JP2005004857A - 磁気記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【課題】磁気ヘッドの磨耗を低減化し、かつ走行信頼性の向上を図る。
【解決手段】非磁性支持体1上に、膜厚0.3μm以下の、強磁性粉末8が結合剤中に分散されてなる磁性層2を有し、磁性層2中には、無機粒子に、無機粒子よりも硬度の低いカーボン膜5が被着されてなるカーボン被着粒子6が含有されている磁気記録媒体10を提供する。
【選択図】 図1
【解決手段】非磁性支持体1上に、膜厚0.3μm以下の、強磁性粉末8が結合剤中に分散されてなる磁性層2を有し、磁性層2中には、無機粒子に、無機粒子よりも硬度の低いカーボン膜5が被着されてなるカーボン被着粒子6が含有されている磁気記録媒体10を提供する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種磁気記録媒体に関するものであり、詳しくは走行信頼性に優れ、かつ磁気ヘッド磨耗の低減化を図った磁気記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
オーディオ装置やビデオ装置、各種コンピュータ等に適用する記録メディアとして用いられている磁気記録媒体であって、磁性層が強磁性粉末と結合剤とを含有する塗料を塗布することによって形成される、いわゆる塗布型の磁気記録媒体においては、近年、デジタル記録等により情報量が増大化しているため、さらなる高密度記録化、短波長記録化が進められている。
【0003】
これに伴い、高密度型の磁気記録媒体においては、短波長出力及びC/N特性を向上させるために、磁性層の薄層化、狭トラックピッチ化、及び磁性層表面の平滑化等が検討されている。
【0004】
上述のようにして高密度記録化、短波長記録化が進められると、従来のインダクティブ型の磁気ヘッドでは充分な出力特性が得られなくなる。そこで、より高感度な積層型アモルファス再生ヘッドや磁気抵抗効果型磁気ヘッド(MRヘッド)を搭載した記録再生システムの適用が主流になると考えられている。
【0005】
しかしながら、積層型アモルファス再生ヘッドや磁気抵抗効果型磁気ヘッドのような高感度型の磁気ヘッドは、従来のインダクティブ型の磁気ヘッドよりも軟質の材質が使用されていたり、感磁部が薄膜積層構成となっていたりするため、磁気記録媒体との摺動摩擦における磨耗を回避しなければならないが、一方においては、良好な走行安定性を確保することについても検討しなければばらない。
【0006】
従来においては、所定の膜厚を有する磁性層中に、所定の硬度及び径を有する研磨剤を含有させ、かつ最表面粗度を規定したり、あるいは磁性層の下層としてカーボンブラックを結合剤中に分散させた非磁性層を設け、さらにその上にFe−Al系強磁性金属粉末を含む磁性層を設けたりすることにより、走行安定性の確保と磁気ヘッドの磨耗の低減化を図るという提案がなされていた(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0007】
【特許文献1】
特許第3277289号公報
【特許文献2】
特許第2893267号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、磁気ヘッドの耐磨耗性を向上させ、かつ優れた走行安定性を確保するという、言わば相反する特性を同時に満足することが、磁気記録媒体への要求として高まってきているが、今後主流になると考えられている高感度型の磁気ヘッドに適用する高密度記録型の磁気記録媒体については、未だ充分に満足な磁気記録媒体が得られなかった。
【0009】
そこで本発明においては、積層型アモルファス再生ヘッドや磁気抵抗効果型磁気ヘッド等の、従来のインダクティブ型磁気ヘッドよりも高感度の磁気ヘッドを適用して信号の記録再生を行う磁気記録媒体に関し、磁気ヘッドの低摩耗性を図り、同時に走行信頼性の向上を図ることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明においては、非磁性支持体上に膜厚0.3μm以下の強磁性粉末が結合剤中に分散されてなる磁性層を有し、磁性層中には、無機粒子に、無機粒子よりも硬度の低いカーボンが被着されてなるカーボン被着粒子が含有されている磁気記録媒体を提供する。
【0011】
本発明の磁気記録媒体によれば、高感度型の磁気ヘッドを用いた場合においても、充分なヘッド磨耗の低減化が図られ、長時間走行を行った場合においても出力の低下が抑制され、かつ、走行信頼性の点においても、極めて優れた効果が得られる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の磁気記録媒体について図を参照しながら詳細に説明する。
本発明の一例の磁気記録媒体は、図1に示すように非磁性支持体1の一主面上に記録層を構成する磁性層2が形成されてなり、他の主面にバックコート層3が形成された構成を有している。
なお、図1に示す例においては、記録層を構成する磁性層2が単層構造であるものとするが、本発明の磁気記録媒体は、この例に限定されず、例えば図2に示すように、複数の磁性層を積層形成させたものでもよく、あるいは磁性層2と非磁性支持体1との間に下層非記録層7を介在させた構成としてもよい。
以下、これら各層について説明する。
【0013】
非磁性支持体1は、従来磁気記録媒体用の基体として用いられているものを、いずれも適用することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、セルローストリアセテート、セルロースダイアセテート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等のプラスチック、紙、アルミニウム、銅等の金属、アルミニウム合金、チタン合金等の軽合金、セラミックス、単結晶シリコン等をいずれも適用できる。
非磁性支持体1の形態は、フィルム、テープ、シート、ディスク、カード、ドラム等のいずれでも良い。
【0014】
磁性層2は、強磁性粉末と結合剤とを主成分とする磁性塗料により構成されている。
強磁性粉末としては、いわゆる塗布型の磁気記録媒体に適用されているものをいずれも適用することができ、例えばFe、Co、Ni等の金属、強磁性酸化鉄、窒化鉄、強磁性二酸化クロム、Fe−Co合金粉末、Fe−Al合金粉末、Fe−Al−Ni合金粉末、Fe−Al−Zn合金粉末、Fe−Al−Co合金粉末、Fe−Al−Ca合金粉末、Fe−Ni系合金、Fe−Ni−Al合金粉末、Fe−Ni−Co合金粉末、Fe−Ni−Si−Al−Mn合金粉末、Fe−Ni−Si−Al−Zn合金粉末、Fe−Al−Si合金粉末、Fe−Ni−Zn合金粉末、Fe−Ni−Mn合金粉末、Fe−Ni−Si合金粉末、Fe−Mn−Zn合金粉末、Fe−Co−Ni−P合金粉末等が挙げられる。
強磁性粉末には、酸化安定性、焼結防止、形状安定等を目的として、その他任意の元素や酸化物等を添加してもよい。これら添加元素及び酸化物としては、例えばAl、Y、Si、Ca、La及びこれらの酸化物、α−Fe2O3、γ−Fe2O3、Fe3O4等が挙げられる。
【0015】
結合剤としては、従来、塗布型の磁気記録媒体に用いられているものを、いずれも適用可能であり、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−塩化ビニリデン共重合体、メタクリル酸−塩化ビニリデン共重合体、メタクリル酸エステル−スチレン共重合体、熱可塑性ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリフッ化ビニル、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−メタクリル酸共重合体、ポリビニルブチラール、セルロース誘導体、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化性ポリウレタン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、又はこれらの混合物等が挙げられる。
特に、柔軟性を付与することができるポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体と、剛性を付与することができるセルロース誘導体、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が好ましい。これらはイソシアネート化合物を架橋剤として、より耐久性の向上を図ってもよい。
【0016】
磁性層2を形成する塗料を調製するための溶剤は、従来、磁性塗料調整用の溶剤として公知のものをいずれも適用することができ、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、酢酸グリコールモノエチルエステル等のエステル系溶剤、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサン等のグリコールエーテル系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロロヒドリン、ジクロロベンゼン等の有機塩素化合物系溶剤が挙げられる。
【0017】
磁性塗料には、必要に応じて潤滑剤、帯電防止剤、防錆剤等の各種添加剤を添加してもよい。これら添加剤としては、従来公知のものをいずれも適用することができる。
【0018】
本発明の磁気記録媒体の、記録層を構成する磁性層2には、無機粒子4にカーボン膜5が被着されたカーボン被着粒子6が含有されているものとする。
なお、図2に示すように磁性層2が複数の層が積層された構成を有している場合においては、非磁性支持体1を基準として最も上層に形成されている磁性層2aにカーボン被着粒子6が含有されているものとする。
【0019】
カーボン被着粒子6は、コア部である無機粒子4に、この無機粒子4よりも硬度の低いカーボン膜5が被着された構成を有している。
無機粒子4としては、例えば、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化クロム、酸化セリウム、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム、酸化第2スズ等の各種酸化物、各種窒化物、及び金属単体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
カーボン膜5を構成するカーボンとしては、例えば、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ランプブラック等が挙げられる。これらのカーボンは単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
また、カーボンは分散剤等により表面処理を施したり、樹脂でグラファイト化を施したり、表面の一部をグラファイト化したものを用いてもよい。
【0021】
カーボンは、無機粒子4に対してメカノケミカルに被覆されることが好適である。なお、メカノケミカルとは、ある臨界以上の応力が固体に加わるとき、その作用点付近が局所的に高エネルギー状態となり、原子・分子の配列に乱れが生じ、物性が変化する現象である。この現象を用いてカーボンを処理し、無機粒子4に対して被覆させる。
具体的には、カーボンのストラクチャーをメカノケミカルに解砕してグラファイトの結晶子とし、得られたグラファイトの結晶子を無機粒子4に被覆させる。この被覆処理においては、例えば、高速気流中衝撃装置(奈良機械製作所製商品名:ハイブリタイザー)を適用することができる。
【0022】
カーボン被着粒子6の含有量は、記録量の低下を抑制しつつ、優れた走行信頼性を確保するため、強磁性粉末100重量部に対して、5〜15重量部とすることが好適である。
【0023】
本発明の磁気記録媒体10を、特に磁気テープとして適用する場合においては、磁気ヘッドが磁気記録媒体に直接摺接した状態で信号の記録及び/又は再生が行われるため、走行耐久性及び走行安定性を確保し、同時に磁気ヘッドの磨耗の低減化を図ることが重要である。かかる点に鑑みて、磁性層2の膜厚と、カーボン被着粒子6の平均粒径を制御することとし、カーボン被着粒子6の平均粒径Toとし、カーボン被着粒子6が含有されている磁性層の膜厚をTmとしたとき、0.83Tm≦To≦1.33Tmとなるようにすることにより、高感度型の磁気ヘッドを用いた場合においても、充分な低摩耗性が図られ、長時間走行を行った場合においても、出力の低下が抑制され、かつ走行信頼性についても良好に保つことができることを見出した。
【0024】
図2に示すように、非磁性支持体1と磁性層2との間に介在されている下層非記録層7は、非磁性無機粉末と結合剤とを主成分として形成されているものとする。
非磁性無機粉末としては、従来、磁気記録媒体の塗布型の下地層として公知のものをいずれも適用でき、例えば、α−Fe2O3、TiO2、Cr2O3、α−FeOOH、CaO、SiO2、Al2O3、炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0025】
また、下層非記録層7を形成する結合剤及び塗料調整用の有機溶剤は、上述した磁性層形成用の結合剤及び有機溶剤と同様のものを適用できる。
なお必要に応じて、下層非記録層7には、公知の潤滑剤、分散剤、帯電防止剤、防錆剤等の各種添加剤を添加してもよい。
【0026】
磁性層2及び下層非記録層7を形成するための塗料は、上述した各成分を溶剤とともに混練分散することにより調製する。混練分散方法は、公知の方法を適用でき、例えば連続二軸混練機(エクストルーダー)、コニーダー、加圧ニーダー等を用いる方法が挙げられる。
【0027】
磁性層2及び下層非記録層7は、上述のようにして調整した各塗料を非磁性支持体1上に、順次塗布することにより形成する。例えばグラビアコート、押出コート、エアードクターコート、リバースロールコート等の従来の塗布方法を採用することができる。
また、下層非記録層7及び磁性層2を形成する際には、いわゆるウエット・オン・ドライ方式を用いてもよく、湿潤状態にある下層非記録層7上に磁性層2の塗料を重ねて塗布する、いわゆるウエット・オン・ウエット方式を用いてもよい。
【0028】
また、磁性層2形成面とは反対側の主面に、走行性の向上や帯電防止及び転写防止を図るために、従来公知の材料によりバックコート層3を設けてもよい。
バックコート層3は、結合剤、無機粉末、潤滑剤、帯電防止剤等の各種添加剤、有機溶剤を混合したバックコート層用の塗料を塗布することによって形成される。
【0029】
【実施例】
本発明の磁気記録媒体について、具体的な実施例を挙げて説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0030】
〔実施例1〜9〕、〔比較例1〜11〕
先ず、下記に示す組成から成る磁性塗料を作製した。
【0031】
なお、カーボン被着粒子6においては、コアとなる無機粒子4の重量と同等重量、すなわち重量比1:1としてカーボン膜5が被着されているものとする。
【0032】
上記材料を、ニーダーで混練処理を施し、メチルエチルケトン、トルエン、及びシクロヘキサノンで希釈した後、サンドミル分散し、ポリイソシアネート(日本ポリウレタン製硬化剤「コロネートL」)を4重量部添加し、磁性塗料とした。
【0033】
【0034】
上記の材料をサンドミル分散し、ポリイソシアネート(日本ポリウレタン製硬化剤「コロネートL」)2重量部添加して下層非記録層形成用の塗料を得た。
【0035】
【0036】
上記の材料を分散処理し、ポリイソシアネート(日本ポリウレタン製硬化剤「コロネートL」)10重量部添加してバックコート層形成用の塗料を得た。
【0037】
上述のようにして作製した下層非記録層形成用、磁性層形成用の塗料を、順次非磁性支持体の一主面上に塗布した。なお、実施例8においては、下層非記録層を形成せず、磁性層のみの単層構造とした。
その後、磁場配向処理を行い、適度に乾燥させて巻取りし、カレンダー処理及び硬化処理を施した。
その後、上述のようにして作製したバックコート層用塗料を、磁性層形成面とは反対側の主面に塗布し、バックコート層3を形成した。
【0038】
上述のようにして作製した広幅テープを8.0mmにスリットしたものをサンプル磁気テープとした。
実施例1〜9、及び比較例1〜11の磁気テープの層構造(下層非記録層と磁性層との積層構造とした場合を2層とし、磁性層のみ形成した場合を単層として表す。)、磁性層中の無機粒子の形状及び材質、カーボン膜5の有無、カーボン被着粒子6又は無機粒子の平均粒径To、磁性層2の膜厚Tm、カーボン被着粒子の平均粒径Toと磁性層膜厚Tmとの比(To/Tm)、及びカーボン被着粒子6又は無機粒子の平均粒径Toの含有量を下記表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
実施例1〜9及び比較例1〜11のサンプル磁気テープについて、磁気ヘッド磨耗量測定、走行耐久性測定、及び電磁変換特性測定を行った。各測定方法を下記に示す。
【0041】
〔磁気ヘッド磨耗量測定〕
各磁気テープを120mずつAIT2カートリッジに組み込んだものをサンプルとした。
各サンプルに対し、ソニー社製AIT2ドライブ(SDX−500C)を使用し、25℃、 50%RHの環境下で走行させた。なお、測定に使用したドライブはヘッド磨耗の観察を容易にすべく、所定の改造を施した。
走行は全長走行とし、テープ終端に達した時点で巻き戻しを行い、テープ始端から再び全長走行を繰り返し行った。この繰り返しを各サンプルに対し、延べ1000時間行った後、ドライブの磁気ヘッドの磨耗量を測定した。磨耗量の測定は、レーザー干渉計(光源:波長633nm、He−Neレーザー、分解能は0.1μm)を用い、テープ走行前後における磁気ヘッド高さの差異を磨耗量とした。なお、磁気ヘッド基準点としてヘッド長手端を仮定し、ここからギャップ近傍までの鉛直差異をヘッド高さと定義した。
なお、実施例9においては、再生ヘッドとして磁気抵抗効果型磁気ヘッド(MRヘッド)を適用した。
【0042】
〔走行耐久性測定〕
各磁気テープを120mずつAIT2カートリッジに組み込んだものをサンプルとした。
各サンプルに対し、ソニー社製AIT2ドライブ(SDX−500C)を使用し、25℃、50%RHの環境下で走行させた。なお、測定に使用したドライブは、信号再生出力を観察できるように所定の改造を施した。
走行中は1T〜10Tまでのランダム信号を連続的に記録し、同時に再生ヘッドから読み出される出力を外部に取り出し、オシロスコープにより出力を観察した。サンプルは上記の連続記録を行いつつ、テープ終端まで走行させた時点で巻き戻し、テープ始端から再び上記連続記録を行いつつ全長走行を繰り返した。
この繰り返しを各サンプルに対し延べ24回行った後、25回目走行中の出力を測定した。1回目に観察された出力に対する25回目に観察された出力の減衰量をレベルダウン量とし、dB換算を行った。
【0043】
〔電磁変換特性測定〕
各磁気テープは記録ヘッド(MIG、ギャップ0.15μm)を取り付けた固定電磁変換特性機を用い、短波長特性0.5μm、長波長特性1.0μmの信号を記録後、再生ヘッドに積層アモルファスヘッド(ギャップ0.2μm)を用いて信号再生を行った。
なお、各単一周波数の出力、及び再生された信号から±2MHzのところをノイズレベルとした際のC/N特性を測定した。
また、磁気抵抗効果型磁気ヘッドを用いた場合を実施例9に示す。
比較例7の磁気テープを基準とし、このC/N値を0.0dBとしたときの相対値を示した。
【0044】
磁気ヘッドの磨耗量Hと、走行耐久性測定におけるレベルダウン量Sの評価基準を下記表2に示し、実施例1〜9及び比較例1〜11の磁気テープのC/N、レベルダウン量、磁気ヘッド磨耗量、及び総合評価について、下記表3に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
表1及び表3に示すように、磁性層2にカーボン被着粒子6を含有させた構成を有する実施例1〜5の磁気テープは、いずれもレベルダウン量が少なく、磁気ヘッドの磨耗量も充分に低減化されており、総合的に実用上充分に良好な結果が得られた。
【0048】
一方、磁性層2にカーボン被着粒子6を含有させず、無機粒子単体を含有させた構成を有する比較例1〜5の磁気テープは、出力のレベルダウン量については良好であったが、磁気ヘッドの磨耗量が大きくなってしまい、耐久性に関して実用上満足な結果が得られなかった。
【0049】
実施例1〜9においては、磁性層2の膜厚Tmと、カーボン被着粒子6の平均粒径Toを、0.83Tm≦To≦1.33Tmとなるように制御したものであるが、これらは、出力のレベルダウン量の低減化が図られ、磁気ヘッドの磨耗量についても、実用上充分に少ない範囲に抑えることができた。すなわち、カーボン被着粒子6を使用し、磁性層2の膜厚Tmと、カーボン被着粒子6の平均粒径Toを、0.83Tm≦To≦1.33Tmとなるように制御したことにより、低ヘッド磨耗性及び高信頼走行性を実現可能であることが確認された。
【0050】
一方、比較例6、7、9〜11のように、磁性層の膜厚Tmに対して、無機粒子の平均粒径が小さく、To/Tmが0.83未満であるものは、磁気ヘッドの磨耗量は少なくなり良好な評価結果が得られたが、長時間走行を行うと磁性層の塗膜が削れて磁気ヘッドに付着し、出力のレベルダウン量が大きくなってしまった。
また、比較項8のように、磁性層の膜厚Tmに対して無機粒子の平均粒径が大きく、To/Tmが1.33を超えるものは、長時間走行を行っても出力のレベルダウン量は少なかったが、磁気ヘッドの磨耗量が大きくなってしまい、耐久性の点において実用上の問題があった。
【0051】
また、実施例8に示されているように、非磁性支持体上に磁性層2のみを単層で形成した場合や、実施例9に示されているように、再生用の磁気ヘッドとして高感度型の磁気抵抗効果型磁気ヘッド(MRヘッド)を適用した場合においても、ヘッド磨耗性の低減化が図られ、かつ高い走行信頼性を長時間において維持することが可能であり、総合的レベルで良好な特性を有する磁気記録媒体が得られることが分かった。
【0052】
【発明の効果】
本発明によれば、非磁性支持体上に厚さ0.3μm以下の磁性層を有する磁気記録媒体において、磁性層中に、カーボンを被着した無機粒子を含有させることにより、長時間走行を行った場合においても、磁気ヘッドの磨耗を低減化し、かつ高い走行信頼性の維持が図られることができた。
【0053】
また、磁性層の膜厚Tmとカーボン被着粒子の平均粒径Toを、0.83Tm≦To≦1.33Tmとなるように制御したことにより、従来の誘導型磁気再生ヘッドのみならず、磁気抵抗効果型磁気ヘッドを具備する再生システムにおいて、長時間走行を行った場合においても、出力のレベルダウン量を低減化でき、かつ磁気ヘッドの磨耗量についても、実用上充分に少ない範囲に抑えることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁気記録媒体の一例の概略断面図を示す。
【図2】本発明の磁気記録媒体の他の一例の概略断面図を示す。
【符号の説明】
1……非磁性支持体、2,2a,2b……磁性層、3……バックコート層、4……無機粒子、5……カーボン膜、6……カーボン被着粒子、7……下層非記録層、10……磁気記録媒体
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種磁気記録媒体に関するものであり、詳しくは走行信頼性に優れ、かつ磁気ヘッド磨耗の低減化を図った磁気記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
オーディオ装置やビデオ装置、各種コンピュータ等に適用する記録メディアとして用いられている磁気記録媒体であって、磁性層が強磁性粉末と結合剤とを含有する塗料を塗布することによって形成される、いわゆる塗布型の磁気記録媒体においては、近年、デジタル記録等により情報量が増大化しているため、さらなる高密度記録化、短波長記録化が進められている。
【0003】
これに伴い、高密度型の磁気記録媒体においては、短波長出力及びC/N特性を向上させるために、磁性層の薄層化、狭トラックピッチ化、及び磁性層表面の平滑化等が検討されている。
【0004】
上述のようにして高密度記録化、短波長記録化が進められると、従来のインダクティブ型の磁気ヘッドでは充分な出力特性が得られなくなる。そこで、より高感度な積層型アモルファス再生ヘッドや磁気抵抗効果型磁気ヘッド(MRヘッド)を搭載した記録再生システムの適用が主流になると考えられている。
【0005】
しかしながら、積層型アモルファス再生ヘッドや磁気抵抗効果型磁気ヘッドのような高感度型の磁気ヘッドは、従来のインダクティブ型の磁気ヘッドよりも軟質の材質が使用されていたり、感磁部が薄膜積層構成となっていたりするため、磁気記録媒体との摺動摩擦における磨耗を回避しなければならないが、一方においては、良好な走行安定性を確保することについても検討しなければばらない。
【0006】
従来においては、所定の膜厚を有する磁性層中に、所定の硬度及び径を有する研磨剤を含有させ、かつ最表面粗度を規定したり、あるいは磁性層の下層としてカーボンブラックを結合剤中に分散させた非磁性層を設け、さらにその上にFe−Al系強磁性金属粉末を含む磁性層を設けたりすることにより、走行安定性の確保と磁気ヘッドの磨耗の低減化を図るという提案がなされていた(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0007】
【特許文献1】
特許第3277289号公報
【特許文献2】
特許第2893267号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、磁気ヘッドの耐磨耗性を向上させ、かつ優れた走行安定性を確保するという、言わば相反する特性を同時に満足することが、磁気記録媒体への要求として高まってきているが、今後主流になると考えられている高感度型の磁気ヘッドに適用する高密度記録型の磁気記録媒体については、未だ充分に満足な磁気記録媒体が得られなかった。
【0009】
そこで本発明においては、積層型アモルファス再生ヘッドや磁気抵抗効果型磁気ヘッド等の、従来のインダクティブ型磁気ヘッドよりも高感度の磁気ヘッドを適用して信号の記録再生を行う磁気記録媒体に関し、磁気ヘッドの低摩耗性を図り、同時に走行信頼性の向上を図ることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明においては、非磁性支持体上に膜厚0.3μm以下の強磁性粉末が結合剤中に分散されてなる磁性層を有し、磁性層中には、無機粒子に、無機粒子よりも硬度の低いカーボンが被着されてなるカーボン被着粒子が含有されている磁気記録媒体を提供する。
【0011】
本発明の磁気記録媒体によれば、高感度型の磁気ヘッドを用いた場合においても、充分なヘッド磨耗の低減化が図られ、長時間走行を行った場合においても出力の低下が抑制され、かつ、走行信頼性の点においても、極めて優れた効果が得られる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の磁気記録媒体について図を参照しながら詳細に説明する。
本発明の一例の磁気記録媒体は、図1に示すように非磁性支持体1の一主面上に記録層を構成する磁性層2が形成されてなり、他の主面にバックコート層3が形成された構成を有している。
なお、図1に示す例においては、記録層を構成する磁性層2が単層構造であるものとするが、本発明の磁気記録媒体は、この例に限定されず、例えば図2に示すように、複数の磁性層を積層形成させたものでもよく、あるいは磁性層2と非磁性支持体1との間に下層非記録層7を介在させた構成としてもよい。
以下、これら各層について説明する。
【0013】
非磁性支持体1は、従来磁気記録媒体用の基体として用いられているものを、いずれも適用することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、セルローストリアセテート、セルロースダイアセテート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等のプラスチック、紙、アルミニウム、銅等の金属、アルミニウム合金、チタン合金等の軽合金、セラミックス、単結晶シリコン等をいずれも適用できる。
非磁性支持体1の形態は、フィルム、テープ、シート、ディスク、カード、ドラム等のいずれでも良い。
【0014】
磁性層2は、強磁性粉末と結合剤とを主成分とする磁性塗料により構成されている。
強磁性粉末としては、いわゆる塗布型の磁気記録媒体に適用されているものをいずれも適用することができ、例えばFe、Co、Ni等の金属、強磁性酸化鉄、窒化鉄、強磁性二酸化クロム、Fe−Co合金粉末、Fe−Al合金粉末、Fe−Al−Ni合金粉末、Fe−Al−Zn合金粉末、Fe−Al−Co合金粉末、Fe−Al−Ca合金粉末、Fe−Ni系合金、Fe−Ni−Al合金粉末、Fe−Ni−Co合金粉末、Fe−Ni−Si−Al−Mn合金粉末、Fe−Ni−Si−Al−Zn合金粉末、Fe−Al−Si合金粉末、Fe−Ni−Zn合金粉末、Fe−Ni−Mn合金粉末、Fe−Ni−Si合金粉末、Fe−Mn−Zn合金粉末、Fe−Co−Ni−P合金粉末等が挙げられる。
強磁性粉末には、酸化安定性、焼結防止、形状安定等を目的として、その他任意の元素や酸化物等を添加してもよい。これら添加元素及び酸化物としては、例えばAl、Y、Si、Ca、La及びこれらの酸化物、α−Fe2O3、γ−Fe2O3、Fe3O4等が挙げられる。
【0015】
結合剤としては、従来、塗布型の磁気記録媒体に用いられているものを、いずれも適用可能であり、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−塩化ビニリデン共重合体、メタクリル酸−塩化ビニリデン共重合体、メタクリル酸エステル−スチレン共重合体、熱可塑性ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリフッ化ビニル、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−メタクリル酸共重合体、ポリビニルブチラール、セルロース誘導体、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化性ポリウレタン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、又はこれらの混合物等が挙げられる。
特に、柔軟性を付与することができるポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体と、剛性を付与することができるセルロース誘導体、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が好ましい。これらはイソシアネート化合物を架橋剤として、より耐久性の向上を図ってもよい。
【0016】
磁性層2を形成する塗料を調製するための溶剤は、従来、磁性塗料調整用の溶剤として公知のものをいずれも適用することができ、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、酢酸グリコールモノエチルエステル等のエステル系溶剤、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサン等のグリコールエーテル系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロロヒドリン、ジクロロベンゼン等の有機塩素化合物系溶剤が挙げられる。
【0017】
磁性塗料には、必要に応じて潤滑剤、帯電防止剤、防錆剤等の各種添加剤を添加してもよい。これら添加剤としては、従来公知のものをいずれも適用することができる。
【0018】
本発明の磁気記録媒体の、記録層を構成する磁性層2には、無機粒子4にカーボン膜5が被着されたカーボン被着粒子6が含有されているものとする。
なお、図2に示すように磁性層2が複数の層が積層された構成を有している場合においては、非磁性支持体1を基準として最も上層に形成されている磁性層2aにカーボン被着粒子6が含有されているものとする。
【0019】
カーボン被着粒子6は、コア部である無機粒子4に、この無機粒子4よりも硬度の低いカーボン膜5が被着された構成を有している。
無機粒子4としては、例えば、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化クロム、酸化セリウム、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム、酸化第2スズ等の各種酸化物、各種窒化物、及び金属単体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
カーボン膜5を構成するカーボンとしては、例えば、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ランプブラック等が挙げられる。これらのカーボンは単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
また、カーボンは分散剤等により表面処理を施したり、樹脂でグラファイト化を施したり、表面の一部をグラファイト化したものを用いてもよい。
【0021】
カーボンは、無機粒子4に対してメカノケミカルに被覆されることが好適である。なお、メカノケミカルとは、ある臨界以上の応力が固体に加わるとき、その作用点付近が局所的に高エネルギー状態となり、原子・分子の配列に乱れが生じ、物性が変化する現象である。この現象を用いてカーボンを処理し、無機粒子4に対して被覆させる。
具体的には、カーボンのストラクチャーをメカノケミカルに解砕してグラファイトの結晶子とし、得られたグラファイトの結晶子を無機粒子4に被覆させる。この被覆処理においては、例えば、高速気流中衝撃装置(奈良機械製作所製商品名:ハイブリタイザー)を適用することができる。
【0022】
カーボン被着粒子6の含有量は、記録量の低下を抑制しつつ、優れた走行信頼性を確保するため、強磁性粉末100重量部に対して、5〜15重量部とすることが好適である。
【0023】
本発明の磁気記録媒体10を、特に磁気テープとして適用する場合においては、磁気ヘッドが磁気記録媒体に直接摺接した状態で信号の記録及び/又は再生が行われるため、走行耐久性及び走行安定性を確保し、同時に磁気ヘッドの磨耗の低減化を図ることが重要である。かかる点に鑑みて、磁性層2の膜厚と、カーボン被着粒子6の平均粒径を制御することとし、カーボン被着粒子6の平均粒径Toとし、カーボン被着粒子6が含有されている磁性層の膜厚をTmとしたとき、0.83Tm≦To≦1.33Tmとなるようにすることにより、高感度型の磁気ヘッドを用いた場合においても、充分な低摩耗性が図られ、長時間走行を行った場合においても、出力の低下が抑制され、かつ走行信頼性についても良好に保つことができることを見出した。
【0024】
図2に示すように、非磁性支持体1と磁性層2との間に介在されている下層非記録層7は、非磁性無機粉末と結合剤とを主成分として形成されているものとする。
非磁性無機粉末としては、従来、磁気記録媒体の塗布型の下地層として公知のものをいずれも適用でき、例えば、α−Fe2O3、TiO2、Cr2O3、α−FeOOH、CaO、SiO2、Al2O3、炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0025】
また、下層非記録層7を形成する結合剤及び塗料調整用の有機溶剤は、上述した磁性層形成用の結合剤及び有機溶剤と同様のものを適用できる。
なお必要に応じて、下層非記録層7には、公知の潤滑剤、分散剤、帯電防止剤、防錆剤等の各種添加剤を添加してもよい。
【0026】
磁性層2及び下層非記録層7を形成するための塗料は、上述した各成分を溶剤とともに混練分散することにより調製する。混練分散方法は、公知の方法を適用でき、例えば連続二軸混練機(エクストルーダー)、コニーダー、加圧ニーダー等を用いる方法が挙げられる。
【0027】
磁性層2及び下層非記録層7は、上述のようにして調整した各塗料を非磁性支持体1上に、順次塗布することにより形成する。例えばグラビアコート、押出コート、エアードクターコート、リバースロールコート等の従来の塗布方法を採用することができる。
また、下層非記録層7及び磁性層2を形成する際には、いわゆるウエット・オン・ドライ方式を用いてもよく、湿潤状態にある下層非記録層7上に磁性層2の塗料を重ねて塗布する、いわゆるウエット・オン・ウエット方式を用いてもよい。
【0028】
また、磁性層2形成面とは反対側の主面に、走行性の向上や帯電防止及び転写防止を図るために、従来公知の材料によりバックコート層3を設けてもよい。
バックコート層3は、結合剤、無機粉末、潤滑剤、帯電防止剤等の各種添加剤、有機溶剤を混合したバックコート層用の塗料を塗布することによって形成される。
【0029】
【実施例】
本発明の磁気記録媒体について、具体的な実施例を挙げて説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0030】
〔実施例1〜9〕、〔比較例1〜11〕
先ず、下記に示す組成から成る磁性塗料を作製した。
【0031】
なお、カーボン被着粒子6においては、コアとなる無機粒子4の重量と同等重量、すなわち重量比1:1としてカーボン膜5が被着されているものとする。
【0032】
上記材料を、ニーダーで混練処理を施し、メチルエチルケトン、トルエン、及びシクロヘキサノンで希釈した後、サンドミル分散し、ポリイソシアネート(日本ポリウレタン製硬化剤「コロネートL」)を4重量部添加し、磁性塗料とした。
【0033】
【0034】
上記の材料をサンドミル分散し、ポリイソシアネート(日本ポリウレタン製硬化剤「コロネートL」)2重量部添加して下層非記録層形成用の塗料を得た。
【0035】
【0036】
上記の材料を分散処理し、ポリイソシアネート(日本ポリウレタン製硬化剤「コロネートL」)10重量部添加してバックコート層形成用の塗料を得た。
【0037】
上述のようにして作製した下層非記録層形成用、磁性層形成用の塗料を、順次非磁性支持体の一主面上に塗布した。なお、実施例8においては、下層非記録層を形成せず、磁性層のみの単層構造とした。
その後、磁場配向処理を行い、適度に乾燥させて巻取りし、カレンダー処理及び硬化処理を施した。
その後、上述のようにして作製したバックコート層用塗料を、磁性層形成面とは反対側の主面に塗布し、バックコート層3を形成した。
【0038】
上述のようにして作製した広幅テープを8.0mmにスリットしたものをサンプル磁気テープとした。
実施例1〜9、及び比較例1〜11の磁気テープの層構造(下層非記録層と磁性層との積層構造とした場合を2層とし、磁性層のみ形成した場合を単層として表す。)、磁性層中の無機粒子の形状及び材質、カーボン膜5の有無、カーボン被着粒子6又は無機粒子の平均粒径To、磁性層2の膜厚Tm、カーボン被着粒子の平均粒径Toと磁性層膜厚Tmとの比(To/Tm)、及びカーボン被着粒子6又は無機粒子の平均粒径Toの含有量を下記表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
実施例1〜9及び比較例1〜11のサンプル磁気テープについて、磁気ヘッド磨耗量測定、走行耐久性測定、及び電磁変換特性測定を行った。各測定方法を下記に示す。
【0041】
〔磁気ヘッド磨耗量測定〕
各磁気テープを120mずつAIT2カートリッジに組み込んだものをサンプルとした。
各サンプルに対し、ソニー社製AIT2ドライブ(SDX−500C)を使用し、25℃、 50%RHの環境下で走行させた。なお、測定に使用したドライブはヘッド磨耗の観察を容易にすべく、所定の改造を施した。
走行は全長走行とし、テープ終端に達した時点で巻き戻しを行い、テープ始端から再び全長走行を繰り返し行った。この繰り返しを各サンプルに対し、延べ1000時間行った後、ドライブの磁気ヘッドの磨耗量を測定した。磨耗量の測定は、レーザー干渉計(光源:波長633nm、He−Neレーザー、分解能は0.1μm)を用い、テープ走行前後における磁気ヘッド高さの差異を磨耗量とした。なお、磁気ヘッド基準点としてヘッド長手端を仮定し、ここからギャップ近傍までの鉛直差異をヘッド高さと定義した。
なお、実施例9においては、再生ヘッドとして磁気抵抗効果型磁気ヘッド(MRヘッド)を適用した。
【0042】
〔走行耐久性測定〕
各磁気テープを120mずつAIT2カートリッジに組み込んだものをサンプルとした。
各サンプルに対し、ソニー社製AIT2ドライブ(SDX−500C)を使用し、25℃、50%RHの環境下で走行させた。なお、測定に使用したドライブは、信号再生出力を観察できるように所定の改造を施した。
走行中は1T〜10Tまでのランダム信号を連続的に記録し、同時に再生ヘッドから読み出される出力を外部に取り出し、オシロスコープにより出力を観察した。サンプルは上記の連続記録を行いつつ、テープ終端まで走行させた時点で巻き戻し、テープ始端から再び上記連続記録を行いつつ全長走行を繰り返した。
この繰り返しを各サンプルに対し延べ24回行った後、25回目走行中の出力を測定した。1回目に観察された出力に対する25回目に観察された出力の減衰量をレベルダウン量とし、dB換算を行った。
【0043】
〔電磁変換特性測定〕
各磁気テープは記録ヘッド(MIG、ギャップ0.15μm)を取り付けた固定電磁変換特性機を用い、短波長特性0.5μm、長波長特性1.0μmの信号を記録後、再生ヘッドに積層アモルファスヘッド(ギャップ0.2μm)を用いて信号再生を行った。
なお、各単一周波数の出力、及び再生された信号から±2MHzのところをノイズレベルとした際のC/N特性を測定した。
また、磁気抵抗効果型磁気ヘッドを用いた場合を実施例9に示す。
比較例7の磁気テープを基準とし、このC/N値を0.0dBとしたときの相対値を示した。
【0044】
磁気ヘッドの磨耗量Hと、走行耐久性測定におけるレベルダウン量Sの評価基準を下記表2に示し、実施例1〜9及び比較例1〜11の磁気テープのC/N、レベルダウン量、磁気ヘッド磨耗量、及び総合評価について、下記表3に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
表1及び表3に示すように、磁性層2にカーボン被着粒子6を含有させた構成を有する実施例1〜5の磁気テープは、いずれもレベルダウン量が少なく、磁気ヘッドの磨耗量も充分に低減化されており、総合的に実用上充分に良好な結果が得られた。
【0048】
一方、磁性層2にカーボン被着粒子6を含有させず、無機粒子単体を含有させた構成を有する比較例1〜5の磁気テープは、出力のレベルダウン量については良好であったが、磁気ヘッドの磨耗量が大きくなってしまい、耐久性に関して実用上満足な結果が得られなかった。
【0049】
実施例1〜9においては、磁性層2の膜厚Tmと、カーボン被着粒子6の平均粒径Toを、0.83Tm≦To≦1.33Tmとなるように制御したものであるが、これらは、出力のレベルダウン量の低減化が図られ、磁気ヘッドの磨耗量についても、実用上充分に少ない範囲に抑えることができた。すなわち、カーボン被着粒子6を使用し、磁性層2の膜厚Tmと、カーボン被着粒子6の平均粒径Toを、0.83Tm≦To≦1.33Tmとなるように制御したことにより、低ヘッド磨耗性及び高信頼走行性を実現可能であることが確認された。
【0050】
一方、比較例6、7、9〜11のように、磁性層の膜厚Tmに対して、無機粒子の平均粒径が小さく、To/Tmが0.83未満であるものは、磁気ヘッドの磨耗量は少なくなり良好な評価結果が得られたが、長時間走行を行うと磁性層の塗膜が削れて磁気ヘッドに付着し、出力のレベルダウン量が大きくなってしまった。
また、比較項8のように、磁性層の膜厚Tmに対して無機粒子の平均粒径が大きく、To/Tmが1.33を超えるものは、長時間走行を行っても出力のレベルダウン量は少なかったが、磁気ヘッドの磨耗量が大きくなってしまい、耐久性の点において実用上の問題があった。
【0051】
また、実施例8に示されているように、非磁性支持体上に磁性層2のみを単層で形成した場合や、実施例9に示されているように、再生用の磁気ヘッドとして高感度型の磁気抵抗効果型磁気ヘッド(MRヘッド)を適用した場合においても、ヘッド磨耗性の低減化が図られ、かつ高い走行信頼性を長時間において維持することが可能であり、総合的レベルで良好な特性を有する磁気記録媒体が得られることが分かった。
【0052】
【発明の効果】
本発明によれば、非磁性支持体上に厚さ0.3μm以下の磁性層を有する磁気記録媒体において、磁性層中に、カーボンを被着した無機粒子を含有させることにより、長時間走行を行った場合においても、磁気ヘッドの磨耗を低減化し、かつ高い走行信頼性の維持が図られることができた。
【0053】
また、磁性層の膜厚Tmとカーボン被着粒子の平均粒径Toを、0.83Tm≦To≦1.33Tmとなるように制御したことにより、従来の誘導型磁気再生ヘッドのみならず、磁気抵抗効果型磁気ヘッドを具備する再生システムにおいて、長時間走行を行った場合においても、出力のレベルダウン量を低減化でき、かつ磁気ヘッドの磨耗量についても、実用上充分に少ない範囲に抑えることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁気記録媒体の一例の概略断面図を示す。
【図2】本発明の磁気記録媒体の他の一例の概略断面図を示す。
【符号の説明】
1……非磁性支持体、2,2a,2b……磁性層、3……バックコート層、4……無機粒子、5……カーボン膜、6……カーボン被着粒子、7……下層非記録層、10……磁気記録媒体
Claims (4)
- 非磁性支持体上に、膜厚0.3μm以下の、強磁性粉末が結合剤中に分散されてなる磁性層を有する磁気記録媒体であって、
上記磁性層には、無機粒子に、当該無機粒子よりも硬度の低いカーボンが被着されてなるカーボン被着粒子が含有されていることを特徴とする磁気記録媒体。 - 上記磁性層が、二層以上の積層構成を有してなり、
上記非磁性支持体を基準として最上層に成膜されている磁性層に、上記カーボン被着粒子が含有されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。 - 上記カーボン被着粒子の平均粒径Toとし、上記磁性層の膜厚をTmとしたとき、0.83Tm≦To≦1.33Tmであることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
- 磁気抵抗効果型磁気ヘッドを用いて、記録信号の再生が行われることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
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-
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