JP2005010246A - 画像形成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】カラートナーを用いた二成分系現像方法において、現像装置及び定着装置の構成を簡略化することができ、定着性と現像性に優れた画像形成方法を提供する。
【解決手段】二成分系現像剤を担持する現像剤担持体に直流バイアスを印加し、(A)現像剤担持体上に担持される現像剤中のカラートナー量が、1.0〜3.5mg/cm2であり、(B)現像剤担持体と静電潜像担持体の間隙が250〜600μmであり、(C)現像剤担持体上におけるカラートナーの帯電量分布が、23℃、相対湿度60%の環境下において、絶対値で5〜25μC/gにピークを有し、且つ該環境下における逆極性帯電のトナーの存在量が10体積%以下である現像手段と、(D)カラートナーは結着樹脂、着色剤、芳香族オキシカルボン酸化合物及びワックスを少なくとも含有する二成分現像剤を用いる。
【選択図】 なし
【解決手段】二成分系現像剤を担持する現像剤担持体に直流バイアスを印加し、(A)現像剤担持体上に担持される現像剤中のカラートナー量が、1.0〜3.5mg/cm2であり、(B)現像剤担持体と静電潜像担持体の間隙が250〜600μmであり、(C)現像剤担持体上におけるカラートナーの帯電量分布が、23℃、相対湿度60%の環境下において、絶対値で5〜25μC/gにピークを有し、且つ該環境下における逆極性帯電のトナーの存在量が10体積%以下である現像手段と、(D)カラートナーは結着樹脂、着色剤、芳香族オキシカルボン酸化合物及びワックスを少なくとも含有する二成分現像剤を用いる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法などにおいて静電荷像を現像する画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、提案されているフルカラー複写機においては、4つの感光体とベルト状転写体を用い、各感光体上にそれぞれ形成された静電荷像をシアントナー、マゼンタトナー、イエロートナー及びブラックトナーを用いて現像後、感光体とベルト転写体間に転写材を搬送しストレートパス間で転写後、フルカラー画像を形成させる方法や、感光体に対向された転写体の表面に静電気力やグリッパーなどの機械的作用により転写材を巻き付け、現像−転写工程を4回実施することでフルカラー画像を得る方法が一般的に利用されている。
【0003】
これらフルカラー用複写機に使用されるトナーとしては、色再現性が良好なことや、オーバーヘッドフロジェクター(OHP)画像の透明性を損なうことなく加熱加圧定着工程で各トナーが充分混色することが必要である。
【0004】
一般の白黒複写機用黒トナーと較べフルカラー画像用トナーは、シャープメルト性を有する低分子量結着樹脂を用いることが好ましい。しかしながら、通常シャープメルト性の結着樹脂を用いると加熱加圧定着工程でトナーが溶融した際、結着樹脂の自己凝集力が低いため耐高温オフセット性に問題を生じ易い。
【0005】
一般の白黒複写機用黒トナーは、定着時の耐高温オフセット性を向上させるためポリエチレンワックスやポリプロピレンワックスに代表される比較的高結晶性のワックスが離型剤として用いられている。
【0006】
また、上記のような定着性に関する問題を解決するため、特定の貯蔵弾性率を有するトナーについて提案されている。
【0007】
例えば、180℃又は170℃において特定の貯蔵弾性率を有するトナーが提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。しかし、低温定着と耐高温オフセットの両立、高温オフセット防止のためのオイルを使用しないか、又は、オイルの使用量を少なくした加熱加圧定着手段での良好な定着性、十分な混色特性が必要とされるカラートナーとしては、トナーの粘度が低すぎるうえ、高温環境下での保存性について、満足できるものではなかった。
【0008】
また、70〜120℃において特定の貯蔵弾性率G’を有し、130〜180℃において特定の貯蔵弾性率G”を有するトナーが提案されている(例えば、特許文献3及び特許文献4参照)。しかしながら、高温環境下での十分な保存性、大量の画像を出力する際に高品位な画像を安定して得るという点、どのような環境下においても安定した帯電性と現像性を得るという点について満足できるものではなかった。
【0009】
特定の貯蔵弾性率を有するトナーに関しては他にも種々提案されている(例えば、特許文献5〜特許文献11参照)。しかしながら、カラートナーとしての理想的な定着特性、保存性、OHP透明性を得るためには、改良の余地があった。
【0010】
また、サリチル酸やその誘導体を荷電制御剤として用いたトナーが提案されている(例えば、特許文献12〜特許文献15参照)。しかしながら、サリチル酸は温度や湿度に対し荷電制御能力が大きく変動するばかりか昇華性を有するため、トナーの保存条件に著しい制約を受ける。また、サリチル酸誘導体は、結着樹脂に対する分散性が良好であるため、画像形成装置とのマッチングもある程度改善されるが、所望の荷電制御能力を発揮するには添加量を増やす必要があった。
【0011】
更に、均一な電荷付与能力を得るために荷電制御剤をトナー表面に析出させて得られるトナーが開示されている(例えば、特許文献16及び特許文献17参照)。この方法により確かにトナーの帯電性は安定するが、多数枚耐久印刷後、トナー表面から荷電制御剤が脱離し、効果が減少するために、トナーの耐久性に問題を生じる。
【0012】
また、トナー表面のオキシカルボン酸の量を制御する技術も提案されており、十分な効果が得られている(例えば、特許文献18参照)。
【0013】
また、画像形成装置における現像系の構成については、現像器に印加する電位に直流だけでなく交流を印加することにより濃度、かぶり等に効果があることが知られている。しかしながら、交流電源をカラー複写機に持つことは、コストの増加になる。そのため、直流電源のみで、濃度、かぶりを改善することができるトナー及び現像方法の確立が必要である。
【0014】
【特許文献1】
特開平11−84716号公報
【特許文献2】
特開平8−54750号公報
【特許文献3】
特開平11−7151号公報
【特許文献4】
特開平6−59504号公報
【特許文献5】
特開平5−249735号公報
【特許文献6】
特開平7−92737号公報
【特許文献7】
特開平7−234542号公報
【特許文献8】
特開平7−295298号公報
【特許文献9】
特開平8−234480号公報
【特許文献10】
特開平8−278662号公報
【特許文献11】
特開平10−171156号公報
【特許文献12】
特開昭63−33755号公報
【特許文献13】
特開平2−190869号公報
【特許文献14】
特開平2−230163号公報
【特許文献15】
特開平4−347863号公報
【特許文献16】
特開昭61−238846号公報
【特許文献17】
特開平5−134457号公報
【特許文献18】
特開2001−34016号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述の問題点に鑑みなされたものであり、加熱加圧定着手段に多量のオイルを使用することなく、又はオイルを全く使用することなく定着することができ、これにより加熱加圧定着手段の構成を簡略化することができる画像形成方法を提供することを課題とする。
【0016】
また、本発明は、OHPシート上に形成された画像の透明性が良好で且つ二次色の混色性が良好な、色再現範囲が広い画像形成方法を提供することを課題とする。
【0017】
また、本発明は、低温定着性に優れ且つ耐高温オフセット性に優れた画像形成方法を提供することを課題とする。
【0018】
また、本発明は、高温環境放置時においてもトナーのブロッキングが発生しにくい画像形成方法を提供することを課題とする。
【0019】
また、本発明は、現像系構成を簡略化することができる画像形成方法を提供することを課題とする。
【0020】
更に、本発明は、離型剤としてワックスを添加した場合においても、現像性が良好であり、且つ現像安定性に優れる画像形成方法を提供することを課題とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明は、磁性キャリア及びカラートナーを含有する二成分系現像剤を担持する現像剤担持体に直流バイアスを印加して、前記現像剤担持体に対して所定の間隙をもって配置された静電潜像担持上に形成された静電潜像を前記カラートナーによって現像してトナー像を形成する画像形成方法であって、
(A)前記現像剤担持体上に担持される二成分系現像剤中のカラートナー量が、1.0〜3.5mg/cm2であり、
(B)前記現像剤担持体と前記静電潜像担持体の間隙が250〜600μmであり、
(C)前記現像剤担持体上におけるカラートナーの帯電量分布が、温度23℃、相対湿度60%の環境下において、絶対値で5〜25μC/gにピークを有し、且つ該環境下における逆極性帯電のトナーの存在量が10体積%以下であり、
(D)前記カラートナーは結着樹脂、着色剤、芳香族オキシカルボン酸化合物及びワックスを少なくとも含有し、
(1)前記結着樹脂は(a)ポリエステル樹脂、(b)ポリエステルユニットとビニル系共重合体ユニットとを有するハイブリッド樹脂成分、又は(c)(a)と(b)の混合物を含有し、
(2)前記カラートナーの示差熱分析(DSC)測定における吸熱曲線において、温度30〜200℃の範囲における最大吸熱ピークのピーク温度が60〜110℃であり、
(3)前記カラートナーの粘弾性特性において、温度80℃における貯蔵弾性率(G’80)が1×106〜1×1010[dN/m2]の範囲にあり、温度120〜180℃における貯蔵弾性率(G’120−180)が1×103〜1×106[dN/m2]であり、
(4)前記芳香族オキシカルボン酸化合物は芳香族オキシカルボン酸又は該芳香族オキシカルボン酸の金属化合物を少なくとも有し、該芳香族オキシカルボン酸化合物のカラートナー表面における存在量が0.05〜8g/kgである
ことを特徴とする画像形成方法に関する。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の画像形成方法は、磁性キャリア及びカラートナー(以下、単に「トナー」と表記することがある)を含有する二成分系現像剤(以下、単に「現像剤」と表記することがある)を担持する現像剤担持体に直流バイアスを印加して、前記現像剤担持体に対して所定の間隙をもって配置された静電潜像担持体上に形成された静電潜像を前記カラートナーによって現像してトナー像を形成する、いわゆる二成分現像方法を用いた画像形成方法に関する。上記本発明の画像形成方法は、(A)前記現像剤担持体上に担持される現像剤中のカラートナー量が、1.0〜3.5mg/cm2であり、(B)前記現像剤担持体と前記静電潜像担持体の間隙が250〜600μmであり、(C)前記現像剤担持体上におけるカラートナーの帯電量分布が、温度23℃、相対湿度60%の環境下において、絶対値で5〜25μC/gにピークを有し、且つ該環境下における逆極性帯電のトナーの存在量が10体積%以下であることを特徴とする。
【0023】
また、上記本発明の画像形成方法において、(D)カラートナーは結着樹脂、着色剤、芳香族オキシカルボン酸化合物及びワックスを少なくとも含有する。更に、上記本発明に用いられるカラートナーにおいて、(1)前記結着樹脂は(a)ポリエステル樹脂、(b)ポリエステルユニットとビニル系共重合体ユニットとを有するハイブリッド樹脂成分、又は(c)(a)と(b)の混合物を含有し、(2)示差熱分析(DSC)測定における吸熱曲線において、温度30〜200℃の範囲における最大吸熱ピークのピーク温度が60〜110℃の範囲にあり、(3)粘弾性特性において、温度80℃における貯蔵弾性率(G’80)が1×106〜1×1010[dN/m2]の範囲にあり、温度120〜180℃における貯蔵弾性率(G’120−180)が1×103〜1×106[dN/m2]の範囲にあり、(4)前記芳香族オキシカルボン酸化合物は芳香族オキシカルボン酸又は該芳香族オキシカルボン酸の金属化合物を少なくとも有し、該芳香族オキシカルボン酸化合物のカラートナー表面における存在量が0.05〜8g/kgの範囲にあることを特徴とする。
【0024】
まず、本発明の画像形成方法において、示差熱分析(DSC)測定における吸熱曲線において、温度30〜200℃の範囲における最大吸熱ピークのピーク温度が60〜110℃の範囲にあるトナーを使用することにより、高速化対応であり、低温から広い定着領域を持つ画像形成方法を達成することができる。
【0025】
また、本発明では、トナーの高温環境下における保存性、耐熱性、耐ブロッキング性を良好にするために、トナーの粘弾性特性において、温度80℃における貯蔵弾性率(G’80)が1×106〜1×1010[dN/m2]であることを特徴とする。G’80は、好ましくは1×106〜1×108[dN/m2]であり、より好ましくは2×106〜5×107[dN/m2]である。貯蔵弾性率(G’80)が1×106[dN/m2]よりも小さい場合には、高温環境下におけるトナーの保存性、耐熱性、耐ブロッキング性が悪く、トナー粒子同士が合一し、大きなトナーの凝集体を形成するため好ましくない。近年、複写機、プリンターの出力スピードの高速化や本体の小型化が進んでいるため、マシン機内の温度が高くなる傾向にあり、高精細・高画質の画像を安定して得るためには、トナーが高温環境下における十分な保存性、耐熱性、耐ブロッキング性を有することは重要である。また、貯蔵弾性率(G’80)が1×1010[dN/m2]より大きい場合には、保存性、耐熱性、耐ブロッキング性は十分であるものの、低い温度での十分な定着性が得られないため好ましくない。
【0026】
また、温度120〜180℃における貯蔵弾性率(G’120−180)は、十分な低温定着性と耐高温オフセット性とを両立させるために、1×103〜1×106[dN/m2]であることを特徴とする。このG’120−180は、好ましくは1×104〜5×105[dN/m2]であり、より好ましくは2×104〜5×105[dN/m2]である。貯蔵弾性率(G’120−180)が1×103[dN/m2]よりも小さい場合には、トナーの十分な耐高温オフセット性を得ることができないため好ましくない。また、貯蔵弾性率(G’120−180)が1×106[dN/m2]より大きい場合には、トナーの十分な低温定着性を得ることができないため好ましくない。
【0027】
また、本発明の画像形成方法では、現像剤担持体と静電潜像担持体の間隙が250〜600μmであることを特徴とする。間隙が250μmより小さい場合、トナー劣化や静電潜像担持体への付着による画像不良が発生しやすく、また間隙が600μmより大きい場合、画像濃度薄等の問題を生じた。好ましくは現像剤担持体と静電潜像担持体の間隙が300〜500μmであり、より好ましくは350〜450μmである。
【0028】
また、現像剤担持体上に担持される現像剤中のカラートナーの量を1.0〜3.5mg/cm2とにすることにより、画像濃度及び現像剤担持体上の現像剤コート量が耐久印刷時において安定することがわかった。即ち、見かけかさ密度が2.3程度であるフェライトをコア剤とするコートキャリアを用いた場合、現像剤担持体上に保持される現像剤量を20〜45mg/cm2とし、見かけかさ密度が2.0程度である磁性体分散型樹脂キャリアを用いた場合、該現像剤担持体上に保持される現像剤量を18〜40mg/cm2したときに、現像剤の塗布量、トナーの帯電量が安定することが分かった。
【0029】
本発明で用いるトナーに含有される芳香族オキシカルボン酸化合物は、芳香族オキシカルボン酸及び/又は該芳香族オキシカルボン酸の金属化合物を少なくとも有している。該芳香族オキシカルボン酸化合物は、カラートナー表面における存在量が0.05〜8g/kgであることを特徴とする。芳香族オキシカルボン酸化合物のカラートナー表面における存在量が0.05g/kgより少ない場合、荷電制御剤が表面近傍に少なくなり、帯電の安定性に問題が生じた。また、8g/kgより多い場合、磁性キャリアや、現像剤担持体への汚染が発生し易くなる。
【0030】
なお、芳香族オキシカルボン酸金属化合物をトナー中に含有させた場合には、芳香族オキシカルボン酸金属化合物から金属の脱離が生じることがあり、芳香族オキシカルボン酸とフリーの金属が存在するようになる。本願発明において規定されている芳香族オキシカルボン酸化合物のトナー表面における存在量とは、後述する方法によって測定されるものであるが、トナー表面近傍に存在するオキシカルボン酸と、オキシカルボン酸金属化合物のオキシカルボン酸部分をオキシカルボン酸として換算した値の合計量である。
【0031】
更に、本発明で用いるトナーはワックスを含有する。芳香族オキシカルボン酸化合物は、トナー表面での流動性付与の効果があるが、本発明の存在量では、流動性付与能力が下がる。更にワックスを使用することにより、流動性は落ちる方向である。そのため、トナー表面への無機微粉体の添加により、流動性を上げることが行われているが、単に無機微粉体を大量に添加するだけでは、長期に画像形成を行った場合、無機微粉体現像器中に蓄積が起こりやすくなり画像に支障をきたした。
【0032】
本発明においては、現像剤の流動性を下げた場合においても、安定して長期の画像形成が行える方法を見出したものであり、現像剤担持体上におけるカラートナーの帯電量分布が、温度23℃、相対湿度60%の環境下において、絶対値で5〜25μC/gにピークを有し、且つ該環境下における逆極性帯電のトナーの存在量が10体積%以下の範囲であることを特徴とする。
【0033】
従来技術の説明において述べたように、現像バイアスとして直流バイアスのみでなく交流バイアスを印加することは、画像濃度やカブリ防止の点において好ましいことが知られている。しかし、カラー画像形成装置において、現像バイアスを印加する手段として現像器に交流電源を持たせることは画像形成装置の構成を複雑にし、且つ製造コストを増加させる。本発明は、現像バイアスを印加する手段として交流電源を用いず直流電源のみにより、画像濃度の維持やかぶりを改善することができる画像形成方法を提供するものである。
【0034】
現像バイアスに交流電圧を重畳した場合、上記の帯電量分布で現像を行ってもかぶり、飛散の問題は発生しにくいが、本発明のように現像バイアスに直流電圧のみを用いる場合は、トナー飛散が発生しやすい。本発明では、現像バイアスに直流電圧のみを用い、流動性の低い現像剤を用い、低いトリボ分布とした場合でも安定な画像が得られる画像形成方法を確立した。これは、トナーの表面の芳香族オキシカルボン酸化合物の量を制御すること、及び逆極性帯電のトナーの存在量を10体積%以下にすることにより達成できる。
【0035】
帯電量分布のピークが、5μC/gより小さい場合、トナーの飛散、現像性低下が発生しやすい。また、25μC/gより大きい場合、濃度低下等の問題が生じやすい。
【0036】
帯電量分布が、本発明のように低い所に分布がある場合、トナーの帯電が十分でなく、逆極性のトナーや、トナー帯電量が0近傍のものが多く発生しやすい。また、本発明のようにワックスを含むカラートナーは流動性が低く、トナーの帯電の立ち上がりに難があった。しかしながら、本発明においては、芳香族オキシカルボン酸化合物のトナー表面における存在量を制御することにより、上記帯電の立ち上がりを改善することが出来た。また、現像器の現像剤規制ブレードを磁性板にすること、現像器の攪拌を上げることにより、逆極性のトナーを減らすことが可能となりカブリについて有効であった。一方、逆極性のトナーが殆ど存在しない条件では、トナーのチャージアップが発生しやすくなり、濃度薄等の原因となる。そのため、逆極性帯電のトナーの存在量が1〜7体積%であることが好ましい。
【0037】
以下、本発明について更に詳しく説明する。まず、本発明の画像形成方法に用いる二成分系現像剤について説明する。本発明に用いる二成分系現像剤は、磁性キャリア及びカラートナーを含有する。該カラートナーは、結着樹脂、着色剤、芳香族オキシカルボン酸化合物及びワックスを少なくとも含有し、(1)前記結着樹脂は(a)ポリエステル樹脂、(b)ポリエステルユニットとビニル系共重合体ユニットとを有するハイブリッド樹脂成分、又は(c)(a)と(b)の混合物を含有し、(2)前記カラートナーの示差熱分析(DSC)測定における吸熱曲線において、温度30〜200℃の範囲における最大吸熱ピークのピーク温度が60〜110℃であり、(3)前記カラートナーの粘弾性特性において、温度80℃における貯蔵弾性率(G’80)が1×106〜1×1010[dN/m2]の範囲にあり、温度120〜180℃における貯蔵弾性率(G’120−180)が1×103〜1×106[dN/m2]であり、(4)前記芳香族オキシカルボン酸化合物は芳香族オキシカルボン酸又は該芳香族オキシカルボン酸の金属化合物を少なくとも有し、該芳香族オキシカルボン酸化合物のカラートナー表面における存在量が0.05〜8g/kgであることを特徴とする。
【0038】
本発明で用いるカラートナーは、DSC測定における吸熱曲線において、温度30〜200℃の範囲における最大吸熱ピークのピーク温度が60〜110℃である。上述したように、トナーの最大吸熱ピークのピーク温度を上記範囲とすることにより、画像形成装置の高速化に対応することができ、低温から広い定着領域を有するトナーを得ることができる。トナーの上記最大吸熱ピークのピーク温度は、60〜100℃であることが好ましく、60〜90℃であることがより好ましい。
【0039】
なお、本発明においてトナーの上記吸熱曲線の最大吸熱ピークのピーク温度を上記範囲に調整する方法の一つとして、後述するワックスを適宜選択することが挙げられる。
【0040】
また、上述したように、本発明で用いるトナーは、トナーの高温環境下における保存性、耐熱性、耐ブロッキング性を良好にするために、トナーの粘弾性特性において、温度80℃における貯蔵弾性率(G’80)が1×106〜1×1010[dN/m2]であることを特徴とする。また、トナーの温度120〜180℃における貯蔵弾性率(G’120−180)は1×104〜5×105[dN/m2]であることが好ましい。この貯蔵弾性率(G’80)及び(G’120−180)のより好ましい範囲は既に述べたとおりである。
【0041】
更に、トナーの粘弾性特性において、温度120〜180℃における貯蔵弾性率の最小値(G’min)に対する最大値(G’max)の比(G’max/G’min)が30以下であることが好ましい。より好ましくは20以下である。
【0042】
本発明において、トナーの貯蔵弾性率(G’80)、(G’120−180)及び(G’max/G’min)は、トナーに含有される結着樹脂の分子量分布、芳香族オキシカルボン酸化合物の添加量、並びにトナー製造時の混練温度、混練装置への原材料の供給量、及び混練機の軸形状や回転速度等を適宜選択することにより調整できる。
【0043】
本発明で用いるカラートナーに用いられる結着樹脂は、(a)ポリエステル樹脂、(b)ポリエステルユニットとビニル系共重合体ユニットとを有するハイブリッド樹脂成分、又は(c)(a)と(b)の混合物を含有する。
【0044】
結着樹脂として(a)ポリエステル樹脂を用いる場合は、2価以上のアルコール成分と、カルボン酸又はカルボン酸無水物、カルボン酸エステル等の2価以上の酸成分とが原料モノマーとして使用できる。具体的には、例えば2価アルコール成分としては、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
【0045】
3価以上のアルコール成分としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
【0046】
酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸類又はその無水物;こはく酸、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸等のアルキルジカルボン酸類又はその無水物;炭素数6〜12のアルキル基で置換されたこはく酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸及びシトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸類又はその無水物;が挙げられる。
【0047】
それらの中でも、特に下記一般式(1)で代表されるビスフェノール誘導体をジオール成分とし、2価以上のカルボン酸又はその酸無水物、又はその低級アルキルエステルとからなるカルボン酸成分(例えば、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等)を酸成分として、これらを縮重合したポリエステル樹脂が、カラートナーとして良好な帯電特性を有するので好ましい。
【0048】
【化1】
(式中、Rはエチレン又はプロピレン基を示し、x、yはそれぞれ1以上の整数であり、且つx+yの平均値は2〜10である。)
【0049】
本発明のトナーに含有される結着樹脂において、「ハイブリッド樹脂成分」とは、ビニル系重合体ユニットとポリエステルユニットが化学的に結合された樹脂を意味する。具体的には、ポリエステルユニットと(メタ)アクリル酸エステル等のカルボン酸エステル基を有するモノマーを重合したビニル系重合体ユニットとがエステル交換反応によって形成されるものであり、好ましくはビニル系重合体を幹重合体、ポリエステルユニットを枝重合体としたグラフト共重合体(あるいはブロック共重合体)を形成するものである。
【0050】
なお、本発明において「ポリエステルユニット」とはポリエステルに由来する部分を示し、「ビニル系重合体ユニット」とはビニル系重合体に由来する部分を示す。ポリエステルユニットを構成するポリエステル系モノマーとしては、上述のポリエステル樹脂に用いられる多価カルボン酸成分と多価アルコール成分を挙げることができ、ビニル系重合体ユニットを構成するモノマーとしては以下に示すようなビニル基を有するモノマーを挙げることができる。
【0051】
ビニル系樹脂又はビニル系重合体ユニットを生成するためのビニル系モノマーとしては、次のようなものが挙げられる。スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、m−ニトロスチレン、o−ニトロスチレン、p−ニトロスチレン等のスチレン及びその誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のスチレン不飽和モノオレフィン類;ブタジエン、イソプレン等の不飽和ポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニルデン、臭化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等のビニルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体等が挙げられる。
【0052】
更に、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物等の不飽和二塩基酸無水物;マレイン酸メチルハーフエステル、マレイン酸エチルハーフエステル、マレイン酸ブチルハーフエステル、シトラコン酸メチルハーフエステル、シトラコン酸エチルハーフエステル、シトラコン酸ブチルハーフエステル、イタコン酸メチルハーフエステル、アルケニルコハク酸メチルハーフエステル、フマル酸メチルハーフエステル、メサコン酸メチルハーフエステル等の不飽和二塩基酸のハーフエステル;ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸等の不飽和二塩基酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸等のα,β−不飽和酸;クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物等のα,β−不飽和酸無水物、該α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物;アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステル等のカルボキシル基を有するモノマーが挙げられる。
【0053】
更に、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸エステル類;4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルヘキシル)スチレン等のヒドロキシ基を有するモノマーが挙げられる。
【0054】
本発明のトナーにおいて、結着樹脂のビニル系重合体ユニットは、ビニル基を2個以上有する架橋剤で架橋された架橋構造を有していてもよいが、この場合に用いられる架橋剤は、芳香族ジビニル化合物として例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンが挙げられ;アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられ;エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタアクリレートに代えたものが挙げられ;芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として例えば、ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられる。
【0055】
多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテートが挙げられる。
【0056】
本発明ではビニル系共重合体成分及び/又はポリエステル樹脂成分中に、両樹脂成分と反応し得るモノマー成分を含むことが好ましい。ポリエステル樹脂成分を構成するモノマーのうちビニル系共重合体と反応し得るものとしては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はその無水物などが挙げられる。ビニル系共重合体成分を構成するモノマーのうちポリエステル樹脂成分と反応し得るものとしては、カルボキシル基又はヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸もしくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
【0057】
ビニル系樹脂とポリエステル樹脂の反応生成物を得る方法としては、先に挙げたビニル系樹脂及びポリエステル樹脂のそれぞれと反応しうるモノマー成分を含むポリマーが存在しているところで、どちらか一方もしくは両方の樹脂の重合反応をさせることにより得る方法が好ましい。
【0058】
本発明で用いるビニル系共重合体を製造する場合に用いられる重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(−2メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(カーバモイルアゾ)−イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチル−プロパン)、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−クミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トリオイルパーオキサイド、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジ−メトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエイト、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエイト、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエイト、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレートが挙げられる。
【0059】
本発明のトナーに用いられるハイブリッド樹脂を調製できる製造方法としては、例えば、以下の(1)〜(6)に示す製造方法を挙げることができる。
【0060】
(1)ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂及びハイブリッド樹脂成分をそれぞれ製造後にブレンドする方法であり、ブレンドは有機溶剤(例えば、キシレン)に溶解・膨潤した後に有機溶剤を留去して製造される。なお、ハイブリッド樹脂成分は、ビニル系重合体とポリエステル樹脂を別々に製造後、少量の有機溶剤に溶解・膨潤させ、エステル化触媒及びアルコールを添加し、加熱することによりエステル交換反応を行って合成されるエステル化合物を用いることができる。
【0061】
(2)ビニル系重合体ユニット製造後に、これの存在下にポリエステルユニット及びハイブリッド樹脂成分を製造する方法である。ハイブリッド樹脂成分はビニル系重合体ユニット(必要に応じてビニル系モノマーも添加できる)とポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸)及び/又はポリエステルとの反応により製造される。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。
【0062】
(3)ポリエステルユニット製造後に、これの存在下にビニル系重合体ユニット及びハイブリッド樹脂成分を製造する方法である。ハイブリッド樹脂成分はポリエステルユニット(必要に応じてポリエステルモノマーも添加できる)とビニル系モノマー及び/又はビニル系重合体ユニットとの反応により製造される。
【0063】
(4)ビニル系重合体ユニット及びポリエステルユニット製造後に、これらの重合体ユニット存在下にビニル系モノマー及び/又はポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸)を添加することによりハイブリッド樹脂成分が製造される。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。
【0064】
(5)ハイブリッド樹脂成分を製造後、ビニル系モノマー及び/又はポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸)を添加して付加重合及び/又は縮重合反応を行うことによりビニル系重合体ユニット及びポリエステルユニットが製造される。この場合、ハイブリッド樹脂成分は上記(2)〜(4)の製造方法により製造されるものを使用することもでき、必要に応じて公知の製造方法により製造されたものを使用することもできる。更に、適宜、有機溶剤を使用することができる。
【0065】
(6)ビニル系モノマー及びポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸等)を混合して付加重合及び縮重合反応を連続して行うことによりビニル系重合体ユニット、ポリエステルユニット及びハイブリッド樹脂成分が製造される。更に、適宜、有機溶剤を使用することができる。
【0066】
上記(1)〜(5)の製造方法において、ビニル系重合体ユニット及び/又はポリエステルユニットは複数の異なる分子量、架橋度を有する重合体ユニットを使用することができる。
【0067】
本発明のトナーに含有される結着樹脂は、上記ポリエステルとビニル系共重合体との混合物を使用しても良い。
【0068】
本発明のトナーに含有される結着樹脂は、上記ハイブリッド樹脂とビニル系共重合体との混合物を使用しても良い。
【0069】
本発明のトナーに含有される結着樹脂は、上記ポリエステル樹脂と上記ハイブリッド樹脂に加えてビニル系共重合体の混合物を使用しても良い。
【0070】
また、結着樹脂の酸価が1〜60mgKOH/gであることが好ましく、5〜50mgKOH/gであることがより好ましい。
【0071】
また、トナー化した際のTHF可溶分のGPC測定において、数平均分子量(Mn)が1500〜10000であり、重量平均分子量(Mw)が3000〜5000000であることが好ましい。
【0072】
結着樹脂の数平均分子量(Mn)が1300未満の場合又は重量平均分子量(Mw)が2600未満、もしくはトナーの数平均分子量(Mn)が1500未満の場合又は重量平均分子量(Mw)が3000未満の場合には、いずれも定着画像表面の平滑性は高く見た感じの鮮やかさはあるものの、耐久的な使用において高温オフセットが発生しやすくなり、更に、長期保存安定性が低下し、現像器内でのトナー融着や、キャリア表面にトナー成分が付着することによるキャリアスペントの発生といった新たな問題も懸念される。更に、カラートナー粒子の製造時のトナー原料の溶融混練時にシェアーがかかり難く、着色剤の分散性が低下し易く、よってトナーの着色力の低下やトナーの帯電量の変動が生じ易い。
【0073】
結着樹脂の数平均分子量(Mn)が9500を超える場合又は重量平均分子量(Mw)が190000を越える場合、又はトナーの数平均分子量(Mn)が10000を超える場合若しくは重量平均分子量(Mw)が5000000を越える場合は、いずれも耐オフセット性に優れるものの、定着設定温度を高くせざるを得ないし、更に、仮に顔料の分散の程度をコントロールできたとしても、画像部での表面平滑性が低下してしまい色再現性が低下し易くなってしまう。
【0074】
ポリエステル樹脂のMw/Mnが2未満の場合には、一般に得られるポリエステル樹脂は、分子量自体が小さくなることから、前述の分子量が小さい場合と同様に耐久的な使用による高温オフセット現像、長期保存安定性の低下、現像器内でのトナー融着及びキャリアスペントが生じ易くなり、更にトナーの帯電量のばらつきが生じ易い。
【0075】
結着樹脂のMw/Mnが20を越える場合は、耐高温オフセット性に優れるものの、定着設定温度を高くせざるを得ないし、更に、仮に顔料の分散の程度をコントロールできたとしても、画像部での表面平滑性が低下してしまい、二次色の混色性が低下するために、色再現性が低下し易くなってしまう。
【0076】
結着樹脂の酸価が1未満の場合には、耐久使用時における帯電量の上昇、所謂チャージアップが発生しやすく、画像濃度を長期に渡って維持することが困難となる。結着樹脂の酸価が60を越える場合は、チャージアップ傾向はなくなるが、特に高温高湿環境時における帯電量の減少傾向、所謂チャージダウンに起因する「白地カブリ」が発生し、画像品質の低下を招くこととなる。
【0077】
本発明で用いられるカラートナーは、離型剤としてワックスを含有する。本発明で用いるワックスとしては次のものが挙げられる。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックス等の脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;脂肪族炭化水素系ワックスのブロック共重合物;カルナバワックス、サゾールワックス、モンタン酸エステルワックス等の脂肪酸エステルを主成分とするワックス;及び脱酸カルナバワックス等の脂肪酸エステルを一部又は全部を脱酸化したものなどが挙げられる。更に、離型剤として、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸等の飽和直鎖脂肪酸;ブランジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸等の不飽和脂肪酸;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール等の飽和アルコール;ソルビトール等の多価アルコール;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミド等の脂肪酸アミド;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミド;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドの如き不飽和脂肪酸アミド;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミド等の芳香族系ビスアミド;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸等のビニルモノマーをグラフト化させたグラフトワックス;ベヘニン酸モノグリセリド等の脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物などが挙げられる。
【0078】
特に好ましく用いられるワックスは、パラフィンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスである。
【0079】
本発明においては更に、ワックスは、DSCによって測定される昇温時の吸熱曲線において、最大吸熱ピークの極大値が55〜80℃であるものを用いることが好ましい。
【0080】
本発明では、結着樹脂中でのワックスの分散性を良好なものとするために、トナーの製造工程において、以下に説明するようなワックス分散マスターバッチを用いることが好ましい。
【0081】
ワックス分散マスターバッチとしては、(i)ポリエステル樹脂、(ii)ワックス、(iii)スチレン系モノマー及び(メタ)アクリル酸系モノマーから選ばれる1種又は2種以上のモノマーを用いて合成された共重合体とポリオレフィンを少なくとも有するものが良い。
【0082】
本発明に用いる(ii)ワックスは、予め樹脂中に微分散されるワックス分散剤として添加される。ワックス分散剤は結着樹脂、ワックス、分散剤からなる。分散剤は、ポリオレフィンおよびスチレン系の重合生成物からなり、樹脂とワックスを微分散させる役割を持つ。
【0083】
また、上述したように、(ii)ワックスのDSCによって測定される昇温時の吸熱曲線において、最大吸熱ピークの極大値が60〜110℃であること、及びトナーの質量を基準としてワックスを0.1〜6質量%含有させることが好ましい。トナー中のワックスの含有量が0.1質量%未満の場合は、特に定着オイルの塗布量を減らした場合又は全く使用しない場合の離型効果が得られず、6質量%よりも多い場合は、顔料の分散性が悪くなり、結果的にトナーの彩度を損なうこととなる。
【0084】
また、最大吸熱ピークが60℃未満のワックスは、本発明に用いられる樹脂のガラス転移温度よりも融点が低く、高温環境に放置した際にワックスがトナー表面に溶け出すため、耐ブロッキング性能が大幅に悪くなる。一方、最大吸熱ピークが110℃より大きい場合、トナー定着溶融時にワックスが迅速に溶融トナー表面に移行できず、離型性が悪くなるために、高温オフセットが発生し易くなる。
【0085】
(ii)ワックスのGPCによる分子量分布において、重量平均分子量(Mw)が400〜800であり、数平均分子量(Mn)が400〜600であり、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.0〜2.0であることが好ましい。(ii)ワックスの数平均分子量(Mn)が400未満の場合又は重量平均分子量(Mw)が400未満の場合、高温環境に放置した際にトナー表面に溶け出すため、耐ブロッキング性能が大幅に悪くなる。
【0086】
また、(ii)ワックスの数平均分子量(Mn)が600を超える場合又は重量平均分子量(Mw)が800を越える場合、若しくは重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が2.0を越える場合、トナー定着溶融時にワックスが迅速に溶融トナー表面に移行できず、離型性が悪くなるために、高温オフセットが発生し易くなる。
【0087】
本発明において結着樹脂として用いられるポリエステル樹脂又はハイブリッド樹脂成分とワックスとの相溶性は元来より乏しいため、そのままの状態で添加してトナー化した際には、トナー中にワックスが偏析して存在し、遊離ワックス等も発生することから、結果的に白抜けの発生や帯電不良等の不具合が発生する。
【0088】
本発明におけるワックスの添加方法としては、トナー製造時にバインダーその他の材料と共に同時添加するのではなく、上記のようにワックス分散マスターバッチとして、予めワックスを樹脂組成物中に微分散させた形態で添加することが好ましい。
【0089】
本発明で用いるトナーは、芳香族オキシカルボン酸又は該芳香族オキシカルボン酸の金属化合物を少なくとも有する芳香族オキシカルボン酸化合物を含有する。芳香族オキシカルボン酸の金属化合物に用いられる2価の金属として、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Pb2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Zn2+、Cu2+が挙げられる。これらの2価の金属のうち、Zn2+、Ca2+、Mg2+、Sr2+が好ましい。3価以上の金属としてはAl3+、Cr3+、Fe3+、Ni3+が挙げられる。これらの金属の中で好ましいのはAl3+、Cr3+であり、特に好ましいのはAl3+である。
【0090】
本発明においては、芳香族オキシカルボン酸の金属化合物として、ジ−tert−ブチルサリチル酸のアルミニウム化合物が特に好ましい。
【0091】
芳香族オキシカルボン酸の金属化合物は、例えば、オキシカルボン酸を水酸化ナトリウム水溶液に溶解させ、2価以上の金属原子を溶融している水溶液を水酸化ナトリウム水溶液に滴下し、加熱撹拌し、次に水溶液のpHを調整し、室温まで冷却した後、ろ過水洗することにより芳香族オキシカルボン酸の金属化合物を合成し得る。ただし、上記の合成方法だけに限定されるものではない。
【0092】
芳香族オキシカルボン酸化合物は、トナーの質量基準で0.1〜10質量%使用すると、トナーの帯電量の初期変動が少なく、現像時に必要な絶対帯電量が得られやすく、結果的に「カブリ」や画像濃度ダウン等の画像品質の低下がなく好ましい。
【0093】
芳香族オキシカルボン酸化合物の含有率が、トナーの質量基準として0.1%未満である(全く加えない)と、耐久時における帯電量が不安定となり、結果的に画像濃度の維持性に劣ることとなる。また、芳香族オキシカルボン酸化合物の含有率が、トナーの質量基準として10%を越えると、逆に耐久的に使用した際にチャージアップが発生するために、画像濃度の低下を招くこととなる。
【0094】
本発明では、芳香族オキシカルボン酸化合物のトナー表面における存在量が0.05〜8g/kgであることを特徴とする。この芳香族オキシカルボン酸化合物の存在量は0.05〜4g/kgであることがより好ましい。上述したように、本発明で用いるトナーは、ワックスを含有するために流動性が低くても、安定して画像形成が行われるように低い帯電分布を有している。また、本発明では現像装置の構成を簡略化するために帯電バイアスに直流電圧をのみを用いている。本発明では、後述するように現像剤担持体上に担持される二成分現像剤中の逆極性トナーの存在量を制御すると共に、トナーのトナー表面の芳香族オキシカルボン酸化合物の存在量を上記範囲とすることにより、帯電バイアスとして直流電圧のみを用い、且つトナーの帯電分布を低くしても、長期にわたって安定した画像を形成することができる。
【0095】
本発明において芳香族オキシカルボン酸化合物のトナー表面における存在量は、トナー製造時の混練温度、混練時間、ワックス分散マスターバッチの条件及びワックスと他のトナー成分との混合条件等を適宜選択することによって、上記範囲に調整することができる。
【0096】
本発明に用いられるトナーに含有される着色剤としては、顔料及び/又は染料を用いることができる。
【0097】
例えば染料としては、C.I.ダイレクトレッド1、C.I.ダイレクトレッド4、C.I.アシッドレッド1、C.I.ベーシックレッド1、C.I.モーダントレッド30、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー15、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー5、C.I.モーダントブルー7、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6等が挙げられる。
【0098】
顔料としては、ミネラルファストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、ベンジジンオレンジG、パーマネントレッド4R、ウオッチングレッドカルシウム塩、エオシンレーキ、ブリリアントカーミン3B、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC、クロムグリーン、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等が挙げられる。
【0099】
また、フルカラー画像形成用トナーとして使用する場合、マゼンタ用着色顔料としては、C.I.ピグメントレッド1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,21,22,23,30,31,32,37,38,39,40,41,48,49,50,51,52,53,54,55,57,58,60,63,64,68,81,83,87,88,89,90,112,114,122,123,163,202,206,207,209,238、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.バットレッド1,2,10,13,15,23,29,35等が挙げられる。
【0100】
係る顔料を単独で使用しても構わないが、染料と顔料と併用してその鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点からより好ましい。マゼンタ用染料としては、C.I.ソルベントレッド1,3,8,23,24,25,27,30,49,81,82,83,84,100,109,121、C.I.ディスパースレッド9、C.I.ソルベントバイオレット8,13,14,21,27、C.I.ディスパースバイオレット1等の油溶染料;C.I.ベーシックレッド1,2,9,12,13,14,15,17,18,22,23,24,27,29,32,34,35,36,37,38,39,40、C.I.ベーシックバイオレット1,3,7,10,14,15,21,25,26,27,28等の塩基性染料が挙げられる。
【0101】
シアン用着色顔料としては、C.I.ピグメントブルー2,3,15,16,17;C.I.アシッドブルー6;C.I.アシッドブルー45又はフタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1〜5個置換した銅フタロシアニン顔料等が挙げられる。
【0102】
イエロー用着色顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1,2,3,4,5,6,7,10,11,12,13,14,15,16,17,23,65,73,74,83,93,97,155,180、C.I.バットイエロー1,3,20等が挙げられる。
【0103】
着色剤の使用量は、結着樹脂100質量部に対して1〜15質量部、好ましくは3〜12質量部、より好ましくは4〜10質量部含有していることが良い。
【0104】
着色剤の含有量が15質量部より多い場合には、透明性が低下し、加えて人間の肌色に代表される様な中間色の再現性も低下し易くなり、更にはトナーの帯電性の安定性が低下し、目的とする帯電量が得られにくくなる。
【0105】
着色剤の含有量が1質量部より少ない場合には、目的とする着色力が得られ難く、高い画像濃度の高品位画像が得られ難い。
【0106】
トナー粒子には、流動性向上剤が外添されていることが画質向上のために好ましい。流動性向上剤としては、トナー粒子に外添することにより、流動性が添加前後を比較すると増加し得るものである。
【0107】
例えば、フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末等のフッ素系樹脂粉末;湿式製法によるシリカ微粉末、乾式製法によるシリカ微粉末等のシリカ微粉末、それらシリカ微粉末をシランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイル等の処理剤により表面処理を施した処理シリカ微粉末;酸化チタン微粉末;アルミナ微粉末、処理酸化チタン微粉末、処理酸化アルミナ微粉末が挙げられる。
【0108】
流動性向上剤は、BET法で測定した窒素吸着により非表面積が30m2/g以上、好ましくは50m2/g以上のものが良好な結果を与える。トナー粒子100質量部に対して流動性向上剤0.01〜8質量部、好ましくは0.1〜4質量部使用するのが良い。
【0109】
トナー粒子は結着樹脂、着色剤、有機金属化合物及びその他の任意成分の添加剤をヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合機により充分混合し、ニーダー、エクストルーダー等の熱混練機を用いて溶融、捏和及び練肉し、溶融混練物を冷却固化後に固化物を粉砕し、粉砕物を分級することにより所定の平均粒径のトナー粒子を生成することができる。
【0110】
更に、流動性向上剤とトナー粒子をヘンシェルミキサー等の混合機により充分混合し、トナー粒子表面に流動性向上剤を有するトナーを得ることができる。
【0111】
本発明において、トナーの重量平均粒径(D4)は、4.0〜10.0μm、好ましくは4.5〜9.0μmが良い。
【0112】
トナーの重量平均粒径(D4)が4.0μm未満の場合には、帯電安定化が達成しづらくなり、耐久において、カブリやトナー飛散が発生しやすくなる。
【0113】
トナーの重量平均粒径(D4)が10.0μmを越える場合には、ハーフトーン部の再現性が大きく低下し、得られた画像はガサついた画像になってしまう。
【0114】
更に、本発明のトナーは、体積平均粒径(Dv)が2.5〜6.0μmであることが、より高画質画像の形成のために好ましい。
【0115】
トナーの体積平均粒径(Dv)が2.5μm未満の場合には、トナーの帯電安定性が低下し、6.0μmを越える場合には、画質が粗くなる傾向にある。
【0116】
本発明で用いる二成分系現像剤は磁性キャリアを含有する。磁性キャリアとしては従来より現像剤に用いられる公知のものを用いることができ、特に限定されないが、フェライトをコア剤とするコートキャリア、又は磁性体分散型キャリアを好ましく用いることができる。
【0117】
本発明では、二成分現像剤中におけるトナーと磁性キャリアの混合比は、画像形成工程において現像剤担持体に担持される現像剤中におけるトナー量が1.0〜3.5mg/cm2となるように、適宜調整される。
【0118】
次に、上記二成分現像剤を用いる本発明の画像形成方法について説明する。本発明の画像形成方法は、二成分系現像剤を担持する現像剤担持体に直流バイアスを印加して、現像剤担持体に対して所定の間隙をもって配置された静電潜像担持体上に形成された静電潜像を前記カラートナーによって現像してトナー像を形成する画像形成方法であって、(A)前記現像剤担持体上に担持される現像剤中のカラートナー量が、1.0〜3.5mg/cm2であり、(B)前記現像剤担持体と前記静電潜像担持体の間隙が250〜600μmであり、(C)前記現像剤担持体上におけるカラートナーの帯電量分布が、23℃、相対湿度60%の環境下において、絶対値で5〜25μC/gにピークを有し、且つ該環境下における逆極性帯電のトナーの存在量が10体積%以下であることを特徴とする。
【0119】
以下、図を用いて本発明の画像形成方法に関して説明する。
【0120】
図1は本発明の画像形成方法を好適に実施できる画像形成装置の一例である電子写真方式のフルカラー機の概略構成図である。図1において、ABCDの各ステーションは、フルカラー画像のそれぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像を形成するが、ステーションの色順については一切問わない。以下の説明において、例えば一次帯電器21とあれば、ABCD各ステーションにおける一次帯電器21A、21B、21C、21Dを指すものとする。
【0121】
それぞれのステーションにおいて、画像形成は次のように行われる。まず、静電潜像担持体である感光ドラム4を回転自在に設け、該感光ドラム4を一次帯電器21で一様に帯電し、次に例えばレーザのような発光素子22によって情報信号を露光して静電潜像を形成し、現像装置9で可視像化する。次に該可視像が転写紙搬送シート27により搬送された転写紙24に、転写帯電器23により転写される。転写紙24には各ステーションでイエロートナー像、マゼンタトナー像、シアントナー像、ブラックトナー像が順に重ねて転写される。この4色の各トナー像が積層された転写紙24は定着装置25で熱と圧力とにより混色及び定着され、フルカラー像が形成されて装置外に排出される。また、感光ドラム4上の転写残トナーはクリーニング装置26により除去される。
【0122】
図2は図1の現像装置9の構成を示す部分的拡大図である。この図9を用いて現像装置について詳細に説明する。同図にて、感光ドラム4と所定距離(本実施形態では250〜600μm)をおいて対向して配置された現像装置9は、現像容器8、現像剤担持体としての現像スリーブ3、及び現像剤の帯電付与及びトナー量規制部材としてのブレード2を有している。
【0123】
現像容器8は、感光ドラム4に対面した現像域に相当する位置が開口しており、この開口部に一部露出するようにして現像スリーブ3が回転可能に配置されている。現像スリーブ3は非磁性材料で構成され、現像動作時には図示矢印方向に回転する。現像スリーブ3はブレード2によって層厚規制された二成分現像剤の層を担持搬送し、感光ドラム4と対向する現像域でトナーを感光ドラム4に供給して潜像を現像する。現像効率を向上させるために、現像スリーブ3には電源15から、現像バイアス電圧が印加される。
【0124】
現像装置9は上記構成により、現像スリーブ3の表面に供給された二成分現像剤を、現像スリーブ3の回転に伴って感光ドラム4との対向部(現像域)に搬送すると共に、ブレード2によりトナーへの帯電付与及び二成分現像剤の量の規制を行い、現像域に搬送される二成分現像剤の量を適正に維持する。
【0125】
現像装置9において感光ドラム4との対向部にある現像域では、画像形成装置本体側に設けられたバイアス電源15を介して現像スリーブ3に直流のバイアス電圧が印加され、現像スリーブ3上のトナーが感光ドラム4の静電潜像側に移動して、該静電潜像がトナー像として顕像化される。
【0126】
また、本発明では、現像剤担持体上に担持される現像剤中のトナー量を1.0〜3.5mg/cm2とすることを特徴とする。このトナー量は、上述したように二成分系現像剤中のトナーと磁性キャリアの混合比を適宜調整することにより上記範囲とすることができる。
【0127】
現像剤担持体上に担持される現像剤中のトナー量は、基本的には、二成分現像剤中のトナーと磁性キャリアとの混合比から求めることができるが、以下の方法によっても測定できる。即ち、磁石を用いてキャリアを現像剤担持体上に残したまま、トナーを界面活性剤により洗い出し、その質量を求める方法である。
【0128】
また、本発明では現像バイアスとして直流電圧のみを用いているが、該直流バイアス(VDC)が、画像形成部の電位Vaと、非画像部の電位Vbの間にあり、画像形成部バイアスであるVcont(=|Va−VDC|)が200〜600Vの範囲にあり、カブリ防止バイアスであるVback(=|Vb−VDC|)が50〜250Vであることが好ましい。より好ましくは、Vcontが250〜500Vであり、Vbackが100〜200Vである。Vcontが200Vより低い場合、濃度が十分でなく、Vcontが600Vより高い場合、ハイライト部での濃度再現性に難があった。また、Vbackが50Vより低い場合、カブリを十分に取りきれず、Vbackが250Vより高い場合はキャリアの付着等が発生して画像欠陥を招きやすくなった。より好ましくは、画像形成部バイアスが250〜500V、カブリ防止バイアスが100〜200Vの範囲で用いることが好ましい。
【0129】
更に、上述したように、流動性の低いトナーを用い、且つ現像バイアスに直流電圧のみを用いた場合でも、長期にわたって安定して画像形成を行うために、現像剤担持体上におけるトナーの帯電量分布が温度23℃、相対湿度60%の環境下において、絶対値で5〜25μC/gにピークを有し、且つ該環境下における逆極性帯電のトナーの存在量が10体積%であることを特徴とする。トナーの帯電量分布のピークは、10〜20μCに存在することが好ましい。
【0130】
また、現像剤担持体上のトナー層の厚さを規制するブレード2は、主として磁性材料からなるものであることが好ましい。
【0131】
図3は図1の定着装置25の構成を示す部分的拡大図である。図3において、定着手段である定着ローラー39は、例えば厚さ5mmのアルミ製の芯金41上に厚さ2mmのRTV(室温加硫型、JIS−A硬度20)シリコーンゴム層42、この外側に厚さ50μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)層43を有している。
【0132】
一方、加圧手段である加圧ローラー40は、例えば厚さ5mmのアルミの芯金44の上に厚さ2mmのRTVシリコーンゴム層45(ゴム硬度JIS−A硬度40)、この外側に厚さ150μmのPTFE層を有している。
【0133】
図3において、定着ローラー、加圧ローラー共にその外径は、60mmφであるが、加圧ローラーの方が硬度が高いため、白紙による排紙テストでは、両ローラーの中心線を結ぶ線に対しての垂線より、排紙方向は、加圧ローラー側になる。この排紙方向を加圧ローラー側にすることが、画像面積の大きいコピー画像を定着する場合の定着支持体の定着ローラー巻きつき防止に極めて重要である。排紙方向を加圧ローラー側にする手段としては、前記した硬度差をつける方法、或いは、加圧ローラーの径を定着ローラーよりも小さくする方法、加圧ローラー側の設定温度を定着ローラーよりも高くし、定着紙背面、つまり加圧ローラー側の紙面の水分をより多く蒸発させることにより、ごく少量の紙のちぢみを利用する方法などが挙げられる。
【0134】
また、上記定着ローラー39及び加圧ローラー40には発熱手段であるハロゲンヒータ46が芯金内に配設されて、転写紙の両面から加熱が行われる。定着ローラー39及び加圧ローラー40に当接されたサーミスタ48a及び48bにより定着ローラー39及び加圧ローラーの温度が検知され、この検知温度に基づき制御装置49a及び49bによりハロゲンヒータ46及び47がそれぞれ制御され、定着ローラー39の温度及び加圧ローラー40の温度が共に一定の温度(例えば、160℃±10℃)に保つように制御される。定着ローラー39と加圧ローラー40は加圧機構(図示せず)によって総圧約40kgで加圧されている。
【0135】
結着樹脂及びトナー粒子における各物性の測定方法を以下に説明する。
【0136】
〈酸価(JIS酸価)の測定〉
サンプル2〜10gを200〜300mlの三角フラスコに秤量し、メタノール:トルエン=30:70の混合溶媒約50mlを加えて樹脂を溶解する。溶解性が悪いようであれば少量のアセトンを加えてもよい。0.1%のブロムチモールブルーとフェノールレッドの混合指示薬を用い、予め標定されたN/10カ性カリ〜アルコール溶液で滴定し、アルコールカリ液の消費量から次式を用いて酸価を求める。
【0137】
【数1】
酸価 = KOH(ml数)×N×56.1/試料質量
(但し、NはN/10KOHのファクター)
【0138】
〈GPCによる分子量の測定(ポリエステル樹脂、共重合体類)〉
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるクロマトグラムの分子量は次の条件で測定される。40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を毎分1mlの流速で流し、試料濃度として0.05〜0.6質量%に調整した樹脂のTHF試料溶液を50〜200μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば、Pressure Chemical Co.製あるいは、東洋ソーダ工業社製の分子量が6×102、2.1×103、4×103、1.75×104、5.1×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2×106、4.48×106のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。
【0139】
カラムとしては、103〜2×106の分子量領域を的確に測定するために、市販のポリスチレンゲルカラムを複数組み合わせるのが良く、例えば、Waters社製のμ−styragel 500、103、104、105の組み合わせや、昭和電工社製のshodex KA−801、802、803、804、805、806、807の組み合わせが好ましい。
【0140】
〈GPCによる分子量の測定(ポリオレフィン、炭化水素系ワックス類)〉
(GPC測定条件)
装置 :GPC−150(ウォーターズ社)
カラム:GMH−HT30cm2連(東ソー社製)
温度 :135℃
溶媒 :o−ジクロロベンゼン(0.1%アイオノール添加)
流速 :1.0ml/min
試料 :0.15%の試料を0.4ml注入
以上の条件で測定し、試料の分子量算出にあたっては単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量較正曲線を使用する。更に、Mark−Houwink粘度式から導き出される換算式でポリスチレン換算することによって算出される。
【0141】
〈ワックス及びトナーの最大吸熱ピークの測定〉
示差熱分析測定装置(DSC測定装置)、DSC−7(パーキンエルマー社製)を用い測定する。
【0142】
測定試料は5〜20mg、好ましくは10mgを精密に秤量する。
【0143】
これをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用い、測定温度範囲30〜200℃の間で、昇温速度10℃/minで常温常湿下で測定を行う。
【0144】
この昇温過程で、温度30〜200℃の範囲におけるメインピークの吸熱ピークが得られる。最大吸熱ピーク温度とは、言うまでもなく、その範囲で最大の極大値を示す温度のことである。
【0145】
〈トナー粒子又はトナーの粒度分布の測定〉
測定装置としては、コールターカウンターTA−II或いはコールターマルチサイザーII(コールター社製)を用いる。電解液は、1級塩化ナトリウムを用いて、約1%NcCl水溶液を調製する。例えば、ISOTON(登録商標)−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。測定方法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として、界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン塩酸)を、0.1〜5mlを加え、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、前記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、トナー粒子の体積及び個数を各チャンネルごとに測定して、トナーの体積分布と個数分布とを算出する。それから、トナー粒子の体積分布から求めた質量基準のトナー粒子又はトナーの重量平均粒径(D4)及び体積平均粒径(Dv)(各チャンネルの中央値をチャンネル毎の代表値とする)を求める。
【0146】
チャンネルとしては、2.00〜2.52μm;2.52〜3.17μm;3.17〜4.00μm;4.00〜5.04μm;5.04〜6.35μm;6.35〜8.00μm;8.00〜10.08μm;10.08〜12.70μm;12.70〜16.00μm;16.00〜20.20μm;20.20〜25.40μm;25.40〜32.00μm;32〜40.30μmの13チャンネルを用いる。
【0147】
〈二成分現像剤の摩擦帯電量の測定方法〉
二成分現像剤の摩擦帯電量の測定方法を、現像剤保持体上の場合及び静電潜像担持体上の場合についてそれぞれ以下に記載する。
【0148】
(現像剤保持体)
図4は摩擦帯電量を測定する装置の説明図である。底に500メッシュのスクリーン53のある金属製の測定容器52に、複写機又はプリンターの現像剤保持体上から採取した二成分系現像剤を約0.5〜1.5g入れ金属製のフタ54をする。この時の測定容器52全体の質量を秤りW1(g)とする。次に吸引機51(測定容器52と接する部分は少なくとも絶縁体)において、吸引口57から吸引し風量調節弁56を調整して真空計55の圧力を250mmAqとする。この状態で充分、好ましくは2分間吸引を行いトナーを吸引除去する。この時の電位計59の電位をV(ボルト)とする。ここで58はコンデンサーであり容量をC(mF)とする。また、吸引後の測定容器全体の質量を秤りW2(g)とする。この試料の摩擦帯電量(mC/kg)は下式の如く算出される。
【0149】
【数2】
試料の摩擦帯電量(mC/kg) = C×V/(W1−W2)
(但し、測定条件は23℃、60%RHとする。)
【0150】
(静電潜像担持体)
静電潜像担持体上の摩擦帯電量は、吸引式ファラデーケージ法を用いて求める。吸引式ファラデーケージ法とは、現像剤回収装置を用いて複写機又はプリンターの現像スリーブ上の一定面積における全ての一成分系現像剤を吸引回収し、回収した現像剤の質量及び電荷量を測定し、測定された現像剤の質量と電荷量から、現像剤の単位質量当たりの電荷量、すなわち、摩擦帯電量(mC/kg)を求める方法である。
【0151】
この吸引式ファラデーケージ法で用いる現像剤回収装置は、エアーを吸引するための吸引装置部及びこの吸引装置に連結された現像剤を回収するための回収装置部とを有している。回収装置部は、現像スリーブ上の現像剤を吸引するための現像スリーブの外周曲率に対応した曲率の先端部を持った吸引口を有する外筒と、吸引した現像剤を回収するための円筒ろ紙を有する内筒とを有している。
【0152】
この現像剤回収装置を用いて現像スリーブ上の現像剤の吸引回収を具体的に行うには、現像剤保持体から静電潜像担持体上にトナーを現像し、トナー像が転写紙上に転写されるまでに停止し、上記の現像剤回収装置を用いて、静電潜像担持体上の現像剤を、現像スリーブの一端側から他端側にかけて長手方向に沿って現像剤回収装置の吸引口を現像スリーブ表面に押し付けながら吸引し、吸引した現像剤を円筒ろ紙で回収する。
【0153】
現像剤を回収した円筒ろ紙の質量を測り、この回収後の円筒ろ紙の質量から回収前の円筒ろ紙の質量を引いた値を回収した現像剤の質量とする。このとき、外部から静電的にシールドされた内筒の円筒ろ紙に回収された現像剤の電荷量を測定しておく。
【0154】
〈現像剤担持体上におけるトナーの帯電量分布、及び逆極性帯電トナーの存在量の測定〉
帯電量分布及び逆帯電性トナーの存在量の測定には、ホソカワミクロン社製のE−SPARTアナライザーを用いた。測定には、現像保持体を含む現像器を複写機本体から取り出し、E−SPARTアナライザーに現像器のまま、検出部に現像剤担持体に保持された現像剤が検出口に検知されるように設置し測定を行った。
【0155】
〈トナーの粘弾性の測定〉
トナーを直径25mm、厚さ約2〜3mmの円板状の試料に加圧成形する。次にパラレルプレートにセットし、50〜200℃の温度範囲内で徐々に昇温させ、温度分散測定を行う。昇温速度は2℃/minとし、角周波数(ω)は6.28rad/secに固定し、歪率は自動とする。横軸に温度、縦軸に貯蔵弾性率(G’)を取り、各温度における値を読み取る。測定にあたっては、RDA−II(レオメトリックス社製)を用いる。
【0156】
〈該芳香族オキシカルボン酸化合物の表面存在量の測定〉
分散剤としてコンタミノンN(和光純薬工業社製)0.04gを加えた0.1mol/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を容器に50ml用意し、それぞれの中にトナー1gを秤量して加え、スターラーを用いて50rpmで撹拌し、均一に分散させる。3時間分散処理を行った後、メンブランフィルター(ポアサイズ:0.45μm)を用いて濾過し、得られた濾液の吸収スペクトルを分光光度計により測定し、オキシカルボン酸の呈する最大吸収ピークの最大値とベースラインとの差を求める。得られた結果から、所定の検量線を用いてトナー中のオキシカルボン酸量を算出した。オキシカルボン酸の吸収スペクトルは、例えば280〜350nmの範囲に現れる。
【0157】
本発明の実施態様の例を以下に列挙する。
【0158】
(1)磁性キャリア及びカラートナーを含有する二成分系現像剤を担持する現像剤担持体に直流バイアスを印加して、前記現像剤担持体に対して所定の間隙をもって配置された静電潜像担持体上に形成された静電潜像を前記カラートナーによって現像してトナー像を形成する画像形成方法であって、
(A)前記現像剤担持体上に担持される現像剤中のカラートナー量が、1.0〜3.5mg/cm2であり、
(B)前記現像剤担持体と前記静電潜像担持体の間隙が250〜600μmであり、
(C)前記現像剤担持体上におけるカラートナーの帯電量分布が、温度23℃、相対湿度60%の環境下において、絶対値で5〜25μC/gにピークを有し、且つ該環境下における逆極性帯電のトナーの存在量が10体積%以下であり、
(D)前記カラートナーは結着樹脂、着色剤、芳香族オキシカルボン酸化合物及びワックスを少なくとも含有し、
(1)前記結着樹脂は(a)ポリエステル樹脂、(b)ポリエステルユニットとビニル系共重合体ユニットとを有するハイブリッド樹脂成分、又は(c)(a)と(b)の混合物を含有し、
(2)前記カラートナーの示差熱分析(DSC)測定における吸熱曲線において、温度30〜200℃の範囲における最大吸熱ピークのピーク温度が60〜110℃であり、
(3)前記カラートナーの粘弾性特性において、温度80℃における貯蔵弾性率(G’80)が1×106〜1×1010[dN/m2]の範囲にあり、温度120〜180℃における貯蔵弾性率(G’120−180)が1×103〜1×106[dN/m2]であり、
(4)前記芳香族オキシカルボン酸化合物は芳香族オキシカルボン酸又は該芳香族オキシカルボン酸の金属化合物を少なくとも有し、該芳香族オキシカルボン酸化合物のカラートナー表面における存在量が0.05〜8g/kgである
ことを特徴とする画像形成方法。
【0159】
(2)前記現像剤担持体上におけるカラートナーの帯電量分布が、23℃、相対湿度60%環境下において、絶対値で10〜20μC/gにピークを持ち、且つ該環境下における逆極性帯電のトナーの存在量が1〜7体積%であることを特徴とする(1)の画像形成方法。
【0160】
(3)前記直流バイアス(VDC)の電位が、画像形成部の電位Vaと、非画像部の電位Vbの間にあり、下記式(1)で表される画像形成部バイアスVcontが200〜600Vであり、下記式(2)で表されるカブリ防止バイアスVbackが50〜250Vであることを特徴とする(1)又は(2)の画像形成方法。
【0161】
【数3】
Vcont = |Va−VDC| (1)
Vback = |Vb−VDC| (2)
【0162】
(4)前記画像形成部バイアスVcontが250〜500Vであり、前記カブリ防止バイアスVbackが100〜200Vであることを特徴とする(3)の画像形成方法。
【0163】
(5)前記現像剤担持体と前記静電潜像担持体の間隙が300〜450μmであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかの画像形成方法。
【0164】
(6)前記磁性キャリアがフェライトをコア剤とするコートキャリアであり、前記現像剤担持体上に保持される現像剤の量が20〜45mg/cm2であることを特徴とする特徴とする(1)〜(5)のいずれかの画像形成方法。
【0165】
(7)前記磁性キャリアが磁性体分散型樹脂キャリアであり、前記現像剤担持体上に保持される現像剤の量が18〜40mg/cm2であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかの画像形成方法。
【0166】
(8)前記カラートナーの粘弾性特性において、温度80℃における貯蔵弾性率(G’80)が1×106〜1×108[dN/m2]であり、温度120〜180℃における貯蔵弾性率(G’120−180)が1×104〜5×105[dN/m2]であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかの画像形成方法。
【0167】
(9)前記カラートナーの温度120〜180℃における貯蔵弾性率の最小値(G’min)に対する最大値(G’max)の比(G’max/G’min)が30以下であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかの画像形成方法。
【0168】
(10)前記カラートナーの示差熱分析(DSC)測定における吸熱曲線において、温度30〜200℃の範囲における最大吸熱ピークのピーク温度が60〜100℃の範囲にあることを特徴とする(1)〜(9)のいずれかの画像形成方法。
【0169】
(11)前記カラートナーの示差熱分析(DSC)測定における吸熱曲線において、温度30〜200℃の範囲における最大吸熱ピークのピーク温度が60〜90℃であることを特徴とする(1)〜(10)のいずれかの画像形成方法。
【0170】
(12)前記カラートナーは、0.1mol/リットルの水酸化ナトリウム水溶液により抽出される芳香族カルボン酸化合物の、トナー表面における存在量が0.05〜8mgであることを特徴とする(1)〜(11)のいずれかの画像形成方法。
【0171】
(13)前記芳香族オキシカルボン酸化合物の金属化合物が、該芳香族オキシカルボン酸誘導体のアルミニウム化合物であることを特徴とする(1)〜(12)のいずれかのトナー。
【0172】
(14)前記トナーの重量平均粒径が4〜10μmであることを特徴とする(1)〜(13)のいずれかの画像形成方法。
【0173】
(15)現像剤担持体上の現像剤量を規制するために前記現像剤担持体に対向して配置される規制ブレードを用い、前記規制ブレードは主として磁性材料からなることを特徴とする(1)〜(14)のいずれかの画像形成方法。
【0174】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0175】
〈トナーの製造例1〉
樹脂 100質量部
(結着樹脂(1):95質量部、共重合組成物(1):5質量部)
ワックス:ワックス分散剤マスターバッチ(1) パラフィン5質量部
荷電制御剤:芳香族オキシカルボン酸Al化合物 5質量部
顔料:銅フタロシアニン(C.I.Pigment.Blue 15:3)4質量部
を混練し、粉砕、分級し、シアントナー(1)を作製した。詳細は以下の通りである。
【0176】
結着樹脂(1)は以下のようにして作製した。ビニル系共重合体として、スチレン2.0mol、2−エチルヘキシルアクリレート0.21mol、フマル酸0.16mol、α−メチルスチレンの2量体0.03mol、ジクミルパーオキサイド0.05molを滴下ロートに入れた。また、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン7.0mol、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン3.0mol、テレフタル酸3.0mol、無水トリメリット酸2.0mol、コハク酸5.0mol及び酸化ジブチル錫0.2gをガラス製4リットルの4つ口フラスコに入れ、温度計、撹拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取りつけマントルヒーター内においた。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、140℃の温度で撹拌しつつ、先の滴下ロートよりビニル系樹脂の単量体、架橋剤及び重合開始剤を4時間かけて滴下した。次いで200℃に昇温を行い、4時間反応させて結着樹脂(1)を得た。得られた結着樹脂(1)は、THF可溶成分のGPCにおいて、Mnが3000であり、Mwが81000であり、Mw/Mnが27.0であった。
【0177】
共重合組成物は以下のように作製した。
【0178】
共重合体(1) 90wt%
ポリエチレン(1) 10wt%
上記共重合体(1)とは、スチレン−アクリロニトリル−ブチルアクリレート−の三元共重合体である。共重合体の重量平均分子量(Mw)は15000、数平均分子量(Mn)は2800であった。また、使用したポリエチレンは、DSCによる吸熱ピークが110℃、密度0.93、重量平均分子量(Mw)は2200、数平均分子量(Mn)は1000のものを用いた。
【0179】
該ポリエチレンに(1)が共重合体(1)を上記配合比にてグラフトさせた共重合組成物(1)に、以下の配合比で表1に示すパラフィンワックス(1)を分散させて、ワックス分散剤マスターバッチを得ることができる。
【0180】
共重合組成物(1) 20wt%
パラフィンワックス(1) 20wt%
ジ−tert−ブチルサリチル酸Al化合物 20wt%
結着樹脂(1) 40wt%
【0181】
上記のようにして得られた混練物を更に、上記結着樹脂(1)、銅フタロシアニンを加えてヘンシェルミキサーにより十分予備混合を行い、二軸式押出し機を用い、任意のバレル温度にて溶融混練し、冷却後ハンマーミルをもちいて約1〜2mm程度に粗粉砕し、次いでエアージェット方式による微粉砕機で微粉砕した。得られた微粉砕物を多分割分級装置で微粉及び粗粉を同時に厳密に除去して重量平均粒径7.5μmのシアンカラートナー粒子を得た。
【0182】
該トナー粒子100質量部に対し、イソブチルトリメトキシシランで表面処理した一次粒子径50nmの酸化チタン微粒子1.0質量部を外添混合し、トナー1を製造した。
【0183】
〈トナーの製造例2〉
トナーの製造例1で用いた結着樹脂(1)の代わりに下記に示す結着樹脂(2)を使用し、パラフィンワックス(1)の代わりに表1に示すパラフィンワックス(2)を用いたことを除いて他は全てトナーの製造例1と同じ方法を用いてトナー2を得た。結着樹脂(2)に用いたモノマー構成比を以下に示す。なお、結着樹脂(2)の製造方法は、トナーの製造例1における結着樹脂(1)の製造方法と同様とした。
【0184】
一般式(1)において[x+y=3.0]で表されるジオール成分59mol%
フマル酸 21mol%
テレフタル酸 11mol%
トリメリット酸 9mol%
得られた非線状ポリエステル樹脂である結着樹脂(2)は、THF可溶成分のGPCにおいて、Mnが3300であり、Mwが33000であり、Mw/Mnが10.0であった。
【0185】
〈トナーの製造例3〜5〉
トナー作製例1で用いた銅フタロシアニン(C.I.Pigment.Blue 15:3)の代わりにイエロー、マゼンタ、ブラックの顔料を使用し、他は全てトナーの製造1と同じ方法を用いてトナー3〜5を得た。イエロー顔料としてC.I.Pigment.Yellow180を6質量部使用してトナー3を、マゼンタ顔料としてC.I.Pigment.Red 57:1を6部使用しトナー4を、ブラック顔料としてカーボンブラックを4部使用しトナー5を、それぞれ得た。
【0186】
〈トナーの製造例6、7〉
トナーの製造例1で用いた結着樹脂(1)の代わりに下記に示す結着樹脂(3)、(4)を使用し、パラフィンワックス(1)の代わりに表1に示すパラフィンワックス(3)、(4)を用いたことを除いて他は全てトナーの製造例1と同じ方法を用いてトナー6、7を得た。
【0187】
結着樹脂(3)、(4)は結着樹脂(2)の製造において、トリメリット酸の割合を減らし且つ反応時間を短くして作製した。結着樹脂(3)は、THF可溶成分のGPCにおいてMnが4000であり、Mwが10500であり、Mw/Mnが2.6であった。結着樹脂(4)は、THF可溶成分のGPCにおいて、Mnが3600であり、Mwが8500であり、Mw/Mnが2.4であった。
【0188】
〈トナーの製造例8、9〉
トナーの製造例1で用いたパラフィンワックス(1)の代わりに表1に示すパラフィンワックス(5)、(6)を用いたことを除いて他は全てトナーの製造例1と同じ方法を用いてトナー8、9を得た。
【0189】
〈トナーの製造例10〜13〉
トナーの製造例1で用いた原材料の種類は変えずに、二軸式押出し機の混練温度及び該二軸式押出機への原材料の供給量(供給速度)を変化させ、トナー10〜13を得た。具体的には、トナー10及び12の製造時には混練温度を上げ、トナー11及び13の製造時には混練温度を下げた。また、トナー10及び11の製造時には原材料供給量を下げ、トナー12及び13の製造時には原材料供給量を上げた。
【0190】
〈トナーの製造例14〉
トナーの製造例1で用いた芳香族オキシカルボン酸Al化合物の添加量を2質量部とし、更に二軸式押出し機のバレル温度を上げて溶融混練し、他は全てトナーの製造例1と同じ方法を用いてトナー14を得た。なお、結着樹脂(1)と共重合組成物(1)、パラフィンワックス(1)、芳香族オキシカルボン酸Al化合物は以下の混合比で前混練した。
【0191】
共重合組成物(1) 20wt%
パラフィンワックス(1) 20wt%
芳香族オキシカルボン酸Al化合物 8wt%
結着樹脂(1) 52wt%
【0192】
〈トナーの製造例15〉
トナーの製造例1で用いた芳香族オキシカルボン酸Al化合物の添加量を8質量部にして、前混練で添加せず(ワックス分散マスターバッチに混合させず)、二軸式押出し機のバレル温度を下げて溶融混練し、他は全てトナーの製造例1と同じ方法を用いてトナー15を得た。なお、結着樹脂(1)と共重合組成物(1)、パラフィンワックス(1)は以下の混合比で前混練した。
【0193】
共重合組成物(1) 20wt%
パラフィンワックス(1) 20wt%
結着樹脂(1) 60wt%
上記のようにして得られた混練物を更に、上記結着樹脂(1)、芳香族オキシカルボン酸Al化合物、銅フタロシアニンと共にヘンシェルミキサーにより十分予備混合を行い、二軸式押出し機を用い混練した。
【0194】
各トナーに用いたパラフィンワックスのDSCによる最大吸熱ピークを表1に、得られた各トナーの処方を表2に、それぞれ示す。
【0195】
【表1】
【0196】
【表2】
【0197】
〈実施例1〉
トナーの製造例1で製造したトナー1を用い、市販の普通紙フルカラー複写機(カラーレーザー複写機CLC1000、キヤノン製)を用いて、画出しの評価を行った。
【0198】
評価に際しては、以下のような磁性キャリアを用いた。コア剤にMn−Mg−Fe系フェライトを用い、含窒素シランカップリング剤とシリコーン樹脂により生成された変性シリコーン樹脂を約0.2質量%コーティングし二成分現像剤用キャリア(キャリア1)を作製した。このキャリア1の50%平均粒径は40μm、見かけかさ密度が2.3g/cm3であった。トナー1とキャリアをトナーが7質量%になるように混合することにより、二成分系現像剤を得た。
【0199】
なお、現像器は、現像剤の攪拌力を上げるために、送りばねの形状、速度を変更した。更に、規制ブレードの材質を磁性部材である鉄材を表面をNi−Crでコートしたものに変更した。現像剤の規制量は、現像剤担持体上で35mg/cm2に調整した。現像剤担持体上に保持される現像剤中のトナー量は2.45mg/cm2であった。現像剤担持体と静電潜像担持体の間隙は350μmに設定した。現像バイアスは直流電圧を印加し、画像形成部バイアスが350Vに、カブリ防止バイアス150Vになるように設定した。
【0200】
画像濃度に関しては、X−rite社製反射濃度計500 Series Spectrodensitemeterを用いて評価した。
【0201】
定着可能温度領域の評価に関しては、上記カラー複写機から定着ユニットを取り外し、単色モードで常温常湿環境下(23℃、60%)で未定着画像を出力し、図3に示す構成の定着試験器で設定温度を変更しながら定着画像を出力し、グロス(光沢度)を測定することにより評価した。
【0202】
グロス(光沢度)測定に関しては、VG−10型光沢度計(日本電色製)を用い、色度測定に用いた各ベタ画像を試料として、測定を行った。測定としては、まず定電圧装置により6Vにセットした。次いで投光角度、受光角度をそれぞれ60°に合わせた。
【0203】
0点調整及び標準板を用い、標準設定の後に試料台の上に前記試料画像を置き、更に白色紙を3枚上に重ね測定を行い、標示部に示される数値を%単位で読みとった。この時S,S/10切替SWはSに合わせ、角度、感度切替SWは45−60に合わせた。なお、画像濃度1.5±0.1の試料を使用した。
【0204】
サンプルトナーの耐ブロッキング性に関しては、トナーを50℃のオーブン内にて1週間放置することにより評価した。評価としては目視による凝集性のレベルを判定した。トナー凝集性の評価基準を以下に示す。
【0205】
A:凝集体が全く見られなく流動性が非常に良い
B:凝集体が全く見られない
C:若干の凝集体は見られるがすぐにほぐれる
D:現像剤攪拌装置で凝集体がほぐれる(普通)
E:現像剤攪拌装置では凝集体が十分にほぐれない(やや悪い)
【0206】
サンプルトナーの画像品質に関しては、定着後の画像のべた部における目視による白抜けのレベルにより評価した。該評価としては目視による凝集性のレベルを判定した。画像白抜け評価基準を以下に示す。
【0207】
A:白抜けが全く見られない
B:若干の白抜けが見られる
C:はっきりと白抜けが見られる
【0208】
連続通紙の画像評価については、印字比率7%のサンプルチャートを用い、上記カラー複写機で5万枚連続通紙した後、画像濃度、画像品質を評価した。評価基準を以下に示す。
【0209】
A:画像濃度の変動が0.15以内で且つ、白抜けが全く見られない
B:画像濃度の変動が0.15〜0.3の範囲か、もしくは若干の白抜けが見られる
C:画像濃度の変動が0.3以上もしくは、はっきりと白抜けが見られる
【0210】
用いたトナーの物性を表3に、評価結果を表4にそれぞれ示す。
【0211】
〈実施例2〜5〉
実施例1で用いたトナー1に代えてトナー2〜5を用い、実施例1と同じ評価を行った。用いたトナーの物性を表3に、評価結果を表4にそれぞれ示す。
【0212】
〈実施例6〉
実施例1で用いたカラー複写機の現像器の攪拌スクリューの構成及びその回転速度を変更し、攪拌力を下げた現像器を作製した。磁性キャリアは、表面コート剤のコート厚を下げた。また、現像剤の作製に際し、トナー量と磁性キャリアの比を調節し、トナー濃度を質量比で10%とした。現像器、磁性キャリア及び現像剤中のトナー量をこのように変更することにより、現像時の帯電量が実施例1における帯電量より低くなる現像剤を得た。これらの条件で、実施例1と同じ評価を行った。用いたトナーの物性を表3に、評価結果を表4にそれぞれ示す。
【0213】
〈実施例7〉
実施例1で用いたカラー複写機の現像器の攪拌スクリューの構成及びその回転速度を変更し、攪拌力を上げた現像器を作製した。磁性キャリアは、表面コート剤のコート厚を上げた。また、現像剤の作製に際し、トナー量と磁性キャリアの比を調節し、トナー濃度を質量比で4%とした。現像器、磁性キャリア及び現像剤中のトナー量をこのように変更することにより、現像時の帯電量が実施例1における帯電量より高くなる現像剤を得た。これらの条件で、実施例1と同じ評価を行った。用いたトナーの物性を表3に、評価結果を表4にそれぞれ示す。
【0214】
〈実施例8〉
実施例1でフェライトキャリアの代わりに、マグネタイト90質量部とヘマタイト10質量部をフェノール樹脂に分散した磁性体分散型樹脂キャリアを用い、これを二成分現像剤用キャリア(キャリア2)とした。このキャリア1の50%平均粒径は40μm、見かけかさ密度が2.0g/cm3であった。現像剤はトナーが8質量%になるようにトナーの含有量を調整した。
【0215】
現像剤の規制量は、現像剤担持体上で25mg/cm2に調整した。現像剤担持体上に保持される現像剤中のトナー量2.0mg/cm2であった。上記以外は実施例1と同じ評価を行った。用いたトナーの物性を表3に、評価結果を表4にそれぞれ示す。
【0216】
〈実施例9、10〉
実施例1で用いたトナー1に代えてトナー6、7を用い、実施例1と同じ評価を行った。用いたトナーの物性を表3に、評価結果を表4にそれぞれ示す。
【0217】
〈比較例1〜8〉
実施例1で用いたトナー1に代えてトナー8〜15を用い、実施例1と同じ評価を行った。用いたトナーの物性を表3に、評価結果を表4にそれぞれ示す。
【0218】
〈比較例9〉
実施例6で用いた、カラー複写機の攪拌力を下げた現像器を用いた。磁性キャリアの表面コート剤のコート厚を、実施例6より更に下げたものを用いた。また、トナー量と磁性キャリアの比を調節し、トナー濃度が質量比で10%になる現像剤を作製した。これらの条件で、実施例1と同じ評価を行った。用いたトナーの物性を表3に、評価結果を表4にそれぞれ示す。
【0219】
〈比較例10〉
実施例7で用いた、カラー複写機の攪拌力を上げた現像器を用いた。実施例7より更に磁性キャリアは表面コート剤のコート厚を上げ、また、トナー量と磁性キャリアの比を調節し、トナー濃度が質量比で4%になる現像剤を作製した。これらの条件で、実施例1と同じ評価を行った。用いたトナーの物性を表3に、評価結果を表4にそれぞれ示す。
【0220】
〈比較例11〉
実施例1で用いた現像器に代えて、現像剤の攪拌力を実施例6よりも更に下げた現像器を使用した以外は実施例1と同じ条件で画像形成を行い、評価を行った。用いたトナーの物性を表3に、評価結果を表4にそれぞれ示す。
【0221】
〈比較例12〉
現像剤担持体と静電潜像担持体の間隙を200μmに変更した以外は実施例1と同様の評価を行った。用いたトナーの物性を表3に、評価結果を表4にそれぞれ示す。
【0222】
〈比較例13〉
現像剤担持体と静電潜像担持体の間隙を650μmに変更した以外は実施例1と同様の評価を行った。用いたトナーの物性を表3に、評価結果を表4にそれぞれ示す。
【0223】
〈比較例14〉
現像剤はトナー1とキャリアをトナーが6質量%になるように混合することにより得た。現像剤の規制量を、現像剤担持体上で15mg/cm2となるように調整した。また、現像剤担持体上に保持される現像剤中のトナー量を0.9mg/cm2となるように調整した。その他は実施例1と同じ条件で、同様に評価を行った。用いたトナーの物性を表3に、評価結果を表4にそれぞれ示す。
【0224】
〈比較例15〉
現像剤の規制量を、現像剤担持体上で55mg/cm2となるように調整した。また、現像剤担持体上に保持される現像剤中のトナー量を3.85mg/cm2となるように調整した。その他は実施例1と同じ条件で、同様に評価を行った。用いたトナーの物性を表3に、評価結果を表4にそれぞれ示す。
【0225】
〈実施例11〉
実施例1で用いたカラー複写機を改良して、現像器中に現像剤を画像形成ごとに一定量比で抜き取る機構を取り付けた。また磁性キャリアを、質量比で15%含む供給トナーを作製し、且つ磁性キャリア混合トナーを供給できるように、トナー供給系を改造した。これらの条件で、実施例1と同じ評価を行った。用いたトナーの物性を表3に、評価結果を表4にそれぞれ示す。
【0226】
【表3】
【0227】
【表4】
【0228】
【発明の効果】
本発明によれば、加熱加圧定着手段に多量のオイルを使用することなく、又はオイルを全く使用することなく定着することができ、これにより加熱加圧定着手段の構成を簡略化することができる。
【0229】
また、本発明によれば、OHPシート上に形成された画像の透明性が良好で且つ二次色の混色性が良好な、色再現範囲が広い画像形成方法を提供することができる。
【0230】
また、本発明によれば、低温定着性に優れ且つ耐高温オフセット性に優れた画像形成方法を提供することができる。
【0231】
また、本発明によれば、高温環境放置時においてもトナーのブロッキングが発生しにくい画像形成方法を提供することができる。
【0232】
また、本発明によれば、現像系構成を簡略化することができる画像形成方法を提供することができる。
【0233】
更に、本発明によれば、離型剤としてワックスを添加した場合においても、現像性が良好であり、且つ現像安定性に優れる画像形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像形成方法を好適に実施できる電子写真方式のフルカラー機の一例の概略構成図
【図2】図1の現像装置9の構成を示す部分的拡大図
【図3】図1の定着装置25の構成を示す部分的拡大図
【図4】二成分現像剤の摩擦帯電量を測定する装置の斜視図
【符号の説明】
2 ブレード
3 現像スリーブ
4、4A、4B、4C、4D 感光ドラム
8 現像容器
9、9A、9B、9C、9D 現像装置
15 バイアス電源
21、21A、21B、21C、21D 一次帯電器
22、22A、22B、22C、22D 発光素子
23、23A、23B、23C、23D 転写帯電器
24 転写紙
25 定着装置
26、26A、26B、26C、26D クリーニング装置
27 転写紙搬送シート
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法などにおいて静電荷像を現像する画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、提案されているフルカラー複写機においては、4つの感光体とベルト状転写体を用い、各感光体上にそれぞれ形成された静電荷像をシアントナー、マゼンタトナー、イエロートナー及びブラックトナーを用いて現像後、感光体とベルト転写体間に転写材を搬送しストレートパス間で転写後、フルカラー画像を形成させる方法や、感光体に対向された転写体の表面に静電気力やグリッパーなどの機械的作用により転写材を巻き付け、現像−転写工程を4回実施することでフルカラー画像を得る方法が一般的に利用されている。
【0003】
これらフルカラー用複写機に使用されるトナーとしては、色再現性が良好なことや、オーバーヘッドフロジェクター(OHP)画像の透明性を損なうことなく加熱加圧定着工程で各トナーが充分混色することが必要である。
【0004】
一般の白黒複写機用黒トナーと較べフルカラー画像用トナーは、シャープメルト性を有する低分子量結着樹脂を用いることが好ましい。しかしながら、通常シャープメルト性の結着樹脂を用いると加熱加圧定着工程でトナーが溶融した際、結着樹脂の自己凝集力が低いため耐高温オフセット性に問題を生じ易い。
【0005】
一般の白黒複写機用黒トナーは、定着時の耐高温オフセット性を向上させるためポリエチレンワックスやポリプロピレンワックスに代表される比較的高結晶性のワックスが離型剤として用いられている。
【0006】
また、上記のような定着性に関する問題を解決するため、特定の貯蔵弾性率を有するトナーについて提案されている。
【0007】
例えば、180℃又は170℃において特定の貯蔵弾性率を有するトナーが提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。しかし、低温定着と耐高温オフセットの両立、高温オフセット防止のためのオイルを使用しないか、又は、オイルの使用量を少なくした加熱加圧定着手段での良好な定着性、十分な混色特性が必要とされるカラートナーとしては、トナーの粘度が低すぎるうえ、高温環境下での保存性について、満足できるものではなかった。
【0008】
また、70〜120℃において特定の貯蔵弾性率G’を有し、130〜180℃において特定の貯蔵弾性率G”を有するトナーが提案されている(例えば、特許文献3及び特許文献4参照)。しかしながら、高温環境下での十分な保存性、大量の画像を出力する際に高品位な画像を安定して得るという点、どのような環境下においても安定した帯電性と現像性を得るという点について満足できるものではなかった。
【0009】
特定の貯蔵弾性率を有するトナーに関しては他にも種々提案されている(例えば、特許文献5〜特許文献11参照)。しかしながら、カラートナーとしての理想的な定着特性、保存性、OHP透明性を得るためには、改良の余地があった。
【0010】
また、サリチル酸やその誘導体を荷電制御剤として用いたトナーが提案されている(例えば、特許文献12〜特許文献15参照)。しかしながら、サリチル酸は温度や湿度に対し荷電制御能力が大きく変動するばかりか昇華性を有するため、トナーの保存条件に著しい制約を受ける。また、サリチル酸誘導体は、結着樹脂に対する分散性が良好であるため、画像形成装置とのマッチングもある程度改善されるが、所望の荷電制御能力を発揮するには添加量を増やす必要があった。
【0011】
更に、均一な電荷付与能力を得るために荷電制御剤をトナー表面に析出させて得られるトナーが開示されている(例えば、特許文献16及び特許文献17参照)。この方法により確かにトナーの帯電性は安定するが、多数枚耐久印刷後、トナー表面から荷電制御剤が脱離し、効果が減少するために、トナーの耐久性に問題を生じる。
【0012】
また、トナー表面のオキシカルボン酸の量を制御する技術も提案されており、十分な効果が得られている(例えば、特許文献18参照)。
【0013】
また、画像形成装置における現像系の構成については、現像器に印加する電位に直流だけでなく交流を印加することにより濃度、かぶり等に効果があることが知られている。しかしながら、交流電源をカラー複写機に持つことは、コストの増加になる。そのため、直流電源のみで、濃度、かぶりを改善することができるトナー及び現像方法の確立が必要である。
【0014】
【特許文献1】
特開平11−84716号公報
【特許文献2】
特開平8−54750号公報
【特許文献3】
特開平11−7151号公報
【特許文献4】
特開平6−59504号公報
【特許文献5】
特開平5−249735号公報
【特許文献6】
特開平7−92737号公報
【特許文献7】
特開平7−234542号公報
【特許文献8】
特開平7−295298号公報
【特許文献9】
特開平8−234480号公報
【特許文献10】
特開平8−278662号公報
【特許文献11】
特開平10−171156号公報
【特許文献12】
特開昭63−33755号公報
【特許文献13】
特開平2−190869号公報
【特許文献14】
特開平2−230163号公報
【特許文献15】
特開平4−347863号公報
【特許文献16】
特開昭61−238846号公報
【特許文献17】
特開平5−134457号公報
【特許文献18】
特開2001−34016号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述の問題点に鑑みなされたものであり、加熱加圧定着手段に多量のオイルを使用することなく、又はオイルを全く使用することなく定着することができ、これにより加熱加圧定着手段の構成を簡略化することができる画像形成方法を提供することを課題とする。
【0016】
また、本発明は、OHPシート上に形成された画像の透明性が良好で且つ二次色の混色性が良好な、色再現範囲が広い画像形成方法を提供することを課題とする。
【0017】
また、本発明は、低温定着性に優れ且つ耐高温オフセット性に優れた画像形成方法を提供することを課題とする。
【0018】
また、本発明は、高温環境放置時においてもトナーのブロッキングが発生しにくい画像形成方法を提供することを課題とする。
【0019】
また、本発明は、現像系構成を簡略化することができる画像形成方法を提供することを課題とする。
【0020】
更に、本発明は、離型剤としてワックスを添加した場合においても、現像性が良好であり、且つ現像安定性に優れる画像形成方法を提供することを課題とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明は、磁性キャリア及びカラートナーを含有する二成分系現像剤を担持する現像剤担持体に直流バイアスを印加して、前記現像剤担持体に対して所定の間隙をもって配置された静電潜像担持上に形成された静電潜像を前記カラートナーによって現像してトナー像を形成する画像形成方法であって、
(A)前記現像剤担持体上に担持される二成分系現像剤中のカラートナー量が、1.0〜3.5mg/cm2であり、
(B)前記現像剤担持体と前記静電潜像担持体の間隙が250〜600μmであり、
(C)前記現像剤担持体上におけるカラートナーの帯電量分布が、温度23℃、相対湿度60%の環境下において、絶対値で5〜25μC/gにピークを有し、且つ該環境下における逆極性帯電のトナーの存在量が10体積%以下であり、
(D)前記カラートナーは結着樹脂、着色剤、芳香族オキシカルボン酸化合物及びワックスを少なくとも含有し、
(1)前記結着樹脂は(a)ポリエステル樹脂、(b)ポリエステルユニットとビニル系共重合体ユニットとを有するハイブリッド樹脂成分、又は(c)(a)と(b)の混合物を含有し、
(2)前記カラートナーの示差熱分析(DSC)測定における吸熱曲線において、温度30〜200℃の範囲における最大吸熱ピークのピーク温度が60〜110℃であり、
(3)前記カラートナーの粘弾性特性において、温度80℃における貯蔵弾性率(G’80)が1×106〜1×1010[dN/m2]の範囲にあり、温度120〜180℃における貯蔵弾性率(G’120−180)が1×103〜1×106[dN/m2]であり、
(4)前記芳香族オキシカルボン酸化合物は芳香族オキシカルボン酸又は該芳香族オキシカルボン酸の金属化合物を少なくとも有し、該芳香族オキシカルボン酸化合物のカラートナー表面における存在量が0.05〜8g/kgである
ことを特徴とする画像形成方法に関する。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の画像形成方法は、磁性キャリア及びカラートナー(以下、単に「トナー」と表記することがある)を含有する二成分系現像剤(以下、単に「現像剤」と表記することがある)を担持する現像剤担持体に直流バイアスを印加して、前記現像剤担持体に対して所定の間隙をもって配置された静電潜像担持体上に形成された静電潜像を前記カラートナーによって現像してトナー像を形成する、いわゆる二成分現像方法を用いた画像形成方法に関する。上記本発明の画像形成方法は、(A)前記現像剤担持体上に担持される現像剤中のカラートナー量が、1.0〜3.5mg/cm2であり、(B)前記現像剤担持体と前記静電潜像担持体の間隙が250〜600μmであり、(C)前記現像剤担持体上におけるカラートナーの帯電量分布が、温度23℃、相対湿度60%の環境下において、絶対値で5〜25μC/gにピークを有し、且つ該環境下における逆極性帯電のトナーの存在量が10体積%以下であることを特徴とする。
【0023】
また、上記本発明の画像形成方法において、(D)カラートナーは結着樹脂、着色剤、芳香族オキシカルボン酸化合物及びワックスを少なくとも含有する。更に、上記本発明に用いられるカラートナーにおいて、(1)前記結着樹脂は(a)ポリエステル樹脂、(b)ポリエステルユニットとビニル系共重合体ユニットとを有するハイブリッド樹脂成分、又は(c)(a)と(b)の混合物を含有し、(2)示差熱分析(DSC)測定における吸熱曲線において、温度30〜200℃の範囲における最大吸熱ピークのピーク温度が60〜110℃の範囲にあり、(3)粘弾性特性において、温度80℃における貯蔵弾性率(G’80)が1×106〜1×1010[dN/m2]の範囲にあり、温度120〜180℃における貯蔵弾性率(G’120−180)が1×103〜1×106[dN/m2]の範囲にあり、(4)前記芳香族オキシカルボン酸化合物は芳香族オキシカルボン酸又は該芳香族オキシカルボン酸の金属化合物を少なくとも有し、該芳香族オキシカルボン酸化合物のカラートナー表面における存在量が0.05〜8g/kgの範囲にあることを特徴とする。
【0024】
まず、本発明の画像形成方法において、示差熱分析(DSC)測定における吸熱曲線において、温度30〜200℃の範囲における最大吸熱ピークのピーク温度が60〜110℃の範囲にあるトナーを使用することにより、高速化対応であり、低温から広い定着領域を持つ画像形成方法を達成することができる。
【0025】
また、本発明では、トナーの高温環境下における保存性、耐熱性、耐ブロッキング性を良好にするために、トナーの粘弾性特性において、温度80℃における貯蔵弾性率(G’80)が1×106〜1×1010[dN/m2]であることを特徴とする。G’80は、好ましくは1×106〜1×108[dN/m2]であり、より好ましくは2×106〜5×107[dN/m2]である。貯蔵弾性率(G’80)が1×106[dN/m2]よりも小さい場合には、高温環境下におけるトナーの保存性、耐熱性、耐ブロッキング性が悪く、トナー粒子同士が合一し、大きなトナーの凝集体を形成するため好ましくない。近年、複写機、プリンターの出力スピードの高速化や本体の小型化が進んでいるため、マシン機内の温度が高くなる傾向にあり、高精細・高画質の画像を安定して得るためには、トナーが高温環境下における十分な保存性、耐熱性、耐ブロッキング性を有することは重要である。また、貯蔵弾性率(G’80)が1×1010[dN/m2]より大きい場合には、保存性、耐熱性、耐ブロッキング性は十分であるものの、低い温度での十分な定着性が得られないため好ましくない。
【0026】
また、温度120〜180℃における貯蔵弾性率(G’120−180)は、十分な低温定着性と耐高温オフセット性とを両立させるために、1×103〜1×106[dN/m2]であることを特徴とする。このG’120−180は、好ましくは1×104〜5×105[dN/m2]であり、より好ましくは2×104〜5×105[dN/m2]である。貯蔵弾性率(G’120−180)が1×103[dN/m2]よりも小さい場合には、トナーの十分な耐高温オフセット性を得ることができないため好ましくない。また、貯蔵弾性率(G’120−180)が1×106[dN/m2]より大きい場合には、トナーの十分な低温定着性を得ることができないため好ましくない。
【0027】
また、本発明の画像形成方法では、現像剤担持体と静電潜像担持体の間隙が250〜600μmであることを特徴とする。間隙が250μmより小さい場合、トナー劣化や静電潜像担持体への付着による画像不良が発生しやすく、また間隙が600μmより大きい場合、画像濃度薄等の問題を生じた。好ましくは現像剤担持体と静電潜像担持体の間隙が300〜500μmであり、より好ましくは350〜450μmである。
【0028】
また、現像剤担持体上に担持される現像剤中のカラートナーの量を1.0〜3.5mg/cm2とにすることにより、画像濃度及び現像剤担持体上の現像剤コート量が耐久印刷時において安定することがわかった。即ち、見かけかさ密度が2.3程度であるフェライトをコア剤とするコートキャリアを用いた場合、現像剤担持体上に保持される現像剤量を20〜45mg/cm2とし、見かけかさ密度が2.0程度である磁性体分散型樹脂キャリアを用いた場合、該現像剤担持体上に保持される現像剤量を18〜40mg/cm2したときに、現像剤の塗布量、トナーの帯電量が安定することが分かった。
【0029】
本発明で用いるトナーに含有される芳香族オキシカルボン酸化合物は、芳香族オキシカルボン酸及び/又は該芳香族オキシカルボン酸の金属化合物を少なくとも有している。該芳香族オキシカルボン酸化合物は、カラートナー表面における存在量が0.05〜8g/kgであることを特徴とする。芳香族オキシカルボン酸化合物のカラートナー表面における存在量が0.05g/kgより少ない場合、荷電制御剤が表面近傍に少なくなり、帯電の安定性に問題が生じた。また、8g/kgより多い場合、磁性キャリアや、現像剤担持体への汚染が発生し易くなる。
【0030】
なお、芳香族オキシカルボン酸金属化合物をトナー中に含有させた場合には、芳香族オキシカルボン酸金属化合物から金属の脱離が生じることがあり、芳香族オキシカルボン酸とフリーの金属が存在するようになる。本願発明において規定されている芳香族オキシカルボン酸化合物のトナー表面における存在量とは、後述する方法によって測定されるものであるが、トナー表面近傍に存在するオキシカルボン酸と、オキシカルボン酸金属化合物のオキシカルボン酸部分をオキシカルボン酸として換算した値の合計量である。
【0031】
更に、本発明で用いるトナーはワックスを含有する。芳香族オキシカルボン酸化合物は、トナー表面での流動性付与の効果があるが、本発明の存在量では、流動性付与能力が下がる。更にワックスを使用することにより、流動性は落ちる方向である。そのため、トナー表面への無機微粉体の添加により、流動性を上げることが行われているが、単に無機微粉体を大量に添加するだけでは、長期に画像形成を行った場合、無機微粉体現像器中に蓄積が起こりやすくなり画像に支障をきたした。
【0032】
本発明においては、現像剤の流動性を下げた場合においても、安定して長期の画像形成が行える方法を見出したものであり、現像剤担持体上におけるカラートナーの帯電量分布が、温度23℃、相対湿度60%の環境下において、絶対値で5〜25μC/gにピークを有し、且つ該環境下における逆極性帯電のトナーの存在量が10体積%以下の範囲であることを特徴とする。
【0033】
従来技術の説明において述べたように、現像バイアスとして直流バイアスのみでなく交流バイアスを印加することは、画像濃度やカブリ防止の点において好ましいことが知られている。しかし、カラー画像形成装置において、現像バイアスを印加する手段として現像器に交流電源を持たせることは画像形成装置の構成を複雑にし、且つ製造コストを増加させる。本発明は、現像バイアスを印加する手段として交流電源を用いず直流電源のみにより、画像濃度の維持やかぶりを改善することができる画像形成方法を提供するものである。
【0034】
現像バイアスに交流電圧を重畳した場合、上記の帯電量分布で現像を行ってもかぶり、飛散の問題は発生しにくいが、本発明のように現像バイアスに直流電圧のみを用いる場合は、トナー飛散が発生しやすい。本発明では、現像バイアスに直流電圧のみを用い、流動性の低い現像剤を用い、低いトリボ分布とした場合でも安定な画像が得られる画像形成方法を確立した。これは、トナーの表面の芳香族オキシカルボン酸化合物の量を制御すること、及び逆極性帯電のトナーの存在量を10体積%以下にすることにより達成できる。
【0035】
帯電量分布のピークが、5μC/gより小さい場合、トナーの飛散、現像性低下が発生しやすい。また、25μC/gより大きい場合、濃度低下等の問題が生じやすい。
【0036】
帯電量分布が、本発明のように低い所に分布がある場合、トナーの帯電が十分でなく、逆極性のトナーや、トナー帯電量が0近傍のものが多く発生しやすい。また、本発明のようにワックスを含むカラートナーは流動性が低く、トナーの帯電の立ち上がりに難があった。しかしながら、本発明においては、芳香族オキシカルボン酸化合物のトナー表面における存在量を制御することにより、上記帯電の立ち上がりを改善することが出来た。また、現像器の現像剤規制ブレードを磁性板にすること、現像器の攪拌を上げることにより、逆極性のトナーを減らすことが可能となりカブリについて有効であった。一方、逆極性のトナーが殆ど存在しない条件では、トナーのチャージアップが発生しやすくなり、濃度薄等の原因となる。そのため、逆極性帯電のトナーの存在量が1〜7体積%であることが好ましい。
【0037】
以下、本発明について更に詳しく説明する。まず、本発明の画像形成方法に用いる二成分系現像剤について説明する。本発明に用いる二成分系現像剤は、磁性キャリア及びカラートナーを含有する。該カラートナーは、結着樹脂、着色剤、芳香族オキシカルボン酸化合物及びワックスを少なくとも含有し、(1)前記結着樹脂は(a)ポリエステル樹脂、(b)ポリエステルユニットとビニル系共重合体ユニットとを有するハイブリッド樹脂成分、又は(c)(a)と(b)の混合物を含有し、(2)前記カラートナーの示差熱分析(DSC)測定における吸熱曲線において、温度30〜200℃の範囲における最大吸熱ピークのピーク温度が60〜110℃であり、(3)前記カラートナーの粘弾性特性において、温度80℃における貯蔵弾性率(G’80)が1×106〜1×1010[dN/m2]の範囲にあり、温度120〜180℃における貯蔵弾性率(G’120−180)が1×103〜1×106[dN/m2]であり、(4)前記芳香族オキシカルボン酸化合物は芳香族オキシカルボン酸又は該芳香族オキシカルボン酸の金属化合物を少なくとも有し、該芳香族オキシカルボン酸化合物のカラートナー表面における存在量が0.05〜8g/kgであることを特徴とする。
【0038】
本発明で用いるカラートナーは、DSC測定における吸熱曲線において、温度30〜200℃の範囲における最大吸熱ピークのピーク温度が60〜110℃である。上述したように、トナーの最大吸熱ピークのピーク温度を上記範囲とすることにより、画像形成装置の高速化に対応することができ、低温から広い定着領域を有するトナーを得ることができる。トナーの上記最大吸熱ピークのピーク温度は、60〜100℃であることが好ましく、60〜90℃であることがより好ましい。
【0039】
なお、本発明においてトナーの上記吸熱曲線の最大吸熱ピークのピーク温度を上記範囲に調整する方法の一つとして、後述するワックスを適宜選択することが挙げられる。
【0040】
また、上述したように、本発明で用いるトナーは、トナーの高温環境下における保存性、耐熱性、耐ブロッキング性を良好にするために、トナーの粘弾性特性において、温度80℃における貯蔵弾性率(G’80)が1×106〜1×1010[dN/m2]であることを特徴とする。また、トナーの温度120〜180℃における貯蔵弾性率(G’120−180)は1×104〜5×105[dN/m2]であることが好ましい。この貯蔵弾性率(G’80)及び(G’120−180)のより好ましい範囲は既に述べたとおりである。
【0041】
更に、トナーの粘弾性特性において、温度120〜180℃における貯蔵弾性率の最小値(G’min)に対する最大値(G’max)の比(G’max/G’min)が30以下であることが好ましい。より好ましくは20以下である。
【0042】
本発明において、トナーの貯蔵弾性率(G’80)、(G’120−180)及び(G’max/G’min)は、トナーに含有される結着樹脂の分子量分布、芳香族オキシカルボン酸化合物の添加量、並びにトナー製造時の混練温度、混練装置への原材料の供給量、及び混練機の軸形状や回転速度等を適宜選択することにより調整できる。
【0043】
本発明で用いるカラートナーに用いられる結着樹脂は、(a)ポリエステル樹脂、(b)ポリエステルユニットとビニル系共重合体ユニットとを有するハイブリッド樹脂成分、又は(c)(a)と(b)の混合物を含有する。
【0044】
結着樹脂として(a)ポリエステル樹脂を用いる場合は、2価以上のアルコール成分と、カルボン酸又はカルボン酸無水物、カルボン酸エステル等の2価以上の酸成分とが原料モノマーとして使用できる。具体的には、例えば2価アルコール成分としては、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
【0045】
3価以上のアルコール成分としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
【0046】
酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸類又はその無水物;こはく酸、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸等のアルキルジカルボン酸類又はその無水物;炭素数6〜12のアルキル基で置換されたこはく酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸及びシトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸類又はその無水物;が挙げられる。
【0047】
それらの中でも、特に下記一般式(1)で代表されるビスフェノール誘導体をジオール成分とし、2価以上のカルボン酸又はその酸無水物、又はその低級アルキルエステルとからなるカルボン酸成分(例えば、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等)を酸成分として、これらを縮重合したポリエステル樹脂が、カラートナーとして良好な帯電特性を有するので好ましい。
【0048】
【化1】
(式中、Rはエチレン又はプロピレン基を示し、x、yはそれぞれ1以上の整数であり、且つx+yの平均値は2〜10である。)
【0049】
本発明のトナーに含有される結着樹脂において、「ハイブリッド樹脂成分」とは、ビニル系重合体ユニットとポリエステルユニットが化学的に結合された樹脂を意味する。具体的には、ポリエステルユニットと(メタ)アクリル酸エステル等のカルボン酸エステル基を有するモノマーを重合したビニル系重合体ユニットとがエステル交換反応によって形成されるものであり、好ましくはビニル系重合体を幹重合体、ポリエステルユニットを枝重合体としたグラフト共重合体(あるいはブロック共重合体)を形成するものである。
【0050】
なお、本発明において「ポリエステルユニット」とはポリエステルに由来する部分を示し、「ビニル系重合体ユニット」とはビニル系重合体に由来する部分を示す。ポリエステルユニットを構成するポリエステル系モノマーとしては、上述のポリエステル樹脂に用いられる多価カルボン酸成分と多価アルコール成分を挙げることができ、ビニル系重合体ユニットを構成するモノマーとしては以下に示すようなビニル基を有するモノマーを挙げることができる。
【0051】
ビニル系樹脂又はビニル系重合体ユニットを生成するためのビニル系モノマーとしては、次のようなものが挙げられる。スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、m−ニトロスチレン、o−ニトロスチレン、p−ニトロスチレン等のスチレン及びその誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のスチレン不飽和モノオレフィン類;ブタジエン、イソプレン等の不飽和ポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニルデン、臭化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等のビニルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体等が挙げられる。
【0052】
更に、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物等の不飽和二塩基酸無水物;マレイン酸メチルハーフエステル、マレイン酸エチルハーフエステル、マレイン酸ブチルハーフエステル、シトラコン酸メチルハーフエステル、シトラコン酸エチルハーフエステル、シトラコン酸ブチルハーフエステル、イタコン酸メチルハーフエステル、アルケニルコハク酸メチルハーフエステル、フマル酸メチルハーフエステル、メサコン酸メチルハーフエステル等の不飽和二塩基酸のハーフエステル;ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸等の不飽和二塩基酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸等のα,β−不飽和酸;クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物等のα,β−不飽和酸無水物、該α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物;アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステル等のカルボキシル基を有するモノマーが挙げられる。
【0053】
更に、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸エステル類;4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルヘキシル)スチレン等のヒドロキシ基を有するモノマーが挙げられる。
【0054】
本発明のトナーにおいて、結着樹脂のビニル系重合体ユニットは、ビニル基を2個以上有する架橋剤で架橋された架橋構造を有していてもよいが、この場合に用いられる架橋剤は、芳香族ジビニル化合物として例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンが挙げられ;アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられ;エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタアクリレートに代えたものが挙げられ;芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として例えば、ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられる。
【0055】
多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテートが挙げられる。
【0056】
本発明ではビニル系共重合体成分及び/又はポリエステル樹脂成分中に、両樹脂成分と反応し得るモノマー成分を含むことが好ましい。ポリエステル樹脂成分を構成するモノマーのうちビニル系共重合体と反応し得るものとしては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はその無水物などが挙げられる。ビニル系共重合体成分を構成するモノマーのうちポリエステル樹脂成分と反応し得るものとしては、カルボキシル基又はヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸もしくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
【0057】
ビニル系樹脂とポリエステル樹脂の反応生成物を得る方法としては、先に挙げたビニル系樹脂及びポリエステル樹脂のそれぞれと反応しうるモノマー成分を含むポリマーが存在しているところで、どちらか一方もしくは両方の樹脂の重合反応をさせることにより得る方法が好ましい。
【0058】
本発明で用いるビニル系共重合体を製造する場合に用いられる重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(−2メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(カーバモイルアゾ)−イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチル−プロパン)、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−クミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トリオイルパーオキサイド、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジ−メトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエイト、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエイト、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエイト、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレートが挙げられる。
【0059】
本発明のトナーに用いられるハイブリッド樹脂を調製できる製造方法としては、例えば、以下の(1)〜(6)に示す製造方法を挙げることができる。
【0060】
(1)ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂及びハイブリッド樹脂成分をそれぞれ製造後にブレンドする方法であり、ブレンドは有機溶剤(例えば、キシレン)に溶解・膨潤した後に有機溶剤を留去して製造される。なお、ハイブリッド樹脂成分は、ビニル系重合体とポリエステル樹脂を別々に製造後、少量の有機溶剤に溶解・膨潤させ、エステル化触媒及びアルコールを添加し、加熱することによりエステル交換反応を行って合成されるエステル化合物を用いることができる。
【0061】
(2)ビニル系重合体ユニット製造後に、これの存在下にポリエステルユニット及びハイブリッド樹脂成分を製造する方法である。ハイブリッド樹脂成分はビニル系重合体ユニット(必要に応じてビニル系モノマーも添加できる)とポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸)及び/又はポリエステルとの反応により製造される。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。
【0062】
(3)ポリエステルユニット製造後に、これの存在下にビニル系重合体ユニット及びハイブリッド樹脂成分を製造する方法である。ハイブリッド樹脂成分はポリエステルユニット(必要に応じてポリエステルモノマーも添加できる)とビニル系モノマー及び/又はビニル系重合体ユニットとの反応により製造される。
【0063】
(4)ビニル系重合体ユニット及びポリエステルユニット製造後に、これらの重合体ユニット存在下にビニル系モノマー及び/又はポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸)を添加することによりハイブリッド樹脂成分が製造される。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。
【0064】
(5)ハイブリッド樹脂成分を製造後、ビニル系モノマー及び/又はポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸)を添加して付加重合及び/又は縮重合反応を行うことによりビニル系重合体ユニット及びポリエステルユニットが製造される。この場合、ハイブリッド樹脂成分は上記(2)〜(4)の製造方法により製造されるものを使用することもでき、必要に応じて公知の製造方法により製造されたものを使用することもできる。更に、適宜、有機溶剤を使用することができる。
【0065】
(6)ビニル系モノマー及びポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸等)を混合して付加重合及び縮重合反応を連続して行うことによりビニル系重合体ユニット、ポリエステルユニット及びハイブリッド樹脂成分が製造される。更に、適宜、有機溶剤を使用することができる。
【0066】
上記(1)〜(5)の製造方法において、ビニル系重合体ユニット及び/又はポリエステルユニットは複数の異なる分子量、架橋度を有する重合体ユニットを使用することができる。
【0067】
本発明のトナーに含有される結着樹脂は、上記ポリエステルとビニル系共重合体との混合物を使用しても良い。
【0068】
本発明のトナーに含有される結着樹脂は、上記ハイブリッド樹脂とビニル系共重合体との混合物を使用しても良い。
【0069】
本発明のトナーに含有される結着樹脂は、上記ポリエステル樹脂と上記ハイブリッド樹脂に加えてビニル系共重合体の混合物を使用しても良い。
【0070】
また、結着樹脂の酸価が1〜60mgKOH/gであることが好ましく、5〜50mgKOH/gであることがより好ましい。
【0071】
また、トナー化した際のTHF可溶分のGPC測定において、数平均分子量(Mn)が1500〜10000であり、重量平均分子量(Mw)が3000〜5000000であることが好ましい。
【0072】
結着樹脂の数平均分子量(Mn)が1300未満の場合又は重量平均分子量(Mw)が2600未満、もしくはトナーの数平均分子量(Mn)が1500未満の場合又は重量平均分子量(Mw)が3000未満の場合には、いずれも定着画像表面の平滑性は高く見た感じの鮮やかさはあるものの、耐久的な使用において高温オフセットが発生しやすくなり、更に、長期保存安定性が低下し、現像器内でのトナー融着や、キャリア表面にトナー成分が付着することによるキャリアスペントの発生といった新たな問題も懸念される。更に、カラートナー粒子の製造時のトナー原料の溶融混練時にシェアーがかかり難く、着色剤の分散性が低下し易く、よってトナーの着色力の低下やトナーの帯電量の変動が生じ易い。
【0073】
結着樹脂の数平均分子量(Mn)が9500を超える場合又は重量平均分子量(Mw)が190000を越える場合、又はトナーの数平均分子量(Mn)が10000を超える場合若しくは重量平均分子量(Mw)が5000000を越える場合は、いずれも耐オフセット性に優れるものの、定着設定温度を高くせざるを得ないし、更に、仮に顔料の分散の程度をコントロールできたとしても、画像部での表面平滑性が低下してしまい色再現性が低下し易くなってしまう。
【0074】
ポリエステル樹脂のMw/Mnが2未満の場合には、一般に得られるポリエステル樹脂は、分子量自体が小さくなることから、前述の分子量が小さい場合と同様に耐久的な使用による高温オフセット現像、長期保存安定性の低下、現像器内でのトナー融着及びキャリアスペントが生じ易くなり、更にトナーの帯電量のばらつきが生じ易い。
【0075】
結着樹脂のMw/Mnが20を越える場合は、耐高温オフセット性に優れるものの、定着設定温度を高くせざるを得ないし、更に、仮に顔料の分散の程度をコントロールできたとしても、画像部での表面平滑性が低下してしまい、二次色の混色性が低下するために、色再現性が低下し易くなってしまう。
【0076】
結着樹脂の酸価が1未満の場合には、耐久使用時における帯電量の上昇、所謂チャージアップが発生しやすく、画像濃度を長期に渡って維持することが困難となる。結着樹脂の酸価が60を越える場合は、チャージアップ傾向はなくなるが、特に高温高湿環境時における帯電量の減少傾向、所謂チャージダウンに起因する「白地カブリ」が発生し、画像品質の低下を招くこととなる。
【0077】
本発明で用いられるカラートナーは、離型剤としてワックスを含有する。本発明で用いるワックスとしては次のものが挙げられる。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックス等の脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;脂肪族炭化水素系ワックスのブロック共重合物;カルナバワックス、サゾールワックス、モンタン酸エステルワックス等の脂肪酸エステルを主成分とするワックス;及び脱酸カルナバワックス等の脂肪酸エステルを一部又は全部を脱酸化したものなどが挙げられる。更に、離型剤として、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸等の飽和直鎖脂肪酸;ブランジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸等の不飽和脂肪酸;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール等の飽和アルコール;ソルビトール等の多価アルコール;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミド等の脂肪酸アミド;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミド;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドの如き不飽和脂肪酸アミド;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミド等の芳香族系ビスアミド;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸等のビニルモノマーをグラフト化させたグラフトワックス;ベヘニン酸モノグリセリド等の脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物などが挙げられる。
【0078】
特に好ましく用いられるワックスは、パラフィンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスである。
【0079】
本発明においては更に、ワックスは、DSCによって測定される昇温時の吸熱曲線において、最大吸熱ピークの極大値が55〜80℃であるものを用いることが好ましい。
【0080】
本発明では、結着樹脂中でのワックスの分散性を良好なものとするために、トナーの製造工程において、以下に説明するようなワックス分散マスターバッチを用いることが好ましい。
【0081】
ワックス分散マスターバッチとしては、(i)ポリエステル樹脂、(ii)ワックス、(iii)スチレン系モノマー及び(メタ)アクリル酸系モノマーから選ばれる1種又は2種以上のモノマーを用いて合成された共重合体とポリオレフィンを少なくとも有するものが良い。
【0082】
本発明に用いる(ii)ワックスは、予め樹脂中に微分散されるワックス分散剤として添加される。ワックス分散剤は結着樹脂、ワックス、分散剤からなる。分散剤は、ポリオレフィンおよびスチレン系の重合生成物からなり、樹脂とワックスを微分散させる役割を持つ。
【0083】
また、上述したように、(ii)ワックスのDSCによって測定される昇温時の吸熱曲線において、最大吸熱ピークの極大値が60〜110℃であること、及びトナーの質量を基準としてワックスを0.1〜6質量%含有させることが好ましい。トナー中のワックスの含有量が0.1質量%未満の場合は、特に定着オイルの塗布量を減らした場合又は全く使用しない場合の離型効果が得られず、6質量%よりも多い場合は、顔料の分散性が悪くなり、結果的にトナーの彩度を損なうこととなる。
【0084】
また、最大吸熱ピークが60℃未満のワックスは、本発明に用いられる樹脂のガラス転移温度よりも融点が低く、高温環境に放置した際にワックスがトナー表面に溶け出すため、耐ブロッキング性能が大幅に悪くなる。一方、最大吸熱ピークが110℃より大きい場合、トナー定着溶融時にワックスが迅速に溶融トナー表面に移行できず、離型性が悪くなるために、高温オフセットが発生し易くなる。
【0085】
(ii)ワックスのGPCによる分子量分布において、重量平均分子量(Mw)が400〜800であり、数平均分子量(Mn)が400〜600であり、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.0〜2.0であることが好ましい。(ii)ワックスの数平均分子量(Mn)が400未満の場合又は重量平均分子量(Mw)が400未満の場合、高温環境に放置した際にトナー表面に溶け出すため、耐ブロッキング性能が大幅に悪くなる。
【0086】
また、(ii)ワックスの数平均分子量(Mn)が600を超える場合又は重量平均分子量(Mw)が800を越える場合、若しくは重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が2.0を越える場合、トナー定着溶融時にワックスが迅速に溶融トナー表面に移行できず、離型性が悪くなるために、高温オフセットが発生し易くなる。
【0087】
本発明において結着樹脂として用いられるポリエステル樹脂又はハイブリッド樹脂成分とワックスとの相溶性は元来より乏しいため、そのままの状態で添加してトナー化した際には、トナー中にワックスが偏析して存在し、遊離ワックス等も発生することから、結果的に白抜けの発生や帯電不良等の不具合が発生する。
【0088】
本発明におけるワックスの添加方法としては、トナー製造時にバインダーその他の材料と共に同時添加するのではなく、上記のようにワックス分散マスターバッチとして、予めワックスを樹脂組成物中に微分散させた形態で添加することが好ましい。
【0089】
本発明で用いるトナーは、芳香族オキシカルボン酸又は該芳香族オキシカルボン酸の金属化合物を少なくとも有する芳香族オキシカルボン酸化合物を含有する。芳香族オキシカルボン酸の金属化合物に用いられる2価の金属として、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Pb2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Zn2+、Cu2+が挙げられる。これらの2価の金属のうち、Zn2+、Ca2+、Mg2+、Sr2+が好ましい。3価以上の金属としてはAl3+、Cr3+、Fe3+、Ni3+が挙げられる。これらの金属の中で好ましいのはAl3+、Cr3+であり、特に好ましいのはAl3+である。
【0090】
本発明においては、芳香族オキシカルボン酸の金属化合物として、ジ−tert−ブチルサリチル酸のアルミニウム化合物が特に好ましい。
【0091】
芳香族オキシカルボン酸の金属化合物は、例えば、オキシカルボン酸を水酸化ナトリウム水溶液に溶解させ、2価以上の金属原子を溶融している水溶液を水酸化ナトリウム水溶液に滴下し、加熱撹拌し、次に水溶液のpHを調整し、室温まで冷却した後、ろ過水洗することにより芳香族オキシカルボン酸の金属化合物を合成し得る。ただし、上記の合成方法だけに限定されるものではない。
【0092】
芳香族オキシカルボン酸化合物は、トナーの質量基準で0.1〜10質量%使用すると、トナーの帯電量の初期変動が少なく、現像時に必要な絶対帯電量が得られやすく、結果的に「カブリ」や画像濃度ダウン等の画像品質の低下がなく好ましい。
【0093】
芳香族オキシカルボン酸化合物の含有率が、トナーの質量基準として0.1%未満である(全く加えない)と、耐久時における帯電量が不安定となり、結果的に画像濃度の維持性に劣ることとなる。また、芳香族オキシカルボン酸化合物の含有率が、トナーの質量基準として10%を越えると、逆に耐久的に使用した際にチャージアップが発生するために、画像濃度の低下を招くこととなる。
【0094】
本発明では、芳香族オキシカルボン酸化合物のトナー表面における存在量が0.05〜8g/kgであることを特徴とする。この芳香族オキシカルボン酸化合物の存在量は0.05〜4g/kgであることがより好ましい。上述したように、本発明で用いるトナーは、ワックスを含有するために流動性が低くても、安定して画像形成が行われるように低い帯電分布を有している。また、本発明では現像装置の構成を簡略化するために帯電バイアスに直流電圧をのみを用いている。本発明では、後述するように現像剤担持体上に担持される二成分現像剤中の逆極性トナーの存在量を制御すると共に、トナーのトナー表面の芳香族オキシカルボン酸化合物の存在量を上記範囲とすることにより、帯電バイアスとして直流電圧のみを用い、且つトナーの帯電分布を低くしても、長期にわたって安定した画像を形成することができる。
【0095】
本発明において芳香族オキシカルボン酸化合物のトナー表面における存在量は、トナー製造時の混練温度、混練時間、ワックス分散マスターバッチの条件及びワックスと他のトナー成分との混合条件等を適宜選択することによって、上記範囲に調整することができる。
【0096】
本発明に用いられるトナーに含有される着色剤としては、顔料及び/又は染料を用いることができる。
【0097】
例えば染料としては、C.I.ダイレクトレッド1、C.I.ダイレクトレッド4、C.I.アシッドレッド1、C.I.ベーシックレッド1、C.I.モーダントレッド30、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー15、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー5、C.I.モーダントブルー7、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6等が挙げられる。
【0098】
顔料としては、ミネラルファストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、ベンジジンオレンジG、パーマネントレッド4R、ウオッチングレッドカルシウム塩、エオシンレーキ、ブリリアントカーミン3B、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC、クロムグリーン、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等が挙げられる。
【0099】
また、フルカラー画像形成用トナーとして使用する場合、マゼンタ用着色顔料としては、C.I.ピグメントレッド1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,21,22,23,30,31,32,37,38,39,40,41,48,49,50,51,52,53,54,55,57,58,60,63,64,68,81,83,87,88,89,90,112,114,122,123,163,202,206,207,209,238、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.バットレッド1,2,10,13,15,23,29,35等が挙げられる。
【0100】
係る顔料を単独で使用しても構わないが、染料と顔料と併用してその鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点からより好ましい。マゼンタ用染料としては、C.I.ソルベントレッド1,3,8,23,24,25,27,30,49,81,82,83,84,100,109,121、C.I.ディスパースレッド9、C.I.ソルベントバイオレット8,13,14,21,27、C.I.ディスパースバイオレット1等の油溶染料;C.I.ベーシックレッド1,2,9,12,13,14,15,17,18,22,23,24,27,29,32,34,35,36,37,38,39,40、C.I.ベーシックバイオレット1,3,7,10,14,15,21,25,26,27,28等の塩基性染料が挙げられる。
【0101】
シアン用着色顔料としては、C.I.ピグメントブルー2,3,15,16,17;C.I.アシッドブルー6;C.I.アシッドブルー45又はフタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1〜5個置換した銅フタロシアニン顔料等が挙げられる。
【0102】
イエロー用着色顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1,2,3,4,5,6,7,10,11,12,13,14,15,16,17,23,65,73,74,83,93,97,155,180、C.I.バットイエロー1,3,20等が挙げられる。
【0103】
着色剤の使用量は、結着樹脂100質量部に対して1〜15質量部、好ましくは3〜12質量部、より好ましくは4〜10質量部含有していることが良い。
【0104】
着色剤の含有量が15質量部より多い場合には、透明性が低下し、加えて人間の肌色に代表される様な中間色の再現性も低下し易くなり、更にはトナーの帯電性の安定性が低下し、目的とする帯電量が得られにくくなる。
【0105】
着色剤の含有量が1質量部より少ない場合には、目的とする着色力が得られ難く、高い画像濃度の高品位画像が得られ難い。
【0106】
トナー粒子には、流動性向上剤が外添されていることが画質向上のために好ましい。流動性向上剤としては、トナー粒子に外添することにより、流動性が添加前後を比較すると増加し得るものである。
【0107】
例えば、フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末等のフッ素系樹脂粉末;湿式製法によるシリカ微粉末、乾式製法によるシリカ微粉末等のシリカ微粉末、それらシリカ微粉末をシランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイル等の処理剤により表面処理を施した処理シリカ微粉末;酸化チタン微粉末;アルミナ微粉末、処理酸化チタン微粉末、処理酸化アルミナ微粉末が挙げられる。
【0108】
流動性向上剤は、BET法で測定した窒素吸着により非表面積が30m2/g以上、好ましくは50m2/g以上のものが良好な結果を与える。トナー粒子100質量部に対して流動性向上剤0.01〜8質量部、好ましくは0.1〜4質量部使用するのが良い。
【0109】
トナー粒子は結着樹脂、着色剤、有機金属化合物及びその他の任意成分の添加剤をヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合機により充分混合し、ニーダー、エクストルーダー等の熱混練機を用いて溶融、捏和及び練肉し、溶融混練物を冷却固化後に固化物を粉砕し、粉砕物を分級することにより所定の平均粒径のトナー粒子を生成することができる。
【0110】
更に、流動性向上剤とトナー粒子をヘンシェルミキサー等の混合機により充分混合し、トナー粒子表面に流動性向上剤を有するトナーを得ることができる。
【0111】
本発明において、トナーの重量平均粒径(D4)は、4.0〜10.0μm、好ましくは4.5〜9.0μmが良い。
【0112】
トナーの重量平均粒径(D4)が4.0μm未満の場合には、帯電安定化が達成しづらくなり、耐久において、カブリやトナー飛散が発生しやすくなる。
【0113】
トナーの重量平均粒径(D4)が10.0μmを越える場合には、ハーフトーン部の再現性が大きく低下し、得られた画像はガサついた画像になってしまう。
【0114】
更に、本発明のトナーは、体積平均粒径(Dv)が2.5〜6.0μmであることが、より高画質画像の形成のために好ましい。
【0115】
トナーの体積平均粒径(Dv)が2.5μm未満の場合には、トナーの帯電安定性が低下し、6.0μmを越える場合には、画質が粗くなる傾向にある。
【0116】
本発明で用いる二成分系現像剤は磁性キャリアを含有する。磁性キャリアとしては従来より現像剤に用いられる公知のものを用いることができ、特に限定されないが、フェライトをコア剤とするコートキャリア、又は磁性体分散型キャリアを好ましく用いることができる。
【0117】
本発明では、二成分現像剤中におけるトナーと磁性キャリアの混合比は、画像形成工程において現像剤担持体に担持される現像剤中におけるトナー量が1.0〜3.5mg/cm2となるように、適宜調整される。
【0118】
次に、上記二成分現像剤を用いる本発明の画像形成方法について説明する。本発明の画像形成方法は、二成分系現像剤を担持する現像剤担持体に直流バイアスを印加して、現像剤担持体に対して所定の間隙をもって配置された静電潜像担持体上に形成された静電潜像を前記カラートナーによって現像してトナー像を形成する画像形成方法であって、(A)前記現像剤担持体上に担持される現像剤中のカラートナー量が、1.0〜3.5mg/cm2であり、(B)前記現像剤担持体と前記静電潜像担持体の間隙が250〜600μmであり、(C)前記現像剤担持体上におけるカラートナーの帯電量分布が、23℃、相対湿度60%の環境下において、絶対値で5〜25μC/gにピークを有し、且つ該環境下における逆極性帯電のトナーの存在量が10体積%以下であることを特徴とする。
【0119】
以下、図を用いて本発明の画像形成方法に関して説明する。
【0120】
図1は本発明の画像形成方法を好適に実施できる画像形成装置の一例である電子写真方式のフルカラー機の概略構成図である。図1において、ABCDの各ステーションは、フルカラー画像のそれぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像を形成するが、ステーションの色順については一切問わない。以下の説明において、例えば一次帯電器21とあれば、ABCD各ステーションにおける一次帯電器21A、21B、21C、21Dを指すものとする。
【0121】
それぞれのステーションにおいて、画像形成は次のように行われる。まず、静電潜像担持体である感光ドラム4を回転自在に設け、該感光ドラム4を一次帯電器21で一様に帯電し、次に例えばレーザのような発光素子22によって情報信号を露光して静電潜像を形成し、現像装置9で可視像化する。次に該可視像が転写紙搬送シート27により搬送された転写紙24に、転写帯電器23により転写される。転写紙24には各ステーションでイエロートナー像、マゼンタトナー像、シアントナー像、ブラックトナー像が順に重ねて転写される。この4色の各トナー像が積層された転写紙24は定着装置25で熱と圧力とにより混色及び定着され、フルカラー像が形成されて装置外に排出される。また、感光ドラム4上の転写残トナーはクリーニング装置26により除去される。
【0122】
図2は図1の現像装置9の構成を示す部分的拡大図である。この図9を用いて現像装置について詳細に説明する。同図にて、感光ドラム4と所定距離(本実施形態では250〜600μm)をおいて対向して配置された現像装置9は、現像容器8、現像剤担持体としての現像スリーブ3、及び現像剤の帯電付与及びトナー量規制部材としてのブレード2を有している。
【0123】
現像容器8は、感光ドラム4に対面した現像域に相当する位置が開口しており、この開口部に一部露出するようにして現像スリーブ3が回転可能に配置されている。現像スリーブ3は非磁性材料で構成され、現像動作時には図示矢印方向に回転する。現像スリーブ3はブレード2によって層厚規制された二成分現像剤の層を担持搬送し、感光ドラム4と対向する現像域でトナーを感光ドラム4に供給して潜像を現像する。現像効率を向上させるために、現像スリーブ3には電源15から、現像バイアス電圧が印加される。
【0124】
現像装置9は上記構成により、現像スリーブ3の表面に供給された二成分現像剤を、現像スリーブ3の回転に伴って感光ドラム4との対向部(現像域)に搬送すると共に、ブレード2によりトナーへの帯電付与及び二成分現像剤の量の規制を行い、現像域に搬送される二成分現像剤の量を適正に維持する。
【0125】
現像装置9において感光ドラム4との対向部にある現像域では、画像形成装置本体側に設けられたバイアス電源15を介して現像スリーブ3に直流のバイアス電圧が印加され、現像スリーブ3上のトナーが感光ドラム4の静電潜像側に移動して、該静電潜像がトナー像として顕像化される。
【0126】
また、本発明では、現像剤担持体上に担持される現像剤中のトナー量を1.0〜3.5mg/cm2とすることを特徴とする。このトナー量は、上述したように二成分系現像剤中のトナーと磁性キャリアの混合比を適宜調整することにより上記範囲とすることができる。
【0127】
現像剤担持体上に担持される現像剤中のトナー量は、基本的には、二成分現像剤中のトナーと磁性キャリアとの混合比から求めることができるが、以下の方法によっても測定できる。即ち、磁石を用いてキャリアを現像剤担持体上に残したまま、トナーを界面活性剤により洗い出し、その質量を求める方法である。
【0128】
また、本発明では現像バイアスとして直流電圧のみを用いているが、該直流バイアス(VDC)が、画像形成部の電位Vaと、非画像部の電位Vbの間にあり、画像形成部バイアスであるVcont(=|Va−VDC|)が200〜600Vの範囲にあり、カブリ防止バイアスであるVback(=|Vb−VDC|)が50〜250Vであることが好ましい。より好ましくは、Vcontが250〜500Vであり、Vbackが100〜200Vである。Vcontが200Vより低い場合、濃度が十分でなく、Vcontが600Vより高い場合、ハイライト部での濃度再現性に難があった。また、Vbackが50Vより低い場合、カブリを十分に取りきれず、Vbackが250Vより高い場合はキャリアの付着等が発生して画像欠陥を招きやすくなった。より好ましくは、画像形成部バイアスが250〜500V、カブリ防止バイアスが100〜200Vの範囲で用いることが好ましい。
【0129】
更に、上述したように、流動性の低いトナーを用い、且つ現像バイアスに直流電圧のみを用いた場合でも、長期にわたって安定して画像形成を行うために、現像剤担持体上におけるトナーの帯電量分布が温度23℃、相対湿度60%の環境下において、絶対値で5〜25μC/gにピークを有し、且つ該環境下における逆極性帯電のトナーの存在量が10体積%であることを特徴とする。トナーの帯電量分布のピークは、10〜20μCに存在することが好ましい。
【0130】
また、現像剤担持体上のトナー層の厚さを規制するブレード2は、主として磁性材料からなるものであることが好ましい。
【0131】
図3は図1の定着装置25の構成を示す部分的拡大図である。図3において、定着手段である定着ローラー39は、例えば厚さ5mmのアルミ製の芯金41上に厚さ2mmのRTV(室温加硫型、JIS−A硬度20)シリコーンゴム層42、この外側に厚さ50μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)層43を有している。
【0132】
一方、加圧手段である加圧ローラー40は、例えば厚さ5mmのアルミの芯金44の上に厚さ2mmのRTVシリコーンゴム層45(ゴム硬度JIS−A硬度40)、この外側に厚さ150μmのPTFE層を有している。
【0133】
図3において、定着ローラー、加圧ローラー共にその外径は、60mmφであるが、加圧ローラーの方が硬度が高いため、白紙による排紙テストでは、両ローラーの中心線を結ぶ線に対しての垂線より、排紙方向は、加圧ローラー側になる。この排紙方向を加圧ローラー側にすることが、画像面積の大きいコピー画像を定着する場合の定着支持体の定着ローラー巻きつき防止に極めて重要である。排紙方向を加圧ローラー側にする手段としては、前記した硬度差をつける方法、或いは、加圧ローラーの径を定着ローラーよりも小さくする方法、加圧ローラー側の設定温度を定着ローラーよりも高くし、定着紙背面、つまり加圧ローラー側の紙面の水分をより多く蒸発させることにより、ごく少量の紙のちぢみを利用する方法などが挙げられる。
【0134】
また、上記定着ローラー39及び加圧ローラー40には発熱手段であるハロゲンヒータ46が芯金内に配設されて、転写紙の両面から加熱が行われる。定着ローラー39及び加圧ローラー40に当接されたサーミスタ48a及び48bにより定着ローラー39及び加圧ローラーの温度が検知され、この検知温度に基づき制御装置49a及び49bによりハロゲンヒータ46及び47がそれぞれ制御され、定着ローラー39の温度及び加圧ローラー40の温度が共に一定の温度(例えば、160℃±10℃)に保つように制御される。定着ローラー39と加圧ローラー40は加圧機構(図示せず)によって総圧約40kgで加圧されている。
【0135】
結着樹脂及びトナー粒子における各物性の測定方法を以下に説明する。
【0136】
〈酸価(JIS酸価)の測定〉
サンプル2〜10gを200〜300mlの三角フラスコに秤量し、メタノール:トルエン=30:70の混合溶媒約50mlを加えて樹脂を溶解する。溶解性が悪いようであれば少量のアセトンを加えてもよい。0.1%のブロムチモールブルーとフェノールレッドの混合指示薬を用い、予め標定されたN/10カ性カリ〜アルコール溶液で滴定し、アルコールカリ液の消費量から次式を用いて酸価を求める。
【0137】
【数1】
酸価 = KOH(ml数)×N×56.1/試料質量
(但し、NはN/10KOHのファクター)
【0138】
〈GPCによる分子量の測定(ポリエステル樹脂、共重合体類)〉
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるクロマトグラムの分子量は次の条件で測定される。40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を毎分1mlの流速で流し、試料濃度として0.05〜0.6質量%に調整した樹脂のTHF試料溶液を50〜200μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば、Pressure Chemical Co.製あるいは、東洋ソーダ工業社製の分子量が6×102、2.1×103、4×103、1.75×104、5.1×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2×106、4.48×106のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。
【0139】
カラムとしては、103〜2×106の分子量領域を的確に測定するために、市販のポリスチレンゲルカラムを複数組み合わせるのが良く、例えば、Waters社製のμ−styragel 500、103、104、105の組み合わせや、昭和電工社製のshodex KA−801、802、803、804、805、806、807の組み合わせが好ましい。
【0140】
〈GPCによる分子量の測定(ポリオレフィン、炭化水素系ワックス類)〉
(GPC測定条件)
装置 :GPC−150(ウォーターズ社)
カラム:GMH−HT30cm2連(東ソー社製)
温度 :135℃
溶媒 :o−ジクロロベンゼン(0.1%アイオノール添加)
流速 :1.0ml/min
試料 :0.15%の試料を0.4ml注入
以上の条件で測定し、試料の分子量算出にあたっては単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量較正曲線を使用する。更に、Mark−Houwink粘度式から導き出される換算式でポリスチレン換算することによって算出される。
【0141】
〈ワックス及びトナーの最大吸熱ピークの測定〉
示差熱分析測定装置(DSC測定装置)、DSC−7(パーキンエルマー社製)を用い測定する。
【0142】
測定試料は5〜20mg、好ましくは10mgを精密に秤量する。
【0143】
これをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用い、測定温度範囲30〜200℃の間で、昇温速度10℃/minで常温常湿下で測定を行う。
【0144】
この昇温過程で、温度30〜200℃の範囲におけるメインピークの吸熱ピークが得られる。最大吸熱ピーク温度とは、言うまでもなく、その範囲で最大の極大値を示す温度のことである。
【0145】
〈トナー粒子又はトナーの粒度分布の測定〉
測定装置としては、コールターカウンターTA−II或いはコールターマルチサイザーII(コールター社製)を用いる。電解液は、1級塩化ナトリウムを用いて、約1%NcCl水溶液を調製する。例えば、ISOTON(登録商標)−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。測定方法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として、界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン塩酸)を、0.1〜5mlを加え、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、前記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、トナー粒子の体積及び個数を各チャンネルごとに測定して、トナーの体積分布と個数分布とを算出する。それから、トナー粒子の体積分布から求めた質量基準のトナー粒子又はトナーの重量平均粒径(D4)及び体積平均粒径(Dv)(各チャンネルの中央値をチャンネル毎の代表値とする)を求める。
【0146】
チャンネルとしては、2.00〜2.52μm;2.52〜3.17μm;3.17〜4.00μm;4.00〜5.04μm;5.04〜6.35μm;6.35〜8.00μm;8.00〜10.08μm;10.08〜12.70μm;12.70〜16.00μm;16.00〜20.20μm;20.20〜25.40μm;25.40〜32.00μm;32〜40.30μmの13チャンネルを用いる。
【0147】
〈二成分現像剤の摩擦帯電量の測定方法〉
二成分現像剤の摩擦帯電量の測定方法を、現像剤保持体上の場合及び静電潜像担持体上の場合についてそれぞれ以下に記載する。
【0148】
(現像剤保持体)
図4は摩擦帯電量を測定する装置の説明図である。底に500メッシュのスクリーン53のある金属製の測定容器52に、複写機又はプリンターの現像剤保持体上から採取した二成分系現像剤を約0.5〜1.5g入れ金属製のフタ54をする。この時の測定容器52全体の質量を秤りW1(g)とする。次に吸引機51(測定容器52と接する部分は少なくとも絶縁体)において、吸引口57から吸引し風量調節弁56を調整して真空計55の圧力を250mmAqとする。この状態で充分、好ましくは2分間吸引を行いトナーを吸引除去する。この時の電位計59の電位をV(ボルト)とする。ここで58はコンデンサーであり容量をC(mF)とする。また、吸引後の測定容器全体の質量を秤りW2(g)とする。この試料の摩擦帯電量(mC/kg)は下式の如く算出される。
【0149】
【数2】
試料の摩擦帯電量(mC/kg) = C×V/(W1−W2)
(但し、測定条件は23℃、60%RHとする。)
【0150】
(静電潜像担持体)
静電潜像担持体上の摩擦帯電量は、吸引式ファラデーケージ法を用いて求める。吸引式ファラデーケージ法とは、現像剤回収装置を用いて複写機又はプリンターの現像スリーブ上の一定面積における全ての一成分系現像剤を吸引回収し、回収した現像剤の質量及び電荷量を測定し、測定された現像剤の質量と電荷量から、現像剤の単位質量当たりの電荷量、すなわち、摩擦帯電量(mC/kg)を求める方法である。
【0151】
この吸引式ファラデーケージ法で用いる現像剤回収装置は、エアーを吸引するための吸引装置部及びこの吸引装置に連結された現像剤を回収するための回収装置部とを有している。回収装置部は、現像スリーブ上の現像剤を吸引するための現像スリーブの外周曲率に対応した曲率の先端部を持った吸引口を有する外筒と、吸引した現像剤を回収するための円筒ろ紙を有する内筒とを有している。
【0152】
この現像剤回収装置を用いて現像スリーブ上の現像剤の吸引回収を具体的に行うには、現像剤保持体から静電潜像担持体上にトナーを現像し、トナー像が転写紙上に転写されるまでに停止し、上記の現像剤回収装置を用いて、静電潜像担持体上の現像剤を、現像スリーブの一端側から他端側にかけて長手方向に沿って現像剤回収装置の吸引口を現像スリーブ表面に押し付けながら吸引し、吸引した現像剤を円筒ろ紙で回収する。
【0153】
現像剤を回収した円筒ろ紙の質量を測り、この回収後の円筒ろ紙の質量から回収前の円筒ろ紙の質量を引いた値を回収した現像剤の質量とする。このとき、外部から静電的にシールドされた内筒の円筒ろ紙に回収された現像剤の電荷量を測定しておく。
【0154】
〈現像剤担持体上におけるトナーの帯電量分布、及び逆極性帯電トナーの存在量の測定〉
帯電量分布及び逆帯電性トナーの存在量の測定には、ホソカワミクロン社製のE−SPARTアナライザーを用いた。測定には、現像保持体を含む現像器を複写機本体から取り出し、E−SPARTアナライザーに現像器のまま、検出部に現像剤担持体に保持された現像剤が検出口に検知されるように設置し測定を行った。
【0155】
〈トナーの粘弾性の測定〉
トナーを直径25mm、厚さ約2〜3mmの円板状の試料に加圧成形する。次にパラレルプレートにセットし、50〜200℃の温度範囲内で徐々に昇温させ、温度分散測定を行う。昇温速度は2℃/minとし、角周波数(ω)は6.28rad/secに固定し、歪率は自動とする。横軸に温度、縦軸に貯蔵弾性率(G’)を取り、各温度における値を読み取る。測定にあたっては、RDA−II(レオメトリックス社製)を用いる。
【0156】
〈該芳香族オキシカルボン酸化合物の表面存在量の測定〉
分散剤としてコンタミノンN(和光純薬工業社製)0.04gを加えた0.1mol/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を容器に50ml用意し、それぞれの中にトナー1gを秤量して加え、スターラーを用いて50rpmで撹拌し、均一に分散させる。3時間分散処理を行った後、メンブランフィルター(ポアサイズ:0.45μm)を用いて濾過し、得られた濾液の吸収スペクトルを分光光度計により測定し、オキシカルボン酸の呈する最大吸収ピークの最大値とベースラインとの差を求める。得られた結果から、所定の検量線を用いてトナー中のオキシカルボン酸量を算出した。オキシカルボン酸の吸収スペクトルは、例えば280〜350nmの範囲に現れる。
【0157】
本発明の実施態様の例を以下に列挙する。
【0158】
(1)磁性キャリア及びカラートナーを含有する二成分系現像剤を担持する現像剤担持体に直流バイアスを印加して、前記現像剤担持体に対して所定の間隙をもって配置された静電潜像担持体上に形成された静電潜像を前記カラートナーによって現像してトナー像を形成する画像形成方法であって、
(A)前記現像剤担持体上に担持される現像剤中のカラートナー量が、1.0〜3.5mg/cm2であり、
(B)前記現像剤担持体と前記静電潜像担持体の間隙が250〜600μmであり、
(C)前記現像剤担持体上におけるカラートナーの帯電量分布が、温度23℃、相対湿度60%の環境下において、絶対値で5〜25μC/gにピークを有し、且つ該環境下における逆極性帯電のトナーの存在量が10体積%以下であり、
(D)前記カラートナーは結着樹脂、着色剤、芳香族オキシカルボン酸化合物及びワックスを少なくとも含有し、
(1)前記結着樹脂は(a)ポリエステル樹脂、(b)ポリエステルユニットとビニル系共重合体ユニットとを有するハイブリッド樹脂成分、又は(c)(a)と(b)の混合物を含有し、
(2)前記カラートナーの示差熱分析(DSC)測定における吸熱曲線において、温度30〜200℃の範囲における最大吸熱ピークのピーク温度が60〜110℃であり、
(3)前記カラートナーの粘弾性特性において、温度80℃における貯蔵弾性率(G’80)が1×106〜1×1010[dN/m2]の範囲にあり、温度120〜180℃における貯蔵弾性率(G’120−180)が1×103〜1×106[dN/m2]であり、
(4)前記芳香族オキシカルボン酸化合物は芳香族オキシカルボン酸又は該芳香族オキシカルボン酸の金属化合物を少なくとも有し、該芳香族オキシカルボン酸化合物のカラートナー表面における存在量が0.05〜8g/kgである
ことを特徴とする画像形成方法。
【0159】
(2)前記現像剤担持体上におけるカラートナーの帯電量分布が、23℃、相対湿度60%環境下において、絶対値で10〜20μC/gにピークを持ち、且つ該環境下における逆極性帯電のトナーの存在量が1〜7体積%であることを特徴とする(1)の画像形成方法。
【0160】
(3)前記直流バイアス(VDC)の電位が、画像形成部の電位Vaと、非画像部の電位Vbの間にあり、下記式(1)で表される画像形成部バイアスVcontが200〜600Vであり、下記式(2)で表されるカブリ防止バイアスVbackが50〜250Vであることを特徴とする(1)又は(2)の画像形成方法。
【0161】
【数3】
Vcont = |Va−VDC| (1)
Vback = |Vb−VDC| (2)
【0162】
(4)前記画像形成部バイアスVcontが250〜500Vであり、前記カブリ防止バイアスVbackが100〜200Vであることを特徴とする(3)の画像形成方法。
【0163】
(5)前記現像剤担持体と前記静電潜像担持体の間隙が300〜450μmであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかの画像形成方法。
【0164】
(6)前記磁性キャリアがフェライトをコア剤とするコートキャリアであり、前記現像剤担持体上に保持される現像剤の量が20〜45mg/cm2であることを特徴とする特徴とする(1)〜(5)のいずれかの画像形成方法。
【0165】
(7)前記磁性キャリアが磁性体分散型樹脂キャリアであり、前記現像剤担持体上に保持される現像剤の量が18〜40mg/cm2であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかの画像形成方法。
【0166】
(8)前記カラートナーの粘弾性特性において、温度80℃における貯蔵弾性率(G’80)が1×106〜1×108[dN/m2]であり、温度120〜180℃における貯蔵弾性率(G’120−180)が1×104〜5×105[dN/m2]であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかの画像形成方法。
【0167】
(9)前記カラートナーの温度120〜180℃における貯蔵弾性率の最小値(G’min)に対する最大値(G’max)の比(G’max/G’min)が30以下であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかの画像形成方法。
【0168】
(10)前記カラートナーの示差熱分析(DSC)測定における吸熱曲線において、温度30〜200℃の範囲における最大吸熱ピークのピーク温度が60〜100℃の範囲にあることを特徴とする(1)〜(9)のいずれかの画像形成方法。
【0169】
(11)前記カラートナーの示差熱分析(DSC)測定における吸熱曲線において、温度30〜200℃の範囲における最大吸熱ピークのピーク温度が60〜90℃であることを特徴とする(1)〜(10)のいずれかの画像形成方法。
【0170】
(12)前記カラートナーは、0.1mol/リットルの水酸化ナトリウム水溶液により抽出される芳香族カルボン酸化合物の、トナー表面における存在量が0.05〜8mgであることを特徴とする(1)〜(11)のいずれかの画像形成方法。
【0171】
(13)前記芳香族オキシカルボン酸化合物の金属化合物が、該芳香族オキシカルボン酸誘導体のアルミニウム化合物であることを特徴とする(1)〜(12)のいずれかのトナー。
【0172】
(14)前記トナーの重量平均粒径が4〜10μmであることを特徴とする(1)〜(13)のいずれかの画像形成方法。
【0173】
(15)現像剤担持体上の現像剤量を規制するために前記現像剤担持体に対向して配置される規制ブレードを用い、前記規制ブレードは主として磁性材料からなることを特徴とする(1)〜(14)のいずれかの画像形成方法。
【0174】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0175】
〈トナーの製造例1〉
樹脂 100質量部
(結着樹脂(1):95質量部、共重合組成物(1):5質量部)
ワックス:ワックス分散剤マスターバッチ(1) パラフィン5質量部
荷電制御剤:芳香族オキシカルボン酸Al化合物 5質量部
顔料:銅フタロシアニン(C.I.Pigment.Blue 15:3)4質量部
を混練し、粉砕、分級し、シアントナー(1)を作製した。詳細は以下の通りである。
【0176】
結着樹脂(1)は以下のようにして作製した。ビニル系共重合体として、スチレン2.0mol、2−エチルヘキシルアクリレート0.21mol、フマル酸0.16mol、α−メチルスチレンの2量体0.03mol、ジクミルパーオキサイド0.05molを滴下ロートに入れた。また、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン7.0mol、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン3.0mol、テレフタル酸3.0mol、無水トリメリット酸2.0mol、コハク酸5.0mol及び酸化ジブチル錫0.2gをガラス製4リットルの4つ口フラスコに入れ、温度計、撹拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取りつけマントルヒーター内においた。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、140℃の温度で撹拌しつつ、先の滴下ロートよりビニル系樹脂の単量体、架橋剤及び重合開始剤を4時間かけて滴下した。次いで200℃に昇温を行い、4時間反応させて結着樹脂(1)を得た。得られた結着樹脂(1)は、THF可溶成分のGPCにおいて、Mnが3000であり、Mwが81000であり、Mw/Mnが27.0であった。
【0177】
共重合組成物は以下のように作製した。
【0178】
共重合体(1) 90wt%
ポリエチレン(1) 10wt%
上記共重合体(1)とは、スチレン−アクリロニトリル−ブチルアクリレート−の三元共重合体である。共重合体の重量平均分子量(Mw)は15000、数平均分子量(Mn)は2800であった。また、使用したポリエチレンは、DSCによる吸熱ピークが110℃、密度0.93、重量平均分子量(Mw)は2200、数平均分子量(Mn)は1000のものを用いた。
【0179】
該ポリエチレンに(1)が共重合体(1)を上記配合比にてグラフトさせた共重合組成物(1)に、以下の配合比で表1に示すパラフィンワックス(1)を分散させて、ワックス分散剤マスターバッチを得ることができる。
【0180】
共重合組成物(1) 20wt%
パラフィンワックス(1) 20wt%
ジ−tert−ブチルサリチル酸Al化合物 20wt%
結着樹脂(1) 40wt%
【0181】
上記のようにして得られた混練物を更に、上記結着樹脂(1)、銅フタロシアニンを加えてヘンシェルミキサーにより十分予備混合を行い、二軸式押出し機を用い、任意のバレル温度にて溶融混練し、冷却後ハンマーミルをもちいて約1〜2mm程度に粗粉砕し、次いでエアージェット方式による微粉砕機で微粉砕した。得られた微粉砕物を多分割分級装置で微粉及び粗粉を同時に厳密に除去して重量平均粒径7.5μmのシアンカラートナー粒子を得た。
【0182】
該トナー粒子100質量部に対し、イソブチルトリメトキシシランで表面処理した一次粒子径50nmの酸化チタン微粒子1.0質量部を外添混合し、トナー1を製造した。
【0183】
〈トナーの製造例2〉
トナーの製造例1で用いた結着樹脂(1)の代わりに下記に示す結着樹脂(2)を使用し、パラフィンワックス(1)の代わりに表1に示すパラフィンワックス(2)を用いたことを除いて他は全てトナーの製造例1と同じ方法を用いてトナー2を得た。結着樹脂(2)に用いたモノマー構成比を以下に示す。なお、結着樹脂(2)の製造方法は、トナーの製造例1における結着樹脂(1)の製造方法と同様とした。
【0184】
一般式(1)において[x+y=3.0]で表されるジオール成分59mol%
フマル酸 21mol%
テレフタル酸 11mol%
トリメリット酸 9mol%
得られた非線状ポリエステル樹脂である結着樹脂(2)は、THF可溶成分のGPCにおいて、Mnが3300であり、Mwが33000であり、Mw/Mnが10.0であった。
【0185】
〈トナーの製造例3〜5〉
トナー作製例1で用いた銅フタロシアニン(C.I.Pigment.Blue 15:3)の代わりにイエロー、マゼンタ、ブラックの顔料を使用し、他は全てトナーの製造1と同じ方法を用いてトナー3〜5を得た。イエロー顔料としてC.I.Pigment.Yellow180を6質量部使用してトナー3を、マゼンタ顔料としてC.I.Pigment.Red 57:1を6部使用しトナー4を、ブラック顔料としてカーボンブラックを4部使用しトナー5を、それぞれ得た。
【0186】
〈トナーの製造例6、7〉
トナーの製造例1で用いた結着樹脂(1)の代わりに下記に示す結着樹脂(3)、(4)を使用し、パラフィンワックス(1)の代わりに表1に示すパラフィンワックス(3)、(4)を用いたことを除いて他は全てトナーの製造例1と同じ方法を用いてトナー6、7を得た。
【0187】
結着樹脂(3)、(4)は結着樹脂(2)の製造において、トリメリット酸の割合を減らし且つ反応時間を短くして作製した。結着樹脂(3)は、THF可溶成分のGPCにおいてMnが4000であり、Mwが10500であり、Mw/Mnが2.6であった。結着樹脂(4)は、THF可溶成分のGPCにおいて、Mnが3600であり、Mwが8500であり、Mw/Mnが2.4であった。
【0188】
〈トナーの製造例8、9〉
トナーの製造例1で用いたパラフィンワックス(1)の代わりに表1に示すパラフィンワックス(5)、(6)を用いたことを除いて他は全てトナーの製造例1と同じ方法を用いてトナー8、9を得た。
【0189】
〈トナーの製造例10〜13〉
トナーの製造例1で用いた原材料の種類は変えずに、二軸式押出し機の混練温度及び該二軸式押出機への原材料の供給量(供給速度)を変化させ、トナー10〜13を得た。具体的には、トナー10及び12の製造時には混練温度を上げ、トナー11及び13の製造時には混練温度を下げた。また、トナー10及び11の製造時には原材料供給量を下げ、トナー12及び13の製造時には原材料供給量を上げた。
【0190】
〈トナーの製造例14〉
トナーの製造例1で用いた芳香族オキシカルボン酸Al化合物の添加量を2質量部とし、更に二軸式押出し機のバレル温度を上げて溶融混練し、他は全てトナーの製造例1と同じ方法を用いてトナー14を得た。なお、結着樹脂(1)と共重合組成物(1)、パラフィンワックス(1)、芳香族オキシカルボン酸Al化合物は以下の混合比で前混練した。
【0191】
共重合組成物(1) 20wt%
パラフィンワックス(1) 20wt%
芳香族オキシカルボン酸Al化合物 8wt%
結着樹脂(1) 52wt%
【0192】
〈トナーの製造例15〉
トナーの製造例1で用いた芳香族オキシカルボン酸Al化合物の添加量を8質量部にして、前混練で添加せず(ワックス分散マスターバッチに混合させず)、二軸式押出し機のバレル温度を下げて溶融混練し、他は全てトナーの製造例1と同じ方法を用いてトナー15を得た。なお、結着樹脂(1)と共重合組成物(1)、パラフィンワックス(1)は以下の混合比で前混練した。
【0193】
共重合組成物(1) 20wt%
パラフィンワックス(1) 20wt%
結着樹脂(1) 60wt%
上記のようにして得られた混練物を更に、上記結着樹脂(1)、芳香族オキシカルボン酸Al化合物、銅フタロシアニンと共にヘンシェルミキサーにより十分予備混合を行い、二軸式押出し機を用い混練した。
【0194】
各トナーに用いたパラフィンワックスのDSCによる最大吸熱ピークを表1に、得られた各トナーの処方を表2に、それぞれ示す。
【0195】
【表1】
【0196】
【表2】
【0197】
〈実施例1〉
トナーの製造例1で製造したトナー1を用い、市販の普通紙フルカラー複写機(カラーレーザー複写機CLC1000、キヤノン製)を用いて、画出しの評価を行った。
【0198】
評価に際しては、以下のような磁性キャリアを用いた。コア剤にMn−Mg−Fe系フェライトを用い、含窒素シランカップリング剤とシリコーン樹脂により生成された変性シリコーン樹脂を約0.2質量%コーティングし二成分現像剤用キャリア(キャリア1)を作製した。このキャリア1の50%平均粒径は40μm、見かけかさ密度が2.3g/cm3であった。トナー1とキャリアをトナーが7質量%になるように混合することにより、二成分系現像剤を得た。
【0199】
なお、現像器は、現像剤の攪拌力を上げるために、送りばねの形状、速度を変更した。更に、規制ブレードの材質を磁性部材である鉄材を表面をNi−Crでコートしたものに変更した。現像剤の規制量は、現像剤担持体上で35mg/cm2に調整した。現像剤担持体上に保持される現像剤中のトナー量は2.45mg/cm2であった。現像剤担持体と静電潜像担持体の間隙は350μmに設定した。現像バイアスは直流電圧を印加し、画像形成部バイアスが350Vに、カブリ防止バイアス150Vになるように設定した。
【0200】
画像濃度に関しては、X−rite社製反射濃度計500 Series Spectrodensitemeterを用いて評価した。
【0201】
定着可能温度領域の評価に関しては、上記カラー複写機から定着ユニットを取り外し、単色モードで常温常湿環境下(23℃、60%)で未定着画像を出力し、図3に示す構成の定着試験器で設定温度を変更しながら定着画像を出力し、グロス(光沢度)を測定することにより評価した。
【0202】
グロス(光沢度)測定に関しては、VG−10型光沢度計(日本電色製)を用い、色度測定に用いた各ベタ画像を試料として、測定を行った。測定としては、まず定電圧装置により6Vにセットした。次いで投光角度、受光角度をそれぞれ60°に合わせた。
【0203】
0点調整及び標準板を用い、標準設定の後に試料台の上に前記試料画像を置き、更に白色紙を3枚上に重ね測定を行い、標示部に示される数値を%単位で読みとった。この時S,S/10切替SWはSに合わせ、角度、感度切替SWは45−60に合わせた。なお、画像濃度1.5±0.1の試料を使用した。
【0204】
サンプルトナーの耐ブロッキング性に関しては、トナーを50℃のオーブン内にて1週間放置することにより評価した。評価としては目視による凝集性のレベルを判定した。トナー凝集性の評価基準を以下に示す。
【0205】
A:凝集体が全く見られなく流動性が非常に良い
B:凝集体が全く見られない
C:若干の凝集体は見られるがすぐにほぐれる
D:現像剤攪拌装置で凝集体がほぐれる(普通)
E:現像剤攪拌装置では凝集体が十分にほぐれない(やや悪い)
【0206】
サンプルトナーの画像品質に関しては、定着後の画像のべた部における目視による白抜けのレベルにより評価した。該評価としては目視による凝集性のレベルを判定した。画像白抜け評価基準を以下に示す。
【0207】
A:白抜けが全く見られない
B:若干の白抜けが見られる
C:はっきりと白抜けが見られる
【0208】
連続通紙の画像評価については、印字比率7%のサンプルチャートを用い、上記カラー複写機で5万枚連続通紙した後、画像濃度、画像品質を評価した。評価基準を以下に示す。
【0209】
A:画像濃度の変動が0.15以内で且つ、白抜けが全く見られない
B:画像濃度の変動が0.15〜0.3の範囲か、もしくは若干の白抜けが見られる
C:画像濃度の変動が0.3以上もしくは、はっきりと白抜けが見られる
【0210】
用いたトナーの物性を表3に、評価結果を表4にそれぞれ示す。
【0211】
〈実施例2〜5〉
実施例1で用いたトナー1に代えてトナー2〜5を用い、実施例1と同じ評価を行った。用いたトナーの物性を表3に、評価結果を表4にそれぞれ示す。
【0212】
〈実施例6〉
実施例1で用いたカラー複写機の現像器の攪拌スクリューの構成及びその回転速度を変更し、攪拌力を下げた現像器を作製した。磁性キャリアは、表面コート剤のコート厚を下げた。また、現像剤の作製に際し、トナー量と磁性キャリアの比を調節し、トナー濃度を質量比で10%とした。現像器、磁性キャリア及び現像剤中のトナー量をこのように変更することにより、現像時の帯電量が実施例1における帯電量より低くなる現像剤を得た。これらの条件で、実施例1と同じ評価を行った。用いたトナーの物性を表3に、評価結果を表4にそれぞれ示す。
【0213】
〈実施例7〉
実施例1で用いたカラー複写機の現像器の攪拌スクリューの構成及びその回転速度を変更し、攪拌力を上げた現像器を作製した。磁性キャリアは、表面コート剤のコート厚を上げた。また、現像剤の作製に際し、トナー量と磁性キャリアの比を調節し、トナー濃度を質量比で4%とした。現像器、磁性キャリア及び現像剤中のトナー量をこのように変更することにより、現像時の帯電量が実施例1における帯電量より高くなる現像剤を得た。これらの条件で、実施例1と同じ評価を行った。用いたトナーの物性を表3に、評価結果を表4にそれぞれ示す。
【0214】
〈実施例8〉
実施例1でフェライトキャリアの代わりに、マグネタイト90質量部とヘマタイト10質量部をフェノール樹脂に分散した磁性体分散型樹脂キャリアを用い、これを二成分現像剤用キャリア(キャリア2)とした。このキャリア1の50%平均粒径は40μm、見かけかさ密度が2.0g/cm3であった。現像剤はトナーが8質量%になるようにトナーの含有量を調整した。
【0215】
現像剤の規制量は、現像剤担持体上で25mg/cm2に調整した。現像剤担持体上に保持される現像剤中のトナー量2.0mg/cm2であった。上記以外は実施例1と同じ評価を行った。用いたトナーの物性を表3に、評価結果を表4にそれぞれ示す。
【0216】
〈実施例9、10〉
実施例1で用いたトナー1に代えてトナー6、7を用い、実施例1と同じ評価を行った。用いたトナーの物性を表3に、評価結果を表4にそれぞれ示す。
【0217】
〈比較例1〜8〉
実施例1で用いたトナー1に代えてトナー8〜15を用い、実施例1と同じ評価を行った。用いたトナーの物性を表3に、評価結果を表4にそれぞれ示す。
【0218】
〈比較例9〉
実施例6で用いた、カラー複写機の攪拌力を下げた現像器を用いた。磁性キャリアの表面コート剤のコート厚を、実施例6より更に下げたものを用いた。また、トナー量と磁性キャリアの比を調節し、トナー濃度が質量比で10%になる現像剤を作製した。これらの条件で、実施例1と同じ評価を行った。用いたトナーの物性を表3に、評価結果を表4にそれぞれ示す。
【0219】
〈比較例10〉
実施例7で用いた、カラー複写機の攪拌力を上げた現像器を用いた。実施例7より更に磁性キャリアは表面コート剤のコート厚を上げ、また、トナー量と磁性キャリアの比を調節し、トナー濃度が質量比で4%になる現像剤を作製した。これらの条件で、実施例1と同じ評価を行った。用いたトナーの物性を表3に、評価結果を表4にそれぞれ示す。
【0220】
〈比較例11〉
実施例1で用いた現像器に代えて、現像剤の攪拌力を実施例6よりも更に下げた現像器を使用した以外は実施例1と同じ条件で画像形成を行い、評価を行った。用いたトナーの物性を表3に、評価結果を表4にそれぞれ示す。
【0221】
〈比較例12〉
現像剤担持体と静電潜像担持体の間隙を200μmに変更した以外は実施例1と同様の評価を行った。用いたトナーの物性を表3に、評価結果を表4にそれぞれ示す。
【0222】
〈比較例13〉
現像剤担持体と静電潜像担持体の間隙を650μmに変更した以外は実施例1と同様の評価を行った。用いたトナーの物性を表3に、評価結果を表4にそれぞれ示す。
【0223】
〈比較例14〉
現像剤はトナー1とキャリアをトナーが6質量%になるように混合することにより得た。現像剤の規制量を、現像剤担持体上で15mg/cm2となるように調整した。また、現像剤担持体上に保持される現像剤中のトナー量を0.9mg/cm2となるように調整した。その他は実施例1と同じ条件で、同様に評価を行った。用いたトナーの物性を表3に、評価結果を表4にそれぞれ示す。
【0224】
〈比較例15〉
現像剤の規制量を、現像剤担持体上で55mg/cm2となるように調整した。また、現像剤担持体上に保持される現像剤中のトナー量を3.85mg/cm2となるように調整した。その他は実施例1と同じ条件で、同様に評価を行った。用いたトナーの物性を表3に、評価結果を表4にそれぞれ示す。
【0225】
〈実施例11〉
実施例1で用いたカラー複写機を改良して、現像器中に現像剤を画像形成ごとに一定量比で抜き取る機構を取り付けた。また磁性キャリアを、質量比で15%含む供給トナーを作製し、且つ磁性キャリア混合トナーを供給できるように、トナー供給系を改造した。これらの条件で、実施例1と同じ評価を行った。用いたトナーの物性を表3に、評価結果を表4にそれぞれ示す。
【0226】
【表3】
【0227】
【表4】
【0228】
【発明の効果】
本発明によれば、加熱加圧定着手段に多量のオイルを使用することなく、又はオイルを全く使用することなく定着することができ、これにより加熱加圧定着手段の構成を簡略化することができる。
【0229】
また、本発明によれば、OHPシート上に形成された画像の透明性が良好で且つ二次色の混色性が良好な、色再現範囲が広い画像形成方法を提供することができる。
【0230】
また、本発明によれば、低温定着性に優れ且つ耐高温オフセット性に優れた画像形成方法を提供することができる。
【0231】
また、本発明によれば、高温環境放置時においてもトナーのブロッキングが発生しにくい画像形成方法を提供することができる。
【0232】
また、本発明によれば、現像系構成を簡略化することができる画像形成方法を提供することができる。
【0233】
更に、本発明によれば、離型剤としてワックスを添加した場合においても、現像性が良好であり、且つ現像安定性に優れる画像形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像形成方法を好適に実施できる電子写真方式のフルカラー機の一例の概略構成図
【図2】図1の現像装置9の構成を示す部分的拡大図
【図3】図1の定着装置25の構成を示す部分的拡大図
【図4】二成分現像剤の摩擦帯電量を測定する装置の斜視図
【符号の説明】
2 ブレード
3 現像スリーブ
4、4A、4B、4C、4D 感光ドラム
8 現像容器
9、9A、9B、9C、9D 現像装置
15 バイアス電源
21、21A、21B、21C、21D 一次帯電器
22、22A、22B、22C、22D 発光素子
23、23A、23B、23C、23D 転写帯電器
24 転写紙
25 定着装置
26、26A、26B、26C、26D クリーニング装置
27 転写紙搬送シート
Claims (1)
- 磁性キャリア及びカラートナーを含有する二成分系現像剤を担持する現像剤担持体に直流バイアスを印加して、前記現像剤担持体に対して所定の間隙をもって配置された静電潜像担持体上に形成された静電潜像を前記カラートナーによって現像してトナー像を形成する画像形成方法であって、
(A)前記現像剤担持体上に担持される二成分系現像剤中のカラートナー量が、1.0〜3.5mg/cm2であり、
(B)前記現像剤担持体と前記静電潜像担持体の間隙が250〜600μmであり、
(C)前記現像剤担持体上におけるカラートナーの帯電量分布が、温度23℃、相対湿度60%の環境下において、絶対値で5〜25μC/gにピークを有し、且つ該環境下における逆極性帯電のトナーの存在量が10体積%以下であり、
(D)前記カラートナーは結着樹脂、着色剤、芳香族オキシカルボン酸化合物及びワックスを少なくとも含有し、
(1)前記結着樹脂は(a)ポリエステル樹脂、(b)ポリエステルユニットとビニル系共重合体ユニットとを有するハイブリッド樹脂成分、又は(c)(a)と(b)の混合物を含有し、
(2)前記カラートナーの示差熱分析(DSC)測定における吸熱曲線において、温度30〜200℃の範囲における最大吸熱ピークのピーク温度が60〜110℃であり、
(3)前記カラートナーの粘弾性特性において、温度80℃における貯蔵弾性率(G’80)が1×106〜1×1010[dN/m2]の範囲にあり、温度120〜180℃における貯蔵弾性率(G’120−180)が1×103〜1×106[dN/m2]であり、
(4)前記芳香族オキシカルボン酸化合物は芳香族オキシカルボン酸又は該芳香族オキシカルボン酸の金属化合物を少なくとも有し、該芳香族オキシカルボン酸化合物のカラートナー表面における存在量が0.05〜8g/kgである
ことを特徴とする画像形成方法。
Priority Applications (1)
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JP2003171646A JP2005010246A (ja) | 2003-06-17 | 2003-06-17 | 画像形成方法 |
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Cited By (2)
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JP2009222997A (ja) * | 2008-03-17 | 2009-10-01 | Ricoh Co Ltd | 静電荷像現像用トナー |
US8409777B2 (en) | 2006-07-11 | 2013-04-02 | Sharp Kabushiki Kaisha | Toner and method of manufacturing the same |
-
2003
- 2003-06-17 JP JP2003171646A patent/JP2005010246A/ja not_active Withdrawn
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2009222997A (ja) * | 2008-03-17 | 2009-10-01 | Ricoh Co Ltd | 静電荷像現像用トナー |
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