JP2005017581A - 熱現像感光材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】感度が高く、しかも、文字線巾の現像時の湿度依存性が小さく、また高湿環境下で処理されても黒ポツがあまり発生しない熱現像感光材料を提供することにある。
【解決手段】支持体上に、(1)造核剤を含有し感光色素を含有しない感光性乳剤層と、(2)感光色素を含有し造核剤を含有しない感光性乳剤層とを有することを特徴とする熱現像感光材料。
【選択図】 なし
【解決手段】支持体上に、(1)造核剤を含有し感光色素を含有しない感光性乳剤層と、(2)感光色素を含有し造核剤を含有しない感光性乳剤層とを有することを特徴とする熱現像感光材料。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、造核剤と感光色素を含有する熱現像感光材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から広範囲に用いられているハロゲン化銀感光材料は、その優れた写真特性により、より広範囲かつ高品質な素材として画像形成分野に利用されているが、画像を形成するために現像、定着、水洗、乾燥というプロセスが必要であり、しかも現像工程が湿式であるため、作業が煩雑であるという欠点があった。そのため、現像工程を熱処理で行う熱現像感光材料が開発、実用化され、近年、印刷業界あるいは医用業界を中心に急速に普及してきている。
【0003】
かかる技術として、支持体上に有機銀塩、ハロゲン化銀粒子及び還元剤を有する熱現像感光材料が知られている。この熱現像感光材料は溶液系処理薬品を一切使用しないため、より簡便なシステムをユーザーに提供することができる。
【0004】
特に印刷製版分野において、画像形成感光材料の湿式処理に伴う廃液が、作業上の問題になっており、近年では環境保全、省スペースの観点からも処理廃液の減量が強く望まれている。
【0005】
しかし、熱現像感光材料(以下、単に感光材料ともいう)は極端に湿度の影響を受けやすく、湿度により写真性能が著しく変化する。特に冬場の低湿期には、保存されている間に感光材料中の水分量が少なくなり現像反応が進みにくく濃度が出なくなるという問題があった。
【0006】
従来の技術としては塩化ビニリデンの下引きを行い湿度の影響を少なくする技術(例えば、特許文献1、2参照)は知られているが環境上問題がある。また、湿度の影響を少なくするため保護層を厚くしたり(例えば、特許文献3参照)、乾燥温度を変えたりする技術(例えば、特許文献4参照)も知られているが、実用的には不十分な効果しか得られていない。
【0007】
また、特に写真製版用、特にスキャナー、イメージセッター用熱現像感光材料において、文字線幅の現像湿度依存性が小さく、画像保存性の良好な超硬調熱現像感光材料を提供する技術(例えば、特許文献5参照)、高活性な還元剤を使いつつ温湿度環境依存性を改良した熱現像感光材料を提供する技術(例えば、特許文献6参照)、高感度で、未現像時の保存性に優れ、文字線幅の現像時の温度及び湿度依存性の小さい写真製版用途に最適な写真特性を示す熱現像感光材料を提供する技術(例えば、特許文献7参照)、更には高感度で、低カブリ、高Dmax(最高濃度)で、保存時のカブリの上昇が少なく、現像時の温湿度依存性が小さい熱現像感光材料を提供する技術(例えば、特許文献8参照)が公開されている。しかしながら、いずれの技術も湿度に対する依存性を実用上充分なまでに改善するには到っていない。
【0008】
更に、熱現像感光材料は高湿下で処理されると、未露光部に発生する砂状のカブリ、即ち黒ポツ故障耐性に問題があった。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−272742号公報
【0010】
【特許文献2】
特開2001−287298号公報
【0011】
【特許文献3】
特開2001−249425号公報
【0012】
【特許文献4】
特開2002−55413号公報
【0013】
【特許文献5】
特開2002−55409号公報
【0014】
【特許文献6】
特開2002−90935号公報
【0015】
【特許文献7】
特開2002−229153号公報
【0016】
【特許文献8】
特開2002−258436号公報
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、感度が高く、しかも、文字線巾の現像時の湿度依存性が小さく、また高湿環境下で処理されても黒ポツがあまり発生しない熱現像感光材料を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、鋭意検討した結果、本発明の目的は下記構成を採ることにより達成されることがわかった。
【0019】
〔1〕 支持体上に、(1)造核剤を含有し感光色素を含有しない感光性乳剤層と、(2)感光色素を含有し造核剤を含有しない感光性乳剤層とを有することを特徴とする熱現像感光材料。
【0020】
〔2〕 〔1〕に記載の熱現像感光材料において、更に造核剤を含有する非感光性層を有することを特徴とする熱現像感光材料。
【0021】
本発明の熱現像感光材料においては、支持体上に、(1)造核剤を含有し感光色素を含有しない感光性乳剤層と、(2)感光色素を含有し造核剤を含有しない感光性乳剤層の少なくとも2層の感光性乳剤層を有する構成を採る。
【0022】
これらの感光性乳剤層の間では、その境界において本発明の効果をあまり阻害しない程度であれば、感光色素と造核剤が混ざり合ってもよい。しかし、その混合比率は全体の添加量に対する流失分が、10質量%以下に止めるのが望ましい。また隣接する感光層の影響を防止したければ、その界面に中間層を設けても良い。
【0023】
また、造核剤を含有し感光色素を含有しない感光性乳剤層と、感光色素を含有し造核剤を含有しない感光性乳剤層の層順もどちらが上層であってもよい。
【0024】
ここにおいて、感光色素とは、一般的に広く当技術分野において用いられるもので、ハロゲン化銀を光学増感できるものであればよい。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明する。
【0026】
本発明における造核剤とは、特に限定されるものではないが、下記一般式(A)で表される造核剤及び一般式(B)で表される造核剤を、感光層または隣接層に含有させるのが好ましい。
【0027】
【化1】
【0028】
(式中、Wは電子吸引性基、Dは電子供与性基、Hは水素原子を表す。なお、同一炭素原子上にあるWまたはDで表される基は、互いに環状構造を形成していてもよく、またWまたはDは、トランス構造及びシス構造のどちらも可能な場合、どちらの構造をとってもよい。)
本発明の一般式(A)及び一般式(B)で表される造核剤について説明する。
【0029】
式中、Wは電子吸引性基、Dは電子供与性基、Hは水素原子を表す。なお、同一炭素原子上にあるWまたはDで表される基は、互いに環状構造を形成していてもよく、またWまたはDは、トランス構造及びシス構造のどちらも可能な場合、どちらの構造をとってもよい。
【0030】
Wの表す電子吸引性基とは、ハメットの置換基定数σpが正の値をとりうる置換基のことである。具体的には、置換アルキル基(ハロゲン置換アルキル等)、置換アルケニル基(シアノビニル等)、置換・未置換のアルキニル基(トリフルオロメチルアセチレニル、シアノアセチレニル等)、置換アリール基(シアノフェニル等)、置換・未置換のヘテロ環基(ピリジル、トリアジニル、ベンゾオキサゾリル等)、ハロゲン原子、アシル基(アセチル、トリフルオロアセチル、ホルミル等)、チオアセチル基(チオアセチル、チオホルミル等)、オキサリル基(メチルオキサリル等)、オキシオキサリル基(エトキサリル等)、チオオキサリル基(エチルチオオキサリル等)、オキサモイル基(メチルオキサモイル等)、オキシカルボニル基(エトキシカルボニル等)、カルボキシル基、チオカルボニル基(エチルチオカルボニル等)、カルバモイル基(メチルカルバモイル、フェニルカルバモイル等)、チオカルバモイル基(エチルチオカルバモイル、フェニルチオカルバモイル等)、スルホニル基(メタンスルホニル等)、スルフィニル基(メタンスルフィニル等)、オキシスルホニル基(エトキシスルホニル等)、チオスルホニル基(エチルチオスルホニル等)、スルファモイル基(スルファモイル、メチルスルファモイル等)、オキシスルフィニル基(メトキシスルフィニル等)、チオスルフィニル基(メチルチオスルフィニル等)、スルフィナモイル基(メチルスルフィナモイル等)、スフィナモイル基(メチルスルフィナモイル等)、ホスホリル基(ビス(エトキシ)−ホスフォリル等)、シアノ基、ニトロ基、イミドイル基(アセトイミドイル、N−フェニルアセトイミドイル等)、N−アシルイミドイル基(N−アセチルイミドイル等)、N−スルホニルイミドイル基(N−メタンスルホニルイミドイル等)、ジシアノエチレン基(2,2−ジシアノエチレン等)、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、ピリリウム基、インモニウム基が挙げられるが、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、インモニウム基等が環を形成したヘテロ環状のものも含まれる。σp値として0.30以上の置換基が特に好ましい。
【0031】
Dの表す電子供与性基とは、ハメットの置換基定数σpが負の値をとりうる置換基のことである。電子供与性基の具体例としては、例えば、ヒドロキシル基(またはその塩)、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基またはヘテロ環アミノ基、ヘテロ環残基、シクロアルキルオキシ基、シクロアルキルチオ基、シクロアルキルアミノ基またはシクロアルケニル基、σpが負の値を取るヘテロ環残基またはこれらの電子供与性基で置換されたフェニル基等が挙げられる。
【0032】
電子供与性のヘテロ環の代表例としては、「Substituent Constants for Correlation Analysis in Chemistry and Biology(Corwin Hansch and Albert Leo著)」の第66〜339頁に記載のσpが負のヘテロ環であり、ヘテロ環の具体的な例としてはピペリジニル基、ピロリジニル基、モルフォリノ基、ピペラジニル基、3−チエニル基、2−フリル基、3−フリル基、2−ピロロ基等が挙げられる。好ましくは3−チエニル基、2−フリル基または3−フリル基である。これらのヘテロ環は、σpが0または正にならない範囲で任意の置換基を有してもよい。
【0033】
また、シクロアルキルオキシ基、シクロアルキルチオ基またはシクロアルキルアミノ基の具体的な例としては、シクロプロピルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロプロピルチオ基、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基、シクロヘプチルチオ基、シクロプロピルメチルアミノ基、シクロペンチルメチルアミノ基、シクロヘキシルメチルアミノ基、シクロヘプチルメチルアミノ基等が挙げられる。好ましくはシクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロペンチルチオ基及びシクロヘキシルチオ基である。シクロアルケニル基の具体的な例としては、シクロプロぺニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基及びシクロヘプテニル基等が挙げられる。好ましくは、シクロペンテニル基またはシクロヘキセニル基である。
【0034】
ハメット則は、ベンゼン誘導体の反応または平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論じるために1935年に、L.P.Hammetにより提唱された経験則であるが、これは今日では妥当性が認められている。
【0035】
ハメット則により求められた置換基定数にはσp値とσm値とがあり、これらの値は多くの一般的な文献に記載があり、「Lange’s Handbookof Chemistry(J.A.Dean著)」第12版、1979年(Mc Graw−Hill)や「化学の領域増刊」、第122号、第96〜103頁、1979年(南光堂)、Chemical Reviews、第91巻、第165〜195頁、1991年に詳しく述べられている。本発明における電子吸引性基及び電子供与性基は、σp値により規定しているが、上記の成書に記載の文献既知の値がある置換基にのみ限定されるものではない。
【0036】
以下に、一般式(A)または一般式(B)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に列挙する化合物において、ケト−エノール型互変異性体またはシス−トランス型幾何異性体が存在する場合には、その両方を表すものとする。
【0037】
【化2】
【0038】
【化3】
【0039】
【化4】
【0040】
一般式(A)、(B)で表される化合物は公知の方法により容易に合成することができる。一般式(A)、(B)で表される化合物は、1種のみ用いても、2種以上を併用してもよい。
【0041】
また上記一般式(A)、(B)で表される化合物の他に、下記一般式(H)で表される化合物を併用して用いてもよい。
【0042】
【化5】
【0043】
式中、A0はそれぞれ置換基を有してもよい脂肪族基、芳香族基、複素環基または−G0−D0基を、B0はブロッキング基を表し、A1、A2はともに水素原子、または一方が水素原子で他方はアシル基、スルホニル基またはオキザリル基を表す。ここで、G0は−CO−基、−COCO−基、−CS−基、−C(=NG1D1)−基、−SO−基、−SO2−基または−P(O)(G1D1)−基を表し、G1は単なる結合手、−O−基、−S−基または−N(D1)−基を表し、D1は脂肪族基、芳香族基、複素環基または水素原子を表し、分子内に複数のD1が存在する場合、それらは同じであっても異なってもよい。D0は水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基を表す。
【0044】
一般式(H)において、A0で表される脂肪族基は好ましくは炭素数1〜30のものであり、特に炭素数1〜20の直鎖、分岐または環状のアルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、t−ブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基が挙げられ、これらは更に適当な置換基(例えばアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホキシ基、スルホンアミド基、スルファモイル基、アシルアミノ基、ウレイド基等)で置換されていてもよい。
【0045】
一般式(H)において、A0で表される芳香族基は、単環または縮合環のアリール基が好ましく、例えばベンゼン環またはナフタレン環が挙げられ、A0で表される複素環基としては、単環または縮合環で窒素、硫黄、酸素原子から選ばれる少なくとも一つのヘテロ原子を含む複素環が好ましく、例えばピロリジン環、イミダゾール環、テトラヒドロフラン環、モルホリン環、ピリジン環、ピリミジン環、キノリン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、チオフェン環、フラン環が挙げられ、A0で表される−G0−D0基において、G0は−CO−基、−COCO−基、−CS−基、−C(=NG1D1)−基、−SO−基、−SO2−基または−P(O)(G1D1)−基を表す。G1は単なる結合手、−O−基、−S−基または−N(D1)−基を表し、D1は脂肪族基、芳香族基、複素環基または水素原子を表し、分子内に複数のD1が存在する場合、それらは同じであっても異なってもよい。D0は水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基を表し、好ましいD0としては水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基等が挙げられる。A0の芳香族基、複素環基及び−G0−D0基は置換基を有していてもよい。A0として特に好ましいものはアリール基及び−G0−D0基である。
【0046】
また、一般式(H)において、A0は耐拡散基またはハロゲン化銀吸着基を少なくとも一つ含むことが好ましい。耐拡散基としてはカプラー等の不動性写真用添加剤にて常用されるバラスト基が好ましく、バラスト基としては写真的に不活性であるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、アルキルフェノキシ基等が挙げられ、置換基部分の炭素数の合計は8以上であることが好ましい。
【0047】
一般式(H)において、ハロゲン化銀吸着促進基としてはチオ尿素、チオウレタン基、メルカプト基、チオエーテル基、チオン基、複素環基、チオアミド複素環基、メルカプト複素環基、あるいは特開昭64−90439号公報に記載の吸着基等が挙げられる。
【0048】
一般式(H)において、B0はブロッキング基を表し、好ましくは−G0−D0基であり、G0は−CO−基、−COCO−基、−CS−基、−C(=NG1D1)−基、−SO−基、−SO2−基または−P(O)(G1D1)−基を表す。好ましいG0としては−CO−基、−COCO−基が挙げられ、G1は単なる結合手、−O−基、−S−基または−N(D1)−基を表し、D1は脂肪族基、芳香族基、複素環基または水素原子を表し、分子内に複数のD1が存在する場合、それらは同じであっても異なってもよい。D0は水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基を表し、好ましいD0としては水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基等が挙げられる。A1、A2はともに水素原子、または一方が水素原子で他方はアシル基(アセチル基、トリフルオロアセチル基、ベンゾイル基等)、スルホニル基(メタンスルホニル基、トルエンスルホニル基等)、またはオキザリル基(エトキザリル基等)を表す。
【0049】
上記一般式(H)で表される具体的化合物としては下記のものを挙げることができる。
【0050】
【化6】
【0051】
【化7】
【0052】
一般式(A)、(B)で表される化合物は、水または適当な有機溶媒、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、フッ素化アルコール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブ等に溶解して用いることができる。また、既によく知られている乳化分散法によって、ジブチルフタレート、トリクレジルホスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレート等のオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノン等の補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製して用いることができる。あるいは固体分散法として知られている方法によって、水等の適当な溶媒中にボールミル、コロイドミル、あるいは超音波によって分散し用いることができる。
【0053】
一般式(A)、(B)で表される化合物の添加量は、銀1モルに対して0.1〜0.001モルが好ましく、0.05〜0.005モルがより好ましい。なお、中間層に含有される量は0.005モル以上が好ましい。
【0054】
本発明の熱現像感光材料の感光層に含有される有機銀塩は還元可能な銀源であり、還元可能な銀イオン源を含有する有機酸及びヘテロ有機酸の銀塩、特に長鎖(10〜30、好ましくは5〜25の炭素原子数)の脂肪族カルボン酸及び含窒素複素環カルボン酸が好ましい。配位子が、4.0〜10.0の銀イオンに対する総安定定数を有する有機または無機の銀塩錯体も有用である。好適な銀塩の例は、Research Disclosure(以下RD)第17029及び29963に記載されており、次のものがある:有機酸の塩(例えば、没食子酸、シュウ酸、ベヘン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の塩);銀のカルボキシアルキルチオ尿素塩(例えば、1−(3−カルボキシプロピル)チオ尿素、1−(3−カルボキシプロピル)−3,3−ジメチルチオ尿素等);アルデヒドとヒドロキシ置換芳香族カルボン酸とのポリマー反応生成物の銀錯体(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒドのようなアルデヒド類とサリチル酸、ベンジル酸3,5−ジヒドロキシ安息香酸、5,5−チオジサリチル酸のようなヒドロキシ置換酸類);チオン類の銀塩または錯体(例えば、3−(2−カルボキシエチル)−4−ヒドロキシメチル−4−チアゾリン−2−チオン及び3−カルボキシメチル−4−メチル−4−チアゾリン−2−チオン);イミダゾール、ピラゾール、ウラゾール、1,2,4−チアゾール及び1H−テトラゾール、3−アミノ−5−ベンジルチオ−1,2,4−トリアゾール及びベンゾトリアゾールから選択される窒素酸と銀との錯体または塩;サッカリン、5−クロロサリチルアルドキシム等の銀塩;メルカプチド類の銀塩等が挙げられる。好ましい銀源はベヘン酸銀、アラキジン酸銀またはステアリン酸銀である。
【0055】
有機銀塩は、水溶性銀化合物と銀と錯形成する化合物を混合することにより得られるが、正混合法、逆混合法、同時混合法、特開平9−127643号公報に記載されているようなコントロールドダブルジェット法等が好ましく用いられる。例えば、有機酸にアルカリ金属塩(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)を加えて有機酸アルカリ金属塩ソープ(例えば、ベヘン酸ナトリウム、アラキジン酸ナトリウム等)を作製した後に、コントロールドダブルジェットにより、前記ソープと硝酸銀等を添加して有機銀塩の結晶を作製する。その際にハロゲン化銀粒子を混在させてもよい。
【0056】
本発明の熱現像感光材料の感光層に含有されるハロゲン化銀粒子は光センサーとして機能するものである。本発明においては、画像形成後の白濁を低く抑えるため、及び良好な画質を得るために平均粒子サイズが小さい方が好ましく、平均粒子サイズが好ましくは0.03μm以下、より好ましくは0.01〜0.03μmの範囲である。なお、本発明の熱現像感光材料のハロゲン化銀粒子は前記有機銀塩調製時に同時に作製されるか、または前記有機銀塩調製時にハロゲン化銀粒子を混在させて調製することにより、有機銀塩に融着した状態でハロゲン化銀粒子を形成させて微小粒子のいわゆるin situ銀とするのが好ましい。なお、上記ハロゲン化銀粒子の平均粒子径の測定方法は、電子顕微鏡により50000倍で撮影し、それぞれのハロゲン化銀粒子の長辺と短辺を実測し、100個の粒子を測定し、平均したものを平均粒径とする。
【0057】
ここで、上記粒子サイズとは、ハロゲン化銀粒子が立方体あるいは八面体のいわゆる正常晶である場合には、ハロゲン化銀粒子の稜の長さをいう。また、正常晶でない場合、例えば、球状、棒状、あるいは平板状の粒子の場合には、ハロゲン化銀粒子の体積と同等な球を考えたときの直径をいう。またハロゲン化銀粒子は単分散であることが好ましい。ここでいう単分散とは、下記式で求められる単分散度が40%以下をいう。更に好ましくは30%以下であり、特に好ましくは0.1〜20%となる粒子である。
【0058】
単分散度=(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)×100
本発明において、ハロゲン化銀粒子は平均粒径0.01〜0.03μmで、かつ単分散粒子であることがより好ましく、この範囲にすることで画像の粒状性も向上する。
【0059】
ハロゲン化銀粒子の形状については、特に制限はないが、ミラー指数〔100〕面の占める割合が高いことが好ましく、この割合が50%以上、更には70%以上、特に80%以上であることが好ましい。ミラー指数〔100〕面の比率は、増感色素の吸着における〔111〕面と〔100〕面との吸着依存性を利用したT.Tani;J.Imaging Sci.,29,165(1985)により求めることができる。
【0060】
またもう一つの好ましいハロゲン化銀粒子の形状は、平板粒子である。ここでいう平板粒子とは、投影面積の平方根を粒径rμmとして、垂直方向の厚みをhμmとした場合のアスペクト比=r/hが3以上のものをいう。その中でも好ましくは、アスペクト比が3以上、50以下である。また粒径は0.03μm以下であることが好ましく、更に0.01〜0.03μmが好ましい。これらの製法は米国特許第5,264,337号、同5,314,798号、同5,320,958号等の各明細書に記載されており、容易に目的の平板状粒子を得ることができる。本発明においてこれらの平板状粒子を用いた場合、更に画像の鮮鋭性も向上する。
【0061】
ハロゲン化銀粒子の組成としては特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、臭化銀、沃臭化銀、沃化銀の何れであってもよい。本発明に用いられる写真乳剤は、P.Glafkides著Chimie et Physique Photographique(Paul Montel社刊、1967年)、G.F.Duffin著 Photographic Emulsion Chemistry(The Focal Press刊、1966年)、V.L.Zelikman et al著 Making and Coating Photographic Emulsion(The Focal Press刊、1964年)等に記載された方法を用いて調製することができる。
【0062】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子には、照度不軌改良や階調調整のために、元素周期律表の6族から10族に属する金属のイオンまたは錯体イオンを含有することが好ましい。上記の金属としては、W、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Pt、Auが好ましい。
【0063】
ハロゲン化銀粒子は、ヌードル法、フロキュレーション法等、当業界で知られている方法の水洗により脱塩することができるが、本発明においては脱塩してもしなくてもよい。
【0064】
本発明におけるハロゲン化銀粒子は、化学増感されていることが好ましい。好ましい化学増感法としては、当業界でよく知られているように硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法、金化合物や白金、パラジウム、イリジウム化合物等の貴金属増感法や還元増感法を用いることができる。
【0065】
本発明においては熱現像感光材料の失透を防ぐためには、ハロゲン化銀粒子及び有機銀塩の総量は、銀量に換算して1m2当たり0.3〜2.2gであり、0.5〜1.5gがより好ましい。この範囲にすることで硬調な画像が得られる。また銀総量に対するハロゲン化銀の量は、質量比で50%以下、好ましくは25%以下、更に好ましくは0.1〜15%の間である。
【0066】
本発明におけるハロゲン化銀粒子は350〜450μmに光の極大吸収を有し、特に増感色素を有してなくてもよいが、必要に応じて含有させてもよい。
【0067】
本発明の熱現像感光材料に含有される好適な還元剤の例は、米国特許第3,770,448号、同第3,773,512号、同第3,593,863号等の各明細書及びRD第17029号及び同29963に記載されており、次のものが挙げられる。
【0068】
アミノヒドロキシシクロアルケノン化合物(例えば、2−ヒドロキシ−3−ピペリジノ−2−シクロヘキセノン);還元剤の前駆体としてアミノレダクトン類(reductones)エステル(例えば、ピペリジノヘキソースレダクトンモノアセテート);N−ヒドロキシ尿素誘導体(例えば、N−p−メチルフェニル−N−ヒドロキシ尿素);アルデヒドまたはケトンのヒドラゾン類(例えば、アントラセンアルデヒドフェニルヒドラゾン);ホスファーアミドフェノール類;ホスファーアミドアニリン類;ポリヒドロキシベンゼン類(例えば、ヒドロキノン、t−ブチル−ヒドロキノン、イソプロピルヒドロキノン及び(2,5−ジヒドロキシ−フェニル)メチルスルホン);スルフヒドロキサム酸類(例えば、ベンゼンスルフヒドロキサム酸);スルホンアミドアニリン類(例えば、4−(N−メタンスルホンアミド)アニリン);2−テトラゾリルチオヒドロキノン類(例えば、2−メチル−5−(1−フェニル−5−テトラゾリルチオ)ヒドロキノン);テトラヒドロキノキサリン類(例えば、1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン);アミドオキシム類;アジン類;脂肪族カルボン酸アリールヒドラザイド類とアスコルビン酸の組み合わせ;ポリヒドロキシベンゼンとヒドロキシルアミンの組み合わせ;レダクトン及び/またはヒドラジン;ヒドロキサン酸類;アジン類とスルホンアミドフェノール類の組み合わせ;α−シアノフェニル酢酸誘導体;ビス−β−ナフトールと1,3−ジヒドロキシベンゼン誘導体の組み合わせ;5−ピラゾロン類;スルホンアミドフェノール還元剤;2−フェニルインダン−1,3−ジオン等;クロマン;1,4−ジヒドロピリジン類(例えば、2,6−ジメトキシ−3,5−ジカルボエトキシ−1,4−ジヒドロピリジン);ビスフェノール類(例えば、ビス(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、ビス(6−ヒドロキシ−m−トリ)メシトール(mesitol)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、4,4−エチリデン−ビス(2−t−ブチル−6−メチルフェノール))、紫外線感応性アスコルビン酸誘導体;ヒンダードフェノール類;3−ピラゾリドン類。中でも特に好ましい還元剤は、ヒンダードフェノール類である。
【0069】
本発明の熱現像感光材料の感光層、非感光層にはバインダーを用いる。用いられるバインダーは親水性バインダー(水に溶解するバインダーもしくはラテックス類)または疎水性バインダー(有機溶剤に溶解するバインダー)の何れでもよいが、各層のバインダーが互いに同一の溶剤系に溶解するバインダーであるのが好ましく、例えば感光層、中間層、保護層の各層のバインダーが何れも有機溶剤系バインダーであるか、または親水性バインダーであるのが好ましい。
【0070】
各層に用いられるバインダーは透明または半透明で、一般に無色であり、天然ポリマーや合成モノポリマー及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体となるものが用いられる。上記バインダーの具体例としては、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、デンプン等の水溶性バインダー、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)等の疎水性バインダー、好ましくはポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸、ポリウレタン等の疎水性バインダー、特にはポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル等の疎水性バインダー、及びそれらのバインダー樹脂のモノマーを乳化重合法または懸濁重合法等により水中で重合して得られるラテックス等が挙げられる。
【0071】
疎水性バインダーを溶解するための主溶媒としては、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン)ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブ等が好ましく用いられる。
【0072】
本発明の熱現像感光材料は、一般に熱現像感光材料に用いられるカブリ防止剤、色調剤、硬膜剤、酸化防止剤、安定化剤、可塑剤、被覆助剤、フィルター染料、マット剤、滑り剤、塗布助剤、界面活性剤等を用いてもよい。
【0073】
本発明で用いられる支持体は、現像処理後に所定の光学濃度を得るため及び現像処理後の画像の変形を防ぐために、プラスチックフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ナイロン、セルローストリアセテート、ポリエチレンナフタレート)であることが好ましい。
【0074】
その中でも好ましい支持体としては、ポリエチレンテレフタレート及びシンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体を含むプラスチックの支持体が挙げられる。支持体の厚みとしては50〜300μm程度、好ましくは70〜180μmである。
【0075】
また熱処理したプラスチック支持体を用いることもできる。採用するプラスチックとしては、前記のプラスチックが挙げられる。支持体の熱処理とはこれらの支持体を製膜後、感光層、非感光層、またはその他の形成層が塗布されるまでの間に、支持体のガラス転移点より30℃以上高い温度で、好ましくは35℃以上高い温度で、更に好ましくは40℃以上高い温度で加熱することがよい。但し、支持体の融点を超えた温度に加熱することは支持体の強度の均一性を損い、好ましくない。
【0076】
また、本発明においては帯電性を改良するために金属酸化物または導電性ポリマー等の導電性化合物を構成層中に含ませることができる。これらはいずれの層に含有させてもよいが、好ましくは下引層、バッキング層、銀感光層と下引の間の層等である。
【0077】
感光層、非感光層の塗布方式としては、リバースロール、グラビアロール、エアドクターコータ、ブレードコータ、エアナイフコータ、スクイズコータ、含浸コータ、ワイヤーバーコータ、トランスファロールコータ、キスコータ、キャストコータあるいはスプレーコータ、エクストルージョンコータがあるが、エクストルージョン方式のエクストルージョンコータによりウェット−オン−ウェット方式の重層塗布を行うのがより好ましい。
【0078】
なお、ウェット−オン−ウェット方式における重層塗布においては、下側の層が湿潤状態になったままで上側の層を塗布するので、上下層間の接着性が向上するとともに、塗布を一度で終了させるので塗布面に傷が入り難く、平滑性がよいため現像むらが出にくく、更に歩留まりを向上させることができる。
【0079】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれに限定されない。
【0080】
実施例1
1.下引済みPET支持体の作製
2軸延伸熱固定済みの厚さ125μmのPETフィルムの両面に下記の条件でプラズマ処理を施し、次いで一方の面に下引塗布液a−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設後、乾燥させて下引層A−1とし、反対側の面には下記帯電防止加工用下引塗布液b−1を、乾燥膜厚0.8μmになるように塗設後、乾燥させて下引層B−1とした。次いで、それぞれの下引き層表面に下記の条件で、再びプラズマ処理を施した。
〈プラズマ処理条件〉
バッチ式の大気圧プラズマ処理装置(イーシー化学社製、AP−I−H−340)を用いて、高周波出力が4.5kW、周波数が5kHz、処理時間が5秒及びガス混合条件はアルゴン、窒素及び水素の体積比をそれぞれ90%、5%及び5%にてプラズマ処理を行った。
水で1リットルに仕上げる。
水で1リットルに仕上げる。
〈支持体の熱処理〉
得られた下引済み支持体の下引乾燥工程にて、支持体を140℃に加熱し、その後徐々に冷却した。その際に1×105Paの張力で搬送した。
【0081】
2.バック層面側の塗布
以下の組成のバック層塗布液1とバック保護層塗布液1を、それぞれ塗布前に絶対濾過精度20μmのフィルターを用いて濾過した後、押し出しコーターで前記作製した支持体の帯電防止加工した下引層B−1面上に、合計ウェット膜厚が30μmになるよう、毎分120mの速度で同時重層塗布し、60℃で4分間乾燥を行った。
〈バック層塗布液1〉
メチルエチルケトン 16.4g/m2
染料A 17mg/m2
安定化剤B−1(住友化学社製スミライザーBPA) 20mg/m2
安定化剤B−2(吉富製薬社製トミソーブ77) 50mg/m2
セルロースアセテートプロピレート 0.5g/m2
(Eastman Chemical社製 CAP504−0.2)
セルロースアセテートブチレート 1.5g/m2
(Eastman Chemical社製 CAP482−20)
【0082】
【化8】
【0083】
【化9】
【0084】
3.感光層の作製
〈ハロゲン化銀乳剤の調製〉
純水900ml中にゼラチン7.5g及び臭化カリウム10mgを溶解して温度35℃、pHを3.0に合わせた後、硝酸銀74gを含む水溶液370mlと(96/4)のモル比の臭化カリウムと沃化カリウムと(NH4)2RhCl5(H2O)を5×10−6モル/リットルを含む水溶液をpAg7.7に保ちながらコントロールドダブルジェット法で10分間かけて添加した。
【0085】
その後4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン0.3gを添加しNaOHでpHを5に調整して平均粒子サイズ0.06μm、投影直径面積の変動係数8%、{100}面比率86%の立方体沃臭化銀からなるハロゲン化銀粒子を得た。
【0086】
この乳剤をゼラチン凝集剤を用いて凝集沈降させ脱塩処理後、フェノキシエタノール0.1gを加え、pH5.9、pAg7.5に調整した。
〈有機脂肪酸銀乳剤の調製〉
水300ml中にベヘン酸10.6gを入れ90℃に加熱溶解し、十分撹拌した状態で1モル/リットルの水酸化ナトリウム31.1mlを添加し、そのままの状態で1時間放置した。その後30℃に冷却し、1モル/リットルのリン酸7.0mlを添加して十分撹拌しながら、N−ブロモ琥珀酸イミド0.01gを添加した。
【0087】
その後、あらかじめ調製したハロゲン化銀乳剤をベヘン酸に対して銀量として10モル%となるように40℃に加温した状態で撹拌しながら添加した。さらに1モル/リットル硝酸銀水溶液25mlを2分間かけて連続添加し、そのまま撹拌した状態で1時間放置した。
【0088】
この乳剤に酢酸エチルに溶解したポリビニルブチラールを添加して十分撹拌した後に静置し、ベヘン酸銀粒子とハロゲン化銀粒子を含有する酢酸エチル相と水相に分離した。水相を除去した後、遠心分離にてベヘン酸銀粒子とハロゲン化銀粒子を採取した。
【0089】
その後東ソー社製合成ゼオライトA−3(球状)20gとイソプロピルアルコール22mlを添加し1時間放置した後濾過した。更にポリビニルブチラール3.4gとイソプロピルアルコール23mlを添加し、35℃にて高速で十分撹拌して分散し有機脂肪酸銀乳剤の調製を終了した。
【0090】
上記ハロゲン化銀乳剤と有機脂肪酸銀乳剤を用いて、下記感光層を作製した。
造核剤 例示化合物No.と添加量を表1に示す。
溶媒には、メチルエチルケトン、アセトン、メタノールを適宜用いた。
溶媒には、メチルエチルケトン、アセトン、メタノールを適宜用いた。
〈乳剤層塗布液組成C(本発明用)〉
有機脂肪酸銀乳剤 0.7g(銀換算)/m2
造核剤 例示化合物No.と添加量を表1に示す。
溶媒には、メチルエチルケトン、アセトン、メタノールを適宜用いた。
〈表面保護層塗布液下層組成〉
表面保護層塗布液を下記のように調製した。
【0091】
セルロースアセテートブチレート 4g/m2
フタラジン 3.2×10−3mol/m2
造核剤 例示化合物No.と添加量を表1に示す。
溶媒には、メチルエチルケトン、アセトン、メタノールを適宜用いた。
〈表面保護層塗布液上層組成〉
表面保護層塗布液を下記のように調製した。
【0092】
溶媒には、メチルエチルケトン、アセトン、メタノールを適宜用いた。
【0093】
表1に示す如く、上記各塗布液を順次塗布して、熱現像感光材料1〜10を作製した。
【0094】
4.性能の評価
(露光)
作製した各熱現像感光材料に対して、ビーム径(ビーム強度の1/2のFWHM)12.56μm、レーザー出力50mW、出力波長783nmの半導体レーザーを搭載した単チャンネル円筒内面方式のレーザー露光装置を使用して、ミラー回転数60000rpm、露光時間1.2×10−8秒の条件下で露光を実施した。このときのオーバーラップ係数は0.449にし、熱現像感光材料面上のレーザーエネルギー密度は75μJ/cm2とした。
【0095】
(熱現像処理)
熱現像処理は120℃、17.2秒で行なった。
【0096】
(感度)
得られた画像による感度評価は、階段露光試料をマクベスTD904濃度計により可視光域濃度を測定して行った。方法はDminより1.0高い濃度を与える露光量の逆数を求め、その相対値で表した(熱現像感光材料1の感度を100としたときの相対値で表示した)。
【0097】
(線幅の湿度依存性評価)
熱現像感光材料を23℃、80%RHにて12時間調湿の試料と、23℃、20%RHにて12時間調湿の試料を作製し、同一環境下で50μmの線幅露光を行なって熱現像処理を行なった。
【0098】
それぞれの処理後の線幅の差を測定することにより、現像湿度依存性を評価した。
【0099】
(黒ポツの評価)
未露光部を100倍ルーペで観察し、黒ポツの個数(A4一枚当たりの個数)を数えた。
【0100】
5個以下は実用上問題ないレベルである。
結果は表1に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
本発明内の熱現像感光材料2〜10は、線幅の湿度依存性と黒ポツの評価結果共に問題がないが、本発明外の熱現像感光材料1は共に問題があることがわかる。
【0103】
【発明の効果】
本発明により、感度が高く、しかも、文字線巾の現像時の湿度依存性が小さく、また高湿環境下で処理されても黒ポツがあまり発生しない熱現像感光材料を提供することが出来る。
【発明の属する技術分野】
本発明は、造核剤と感光色素を含有する熱現像感光材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から広範囲に用いられているハロゲン化銀感光材料は、その優れた写真特性により、より広範囲かつ高品質な素材として画像形成分野に利用されているが、画像を形成するために現像、定着、水洗、乾燥というプロセスが必要であり、しかも現像工程が湿式であるため、作業が煩雑であるという欠点があった。そのため、現像工程を熱処理で行う熱現像感光材料が開発、実用化され、近年、印刷業界あるいは医用業界を中心に急速に普及してきている。
【0003】
かかる技術として、支持体上に有機銀塩、ハロゲン化銀粒子及び還元剤を有する熱現像感光材料が知られている。この熱現像感光材料は溶液系処理薬品を一切使用しないため、より簡便なシステムをユーザーに提供することができる。
【0004】
特に印刷製版分野において、画像形成感光材料の湿式処理に伴う廃液が、作業上の問題になっており、近年では環境保全、省スペースの観点からも処理廃液の減量が強く望まれている。
【0005】
しかし、熱現像感光材料(以下、単に感光材料ともいう)は極端に湿度の影響を受けやすく、湿度により写真性能が著しく変化する。特に冬場の低湿期には、保存されている間に感光材料中の水分量が少なくなり現像反応が進みにくく濃度が出なくなるという問題があった。
【0006】
従来の技術としては塩化ビニリデンの下引きを行い湿度の影響を少なくする技術(例えば、特許文献1、2参照)は知られているが環境上問題がある。また、湿度の影響を少なくするため保護層を厚くしたり(例えば、特許文献3参照)、乾燥温度を変えたりする技術(例えば、特許文献4参照)も知られているが、実用的には不十分な効果しか得られていない。
【0007】
また、特に写真製版用、特にスキャナー、イメージセッター用熱現像感光材料において、文字線幅の現像湿度依存性が小さく、画像保存性の良好な超硬調熱現像感光材料を提供する技術(例えば、特許文献5参照)、高活性な還元剤を使いつつ温湿度環境依存性を改良した熱現像感光材料を提供する技術(例えば、特許文献6参照)、高感度で、未現像時の保存性に優れ、文字線幅の現像時の温度及び湿度依存性の小さい写真製版用途に最適な写真特性を示す熱現像感光材料を提供する技術(例えば、特許文献7参照)、更には高感度で、低カブリ、高Dmax(最高濃度)で、保存時のカブリの上昇が少なく、現像時の温湿度依存性が小さい熱現像感光材料を提供する技術(例えば、特許文献8参照)が公開されている。しかしながら、いずれの技術も湿度に対する依存性を実用上充分なまでに改善するには到っていない。
【0008】
更に、熱現像感光材料は高湿下で処理されると、未露光部に発生する砂状のカブリ、即ち黒ポツ故障耐性に問題があった。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−272742号公報
【0010】
【特許文献2】
特開2001−287298号公報
【0011】
【特許文献3】
特開2001−249425号公報
【0012】
【特許文献4】
特開2002−55413号公報
【0013】
【特許文献5】
特開2002−55409号公報
【0014】
【特許文献6】
特開2002−90935号公報
【0015】
【特許文献7】
特開2002−229153号公報
【0016】
【特許文献8】
特開2002−258436号公報
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、感度が高く、しかも、文字線巾の現像時の湿度依存性が小さく、また高湿環境下で処理されても黒ポツがあまり発生しない熱現像感光材料を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、鋭意検討した結果、本発明の目的は下記構成を採ることにより達成されることがわかった。
【0019】
〔1〕 支持体上に、(1)造核剤を含有し感光色素を含有しない感光性乳剤層と、(2)感光色素を含有し造核剤を含有しない感光性乳剤層とを有することを特徴とする熱現像感光材料。
【0020】
〔2〕 〔1〕に記載の熱現像感光材料において、更に造核剤を含有する非感光性層を有することを特徴とする熱現像感光材料。
【0021】
本発明の熱現像感光材料においては、支持体上に、(1)造核剤を含有し感光色素を含有しない感光性乳剤層と、(2)感光色素を含有し造核剤を含有しない感光性乳剤層の少なくとも2層の感光性乳剤層を有する構成を採る。
【0022】
これらの感光性乳剤層の間では、その境界において本発明の効果をあまり阻害しない程度であれば、感光色素と造核剤が混ざり合ってもよい。しかし、その混合比率は全体の添加量に対する流失分が、10質量%以下に止めるのが望ましい。また隣接する感光層の影響を防止したければ、その界面に中間層を設けても良い。
【0023】
また、造核剤を含有し感光色素を含有しない感光性乳剤層と、感光色素を含有し造核剤を含有しない感光性乳剤層の層順もどちらが上層であってもよい。
【0024】
ここにおいて、感光色素とは、一般的に広く当技術分野において用いられるもので、ハロゲン化銀を光学増感できるものであればよい。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明する。
【0026】
本発明における造核剤とは、特に限定されるものではないが、下記一般式(A)で表される造核剤及び一般式(B)で表される造核剤を、感光層または隣接層に含有させるのが好ましい。
【0027】
【化1】
【0028】
(式中、Wは電子吸引性基、Dは電子供与性基、Hは水素原子を表す。なお、同一炭素原子上にあるWまたはDで表される基は、互いに環状構造を形成していてもよく、またWまたはDは、トランス構造及びシス構造のどちらも可能な場合、どちらの構造をとってもよい。)
本発明の一般式(A)及び一般式(B)で表される造核剤について説明する。
【0029】
式中、Wは電子吸引性基、Dは電子供与性基、Hは水素原子を表す。なお、同一炭素原子上にあるWまたはDで表される基は、互いに環状構造を形成していてもよく、またWまたはDは、トランス構造及びシス構造のどちらも可能な場合、どちらの構造をとってもよい。
【0030】
Wの表す電子吸引性基とは、ハメットの置換基定数σpが正の値をとりうる置換基のことである。具体的には、置換アルキル基(ハロゲン置換アルキル等)、置換アルケニル基(シアノビニル等)、置換・未置換のアルキニル基(トリフルオロメチルアセチレニル、シアノアセチレニル等)、置換アリール基(シアノフェニル等)、置換・未置換のヘテロ環基(ピリジル、トリアジニル、ベンゾオキサゾリル等)、ハロゲン原子、アシル基(アセチル、トリフルオロアセチル、ホルミル等)、チオアセチル基(チオアセチル、チオホルミル等)、オキサリル基(メチルオキサリル等)、オキシオキサリル基(エトキサリル等)、チオオキサリル基(エチルチオオキサリル等)、オキサモイル基(メチルオキサモイル等)、オキシカルボニル基(エトキシカルボニル等)、カルボキシル基、チオカルボニル基(エチルチオカルボニル等)、カルバモイル基(メチルカルバモイル、フェニルカルバモイル等)、チオカルバモイル基(エチルチオカルバモイル、フェニルチオカルバモイル等)、スルホニル基(メタンスルホニル等)、スルフィニル基(メタンスルフィニル等)、オキシスルホニル基(エトキシスルホニル等)、チオスルホニル基(エチルチオスルホニル等)、スルファモイル基(スルファモイル、メチルスルファモイル等)、オキシスルフィニル基(メトキシスルフィニル等)、チオスルフィニル基(メチルチオスルフィニル等)、スルフィナモイル基(メチルスルフィナモイル等)、スフィナモイル基(メチルスルフィナモイル等)、ホスホリル基(ビス(エトキシ)−ホスフォリル等)、シアノ基、ニトロ基、イミドイル基(アセトイミドイル、N−フェニルアセトイミドイル等)、N−アシルイミドイル基(N−アセチルイミドイル等)、N−スルホニルイミドイル基(N−メタンスルホニルイミドイル等)、ジシアノエチレン基(2,2−ジシアノエチレン等)、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、ピリリウム基、インモニウム基が挙げられるが、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、インモニウム基等が環を形成したヘテロ環状のものも含まれる。σp値として0.30以上の置換基が特に好ましい。
【0031】
Dの表す電子供与性基とは、ハメットの置換基定数σpが負の値をとりうる置換基のことである。電子供与性基の具体例としては、例えば、ヒドロキシル基(またはその塩)、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基またはヘテロ環アミノ基、ヘテロ環残基、シクロアルキルオキシ基、シクロアルキルチオ基、シクロアルキルアミノ基またはシクロアルケニル基、σpが負の値を取るヘテロ環残基またはこれらの電子供与性基で置換されたフェニル基等が挙げられる。
【0032】
電子供与性のヘテロ環の代表例としては、「Substituent Constants for Correlation Analysis in Chemistry and Biology(Corwin Hansch and Albert Leo著)」の第66〜339頁に記載のσpが負のヘテロ環であり、ヘテロ環の具体的な例としてはピペリジニル基、ピロリジニル基、モルフォリノ基、ピペラジニル基、3−チエニル基、2−フリル基、3−フリル基、2−ピロロ基等が挙げられる。好ましくは3−チエニル基、2−フリル基または3−フリル基である。これらのヘテロ環は、σpが0または正にならない範囲で任意の置換基を有してもよい。
【0033】
また、シクロアルキルオキシ基、シクロアルキルチオ基またはシクロアルキルアミノ基の具体的な例としては、シクロプロピルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロプロピルチオ基、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基、シクロヘプチルチオ基、シクロプロピルメチルアミノ基、シクロペンチルメチルアミノ基、シクロヘキシルメチルアミノ基、シクロヘプチルメチルアミノ基等が挙げられる。好ましくはシクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロペンチルチオ基及びシクロヘキシルチオ基である。シクロアルケニル基の具体的な例としては、シクロプロぺニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基及びシクロヘプテニル基等が挙げられる。好ましくは、シクロペンテニル基またはシクロヘキセニル基である。
【0034】
ハメット則は、ベンゼン誘導体の反応または平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論じるために1935年に、L.P.Hammetにより提唱された経験則であるが、これは今日では妥当性が認められている。
【0035】
ハメット則により求められた置換基定数にはσp値とσm値とがあり、これらの値は多くの一般的な文献に記載があり、「Lange’s Handbookof Chemistry(J.A.Dean著)」第12版、1979年(Mc Graw−Hill)や「化学の領域増刊」、第122号、第96〜103頁、1979年(南光堂)、Chemical Reviews、第91巻、第165〜195頁、1991年に詳しく述べられている。本発明における電子吸引性基及び電子供与性基は、σp値により規定しているが、上記の成書に記載の文献既知の値がある置換基にのみ限定されるものではない。
【0036】
以下に、一般式(A)または一般式(B)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に列挙する化合物において、ケト−エノール型互変異性体またはシス−トランス型幾何異性体が存在する場合には、その両方を表すものとする。
【0037】
【化2】
【0038】
【化3】
【0039】
【化4】
【0040】
一般式(A)、(B)で表される化合物は公知の方法により容易に合成することができる。一般式(A)、(B)で表される化合物は、1種のみ用いても、2種以上を併用してもよい。
【0041】
また上記一般式(A)、(B)で表される化合物の他に、下記一般式(H)で表される化合物を併用して用いてもよい。
【0042】
【化5】
【0043】
式中、A0はそれぞれ置換基を有してもよい脂肪族基、芳香族基、複素環基または−G0−D0基を、B0はブロッキング基を表し、A1、A2はともに水素原子、または一方が水素原子で他方はアシル基、スルホニル基またはオキザリル基を表す。ここで、G0は−CO−基、−COCO−基、−CS−基、−C(=NG1D1)−基、−SO−基、−SO2−基または−P(O)(G1D1)−基を表し、G1は単なる結合手、−O−基、−S−基または−N(D1)−基を表し、D1は脂肪族基、芳香族基、複素環基または水素原子を表し、分子内に複数のD1が存在する場合、それらは同じであっても異なってもよい。D0は水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基を表す。
【0044】
一般式(H)において、A0で表される脂肪族基は好ましくは炭素数1〜30のものであり、特に炭素数1〜20の直鎖、分岐または環状のアルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、t−ブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基が挙げられ、これらは更に適当な置換基(例えばアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホキシ基、スルホンアミド基、スルファモイル基、アシルアミノ基、ウレイド基等)で置換されていてもよい。
【0045】
一般式(H)において、A0で表される芳香族基は、単環または縮合環のアリール基が好ましく、例えばベンゼン環またはナフタレン環が挙げられ、A0で表される複素環基としては、単環または縮合環で窒素、硫黄、酸素原子から選ばれる少なくとも一つのヘテロ原子を含む複素環が好ましく、例えばピロリジン環、イミダゾール環、テトラヒドロフラン環、モルホリン環、ピリジン環、ピリミジン環、キノリン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、チオフェン環、フラン環が挙げられ、A0で表される−G0−D0基において、G0は−CO−基、−COCO−基、−CS−基、−C(=NG1D1)−基、−SO−基、−SO2−基または−P(O)(G1D1)−基を表す。G1は単なる結合手、−O−基、−S−基または−N(D1)−基を表し、D1は脂肪族基、芳香族基、複素環基または水素原子を表し、分子内に複数のD1が存在する場合、それらは同じであっても異なってもよい。D0は水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基を表し、好ましいD0としては水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基等が挙げられる。A0の芳香族基、複素環基及び−G0−D0基は置換基を有していてもよい。A0として特に好ましいものはアリール基及び−G0−D0基である。
【0046】
また、一般式(H)において、A0は耐拡散基またはハロゲン化銀吸着基を少なくとも一つ含むことが好ましい。耐拡散基としてはカプラー等の不動性写真用添加剤にて常用されるバラスト基が好ましく、バラスト基としては写真的に不活性であるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、アルキルフェノキシ基等が挙げられ、置換基部分の炭素数の合計は8以上であることが好ましい。
【0047】
一般式(H)において、ハロゲン化銀吸着促進基としてはチオ尿素、チオウレタン基、メルカプト基、チオエーテル基、チオン基、複素環基、チオアミド複素環基、メルカプト複素環基、あるいは特開昭64−90439号公報に記載の吸着基等が挙げられる。
【0048】
一般式(H)において、B0はブロッキング基を表し、好ましくは−G0−D0基であり、G0は−CO−基、−COCO−基、−CS−基、−C(=NG1D1)−基、−SO−基、−SO2−基または−P(O)(G1D1)−基を表す。好ましいG0としては−CO−基、−COCO−基が挙げられ、G1は単なる結合手、−O−基、−S−基または−N(D1)−基を表し、D1は脂肪族基、芳香族基、複素環基または水素原子を表し、分子内に複数のD1が存在する場合、それらは同じであっても異なってもよい。D0は水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基を表し、好ましいD0としては水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基等が挙げられる。A1、A2はともに水素原子、または一方が水素原子で他方はアシル基(アセチル基、トリフルオロアセチル基、ベンゾイル基等)、スルホニル基(メタンスルホニル基、トルエンスルホニル基等)、またはオキザリル基(エトキザリル基等)を表す。
【0049】
上記一般式(H)で表される具体的化合物としては下記のものを挙げることができる。
【0050】
【化6】
【0051】
【化7】
【0052】
一般式(A)、(B)で表される化合物は、水または適当な有機溶媒、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、フッ素化アルコール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブ等に溶解して用いることができる。また、既によく知られている乳化分散法によって、ジブチルフタレート、トリクレジルホスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレート等のオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノン等の補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製して用いることができる。あるいは固体分散法として知られている方法によって、水等の適当な溶媒中にボールミル、コロイドミル、あるいは超音波によって分散し用いることができる。
【0053】
一般式(A)、(B)で表される化合物の添加量は、銀1モルに対して0.1〜0.001モルが好ましく、0.05〜0.005モルがより好ましい。なお、中間層に含有される量は0.005モル以上が好ましい。
【0054】
本発明の熱現像感光材料の感光層に含有される有機銀塩は還元可能な銀源であり、還元可能な銀イオン源を含有する有機酸及びヘテロ有機酸の銀塩、特に長鎖(10〜30、好ましくは5〜25の炭素原子数)の脂肪族カルボン酸及び含窒素複素環カルボン酸が好ましい。配位子が、4.0〜10.0の銀イオンに対する総安定定数を有する有機または無機の銀塩錯体も有用である。好適な銀塩の例は、Research Disclosure(以下RD)第17029及び29963に記載されており、次のものがある:有機酸の塩(例えば、没食子酸、シュウ酸、ベヘン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の塩);銀のカルボキシアルキルチオ尿素塩(例えば、1−(3−カルボキシプロピル)チオ尿素、1−(3−カルボキシプロピル)−3,3−ジメチルチオ尿素等);アルデヒドとヒドロキシ置換芳香族カルボン酸とのポリマー反応生成物の銀錯体(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒドのようなアルデヒド類とサリチル酸、ベンジル酸3,5−ジヒドロキシ安息香酸、5,5−チオジサリチル酸のようなヒドロキシ置換酸類);チオン類の銀塩または錯体(例えば、3−(2−カルボキシエチル)−4−ヒドロキシメチル−4−チアゾリン−2−チオン及び3−カルボキシメチル−4−メチル−4−チアゾリン−2−チオン);イミダゾール、ピラゾール、ウラゾール、1,2,4−チアゾール及び1H−テトラゾール、3−アミノ−5−ベンジルチオ−1,2,4−トリアゾール及びベンゾトリアゾールから選択される窒素酸と銀との錯体または塩;サッカリン、5−クロロサリチルアルドキシム等の銀塩;メルカプチド類の銀塩等が挙げられる。好ましい銀源はベヘン酸銀、アラキジン酸銀またはステアリン酸銀である。
【0055】
有機銀塩は、水溶性銀化合物と銀と錯形成する化合物を混合することにより得られるが、正混合法、逆混合法、同時混合法、特開平9−127643号公報に記載されているようなコントロールドダブルジェット法等が好ましく用いられる。例えば、有機酸にアルカリ金属塩(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)を加えて有機酸アルカリ金属塩ソープ(例えば、ベヘン酸ナトリウム、アラキジン酸ナトリウム等)を作製した後に、コントロールドダブルジェットにより、前記ソープと硝酸銀等を添加して有機銀塩の結晶を作製する。その際にハロゲン化銀粒子を混在させてもよい。
【0056】
本発明の熱現像感光材料の感光層に含有されるハロゲン化銀粒子は光センサーとして機能するものである。本発明においては、画像形成後の白濁を低く抑えるため、及び良好な画質を得るために平均粒子サイズが小さい方が好ましく、平均粒子サイズが好ましくは0.03μm以下、より好ましくは0.01〜0.03μmの範囲である。なお、本発明の熱現像感光材料のハロゲン化銀粒子は前記有機銀塩調製時に同時に作製されるか、または前記有機銀塩調製時にハロゲン化銀粒子を混在させて調製することにより、有機銀塩に融着した状態でハロゲン化銀粒子を形成させて微小粒子のいわゆるin situ銀とするのが好ましい。なお、上記ハロゲン化銀粒子の平均粒子径の測定方法は、電子顕微鏡により50000倍で撮影し、それぞれのハロゲン化銀粒子の長辺と短辺を実測し、100個の粒子を測定し、平均したものを平均粒径とする。
【0057】
ここで、上記粒子サイズとは、ハロゲン化銀粒子が立方体あるいは八面体のいわゆる正常晶である場合には、ハロゲン化銀粒子の稜の長さをいう。また、正常晶でない場合、例えば、球状、棒状、あるいは平板状の粒子の場合には、ハロゲン化銀粒子の体積と同等な球を考えたときの直径をいう。またハロゲン化銀粒子は単分散であることが好ましい。ここでいう単分散とは、下記式で求められる単分散度が40%以下をいう。更に好ましくは30%以下であり、特に好ましくは0.1〜20%となる粒子である。
【0058】
単分散度=(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)×100
本発明において、ハロゲン化銀粒子は平均粒径0.01〜0.03μmで、かつ単分散粒子であることがより好ましく、この範囲にすることで画像の粒状性も向上する。
【0059】
ハロゲン化銀粒子の形状については、特に制限はないが、ミラー指数〔100〕面の占める割合が高いことが好ましく、この割合が50%以上、更には70%以上、特に80%以上であることが好ましい。ミラー指数〔100〕面の比率は、増感色素の吸着における〔111〕面と〔100〕面との吸着依存性を利用したT.Tani;J.Imaging Sci.,29,165(1985)により求めることができる。
【0060】
またもう一つの好ましいハロゲン化銀粒子の形状は、平板粒子である。ここでいう平板粒子とは、投影面積の平方根を粒径rμmとして、垂直方向の厚みをhμmとした場合のアスペクト比=r/hが3以上のものをいう。その中でも好ましくは、アスペクト比が3以上、50以下である。また粒径は0.03μm以下であることが好ましく、更に0.01〜0.03μmが好ましい。これらの製法は米国特許第5,264,337号、同5,314,798号、同5,320,958号等の各明細書に記載されており、容易に目的の平板状粒子を得ることができる。本発明においてこれらの平板状粒子を用いた場合、更に画像の鮮鋭性も向上する。
【0061】
ハロゲン化銀粒子の組成としては特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、臭化銀、沃臭化銀、沃化銀の何れであってもよい。本発明に用いられる写真乳剤は、P.Glafkides著Chimie et Physique Photographique(Paul Montel社刊、1967年)、G.F.Duffin著 Photographic Emulsion Chemistry(The Focal Press刊、1966年)、V.L.Zelikman et al著 Making and Coating Photographic Emulsion(The Focal Press刊、1964年)等に記載された方法を用いて調製することができる。
【0062】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子には、照度不軌改良や階調調整のために、元素周期律表の6族から10族に属する金属のイオンまたは錯体イオンを含有することが好ましい。上記の金属としては、W、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Pt、Auが好ましい。
【0063】
ハロゲン化銀粒子は、ヌードル法、フロキュレーション法等、当業界で知られている方法の水洗により脱塩することができるが、本発明においては脱塩してもしなくてもよい。
【0064】
本発明におけるハロゲン化銀粒子は、化学増感されていることが好ましい。好ましい化学増感法としては、当業界でよく知られているように硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法、金化合物や白金、パラジウム、イリジウム化合物等の貴金属増感法や還元増感法を用いることができる。
【0065】
本発明においては熱現像感光材料の失透を防ぐためには、ハロゲン化銀粒子及び有機銀塩の総量は、銀量に換算して1m2当たり0.3〜2.2gであり、0.5〜1.5gがより好ましい。この範囲にすることで硬調な画像が得られる。また銀総量に対するハロゲン化銀の量は、質量比で50%以下、好ましくは25%以下、更に好ましくは0.1〜15%の間である。
【0066】
本発明におけるハロゲン化銀粒子は350〜450μmに光の極大吸収を有し、特に増感色素を有してなくてもよいが、必要に応じて含有させてもよい。
【0067】
本発明の熱現像感光材料に含有される好適な還元剤の例は、米国特許第3,770,448号、同第3,773,512号、同第3,593,863号等の各明細書及びRD第17029号及び同29963に記載されており、次のものが挙げられる。
【0068】
アミノヒドロキシシクロアルケノン化合物(例えば、2−ヒドロキシ−3−ピペリジノ−2−シクロヘキセノン);還元剤の前駆体としてアミノレダクトン類(reductones)エステル(例えば、ピペリジノヘキソースレダクトンモノアセテート);N−ヒドロキシ尿素誘導体(例えば、N−p−メチルフェニル−N−ヒドロキシ尿素);アルデヒドまたはケトンのヒドラゾン類(例えば、アントラセンアルデヒドフェニルヒドラゾン);ホスファーアミドフェノール類;ホスファーアミドアニリン類;ポリヒドロキシベンゼン類(例えば、ヒドロキノン、t−ブチル−ヒドロキノン、イソプロピルヒドロキノン及び(2,5−ジヒドロキシ−フェニル)メチルスルホン);スルフヒドロキサム酸類(例えば、ベンゼンスルフヒドロキサム酸);スルホンアミドアニリン類(例えば、4−(N−メタンスルホンアミド)アニリン);2−テトラゾリルチオヒドロキノン類(例えば、2−メチル−5−(1−フェニル−5−テトラゾリルチオ)ヒドロキノン);テトラヒドロキノキサリン類(例えば、1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン);アミドオキシム類;アジン類;脂肪族カルボン酸アリールヒドラザイド類とアスコルビン酸の組み合わせ;ポリヒドロキシベンゼンとヒドロキシルアミンの組み合わせ;レダクトン及び/またはヒドラジン;ヒドロキサン酸類;アジン類とスルホンアミドフェノール類の組み合わせ;α−シアノフェニル酢酸誘導体;ビス−β−ナフトールと1,3−ジヒドロキシベンゼン誘導体の組み合わせ;5−ピラゾロン類;スルホンアミドフェノール還元剤;2−フェニルインダン−1,3−ジオン等;クロマン;1,4−ジヒドロピリジン類(例えば、2,6−ジメトキシ−3,5−ジカルボエトキシ−1,4−ジヒドロピリジン);ビスフェノール類(例えば、ビス(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、ビス(6−ヒドロキシ−m−トリ)メシトール(mesitol)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、4,4−エチリデン−ビス(2−t−ブチル−6−メチルフェノール))、紫外線感応性アスコルビン酸誘導体;ヒンダードフェノール類;3−ピラゾリドン類。中でも特に好ましい還元剤は、ヒンダードフェノール類である。
【0069】
本発明の熱現像感光材料の感光層、非感光層にはバインダーを用いる。用いられるバインダーは親水性バインダー(水に溶解するバインダーもしくはラテックス類)または疎水性バインダー(有機溶剤に溶解するバインダー)の何れでもよいが、各層のバインダーが互いに同一の溶剤系に溶解するバインダーであるのが好ましく、例えば感光層、中間層、保護層の各層のバインダーが何れも有機溶剤系バインダーであるか、または親水性バインダーであるのが好ましい。
【0070】
各層に用いられるバインダーは透明または半透明で、一般に無色であり、天然ポリマーや合成モノポリマー及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体となるものが用いられる。上記バインダーの具体例としては、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、デンプン等の水溶性バインダー、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)等の疎水性バインダー、好ましくはポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸、ポリウレタン等の疎水性バインダー、特にはポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル等の疎水性バインダー、及びそれらのバインダー樹脂のモノマーを乳化重合法または懸濁重合法等により水中で重合して得られるラテックス等が挙げられる。
【0071】
疎水性バインダーを溶解するための主溶媒としては、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン)ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブ等が好ましく用いられる。
【0072】
本発明の熱現像感光材料は、一般に熱現像感光材料に用いられるカブリ防止剤、色調剤、硬膜剤、酸化防止剤、安定化剤、可塑剤、被覆助剤、フィルター染料、マット剤、滑り剤、塗布助剤、界面活性剤等を用いてもよい。
【0073】
本発明で用いられる支持体は、現像処理後に所定の光学濃度を得るため及び現像処理後の画像の変形を防ぐために、プラスチックフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ナイロン、セルローストリアセテート、ポリエチレンナフタレート)であることが好ましい。
【0074】
その中でも好ましい支持体としては、ポリエチレンテレフタレート及びシンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体を含むプラスチックの支持体が挙げられる。支持体の厚みとしては50〜300μm程度、好ましくは70〜180μmである。
【0075】
また熱処理したプラスチック支持体を用いることもできる。採用するプラスチックとしては、前記のプラスチックが挙げられる。支持体の熱処理とはこれらの支持体を製膜後、感光層、非感光層、またはその他の形成層が塗布されるまでの間に、支持体のガラス転移点より30℃以上高い温度で、好ましくは35℃以上高い温度で、更に好ましくは40℃以上高い温度で加熱することがよい。但し、支持体の融点を超えた温度に加熱することは支持体の強度の均一性を損い、好ましくない。
【0076】
また、本発明においては帯電性を改良するために金属酸化物または導電性ポリマー等の導電性化合物を構成層中に含ませることができる。これらはいずれの層に含有させてもよいが、好ましくは下引層、バッキング層、銀感光層と下引の間の層等である。
【0077】
感光層、非感光層の塗布方式としては、リバースロール、グラビアロール、エアドクターコータ、ブレードコータ、エアナイフコータ、スクイズコータ、含浸コータ、ワイヤーバーコータ、トランスファロールコータ、キスコータ、キャストコータあるいはスプレーコータ、エクストルージョンコータがあるが、エクストルージョン方式のエクストルージョンコータによりウェット−オン−ウェット方式の重層塗布を行うのがより好ましい。
【0078】
なお、ウェット−オン−ウェット方式における重層塗布においては、下側の層が湿潤状態になったままで上側の層を塗布するので、上下層間の接着性が向上するとともに、塗布を一度で終了させるので塗布面に傷が入り難く、平滑性がよいため現像むらが出にくく、更に歩留まりを向上させることができる。
【0079】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれに限定されない。
【0080】
実施例1
1.下引済みPET支持体の作製
2軸延伸熱固定済みの厚さ125μmのPETフィルムの両面に下記の条件でプラズマ処理を施し、次いで一方の面に下引塗布液a−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設後、乾燥させて下引層A−1とし、反対側の面には下記帯電防止加工用下引塗布液b−1を、乾燥膜厚0.8μmになるように塗設後、乾燥させて下引層B−1とした。次いで、それぞれの下引き層表面に下記の条件で、再びプラズマ処理を施した。
〈プラズマ処理条件〉
バッチ式の大気圧プラズマ処理装置(イーシー化学社製、AP−I−H−340)を用いて、高周波出力が4.5kW、周波数が5kHz、処理時間が5秒及びガス混合条件はアルゴン、窒素及び水素の体積比をそれぞれ90%、5%及び5%にてプラズマ処理を行った。
水で1リットルに仕上げる。
水で1リットルに仕上げる。
〈支持体の熱処理〉
得られた下引済み支持体の下引乾燥工程にて、支持体を140℃に加熱し、その後徐々に冷却した。その際に1×105Paの張力で搬送した。
【0081】
2.バック層面側の塗布
以下の組成のバック層塗布液1とバック保護層塗布液1を、それぞれ塗布前に絶対濾過精度20μmのフィルターを用いて濾過した後、押し出しコーターで前記作製した支持体の帯電防止加工した下引層B−1面上に、合計ウェット膜厚が30μmになるよう、毎分120mの速度で同時重層塗布し、60℃で4分間乾燥を行った。
〈バック層塗布液1〉
メチルエチルケトン 16.4g/m2
染料A 17mg/m2
安定化剤B−1(住友化学社製スミライザーBPA) 20mg/m2
安定化剤B−2(吉富製薬社製トミソーブ77) 50mg/m2
セルロースアセテートプロピレート 0.5g/m2
(Eastman Chemical社製 CAP504−0.2)
セルロースアセテートブチレート 1.5g/m2
(Eastman Chemical社製 CAP482−20)
【0082】
【化8】
【0083】
【化9】
【0084】
3.感光層の作製
〈ハロゲン化銀乳剤の調製〉
純水900ml中にゼラチン7.5g及び臭化カリウム10mgを溶解して温度35℃、pHを3.0に合わせた後、硝酸銀74gを含む水溶液370mlと(96/4)のモル比の臭化カリウムと沃化カリウムと(NH4)2RhCl5(H2O)を5×10−6モル/リットルを含む水溶液をpAg7.7に保ちながらコントロールドダブルジェット法で10分間かけて添加した。
【0085】
その後4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン0.3gを添加しNaOHでpHを5に調整して平均粒子サイズ0.06μm、投影直径面積の変動係数8%、{100}面比率86%の立方体沃臭化銀からなるハロゲン化銀粒子を得た。
【0086】
この乳剤をゼラチン凝集剤を用いて凝集沈降させ脱塩処理後、フェノキシエタノール0.1gを加え、pH5.9、pAg7.5に調整した。
〈有機脂肪酸銀乳剤の調製〉
水300ml中にベヘン酸10.6gを入れ90℃に加熱溶解し、十分撹拌した状態で1モル/リットルの水酸化ナトリウム31.1mlを添加し、そのままの状態で1時間放置した。その後30℃に冷却し、1モル/リットルのリン酸7.0mlを添加して十分撹拌しながら、N−ブロモ琥珀酸イミド0.01gを添加した。
【0087】
その後、あらかじめ調製したハロゲン化銀乳剤をベヘン酸に対して銀量として10モル%となるように40℃に加温した状態で撹拌しながら添加した。さらに1モル/リットル硝酸銀水溶液25mlを2分間かけて連続添加し、そのまま撹拌した状態で1時間放置した。
【0088】
この乳剤に酢酸エチルに溶解したポリビニルブチラールを添加して十分撹拌した後に静置し、ベヘン酸銀粒子とハロゲン化銀粒子を含有する酢酸エチル相と水相に分離した。水相を除去した後、遠心分離にてベヘン酸銀粒子とハロゲン化銀粒子を採取した。
【0089】
その後東ソー社製合成ゼオライトA−3(球状)20gとイソプロピルアルコール22mlを添加し1時間放置した後濾過した。更にポリビニルブチラール3.4gとイソプロピルアルコール23mlを添加し、35℃にて高速で十分撹拌して分散し有機脂肪酸銀乳剤の調製を終了した。
【0090】
上記ハロゲン化銀乳剤と有機脂肪酸銀乳剤を用いて、下記感光層を作製した。
造核剤 例示化合物No.と添加量を表1に示す。
溶媒には、メチルエチルケトン、アセトン、メタノールを適宜用いた。
溶媒には、メチルエチルケトン、アセトン、メタノールを適宜用いた。
〈乳剤層塗布液組成C(本発明用)〉
有機脂肪酸銀乳剤 0.7g(銀換算)/m2
造核剤 例示化合物No.と添加量を表1に示す。
溶媒には、メチルエチルケトン、アセトン、メタノールを適宜用いた。
〈表面保護層塗布液下層組成〉
表面保護層塗布液を下記のように調製した。
【0091】
セルロースアセテートブチレート 4g/m2
フタラジン 3.2×10−3mol/m2
造核剤 例示化合物No.と添加量を表1に示す。
溶媒には、メチルエチルケトン、アセトン、メタノールを適宜用いた。
〈表面保護層塗布液上層組成〉
表面保護層塗布液を下記のように調製した。
【0092】
溶媒には、メチルエチルケトン、アセトン、メタノールを適宜用いた。
【0093】
表1に示す如く、上記各塗布液を順次塗布して、熱現像感光材料1〜10を作製した。
【0094】
4.性能の評価
(露光)
作製した各熱現像感光材料に対して、ビーム径(ビーム強度の1/2のFWHM)12.56μm、レーザー出力50mW、出力波長783nmの半導体レーザーを搭載した単チャンネル円筒内面方式のレーザー露光装置を使用して、ミラー回転数60000rpm、露光時間1.2×10−8秒の条件下で露光を実施した。このときのオーバーラップ係数は0.449にし、熱現像感光材料面上のレーザーエネルギー密度は75μJ/cm2とした。
【0095】
(熱現像処理)
熱現像処理は120℃、17.2秒で行なった。
【0096】
(感度)
得られた画像による感度評価は、階段露光試料をマクベスTD904濃度計により可視光域濃度を測定して行った。方法はDminより1.0高い濃度を与える露光量の逆数を求め、その相対値で表した(熱現像感光材料1の感度を100としたときの相対値で表示した)。
【0097】
(線幅の湿度依存性評価)
熱現像感光材料を23℃、80%RHにて12時間調湿の試料と、23℃、20%RHにて12時間調湿の試料を作製し、同一環境下で50μmの線幅露光を行なって熱現像処理を行なった。
【0098】
それぞれの処理後の線幅の差を測定することにより、現像湿度依存性を評価した。
【0099】
(黒ポツの評価)
未露光部を100倍ルーペで観察し、黒ポツの個数(A4一枚当たりの個数)を数えた。
【0100】
5個以下は実用上問題ないレベルである。
結果は表1に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
本発明内の熱現像感光材料2〜10は、線幅の湿度依存性と黒ポツの評価結果共に問題がないが、本発明外の熱現像感光材料1は共に問題があることがわかる。
【0103】
【発明の効果】
本発明により、感度が高く、しかも、文字線巾の現像時の湿度依存性が小さく、また高湿環境下で処理されても黒ポツがあまり発生しない熱現像感光材料を提供することが出来る。
Claims (2)
- 支持体上に、(1)造核剤を含有し感光色素を含有しない感光性乳剤層と、(2)感光色素を含有し造核剤を含有しない感光性乳剤層とを有することを特徴とする熱現像感光材料。
- 請求項1に記載の熱現像感光材料において、更に造核剤を含有する非感光性層を有することを特徴とする熱現像感光材料。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003180731A JP2005017581A (ja) | 2003-06-25 | 2003-06-25 | 熱現像感光材料 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003180731A JP2005017581A (ja) | 2003-06-25 | 2003-06-25 | 熱現像感光材料 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2005017581A true JP2005017581A (ja) | 2005-01-20 |
Family
ID=34181633
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003180731A Pending JP2005017581A (ja) | 2003-06-25 | 2003-06-25 | 熱現像感光材料 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2005017581A (ja) |
-
2003
- 2003-06-25 JP JP2003180731A patent/JP2005017581A/ja active Pending
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