JP2005015071A - エレベータの主ロープ交換装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】エレベータにおける主ロープ交換作業を行う作業者の労力を軽減するとともに、作業時間短縮、安全性及び経済性の向上を実現することができる装置を提供する。
【解決手段】主ロープ8を送り出すように回転ハンドル25を回転すると、主ロープ8は、張り車27によって張力を受けながら、回転ドラム24のロープ係り溝24aからの摩擦力を受けて送り出される。主ロープ8の巻き上げについても同様の原理によって実施可能であり、回転ハンドル25の回転方向を変更するだけでよい。また、ハンドル操作による送り出しを行っていくと、ある段階で主ロープ8の自重による落下力がロープ係り溝24aからの摩擦力より大きくなり、回転ハンドル25の操作を行わなくても主ロープ8が送り出される。なお、ブレーキレバー28を操作して主ロープ8下降速度を制御することが可能である。
【選択図】 図1
【解決手段】主ロープ8を送り出すように回転ハンドル25を回転すると、主ロープ8は、張り車27によって張力を受けながら、回転ドラム24のロープ係り溝24aからの摩擦力を受けて送り出される。主ロープ8の巻き上げについても同様の原理によって実施可能であり、回転ハンドル25の回転方向を変更するだけでよい。また、ハンドル操作による送り出しを行っていくと、ある段階で主ロープ8の自重による落下力がロープ係り溝24aからの摩擦力より大きくなり、回転ハンドル25の操作を行わなくても主ロープ8が送り出される。なお、ブレーキレバー28を操作して主ロープ8下降速度を制御することが可能である。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エレベータの主ロープ交換装置、特に、昇降路上方に独立した機械室を設けない、いわゆる機械室レスエレベータの主ロープ交換装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、巻上機や制御盤等を昇降路内に設置することによって、屋上に機械室を必要としない、いわゆる機械室レスエレベータが登場している。この機械室レスエレベータは、エレベータ設置場所の省スペース化を実現することができるという利点を有しているので、その需要は増加してきている。しかし、従来の1:1ローピング方式等の機械室式エレベータと比較すると約4倍以上の主ロープ長が必要であり、この主ロープを掛ける返し車の数が多いことから、損傷を考慮した主ロープの交換周期が短くなってきている。また、機械室が屋上部分にあり、主ロープ交換作業のスペースが十分に確保できるこれまでのエレベータに対して、機械室レスエレベータの場合は、主ロープの交換を昇降路及び乗降場という限られたスペースで行わなければならず、非常に労力と時間を要するものであった。
【0003】
ここで、従来の機械室レスエレベータにおける主ロープ交換作業について、図面を用いて説明する。図15、図16、図17及び図18は、一般的な機械室レスエレベータにおける主ロープ交換作業を説明するための図である。
【0004】
先ず、機械室レスエレベータは、乗客が搭乗するかご1、かご1の昇降を行うための主ロープ4、駆動シーブ3、釣合おもり7、返し車5a,5b等から構成されている。かご1には下面側にかご吊り車1a,1bが設置されており、主ロープ4からの昇降力を受けている。主ロープ4は、両端4a,4bが昇降路最上部の梁等に固設された綱止板2a,2bに接続されており、乗降場6側の綱止板2aからかご吊り車1b,1aを経由して、返し車5a、駆動シーブ3、返し車5bの順に掛け廻され、釣合おもり7に設置されたおもり吊り車7aをさらに経由して昇降路奥の綱止板2bに接続されている。以下、主ロープ4が3本である場合を例示してロープ交換作業を説明する。
【0005】
このような機械室レスエレベータでは、かご1の天井部が機械室レスエレベータの設置されている建物の最上階の乗降場6付近に位置するようにエレベータを停止させ、主ロープ交換作業を行う。このとき、かご1は図示しないチェーンブロック等によって昇降路内の梁に懸架され、また、釣合おもり7は支え棒7bによって支持されることにより、落下防止等の安全対策が図られている。さらに、主ロープ交換作業を行う作業者は、乗降場2名、かご上1名、昇降路底1名の合計4名が最低限必要となる。
【0006】
具体的な主ロープ交換作業手順は、以下のようになる。
【0007】
(1)昇降路底11に作業者が入り、主ロープ4の1本を駆動シーブ3のかご側上部付近P1で切断する。
【0008】
(2)駆動シーブ3のかご側上部付近P1で切断され、返し車5aで吊られた状態の主ロープ4(図15A部)を、かご上の作業者が引き上げて乗降場6に移動する。このとき、かご1を懸架するチェーンブロック等に滑車12を設置することによって、主ロープ4の引き上げをスムーズに行う工夫が施されている(図16)。
【0009】
(3)次に、かご上作業者が返し車5b側の主ロープ4(B部)を引き上げ、切断点P1を返し車5b,5aに掛けた状態で乗降場6へ移動する(図16)。
【0010】
(4)かご上作業者は、主ロープ4の綱止板2b直下付近P2をさらに切断する。なお、切断時には、主ロープ4(C部)が自重で落下しないよう、あらかじめ落下防止措置がとられている。
【0011】
(5)続いて、乗降場6に準備しておいた新主ロープ8の端部8aと、先に切断し綱止板2bの直下付近で保持された状態にある既設主ロープ4の切断部P2とを、かご上作業者が所定の方式で仮接続する(図16)。
【0012】
(6)(4)で実施した既設主ロープ4の落下防止措置を解除し、乗降場6の作業者が新主ロープ8を送り出すと、既設主ロープ4(図16C部)は自重で落下し、この落下に伴って乗降場6に移動されている別端部P1側の既設主ロープ4(図16B部)を乗降場作業者が巻き取りドラム10で巻き取っていく(図17)。なお、綱止板2bの直下付近にもチェーンブロック等によって滑車13を設置することにより、新主ロープ8の送り出しと既設主ロープ4の引き上げをスムーズに行う工夫が施されている(図17)。
【0013】
(7)乗降場6で既設主ロープ4の巻き取りが進み、送り出した新主ロープ8の仮接続場所Jが昇降路内から乗降場6に出てくると、既設主ロープ4と新主ロープ8が昇降路内で半分入れ替わった状態になる(図18)。
【0014】
(8)次に、返し車5a,5bの中間部分の新主ロープ8を昇降路底11に向かってU字状に繰り下がるように乗降場6から送り出し、昇降路底11で駆動シーブ3に掛け廻す(図18)。
【0015】
(9)新主ロープ8が駆動シーブ3に掛けられた後、乗降場6に戻ってきた新主ロープ8の端末8aと、乗降場6に移動しておいた既設主ロープ4の端末P3を仮接続し、かご上作業者が既設主ロープ4の綱止板2a側を引き上げると、新主ロープ8はかご吊り車1a,1bに掛け廻され、仮接続を外した後に新主ロープ端末8aを綱止板2aに接続する。なお、この段階で、既設主ロープ4と新主ロープ8とが完全に入れ替わった状態となる。
【0016】
(10)最後に、新主ロープ8の端末8bを綱止板2bに接続する。以上で、1本目の主ロープの交換作業が終了する。
【0017】
(11)上記(1)〜(10)の作業を残り2本分繰り返すことによって、機械室レスエレベータの主ロープ交換作業が完了することになる。
【0018】
なお、従来の機械室レスエレベータの主ロープ交換装置あるいは方法として、例えば、以下のような文献が開示されている。
【0019】
【特許文献1】
特開2003−146556号公報
【特許文献2】
特開2002−003125号公報
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
従来の技術で説明した通り、機械室レスエレベータの主ロープ交換作業は非常に労力と時間の掛かるものである。すなわち、昇降路各部に掛け廻された状態の既設主ロープを乗降場に引き上げる際には、かご上作業者及び乗降場作業者が既設主ロープを人力で引っ張り上げなければならず、新主ロープを昇降路底に下ろすときには、新主ロープが急激に落下しないよう慎重に作業しなければならない。このような作業を行っていたのでは作業者の労力が過大であるため、作業時間が掛かることによるエレベータ停止時間の増大を招き、主ロープ交換作業の安全性や経済性を悪化させる原因となっていた。したがって、上記のような課題を解決することができる装置が求められていた。
【0021】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、機械室レスエレベータにおける主ロープ交換作業を行う作業者の労力を軽減するとともに、作業時間の短縮化、安全性及び経済性の向上を実現することができるエレベータの主ロープ交換装置を提供するものである。
【0022】
【課題を解決するための手段】
以上のような課題を解決するために、本発明に係るエレベータの主ロープ交換装置は、台座と、台座に立設される支柱と、支柱に備わる水平軸と、水平軸に回転自在に設置される回転ドラムと、回転ドラムに設置され、回転ドラムに対して回転力を与えるための回転ハンドルと、一端が水平軸に設置されるとともに、水平軸を軸中心として傾動可能に設置される支持アームと、支持アームに接続し、支持アームに対して張力を及ぼすスプリングと、支持アームの水平軸接続端とは別端に回転自在に設置される張り車とを有するエレベータの主ロープ交換装置であって、エレベータの主ロープを回転ドラム及び張り車に掛け渡すことによって、主ロープを送り出すときには、回転ドラムの回転力、及び/または、主ロープの自重によって主ロープの連続的な送り出しを行い、主ロープを巻き上げるときには、回転ハンドルの操作によって主ロープの巻き上げ回収を行うことを特徴とする。
【0023】
また、本発明に係るエレベータの主ロープ交換装置において、前記回転ドラムと前記張り車はその外周に少なくとも1つ以上のロープ係り溝を備えており、このロープ係り溝によってエレベータに設置される少なくとも1本以上の主ロープを同時に交換可能であることを特徴とする。
【0024】
さらに、本発明に係るエレベータの主ロープ交換装置は、前記回転ドラムの回転を停止させるブレーキ機構を備えていることを特徴とする。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明の好適な実施の形態について、図面を用いて説明する。図1は、本発明におけるエレベータの主ロープ交換装置の概略構成を示す図である。
【0026】
本発明におけるエレベータの主ロープ交換装置20は、装置のベースとして台座21を有しており、この台座21には支柱22が立設されている。支柱22には水平軸23が備わっており、この水平軸23には回転ドラム24が水平軸23を軸中心として回転自在に設置されている。また、この回転ドラム24には、回転ドラム24に対して回転力を与えるための回転ハンドル25が備わっている。
【0027】
水平軸23には、さらに、支持アーム26が設置されている。この支持アーム26は、一端が水平軸23に設置されている一方で、水平軸23接続端とは別端に、回転自在な張り車27を有している。また、支持アーム26と支柱22との間にはスプリング26aが設けられているので、支持アーム26は、水平軸23を軸中心として傾動可能となっている。
【0028】
回転ドラム24と張り車27は、その外周に少なくとも1つ以上(図1では3溝)のロープ係り溝24aを備えており、このロープ係り溝24aによってエレベータに設置される少なくとも1本以上(以後の説明では3本)の主ロープを同時に操作することが可能となっている。また、張り車27は、支持アーム26に接続しているスプリング26aの弾性力によって主ロープに対して張力を及ぼし、主ロープのスムーズな巻き上げ、送り出しを実現している。
【0029】
さらに、本発明におけるエレベータの主ロープ交換装置20は、回転ドラム24の回転を停止させるブレーキ機構を備えている。このブレーキ機構は、台座21に傾動可能に設置されたブレーキレバー28と、台座21に固定された半割ギア歯車29で構成されている。ブレーキレバー28は、回転ドラム24に設置されているブレーキシュー30とワイヤーロープ31で接続されており、ブレーキレバー28を図面左側方向に傾けることによってブレーキシュー30表面に設置された金属プレートと回転ドラム24が接触し、回転ドラム24の回転を停止させる仕組みになっている。また、台座21に固定された半割ギア歯車29にブレーキレバー28の固定爪28aを噛み合わせることによってブレーキレバー28の傾斜を保持し、ブレーキを効かせた状態を保持することが可能となっている。なお、ブレーキレバー28には、ブレーキ解除レバー28bが備わっており、このブレーキ解除レバー28bを操作することによって固定爪28aを半割ギア歯車29から退避させ、ブレーキを解除することが可能となっている。
【0030】
以上のようなエレベータの主ロープ交換装置20を用いてエレベータの主ロープ交換作業を行うことになるのであるが、エレベータの主ロープ8は、図1に示す通り、回転ドラム24のロープ係り溝24aに掛け回されるとともに張り車27のロープ係り溝27aに掛け渡されることによって、送り出し及び巻き上げが実施される。以下、図1及び図3を用いて、本発明におけるエレベータの主ロープ交換装置20を用いた主ロープ8の送り出し及び巻き上げ動作を説明する。なお、図3は、本発明におけるエレベータの主ロープ交換装置20の使用状況を説明するための要部拡大図である。
【0031】
[ハンドル操作による送り出し、巻き上げ]
ブレーキレバー28によるブレーキが解除された状態で主ロープ8を送り出すように回転ハンドル25を回転すると、ロープボビン9から引き出された主ロープ8は、張り車27によって張力を受けながら、回転ドラム24のロープ係り溝24aからの摩擦力を受けることによって送り出される。このとき、回転ドラム24から主ロープ8が引き出される速度と、回転ハンドル25の回転速度による主ロープ送り速度との間に違いがあったとしても、スプリング26aによって張り車27が常に下方に引っ張られ、主ロープ8は張り車27と回転ドラム24との間で常に張力を受けているので、主ロープ8は回転ドラム24のロープ係り溝24aから浮き上がることはない。したがって、主ロープ8は常に摩擦力を受けることになるので、空回りすることなく主ロープ8を送り出すことが可能となる。なお、主ロープ8の巻き上げについても同様の原理によって実施可能であり、回転ハンドル25の回転方向を変更するだけでよい。
【0032】
[主ロープの自重を利用した送り出し]
上記したハンドル操作による送り出しを行っていくと、ある段階で主ロープ8の自重による落下力がロープ係り溝24aからの摩擦力より大きくなり、回転ハンドル25の操作を行わなくても主ロープ8が送り出されるようになってくる。この状態を放置すると主ロープ8の落下の加速度が増大するので、ブレーキレバー28を操作して主ロープ8下降速度を制御することができる。すなわち、ブレーキレバー28をこまめに操作することによって、主ロープ8の下降速度を一定に保持する、下降・停止を繰り返す等の操作が可能である。また、主ロープ8下降途中で作業を停止したい場合等には、半割ギア歯車29にブレーキレバー28の固定爪28aを噛み合わせることによってブレーキレバー28の傾斜を保持し、ブレーキを効かせた状態を保持することによって、主ロープ8の停止状態を保つことも可能である。
【0033】
以上のように、主ロープ8を送り出すときには、回転ドラム24の回転力、及び/または、主ロープ8の自重によって主ロープ8の連続的な送り出しを行うことが可能であり、また、主ロープ8を巻き上げるときには、回転ハンドル25の操作によって主ロープ8の巻き上げ回収を行うことができることになる。
【0034】
続いて、本発明におけるエレベータの主ロープ交換装置20を使用した主ロープ交換作業について、図2〜図14を用いて説明する。図2は、本発明におけるエレベータの主ロープ交換装置20を使用した主ロープ交換作業における、作業前の状況を示す図である。また、図4〜図14は、一連の主ロープ交換作業を時系列に表した図である。なお、作業者の人員と配置箇所は、従来の技術で説明した場合と同様であり、上述した従来の技術に示した部材と同一又は類似する部材には、同一符号を付して説明を省略する。
【0035】
(1)まず、エレベータの主ロープ交換装置20をエレベータが設置された建物の最上階の乗降場6に設置する(図2,図3)。
【0036】
(2)昇降路底11の作業者が駆動シーブ3から既設主ロープ4を全数(3本)取り外す。また、かご上作業者は、既設主ロープ4の全数をかご1側の返し車5aの直下近傍P3で切断する。このとき、既設主ロープ4のD部が落下することのないよう、あらかじめ所定の方法で保持を行っておく(図4)。
【0037】
(3)かご上の作業者は、駆動シーブ3から取り外された既設主ロープ4をかご上に引き上げると、この既設主ロープ4をエレベータの主ロープ交換装置20にセットし、巻き上げを行う。すると、既設主ロープ4のA部、B部が引き上げられることになり、乗降場作業者は、乗降場6にあらかじめ用意しておいた既設主ロープ4を巻き取り用の巻き取りドラム10に巻き取っていく(図4,図5)。
【0038】
(4)次に、かご上作業者は、既設主ロープ4の全数を釣合おもり7側の返し車5bの直下近傍P4で切断する。このとき、既設主ロープ4のE部が落下することのないよう、あらかじめ所定の方法で保持を行っておく(図5)。
【0039】
(5)かご上作業者は、釣合おもり7側の返し車5bの直下近傍P4で既設主ロープ4を切断した後に、先に巻き上げた部分を返し車5a,5bから外し、釣合おもり7側の返し車5bの直下近傍P4からかご1側切断点P3までの間にある既設主ロープ4を昇降路から乗降場に巻き取っておく(図5,図6)。
【0040】
(6)そして、既設主ロープ4の釣合おもり7側端末4bを綱止板2bから取り外し、既設主ロープ4をおもり吊り車7aから外し、昇降路から乗降場6に巻き取っておく(図7)。
【0041】
(7)以上の作業を終えると、昇降路内に残る既設主ロープ4は、かご1側切断点P3からかご側端末4aのD部のみとなる。なお、既設主ロープ4のかご1側切断点P3は、かご上から落下しないように落下防止措置がとられている(図7)。
【0042】
(8)続いて、交換用に準備した新主ロープ8をあらかじめ乗降場6に配置してあるエレベータの主ロープ交換装置20に次の如くセットする。すなわち、新主ロープ8の先端部を張り車27の下方から回転ドラム24の上方に掛け廻し、概ね1回転半させた後、新主ロープ8の先端部8bを昇降路側に送り出す。この作業は、エレベータに必要な新主ロープ8の全数(3本)について同時に実施する(図8)。
【0043】
(9)釣合おもり7側の綱止板2bで端部8bが接続された新主ロープ8は、乗降場作業者がエレベータの主ロープ交換装置20の回転ハンドル25を操作することによって新主ロープ8を送り出し、綱止板2bと返し車5bとの間をU字状に下降させる。そして、新主ロープ8がおもり吊り車7aに到達した段階で、昇降路底作業者がおもり吊り車7aに対して全ての新主ロープ8を掛け廻す(図9)。
【0044】
(10)次に、乗降場作業者が回転ハンドル25を操作して新主ロープ8を乗降場6から昇降路内に送り出すとともに、かご上作業者が吊り車5a,5bの中間部を下方に引っ張り、ある程度まで下降すると新主ロープ8は自重でU字状に下降していき、昇降路底11の駆動シーブ3に到達した段階で昇降路底作業者は駆動シーブ3に新主ロープ8を掛け廻す(図10,図11)。
【0045】
(11)かご1の上部に固定していた既設主ロープ4の切断箇所P3と、乗降場6にある新主ロープ8のかご側端末8aとをかご上(もしくは、乗降場6で)仮接続する(図11)。
【0046】
(12)次に、エレベータの主ロープ交換装置20から新主ロープ8を送り出しながら既設主ロープ4を引き上げていくと、新主ロープ8はかご吊り車1a,1bに掛け廻されていく(図12)。
【0047】
(13)そして、既設主ロープ4のかご側端末4aを綱止板2aから外し、昇降路から乗降場に撤去する(図13)。
【0048】
(14)その後、かご吊り車1a,1bに掛け廻された状態となった新主ロープ8の端末8aを綱止板2aに接続する(図14)。なお、上記の作業は、エレベータに必要な主ロープの全数(3本)を同時に交換することができる。以上の作業によって、エレベータの主ロープ交換作業が終了する。
【0049】
なお、本実施の形態では、本発明に係るエレベータの主ロープ交換装置が、いわゆる機械室レスエレベータの主ロープ交換作業に用いられる場合を例示して説明したが、サイドプランジャー式油圧エレベータや2:1ローピングエレベータ等、他の型式のエレベータにおけるロープ取替作業に利用可能であることは明らかである。
【0050】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、エレベータの主ロープ交換作業において、作業者がエレベータの主ロープ交換装置の回転ハンドルを回すだけで、主ロープの巻き取りや送り出しを容易に行うことができるので、作業者の労力低減、主ロープ交換作業の時間削減を実現できる。
【0051】
また、本発明によれば、主ロープの自重を利用して主ロープを送り出すことができるとともに、ブレーキレバーを操作することによって主ロープの送り速度を制御することができるので、作業者は主ロープ交換作業を効率よく、しかも安全に実施することができる。
【0052】
さらに、長時間の作業停止時等にはブレーキレバーの固定手段を用いることにより主ロープの停止状態を保持することができるので、主ロープ交換作業の安全性を高めることが可能である。
【0053】
またさらに、本発明によれば、複数の主ロープの巻き取り及び送り出しを同時に実施することができるので、従来のように同じ作業を繰り返すことがなく、主ロープ交換作業によるエレベータ停止時間の短縮、作業負荷の軽減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明におけるエレベータの主ロープ交換装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明におけるエレベータの主ロープ交換装置を使用した主ロープ交換作業における、作業前の状況を示す図である。
【図3】本発明におけるエレベータの主ロープ交換装置の使用状況を説明するための要部拡大図である。
【図4】一連の主ロープ交換作業を時系列に表した図である。
【図5】一連の主ロープ交換作業を時系列に表した図である。
【図6】一連の主ロープ交換作業を時系列に表した図である。
【図7】一連の主ロープ交換作業を時系列に表した図である。
【図8】一連の主ロープ交換作業を時系列に表した図である。
【図9】一連の主ロープ交換作業を時系列に表した図である。
【図10】一連の主ロープ交換作業を時系列に表した図である。
【図11】一連の主ロープ交換作業を時系列に表した図である。
【図12】一連の主ロープ交換作業を時系列に表した図である。
【図13】一連の主ロープ交換作業を時系列に表した図である。
【図14】一連の主ロープ交換作業を時系列に表した図である。
【図15】一般的な機械室レスエレベータにおける主ロープ交換作業を説明するための図である。
【図16】一般的な機械室レスエレベータにおける主ロープ交換作業を説明するための図である。
【図17】一般的な機械室レスエレベータにおける主ロープ交換作業を説明するための図である。
【図18】一般的な機械室レスエレベータにおける主ロープ交換作業を説明するための図である。
【符号の説明】
1 かご、1a,1b かご吊り車、2a,2b 綱止板、3 駆動シーブ、4 (既設)主ロープ、4a,4b (既設)主ロープ端、5a,5b 返し車、6 乗降場、7 釣合おもり、7a おもり吊り車、7b 支え棒、8 (新)主ロープ、8a,8b (新)主ロープ端部、9 ロープボビン、10 巻き取りドラム、11 昇降路底、12,13 滑車、20 エレベータの主ロープ交換装置、21 台座、22 支柱、23 水平軸、24 回転ドラム、24aロープ係り溝、25 回転ハンドル、26 支持アーム、26a スプリング、27 張り車、27a ロープ係り溝、28 ブレーキレバー、28a 固定爪、28b ブレーキ解除レバー、29 半割ギア歯車、30 ブレーキシュー、31 ワイヤーロープ。
【発明の属する技術分野】
本発明は、エレベータの主ロープ交換装置、特に、昇降路上方に独立した機械室を設けない、いわゆる機械室レスエレベータの主ロープ交換装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、巻上機や制御盤等を昇降路内に設置することによって、屋上に機械室を必要としない、いわゆる機械室レスエレベータが登場している。この機械室レスエレベータは、エレベータ設置場所の省スペース化を実現することができるという利点を有しているので、その需要は増加してきている。しかし、従来の1:1ローピング方式等の機械室式エレベータと比較すると約4倍以上の主ロープ長が必要であり、この主ロープを掛ける返し車の数が多いことから、損傷を考慮した主ロープの交換周期が短くなってきている。また、機械室が屋上部分にあり、主ロープ交換作業のスペースが十分に確保できるこれまでのエレベータに対して、機械室レスエレベータの場合は、主ロープの交換を昇降路及び乗降場という限られたスペースで行わなければならず、非常に労力と時間を要するものであった。
【0003】
ここで、従来の機械室レスエレベータにおける主ロープ交換作業について、図面を用いて説明する。図15、図16、図17及び図18は、一般的な機械室レスエレベータにおける主ロープ交換作業を説明するための図である。
【0004】
先ず、機械室レスエレベータは、乗客が搭乗するかご1、かご1の昇降を行うための主ロープ4、駆動シーブ3、釣合おもり7、返し車5a,5b等から構成されている。かご1には下面側にかご吊り車1a,1bが設置されており、主ロープ4からの昇降力を受けている。主ロープ4は、両端4a,4bが昇降路最上部の梁等に固設された綱止板2a,2bに接続されており、乗降場6側の綱止板2aからかご吊り車1b,1aを経由して、返し車5a、駆動シーブ3、返し車5bの順に掛け廻され、釣合おもり7に設置されたおもり吊り車7aをさらに経由して昇降路奥の綱止板2bに接続されている。以下、主ロープ4が3本である場合を例示してロープ交換作業を説明する。
【0005】
このような機械室レスエレベータでは、かご1の天井部が機械室レスエレベータの設置されている建物の最上階の乗降場6付近に位置するようにエレベータを停止させ、主ロープ交換作業を行う。このとき、かご1は図示しないチェーンブロック等によって昇降路内の梁に懸架され、また、釣合おもり7は支え棒7bによって支持されることにより、落下防止等の安全対策が図られている。さらに、主ロープ交換作業を行う作業者は、乗降場2名、かご上1名、昇降路底1名の合計4名が最低限必要となる。
【0006】
具体的な主ロープ交換作業手順は、以下のようになる。
【0007】
(1)昇降路底11に作業者が入り、主ロープ4の1本を駆動シーブ3のかご側上部付近P1で切断する。
【0008】
(2)駆動シーブ3のかご側上部付近P1で切断され、返し車5aで吊られた状態の主ロープ4(図15A部)を、かご上の作業者が引き上げて乗降場6に移動する。このとき、かご1を懸架するチェーンブロック等に滑車12を設置することによって、主ロープ4の引き上げをスムーズに行う工夫が施されている(図16)。
【0009】
(3)次に、かご上作業者が返し車5b側の主ロープ4(B部)を引き上げ、切断点P1を返し車5b,5aに掛けた状態で乗降場6へ移動する(図16)。
【0010】
(4)かご上作業者は、主ロープ4の綱止板2b直下付近P2をさらに切断する。なお、切断時には、主ロープ4(C部)が自重で落下しないよう、あらかじめ落下防止措置がとられている。
【0011】
(5)続いて、乗降場6に準備しておいた新主ロープ8の端部8aと、先に切断し綱止板2bの直下付近で保持された状態にある既設主ロープ4の切断部P2とを、かご上作業者が所定の方式で仮接続する(図16)。
【0012】
(6)(4)で実施した既設主ロープ4の落下防止措置を解除し、乗降場6の作業者が新主ロープ8を送り出すと、既設主ロープ4(図16C部)は自重で落下し、この落下に伴って乗降場6に移動されている別端部P1側の既設主ロープ4(図16B部)を乗降場作業者が巻き取りドラム10で巻き取っていく(図17)。なお、綱止板2bの直下付近にもチェーンブロック等によって滑車13を設置することにより、新主ロープ8の送り出しと既設主ロープ4の引き上げをスムーズに行う工夫が施されている(図17)。
【0013】
(7)乗降場6で既設主ロープ4の巻き取りが進み、送り出した新主ロープ8の仮接続場所Jが昇降路内から乗降場6に出てくると、既設主ロープ4と新主ロープ8が昇降路内で半分入れ替わった状態になる(図18)。
【0014】
(8)次に、返し車5a,5bの中間部分の新主ロープ8を昇降路底11に向かってU字状に繰り下がるように乗降場6から送り出し、昇降路底11で駆動シーブ3に掛け廻す(図18)。
【0015】
(9)新主ロープ8が駆動シーブ3に掛けられた後、乗降場6に戻ってきた新主ロープ8の端末8aと、乗降場6に移動しておいた既設主ロープ4の端末P3を仮接続し、かご上作業者が既設主ロープ4の綱止板2a側を引き上げると、新主ロープ8はかご吊り車1a,1bに掛け廻され、仮接続を外した後に新主ロープ端末8aを綱止板2aに接続する。なお、この段階で、既設主ロープ4と新主ロープ8とが完全に入れ替わった状態となる。
【0016】
(10)最後に、新主ロープ8の端末8bを綱止板2bに接続する。以上で、1本目の主ロープの交換作業が終了する。
【0017】
(11)上記(1)〜(10)の作業を残り2本分繰り返すことによって、機械室レスエレベータの主ロープ交換作業が完了することになる。
【0018】
なお、従来の機械室レスエレベータの主ロープ交換装置あるいは方法として、例えば、以下のような文献が開示されている。
【0019】
【特許文献1】
特開2003−146556号公報
【特許文献2】
特開2002−003125号公報
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
従来の技術で説明した通り、機械室レスエレベータの主ロープ交換作業は非常に労力と時間の掛かるものである。すなわち、昇降路各部に掛け廻された状態の既設主ロープを乗降場に引き上げる際には、かご上作業者及び乗降場作業者が既設主ロープを人力で引っ張り上げなければならず、新主ロープを昇降路底に下ろすときには、新主ロープが急激に落下しないよう慎重に作業しなければならない。このような作業を行っていたのでは作業者の労力が過大であるため、作業時間が掛かることによるエレベータ停止時間の増大を招き、主ロープ交換作業の安全性や経済性を悪化させる原因となっていた。したがって、上記のような課題を解決することができる装置が求められていた。
【0021】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、機械室レスエレベータにおける主ロープ交換作業を行う作業者の労力を軽減するとともに、作業時間の短縮化、安全性及び経済性の向上を実現することができるエレベータの主ロープ交換装置を提供するものである。
【0022】
【課題を解決するための手段】
以上のような課題を解決するために、本発明に係るエレベータの主ロープ交換装置は、台座と、台座に立設される支柱と、支柱に備わる水平軸と、水平軸に回転自在に設置される回転ドラムと、回転ドラムに設置され、回転ドラムに対して回転力を与えるための回転ハンドルと、一端が水平軸に設置されるとともに、水平軸を軸中心として傾動可能に設置される支持アームと、支持アームに接続し、支持アームに対して張力を及ぼすスプリングと、支持アームの水平軸接続端とは別端に回転自在に設置される張り車とを有するエレベータの主ロープ交換装置であって、エレベータの主ロープを回転ドラム及び張り車に掛け渡すことによって、主ロープを送り出すときには、回転ドラムの回転力、及び/または、主ロープの自重によって主ロープの連続的な送り出しを行い、主ロープを巻き上げるときには、回転ハンドルの操作によって主ロープの巻き上げ回収を行うことを特徴とする。
【0023】
また、本発明に係るエレベータの主ロープ交換装置において、前記回転ドラムと前記張り車はその外周に少なくとも1つ以上のロープ係り溝を備えており、このロープ係り溝によってエレベータに設置される少なくとも1本以上の主ロープを同時に交換可能であることを特徴とする。
【0024】
さらに、本発明に係るエレベータの主ロープ交換装置は、前記回転ドラムの回転を停止させるブレーキ機構を備えていることを特徴とする。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明の好適な実施の形態について、図面を用いて説明する。図1は、本発明におけるエレベータの主ロープ交換装置の概略構成を示す図である。
【0026】
本発明におけるエレベータの主ロープ交換装置20は、装置のベースとして台座21を有しており、この台座21には支柱22が立設されている。支柱22には水平軸23が備わっており、この水平軸23には回転ドラム24が水平軸23を軸中心として回転自在に設置されている。また、この回転ドラム24には、回転ドラム24に対して回転力を与えるための回転ハンドル25が備わっている。
【0027】
水平軸23には、さらに、支持アーム26が設置されている。この支持アーム26は、一端が水平軸23に設置されている一方で、水平軸23接続端とは別端に、回転自在な張り車27を有している。また、支持アーム26と支柱22との間にはスプリング26aが設けられているので、支持アーム26は、水平軸23を軸中心として傾動可能となっている。
【0028】
回転ドラム24と張り車27は、その外周に少なくとも1つ以上(図1では3溝)のロープ係り溝24aを備えており、このロープ係り溝24aによってエレベータに設置される少なくとも1本以上(以後の説明では3本)の主ロープを同時に操作することが可能となっている。また、張り車27は、支持アーム26に接続しているスプリング26aの弾性力によって主ロープに対して張力を及ぼし、主ロープのスムーズな巻き上げ、送り出しを実現している。
【0029】
さらに、本発明におけるエレベータの主ロープ交換装置20は、回転ドラム24の回転を停止させるブレーキ機構を備えている。このブレーキ機構は、台座21に傾動可能に設置されたブレーキレバー28と、台座21に固定された半割ギア歯車29で構成されている。ブレーキレバー28は、回転ドラム24に設置されているブレーキシュー30とワイヤーロープ31で接続されており、ブレーキレバー28を図面左側方向に傾けることによってブレーキシュー30表面に設置された金属プレートと回転ドラム24が接触し、回転ドラム24の回転を停止させる仕組みになっている。また、台座21に固定された半割ギア歯車29にブレーキレバー28の固定爪28aを噛み合わせることによってブレーキレバー28の傾斜を保持し、ブレーキを効かせた状態を保持することが可能となっている。なお、ブレーキレバー28には、ブレーキ解除レバー28bが備わっており、このブレーキ解除レバー28bを操作することによって固定爪28aを半割ギア歯車29から退避させ、ブレーキを解除することが可能となっている。
【0030】
以上のようなエレベータの主ロープ交換装置20を用いてエレベータの主ロープ交換作業を行うことになるのであるが、エレベータの主ロープ8は、図1に示す通り、回転ドラム24のロープ係り溝24aに掛け回されるとともに張り車27のロープ係り溝27aに掛け渡されることによって、送り出し及び巻き上げが実施される。以下、図1及び図3を用いて、本発明におけるエレベータの主ロープ交換装置20を用いた主ロープ8の送り出し及び巻き上げ動作を説明する。なお、図3は、本発明におけるエレベータの主ロープ交換装置20の使用状況を説明するための要部拡大図である。
【0031】
[ハンドル操作による送り出し、巻き上げ]
ブレーキレバー28によるブレーキが解除された状態で主ロープ8を送り出すように回転ハンドル25を回転すると、ロープボビン9から引き出された主ロープ8は、張り車27によって張力を受けながら、回転ドラム24のロープ係り溝24aからの摩擦力を受けることによって送り出される。このとき、回転ドラム24から主ロープ8が引き出される速度と、回転ハンドル25の回転速度による主ロープ送り速度との間に違いがあったとしても、スプリング26aによって張り車27が常に下方に引っ張られ、主ロープ8は張り車27と回転ドラム24との間で常に張力を受けているので、主ロープ8は回転ドラム24のロープ係り溝24aから浮き上がることはない。したがって、主ロープ8は常に摩擦力を受けることになるので、空回りすることなく主ロープ8を送り出すことが可能となる。なお、主ロープ8の巻き上げについても同様の原理によって実施可能であり、回転ハンドル25の回転方向を変更するだけでよい。
【0032】
[主ロープの自重を利用した送り出し]
上記したハンドル操作による送り出しを行っていくと、ある段階で主ロープ8の自重による落下力がロープ係り溝24aからの摩擦力より大きくなり、回転ハンドル25の操作を行わなくても主ロープ8が送り出されるようになってくる。この状態を放置すると主ロープ8の落下の加速度が増大するので、ブレーキレバー28を操作して主ロープ8下降速度を制御することができる。すなわち、ブレーキレバー28をこまめに操作することによって、主ロープ8の下降速度を一定に保持する、下降・停止を繰り返す等の操作が可能である。また、主ロープ8下降途中で作業を停止したい場合等には、半割ギア歯車29にブレーキレバー28の固定爪28aを噛み合わせることによってブレーキレバー28の傾斜を保持し、ブレーキを効かせた状態を保持することによって、主ロープ8の停止状態を保つことも可能である。
【0033】
以上のように、主ロープ8を送り出すときには、回転ドラム24の回転力、及び/または、主ロープ8の自重によって主ロープ8の連続的な送り出しを行うことが可能であり、また、主ロープ8を巻き上げるときには、回転ハンドル25の操作によって主ロープ8の巻き上げ回収を行うことができることになる。
【0034】
続いて、本発明におけるエレベータの主ロープ交換装置20を使用した主ロープ交換作業について、図2〜図14を用いて説明する。図2は、本発明におけるエレベータの主ロープ交換装置20を使用した主ロープ交換作業における、作業前の状況を示す図である。また、図4〜図14は、一連の主ロープ交換作業を時系列に表した図である。なお、作業者の人員と配置箇所は、従来の技術で説明した場合と同様であり、上述した従来の技術に示した部材と同一又は類似する部材には、同一符号を付して説明を省略する。
【0035】
(1)まず、エレベータの主ロープ交換装置20をエレベータが設置された建物の最上階の乗降場6に設置する(図2,図3)。
【0036】
(2)昇降路底11の作業者が駆動シーブ3から既設主ロープ4を全数(3本)取り外す。また、かご上作業者は、既設主ロープ4の全数をかご1側の返し車5aの直下近傍P3で切断する。このとき、既設主ロープ4のD部が落下することのないよう、あらかじめ所定の方法で保持を行っておく(図4)。
【0037】
(3)かご上の作業者は、駆動シーブ3から取り外された既設主ロープ4をかご上に引き上げると、この既設主ロープ4をエレベータの主ロープ交換装置20にセットし、巻き上げを行う。すると、既設主ロープ4のA部、B部が引き上げられることになり、乗降場作業者は、乗降場6にあらかじめ用意しておいた既設主ロープ4を巻き取り用の巻き取りドラム10に巻き取っていく(図4,図5)。
【0038】
(4)次に、かご上作業者は、既設主ロープ4の全数を釣合おもり7側の返し車5bの直下近傍P4で切断する。このとき、既設主ロープ4のE部が落下することのないよう、あらかじめ所定の方法で保持を行っておく(図5)。
【0039】
(5)かご上作業者は、釣合おもり7側の返し車5bの直下近傍P4で既設主ロープ4を切断した後に、先に巻き上げた部分を返し車5a,5bから外し、釣合おもり7側の返し車5bの直下近傍P4からかご1側切断点P3までの間にある既設主ロープ4を昇降路から乗降場に巻き取っておく(図5,図6)。
【0040】
(6)そして、既設主ロープ4の釣合おもり7側端末4bを綱止板2bから取り外し、既設主ロープ4をおもり吊り車7aから外し、昇降路から乗降場6に巻き取っておく(図7)。
【0041】
(7)以上の作業を終えると、昇降路内に残る既設主ロープ4は、かご1側切断点P3からかご側端末4aのD部のみとなる。なお、既設主ロープ4のかご1側切断点P3は、かご上から落下しないように落下防止措置がとられている(図7)。
【0042】
(8)続いて、交換用に準備した新主ロープ8をあらかじめ乗降場6に配置してあるエレベータの主ロープ交換装置20に次の如くセットする。すなわち、新主ロープ8の先端部を張り車27の下方から回転ドラム24の上方に掛け廻し、概ね1回転半させた後、新主ロープ8の先端部8bを昇降路側に送り出す。この作業は、エレベータに必要な新主ロープ8の全数(3本)について同時に実施する(図8)。
【0043】
(9)釣合おもり7側の綱止板2bで端部8bが接続された新主ロープ8は、乗降場作業者がエレベータの主ロープ交換装置20の回転ハンドル25を操作することによって新主ロープ8を送り出し、綱止板2bと返し車5bとの間をU字状に下降させる。そして、新主ロープ8がおもり吊り車7aに到達した段階で、昇降路底作業者がおもり吊り車7aに対して全ての新主ロープ8を掛け廻す(図9)。
【0044】
(10)次に、乗降場作業者が回転ハンドル25を操作して新主ロープ8を乗降場6から昇降路内に送り出すとともに、かご上作業者が吊り車5a,5bの中間部を下方に引っ張り、ある程度まで下降すると新主ロープ8は自重でU字状に下降していき、昇降路底11の駆動シーブ3に到達した段階で昇降路底作業者は駆動シーブ3に新主ロープ8を掛け廻す(図10,図11)。
【0045】
(11)かご1の上部に固定していた既設主ロープ4の切断箇所P3と、乗降場6にある新主ロープ8のかご側端末8aとをかご上(もしくは、乗降場6で)仮接続する(図11)。
【0046】
(12)次に、エレベータの主ロープ交換装置20から新主ロープ8を送り出しながら既設主ロープ4を引き上げていくと、新主ロープ8はかご吊り車1a,1bに掛け廻されていく(図12)。
【0047】
(13)そして、既設主ロープ4のかご側端末4aを綱止板2aから外し、昇降路から乗降場に撤去する(図13)。
【0048】
(14)その後、かご吊り車1a,1bに掛け廻された状態となった新主ロープ8の端末8aを綱止板2aに接続する(図14)。なお、上記の作業は、エレベータに必要な主ロープの全数(3本)を同時に交換することができる。以上の作業によって、エレベータの主ロープ交換作業が終了する。
【0049】
なお、本実施の形態では、本発明に係るエレベータの主ロープ交換装置が、いわゆる機械室レスエレベータの主ロープ交換作業に用いられる場合を例示して説明したが、サイドプランジャー式油圧エレベータや2:1ローピングエレベータ等、他の型式のエレベータにおけるロープ取替作業に利用可能であることは明らかである。
【0050】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、エレベータの主ロープ交換作業において、作業者がエレベータの主ロープ交換装置の回転ハンドルを回すだけで、主ロープの巻き取りや送り出しを容易に行うことができるので、作業者の労力低減、主ロープ交換作業の時間削減を実現できる。
【0051】
また、本発明によれば、主ロープの自重を利用して主ロープを送り出すことができるとともに、ブレーキレバーを操作することによって主ロープの送り速度を制御することができるので、作業者は主ロープ交換作業を効率よく、しかも安全に実施することができる。
【0052】
さらに、長時間の作業停止時等にはブレーキレバーの固定手段を用いることにより主ロープの停止状態を保持することができるので、主ロープ交換作業の安全性を高めることが可能である。
【0053】
またさらに、本発明によれば、複数の主ロープの巻き取り及び送り出しを同時に実施することができるので、従来のように同じ作業を繰り返すことがなく、主ロープ交換作業によるエレベータ停止時間の短縮、作業負荷の軽減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明におけるエレベータの主ロープ交換装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明におけるエレベータの主ロープ交換装置を使用した主ロープ交換作業における、作業前の状況を示す図である。
【図3】本発明におけるエレベータの主ロープ交換装置の使用状況を説明するための要部拡大図である。
【図4】一連の主ロープ交換作業を時系列に表した図である。
【図5】一連の主ロープ交換作業を時系列に表した図である。
【図6】一連の主ロープ交換作業を時系列に表した図である。
【図7】一連の主ロープ交換作業を時系列に表した図である。
【図8】一連の主ロープ交換作業を時系列に表した図である。
【図9】一連の主ロープ交換作業を時系列に表した図である。
【図10】一連の主ロープ交換作業を時系列に表した図である。
【図11】一連の主ロープ交換作業を時系列に表した図である。
【図12】一連の主ロープ交換作業を時系列に表した図である。
【図13】一連の主ロープ交換作業を時系列に表した図である。
【図14】一連の主ロープ交換作業を時系列に表した図である。
【図15】一般的な機械室レスエレベータにおける主ロープ交換作業を説明するための図である。
【図16】一般的な機械室レスエレベータにおける主ロープ交換作業を説明するための図である。
【図17】一般的な機械室レスエレベータにおける主ロープ交換作業を説明するための図である。
【図18】一般的な機械室レスエレベータにおける主ロープ交換作業を説明するための図である。
【符号の説明】
1 かご、1a,1b かご吊り車、2a,2b 綱止板、3 駆動シーブ、4 (既設)主ロープ、4a,4b (既設)主ロープ端、5a,5b 返し車、6 乗降場、7 釣合おもり、7a おもり吊り車、7b 支え棒、8 (新)主ロープ、8a,8b (新)主ロープ端部、9 ロープボビン、10 巻き取りドラム、11 昇降路底、12,13 滑車、20 エレベータの主ロープ交換装置、21 台座、22 支柱、23 水平軸、24 回転ドラム、24aロープ係り溝、25 回転ハンドル、26 支持アーム、26a スプリング、27 張り車、27a ロープ係り溝、28 ブレーキレバー、28a 固定爪、28b ブレーキ解除レバー、29 半割ギア歯車、30 ブレーキシュー、31 ワイヤーロープ。
Claims (3)
- 台座と、
台座に立設される支柱と、
支柱に備わる水平軸と、
水平軸に回転自在に設置される回転ドラムと、
回転ドラムに設置され、回転ドラムに対して回転力を与えるための回転ハンドルと、
一端が水平軸に設置されるとともに、水平軸を軸中心として傾動可能に設置される支持アームと、
支持アームに接続し、支持アームに対して張力を及ぼすスプリングと、
支持アームの水平軸接続端とは別端に回転自在に設置される張り車と、
を有するエレベータの主ロープ交換装置であって、
エレベータの主ロープを回転ドラム及び張り車に掛け渡すことによって、
主ロープを送り出すときには、回転ドラムの回転力、及び/または、主ロープの自重によって主ロープの連続的な送り出しを行い、
主ロープを巻き上げるときには、回転ハンドルの操作によって主ロープの巻き上げ回収を行うこと、
を特徴とするエレベータの主ロープ交換装置。 - 請求項1に記載のエレベータの主ロープ交換装置において、
前記回転ドラムと前記張り車はその外周に少なくとも1つ以上のロープ係り溝を備えており、このロープ係り溝によってエレベータに設置される少なくとも1本以上の主ロープを同時に交換可能であること、
を特徴とするエレベータの主ロープ交換装置。 - 請求項1又は2に記載のエレベータの主ロープ交換装置において、
前記回転ドラムの回転を停止させるブレーキ機構を備えていること、
を特徴とするエレベータの主ロープ交換装置。
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