖又は分岐アルキレン基を示す。1分子中に含まれる複数のRは同一でも異なっていてもよく、複数のRのうち少なくとも1つは、炭素数5〜10の脂環式炭化水素基を有する2価の有機基である。mは1〜30の数を示す。
式(1B)で表される化合物は、例えば、脂環式炭化水素基を有する2価の有機基を有するジオールに由来する構成単位と、炭素数1〜18の直鎖又は分岐アルキレン基を有するジオールに由来する構成単位とをRとして含む共重合カーボネートジオールであり得る。この場合、脂環式炭化水素基を有する2価の有機基を有するジオールに由来する構成単位に対する、アルキレン基を有するジオールに由来する構成単位のモル比は、優れた絶縁信頼性及び耐折性を得る観点から、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.5以上、特に好ましくは0.75以上である。また、同様の観点から、モル比は、好ましくは3以下、より好ましくは2.5以下、特に好ましくは2.25以下である。
脂環式炭化水素基を有する2価の有機基を有するジオールが1,4−シクロヘキサンジメタノールであり、炭素数1〜18の直鎖又は分岐アルキレン基を有するジオールが1,6−ヘキサンジオールであることが好ましい。言い換えると、式(1B)で表される化合物は、好ましくは、1,4−シクロヘキサンジメタノールと1,6−ヘキサンジオールとを用いた共重合体である共重合カーボネートジオールである。1,4−シクロヘキサンジメタノールと1,6−ヘキサンジオールとのモル比が3/1である共重合カーボネートジオールは、宇部興産社製の「UM−CARB90(3/1)」として、1,4−シクロヘキサンジメタノールと1,6−ヘキサンジオールとのモル比が1/1である共重合カーボネートジオールは、宇部興産社製の「UM−CARB90(1/1)」として、1,4−シクロヘキサンジメタノールと1,6−ヘキサンジオールとのモル比が1/3である共重合カーボネートジオールは、宇部興産社製の「UM−CARB90(1/3)」として商業的にそれぞれ入手可能である。
脂環式ジオールが有する脂環式骨格は、例えば、3員環、4員環、5員環、6員環、7員環等の単環式骨格であってもよいし、ビシクロ環、トリシクロ環、スピロ環等の多環式骨格であってもよい。6員環の脂環式骨格は、一般に、下記式に示されるようなイス型の立体配座を有している。2個の置換基があるとき、立体化学的には、脂環式骨格はcis−又はtrans−の構造を有している。1位と4位に置換基を有する1,4−シクロヘキサン誘導体の場合、絶縁信頼性をより向上できる観点から、それら置換基がcis−の配置であることが好ましい。1位と3位に置換基を有する1,3−シクロヘキサン誘導体の場合、それらがtrans−の配置であることが好ましい。すなわち、脂環式骨格は、立体的になるべく直線的な構造ではないことが好ましい。
Figure 0006750289
例えば、シクロヘキサン誘導体(1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール等)の場合、耐屈曲性の観点から、cis体:trans体の比率は、100:0〜70:30、又は、0:100〜30:70であることが好ましく、70:30〜30:70であることが特に好ましい。
式(1A)又は式(1B)で表されるポリカーボネートジオールの数平均分子量は300以上であることが好ましく、500以上であることがより好ましく、700以上であることが特に好ましい。また、数平均分子量は4,000以下であることが好ましく、3,000以下であることがより好ましく、2,000以下であることが特に好ましい。
ガラス転移温度の向上、弾性率の向上等の特性が付与され易く、優れた絶縁信頼性が得られるという観点から、脂環式ジオールに由来する構成単位の比率は、ポリウレタン樹脂の全体質量に対して、0.1質量%以上が好ましく、3質量%がより好ましく、5質量%が特に好ましい。また、ポリウレタン樹脂の結晶性の向上が抑えられ、溶剤への良好な溶解性が得られ易いという観点から、脂環式ジオールに由来する構成単位の比率は、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下が特に好ましい。上記比率の計算において、「脂環式ジオールに由来する構成単位」は、脂環式ジオールから2つの水酸基を除いた部分を意味する。例えば、脂環式ジオールが1,4−シクロヘキサンジメタノールである場合、1,4−シクロヘキサンジメタノールから2つの水酸基を除いた部分を「脂環式ジオールに由来する構成単位」とみなし、その比率を計算する。
また、ポリウレタン樹脂が脂環式骨格を有すると、分子運動の抑制に繋がり、ガラス転移温度の向上、弾性率の向上などの特性が付与され易く、保護膜の絶縁信頼性及び耐屈曲性を向上させることができ、更にはタックを抑えることができると考えられる。
ポリイソシアネートと反応させるジオールは、脂環式ジオール及び/又は脂環式ジオール由来の構成単位を有するポリカーボネートジオールに加えて、これら以外のジオール化合物を更に含んでいてもよい。このようなジオール化合物としては、例えば、ポリブタジエンジオール、ポリイソプレンジオール等の直鎖状又は分岐状の脂肪族ジオール由来の構成単位を含むポリカーボネートジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール、シリコーンジオール、及びカルボキシル基を有するジヒドロキシ化合物が挙げられる。ジオール化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
低反り性及び可とう性を向上できる観点から、下記式(2)で表される、脂肪族ジオールに由来する構成単位を含むポリカーボネートジオールが好ましい。
Figure 0006750289
式(2)中、Rは炭素数1〜18の直鎖又は分岐アルキレン基を示し、mは1〜30の数を示す。
式(2)で表されるポリカーボネートジオールの数平均分子量は500以上であることが好ましく、750以上であることがより好ましく、1,000以上であることが特に好ましい。また、数平均分子量は5,000以下であることが好ましく、4,000以下であることがより好ましく、3,000以下であることが特に好ましい。
式(2)で表されるポリカーボネートジオールとしては、例えば、α,ω−ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール及びα,ω−ポリ(3−メチル−ペンタメチレンカーボネート)ジオールが挙げられる。市販されているものとしては、ダイセル社製のPLACCEL CD−205、205PL、205HL、210、210PL、210HL、220、220PL、220HL;旭化成ケミカルズ社製のPCDL T−5651、T−5652、T−6001、T−6002、G−3452、PCDX−55;宇部興産社製のUH−50、100、200、300、UHC−50−100、200等が挙げられる。
3つのヒドロキシ基を有するトリオール化合物をジオールと組み合わせて用いることもできる。トリオール化合物としては、1,2,3−プロパントリオール(グリセリン)、1,2,4−ブタントリオール等が挙げられる。このように、3つのヒドロキシル基を有し、かつ、1級ヒドロキシ基及び2級ヒドロキシ基のような反応性の異なる官能基を有する化合物を用いれば、ヒドロキシ基を有するポリウレタン樹脂を合成することができる。
(ポリイソシアネート)
ジオールと反応させるポリイソシアネートとしては、例えば、下記式(4)で表されるジイソシアネート化合物が挙げられる。式(4)中、Xは2価の有機基を示す。
Figure 0006750289
式(4)中のXで示される2価の有機基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキレン基;未置換、メチル基等の炭素数1〜5の低級アルキル基、又はメトキシ基等の炭素数1〜5の低級アルコキシ基で置換されているフェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基;炭素数1〜5の低級アルキレン基、オキシ基(−O−)、カルボニル基(−CO−)、又はスルホニル基(−SO−)を介して前記アリーレン基が2つ結合してなる有機基;前記アリーレン基を介して炭素数1〜5の低級アルキレン基が2つ結合してなる有機基などが挙げられる。アルキレン基の炭素数は、より好ましくは1〜18である。Xで示される2価の有機基は、好ましくは、フェニレン基、キシリレン基、ナフチレン基、ジフェニルメタン−4,4’−ジイル基、及びジフェニルスルホン−4,4’−ジイル基のような芳香環を有する基から選ばれる。また、水添ジフェニルメタン−4,4’−ジイル基も好ましい。
式(4)で表されるジイソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート;3,2’−、3,3’−、4,2’−、4,3’−、5,2’−、5,3’−、6,2’−又は6,3’−ジメチルジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート;3,2’−、3,3’−、4,2’−、4,3’−、5,2’−、5,3’−、6,2’−又は6,3’−ジエチルジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート;3,2’−、3,3’−、4,2’−、4,3’−、5,2’−、5,3’−、6,2’−又は6,3’−ジメトキシジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート;ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート;ジフェニルメタン−3,3’−ジイソシアネート;ジフェニルメタン−3,4’−ジイソシアネート等のジフェニルメタンジイソシアネート化合物及びこれらの水添物;ジフェニルエーテル−4,4’−ジイソシアネート;ベンゾフェノン−4,4’−ジイソシアネート;ジフェニルスルホン−4,4’−ジイソシアネート;トリレン−2,4−ジイソシアネート(2,4−トリレンジイソシアネート);トリレン−2,6−ジイソシアネート(2,6−トリレンジイソシアネート);m−キシリレンジイソシアネート;p−キシリレンジイソシアネート;1,5−ナフタレンジイソシアネート;4,4’−[2,2−ビス(4−フェノキシフェニル)プロパン]ジイソシアネート等が挙げられる。これらのジイソシアネート化合物のように、式(4)中のXが芳香環を有する基である芳香族ジイソシアネート化合物を使用することが好ましい。
さらに、式(4)で表されるジイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、水添m−キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式イソシアネート等が挙げられる。ポリイソシアネートとして、式(4)で表されるジイソシアネート化合物と共に、三官能以上のポリイソシアネートを用いてもよい。
式(4)で表されるジイソシアネート化合物は、経日変化を避けるためにイソシアネート基がブロック剤で安定化されていてもよい。ブロック剤としては、例えば、ヒドロキシアクリレート、メタノール等を代表とするアルコール、フェノール、及びオキシムが挙げられるが、特に制限はない。
(反応方法等)
ジオールとポリイソシアネートとの反応は、有機溶媒、好ましくは非含窒素系極性溶媒の存在下に、これらを加熱縮合させることにより行うことができる。有機溶媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
非含窒素系極性溶媒は、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホラン等の含硫黄系溶媒;γ−ブチロラクトン、酢酸セロソルブ等のエステル系溶媒;シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;及び、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒から選ばれる。
上記溶媒の中でも、生成する樹脂が溶解可能な溶媒を選択して使用するのが好ましい。また、合成後、そのまま熱硬化性樹脂組成物の溶媒として好適なものを使用することが好ましい。上記溶媒の中でも、高沸点であり、かつ、効率良く均一系で反応を行うことができ、フレキシブル配線板等への保護膜形成時の印刷作業に好適であるγ−ブチロラクトンが特に好ましい。
合成時の粘度の上昇を抑え、合成を良好に行う観点から、溶媒の使用量は、(A−1)化合物を合成する原材料の総量に対して、0.8倍(質量比)以上であることが好ましい。また、反応速度の低下を抑える観点から、溶媒の使用量は、5.0倍(質量比)以下であることが好ましい。
反応温度は、反応の長時間化を抑える観点から、70℃以上であることが好ましく、75℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることが更に好ましい。また、反応温度は、反応中にゲル化することを防止する観点から、210℃以下であることが好ましく、190℃以下であることがより好ましく、180℃以下であることが更に好ましい。反応時間は、反応容器の容量、採用される反応条件により適宜選択することができる。
必要に応じて、三級アミン類、アルカリ金属、アルカリ土類金属、スズ、亜鉛、チタニウム、コバルト等の金属又は半金属化合物等の触媒存在下に反応を行ってもよい。
ジオールとポリイソシアネートとを反応させる際の配合割合は、生成する(A−1)化合物の数平均分子量、及び、生成する(A−1)化合物の末端を水酸基にするかイソシアネート基にするかに応じて、適宜調整される。
末端に水酸基を有する(A−1)化合物を合成する場合、水酸基数とイソシアネート基数との比率(水酸基数/イソシアネート基数)を、1.01以上に調整することが好ましく、2.0以下に調整することが好ましい。
末端にイソシアネート基を有する(A−1)化合物を合成する場合、イソシアネート基数と水酸基数との比率(イソシアネート基数/水酸基数)が、1.01以上になるように調整することが好ましく、2.0以下に調整することが好ましい。
(A−1)化合物の数平均分子量は、500以上であることが好ましく、1,000以上であることがより好ましく、1,500以上であることが特に好ましい。また、数平均分子量は、30,000以下であることが好ましく、25,000以下であることがより好ましく、20,000以下であることが特に好ましい。
(A−1)化合物は、それ自体、脂環基及びウレタン結合を有するポリウレタン樹脂として用いられ得る。より好ましくは、末端に水酸基又はイソシアネート基を有する(A−1)化合物と、ジカルボン酸、酸無水物基を有する3価のポリカルボン酸又はその誘導体、及び酸無水物基を有する4価のポリカルボン酸から選ばれるカルボン酸化合物とを反応させて、脂環式骨格と、アミド結合及び/又はイミド結合とを有するポリウレタン樹脂を生成させる。上記「誘導体」の例には、クロライド及びエステルが含まれる。カルボン酸化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
耐薬品性及び絶縁信頼性を向上できる観点からは、末端にイソシアネート基を有する(A−1)化合物を用いることが好ましい。また、末端にイソシアネート基を有する(A−1)化合物をカルボン酸化合物と反応させることにより、ポリマー主鎖中にアミド結合及び/又はイミド結合を有するポリウレタン樹脂を容易に合成することができる。
(カルボン酸化合物)
ジカルボン酸は、特に限定されないが、例えば、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカンジオン酸、トリデカンジオン酸、テトラデカンジオン酸、ペンタデカンジオン酸、ヘキサデカンジオン酸、オクタデカンジオン酸、エイコサンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキサンメタン−4,4’−ジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;及び、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸から選ばれる。
酸無水物基を有する3価のポリカルボン酸及びその誘導体としては、特に限定されないが、例えば、下記式(5)又は(6)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 0006750289
Figure 0006750289
式(5)及び(6)中、R’は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又はフェニル基を示し、Yは、−CH−、−CO−、−SO−、又は−O−を示す。
酸無水物基を有する3価のポリカルボン酸としては、コスト面等から、無水トリメリット酸が特に好ましい。
酸無水物基を有する4価のポリカルボン酸についても特に限定されないが、例えば、下記式(7)で表されるテトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。
Figure 0006750289
式(7)中、Yは、下記式(8)に示される複数の基から選ばれる一種の4価の基を示す。
Figure 0006750289
(A−1)化合物と反応させるカルボン酸化合物は、ジカルボン酸、酸無水物基を有する3価のポリカルボン酸又はその誘導体、及び酸無水物基を有する4価のポリカルボン酸から選ばれる少なくとも1種の化合物である。
(反応方法等)
(A−1)化合物を、これ以外のイソシアネート化合物(以下、「(A−2)化合物」という。)とともに、カルボン酸化合物と反応させてポリウレタン樹脂を得てもよい。(A−2)化合物としては、(A−1)化合物以外のイソシアネート化合物であれば、特に限定されず、例えば、式(4)で表されるジイソシアネート化合物、3価以上のポリイソシアネート等が挙げられる。(A−1)化合物及び/又は(A−2)化合物は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
(A−2)化合物の総量の50〜100質量%が芳香族ポリイソシアネートであることが好ましい。この芳香族ポリイソシアネートは、溶解性、機械特性、及びコスト面等のバランスを考慮すれば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートであることが特に好ましい。
(A−1)化合物と(A−2)化合物とを併用する場合、(A−1)化合物/(A−2)化合物の当量比は、0.1/0.9〜0.9/0.1であることが好ましく、0.2/0.8〜0.8/0.2であることがより好ましく、0.3/0.7〜0.7/0.3であることが特に好ましい。当量比がこの範囲にあると、被着体との良好な密着性を得ることができる。
本実施形態においては、イソシアネート化合物と共にアミン化合物を併用することもできる。アミン化合物としては、イソシアネート化合物におけるイソシアネート基をアミノ基に転換した化合物が挙げられる。イソシアネート基のアミノ基への転換は、公知の方法により行うことができる。アミン化合物の数平均分子量の好ましい範囲は、(A−1)化合物と同様である。
カルボン酸化合物とイソシアネート化合物との反応の際、アミド結合及び/又はイミド結合を含むポリウレタン樹脂の数平均分子量を高くする観点から、イソシアネート化合物中のイソシアネート基の総数に対する、カルボキシル基と酸無水物基の総数の比(カルボキシル基と酸無水物基の総数/イソシアネート基の総数)は、0.6以上であることが好ましく、0.7以上であることがより好ましく、0.8以上であることが特に好ましい。また、同様の観点から、カルボキシル基と酸無水物基の総数の比は、1.4以下であることが好ましく、1.3以下であることがより好ましく、1.2以下であることが特に好ましい。
アミド結合及び/又はイミド結合を有するポリウレタン樹脂の数平均分子量は、耐候性又は耐薬品性の低下を防ぐという観点から、5,000以上であることが好ましく、6,000以上であることがより好ましく、7,000以上であることが特に好ましい。また、数平均分子量は、非含窒素系極性溶媒へ良好に溶解し、合成中に不溶化し難いという観点から、65,000以下であることが好ましく、60,000以下であることがより好ましく、50,000以下であることが更に好ましく、25,000以下であることが特に好ましい。
本明細書において、数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算した値を意味する。数平均分子量、重量平均分子量、及び分散度は、以下のように定義される。数平均分子量及び重量平均分子量の測定方法の詳細は、実施例に示す。
(a)数平均分子量(Mn)
Mn=Σ(N)/ΣNi=ΣX
(X=分子量Mの分子のモル分率=N/ΣN
(b)重量平均分子量(Mw)
Mw=Σ(N )/ΣN=ΣW
(W=分子量Mの分子の重量分率=N/ΣN
(c)分子量分布(分散度)
分散度=Mw/Mn
ポリウレタン樹脂の酸価は、硬化を十分なものとし、良好な耐候性、耐屈曲性等を得る観点から、好ましくは10mgKOH/g以上であり、より好ましくは13mgKOH/g以上であり、特に好ましくは15mgKOH/g以上である。また、ポリウレタン樹脂の酸価は、反りを抑え、また、良好な熱硬化性及び絶縁信頼性を得る観点から、好ましくは35mgKOH/g以下であり、より好ましくは33mgKOH/g以下であり、特に好ましくは30mgKOH/g以下である。酸価は、中和滴定法により測定することができる。酸価の測定方法の詳細は、実施例に示す。
(合成法(2))
次に(2)のポリウレタン樹脂の合成法について説明する。(2)の合成法では、脂環式ジオール及び/又は脂環式ジオールに由来する構成単位を有するポリカーボネートジオール、並びにカルボキシル基を有するジヒドロキシ化合物を含むジオールと、イソシアネート基を有するポリイソシアネートとを反応させてポリウレタン樹脂を得る。
脂環式ジオール及び/又は脂環式ジオール由来の構成単位を有するポリカーボネートジオール、並びにイソシアネート基を有する化合物は、(1)の合成法で説明したものと同様のものを用いることができる。脂環式ジオール及び脂環式ジオール由来の構成単位を有するポリカーボネートジオール以外のジオール化合物を用いることもできる。このようなジオール化合物も(1)の合成法で説明したものを用いることができる。
カルボキシル基を有するジヒドロキシ化合物としては、例えば、下記式(3)で表される化合物が挙げられる。式(3)中、Rは、炭素数1〜5のアルキル基を示す。
Figure 0006750289
式(3)で表される化合物として、例えば、ジメチロールプロピオン酸及びジメチロールブタン酸が挙げられる。
脂環式ジオール及び/又は脂環式ジオールに由来する構成単位を有するポリカーボネートジオール、並びにカルボキシル基を有するジヒドロキシ化合物を含むジオールと、イソシアネート基を有するポリイソシアネートとの反応は、(1)の合成法で説明した(A−1)化合物と同様の条件で行うことができる。これにより、(2)の合成法によるポリウレタン樹脂を得ることができる。
このようにして得られるポリウレタン樹脂の数平均分子量は、耐候性又は耐薬品性の低下を防ぐという観点から、5,000以上であることが好ましく、6,000以上であることがより好ましく、7,000以上であることが特に好ましい。また、数平均分子量は、非含窒素系極性溶媒へ良好に溶解し、合成中に不溶化し難いという観点から、65,000以下であることが好ましく、60,000以下であることがより好ましく、50,000以下であることが更に好ましく、25,000以下であることが特に好ましい。
式(3)で表される化合物を用いることにより、好ましくは10〜35mgKOH/g、より好ましくは13〜33mgKOH/g、更に好ましくは15〜30mgKOH/gの酸価を有するポリウレタン樹脂を容易に得ることができる。式(3)で表される化合物の含有量は、上記酸価になるように調整することが好ましい。
ポリウレタン樹脂は、側鎖にカルボキシル基を有さず、末端にカルボキシル基又は酸無水物基を有する、(1)の合成法により得られるポリウレタン樹脂が好ましい。分子の末端にカルボキシル基又は酸無水物基を有し、かつ、アミド結合及び/又はイミド結合を導入することで、絶縁信頼性をより一層向上させることができる。また、耐屈曲性をより一層向上させる観点から、分子の末端にカルボキシル基又は酸無水物基を有し、かつ、アミド結合及びイミド結合を有するポリウレタン樹脂が特に好ましい。側鎖に存在するカルボキシル基が少ないと、エポキシ樹脂と反応させた際、エステル結合の生成が抑えられ、耐候性が向上し、更には、分子鎖中の橋架けが少なくなるために、水分子が浸入し難くなり、絶縁信頼性が向上する傾向がある。
[エポキシ樹脂]
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂を更に含有する。エポキシ樹脂はポリウレタン樹脂を硬化させる機能を有する。エポキシ樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製の商品名「エピコート828」等)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(新日鉄化学株式会社製の商品名「YDF−170」等)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製の商品名「エピコート152、154」;日本化薬株式会社製の商品名「EPPN−201」;ダウケミカル社製の商品名「DEN−438」等)、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製の商品名「EOCN−125S,103S,104S」等)、多官能エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製の商品名「Epon1031S」;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製の商品名「アラルダイト0163」;ナガセケムテックス株式会社製の商品名「デナコールEX−611,EX−614,EX−614B,EX−622,EX−512,EX−521,EX−421,EX−411,EX−321」等)、アミン型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製の商品名「エピコート604」;新日鉄化学株式会社製の商品名「YH−434」、「YH−434L」;三菱ガス化学株式会社製の商品名「TETRAD−X」、「TERRAD−C」;日本化薬株式会社製の商品名「GAN」;住友化学株式会社製の商品名「ELM−120」等)、複素環含有エポキシ樹脂(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製の商品名「アラルダイトPT810」等)、脂環式エポキシ樹脂(UCC社製の商品名「ERL4234,4299,4221,4206」等)、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂(DIC株式会社製の商品名「HP−7200」、「HP−7200H」)等が挙げられる。これらは、単独で又は2種類以上組合せて使用することができる。これらのエポキシ樹脂のうち、3個以上のエポキシ基を有するアミン型エポキシ樹脂は、耐溶剤性、耐薬品性、耐湿性等の向上の点で特に好ましい。3個以上のエポキシ基を有する好ましいエポキシ樹脂は、例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(新日鐵化学株式会社製の商品名「エポトートYH−434L」等)である。
好適な絶縁信頼性、反り性及び耐候性を有する保護膜を得る観点から、エポキシ樹脂の含有率は、脂環式ジオールに由来する構成単位を有するポリウレタン樹脂とエポキシ樹脂との合計質量に対して1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、2.5質量%以上であることが特に好ましい。また、同様の観点から、エポキシ樹脂の含有率は、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることが特に好ましい。
[3価以上の脂環式ブロックカルボン酸]
熱硬化性樹脂組成物は3価以上の脂環式ブロックカルボン酸を含有する。3価以上の脂環式ブロックカルボン酸は、めっき後の保護膜の絶縁信頼性を維持する機能を有すると考えられる。「3価以上の脂環式ブロックカルボン酸」とは、分子内に、ブロック剤によりブロックされたカルボキシル基を3個以上有する脂環式化合物をいう。
脂環式ブロックカルボン酸において、ブロックされたカルボキシル基の数は、良好な絶縁信頼性を得るために3個以上である。2個以下である場合は、保護膜の形成が困難であり、絶縁信頼性を維持することができない。また、ブロックされたカルボキシル基の数は、保護膜の反りを小さくする観点から、好ましくは6個以下であり、更に好ましくは4個以下である。特に好ましくは、3個又は4個である。
脂環式カルボン酸は、カルボキシル基により置換された脂肪族炭化水素環化合物である。芳香環式カルボン酸では、めっき後に良好な絶縁信頼性が得られない。脂環式カルボン酸が有する脂環式骨格については、上記脂環式ジオールが有する脂環式骨格と同様であり、好ましくは脂環式飽和炭化水素骨格である。脂環式骨格は、単環式骨格であってもよいし、多環式骨格であってもよい。
また、ブロックされていない脂環式カルボン酸では、熱硬化性樹脂組成物の調製が困難であり、絶縁信頼性に優れた保護膜を得ることができない。ブロックされていない脂環式カルボン酸は、融点が高いために、熱硬化性樹脂組成物へ配合すること、また、他の成分との反応を進行させることが難しい。これに対し、脂環式ブロックカルボン酸は、融点が低いことから、熱硬化性樹脂組成物の調製が容易であり、かつ、硬化反応を良好に進めることも可能である。
3価以上の脂環式ブロックカルボン酸は、3価以上の脂環式カルボン酸を、ブロック剤によりブロックすることによって得ることができる。
ブロック剤としては、カルボキシル基と反応し、いわゆる保護基を形成可能な化合物が挙げられる。例えば、ブロック剤の例には、アルキルモノビニルエーテル、アルキルアミン、アルキルアルコール、イソブテン等が含まれる。
ブロック剤は、カルボン酸を液状化させやすいという観点から、好ましくはアルキルビニルエーテルであり、より好ましくはアルキルモノビニルエーテルである。ブロック剤がアルキルモノビニルエーテルである場合、公知の方法によって、カルボキシル基をエステル化し、ブロックカルボン酸を得ることができる。アルキルモノビニルエーテルとしては、例えば、式(II)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0006750289
式中、Rは飽和炭化水素基(アルキル基)を表す。飽和炭化水素基は、直鎖状、分岐状、又は環状であってよい。飽和炭化水素基の炭素数は、比較的低温でブロックを解離できることから、好ましくは3以下であり、より好ましくは2以下である。
アルキルモノビニルエーテルとして、具体的には、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル等が挙げられる。
3価以上の脂環式カルボン酸としては、例えば、式(I)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0006750289
式中、Rは脂環式飽和炭化水素基を表し、nは3以上の整数を表す。脂環式飽和炭化水素基の炭素数は、比較的低温でブロックを解離できることから、好ましくは5〜10である。nの上限は、脂環式飽和炭化水素基に含まれる炭素数に応じて定めることができる。nは、保護膜の反りを小さくする観点から、好ましくは6個以下であり、より好ましくは5個以下であり、更に好ましくは4個以下である。特に好ましくは、3個又は4個である。
3価以上の脂環式カルボン酸として、具体的には、シクロブタン−1,2,3−トリカルボン酸、シクロペンタン−1,2,3−トリカルボン酸、シクロペンタン−1,2,4−トリカルボン酸、シクロヘキサン−1,2,3−トリカルボン酸、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸、シクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸等の脂環式トリカルボン酸;シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、シクロヘキサン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、シクロヘキサン−1,2,3,5−テトラカルボン酸、シクロヘキサン−1,3,4,6−テトラカルボン酸等の脂環式テトラカルボン酸などが挙げられる。
アルキルモノビニルエーテル、アルキルアミン、アルキルアルコール、イソブテン等のブロック剤によりブロックされたカルボン酸は、すなわち、エステル化合物、アミド化合物、tert−ブチルエステル化合物等である。好ましくは、エステル化合物であり、例えば、式(III)で表される。
Figure 0006750289
式中、Rは式(I)におけるRと同じであり、Rは式(II)におけるRと同じであり、nは式(I)におけるnと同じである。
3価以上の脂環式ブロックカルボン酸は、市販品として入手可能である。例えば、ノフキュアーHK−6、サンタシッドK(以上、日油株式会社製)等が挙げられる。
3価以上の脂環式ブロックカルボン酸の含有量は、めっき処理後に良好な絶縁信頼性を得る観点から、ポリウレタン樹脂の固形分100質量部に対して1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上が特に好ましい。また、3価以上の脂環式ブロックカルボン酸の含有量は、めっき工程の有無に関わらず絶縁信頼性が低下することを防ぐために、エポキシ樹脂による硬化を促進させる観点から、40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、20質量部以下が特に好ましい。
[充填材]
熱硬化性樹脂組成物は充填材を含有する。充填材は、チキソトロピー係数の向上、成膜性、保護膜の耐候性、印刷性等の少なくともいずれかを向上させる機能を有すると考えられる。充填材として、無機充填材(無機フィラー)及び有機充填材(有機フィラー)が挙げられる。充填材は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
(無機充填材)
無機充填材としては、例えば、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、チタニア(TiO)、酸化タンタル(Ta)、ジルコニア(ZrO)、窒化ケイ素(Si)、チタン酸バリウム(BaO・TiO)、炭酸バリウム(BaCO)、チタン酸鉛(PbO・TiO)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT)、酸化ガリウム(Ga)、スピネル(MgO・Al)、ムライト(3Al・2SiO)、コーディエライト(2MgO・2Al/5SiO)、タルク(3MgO・4SiO・HO)、チタン酸アルミニウム(TiO−Al)、イットリア含有ジルコニア(Y−ZrO)、ケイ酸バリウム(BaO・8SiO)、窒化ホウ素(BN)、炭酸カルシウム(CaCO)、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム(CaSO)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸マグネシウム(MgO・TiO)、硫酸バリウム(BaSO)、有機ベントナイト、カーボン(C)等が挙げられる。
(有機充填材)
有機充填材としては、アミド結合、イミド結合、エステル結合又はエーテル結合を有する樹脂(耐熱性樹脂)の微粒子が好ましい。このような樹脂としては、耐熱性と機械特性の観点から、好ましくはポリイミド樹脂若しくはその前駆体、ポリアミドイミド樹脂若しくはその前駆体、又はポリアミド樹脂の微粒子が用いられる。
例えば、ポリイミド樹脂は、(i)芳香族テトラカルボン酸二無水物と、(ii)芳香族ジアミン化合物とを反応させて得ることができる。「芳香族テトラカルボン酸二無水物」とは、分子内にベンゼン環を含むテトラカルボン酸二無水物をいい、「芳香族ジアミン化合物」とは、分子内にベンゼン環を含むジアミン化合物をいう。
(i)芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、無水ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロルナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロルナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テロラクロルナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メチルフェニルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニルジメチルシリル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシクロヘキサン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス{4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス{4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル}プロパン二無水物、4,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、1,4−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリテート無水物)、1,3−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリテート無水物)、1,2−(エチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,3−(トリメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,4−(テトラメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,5−(ペンタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,6−(ヘキサメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,7−(ヘプタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,8−(オクタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,9−(ノナメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,12−(ドデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,16−(ヘキサデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,18−(オクタデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)等が挙げられる。これらは2種以上を混合して用いてもよい。
上記(i)芳香族テトラカルボン酸二無水物に加えて、目的に応じて芳香族テトラカルボン酸二無水物以外のテトラカルボン酸二無水物を、芳香族テトラカルボン酸二無水物の50モル%を超えない範囲で用いることができる。このようなテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビス{エキソービシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物}スルホン、ビシクロ−(2,2,2)−オクト(7)−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
(ii)芳香族ジアミン化合物としては、例えば、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、4,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,4’−ジアミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3,4’−ジアミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、3,3’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、3,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン等が挙げられる。これらは2種以上を混合して用いてもよい。
上記(ii)芳香族ジアミン化合物に加えて、目的に応じて芳香族ジアミン化合物以外のジアミン化合物を、芳香族ジアミン化合物の50モル%を超えない範囲で用いることができる。このようなジアミン化合物としては、例えば、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルポリシロキサン等が挙げられる。
上記(i)芳香族テトラカルボン酸二無水物と、上記(ii)芳香族ジアミン化合物とは、ほぼ等モルで反応させることが保護膜の特性の点で好ましい。(i)芳香族テトラカルボン酸二無水物と、(ii)芳香族ジアミン化合物との反応は、有機溶媒中で行うことができる。有機溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の含窒素化合物;スルホラン、ジメチルスルホキシド等の硫黄化合物;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−ヘプタラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン類;ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコ−ルジメチル(又はジエチル、ジプロピル、ジブチル)エーテル、トリエチレングリコールジメチル(又はジエチル、ジプロピル、ジブチル)エーテル、テトラエチレングリコールジメチル(又はジエチル、ジプロピル、ジブチル)エーテル等のエーテル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン類;ブタノール、オクチルアルコール、エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールモノメチル(又はモノエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はモノエチル)エーテル、テトラエチレングリコールモノメチル(又はモノエチル)エーテル等のアルコール類;フェノール、クレゾール、キシレノール等のフェノール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のエステル類;トルエン、キシレン、ジエチルベンゼン、シクロヘキサン等の炭化水素類;トリクロロエタン、テトタクロロエタン、モノクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類などが用いられる。これらの有機溶媒は、単独又は混合して用いられる。溶解性、低吸湿性、低温硬化性、環境安全性等を考慮するとラクトン類、エーテル類、ケトン類等を用いることが好ましい。
反応温度は80℃以下、好ましくは0〜50℃である。反応が進行するにつれ反応液は徐々に増粘する。この場合、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸が生成する。このポリアミド酸を部分的にイミド化してもよく、これもポリイミド樹脂の前駆体に含まれる。
ポリイミド樹脂は、上記反応物(ポリアミド酸)を脱水閉環して得られる。脱水閉環は、120〜250℃で熱処理する方法(熱イミド化)、脱水剤を用いて行う方法(化学イミド化)等で行うことができる。120〜250℃で熱処理する方法の場合、脱水反応で生じる水を系外に除去しながら行うことが好ましい。この際、ベンゼン、トルエン、キシレン等を用いて水を共沸除去してもよい。
脱水剤を用いて脱水閉環を行う方法は、脱水剤として無水酢酸、無水プロピオン酸、無水安息香酸等の酸無水物、ジシクロヘキシルカルボジイミド等のカルボジイミド化合物等を用いることが好ましい。このとき必要に応じて、ピリジン、イソキノリン、トリメチルアミン、アミノピリジン、イミダゾール等の脱水触媒を用いてもよい。脱水剤又は脱水触媒は、芳香族テトラカルボン酸二無水物1モルに対し、それぞれ1〜8モルの範囲で用いることが好ましい。
ポリアミドイミド樹脂又はその前駆体は、上記のポリイミド樹脂又はその前駆体の製造において、芳香族テトラカルボン酸二無水物の代わりに、トリメリット酸無水物又はトリメリット酸無水物誘導体(トリメリット酸無水物のクロライド等)等の3価のトリカルボン酸無水物又はその誘導体を使用して製造することができる。また、芳香族ジアミン化合物及びその他のジアミン化合物の代わりに、アミノ基に代えてイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物を使用して製造することもできる。使用できるジイソシアネート化合物としては、上記の芳香族ジアミン化合物又はその他のジアミン化合物とホスゲン又は塩化チオニルを反応させて得られるものがある。
ポリアミドイミド樹脂としては、芳香族テトラカルボン酸二無水物と、イソフタル酸ジヒドラジドとを必須成分として含有する芳香族ジアミン化合物とを反応させて得られるポリアミドイミド樹脂が好ましく用いられる。芳香族テトラカルボン酸二無水物及び任意の芳香族ジアミン化合物としては、前述したものが用いられる。イソフタル酸ジヒドラジドの芳香族ジアミン化合物中のモル比は1〜100モル%とすることが好ましい。1モル%未満では、変性ポリアミドイミド樹脂の耐溶剤性が低下する傾向にあり、イソフタル酸ジヒドラジドの含有量が多いと、熱硬化性樹脂組成物によって形成される保護膜の耐湿性が低下する傾向にあるため、10〜80モル%がより好ましく、20〜70モル%が特に好ましい。このポリアミドイミド樹脂は芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物との配合比、使用される有機溶媒、合成法等を上述したポリイミド樹脂の合成と同様にして得ることができる。
トリメリット酸無水物及び必要に応じてジカルボン酸と、ポリイソシアネートとを反応させて得られるポリアミドイミド樹脂は、加熱することにより有機溶剤に不溶性になりやすく、このポリアミドイミド樹脂からなる有機微粒子を使用することもできる。ポリアミドイミド樹脂の製造方法については、前記したポリアミドイミド樹脂の製造方法と同様にして製造することができる。
ポリアミド樹脂は、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸又はその誘導体(ジクロライド、酸無水物等)と、上記の芳香族ジアミン化合物及び/又は他のジアミン化合物とを反応させることにより製造することができる。
エステル結合を有する耐熱性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、上記のテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸又はその誘導体(ジクロライド、酸無水物等)と、1,4−ジヒドロキシベンゼン、ビスフェノールF、ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシビフェニル等の芳香族ジオール化合物とを反応させて得られるものが挙げられる。
微粒子化の方法としては、例えば、非水分散重合法(特公昭60−48531号公報、特開昭59−230018号公報)、沈殿重合法(特開昭59−108030号公報、特開昭60−221425号公報)、樹脂溶液から改修した粉末を機械粉砕する方法、樹脂溶液を貧触媒に加えながら高せん断下に微粒子化する方法、樹脂溶液の噴霧溶液を乾燥して微粒子を得る方法、洗剤又は樹脂溶液中で溶剤に対して溶解性の温度依存性を持つ樹脂を析出微粒子化する方法等が挙げられる。
熱硬化性樹脂組成物は、硬化後の表面タックを改善する観点から、無機充填材を含有することが好ましく、更に、硬化後の外観を向上させ、かつ、優れた耐湿性を得る観点から、硫酸バリウムを含有することがより好ましい。
硬化後の凝集を防止する観点から、充填材の平均粒子径は0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、0.2μm以上であることが更に好ましく、0.3μm以上であることが特に好ましい。また、良好な絶縁信頼性を得る観点から、充填材の平均粒子径は10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、2μm以下であることが更に好ましく、1μm以下であることが特に好ましい。本明細書において、平均粒子径は、レーザー回折散乱法(体積基準)によるメディアン径(D50)をいう。
硬化後のタックを抑え、保護膜が基材に貼りつくことを防止する観点から、充填材の含有量は、ポリウレタン樹脂の固形分100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることが特に好ましい。また、硬化後の保護膜の反りを抑える観点から、充填材の含有量は、100質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましく、30質量部以下であることが更に好ましい。
[有機溶剤]
熱硬化性樹脂組成物は、ポリウレタン樹脂を溶解する有機溶剤を含有してもよい。この有機溶剤としては、非含窒素系極性溶媒が挙げられる。非含窒素系極性溶媒としては、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホラン等の含硫黄系溶媒;γ−ブチロラクトン、酢酸セロソルブ、酢酸ブチルカルビトール、酢酸2−ブトキシエチル等のエステル系溶媒;シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上組み合わせて使用することができる。ポリウレタン樹脂はその組成によって溶解性が異なるので、好ましくは、樹脂を溶解可能な溶剤を選択して使用する。
上記有機溶剤の中でも、特に消泡性、レベリング性等の印刷性と熱硬化性樹脂組成物の配線間の流れ出し(ブリード)を抑制する観点から、γ−ブチロラクトンが好ましい。
有機溶剤の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の塗工方法に応じて適宜、定めることができる。例えば、スクリーン印刷法によって塗工する場合、熱硬化性樹脂組成物の全質量中、好ましくは1〜70質量%、より好ましくは2〜50質量%、更に好ましくは3〜30質量%である。
[製造方法等]
熱硬化性樹脂組成物には、塗工時の作業性及び被膜形成前後の膜特性を向上させるため、消泡剤、レベリング剤等の界面活性剤類、染料又は顔料等の着色剤類、熱安定剤、酸化防止剤、難燃剤、滑剤などを添加することもできる。
熱硬化性樹脂組成物の製造には、通常、塗料分野で行われているロール練り、ミキサー混合等が適用され得る。十分な混合が行われる方法であればよい。
熱硬化性樹脂組成物は、印刷後の樹脂組成物の流れ出しを抑えるとともに膜厚が薄膜化することを防止する観点から、回転型粘度計により測定される25℃における粘度が、20Pa・s以上であることが好ましく、30Pa・s以上であることがより好ましい。樹脂組成物の基材への良好な転写性を得るとともに印刷膜中のボイド及びピンホールの発生を抑える観点から、粘度が、80Pa・s以下であることが好ましく、50Pa・s以下であることがより好ましい。
<熱硬化性樹脂組成物の硬化物>
本発明の実施形態である硬化物は、上記実施形態の熱硬化性樹脂組成物を硬化させることにより得られる。硬化物の実施形態として、膜状の硬化膜が挙げられる。硬化膜は、熱硬化性樹脂組成物を基材に塗布し、塗布膜を得た後、塗布膜を熱硬化させることにより得られる。熱硬化前に塗布膜を乾燥させてもよい。
塗布方法としては、例えば、スピンコーティング法;キャスト法;浸漬法;ディスペンス法、凸版印刷、凹版印刷、オフセット印刷、平版印刷、凸版反転オフセット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷等の印刷法が挙げられる。熱硬化の際の加熱温度は、例えば、60〜200℃、好ましくは80〜180℃、より好ましくは120〜150℃である。加熱時間は、例えば、10〜150分、好ましくは30〜120分である。
<フレキシブル配線板及びその製造方法>
本発明の実施形態であるフレキシブル配線板は、少なくとも、配線パターンが形成された基材、前記配線パターンの少なくとも一部を覆う保護膜、及び、前記配線パターンの少なくとも一部を覆うめっき層を備える。保護膜を前記実施形態の硬化物とすることで、優れた信頼性及び耐屈曲性を有するフレキシブル配線板が得られる。
フレキシブル配線板の基材としては、ポリイミドフィルム、エポキシ接着剤層付きポリイミドフィルム等が挙げられる。基材の厚みは、好ましくは10〜200μm、より好ましくは20〜100μmである。
配線パターンは、銅で形成されていることが好ましい。配線パターン配線幅は、好ましくは5〜200μm、より好ましくは10〜100μmである。めっき層は、Sn、Ni、又はAuで形成されていることが好ましい。
また、本発明の実施形態であるフレキシブル配線板の製造方法は、少なくとも、配線パターンが形成された基材を準備する工程、前記配線パターンの少なくとも一部を覆うように上記実施形態の熱硬化性樹脂組成物を印刷する工程、印刷された熱硬化性樹脂組成物を硬化して保護膜を形成する工程、前記配線パターンの少なくとも一部を覆うようにめっき層を形成する工程を含む。
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、スクリーン印刷、ディスペンサ、スピンコート等の塗布方法により、各種電気製品、電子部品等の被膜形成材料として好適に用いられる。特に、スクリーン印刷による塗布が好ましい。
熱硬化の条件は、銅配線の酸化を防ぎ、かつ、保護膜として好適な反り性及び柔軟性を得る観点から、好ましくは80〜180℃、より好ましくは90〜160℃、特に好ましくは120〜150℃である。加熱時間は、銅配線の酸化を防ぎ、かつ、保護膜として好適な反り性及び柔軟性を得る観点から、好ましくは30〜120分、より好ましくは50〜90分である。
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、例えば、半導体素子、プリント基板分野などの電子部品用オーバーコート材、液状封止材、層間絶縁膜、表面保護膜、ソルダレジスト層、接着層などを形成するための材料として好適に用いられる。また、エナメル線用ワニス、電気絶縁用含浸ワニス、注型ワニス、マイカ、ガラスクロス等の基材と組み合わせたシート用ワニス、MCL積層板用ワニス、摩擦材料用ワニスなどにも使用できる。また、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、耐めっき性が優れ、耐屈曲性が優れていることから、信頼性が高く、耐屈曲性に優れた電子部品を得ることができる。
以下、実施例を挙げて本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<1.ポリウレタン樹脂の合成>
(合成例1)
撹拌装置、温度計、及びコンデンサーを備えた反応容器に、上述の式(1B)で表されるポリカーボネートジオール(1)(Rとして、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する構成単位と1,6−ヘキササンジオールに由来する構成単位とを1:1のモル比で含み、nの平均が4〜6の範囲である。)121.47g(0.13mol)と、上述の式(2)で表されるポリカーボネートジオール(2)(Rが1,6−ヘキサンジオールに由来する構成単位であり、mの平均が21.5〜23.5の範囲である。)132.91g(0.07mol)とを加えた。更に、反応容器に、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート59.91g(0.24mol)と、トリレンジイソシアネート混合物(2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートとの質量比80:20の混合物)27.80g(0.16mol)と、γ−ブチロラクトン228.06gとを加えた。混合物を150℃に昇温して全ての原料を溶解させ、4時間反応させて、ウレタン結合を有するポリイソシアネートを生成させた。
次いで、反応液の温度を60℃まで下げ、無水トリメリット酸71.14g(0.37mol)を加え完全に溶解させた後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート25.68g(0.10mol)と、トリレンジイソシアネート混合物11.91g(0.07mol)と、γ−ブチロラクトン229.01gとを加えた。混合物を120℃に昇温して全ての原料を溶解させ、1時間反応させた。
反応液の温度を調整しながら、180℃で2.5時間、150℃で1時間、120℃で1時間反応させた。続いて、120℃で2−ブタノンオキシム10.99gを加え、反応を終了させた。アミド結合及びイミド結合を有するポリウレタン樹脂(A−1)が得られた。
ポリウレタン樹脂(A−1)の数平均分子量は13,100、重量平均分子量は43,200、分散度は3.30、固形分の酸価は20mgKOH/gであった。
(合成例2)
撹拌装置、温度計、及びコンデンサーを備えた反応容器に、上述の式(1A)で表されるポリカーボネートジオール(3)(Rとして、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する構成単位を含み、nの平均が4〜6の範囲である。)121.47g(0.12mol)と、上述の式(2)で表されるポリカーボネートジオール(2)(Rが1,6−ヘキサンジオールに由来する構成単位であり、mの平均が21.5〜23.5の範囲である。)132.91g(0.07mol)とを加えた。更に、反応容器に、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート52.72g(0.21mol)と、トリレンジイソシアネート混合物(2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートとの質量比80:20の混合物)24.46g(0.14mol)と、γ−ブチロラクトン232.10gとを加えた。混合物を150℃に昇温して全ての原料を溶解させ、4時間反応させて、ウレタン結合を有するポリイソシアネートを生成させた。
次いで、反応液の温度を60℃まで下げ、無水トリメリット酸62.60g(0.33mol)を加え完全に溶解させた後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート22.60g(0.09mol)と、トリレンジイソシアネート混合物10.48g(0.06mol)と、γ−ブチロラクトン232.10gとを加えた。混合物を120℃に昇温して全ての原料を溶解させ、1時間反応させた。
反応液の温度を調整しながら、180℃で2.5時間、150℃で1時間、120℃で1時間反応させた。続いて、120℃で2−ブタノンオキシム10.99gを加え、反応を終了させた。アミド結合及びイミド結合を有するポリウレタン樹脂(A−2)が得られた。
ポリウレタン樹脂(A−2)の数平均分子量は13,200、重量平均分子量は40,920、分散度は3.10、固形分の酸価は19mgKOH/gであった。
(比較合成例)
撹拌装置、温度計、及びコンデンサーを備えた反応容器に、ポリカーボネートジオール(2)(Rが1,6−ヘキサンジオールに由来する構成単位であり、mが平均21.5〜23.5の範囲である。)687.86g(0.35mol)と、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート105.11g(0.60mol)と、トリレンジイソシアネート混合物(2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートとの質量比80:20の混合物)48.76g(0.28mol)と、γ−ブチロラクトン561.15gとを加えた。混合物を150℃に昇温して全ての原料を溶解させ、4時間反応させて、ウレタン結合を有するポリイソシアネートを生成させた。
次いで、反応液の温度を60℃まで下げ、無水トリメリット酸124.80g(0.65mol)を加え完全に溶解させた後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート45.05g(0.18mol)と、トリレンジイソシアネート混合物20.90g(0.12mol)と、γ−ブチロラクトン482.32gとを加えた。混合物を120℃に昇温して全ての原料を溶解させ、1時間反応させた。
反応液の温度を調整しながら、180℃で4時間、150℃で2時間、120℃で1時間反応させた。続いて、120℃で2−ブタノンオキシム10.99gを加え、反応を終了させた。アミド結合及びイミド結合を有するポリウレタン樹脂(A−3)が得られた。
ポリウレタン樹脂(A−3)の数平均分子量は13,500、重量平均分子量は40,095、分散度は2.97、固形分の酸価は18mgKOH/gであった。
合成例及び比較合成例で使用した原料の入手先を以下に記す。
ポリカーボネートジオール(1):宇部興産株式会社製「UM−CARB90(1/1)」、数平均分子量:約900
ポリカーボネートジオール(2):株式会社ダイセル製「PLACCEL CD−220」、数平均分子量:約2,000
ポリカーボネートジオール(3):宇部興産株式会社製「UC−100」、数平均分子量:約1,000)
4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート:日本ポリウレタン工業株式会社製「MILLIONATE MT」
トリレンジイソシアネート混合物:三井化学ポリウレタン株式会社製「コスモネートT−80」
γ−ブチロラクトン:三菱化学株式会社製
無水トリメリット酸:三菱ガス化学株式会社製
ポリウレタン樹脂の数平均分子量及び重量平均分子量の測定条件、並びに酸価の測定方法を以下に示す。
(数平均分子量、重量平均分子量)
カラム :日立化成テクノサービス株式会社製Gelpack「GL−R440」、「GL−R450」及び「GL−R400M」を直列に接続した。
流量 :2.05mL/分
検出器 :株式会社日立製作所製「L3300 RI Monitor」
濃度 :120mg/5mL
注入量 :200μL
カラム温度:室温(25℃)
溶離液 :テトラヒドロフラン(THF)
(酸価)
ポリウレタン樹脂10gを共栓フラスコに精密に量り採り、γ−ブチロラクトン100mLを加えて溶解させた。得られた溶液に、数滴のフェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間持続する淡紅色を呈するまで0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液で滴定した。
酸価は、滴定に要した0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の液量から、下式により算出した。
酸価=a×F×5.611/ポリウレタン樹脂量(g)
a:0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の量(mL)
F:0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の力価
<2.熱硬化性樹脂組成物の調製>
[実施例1]
合成例1で得られたポリウレタン樹脂、充填材、ブロックカルボン酸、消泡剤、エポキシ樹脂、及び溶剤をこの順に自公転ミキサ(株式会社シンキー製「AR−250」)に加えた。回転数2,000rpm、回転時間3分の条件で混練し、熱硬化性樹脂組成物を得た。表1に、各成分の含有量(質量部)を示す。
[実施例2〜5及び比較例1〜6]
ポリウレタン樹脂、ブロックカルボン酸、及び/又は充填材を、表1に示す成分及び含有量に変更した以外は実施例1と同様にして、熱硬化性樹脂組成物を得た。
Figure 0006750289
実施例及び比較例で使用した原料の入手先を以下に記す。
ポリウレタン樹脂(A−1):合成例1で得られた樹脂
ポリウレタン樹脂(A−2):合成例2で得られた樹脂
ポリウレタン樹脂(A−3):比較合成例で得られた樹脂
エポキシ樹脂(B):テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(新日鐵化学株式会社製「エポトートYH−434L」)
ブロックカルボン酸(C−1):脂環式モノアルキルビニルエーテルブロックカルボン酸(日油株式会社製「サンタシッドK」、官能基数:3)
ブロックカルボン酸(C−2):脂環式モノアルキルビニルエーテルブロックカルボン酸(日油株式会社製「ノフキュアーHK−6」、官能基数:4)
ブロックカルボン酸(C−3):芳香族モノアルキルビニルエーテルブロックカルボン酸(日油株式会社製「ノフキュアーTN−1」、官能基数:3)
ブロックカルボン酸(C−4):芳香族モノアルキルビニルエーテルブロックカルボン酸(日油株式会社製「ノフキュアーTN−2」、官能基数:4)
ブロックカルボン酸(C−5):脂環式モノアルキルビニルエーテルブロックカルボン酸(日油株式会社製「サンタシッドH」、官能基数:2)
充填材(D−1):硫酸バリウム(堺化学工業株式会社製「B−55H」、平均粒子径:0.6μm)
充填材(D−2):シリカ(電気化学工業株式会社製「SFP−20M」、平均粒子径:0.3μm)
充填材(D−3):タルク(日本タルク工業株式会社製「SG−2000」、平均粒子径:1.0μm)
消泡剤(E):アクリル系消泡剤(楠本化成株式会社製「ディスパロンLF−1983」)
溶剤(F):γ−ブチロラクトン(三菱化学株式会社製)
充填材の平均粒子径は、レーザー回折散乱法により測定した体積基準のメディアン径(D50)である。測定装置として、日機装株式会社製「マイクロトラック粒度分析計 MT3300」を用い、溶媒には、ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液(0.025質量%)を使用した。
<3.評価>
熱硬化性樹脂組成物について、以下の方法に従い、(1)耐めっき性(絶縁信頼性)、(2)耐屈曲性、(3)低タック性、(4)印刷後の外観、及び(5)耐湿性を評価した。
(1)耐めっき性(PCBT(Pressure Cooker Bias Test))
ポリイミドフィルム(厚さ38μm)と、銅箔(スパッタ銅、厚さ8μm)と有する櫛形の銅配線(配線パターン)とから構成されるフレキシブル銅張り積層板(縦4.2mm、横5.8mm、銅配線幅/銅配線間幅=25μm/25μm)を準備した。この積層板に、熱硬化性樹脂組成物を、下記条件でスクリーン印刷により塗布した(乾燥膜厚10μm、縦3.5mm、横5.0mm)。塗布した熱硬化性樹脂組成物を150℃で1時間の加熱により硬化させて、保護膜を形成した。保護膜を形成した積層板を予め80℃に加温した無電解Snめっき液(ロンアンドハース社製「LT−34」)に30秒浸し、25℃のイオン交換水で保護膜表面を洗浄することでめっき処理を行なった。めっき処理後の積層板に、120℃、相対湿度85%の雰囲気下において60Vのバイアス電圧を印加し、抵抗値が10Ω以下になった場合をマイグレーション発生とみなし、発生までの時間を測定した。以下の基準で耐めっき性を評価した。
(印刷条件)
印刷機:ニューロング精密工業株式会社製「LS−34GX」
メッシュ版:株式会社ムラカミ製「SUS200メッシュ版」
印刷速度:80mm/sec
(評価基準)
A:200時間以上
B:150時間以上200時間未満
C:100時間以上150時間未満
D:100時間未満
(2)耐屈曲性(MIT(Massachusetts Institute of Technology)試験)
ポリイミドフィルム(厚さ38μm)と、銅箔(スパッタ銅、厚さ8μm)及び銅箔上に形成されたSnめっき層(厚さ0.2〜0.3μm)を有する櫛形の銅配線(配線パターン)とから構成されるフレキシブル銅張り積層板(縦48mm、横35mm、銅配線幅/銅配線間幅=12.5μm/12.5μm)を準備した。この積層板に、熱硬化性樹脂組成物を、下記条件でスクリーン印刷により塗布した(乾燥膜厚10μm、縦3.5mm、横5.0mm)。塗布した熱硬化性樹脂組成物を150℃で1時間と、その後の125℃で7.5時間の加熱により硬化させて、保護膜を形成した。保護膜を形成した積層板を試験片とした。図1に試験片の模式図を示す。試験片に対して、MIT耐折度試験機(テスター産業株式会社製「BE−201」)を用いて下記条件にてAの位置で保護膜を内側にして折り曲げを繰り返し実施し、導通がとれなくなるサイクル数を求めた。耐屈曲性は以下の基準で評価した。
(印刷条件)
印刷機:ニューロング精密工業株式会社製「LS−34GX」
メッシュ版:株式会社ムラカミ製「SUS200メッシュ版」
印刷速度:80mm/sec
(耐MIT試験条件)
荷重:100gf
角度:角対向135°
速度:175回/分
先端:R1.0mm円筒
(評価基準)
A:150回以上
B:100回以上150回未満
C:80回以上100回未満
(3)低タック性
熱硬化性樹脂組成物を、ポリイミドフィルム(厚さ38μm、幅50mm)に、下記条件でスクリーン印刷により、連続印刷した(乾燥膜厚10μm、縦15mm、横40mm、塗膜間隔5cm)。印刷後の塗膜を、150℃で1時間の加熱により硬化させ、硬化膜を形成させた。硬化膜が形成されたポリイミドフィルムを、500gfの荷重を加えながら、ロールに巻き取った。巻き取ったポリイミドフィルムを、25℃、相対湿度60%の雰囲気下において、48時間放置した。48時間放置後の硬化膜とポリイミドフィルムの裏面との接触面の張り付き荷重を測定した。張り付き荷重は、硬化膜からポリイミドフィルムが剥がれる荷重を、下記条件で測定した。以下の基準で低タック性を評価した。
(印刷条件)
印刷機:ニューロング精密工業株式会社製「LS−34GX」
メッシュ版:株式会社ムラカミ製「SUS200メッシュ版」
印刷速度:80mm/sec
(引き剥がし方法)
ロールからポリイミドフィルムを引き出し、硬化膜が形成されたポリイミドフィルムを机上に水平に載置した。この際、ポリイミドフィルムが机表面に接し、かつ、ポリイミドフィルムの長手方向に沿う端部及び硬化膜の短辺側(縦15mm側)の端部が机表面からはみ出すように置いた。ポリイミドフィルムの端部に、重さ0.23gのクリップを取り付け、硬化膜からポリイミドフィルムが剥がれたときのクリップの個数を数えた。
(評価基準)
A:0.23gf以下(クリップ1個以下)
B:0.23gf超0.92gf以下(クリップ1個超4個以下)
C:0.92gf超(クリップ4個超)
(4)印刷後の外観
銅箔(厚さ35μm、縦30mm、横45mm)上に、熱硬化性樹脂組成物を、下記条件でスクリーン印刷により印刷した(乾燥後膜厚10μm、縦30mm、横30mm)。120℃で1時間硬化した後の硬化膜中の凝集物を100倍率の光学顕微鏡で観察した。以下の基準で印刷後の外観を評価した。
(印刷条件)
印刷機:ニューロング株式会社製「LS−34GX」
メッシュ版:株式会社ムラカミ製「SUS300メッシュ版」
印刷速度:80mm/sec
(評価基準)
A:印刷膜中に10μm以上の凝集物なし
B:印刷膜中に10μm以上の凝集物あり
(5)耐湿性(耐PCT(Pressure Cooker Test)性)
ポリイミドフィルム(厚さ38μm)と、銅箔(スパッタ銅、厚さ8μm)と有する櫛形の銅配線(配線パターン)とから構成されるフレキシブル銅張り積層板(縦48mm、横35mm、銅配線幅/銅配線間幅=15μm/15μm)を準備した。この積層板に、熱硬化性樹脂組成物を、下記条件でスクリーン印刷により塗布した(乾燥膜厚10μm、縦15mm、横40mm)。塗布された熱硬化性樹脂組成物を150℃で1時間の加熱により硬化させて、保護膜を形成させた。保護膜が形成された積層板をオートクレーブにより、121℃、0.2MPa(飽和蒸気圧)の条件で100時間処理した。100時間処理後の硬化膜の外観を、100倍率の光学顕微鏡で観察した。以下の基準で耐湿性を評価した。
(印刷条件)
印刷機:ニューロング株式会社製「LS−34GX」
メッシュ版:株式会社ムラカミ製「SUS300メッシュ版」
印刷速度:80mm/sec
(評価基準)
A:膨れ、割れ及び表面の荒れなし
B:表面の荒れあり
C:膨れ及び/又は割れあり
(評価結果)
評価結果を表2に示す。
Figure 0006750289
実施例1〜5の全ての熱硬化性樹脂組成物について、優れた耐めっき性及び耐屈曲性を有するという結果が得られた。実施例1〜5の熱硬化性樹脂組成物は、低タック性も優れていた。実施例1〜5の熱硬化性樹脂組成物と比較し、比較例1〜6の熱硬化性樹脂組成物は、いずれも耐めっき性が劣り、また、比較例1及び2の熱硬化性樹脂組成物は、耐屈曲性及び低タック性も劣っていた。実施例1〜3の熱硬化性樹脂組成物と実施例4及び5の熱硬化性樹脂組成物との比較から、充填材として硫酸バリウムを使用した場合に、更に印刷後の外観及び耐湿性についても優れた結果が得られることがわかる。
1 ポリイミドフィルム
2 配線パターン
3 保護膜
100 試験片(フレキシブル銅張り積層板)

Claims (6)

  1. 脂環式ジオールに由来する構成単位を含むポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、3価以上
    の脂環式ブロックカルボン酸、及び、充填材を含有し、
    前記ポリウレタン樹脂の酸価が10〜35mgKOH/gであり、
    前記ポリウレタン樹脂がアミド結合及び/又はイミド結合を有する、熱硬化性樹脂組成物。
  2. 前記ポリウレタン樹脂が、下記式(2)で表されるポリカーボネートジオールに由来す
    る構成単位を更に含む、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
    Figure 0006750289
    [式(2)中、Rは炭素数1〜18の直鎖又は分岐アルキレン基を示し、mは1〜30の
    数を示す。]
  3. 充填材が硫酸バリウムを含む、請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  4. 請求項1〜のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化物。
  5. 配線パターンが形成された基材、前記配線パターンの少なくとも一部を覆う保護膜、及
    び、前記配線パターンの少なくとも一部を覆うめっき層を備え、前記保護膜が、請求項
    に記載の硬化物である、フレキシブル配線板。
  6. 配線パターンが形成された基材を準備する工程、前記配線パターンの少なくとも一部を
    覆うように請求項1〜のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を印刷する工程、印刷さ
    れた熱硬化性樹脂組成物を硬化させて保護膜を形成する工程、前記配線パターンの少なく
    とも一部を覆うようにめっき層を形成する工程を含む、フレキシブル配線板の製造方法。
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