JP2020152808A - 熱硬化性樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は、高い折り曲げ性を維持しながらプラズマ処理・アルカリ脱脂処理への耐性を向上させた樹脂組成物を提供することである。【解決手段】本発明は、(A)カルボキシル基を有する樹脂、(B)多価カルボン酸またはその無水物構造を有する分子量が100以上1000以下の化合物、および(C)多官能エポキシ化合物を含有し、前記(A)成分がウレタン、イミドまたはノボラックから選ばれる構造を有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物により、上記課題を解決することができる。【選択図】なし

Description

本発明は、熱硬化性樹脂組成物、それから得られる硬化膜および硬化膜付きプリント配線板に関するものである。
各種の電子機器に用いられるフレキシブルプリント基板の回路上には、絶縁信頼性を維持するため、絶縁性の硬化膜が設けられている。近年、スマートフォンやタブレットに代表される電子機器の小型化、薄型化が進んでおり、電子機器に用いられるフレキシブルプリント基板には、小型化、薄型化に対応した仕様が要求されている。例えば、配線板の回路ピッチのファイン化が進み、微細な組み込み性が求められている。
前記のフレキシブルプリント基板に用いられる硬化膜には微細組み込みに伴う高い折り曲げ性が要求される。一方で、回路ピッチのファイン化に伴い回路の電気特性の劣化を引き起こす回路表面の汚染が課題となっている。これを解決するために、近年のフレキシブルプリント基板の製造工程においてはプラズマ処理およびアルカリ脱脂処理による洗浄工程を行っている。このため、硬化膜がこれらの処理を経ても変質しない耐性を有することが要求されている。
従来のフレキシブルプリント基板に用いられる硬化膜は特許文献1あるいは特許文献2に示されるような樹脂組成物の硬化膜用いられてきたが、これらの硬化膜は折り曲げ性とプラズマ処理およびアルカリ脱脂処理における耐性の両立が困難であった。
特開2018−146963 特開2005−248048
本発明の課題は、高い折り曲げ性を維持しながらプラズマ処理・アルカリ脱脂処理への耐性を向上させた樹脂組成物を提供することである。
本発明者らは、前述の課題解決のために鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、以下の構成をなす。
[1]. (A)カルボキシル基を有する樹脂、(B)多価カルボン酸またはその無水物構造を有する分子量が100以上1000以下の化合物、および(C)多官能エポキシ化合物を含有し、前記(A)成分がウレタン、イミドまたはノボラックから選ばれる構造を有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
[2].前記(A)成分が、酸価5〜200mgKOH/gであることを特徴とする[1]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[3].前記(A)成分が、ウレタン構造を有することを特徴とする[1]または[2]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[4].前記(A)成分が、ウレタンイミド樹脂であることを特徴とする[3]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[5].前記(B)成分が、テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸二無水物であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
[6].前記 (B)成分がビスフェノールA二無水物である[5]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[7].前記(A)成分100部に対して前記(B)成分を0.1〜50部含み、かつ前記(C)成分を1〜100部以下含むことを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
[8] .[1]に記載の熱硬化性樹脂組成物の内、官能基当量から計算される(B)成分の官能基数xと(C)成分のエポキシ官能数yの比x/yが0.01〜0.5であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
[9] .[1]〜[8]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物である硬化膜。
[10].金属配線上に、[9]に記載の硬化膜を備えた硬化膜付きフレキシブルプリント基板。
本発明によれば、高い折り曲げ性を維持しながらプラズマ処理・アルカリ脱脂処理への耐性を向上させた樹脂組成物を提供することができる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は(A)カルボキシル基を有する樹脂、(B)多価カルボン酸またはその無水物構造を有する分子量が100以上1000以下の化合物、および(C)多官能エポキシ化合物を含有し、前記(A)成分がウレタン、イミドまたはノボラックから選ばれる構造を有することを特徴とする。以下、各成分の詳細について順に説明していく。なお、以下の各成分は、それぞれ、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
<(A)カルボキシル基を有する樹脂>
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(A)成分として、カルボキシル基を有する樹脂であり、かつウレタン、イミドまたはノボラックから選ばれる構造を有することを特徴とする樹脂を含む。(A)成分のカルボキシル基は、カルボキシル基であってもその無水物構造をとっていてもよい。
カルボキシル基を有する樹脂の酸価は5〜200mgKOH/gが好ましく、10〜150mgKOH/gがより好ましく、15〜100mgKOH/gがさらに好ましい。(A)成分としてのカルボキシル基を有する樹脂が適切な酸価を有することにより、(C)成分としてのエポキシ樹脂との架橋密度が高められ、硬化膜のプラズマ耐性およびアルカリ処理耐性を向上できる。
カルボキシル基を有する樹脂の重量平均分子量は、ポリエチレングリコール換算で、1,000〜1,000,000が好ましく、2,000〜200,000がより好ましく、3,000〜100,000がさらに好ましく、4,000〜50,000が特に好ましい。カルボキシル基を有する樹脂の重量平均分子量が上記範囲内であれば、熱硬化性樹脂組成物の粘度をスクリーン印刷等による塗布に適した範囲に調整でき、かつ硬化膜の柔軟性やプラズマ耐性およびアルカリ処理耐性が向上する傾向がある。
カルボキシル基を有する樹脂の具体例としては、酸変性ポリイミド、酸変性ポリウレタンアミドイミド、酸変性ポリウレタンイミド、ノボラック樹脂を出発原料とした酸変性ノボラック樹脂等が挙げられる。この内、カルボキシル基を有する樹脂がウレタン構造を有すると折り曲げ性が良好となり好ましく、ウレタンイミド構造を有すると折り曲げ性とプラズマ耐性およびアルカリ処理耐性がいずれも良好となりさらに好ましい。
(A)成分としてのカルボキシル基を有する樹脂は、各種公知の方法により得られる。重合は、溶液重合及び無溶媒重合のいずれでもよいが、反応を制御する為には、溶液重合が好ましい。溶液重合の有機溶媒としては、モノマー成分及び重合後のポリマーの両方を溶解できるものを特に制限なく用いることができる。溶液重合における溶媒量は、溶液濃度が5〜90重量%、好ましくは20〜70重量%となるように調整すればよい。
酸変性ポリイミドは、例えば、ジイソシアネート化合物とテトラカルボン酸二無水物との反応により得られる。テトラカルボン酸二無水物をジイソシアネート化合物の当量よりも過剰に加えることにより、末端にカルボン酸無水物基を有するイミド化合物が得られる。末端にカルボン酸無水物基を有するイミド化合物に、水及び/又はメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の第一級アルコールを反応させることにより、末端にカルボキシル基を有するイミド化合物が得られる。ジイソシアネート化合物は、脂環族ジイソシアネート化合物及び脂肪族ジイソシアネート化合物のいずれでもよく、末端にイソシアネート基を有するウレタン化合物をもつものを用いてポリウレタンイミドとしてもよい。ウレタンイミドとした場合、得られる樹脂組成物の硬化膜は折り曲げ性が良好となり好ましい。テトラカルボン酸二無水物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物及び脂肪族テトラカルボン酸二無水物のいずれでもよく、芳香環にカルボン酸無水物基が直接結合している芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましい。
酸変性ポリウレタンアミドイミドは、ウレタン構造、アミド酸構造、イミド構造を有する化合物であり、例えば、ジアミノ化合物、テトラカルボン酸二無水物および末端にイソシアネート基を有するウレタン化合物を同時に反応することにより得られる。ポリウレタンアミドイミドとすると、得られる樹脂組成物の硬化膜は折り曲げ性、耐プラズマ性、耐アルカリ処理耐性がいずれも良好となり好ましい。
ノボラックを出発原料とした酸変性ノボラック樹脂は、例えば、フェノールノボラックをエピクロロヒドリンでエポキシ樹脂とした後、このエポキシ樹脂と不飽和モノカルボン酸とを反応させて得られるエステルに、飽和又は不飽和の多価カルボン酸無水物を付加して得られるノボラック樹脂などが挙げられる。
(A)成分としてのカルボキシル基を有する樹脂は、分子内に(メタ)アクリロイル基やビニル基等の重合性不飽和結合を有していてもよい。熱硬化性樹脂組成物が(A)成分として分子内に酸性官能基及び重合性不飽和二重結合を有する化合物を含む場合は、(A)成分が、(C)成分のエポキシ基に加えて重合性不飽和二重結合同士で反応するため、硬化膜の架橋密度が高められ、プラズマ耐性やアルカリ処理耐性が向上する傾向にある。
<(B)多価カルボン酸またはその無水物構造を有する分子量100以上1000以下の化合物>
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(B)成分として、多価カルボン酸またはその無水物構造を有する、分子量が100以上1000以下の化合物を含む。
多価カルボン酸またはその無水物構造を有する化合物は、分子量100〜1000が好ましく、分子量200〜800がより好ましく、分子量250〜600がさらに好ましい。多価カルボン酸またはその無水物構造を有する化合物の分子量が上記範囲内であれば、適度な柔軟性を保ったまま架橋密度の向上に寄与するため折り曲げ性とプラズマ耐性およびアルカリ処理耐性が良好となる。
多価カルボン酸またはその無水物構造を有する化合物としては、脂肪族ジカルボン酸無水物、例えば、無水マレイン酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロトリメリット酸無水物、芳香族多価カルボン酸無水物、例えば、無水フタル酸、トリメリット酸無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、3,3',4,4'−オキシジフタル酸、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸、3,3',4,4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン、3,3',4,4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二、3,3',4,4'−オキシジフタル酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸およびこれらの無水物が挙げられる。この内、テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸二無水物を用いたときは、適度な柔軟性を保ったまま架橋密度の向上に寄与するため折り曲げ性とプラズマ耐性およびアルカリ処理耐性が良好となり好ましい。この内、3,3',4,4'−オキシジフタル酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸および2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸は架橋密度の向上効果が高いため好ましく、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸は他成分との相溶性の観点でさらに好ましい。
<(C)多官能エポキシ化合物>
多官能エポキシ樹脂とは、分子内に少なくとも2つのエポキシ基を含有する化合物であり、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アミン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は、ウレタン、ゴム、キレート、ダイマー酸等による変性エポキシ樹脂でもよい。(C)成分のエポキシ樹脂として、市販のエポキシ樹脂をそのまま用いてもよい。
硬化膜のプラズマ耐性の観点から、エポキシ樹脂のエポキシ当量(1当量のエポキシ基を含む化合物の質量(g))は2000以下が好ましく、1500以下がより好ましい。エポキシ樹脂の重量平均分子量は、150〜3000程度が好ましく、200〜2000程度がより好ましい。
前記(A)成分100部に対して前記(B)成分を0.1〜50部含み、かつ前記(C)成分を1〜100部含むことが好ましく、(B)成分を0.5〜40部含み、かつ(C)成分を5〜80部含むことがより好ましく、(B)成分を1〜30部含み、かつ(C)成分を10〜70部含むことがさらに好ましい。(A)成分に対する(B)成分および(C)成分の量が上記の範囲内のとき、折り曲げ性やプラズマ耐性が向上する傾向にある。
官能基当量から計算される(B)成分の官能基数xと(C)成分のエポキシ官能数yの比x/yが0.01〜0.5であることが好ましく、0.05〜0.4であることがより好ましく、0.1〜0.3であることがさらに好ましい。x/yが上記範囲内にあると熱硬化性樹脂組成物の保存安定性を良好となり、かつプラズマ耐性およびアルカリ処理耐性の向上する傾向にある。
[その他の成分]
熱硬化性樹脂組成物は、上記の(A)〜(C)成分に加えて、必要に応じて、下記の(D)成分、下記の(E)成分、及び溶媒等を含有していてもよい。熱硬化性樹脂組成物は、さらに、(A)成分以外の樹脂、光重合開始剤、充填剤、接着助剤、消泡剤、レベリング剤、着色剤、重合禁止剤等の各種添加剤を含有していてもよい。添加剤の含有量は適宜設定すればよい。
<(D)リン系難燃剤>
硬化膜への難燃性付与等を目的として、熱硬化性組成物は、(D)成分としてリン系難燃剤を含有していてもよい。リン系難燃剤とは、分子内に少なくとも1つのリン元素を含有する化合物であり、赤リン、縮合リン酸エステル系化合物、環状有機リン系化合物、ホスファゼン系化合物、リン含有(メタ)アクリレート系化合物、リン含有エポキシ系化合物、リン含有ポリオール系化合物、リン含有アミン系化合物、ポリリン酸アンモニウム、メラミンリン酸塩、ホスフィン酸金属塩等が挙げられる。中でも、硬化膜に優れた難燃性を付与できると共に、硬化膜からの難燃剤のブリードアウトが少なく、接点障害や工程汚染を抑制できることから、ホスフィン酸金属塩が好ましい。ホスフィン酸金属塩の中でも、高い難燃性が得られることからアルミニウム塩が好ましく、トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスメチルエチルホスフィン酸アルミニウム等が特に好ましい。 熱硬化性組成物がリン系難燃剤を含む場合、その含有量は、全固形分100重量部に対して、好ましくは1〜80重量部、さらに好ましくは5〜50重量部、特に好ましくは10〜30重量部である。リン系難燃剤の含有量が上記範囲内であれば、熱硬化性樹脂組成物の塗布性を良好に保ち、硬化膜に難燃性及び絶縁信頼性を付与できると共に、硬化膜の耐折れ性の低下や難燃剤のブリードアウトを抑制できる。
<(E)有機球状ビーズ>
熱硬化性組成物は、(E)成分として球状有機ビーズを含有することができる。球状有機ビーズとは、炭素原子を含むポリマーの球状粒子であり、楕円状のものも含まれる。球状有機ビーズとしては、ポリメタクリル酸メチル系球状有機ビーズ、架橋ポリメタクリル酸メチル系球状有機ビーズ、架橋ポリメタクリル酸ブチル系球状有機ビーズ、架橋アクリル系球状有機ビーズ、アクリルコポリマー系球状有機ビーズ、架橋スチレン系球状有機ビーズ、架橋ポリアクリル酸エステル系有機ビーズ、ナイロン系球状有機ビーズ、シリコーン系球状有機ビーズ、架橋シリコーン系球状有機ビーズ、架橋ウレタン系球状有機ビーズ等が挙げられる。中でも、特に分子内にウレタン結合を含有する架橋ウレタンを含む架橋ウレタン系球状有機ビーズを用いることが、硬化膜の柔軟性向上及び硬化膜に起因する基板の反り低下の観点から好ましい。球状有機ビーズは、表面が親水性又は疎水性のシリカで被覆されていてもよい。
球状有機ビーズの平均粒子径は、例えば0.05〜20μm程度である。粒子径の大きいビーズは絶縁不良の原因となるため、分級された球状有機ビーズを用いることが好ましい。具体的には、粒子径が15μm以下である個数割合が99.99%以上であることが好ましい。粒子径は、レーザー回折/散乱式の粒子径分布測定装置(例えば株式会社堀場製作所製の型番LA−950V2)により測定でき、体積基準のメジアン径(積算分布値50%に対する粒子径)を平均粒子径とする。
熱硬化性組成物が球状有機ビーズを含む場合、その含有量は、全固形分100重量部に対して、好ましくは1〜80重量部、さらに好ましくは5〜50重量部、特に好ましくは10〜30重量部である。球状有機ビーズの含有量が上記範囲内であれば、充填効果により、硬化膜の応力緩和効果や破壊靱性の向上により柔軟性が向上し、硬化膜に起因する基板の反りが低下する傾向がある。
硬化膜中に球状ビーズが含まれていることは、断面の走査型電子顕微鏡観察(例えば倍率1000倍)により確認できる。反射電子検出(組成モード)では、観察領域の平均原子番号の差がコントラストに強く反映されるため、重元素が存在する領域が明るく(白く)、軽元素が存在する領域が暗く(黒く)観察される。そのため、炭素、水素、酸素、窒素等の軽元素から構成される有機球状ビーズは、暗い(黒い)円形領域として観察される。
<溶媒>
熱硬化性樹脂組成物は、さらに溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、上記(A)〜(C)成分を溶解できるものを特に制限なく用いることができる。溶媒としては、スルホキシド類、ホルムアミド類、アセトアミド類、ピロリドン類、ホスホルアミド類、ラクトン類、エーテル類、アセテート類等が挙げられる。熱硬化性樹脂組成物には、各成分の希釈用溶媒がそのまま含まれていてもよい。
[熱硬化性樹脂組成物の調製]
熱硬化性樹脂組成物の調製方法は特に限定されず、上記の(A)〜(C)成分、及び必要に応じてその他の添加剤等を混合すればよい。熱硬化性樹脂組成物組成物中に粒子を均一に分散させるために、3本ロールミル等を用いてもよい。
[熱硬化性樹脂組成物を用いた硬化膜の形成]
本発明の硬化膜の一実施形態は、上記熱可塑性樹脂組成物の熱硬化膜からなる。例えば、熱硬化性樹脂組成物を基板上に塗布して加熱硬化することにより硬化膜が形成される。フレキシブルプリント基板の金属配線形成面上に硬化膜を形成することにより、硬化膜付きフレキシブルプリント基板が得られる。フレキシブルプリント基板は、例えば、ポリイミドフィルムと銅層とを張り合わせた銅張積層板を用いて、サブトラクト法により銅層をパターニングして回路(金属配線)形成をすることにより得られる。ポリイミドフィルム等の可撓性基板上にセミアディティブ法により金属配線を形成してもよい。金属配線の表面は粗化処理されていてもよい。金属配線の表面には、防錆処理、プライマー処理等が施されていてもよい。
基板への熱硬化性樹脂組成物の塗布は、スクリ−ン印刷、ローラーコーティング、カ−テンコーティング、スプレーコーティング、スピンナーを利用した回転塗布等から選択すればよい。膜厚制御のし易さからスクリーン印刷が好ましい。塗布厚みは、配線厚み等を考慮して決定され、例えば硬化後の厚みが2〜50μm程度となるように塗布厚みを設定すればよい。塗布膜を加熱することにより、硬化膜が得られる。配線等の酸化を防ぎ、配線と基材との密着性を低下させないことを目的として低温で加熱して硬化させることが望まれている。加熱硬化時の最終加熱温度は100℃以上250℃以下が好ましく、120℃以上200℃以下がより好ましく、130℃以上190℃以下が特に好ましい。
以下に記載する合成例1では、酸性官能基を有するポリマー(A)−1を重合した。合成例1で得られた溶液及びポリマーの特性は、以下の方法により評価した。
<固形分濃度>
JIS K 5601−1−2に従って測定を行った。乾燥条件は170℃×1時間とした。
<ポリマーの重量平均分子量>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、下記条件で測定を行った。
使用装置:東ソー HLC−8220GPC相当品
カラム:東ソー TSK gel Super AWM−H(6.0mm I.D.×15cm)×2本
ガードカラム:東ソー TSK guard column Super AW−H
溶離液:30mM LiBr + 20mM H3PO4 in DMF
流速:0.6mL/min
カラム温度:40℃
検出条件:RI:ポラリティ(+)、レスポンス(0.5sec)
試料濃度:約5mg/mL
分子量標準品:PEG(ポリエチレングリコール)
<ポリマーの酸価>
JIS K 5601−2−1に従って測定を行った。
(合成例1)
攪拌機、温度計、滴下漏斗、及び窒素導入管を備えた反応容器に、重合用溶媒としてメチルトリグライム35.00g及びノルボルネンジイソシアネート10.31g(0.050モル)を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃に加温して溶解させた。この溶液に、ポリカーボネートジオール50.00g(0.025モル)をメチルトリグライム35.00gに溶解した溶液を1時間かけて滴下漏斗から滴下し、80℃で2時間加熱攪拌した後、3,3’,4,4’−オキシジフタル酸二無水物15.51g(0.050モル)を添加し、190℃に昇温して3時間加熱撹拌した。その後、80℃に冷却して、純水3.60g(0.200モル)を添加し、110℃に昇温して5時間加熱還流し、分子内にカルボキシル基を含有するウレタンイミドポリマーの溶液(A)−1を得た。溶液の固形分濃度は53%、ポリマーの重量平均分子量は15,200、酸価は33mgKOH/gであった。
[実施例1〜14、比較例1〜8]
<熱硬化性樹脂組成物の調製>
一般的な攪拌翼を備える攪拌装置で表1に示す配合で組成物を混合し、3本ロールミルで2回パスして均一な溶液として熱硬化性樹脂組成物を調製した。
<硬化膜の評価>
(i)折り曲げ評価
厚み25μmのポリイミドフィルム(株式会社カネカ製 商品名:アピカル25NPI)上に、熱硬化性樹脂組成物を、ベーカー式アプリケーターを用いて最終乾燥厚みが20μmになるように100mm×100mmの面積に流延・塗布した。150℃のオーブンで30分加熱して硬化させ、ポリイミドフィルム上に熱硬化性樹脂組成物の硬化膜を形成した。
実施例13〜14および比較例7〜8については、塗布した後に80℃のオーブンで20分加熱して乾燥させた後、DEEP UV LAMPを用いて積算光量100mJ/cmの紫外線を照射して光硬化を行ってから150℃のオーブンで30分加熱して硬化させ、ポリイミドフィルム上に熱硬化性樹脂組成物の硬化膜を形成した。
硬化膜が形成されたポリイミドフィルムを10mm×50mmの面積に切り出して、曲率半径R=1.0mmで180°に5回折り曲げて塗膜を目視で確認してクラックの確認を行った。
A:硬化膜の折り曲げ部分にクラックが無いもの。
B:硬化膜の折り曲げ部分の一部にクラックがあるもの。
C:硬化膜の折り曲げ部分の全面にクラックがあるもの。
(ii)アルカリ耐性評価
厚み35μmの銅箔上に、上記(i)と同様の方法で厚み20μmの硬化膜を形成した。硬化膜が形成された銅箔を30mm×30mmの面積に切り出して、40度に加熱した5規定水酸化ナトリウム水溶液に10分間浸漬させた後、小型スプレーエッチング装置(YMC製 SS−3S−TF)を用いて30℃に加熱した5規定水酸化ナトリウム水溶液を5分間スプレー噴射した。その後イオン交換水で洗浄を行い、100℃のオーブンで20分間乾燥させた。得られた銅箔上の硬化膜の厚みを測定し、アルカリ処理前後の膜厚差を算出した。
A:膜厚差0.0〜0.5μm未満
B:膜厚差0.5〜1.0μm未満
C:膜厚差1.0〜1.5μm未満
D:膜厚差1.5μm以上
(iii)プラズマ耐性
厚み35μmの銅箔上に、上記(i)と同様の方法で厚み20μmの硬化膜を形成した。硬化膜が形成された銅箔をプラズマクリーナー(SAMCO製 PC−1100)を用いてプラズマ処理を行った。得られた銅箔上の厚みを測定し、プラズマ処理前後の膜厚差を算出した。
A:膜厚差0.0〜0.3μm未満
B:膜厚差0.3〜0.6μm未満
C:膜厚差0.6〜1.0μm未満
D:膜厚差1.0μm以上
(iv)解像性
実施例13〜14および比較例7〜8について、厚み25μmのポリイミドフィルム上に、上記(i)と同様の方法で、厚み20μmの硬化膜を形成した。得られた硬化膜の表面観察を行い判定した。ただし、露光は、ライン幅/スペース幅=100μm/100μmのネガ型フォトマスクを置いて露光した。
〇:ポリイミドフィルム表面に顕著な線太りや現像残渣無くライン幅/スペース幅=100/100μmの感光パターンが描けているもの。
×:ポリイミドフィルム表面にライン幅/スペース幅=100/100μmの感光パターンが描けていないもの。
実施例及び比較例の熱硬化性樹脂組成物の配合ならびに硬化膜の評価結果を、表1に一覧で示す。表中の各成分の数値は、溶剤であるメチルトリグライムを100重量部としたときの固形分配合量(重量比)であり、各成分の詳細は以下に示す通りである。溶剤であるメチルトリグライムの量は、ポリマー溶液に含まれる溶媒なども含めた全溶媒量である。
<1>根上工業株式会社製 商品名:UMA−1−MTM−50;ウレタンイミド構造含有樹脂(酸価58mgKOH/g)
<2>日本化薬株式会社製 商品名:ZAR−2000;フェノールノボラックを出発原料とした骨格を有する樹脂(酸価98mgKOH/g)
<3>日本化薬株式会社製 商品名:TCR−1310H;フェノールノボラックを出発原料とした骨格を有する樹脂(酸価98mgKOH/g)
<4>楠本化成製、商品名:NeoCryl A6092;カルボキシル基含有アクリル樹脂(酸価56mgKOH/g)
<5>東洋紡製、商品名:バイロン237;リン含有ポリエステル樹脂(カルボキシル基非含有)
<6>東洋紡製、商品名:バイロマックスHR12N2;カルボキシル基非含有ポリアミドイミド樹脂
<7>SABIC製、商品名:BISDA 2000;ビスフェノールA型酸二無水物 (分子量520.49g/mol)
<8>DIC製、商品名:Epiclon#B−4400;酸二無水物(分子量264.24g/mol)
<9>三菱化学株式会社製 商品名:jER828US;ビスフェノールA型エ
ポキシ樹脂(平均分子量370、エポキシ当量190)
<10>三菱化学株式会社製 商品名:jER872;ダイマー酸変性型エポ
キシ樹脂(エポキシ当量650)
<11>日本化薬株式会社製 商品名:DPHA ラジカル重合性化合物(ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート)の商品名
<12>BASF社製 商品名:OXE−02;オキシムエステル
<13>根上工業株式会社製 商品名:アートパール TK−900TRK;架
橋ウレタン系球状有機ビーズ
<14>クラリアントケミカルズ株式会社製 商品名:Exolit OP
935;ジエチルホスフィン酸アルミニウム
<15>共栄社化学株式会社製 商品名:フローレン AC−2000;ブ
タジエン系消泡剤
実施例1〜4は本発明の要件を満たすものであって、折り曲げ性、プラズマ耐性およびアルカリ処理耐性に優れていた。樹脂にウレタン、イミドまたはノボラック構造を有さない比較例1〜2では、プラズマ耐性およびアルカリ処理耐性が劣っていたまた、カルボキシル基を有さない比較例2〜3では、プラズマ耐性が劣っていた。これらの結果から、カルボキシル基を有し、かつウレタン、イミドまたはノボラック構造を有す樹脂を用いると、折り曲げ性とプラズマ耐性およびアルカリ処理耐性がいずれも良好になることがわかる。
実施例5〜8は本発明の要件を満たすものであって、折り曲げ性、プラズマ耐性およびアルカリ処理耐性に優れていた。この中で、プラズマ耐性において、多官能カルボン酸に比べて酸無水物がより優れており、酸二無水物ではさらに優れていた。これは(C)成分に含まれるエポキシ基との反応性が影響しているものと考えられる。多官能フェノール化合物を用いた比較例4では、プラズマ耐性およびアルカリ処理耐性が劣っていた。フェノールとエポキシ基との反応性が乏しいことが影響しているものと考えられる。
実施例9〜14は本発明の要件を満たすものであって、折り曲げ性、プラズマ耐性およびアルカリ処理耐性に優れていた。(B)成分や(C)成分を含まない比較例4〜8ではプラズマ耐性およびアルカリ処理耐性が劣っていた。これらの結果から、樹脂に加え多価カルボン酸化合物およびその無水物とエポキシ化合物を加えることでプラズマ耐性およびアルカリ処理耐性が良好になることがわかる。
実施例14は本発明の要件を満たすものであり、かつ光硬化性を有するが、折り曲げ性、プラズマ耐性およびアルカリ処理耐性に優れていた。光硬化性を有さない実施例1〜13と比べるとわずかに折り曲げ性が劣っていた。光硬化性を有し、(B)成分や(C)成分を含まない比較例7〜8ではプラズマ耐性およびアルカリ処理耐性が劣っていた。これらの結果から、光硬化性を有する系においても本発明の要件を満たすことで折り曲げ性とプラズマ耐性およびアルカリ処理耐性がいずれも良好になることがわかる。
Figure 2020152808

Claims (10)

  1. (A)カルボキシル基を有する樹脂、(B)多価カルボン酸またはその無水物構造を有する分子量が100以上1000以下の化合物、および(C)多官能エポキシ化合物を含有し、前記(A)成分がウレタン、イミドまたはノボラックから選ばれる構造を有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
  2. 前記(A)成分が、酸価5〜200mgKOH/gであることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  3. 前記(A)成分が、ウレタン構造を有することを特徴とする請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  4. 前記(A)成分が、ウレタンイミド樹脂樹脂であることを特徴とする請求項3に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  5. 前記(B)成分が、テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸二無水物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
  6. 前記 (B)成分がビスフェノールA二無水物である請求項5に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  7. 前記(A)成分100部に対して前記(B)成分を0.1〜50部含み、かつ前記(C)成分を1〜100部以下含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
  8. 請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物の内、官能基当量から計算される(B)成分の官能基数xと(C)成分のエポキシ官能数yの比x/yが0.01〜0.5であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物である硬化膜。
  10. 金属配線上に、請求項9に記載の硬化膜を備えた硬化膜付きフレキシブルプリント基板。
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