JP3880349B2 - ブラックトナー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は静電荷像現像用のブラックトナーまたはトナージェット方式のブラックトナーに関する。より詳しくは、高温オフセットを防止するためのオイルを使用しないか、又はオイルの使用量を少なくした加熱加圧定着手段を用いた場合でも充分に定着可能なブラックトナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、提案されているフルカラー複写機では、4つの感光体とベルト状転写体を用い、各感光体上にそれぞれ形成された静電荷像をシアントナー、マゼンタトナー、イエロートナー及びブラックトナーを用い現像後、感光体とベルト転写体間に転写材を搬送しストレートパス間で転写後、フルカラー画像を形成させる方法や、感光体に対向させた転写体表面に静電気力やグリッパー等の機械的作用により転写材を巻き付け、現像−転写工程を4回実施することでフルカラー画像を得る方法が一般的に利用されている。
【0003】
これらフルカラー用複写機に登載されるトナーとしては、色再現性の向上やオーバーヘッドプロジェクター(OHP)画像の透明性を損なうことなく加熱加圧定着工程で各トナーが十分混色することが必要である。一般の白黒複写機用黒トナーと較べフルカラー画像形成用トナーは、シャープメルト性を有する低分子量結着樹脂が好ましい。しかしながら、通常、シャープメルト性結着樹脂を用いると加熱加圧定着工程でトナーが溶融した際、結着樹脂の自己凝集力が低いため耐高温オフセット性に問題を生じ易い。そのため、例えば特公昭52−3304号公報、特公昭52−3305号公報、特開昭57−52574号公報に提案されている様に、一般の白黒複写機用黒トナーでは、定着時の耐高温オフセット性を向上させるためポリエチレンワックスやポリプロピレンワックスに代表される比較的高結晶性のワックスが離型剤として用いられている。
【0004】
さらに、耐オフセット性を向上させるために特定の貯蔵弾性率を有するトナーについても提案されている。
【0005】
例えば、特開平11−84716号公報や特開平8−54750号公報では、180℃または170℃において特定の貯蔵弾性率を有するトナーが提案されている。しかし、低温定着と耐高温オフセットの両立、十分な混色特性等々が必要とされるフルカラー画像形成用のトナーとしては、トナーの粘度が低すぎるうえ、高温高湿環境下での保存性について、満足できるものではない。
【0006】
さらに、特開平5−249735号公報、特開平7−92737号公報、特開平7−234542号公報、特開平7−295298号公報、特開平8−234480号公報、特開平8−278662号公報、特開平10−171156号公報においても特定の貯蔵弾性率を有するトナーが提案されている。しかしながら、フルカラー画像形成用のトナーとしての理想的な定着特性を確保し、また長期の耐久においても安定して定着させるためには改良の余地がまだまだある。
【0007】
このため通常のフルカラー画像形成用トナーでは、加熱定着ローラへシリコーンオイルやフッ素オイル等のオイルを塗布させ耐高温オフセット性の向上を図っている。しかしながら、このようにして得られた定着画像は、その表面に余分のオイルが付着しており、オイルによる塗布ムラやぎらつき等、オイル塗布に特徴的な画像欠陥を有している。一方で両面定着時には、すでに定着した一面目の画像表面のオイルが感光体に付着して新たな画像欠陥の要因となったりもしている。さらにオイルが定着ローラを膨潤し、定着ローラの寿命を短かくするケースも指摘されている。また該手法では、定着画像上へのオイルスジを発生させないようにするため、オイルを均一に且つ定量的に定着ローラ表面上に供給する必要性があり、定着装置が大型化する傾向にある。
【0008】
そのためオイルを使用しないか、又はオイルの使用量を少なくした加熱加圧定着手段において、オフセットの発生を抑制するトナーにかかる期待は大きく、低温定着性に優れたトナーと合わせて強く待望されている。
【0009】
一方で、着色剤としてカーボンブラックを用いる場合、通常の有機顔料を着色剤として用いる色トナーと比較して多くの問題が発生しやすい傾向にある。例えば、一般にカーボンブラックは一次粒径が小さく比表面積が大きいため、トナー中での均一分散が難しく、遊離のカーボンブラックも生じやすい。そのため十分な帯電が出来ずにトナー飛散、カブリといった問題を引き起こしやすい。加えて、遊離したカーボンブラックによって、スリーブ汚染やキャリアスペント、ドラムフィルミングといった問題も生じやすく、長期の耐久安定化は難しいとされている。さらにカーボンブラックは一般に導電性であるために、トナーの帯電性が阻害され、均一な帯電が出来ずにハーフトーン画像部での均一性が低下したり、転写時の均一転写性が悪化するという問題が生じている。
【0010】
これらの問題点を解決するためには、例えば特開昭56−116044号公報のように表面をグラフト化したカーボンブラックを使用する方法、特開昭63−210849号公報のようにアルミニウムカップリング剤で表面処理したカーボンブラックを使用する方法等が提案されているが、これらの方法はカーボンブラックを表面処理するための工程が煩雑で手間がかかり、製造コストのアップが必須であり工業的には採用は難しい状況にある。
【0011】
また、カーボンブラックの分散性向上に関しては、特開昭64−35457号公報及び特開平1−145664号公報で、特定の分散剤を使用して分散性を向上させる方法が提案されているが、これでも充分に解決されたとは言いがたい状況である。
【0012】
特開平10−186713号公報で、吸油量が比較的高いカーボンブラックと特定の構造を有するアゾ鉄化合物とからなるブラックトナーの提案がある。これは高着色力で帯電性が安定なトナーではあるが、高湿環境下でのベタ均一性及び耐久性には若干の課題を残すものである。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述の問題点を解決したブラックトナーを提供するものである。
【0014】
すなわち、本発明の目的は、オイルを使用しないか又はオイルの使用量を少なくした加熱加圧定着手段を用いても、オフセットの発生が抑制されるブラックトナーを提供するものである。
【0015】
本発明の目的は、低温定着性に優れたブラックトナーを提供するものである。
【0016】
本発明の目的は、保存安定性、耐熱性、耐ブロッキング性に優れたブラックトナーを提供するものである。
【0017】
本発明の目的は、低濃度から高濃度までの広いダイナミックレンジをカバーする高着色力を有しているブラックトナーを提供するものである。
【0018】
本発明の目的は、充分な摩擦帯電性を有し、現像器内、すなわち、スリーブ、ブレード、塗布ローラなどの部品へのトナー融着がなく、さらにクリーニング性が良好であり、感光体へのフィルミングをしないブラックトナーを提供するものである。
【0019】
本発明の目的は、カブリがなく、ハイライト再現性に優れ、ベタ均一性に優れ、耐久安定性に優れたブラックトナーを提供するものである。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明は、少なくとも結着樹脂、ワックス及びカーボンブラックを含有する溶融混練粉砕によって得られたブラックトナーであって、前記結着樹脂は、(b)ポリエステルユニットとビニル系共重合体ユニットを有しているハイブリッド樹脂、(c)ハイブリッド樹脂とビニル系共重合体との混合物、(d)ポリエステル樹脂とビニル系共重合体との混合物、(e)ハイブリッド樹脂とポリエステル樹脂との混合物からなる群から選択される樹脂であり、前記結着樹脂はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布において、ピーク分子量(Mp)が4,000〜30,000の領域にあり、Mw/Mnが5.0以上である樹脂であり、前記ブラックトナーの損失弾性率G"のピークが50〜70℃の温度範囲内に存在し、貯蔵弾性率G'が1×106(dN/m2)を示すときの温度をT1、貯蔵弾性率G'が1×105(dN/m2)を示すときの温度をT2としたとき、T1は85〜105℃の温度範囲内にあり、かつΔT=T2−T1≧20℃であって、前記ブラックトナーは、カーボンブラックを結着樹脂100質量部当たり0.5〜10質量部含有し、前記ブラックトナーの断面TEM観察によって測長されるカーボンブラックの平均一次粒径が14〜60nmであることを特徴とするブラックトナーに関する。
【0021】
本発明者らは鋭意検討の結果、オイルを使用しないか、又はオイルの使用量を少なくした加熱加圧定着手段を用いた場合も耐高温オフセット性に優れ、かつ高温環境下における長期保存安定性と低温定着性の両立を達成するためには、トナーが上記の要件を満足していることが有効であることを見出した。
【0022】
加えてトナーが上記の要件を満足しているとき、カーボンブラックの分散性も向上し、帯電的にも安定化し、優れた画像品質と耐久性を提供できることを見出したものである。加えて、トナーが特定の芳香族カルボン酸誘導体の金属化合物を含有しているとき、カーボンブラックの分散性はさらに向上し、優れた帯電安定化が達成できることを見出したものである。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のブラックトナーに関して詳細に説明する。
【0024】
本発明のブラックトナーは、トナーの損失弾性率G"のピークが50〜70℃の温度範囲内に存在することが必須である。損失弾性率G"のピークは、トナーの高温環境下における保存性、耐熱性、耐ブロッキング性を良好に保つための重要なファクターであり、ピーク温度が低すぎる場合は保存安定性が低下し、逆にピーク温度が高すぎると低温定着性が著しく悪化しトナーの混色性も大きく低下してしまう傾向がある。よって本発明においては、トナーの損失弾性率G"のピークが50〜70℃の温度範囲内に存在することが必須であり、好ましくは52〜68℃の温度範囲内に存在することが望ましい。
【0025】
さらに、本発明のブラックトナーでは、貯蔵弾性率G'が1×106(dN/m2)を示すときの温度をT1、貯蔵弾性率G'が1×105(dN/m2)を示すときの温度をT2とした時、T1は85〜105℃の温度範囲内にあり、かつΔT=T2−T1で定義させるΔTが、ΔT≧20℃であるとき、優れた耐オフセット性を発揮する。
【0026】
本発明者等は、低温定着性を損なうことなくオフセット性を改良するためには、貯蔵弾性率G'が1×106(dN/m2)を示すときの温度と、それをベースとして貯蔵弾性率G'が一桁低下する、すなわち1×105(dN/m2)を示すときの温度領域での貯蔵弾性率G'の挙動が、実機でのトナー定着性と見事に合致し、この間の温度領域を広く保つ様に工夫することによって耐オフセット性の向上が図れることを見出したものである。
【0027】
すわなち、貯蔵弾性率G'が1×106(dN/m2)を示すときの温度をT1としたとき、T1は85〜105℃の温度範囲内にあることが必須である。T1が85℃以下では高温環境下における保存性、耐熱性、耐ブロッキング性が低下する傾向があるため好ましくない。さらにT1が85℃以下では、トナー粒子同士が合一しやすく大きなトナーの凝集体を形成しやすくなるため好ましくない。近年、複写機、プリンターの出力スピードの高速化や本体の小型化が進んでいるため、マシン機内の温度が高くなる傾向にあり、高精細・高画質の画像を安定して得るためには、トナーが高温環境下における十分な保存性、耐熱性、耐ブロッキング性を有することは重要である。さらにT1が85℃以下では、高温高湿環境下でのトナーの流動性が低下するため、高精細な画像は望めなくなる。
【0028】
一方で、T1が105℃を超えるときは、保存性、耐熱性、耐ブロッキング性は十分であるものの、低い温度での十分な定着性が得られにくいため好ましくない。またフルカラー画像形成時におけるグロスの絶対値が低下してしまい、色トナーと合わせてフルカラー画像を形成する際に違和感のある画像となりやすい。よって本発明においてはT1が85〜105℃であることが望ましく、好ましくは87〜103℃であることが望ましい。
【0029】
さらに本発明においては、貯蔵弾性率G'が1×105(dN/m2)を示すときの温度をT2とした時、ΔT=T2−T1で定義させるΔTがΔT≧20℃であると、優れた耐オフセット性を発揮する。ΔTは、加熱加圧定着工程でトナーが溶融した際のトナー自己凝集力の尺度となり得る数値であり、この値が20℃より小さいと耐高温オフセット性に問題を生じ易い。すなわち、定着工程時にトナーが熱もしくは圧力を受けて溶融する際の自己凝集性の温度勾配が緩やかであることが本発明においては必須の要件である。
【0030】
よって、十分な定着性と耐高温オフセット性とを両立させ、さらには均一なグロスを有する画像を得るために、ΔT≧20℃であることが望ましく、好ましくはT≧25℃であることが望ましい。
【0031】
さらに、ΔT≧20℃であるとき、カーボンブラックの分散性は著しく向上する。その理由は定かではないが、カーボンブラック表面と樹脂の濡れ性、なじみ易さを考えたとき、樹脂は柔ら過ぎても特に問題はないものの、混練工程中に樹脂の自己発熱によって樹脂の粘度が大きく低下するようであっては、混練時に大きなシェアーをかけることは出来ずにカーボンブラックの分散性が不十分となりやすい。損失弾性率、T1、ΔTを上記範囲とするためには、用いる結着樹脂を適宜選択することにより調整できる。
【0032】
本発明のトナーに用いられる結着樹脂は、(a)ポリエステル樹脂、(b)ポリエステルユニットとビニル系共重合体ユニットを有しているハイブリッド樹脂、(c)ハイブリッド樹脂とビニル系共重合体との混合物、(d)ポリエステル樹脂とビニル系共重合体との混合物、(e)ハイブリッド樹脂とポリエステル樹脂との混合物からなる群から選択される樹脂が好ましい。また、結着樹脂成分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布は、ピーク分子量(Mp)が4,000〜30,000の領域に有することが好ましく、さらにはピーク分子量(Mp)が4,500〜25,000の領域に有することがより好ましく、Mw/Mnが5.0以上であることが好ましい。
【0033】
ピーク分子量(Mp)が4,000未満の領域にある場合には、トナーの耐ホットオフセット性が不十分である。一方、ピーク分子量(Mp)が30,000超の領域にある場合には、十分なトナーの低温定着性が得られにくくなくなり、高速定着への適用が難しくなる。また、Mw/Mnが5.0未満である場合には良好な耐オフセット性を得ることが難しくなる。
【0034】
結着樹脂として(a)ポリエステル樹脂を用いる場合は、アルコール成分と、カルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸エステル等の酸成分とが原料モノマーとして使用できる。
【0035】
アルコール成分としては、2価以上のアルコールであれば特に限定はないが、2価アルコール成分としては、例えば2価アルコール成分としては、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
【0036】
3価以上のアルコール成分としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
【0037】
酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸類又はその無水物;こはく酸、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸等のアルキルジカルボン酸類又はその無水物;炭素数6〜12のアルキル基で置換されたこはく酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸及びシトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸類又はその無水物;等が挙げられる。
【0038】
それらの中でも、特に、下記一般式(1)で代表されるビスフェノール誘導体をジオール成分とし、2価以上のカルボン酸又はその酸無水物、又はその低級アルキルエステルとからなるカルボン酸成分(例えば、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等)を酸成分として、これらを縮重合したポリエステル樹脂が、フルカラー画像形成用ブラックトナーとして、良好な帯電特性を有するので好ましい。
【0039】
【化1】
(式中、Rはエチレン又はプロピレン基を示し、x、yはそれぞれい以上の整数であり、かつx+yの平均値は2〜10である。)
結着樹脂として、(b)ポリエステルユニットとビニル系共重合体ユニットを有しているハイブリッド樹脂を用いる場合、さらに良好なワックス分散性と、低温定着性、耐オフセット性の向上が期待できる。
【0040】
本発明に用いられる「ハイブリッド樹脂」とは、ビニル系共重合体ユニットとポリエステルユニットが化学的に結合された樹脂を意味する。「ポリエステルユニット」とは、ポリエステル樹脂に由来する部分のことであり、「ビニル系共重合体ユニット」とは、ビニル系共重合体に由来する部分のことである。
【0041】
具体的には、ポリエステルユニットと(メタ)アクリル酸エステル等のカルボン酸エステル基を有するモノマーを重合したビニル系共重合体ユニットとがエステル交換反応によって形成されるものであり、好ましくはビニル系共重合体を幹重合体、ポリエステルを枝重合体としたグラフト共重合体(あるいはブロック共重合体)を形成するものである。
【0042】
本発明では、ビニル系共重合体及び/又はポリエステル樹脂が、両樹脂成分と反応し得るモノマーを含みハイブリッド樹脂とした結着樹脂を用いることが好ましい。ポリエステル樹脂を構成するモノマーのうちビニル系共重合体と反応し得るものとしては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はその無水物などが挙げられる。ビニル系共重合体を構成するモノマーのうちポリエステル樹脂と反応し得るものとしては、下記ビニル系共重合体に用いられるモノマーのうちカルボキシル基又はヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸もしくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
【0043】
ビニル系共重合体を生成するためのビニル系モノマーとしては、次のようなものが挙げられる。スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、m−ニトロスチレン、o−ニトロスチレン、p−ニトロスチレン等のスチレン及びその誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のスチレン不飽和モノオレフィン類;ブタジエン、イソプレン等の不飽和ポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニルデン、臭化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等のビニルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体等が挙げられる。
【0044】
さらに、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸等の不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物等の不飽和二塩基酸無水物;マレイン酸メチルハーフエステル、マレイン酸エチルハーフエステル、マレイン酸ブチルハーフエステル、シトラコン酸メチルハーフエステル、シトラコン酸エチルハーフエステル、シトラコン酸ブチルハーフエステル、イタコン酸メチルハーフエステル、アルケニルコハク酸メチルハーフエステル、フマル酸メチルハーフエステル、メサコン酸メチルハーフエステル等の不飽和二塩基酸のハーフエステル;ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸等の不飽和二塩基酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸等のα,β−不飽和酸;クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物等のα,β−不飽和酸無水物、該α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物;アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステル等のカルボキシル基を有するビニル系モノマー等が挙げられる。
【0045】
2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのアクリル酸またはメタクリル酸エステル類;4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルヘキシル)スチレン等のヒドロキシ基を有するモノマーもビニル系モノマーとして挙げられる。
【0046】
本発明のブラックトナーにおいて、結着樹脂のビニル系共重合体及びビニル系共重合体ユニットは、ビニル基を2個以上有する架橋剤で架橋された架橋構造を有していてもよい。この場合に用いられる架橋剤は、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート等のアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類;及びこれら化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート等のエーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類;及びこれら化合物のアクリレートをメタアクリレートに代えたもの;ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート等の芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類;及びこれら化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;等が挙げられる。
【0047】
また、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及びこれら化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート等の多官能の架橋剤を用いることもできる。
【0048】
本発明のビニル系共重合体を製造する場合に用いられる重合開始剤としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート、1,1'−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(カーバモイルアゾ)−イソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチル−プロパン)、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−クミルパーオキサイド、α,α'−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トリオイルパーオキサイド、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジ−メトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエイト、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエイト、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエイト、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート等が挙げられる。
【0049】
本発明のブラックトナーに用いられるハイブリッド樹脂を調製する製造方法としては、例えば、以下の(1)〜(5)に示す製造方法を挙げることができる。
【0050】
(1)ビニル系共重合体製造後に、これの存在下にポリエステル樹脂及びハイブリッド樹脂を製造する。ハイブリッド樹脂はビニル系共重合体(必要に応じてビニル系モノマーも添加できる)とポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸)及び/又はポリエステル樹脂との反応により製造される。この場合、適宜、有機溶剤を使用することができる。
【0051】
(2)ポリエステル樹脂製造後に、これの存在下にビニル系共重合体及びハイブリッド樹脂を製造する。ハイブリッド樹脂はポリエステル樹脂(必要に応じてポリエステルモノマーも添加できる)とビニル系モノマー及び/又はビニル系共重合体との反応により製造される。
【0052】
(3)ビニル系共重合体及びポリエステル樹脂製造後に、これらの重合体存在下にビニル系モノマー及び/又はポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸)を添加することによりハイブリッド樹脂を製造する。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。
【0053】
(4)ハイブリッド樹脂を製造後、ビニル系モノマー及び/又はポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸)を添加して付加重合及び/又は縮重合反応を行うことにより、ビニル系共重合体及びポリエステル樹脂を製造する。この場合、ハイブリッド樹脂は上記(2)〜(4)の製造方法により製造されるものを使用することもでき、必要に応じて公知の製造方法により製造されたものを使用することもできる。さらに、適宜、有機溶剤を使用することができる。
【0054】
(5)ビニル系モノマー及びポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸等)を混合して付加重合及び縮重合反応を連続して行うことによりビニル系共重合体、ポリエステル樹脂及びハイブリッド樹脂を製造する。さらに、適宜、有機溶剤を使用することができる。
【0055】
上記(1)〜(5)の製造方法において、ビニル系共重合体及び/またはポリエステル樹脂は複数の異なる分子量、架橋度を有する重合体を使用することができる。
【0056】
なお、本発明のブラックトナーに含有される結着樹脂は、上記ハイブリッド樹脂とビニル系共重合体との混合物(c)、上記ポリエステル樹脂とビニル系共重合体との混合物(d)、上記ポリエステル樹脂と上記ハイブリッド樹脂の混合物(e)、さらに上記ポリエステル樹脂とビニル系共重合体と上記ハイブリッド樹脂との混合物を使用しても良い。
【0057】
本発明のブラックトナーに含有される結着樹脂のガラス転移温度は、50〜70℃が好ましく、より好ましくは52〜68℃である。
結着樹脂のガラス転移温度が50℃未満の場合は、定着性には優れるものの耐オフセット性が低下し、定着ローラへの汚染や定着ローラへの巻きつきが発生しやすいため好ましくない。さらに定着後の画像のグロスが高くなりすぎて画像品位が低下し、トナーの耐保存安定性が低下する傾向がある。逆に結着樹脂のガラス転移温度が70℃よりも高い場合には、定着性が悪化し複写機本体の設定定着温度を上げざるを得ず、得られた画像は一般にグロスが低く、フルカラー用としては混色性が低下する傾向がある。
【0058】
次に本発明に用いられるワックスについて説明する。
本発明のブラックトナーは、一種または二種以上のワックスを含有しているのが望ましい。
【0059】
本発明のブラックトナーは、低温定着性と耐ブロッキング性を両立するという観点から、示差走査熱量測定(DSC)における吸熱曲線において、温度30〜200℃の範囲に1個又は複数の吸熱ピークを有し、該吸熱ピーク中の最大吸熱ピークのピーク温度が60〜110℃の範囲にあることが望ましい。より好ましくは65〜100℃の範囲に吸熱曲線の最大ピークがあることが望ましい。
【0060】
最大吸熱ピークのピーク温度が60℃未満である場合はトナーの耐ブロッキング性が悪くなり、逆に最大吸熱ピークのピーク温度が110℃超の場合は定着性が低下してしまう傾向がある。本発明のブラックトナーが、上記範囲の吸熱ピークを有するには以下に示すワックスを用いればよい。本発明に用いられるワックスとしては、次のものが挙げられる。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックス、また酸化ポリエチレンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、またはそれらのブロック共重合物;カルナバワックス、サゾールワックス、モンタン酸エステルワックスなどの脂肪酸エステルを主成分とするワックス類、及び脱酸カルナバワックスなどの脂肪酸エステル類を一部または全部を脱酸化したものなどが挙げられる。さらに、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸などの飽和直鎖脂肪酸類;ブランジン酸、エレオステアリン酸、パリナリン酸などの不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールなどの飽和アルコール類;ソルビトールなどの多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N'−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N'−ジオレイルセバシン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N'−ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加などによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物などが挙げられる。
【0061】
本発明において特に好ましく用いられるワックスとしては、脂肪族炭化水素系ワックスが挙げられる。例えば、アルキレンを高圧下でラジカル重合あるいは低圧下でチーグラー触媒で重合した低分子量のアルキレンポリマー;高分子量のアルキレンポリマーを熱分解して得られるアルキレンポリマー;一酸化炭素及び水素を含む合成ガスからアーゲ法により得られる炭化水素の蒸留残分から、あるいはこれらを水素添加して得られる合成炭化水素ワックスがよい。さらにプレス発汗法、溶剤法、真空蒸留の利用や分別結晶方式により炭化水素ワックスの分別を行ったものが、より好ましく用いられる。母体としての炭化水素は、金属酸化物系触媒(多くは2種以上の多元系)を使用した一酸化炭素と水素の反応によって合成されるもの(例えばジントール法、ヒドロコール法(流動触媒床を使用)によって合成された炭化水素化合物)ワックス状炭化水素が多く得られるアーゲ法(同定触媒床を使用)により得られる炭素数が数百ぐらいまでの炭化水素;エチレンなどのアルキレンをチーグラー触媒により重合した炭化水素が、分岐が少なくて飽和の長い直鎖状炭化水素であるので好ましい。
ワックスは結着樹脂100質量部あたり0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜10質量部使用するのが良い。
【0062】
ワックスは、通常、結着樹脂を溶剤に溶解し樹脂溶液温度を上げ、撹拌しながら添加混合する方法や、混練時に混合する方法で結着樹脂に含有される。その添加方法は特に限定するものではない。
【0063】
次に本発明に用いられるカーボンブラックについて説明する。
【0064】
本発明に用いられるカーボンブラックは、ファーネスブラック製法、ガスブラック製法、サーマルブラック製法、アセチレンブラック製法、ランプブラック製法等々の製法により得られたカーボンブラックであって、特にその製法を限定するものではない。
【0065】
本発明のカーボンブラックは、トナーの断面TEM観察によって測長される平均一次粒径が14〜60nm、好ましくは17〜55nm、より好ましくは20〜50nmであることが望ましい。
【0066】
平均一次粒径が14nmより小さいと、後述するが、本発明のブラックトナーに好ましく用いられる芳香族カルボン酸誘導体の金属化合物によっても、カーボンブラックの均一な分散が困難となり、その結果トナーの帯電量の絶対値が低めになりトナー飛散やかぶりの原因となりやすい。さらに平均一次粒径14nmよりも小さいと、トナーは赤味を呈しフルカラー画像形成用のブラックトナーとしては不適となる。
【0067】
逆に、カーボンブラックの平均一次粒径が60nmより大きい場合には、良好に分散しても着色力が低くなりすぎて好ましくない。平均一次粒径の大きなカーボンブラックを、着色力を上げる目的で多量にブラックトナーに添加すると帯電の均一性が低下し、低温低湿環境下での耐久においてかぶりの原因となり易い。
【0068】
トナーの断面TEM観察によって測長されるカーボンブラックの平均一次粒径は、具体的には以下のように測定したものである。4万倍に拡大したトナーの断面写真より、凝集体を形成していないカーボンブラックについて無作為に抽出し解析を行い、サンプリング数が300回を超えるまで測定を繰り返して平均粒径を求める。本発明においては画像処理装置を用いて球形近似し、得られる直径より定義される値をカーボンブラックの平均一次粒径とする。TEM写真より直接カーボンブラックの平均一次粒径を測定する際には、カーボンブラックの長径を粒径とし、同じくサンプリング数が300回を超えるまで測定を繰り返して平均粒径を求める。
カーボンブラックは、トナー中の平均一次粒径が上記範囲を満たすものを適宜選択して用いる。
【0069】
本発明のカーボンブラックは、pHが6.5以上、好ましくは7.0以上、より好ましくは7.5〜10.5であることが好ましい。pHが6.5より小さい場合、カルボキシル基、ケトン等の官能基が増加し、ポリエステルの会合が強くなり、定着性を阻害しやすくなる。逆に、極端にpHが高すぎるとカーボンブラックと結着樹脂との相溶性が低下しカーボンブラックはトナーから脱離しやすくなる。
本発明のカーボンブラックは、揮発分が1.5%以下、好ましくは1.2%以下であることが好ましい。揮発分が1.5%より大きいカーボンブラックでは、カーボンブラック表面の官能基が多いことを意味し、この種のカーボンブラックを使用すると、高湿下での帯電量の低下を引き起こしやすくなり、加えてベタ均一性が悪化しやすくなる。
【0070】
本発明のカーボンブラックは、DBP吸油量が20〜150ml/100gであることが好ましく、より好ましくは30〜140ml/100gが望ましい。吸油量が150ml/100gを超えるとトナーの抵抗は低下傾向を示し、高温高湿環境下での耐久評価において帯電量が低下傾向を示し、トナー飛散やカブリといった問題が起こりやすい。さらに低温低湿環境下での均一転写性が低下し、画像はボソっぽくなりやすい。一方、吸油量が20ml/100g未満の場合には、トナー粒子中のカーボンブラックの分散性が充分ではなく、着色力の低下を引き起こしやすい。
【0071】
本発明に用いられるカーボンブラックは、窒素吸着による比表面積が30〜200m2/g、好ましくは40〜150m2/g、より好ましくは45〜120m2/gであることが望ましい。比表面積が200m2/gより大きいときは、均一な分散が困難であり、その結果トナーの帯電量の絶対値が低めになりトナー飛散やかぶりの原因となりやすい。加えてトナーは赤味を呈し、フルカラー画像形成用のブラックとしては不適となる。逆に比表面積が30m2/gより小さいときは、良好に分散しても着色力が低くなりすぎて好ましくない。
【0072】
本発明に用いられるカーボンブラックは、トルエン抽出量が0.1%以下、好ましくは0.05%以下であることが良い。
カーボンブラックのpH、揮発分、DBP吸油量、トルエン抽出量の測定方法は、それぞれ、DIN ISO 787/9、DIN 53552、DIN 53601、DIN 53553に従って行う。
また、カーボンブラックの比表面積は、窒素吸着を利用したBET法によって測定する。
【0073】
本発明のブラックトナーにおいて、カーボンブラックは結着樹脂100質量部当たり0.5〜10質量部含有することが好ましい。より好ましくは1.0〜8.0質量部、さらに好ましくは1.5〜7.0質量部が良い。ブラックトナー中のカーボンブラックの含有量が0.5質量部よりも少ないときは、ブラックトナーの着色力は低くなりすぎて高画像濃度の画像は得られにくい。一方、ブラックトナーがカーボンブラックを10質量部以上含有する場合には、ブラックトナーの帯電制御が難しくなり、長期の帯電安定化を得にくい。
【0074】
本発明のブラックトナーは、芳香族カルボン酸誘導体の金属化合物を含有していることが好ましい。芳香族カルボン酸誘導体の金属化合物は、帯電制御剤として機能するばかりでなく、カーボンブラックの分散性向上にも寄与する。
【0075】
芳香族カルボン酸誘導体の金属化合物がカーボンブラックの分散性を向上させる理由は定かではないが、結着樹脂と芳香族カルボン酸誘導体の金属化合物との相互作用によって、一部架橋反応が進み、混練時のカーボンブラックにシェアーを増大させることによって、難分散性のカーボンブラックの分散性が上がったものと考えられる。さらに芳香族カルボン酸誘導体の金属化合物がカーボンブラックの周りを取り囲み、カーボンブラックの分散安定化剤のごとく機能するため、混練時に微分散したカーボンブラックの安定化に効果を発揮し、再凝集抑制剤としても機能していると考えられる。
【0076】
芳香族カルボン酸としては、下記一般式(2)〜(4)で表される3種の化合物が挙げられる。
【0077】
【化2】
(式中、R1〜R7は同一又は異なる基を示し、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、−OH,−NH2,−NH(CH3),−N(CH3)2,−OCH3,−O(C2H5),−COOH又は−CONH2を示す。)
好ましいR1としては、ヒドロキシル基、アミノ基及びメトキシ基が挙げられるが、中でもヒドロキシル基が好ましい。芳香族カルボン酸としては、特にジ−tert−ブチルサリチル酸等のジアルキルサリチル酸が好ましい。
【0078】
芳香族カルボン酸誘導体の金属化合物を形成する金属としては、Mg2+,Ca2+,Sr2+,Pb2+,Fe2+,Co2+,Ni2+,Zn2+,Cu2+,Al3+,Cr3+,Fe3+,Zr4+があげられる。本発明においては、芳香族カルボン酸誘導体の金属化合物として、ジ−tert−ブチルサリチル酸のアルミニウム化合物が好ましい。
【0079】
芳香族カルボン酸誘導体の金属化合物は、例えば、芳香族カルボン酸誘導体を水酸化ナトリウム水溶液に溶解させ、2価以上の金属原子を溶融している水溶液を水酸化ナトリウム水溶液に滴下し、加熱撹拌し、次に水溶液のpHを調整し、室温まで冷却した後、ろ過水洗することにより芳香族カルボン酸誘導体の金属化合物を合成し得る。ただし、上記の合成方法だけに限定されるものではない。
【0080】
芳香族カルボン酸誘導体の金属化合物は、結着樹脂100質量部当り0.5〜10質量部、好ましくは1〜9質量部、より好ましくは1.5〜8質量部使用するのが、ブラックトナーの粘弾性特性及び摩擦帯電特性を調整する点で好ましい。0.5質量部より少ないときは、帯電制御剤としてあまり機能しないばかりでなく、良好な顔料分散性が達成できない。一方、10質量部よりも多いときは、架橋が進みすぎてしまい、トナーとしての定着性が損なわれてしまう。
【0081】
本発明のブラックトナーは、その帯電性をさらに安定化させる為に必要に応じて上記芳香族カルボン酸誘導体の金属化合物以外の化合物を帯電制御剤として用いても良い。
【0082】
本発明のブラックトナーは、以下のようにして製造できる。上述の結着樹脂及び着色剤としてのカーボンブラック、ワックス、さらに必要に応じて帯電制御剤、その他の添加剤等をヘンシェルミキサーの如き混合機により充分混合してから加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーの如き熱混練機を用いて溶融・捏和及び練肉して樹脂類を互いに相溶させ、冷却固化後、粉砕及び厳密な分級を行ってブラックトナー粒子を得る。そして必要により外添剤を混合して、ブラックトナーを得ることができる。
【0083】
本発明においては、ブラックトナー粒子中のカーボンブラックの分散状態を向上させるために、第1の結着樹脂とカーボンブラックとを、混練機または混合機に仕込み、非加圧もしくは加圧下で混合しながら加熱して第1の結着樹脂を溶融させ、その後3本ロールの如き混練機で充分に混練させた第1の混練物を得る。次いで第1の混練物に第2の結着樹脂、さらに必要に応じて帯電制御剤等の添加物やワックス等を加えた混合物を、加熱溶融混練して第2の混練物を得、得られた第2の混練物を冷却後粉砕及び分級してトナー粒子を得ることが好ましい。ここで、第1の結着樹脂と第2の結着樹脂は、同じであっても異なる樹脂であっても構わない。
【0084】
混練機としては、加熱ニーダー、一軸押し出し機、二軸押し出し機などが挙げられ、特に好ましくは加熱ニーダーが挙げられる。
【0085】
本発明のブラックトナーは、重量平均粒径が4〜10μmであるのが好ましい。また、本発明のブラックトナーは、個数平均粒径が3.5〜9.5μmであり、ブラックトナーの個数分布における粒径4μm以下の粒子が5〜50個数%であり、ブラックトナーの体積分布における粒径12.70μm以上の粒子が7体積%以下であることが好ましい。
【0086】
ブラックトナーの重量平均粒径が10μmより大きい場合は、高画質化に寄与し得る微粒子が少ないことを意味し、高い画像濃度が得られ易く、トナーの流動性に優れるというメリットがあるものの、感光ドラム上の微細な静電荷像上には忠実に付着しづらく、ハイライト部の再現性が低下し、さらに解像性も低下する傾向がある。また、必要以上のトナーの静電荷像への乗りすぎが起こり、トナー消費量の増大を招きやすい傾向にもある。
【0087】
逆にブラックトナーの重量平均粒径が4μmより小さい場合には、トナーの単位質量あたりの帯電量が高くなり、画像濃度の低下、特に低温低湿下での画像濃度の低下が顕著となる。これでは、特にグラフィック画像の如き画像面積比率の高い用途には不向きである。
【0088】
さらに、キャリアを併用する二成分系現像剤として本発明のブラックトナーを用いる場合に、重量平均粒径が4μmより小さいと、キャリアなどの帯電付与部材との接触帯電がスムーズに行われにくく、充分に帯電し得ないトナーが増大し、非画像部への飛び散りによるカブリが目立つ様になる。これに対処すべくキャリアの比表面積を稼ぐためにキャリアの小径化が考えられるが、重量平均径が4μm未満のトナーでは、トナー自己凝集も起こり易く、キャリアとの均一混合が短時間では達成されにくく、トナーの連続補給耐久においては、カブリが生じてしまう傾向にある。
【0089】
本発明のブラックトナーは、4μm以下の粒径のトナー粒子が全粒子数の5〜50個数%、好ましくは5〜25個数%であることが好ましい。4μm以下の粒径のトナー粒子が5個数%未満であると、高画質のために必須な成分である微小のトナー粒子が少ないことを意味し、特に、コピー又はプリントアウトを続けることによってトナーが連続的に使われるに従い、有効なトナー粒子成分が減少して、本発明で示すトナーの粒度分布のバランスが悪化し、画質がしだいに低下する傾向を示す。
【0090】
また、4μm以下の粒径のトナー粒子が50個数%を超えると、トナー粒子相互の凝集状態が生じ易く、本来の粒径以上のトナー塊として、挙動することも多くなり、その結果、荒れた画像が形成されやすく、解像性を低下させたり、又は静電荷像のエッジ部と内部との濃度差が大きくなり、中抜け気味の画像となり易い。さらに、粒径12.70μm以上の粒子が7体積%以下であることが画質向上の上で好ましい。
【0091】
本発明のブラックトナーは、トナー粒子に流動性向上剤等の外添剤が添加されていることが画質向上、高温環境下での保存性の点で好ましい。流動性向上剤としては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム等の無機微粉体が好ましい。該無機微粉体は、シランカップリング剤、シリコーンオイル又はそれらの混合物の如き疎水化剤で疎水化されていることが好ましい。
【0092】
疎水化剤としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、ジルコアルミネートカツプリング剤等のカップリング剤が挙げられる。
【0093】
具体的に例えばシランカップリング剤としては、下記一般式(5)で表されるものが好ましい。
【0094】
【化3】
RmSiYn (5)
(式中、Rはアルコキシ基を示し、mは1〜3の整数を示し、Yはアルキル基、ビニル基、フェニル基、メタアクリル基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基又はこれらの誘導体を示し、nは1〜3の整数を示す。ただし、m+n=4である。)
上記一般式(5)で表されるものとして、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0095】
疎水化剤の処理量は、無機微粉体100質量部に対して、好ましくは1〜60質量部、より好ましくは3〜50質量部である。
【0096】
本発明において疎水化剤として特に好適なのは、下記一般式(6)で示されるアルキルアルコキシシランカップリング剤である。
【0097】
【化4】
(式中、nは4〜12の整数を示し、mは1〜3の整数を示す。)
【0098】
上記アルキルアルコキシシランカップリング剤において、nが4より小さいと、処理は容易となるが疎水化度が低く、好ましくない。nが12より大きいと、疎水性が十分になるが、酸化チタン微粒子同士の合一が多くなり、流動性付与能が低下しやすい。mは3より大きいと、該アルキルアルコキシシランカップリング剤の反応性が低下して疎水化を良好に行いにくくなる。上記一般式(6)で表されるアルキルアルコキシシランカップリング剤のnが4〜8であり、mが1〜2であるのがより好ましい。
【0099】
アルキルアルコキシシランカップリング剤の処理量も、無機微粉体100質量部に対して、好ましくは1〜60質量部、より好ましくは3〜50質量部が良い。
【0100】
疎水化処理は1種類の疎水化剤単独で行っても良いし、2種類以上の疎水化剤を使用しても良い。例えば1種類のカップリング剤単独で疎水化処理を行っても良いし、2種類のカップリング剤で同時に、またはカップリング剤での疎水化処理を行った後、別のカップリング剤で更に疎水化処理を行っても良い。
【0101】
流動性向上剤は、ブラックトナー粒子100質量部に対して0.01〜5質量部添加することが好ましく、0.05〜3質量部添加することがより好ましい。
【0102】
本発明のブラックトナーは、一成分系現像剤及び二成分系現像剤に適用できるものであり、特に何らこれを限定するものではないが、本発明のブラックトナーを二成分系現像剤に用いる場合に、併用されるキャリアとしては、例えば表面酸化又は未酸化の鉄、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、クロム、希土類等の金属及びそれらの合金または酸化物及びフェライトなどが使用できる。
【0103】
特に、マンガン、マグネシウム及び鉄成分を主成分として形成されるMn−Mg−Feの3元素の磁性フェライト粒子がキャリアとして好ましい。また、キャリアは、樹脂で被覆されていることが好ましく、樹脂としてはシリコーン樹脂が好ましい。特に、含窒素シリコーン樹脂または、含窒素シランカップリング剤とシリコーン樹脂とが反応することにより生成した変性シリコーン樹脂が、本発明のブラックトナーへのマイナスの摩擦電荷の付与性、環境安定性、キャリアの表面の汚染に対する抑制の点で好ましい。
【0104】
キャリアは平均粒径が15〜60μmが好ましく、さらには25〜50μmであることがブラックトナーの重量平均粒径との関係で好ましい。キャリアを上記の平均粒径及び特定の粒度分布を有するように調製する方法としては、例えば、篩を用いることによる分級によって行うことが可能である。特に、精度良く分級を行うために、適当な目開きの篩を用いて複数回くり返してふるうことが好ましい。また、メッシュの開口の形状をメッキ等によって制御したものを使うことも有効な手段である。
【0105】
本発明のブラックトナーと上記キャリアを用いて、二成分系現像剤を調製する場合、その混合比率は、現像剤中のトナー濃度として2〜15質量%、好ましくは4〜13質量%にすると通常良好な結果が得られることから好ましい。トナー濃度が2質量%未満では画像濃度が低くなりやすく、15質量%を超える場合ではカブリや機内飛散が増加しやすい。
【0106】
本発明のブラックトナーは、多色画像を再現するフルカラー画像形成に用いることが出来る。
本発明のブラックトナーを用いた画像形成方法について、画像形成装置の好ましい一具体例である図1を参照しながら、以下に説明する。
【0107】
図1に示す画像形成装置は、下部のデジタルカラー画像プリンタ部(以下、「プリンタ部」という)Iと、上記のデジタルカラー画像リーダ部(以下、「リーダ部」という)IIとを備えており、例えば、リーダ部IIで読み取った原稿Dの画像に基づき、プリンタ部Iによって記録材Pに画像を形成する。
【0108】
以下、プリンタ部Iの構成、つづいてリーダ部IIの構成を説明する。
【0109】
プリンタ部Iは、矢印R1方向に回転駆動される静電荷像担持体としての感光ドラム1を有する。感光ドラム1の周囲には、その回転方向に沿って順に、一次帯電器(帯電手段)2、露光手段3、現像装置(現像手段)4、転写装置5、クリーニング器6、前露光ランプ7等が配置されている。転写装置5の下方(すなわちプリンタ部Iの下半部)には、記録材Pの給送搬送部8が配置され、さらに転写装置5の上部には分離手段9が設置され、また分離手段9の下流側(記録材Pの搬送方向についての下流側)には加熱加圧定着器10及び排紙部11が配置されている。
【0110】
感光ドラム1は、アルミニウム製のドラム状の基体1aと、その表面を覆うOPC(有機光半導体)の感光層1bとを有し、駆動手段(不図示)によって矢印R1方向に所定のプロセススピード(周速度)で回転駆動されるように構成されている。
【0111】
一次帯電器2は、感光ドラム1に対向する部分が開口したシールド2aと、シールド2aの内側に感光ドラム1の母線と平行に配置された放電ワイヤ2bと、シールド2aの開口部に配置されて帯電電位を規制するグリッド2cとを有するコロナ帯電器である。一次帯電器2は、電源(不図示)によって帯電バイアスが印加され、これにより、感光ドラム1表面を所定の極性、所定の電位に均一に帯電するようになっている。
【0112】
露光手段3は、後述のリーダ部IIからの画像信号に基づいてレーザ光を発光するレーザ出力部(不図示)と、レーザ光を反射するポリゴンミラー3aと、レンズ3bと、ミラー3cとを有する。露光手段3は、このレーザ光が感光ドラム1表面を照射することによって感光ドラム1を露光し、露光部分の電荷を除去して静電潜像を形成するように構成されている。本実施例では、感光ドラム1表面に形成される静電潜像は、原稿の画像に基づいて、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4色に色分解され、それぞれの色に対応した静電潜像が順次形成されるようになっている。
【0113】
現像装置4は、感光ドラム1の回転方向(矢印R1方向)に沿って上流側から順にイエロートナー、シアントナー、マゼンタトナー、ブラックトナーの各色トナー(現像剤)を収納した現像器4Y、4C、4M、4Bkを備えている。各現像器4Y、4C、4M、4Bkは、それぞれ感光ドラム1表面に形成された静電荷像を現像するためのトナーを有する現像剤を担持している現像スリーブ4aを有し、静電荷像の現像に供せられる所定の色の現像器が偏心カム4bによって、択一的に感光ドラム1表面に近接する現像位置に配置されている。現像スリーブ4aに担持されている現像剤のトナーが静電荷像を現像し、顕像としてのトナー像(可視画像)を形成するように構成されている。現像に供せられる現像器以外の他の3色の現像器は、現像位置から退避するようになっている。
【0114】
転写装置5は、表面に転写材Pを担持する転写ドラム(転写材担持体)5a、感光ドラム1上のトナー像を転写材Pに転写する転写帯電器(転写帯電手段)5b、転写材Pを転写ドラム5aに吸着させるための吸着帯電器5cとこれに対向する吸着ローラ5d、内側帯電器5e、外側帯電器5fを有し、矢印R5方向に回転駆動されるように軸支された転写ドラム5aの周面開口域には誘電体からなる転写材担持シート5gが円筒状に一体的に張設されている。転写材担持シート5gは、ポリカーボネートフィルムの如き誘電体シートを使用している。転写装置5は転写ドラム5a表面に転写材Pを吸着して担持するように構成されている。
クリーニング器6は、転写材Pに転写されずに感光ドラム1表面に残った残留トナーを掻き落とすクリーニングブレード6a、及び掻き落したトナーを回収するクリーニング容器6bを備えている。
【0115】
前露光ランプ7は、一次帯電器2の上流側に隣接して配置され、クリーニング器6によって清掃された感光ドラム1表面の不要な電荷を除去する。
【0116】
給紙搬送部8は、大きさの異なる転写材Pを積載収納する複数の給紙カセット8a、給紙カセット8a内の転写材Pを給紙する給紙ローラ8b、多数の搬送ローラ、そしてレジストローラ8c等を有し、所定の大きさの転写材Pを転写ドラム5aに供給する。
【0117】
分離手段9は、トナー像が転写された後の転写材Pを転写ドラム5aから分離するための分離帯電器9a、分離爪9b、そして分離押上げころ9c等を有する。
【0118】
加熱加圧定着器10は、内側にヒータを有する定着ローラ10aと、定着ローラ10aの下方に配置され、転写材Pを定着ローラ10aに押し付ける加圧ローラ10bとを有する。
【0119】
排紙部11は、加熱加圧定着器10の下流側に配置された、搬送パス切替えガイド11a、排出ローラ11b、排紙トレイ11c等を有する。また、搬送パス切替えガイド11aの下方には、1枚の転写材Pに対してその両面に画像形成を行うために搬送縦パス11d、反転パス11e、積載部材11f、中間トレイ11g、さらに搬送ローラ11h、11i、反転ローラ11j等が配置されている。
【0120】
また、感光ドラム1周囲における、一次帯電器2と現像装置4との間には、感光ドラム表面の帯電電位を検出する電位センサS1が、また現像装置4と転写ドラム5aとの間には、感光ドラム1上のトナー像の濃度を検知する濃度センサS2が、それぞれ配置されている。
【0121】
つづいて、リーダ部IIについて説明する。プリンタ部Iの上方に配置されたリーダ部IIは、原稿Dを載置する原稿台ガラス12a、移動しながら原稿Dの画像面を露光走査する露光ランプ12b、原稿Dからの反射光をさらに反射させる複数のミラー12c、反射光を集光するレンズ12d、そしてレンズ12dからの光に基づいてカラー色分解画像信号を形成するフルカラーセンサ(不図示)等を有する。カラー色分解画像信号は、増幅回路(不図示)を経て、ビデオ処理ユニット(不図示)によって処理を施され、上述のプリンタ部Iに送出されるようになっている。
次に、上述構成の画像形成装置の動作を説明する。以下の説明においては、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの順に4色フルカラーの画像を形成するものとする。
【0122】
リーダ部IIの原稿台ガラス12aに載置された原稿Dの画像は、露光ランプ12bによって照射され、色分解されてまずイエローの画像がフルカラーセンサによって読み取られ、所定の処理を施され画像信号としてプリンタ部Iに送られる。
【0123】
プリンタ部Iでは、感光ドラム1が矢印R1方向に回転駆動され、一次帯電器2によって表面が均一に帯電される。上述のリーダ部IIから送られてきた画像信号に基づいて、露光手段3のレーザ出力部からレーザ光が照射され、ポリゴンミラー3a等を介して帯電済の感光ドラム1表面を光像Eによって露光する。感光ドラム1表面の露光を受けた部分は、電荷が除去され、これによりイエローに対応した静電荷像が形成される。現像装置4においては、イエローの現像器4Yが所定の現像位置に配置され、その他の現像器4C、4M、4Bkは現像位置から退避される。感光ドラム1上の静電荷像は、現像器4Yによってイエローのトナーが付着され、顕像化されてイエロートナー像となる。この感光ドラム1上のイエロートナー像は、転写ドラム5aに担持された転写材Pに転写される。転写材Pは、原稿画像に適した大きさの転写材Pが所定の給紙カセットを8aから給紙ローラ8b、搬送ローラ、そしてレジストローラ8c等を介して所定のタイミングで転写ドラム5aに供給されたものである。このようにして供給された転写材Pは、転写ドラム5aの表面に巻き付くように吸着されて矢印R5方向に回転し、転写帯電器5bによって感光ドラム1上のイエロートナー像が転写される。
【0124】
一方、イエロートナー像が転写された後の感光ドラム1は、クリーニング器6によって表面の残留トナーが除去され、さらに前露光ランプ7によって不要な電荷が除去され、一次帯電から始まる次の画像形成に供される。
【0125】
以上のリーダ部IIによる原稿画像の読取りから、転写ドラム5a上の転写材Pに対するトナー像の転写、さらには感光ドラム1の清掃、除電に至る各プロセスが、イエロー以外の他の色、すなわちシアン、マゼンタ、ブラックについても同様に行われ、転写ドラム5a上の転写材Pには、イエロートナー、シアントナー、マゼンタトナー及びブラックトナーの4色のトナー像が重なるようにして転写される。
【0126】
4色のトナー像の転写を受けた転写材Pは、分離帯電器9a、分離爪9b等によって転写ドラム5aから分離され、未定着のトナー像を表面に担持した状態で定着器10に搬送される。転写材Pは、加熱加圧定着器10の定着ローラ10a及び加圧ローラ10bによって加熱加圧され、カラートナー像が溶融されて定着され、フルカラー画像が転写材の一方の面に形成される。定着後の記録材Pは、排出ローラ11bによって排紙トレイ11c上に排出される。
【0127】
次に、図2を参照して加熱加圧定着装置10について説明する。
【0128】
図2において、トナー像と接触する定着ローラ10aは、例えばアルミニウム製の芯金31上の1mm厚のHTV(高温加硫型)シリコーンゴム層32、この外側に特定の付加型シリコーンゴム層33を有し、直径60mmに形成されたものを用いることができる。
【0129】
一方、加圧ローラ10bは、例えば、アルミニウム製の芯金34上に、1mm厚のHTVと、さらに厚さ1mmの前述の特定の付加型シリコーンゴム層35を設け、直径60mmに形成されたものを用いることができる。
【0130】
上述の定着ローラ10aには、発熱手段である搬送ローラヒータ36が芯金31内に配設され、加圧ローラ10bには、同じくヒータ37が芯金34内に配設されて転写材Pの両面からの加熱を行っている。
【0131】
加圧ローラ10bに当接されたサーミスタ38によって加圧ローラ10bの温度が検知され、この検知温度に基づいて制御装置39によりハロゲンヒータ36、37が制御され、定着ローラ10a及び加圧ローラ10bの温度がともに170℃の一定に維持されるように制御される。なお、定着ローラ10aと加圧ローラ10bとは、加圧機構(不図示)によって総圧約80kgで加圧されている。
【0132】
また、図2において、Oはオイル塗布装置であり、Cはクリーニング装置であり、C1は加圧ローラ10bのオイル汚れを除去するクリーニングブレードである。オイル塗布装置Oは、オイルパン40内のジメチルシリコーンオイル41をオイル汲み上げローラ50、42及びオイル塗布ローラ43を経由させてオイル塗布量調整ブレード44でオイル塗布量を規制して定着ローラ10aに塗布する。クリーニング装置Cは、突当ローラ45によって定着ローラ10aに当接されたウエブ46によって定着ローラ10a表面を清掃する。
【0133】
上述の定着装置10では、未定着トナー像を表面に担持した転写材Pは、定着ローラ10aと加圧ローラ10bとの間の定着ニップに挟持搬送され、このとき表裏両面から加熱加圧されてトナーの定着が行われる。この際、定着ローラ10a、加圧ローラ10bに付着したトナーは、それぞれクリーニング装置C、クリーニングブレードC1によって除去される。
【0134】
以上、転写材の一方の面のみにフルカラー画像を形成するものについて説明したが、次にこのフルカラー画像を転写材の表面及び裏面の両方に形成する方法及び装置について図1を参照しながら説明する。
【0135】
転写材Pの両面にフルカラー画像を形成する場合は、定着装置10は、すぐに搬送パス切替えガイド11aを駆動させ、排出後の転写材Pを、搬送パス11dを経て、反転パス11eに一旦導いた後、反転ローラ11jの逆転により、送り込まれた際の後端を先頭にして、送り込まれた方向と反対向きに退出させ、中間トレイ11gに収納する。その後、中間トレイ11gの一方の面にフルカラー画像を有する転写材Pは転写ドラム5aに送られ、他方の面に再度上述の画像形成プロセスによりイエロートナー、シアントナー及びマゼンタトナーのカラートナーが転写され、さらにブラックトナーが転写される。転写材Pのフルカラー画像が転写ドラム5aと接触するので、定着時にフルカラー画像面に付着したシリコーンオイルが転写ドラム5aに付着する。シリコーンオイルは、転写工程を通常阻害しやすいが、本発明のブラックトナーは、シリコーンオイルの吸収性に優れているので、転写ドラム5aに付着するシリコーンオイル量は従来と比較して極めて少ない。
【0136】
転写材の他方の面に未定着のカラートナー画像を有する転写材Pは、転写ドラム5aから分離され、定着装置10へ送られ、未定着のカラートナー画像は転写材に加熱加圧定着される。このようにして、転写材Pの両面にフルカラー画像が形成される。本発明のブラックトナーは、特定な粒度分布と特定な弾性率を有しているので、本発明のブラックトナーを用いることにより、両面が良好に行え、定着ローラ10a及び加圧ローラ10bへの転写材Pの巻き付きが抑制され、オフセット現象の発生も良好に防止されるものである。特に疎水化された酸化アルミニウム微粉体が外添されたブラックトナーを用いることが好ましい。
【0137】
本発明のブラックトナーを使用すると、転写ドラム5aの転写材担持シート5gにおけるシリコーンオイル等の汚染は従来と比較して極めて少ないが、必要によりファーブラシ13aとバックアップブラシ13b及びオイル除去ローラ14aとバックアップブラシ14bによって清掃を行ってもよい。このような清掃は、必要により画像形成前もしくは画像形成後に行い、またジャム(紙づまり)発生した場合には随時行う。
【0138】
次に各物性の測定方法について以下に説明する。
(1)トナーの弾性率の測定方法
トナーを直径8mm、厚さ約2〜3mmの円板状の試料に加圧成形する。次にパラレルプレートにセットし、50〜200℃の温度範囲内で徐々に昇温させ、温度分散測定を行う。昇温速度は2℃/minとし、角周波数(ω)は6.28rad/secに固定し、歪率は自動とする。横軸に温度、縦軸に貯蔵弾性率(G')と損失弾性率(G")を取り、各温度における値を読み取る。測定にあたっては、RDA−II(レオメトリックス社製)を用いることができるが、この装置に限定するものではない。
【0139】
(2)トナーの吸熱ピークの測定方法
示差走査熱量計(DSC測定装置)、DSC−7(パーキンエルマー社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。測定試料は2〜10mg、好ましくは5mgを精密に秤量する。
【0140】
これをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用い、測定温度範囲30〜200℃の間で、昇温速度10℃/minで常温常湿下で測定を行う。この昇温過程で、温度30〜200℃の範囲におけるDSC曲線のメインピークの吸熱ピークが得られる。
【0141】
(3)結着樹脂のGPC測定
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるクロマトグラムの分子量は次の条件で測定される。
【0142】
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を毎分1mlの流速で流し、試料濃度として0.05〜0.6質量%に調整した結着樹脂のTHF試料溶液を約50〜200μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数(リテンションタイム)との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば東ソー社製或いはPressure Chemical Co.製の分子量が6×102、2.1×103、4×103、1.75×104、5.1×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2×106、4.48×106のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。
【0143】
カラムとしては、103〜2×106の分子量領域を的確に測定するために、市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせるのが良く、例えば昭和電工社製のshodex GPC KF−801,802,803,804,805,806,807の組み合わせや、Waters社製のμ−styragel 500、103、104、105の組み合わせを挙げることができる。
【0144】
(4)トナー粒度分布の測定
本発明において、トナーの平均粒径及び粒度分布はコールターカウンターTA−II型(コールター社製)を用いて行うが、コールターマルチサイザー(コールター社製)を用いることも可能である。電解液は1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を調製する。例えば、ISOTON R−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。測定法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩を0.1〜5ml加え、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、前記測定装置によりアパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、2.00μm以上のトナーの体積、個数を測定して体積分布と個数分布とを算出する。それから本発明に係る体積分布から求めた重量基準の重量平均粒径(D4)(各チャンネルの中央値をチャンネル毎の代表値とする)を求める。さらに、重量基準の重量平均粒径(D4)より個数基準の個数平均粒径を算出する。
【0145】
チャンネルとしては、2.00〜2.52μm;2.52〜3.17μm;3.17〜4.00μm;4.00〜5.04μm;5.04〜6.35μm;6.35〜8.00μm;8.00〜10.08μm;10.08〜12.70μm;12.70〜16.00μm;16.00〜20.20μm;20.20〜25.40μm;25.40〜32.00μm;32.00〜40.30μmの13チャンネルを用いる。
【0146】
(5)トナー中のカーボンブラックの平均一次粒径の測定方法
本発明において、トナー中のカーボンブラックの平均一次粒径は、下記の様にして測定する。具体的には、紫外線硬化型のアクリル樹脂中にトナーを充分に分散させた後、紫外線を照射して硬化させ、得られた硬化物をウルトラミクロトームを用いて面出しし、それを四酸化ルテニウム(RuO4)、又は必要に応じて四酸化オスミウム(OsO4)を併用して電子染色を施した後、ダイヤモンドナイフを備えたウルトラミクロトームを用いて薄片状のサンプルを切り出し、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いてトナーの断面層形態を観察する。こうして得られたトナーの断面写真(例えば4万倍に拡大した断面写真)より、凝集体を形成していないカーボンブラックについて、無作為に抽出し解析を行うこととしサンプリング数が300回を超えるまで測定を繰り返して平均粒径を求める。
【0147】
本発明では画像処理装置を用いてカーボンブラックを球形近似し、得られる直径より定義される値をカーボンブラックの平均一次粒径(A)とする。また、TEM写真より直接カーボンブラックの平均一次粒径を測定する際には、カーボンブラックの長径を粒径とし、同じくサンプリング数が300回を超えるまで測定を繰り返して平均一次粒径(B)を求める。本発明では、上記の(A)も(B)もほぼ同じ結果が得られた。
【0148】
【実施例】
以下、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<1>結着樹脂の製造
(ハイブリッド樹脂製造例1)
ビニル系共重合体として、スチレン1.9mol、2−エチルヘキシルアクリレート0.21mol、フマル酸0.15mol、α−メチルスチレンの2量体0.03mol、ジクミルパーオキサイド0.05molを滴下ロートに入れる。
【0149】
また、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン7.0mol、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン3.0mol、テレフタル酸3.0mol、無水トリメリット酸2.0mol、フマル酸5.0mol及び酸化ジブチル錫0.2gをガラス製4リットルの4つ口フラスコに入れ、温度計、撹拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取りつけマントルヒータ内においた。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、145℃の温度で撹拌しつつ、先の滴下ロートよりビニル系共重合体のモノマー、架橋剤及び重合開始剤を4時間かけて滴下した。次いで200℃に昇温を行い、4時間反応させてハイブリッド樹脂(1)を得た。GPCによる分子量測定の結果を表1に示す。
(ハイブリッド樹脂製造例2)
スチレン3.8mol、α−メチルスチレンの2量体0.07mol、ジクミルパーオキサイド0.1molと使用量を変えた以外は、ハイブリッド樹脂製造例1と同様に反応させ、ハイブリッド樹脂(2)を得た。GPCによる分子量測定の結果を表1に示す。
(ハイブリッド樹脂製造例3)
フマル酸5.0molに代えてマレイン酸4.0molとイタコン酸3.5molを使用すること、ジクミルパーオキサイド0.05molに代えてイソブチルパーオキサイド0.1molを使用すること以外は、ハイブリッド樹脂製造例1と同様に反応させ、ハイブリッド樹脂(3)を得た。GPCによる分子量測定の結果を表1に示す。
(ハイブリッド樹脂製造例4)
テレフタル酸3.0mol、無水トリメリット酸2.0molの代わりに無水トリメリット酸5.2molにしてハイブリッド樹脂製造例1と同様に反応させ、ハイブリッド樹脂(4)を得た。GPCによる分子量測定の結果を表1に示す。
(ポリエステル樹脂製造例1)
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン3.6mol、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン1.6mol、テレフタル酸1.7mol、無水トリメリット酸1.1mol、フマル酸2.4mol及び酸化ジブチル錫0.1gをガラス製4リットルの4つ口フラスコに入れ、温度計、撹拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取りつけマントルヒータ内においた。窒素雰囲気下で、215℃で5時間反応させ、ポリエステル樹脂(5)を得た。GPCによる分子量測定の結果を表1に示す。
(ポリエステル樹脂製造例2)
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン1.6mol、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン3.3mol、テレフタル酸1.6mol、無水トリメリット酸0.3mol、フマル酸3.2molのモノマー構成で、ポリエステル樹脂製造例1と同様に反応させ、ポリエステル樹脂(6)を得た。GPCによる分子量測定の結果を表1に示す。
(ビニル系共重合体の製造例1)
スチレン2.2mol、2−エチルヘキシルアクリレート0.23mol、ジクミルパーオキサイド0.08mol、酸化ジブチル錫3.2gを、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した3リットルの4つ口フラスコに入れ、マントルヒータ中で、窒素雰囲気にて225℃の温度で撹拌しつつ反応させ、ビニル系共重合体(7)を得た。GPCによる分子量測定の結果を表1に示す。
【0150】
【表1】
本実施例のブラックトナーの製造に用いたワックスを表2に示す。
【0151】
【表2】
本実施例のブラックトナーの製造に用いたカーボンブラックを表3に示す。
【0152】
【表3】
【0153】
【実施例1】
以下の方法でブラックトナー1を調製した。
(第一の混練工程)
・ハイブリッド樹脂(1) 60質量部
・カーボンブラック(a) 40質量部
上記の原材料をまずニーダー型ミキサーに仕込み、混合しながら非加圧下で昇温させる。十分に樹脂が溶けた状態で30分間加熱溶融混練させ、第一の工程を終了した後、冷却させ、混練物を取り出しこれを粉砕して第1の混練物を得た。
(第二の混練工程)
上記の処方で十分にヘンシェルミキサーにより予備混合を行い、二軸押出し混練機で温度を120℃に設定し溶融混練し、冷却後ハンマーミルを用いて約1〜2mm程度に粗粉砕し、次いでエアージェット方式による微粉砕機で20μm以下の粒径に微粉砕した。さらに得られた微粉砕物を分級して、粒度分布における重量平均粒径が7.0μmになるように選択してブラックトナー粒子(分級品)を得た。
【0154】
流動性向上及び帯電特性付与を目的として、i−C4H9Si(OCH3)3:23質量部で処理した疎水性酸化アルミニウム(BET180m2/g)を、上記ブラックトナー粒子100質量部に対して、1.0質量部を合せてブラックトナー1とした。ブラックトナー1の重量平均粒径は7.0μmであった。
【0155】
さらに、ブラックトナー1と、シリコーン樹脂で表面被覆した磁性フェライトキャリア粒子(平均粒径45μm)とを、トナー濃度が7質量%になるように混合し、二成分系ブラック現像剤1とした。トナーの処方及び物性値の測定結果を表4に示す。
【0156】
このブラック現像剤1で、カラー複写機CLC−800(キヤノン製)の定着ユニットのオイル塗布機構を取り外した改造機を用い、単色モードで低温低湿環境下(15℃/10%)、高温高湿環境下(30℃/80%)で画像面積比率20%のオリジナル原稿を用いて、1万枚の耐久試験と常温常湿度環境下(23℃/60%)で定着試験(設定定着温度は170℃)を行った。さらに定着可能領域の評価については、定着ユニットを手動で定着温度が設定できるように改造して行った。すなわち低温側から定着温度を10℃ずつアップさせながら、未定着画像を定着させて、定着開始温度とオフセット発生温度を確認した。
【0157】
低温低湿環境下での耐久評価では、画像濃度は1.5〜1.7の間で安定に推移し、1万枚の耐久後でもカブリのないオリジナルを忠実に再現するブラック画像が得られた。複写機内での搬送、現像剤濃度検知も良好で安定した画像濃度が得られた。また1万枚の繰り返し複写でも(定着温度は170℃)定着ローラへのオフセットはまったく生じなかった。なお、定着ローラへのオフセットの発生状況は、繰り返し複写後の定着ローラの表面を目視により観察することによって行った。
高温高湿環境下での耐久評価では、画像濃度は1.6〜1.8の間で安定に推移し、1万枚の耐久後でもカブリのないオリジナルを忠実に再現するブラック画像が得られた。耐久後の機内の汚れもなく、トナー飛散もほとんど確認させなかった。
定着温度を170℃に設定して常温常湿環境下で行った、1万枚の繰り返し複写後のオフセット状況目視試験(複写後の定着ローラの表面を目視により観察)でも定着ローラへのオフセットはまったく生じていなかった。また1万枚の耐久評価中に、定着不良に起因する画像欠陥は一切見られなかった。
定着可能温度領域に関して調べたところ、120℃から定着可能となりオフセットは210℃まで発生しなかった。
【0158】
ブラックトナー1の保存安定性を調べた結果、良好なデータを示した。すなわち、サンプルトナーの耐ブロッキング性に関しては、50℃のオーブン内にて2週間放置することにより評価した。評価としては目視による凝集性のレベルより判定した。結果を表4に示す。耐ブロッキング性の評価基準は以下のとおりである。
A:凝集体が全く見られなく流動性が非常に良い
B:若干の凝集体は見られるがすぐにほぐれる
C:現像剤攪拌装置では凝集体が十分にほぐれない。
【0159】
ブラックトナー1で用いたカーボンブラックに代えて、銅フタロシアニン系のシアン顔料(Pigment Blue15:3)、ジアラリード系のイエロー顔料(Pigment Yellow17)、キナクリドン系のマゼンタ顔料(Pigment 122)をそれぞれ用いて、あとはほぼ同様にして、シアントナー1、イエロートナー1、マゼンタトナー1を作製し、二成分系ブラック現像剤1と同様にして現像剤を調製して画出しした。再線再現性に優れた色鮮やかなフルカラー画像が得られた。
【0160】
【実施例2】
ハイブリッド樹脂(1)に代えて、ハイブリッド樹脂(2)を使用したこと以外は実施例1とほぼ同様にして、ブラックトナー2を作製した。そしてこれらブラックトナーを用いて、二成分系ブラック現像剤1と同様にして二成分系ブラック現像剤2を得た。トナーの処方及び物性値の測定結果を表4に示す。
【0162】
【実施例6】
実施例1において、ジ−ターシャリブチルサリチル酸のアルミニウム化合物(荷電制御剤)を6.0質量部用いた以外はほぼ同様にしてブラックトナー6を得た。そしてブラックトナー6を用いて、二成分系ブラック現像剤1と同様にして二成分系ブラック現像剤6を得た。トナーの処方及び物性値の測定結果を表4に示す。
【0163】
実施例1と同様に定着試験及び耐久試験を行ったところ、ほぼ同様の結果が得られた。結果を表4に示す。
【0164】
【実施例7】
実施例1において、ジ−ターシャリブチルサリチル酸のアルミニウム化合物(帯電制御剤)を2.0質量部用いた以外はほぼ同様にしてブラックトナー7を得た。そしてブラックトナー7を用いて、二成分系ブラック現像剤1と同様にして二成分系ブラック現像剤7を得た。トナーの処方及び物性値の測定結果を表4に示す。
【0165】
実施例1と同様に定着試験及び耐久試験を行った。耐ブロッキング性はやや悪化するもの実用上問題となるレベルではなかった。結果を表4に示す。
【0166】
【実施例8〜11】
実施例1において、カーボンブラック(a)に代えて、カーボンブラック(b)、(c)、(d)、(e)をそれぞれ用いたことを除いてあとは同様にしてブラックトナー8〜11を作製し、二成分系ブラック現像剤1と同様にして二成分系ブラック現像剤8〜11を得た。トナーの処方及び物性値の測定結果を表4に示す。
【0167】
実施例1と同様に定着試験及び耐久試験を行った。結果を表4に示す。ただ、ブラックトナー8ではベタ画像が若干赤味を帯びており、また高温高湿環境下での耐久において、わずかにトナー飛散が発生した。
【0168】
【実施例12】
実施例1において、カーボンブラック(a)の含有量が、結着樹脂100質量部に対して2.5質量部になる様に仕込み量を変えて、あとは同様にしてブラックトナー12を作製し、二成分系ブラック現像剤1と同様にして二成分系ブラック現像剤12を得た。トナーの処方及び物性値の測定結果を表4に示す。
【0169】
実施例1と同様に定着試験及び耐久試験を行った。定着性は実用レベル内であったものの、ベタ部の画像濃度が乏しく全体にプアーな画像であった。結果を表4に示す。
【0170】
【実施例13】
実施例1において、カーボンブラック(a)の含有量が、結着樹脂100質量部に対して7.0質量部になる様に仕込み量を変えて、あとは同様にしてブラックトナー13を作製し、二成分系ブラック現像剤1と同様にしてブラック現像剤13を得た。トナーの処方及び物性値の測定結果を表4に示す。
【0171】
実施例1と同様に定着試験及び耐久試験を行った。高温高湿環境下での耐久において、耐久後半からトナー飛散が目立ち始めた。一方、常温常湿環境下での定着試験において、ブラックトナー13ではベタ部の転写ボソのレベルが悪く、転写条件をふっても大きく改善できなかった。ただ、転写性に関しても実用レベル内であった。結果を表4に示す。
【0172】
【実施例14〜17】
実施例1において、精製ノルマルパラフィン(A)に変えて、ワックス(B)、(C)、(D)、(E)をそれぞれ用いたことを除いた以外は同様にしてブラックトナー14〜17を作製し、二成分系ブラック現像剤1と同様にしてブラック現像剤14〜17を得た。トナーの処方及び物性値の測定結果を表4に示す。
【0173】
実施例1と同様に定着試験及び耐久試験を行った。ブラックトナー17は、高温側の耐オフセット性のレベルが悪化しており、定着幅が狭かったものの何とか実用レベル内であった。結果を表4に示す。
【0174】
【実施例18】
実施例1において、ジ−tert−ブチルサリチル酸の亜鉛化合物を4質量部使用したことを除いてあとはほぼ同様にしてブラックトナー18を得た。ブラックトナー18を用いて、二成分系ブラック現像剤1と同様にしてブラック現像剤18を得た。トナーの処方及び物性値の測定結果を表4に示す。
【0175】
実施例1と同様に定着試験及び耐久試験を行った。耐ブロッキング性はやや悪化するもの実用上問題となるレベルではなかった。また定着試験において、高温側でのオフセット発生温度が、実施例1に記載のブラックトナー1と比較して30℃程度低くなったが、ぎりぎり実用レベル内であった。結果を表4に示す。
【0176】
低温低湿環境下での1万枚の耐久において、ブラックトナー18は、チャージアップ傾向が見られ、耐久とともに徐々に画像濃度が低下してしまう傾向が見られた。但し実用レベル内であった。
【0177】
【実施例19】
実施例1とほぼ同様にして、粒度分布における重量平均粒径が4.8μmのブラックトナー粒子(分級品)を得た。流動性向上及び帯電特性付与を目的として、i−C4H9Si(OCH3)3:23質量部で処理した疎水性酸化アルミニウム(BET180m2/g)を、上記ブラックトナー粒子100質量部に対して、1.2質量部を合せてブラックトナー19とした。そしてブラックトナー19を用いて、二成分系ブラック現像剤1と同様にして二成分系ブラック現像剤19を得た。トナーの処方及び物性値の測定結果を表4に示す。
【0178】
実施例1と同様に定着試験及び耐久試験を行った。定着性は実施例1のトナーとほぼ同じであったが、低温低湿環境下での1万枚の耐久試験においてチャージアップ傾向が見られたが、実用レベル内であった。結果を表4に示す。
【0179】
【実施例20】
実施例1とほぼ同様にして、粒度分布における重量平均粒径が9.8μmのブラックトナー粒子(分級品)を得た。実施例1で用いた疎水性酸化アルミニウムを、上記ブラックトナー粒子100質量部に対して、0.8質量部を合せてブラックトナー20とした。そしてブラックトナー20を用いて、二成分系ブラック現像剤1と同様にして二成分系ブラック現像剤20を得た。トナーの処方及び物性値の測定結果を表4に示す。
【0180】
実施例1と同様に定着試験及び耐久試験を行った。定着性は実施例1のトナーとほぼ同じであったが、低温低湿環境下での画出しにおいてハーフトーン再現性が若干低下し全体にがさっぽい画像が得られた。但し実用レベル内であった。結果を表4に示す。
【0181】
【実施例22】
実施例1とほぼ同様にして、粒度分布における重量平均粒径が3.9μmのブラックトナー粒子(分級品)を得た。流動性向上及び帯電特性付与を目的として、実施例1で用いた疎水性酸化アルミニウムを、上記ブラックトナー粒子100質量部に対して、1.4質量部を合せてブラックトナー21とした。そしてブラックトナー20を用いて、二成分系ブラック現像剤1と同様にして二成分系ブラック現像剤20を得た。トナーの処方及び物性値の測定結果を表4に示す。
【0182】
実施例1と同様に定着試験及び耐久試験を行った。定着性は実施例1のトナーと比較して低温側は10℃、高温側は20℃狭くなったがほぼ同様の結果を得た。ただ、低温低湿環境下での1万枚の耐久試験においてチャージアップ傾向が見られ、耐久とともに濃度が低下し耐久途中から若干のかぶりも見られた。ただし、かぶりは何とか実用レベル内であった。結果を表4に示す。
【0183】
【実施例22】
実施例1とほぼ同様にして、粒度分布における重量平均粒径が10.5μmのブラックトナー粒子(分級品)を得た。流動性向上及び帯電特性付与を目的として、実施例1で用いた疎水性酸化アルミニウムを、上記ブラックトナー粒子100質量部に対して、0.6質量部を合せてブラックトナー22とした。そしてブラックトナー22を用いて、二成分系ブラック現像剤1と同様にして二成分系ブラック現像剤22を得た。トナーの処方及び物性値の測定結果を表4に示す。
【0184】
実施例1と同様に定着試験及び耐久試験を行った。定着性は実施例1のトナーと比較して低温側も高温側も10℃せまくなったものの、ほぼ同じ傾向を示した。ただ、低温低湿環境下での画出しにおいてハーフトーン再現性、及び細線再現性が低下し全体にがさっぽい画像が得られた。但し、実用レベル内であった。結果を表4に示す。
【0185】
【比較例1】
ハイブリッド樹脂(1)に代えてハイブリッド樹脂(4)を使用したこと以外は、実施例1とほぼ同様にしてブラックトナー23を得た。そしてブラックトナー23を用いて、二成分系ブラック現像剤1と同様にして二成分系ブラック現像剤23を得た。トナーの処方及び物性値の測定結果を表4に示す。
【0186】
実施例1と同様に定着試験及び耐久試験を行った。ブラックトナー23では、低温定着性が著しく悪化した。結果を表4に示す。
【0187】
【比較例2】
ハイブリッド樹脂(1)に代えてポリエステル樹脂(6)を使用したこと以外は、実施例1とほぼ同様にしてブラックトナー24を得た。そしてブラックトナー24を用いて、二成分系ブラック現像剤1と同様にして二成分系ブラック現像剤24を得た。トナーの処方及び物性値の測定結果を表4に示す。
【0188】
実施例1と同様に定着試験を行った。ブラックトナー24は、同様の定着試験において、低い温度(150℃)で上ローラへ巻きついてしまった。結果を表4に示す。
【0189】
【比較例3】
実施例1において、ジ−ターシャリブチルサリチル酸のアルミニウム化合物(荷電制御剤)を用いなかった以外は同様にして、ブラックトナー25を得た。そしてブラックトナー25を用いて、二成分系ブラック現像剤1と同様にして二成分系ブラック現像剤25を得た。トナーの処方及び物性値の測定結果を表4に示す。
【0190】
実施例1と同様に定着試験を行った。ブラックトナー25では130℃で上ローラへ巻きついてしまい、耐久評価は行わなかった。トナーの断面TEM観察によるカーボンブラックの平均一次粒径の値は、実施例1のブラックトナーと比較して大きかった。
【0191】
【比較例4】
実施例1において、ワックス(A)を用いなかった以外は同様にしてブラックトナー26を得た。そしてブラックトナー26を用いて、二成分系ブラック現像剤1と同様にして二成分系ブラック現像剤26を得た。トナーの処方及び物性値の測定結果を表4に示す。
【0192】
実施例1と同様に定着試験を行った。ブラックトナー26は、130℃で上ローラへ巻きついてしまい耐久評価は行わなかった。
【0193】
【比較例5】
比較例1において、カーボンブラック(a)を結着樹脂100質量部に対して0.45質量部含有する様に調整した以外は同様にしてブラックトナー27を得た。そしてブラックトナー27を用いて、二成分系ブラック現像剤1と同様にして二成分系ブラック現像剤27を得た。トナーの処方及び物性値の測定結果を表4に示す。実施例1と同様に定着試験及び耐久試験を行った。現像条件を変えて画出ししても高い画像濃度は得られなかった。
【0194】
【比較例6】
比較例2において、カーボンブラック(a)を結着樹脂100質量部に対して10.2質量部含有する様に調整した以外は同様にしてブラックトナー28を得た。そしてブラックトナー28を用いて、二成分系ブラック現像剤1と同様にして二成分系ブラック現像剤28を得た。トナーの処方及び物性値の測定結果を表4に示す。
【0195】
実施例1と同様に定着試験及び耐久試験を行った。ブラックトナー28では低温側での定着性が悪化し150℃まで温度を上げなくてはならなかった。ブラックトナー28を用いて高温高湿環境下で耐久評価したところ、初期からかぶりの多い画像であった。さらに耐久を進めるとトナー飛散が悪化したため、耐久を途中で中断した。
【0196】
【比較例7】
実施例1において、カーボンブラック(a)の代わりにカーボンブラック(f)を、結着樹脂100質量部に対して3質量部含有させた以外は同様にしてブラックトナー29を得た。そしてブラックトナー29を用いて、二成分系ブラック現像剤1と同様にして二成分系ブラック現像剤29を得た。トナーの処方及び物性値の測定結果を表4に示す。
【0197】
実施例1と同様に定着試験及び耐久試験を行った。定着性は実施例1のトナーとほぼ同じ結果が得られたが、ブラックトナー29ではベタ画像がかなり赤味を帯びておりフルカラー画像形成用のブラックトナーとしては不適であった。また高温高湿環境下での耐久において、初期からトナー飛散が発生し、耐久放置後のトナー飛散のレベルは実用不可レベルであった。結果を表4に示す。
【0198】
【比較例8】
実施例1において、カーボンブラック(a)の代わりにカーボンブラック(g)を、結着樹脂100質量部に対して6質量部含有させた以外は同様にして、ブラックトナー30を得た。そしてブラックトナー30を用いて、二成分系ブラック現像剤1と同様にして二成分系ブラック現像剤30を得た。トナーの処方及び物性値の測定結果を表4に示す。
【0199】
実施例1と同様に定着試験及び耐久試験を行った。定着性は実施例1のトナーとほぼ同じ結果が得られたが、ブラックトナー30では転写のボソのレベルがひどく、ベタ画像の均一性は実用不可レベルであった。結果を表4に示す。
【0200】
【比較例9】
実施例1において、ジ−ターシャリブチルサリチル酸のアルミニウム化合物(荷電制御剤)の代わりに、ベンジル酸のホウ素化合物を4質量部用いた以外は同様にしてブラックトナー31を得た。そしてブラックトナー31を用いて、二成分系ブラック現像剤1と同様にして二成分系ブラック現像剤31を得た。トナーの処方及び物性値の測定結果を表4に示す。
【0201】
実施例1と同様に定着試験を行った。ブラックトナー31は、同様の定着試験において、低い温度(130℃)で上ローラへ巻きついてしまった。またトナーの断面TEMによる観察ではブラックトナー31中のカーボンブラックの分散性は悪化していた。すなわち、カーボンブラックの凝集体が多く見られた。結果を表4に示す。
【0202】
【表4】
【0203】
【発明の効果】
本発明のブラックトナーは、耐ブロッキング性、高温環境下での保存性、低温定着性、耐高温オフセット性、現像安定性、3環境安定性、転写性に優れており、高精細・高品位な画像を安定して得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のブラックトナーを用いる画像形成装置の一つの実施の形態を示す。
【図2】 図1の画像形成装置に用いられる定着装置の概略構成図を示す。
【符号の説明】
1 感光ドラム
2 一次帯電器
3 露光手段
4 現像装置
5 転写装置
6 クリーニング器
7 前露光ランプ
8 給紙搬送部
9 分離手段
10 定着装置
11 排紙部
Claims (10)
- 少なくとも結着樹脂、ワックス及びカーボンブラックを含有する溶融混練粉砕によって得られたブラックトナーであって、
前記結着樹脂は、(b)ポリエステルユニットとビニル系共重合体ユニットを有しているハイブリッド樹脂、(c)ハイブリッド樹脂とビニル系共重合体との混合物、(d)ポリエステル樹脂とビニル系共重合体との混合物、(e)ハイブリッド樹脂とポリエステル樹脂との混合物からなる群から選択される樹脂であり、前記結着樹脂はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布において、ピーク分子量(Mp)が4,000〜30,000の領域にあり、Mw/Mnが5.0以上である樹脂であり、
前記ブラックトナーの損失弾性率G"のピークが50〜70℃の温度範囲内に存在し、貯蔵弾性率G'が1×106(dN/m2)を示すときの温度をT1、貯蔵弾性率G'が1×105(dN/m2)を示すときの温度をT2としたとき、T1は85〜105℃の温度範囲内にあり、かつΔT=T2−T1≧20℃であって、
前記ブラックトナーは、カーボンブラックを結着樹脂100質量部当たり0.5〜10質量部含有し、
前記ブラックトナーの断面TEM観察によって測長されるカーボンブラックの平均一次粒径が14〜60nmであることを特徴とするブラックトナー。 - ΔT≧25℃であることを特徴とする請求項1記載のブラックトナー。
- 前記ブラックトナーは、示差走査熱量測定(DSC)における吸熱曲線において、温度30〜200℃の範囲に1個又は複数の吸熱ピークを有し、該吸熱ピーク中の最大吸熱ピークのピーク温度が60〜110℃の範囲にあることを特徴とする請求項1又は2に記載のブラックトナー。
- 前記ブラックトナーは、芳香族カルボン酸誘導体の金属化合物を含有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のブラックトナー。
- 前記芳香族カルボン酸誘導体の金属化合物は、芳香族カルボン酸誘導体のアルミニウム化合物であることを特徴とする請求項4に記載のブラックトナー。
- 前記結着樹脂は、(a)ポリエステル樹脂、(b)ポリエステルユニットとビニル系共重合体ユニットを有しているハイブリッド樹脂、(c)ハイブリッド樹脂とビニル系共重合体との混合物、(d)ポリエステル樹脂とビニル系共重合体との混合物、(e)ハイブリッド樹脂とポリエステル樹脂との混合物からなる群から選択される樹脂であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のブラックトナー。
- 前記ブラックトナーの断面TEM観察によって測長されるカーボンブラックの平均一次粒径が、17〜55nmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のブラックトナー。
- 前記ブラックトナーの断面TEM観察によって測長されるカーボンブラックの平均一次粒径が、20〜50nmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のブラックトナー。
- 前記ブラックトナーの重量平均粒径が、4〜10μmであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のブラックトナー。
- 前記ブラックトナーは多色画像を再現するフルカラー画像形成用のブラックトナーであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のブラックトナー。
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