JP2004528341A - 脂肪酸合成酵素の阻害による色素形成の阻害 - Google Patents
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Abstract
本発明はメラノサイトにおける脂肪酸合成を阻害することでメラニン産生を減少させ、それにより皮膚色素形成を美白化するように設計された新規の方法および医薬品組成物を提供する。
【選択図】図1
【選択図】図1
Description
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学、薬理学、生化学および細胞生物学の分野に関する。より詳細には、本発明は皮膚科学および化粧品の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
メラニンは紫外線を防ぎ、動物の皮膚、眼、毛および下毛に装飾を施す、植物および動物に見いだされる黒色の色素である(Riley(1997年)、Int.J.Biochem.Cell Biol.11巻、1235〜39ページに概説されている)。メラノサイトはメラニン産生に特殊化した表皮細胞であり、そしてメラニンには2つの型、すなわち、褐/黒色のユーメラニンと黄/赤色のフェオメラニンがある。精緻な細胞間シグナル伝達系が、個々のメラノサイトがユーメラニンまたはフェオメラニンのどちらを産生するかを決定している(BrillantとBrashにより、色素システム:生理学と病理生理学(The Pigmentary System: Physiology and Pathophysiology)、Nordlundら編集(1998年)オックスフォード大学、ニューヨーク、217〜229ページに概説されている)。
【0003】
メラノサイトはメラノソームと呼ばれる特殊化した細胞内器官の内部でメラニンを合成する(Orlowにより色素システム:生理学と病理生理学(The Pigmentary System: Physiology and Pathophysiology)、Nordlundら編集(1998年)オックスフォード大学、ニューヨーク、97〜106ページに概説されている)。これら細胞内器官は2つのタイプの小胞が融合して形成される。一方のタイプの小胞はプレメラノソームと呼ばれ、滑面小胞体またはトランスゴルジネットワークかに直接由来するらしい。他方のタイプの小胞はトランスゴルジネットワークに由来する。これらのタイプの小胞はそれぞれ、メラノソームの機能に必要なタンパク質をメラノソームに与える。
【0004】
あらゆる年齢の多くの個体にとって、メラニンの不適切な産生または過剰産生は重大な美容上の問題である。例えば多くの子供が日光を浴びた後にそばかすをつくり、そして中年または高齢者では日焼け後のしみ、そばかす、そして色素沈着を起こすかまたはその頻度が高くなる傾向にある。さらにこれらの色素沈着は直ぐには消えず、年齢が高くなるほど永久化しやすくなる。
【0005】
皮膚の色素形成を減少させる効果を持つ生成物が数多く開発されている。このような生成物の一つは皮膚の脱色に関し周知の活性物質であるヒドロキノンを含んでいる(例えば米国特許第6,139,854号(発明者:Kawatoら、2000年10月31日発行)を参照)。しかしヒドロキノンは、長期間使用すると深刻な副作用を起こすことがある。例えばヒドロキノンを皮膚に使用した場合、永久的な色素脱失を起こし、そのために紫外線曝露時の皮膚の光感受性が高くなることがある。この様な理由から幾つかの国では、皮膚脱色に関してヒドロキノンは限定濃度での使用が許可されているだけであり、その他の国ではこの目的でのこの生成物の使用は完全に禁止されている。
【0006】
その他、様々な物質が皮膚の色素形成の制御または阻害に関し提案されている。これら物質のほとんど全てのものが、既存の色素を漂白するか、またはメラニン産生の主要な律速酵素であるチロシナーゼの活性を阻害することにより新規の色素合成を阻止することにより機能する。例えば米国特許第6,123,959号(発明者:Jonesら、2000年9月26日発行)は、リン脂質のリポソーム、およびメラニン合成酵素の少なくとも1種類の競合的阻害剤とを含む水性組成物と、メラニン合成酵素の少なくとも1種類の非競合的阻害剤との組み合わせ用途について記載している。米国特許第6,132,740号(発明者:Lan Hu、2000年10月17日発行)は皮膚美白剤としてのある種のレゾルシノール誘導体の用途を記載している。国際出願公開WO9964025A1(出願人:Fytokem Products Inc.、1999年12月16日公開)はカナダ原産の双子葉植物種由来のチロシナーゼ阻害抽出物を含む皮膚美白用組成物を記載している。米国特許第5,580,549号(発明者:Fukudaら、1996年12月3日発行)はチロシナーゼ阻害剤として2−ヒドロキシ安息香酸誘導体とその塩を含む皮膚美白用外用剤を記載している。国際出願公開WO9909011A1(出願人:Ostuka Pharmaceutical Co.,Ltd.、1999年2月25日公開)は、少なくとも1種類のカルボスチリル誘導体、およびその塩を含む、皮膚紅班および/または皮膚色素形成を阻害するための作用物質を記載している。米国特許第5,214,028号(発明者:Tomitaら、1993年5月25日発行)および米国特許第5,389,611号(発明者:Tomitaら、1995年2月14日発行)はラクトフェリン水解物のチロシナーゼ阻害作用物質としての用途を記載している。
皮膚を美白化するこれらおよびその他組成物の開発にもかかわらず、当技術分野では皮膚の漂白に関しより毒性が低く、より安全な代替物、およびメラニン産生をより効果的、且つ効率的に阻害する方法の開発が今も求められている。皮膚を美白化するための新規方法および改良方法に対する需要は、皮膚美白剤の世界市場が優に年間10億ドルを越えるという化粧品産業の見積もりから明らかである。このように皮膚での色素形成を制限または阻害する改良型作用物質の開発が今も望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
驚くべきことに、脂肪酸生合成を阻害する各種作用物質がメラニン産生阻害に有益であることが発見された。より詳細には、脂肪酸合成酵素(FAS)を阻害できる作用物質は同時にメラノサイト内でのメラニン産生も阻害することが確認された。これら発見を利用して本発明が提供されているが、本発明は皮膚での色素形成を減少させることに有益な方法および医薬品組成物を包含している。
【0008】
一態様では、本発明はメラノサイトに於けるメラニン合成を減少させる方法を提供する。この方法はメラノサイトをFAS阻害剤と接触させ、それによりメラノサイト内のメラニン合成を低減することを含む。
【0009】
別の態様では、本発明は皮膚を美白化する方法を提供する。この方法はそれを必要とする患者の皮膚を皮膚美白有効量のFAS阻害剤と接触させ、それによりメラニン合成を低減または阻害し、そしてそれにより皮膚を美白化することを含む。
【0010】
本発明はまた別の態様において皮膚を美白化するための組成物を提供する。この組成物は皮膚美白有効量のFAS阻害剤および薬学的に許容し得る担体を含む。
【0011】
別の態様では本発明はさらにFAS活性を阻害する皮膚美白有効量の化合物を含む組成物の入った容器を備えたキットを提供する。一実施形態では、キットはさらに皮膚を美白化する医薬品組成物の使用について指示するラベルまたは添付文書として印刷された取扱説明書を含む。
【0012】
別の態様では、本発明は皮膚美白有効量のFAS阻害剤と薬学的に許容し得る担体とを組み合わせることを含む皮膚美白用医薬品組成物の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
幾つかの実施形態では、FAS阻害剤は、セルレニンおよびセルレニン類似体から成るグループより選択されるが、これには薬学的に許容し得るその塩およびその溶媒化合物が包含される。これに関し用いられる場合、用語「類似体」はセルレニンと構造的に関連しており、そして少なくとも測定可能量のFAS阻害活性を保持している化合物を意味する。セルレニン類似体の非限定的な例としては、Morisakiら(1992年)Chem.Pharm.Bull.40巻、2945〜2953ページ、Shimazawaら(1992年)Chem.Pharm.Bull.40巻、2954〜2957ページおよび米国特許第5,539,132号(発明者:Royerら、1996年7月23日発行)に記載のセルレニン類似体が挙げられる。セルレニンはシグマ社(Sigma)(セントルイス、ミズーリ州)より購入できるだろう。
【0014】
幾つかの実施形態では、FAS阻害剤はα−メチレン−γ−ブチロラクトンおよびα−メチレン−γ−ブチロラクトン類似体より成るグループから選択されるが、これには薬学的に許容し得るその塩および溶媒化合物が包含される。これに関し用いる場合、用語「類似体」はそれぞれのα−メチレン−γ−ブチロラクトンと構造的に関連しており、そして少なくとも測定可能量のFAS阻害活性を保持している化合物を意味する。α−メチレン−γ−ブチロラクトン類似体の非限定的な例としては、米国特許第5,981,575号(発明者:Kuhajdaら、1999年11月9日発行)に記載のものが挙げられる。α−メチレン−γ−ブチロラクトンはシグマ社(Sigma)(セントルイス、ミズーリ州)より購入できるだろう。
【0015】
幾つかの実施形態では、FAS阻害剤はチオラクトマイシンおよびチオラクトマイシン類似体より成るグループから選択されるが、これには薬学的に許容し得るその塩および溶媒化合物が包含される。これに関し用いる場合、用語「類似体」はチオラクトマイシンと構造的に関連しており、そして少なくとも測定可能量のFAS阻害活性を保持している化合物を意味する。そのチオラクトマイシン類似体の非限定的な例としては、Wangら(1984年)Tetrahdron Lett.25巻、5243〜5246ページ、Oishiら(1982年)J.Antibiotics 35巻、391〜395ページ(そこに開示されたATCC株番号31319)およびKremerら(2000年)J.Bio.Chem.275巻、16857〜16864ページに記載されている。
【0016】
別の実施形態では、FAS阻害剤はトリクロサンまたはその類似体である。トリクロサンはI型脂肪酸合成酵素のエノイル還元酵素を阻害することが知られている。別の実施形態では、FAS阻害剤は4−フェニル−5−フェニルイミノ−[1,2,4]ジチアゾリジン−3−オン)または5−クロロ−4−フェニル−[1,2]−ジチオール−3−オン)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本明細書において参照される特許および科学文献は、当業者にとって利用可能な知識を確認する。本明細書に引用されている発行済み特許、出願、参考文献は、それぞれが明確且つ個別的に参照により援用されるように指示されているかのごとく参照により本明細書に援用される。
【0018】
本発明は脂肪酸合成酵素(FAS)の活性を阻害する作用物質の使用を含むメラニン産生および皮膚への色素沈着を阻害するための方法および医薬品組成物を提供する。
【0019】
FAS(E.C.2.3.1.85)はヒトに於ける脂肪酸生合成経路を構成する4種類の主要酵素の一つである。脂肪酸生合成経路の構成要素には次のものが含まれる:マロニルCoAを合成する律速酵素であるアセチルCoAカルボキシラーゼ;NADPHを産生するリンゴ酸酵素;アセチルCoAを合成するクエン酸リアーゼ;およびアセチルCoAとマロニルCoAから脂肪酸へのNADPH依存的合成を触媒するFAS。FAS活性の最終産物である遊離脂肪酸は、他の産物への取込みに関して補酵素Aによる別の酵素的誘導が必要である。高等生物では、FASは単一分子に対し次の7種類の酵素機能を発揮することがよく知られている多機能酵素である:アセチルトランスアシラーゼ、マロニルトランスアシラーゼ、β−ケトアシル合成酵素(濃縮酵素)、β−ヒドロキシアシル還元酵素、β−ヒドロキシアシルデヒドラーゼ、エノイル還元酵素、およびチオエステラーゼ(Wakil(1989年)Biochem.28巻、4523〜4530ページ参照)。
【0020】
本発明はFASの活性の阻害がメラノサイト内でのメラニン産生の減少をもたらすという発見を利用するものである。当技術分野ではコレステロール合成とメラニン産生との間の結びつきが注目されている(米国特許第6,126,947号(発明者:Savionら、2000年10月3日発行))。また脂肪酸が遊離コレステロールの細胞内エステル化にとって必要な基質であることも知られている。さらに脂肪酸がチロシナーゼのタンパク質分解性の分解を修飾し、メラノーマでのメラニン形成に抑制的な効果を発揮することも知られている(Andoら(1999年)J.Lipid Res.10巻、1312〜1316ページ)。しかしこれまで脂肪酸生合成経路がメラニン形成に影響を及ぼすことができるということは知られていなかった。
【0021】
それ故に一態様では、本発明はメラノサイトに於けるFASの阻害を介したメラノサイト内のメラニン産生を減少させる方法を提供する。
【0022】
本明細書では用語「メラニン産生を減少させる」は、FASを阻害する化合物に曝露されたメラノサイトが新たに合成するメラニンの量が、未処理の対照メラノサイトが新たに合成するメラニン量に比べ検知可能なほど低下することを意味する。好ましくは、用語「低下する」は新たに合成されたメラニン量が約10%ないし約100%減少することを意味する。より好ましくは用語「低下する」とは新たに合成されたメラニンの量が約25%ないし約100%減少することを表す。最も好ましくは、用語「低下する」は新たに合成されたメラニンの量が約50%ないし約100%減少することを表す。
【0023】
句「FASの活性を阻害する」は本明細書ではFAS活性の約10%ないし約100%の減少を表すのに用いられる。より好ましくは、用語「FASの活性を阻害する」はFAS活性の約25%ないし約100%の減少を表し、最も好ましくはFAS活性の約50%ないし約100%の減少を表す。本発明はFAS活性に必要とされる上記7種類の酵素段階の任意のもの、およびいかなる固有の段階または過程を介したFASの阻害をも想定している。FAS活性の減少または変化は、NADPHの酸化に基づく分光測光法、またはアセチルもしくはマロニルCoAの様なFAS基質内への放射活性もしくはその他標識体の取込みを含む方法を包含するいかなる既知の方法によって測定することも可能である(Dilsら(1975年)Meth.Enzymol.35巻、74〜83ページ)が、これら方法に限定されない。
【0024】
用語「約」は本明細書ではおおよそ、ほぼ、大まかまたは前後を意味するのに用いられる。用語「約」をある数値範囲と共に用いる時は、その境界を記載されている数値の上下に拡張してその範囲を緩和する。一般に本明細書では用語「約」は数値を記載されている数値の上下、偏差20%まで緩和することを意味する。
【0025】
「FASの阻害剤」には競合的および非競合的FAS阻害剤が包含される。競合的FAS阻害剤は相互に基質結合を排除する形でFAS酵素に結合する分子である。通常、FASの競合的阻害剤は活性部位に結合する。非競合的FAS阻害剤はFASの合成を阻害するものであってもよいが、その酵素への結合は基質結合に関し相互に排除的ではない。本発明で想定するFAS阻害剤は、少なくとも同程度の濃度において他の細胞活動にいかなる重大な影響をも及ぼすことなく動物細胞内のFASの活性を低減する化合物である。
【0026】
様々な化合物がFASを阻害することが分かっており、本発明での使用に関し好適であるFAS阻害剤を選択することは当業者の技術範囲内である。FASを阻害する化合物は、精製FAS酵素を用いてその化合物の脂肪酸合成酵素活性阻害能力を試験することで同定できる。例えばFAS合成酵素の活性は、NADPHの酸化に基づく分光測光法により、または放射線標識されたアセチルもしくはマロニルCoAの取込を測定することで放射活性的に測定できる。(Dilsら(1975年)Meth.Enzymol.35巻、74〜83ページ)。FAS阻害剤は、例えば国際特許出願公開WO94/02108号(出願人:The Johns Hopkins University、1994年2月3日公開)に例示されている。好適なFAS阻害剤はまた、FAS阻害剤への曝露が細胞毒である腫瘍細胞株を用いる簡単な試験でも同定できるだろう。この様な細胞株にはZR−75−1(ATCC番号CRL−1500)および好ましくはHL60(ATCC番号CCL−240)(アメリカン・タイプ・ティシュ・コレクション(ATCC)、マナサス、バージニア州)が挙げられる。好適なFAS阻害剤はこれら細胞株の増殖を阻害するが、細胞はFAS酵素の脂肪酸産物を外部から供給することで救済される。細胞増殖を外因性の脂肪酸(例えばパルミチン酸塩またはオレイン酸塩)がある状態と無い状態で測定する時、特異的FAS阻害剤による阻害はこれら脂肪酸により解除される。
【0027】
非限定的に例示すると、セルレニンは本発明の方法に有益な非競合的FAS阻害剤の1つである。構造的にはセルレニンは[2R,3S]−2,3−エポキシ−4−オキソ−7,10−trans,trans−ドデカン酸アミドとして特徴づけられる。セルレニンは元来潜在的な抗菌性抗生物質としてセファロスポリウム・カエルレンス(Cephalosporium caerulens)の培養液から単離された。その作用機序は、不可逆的な結合を介した、脂肪酸生合成に必要な濃縮酵素であるβ−ケトアシル−ACP合成酵素の阻害であることが示されている(D’Agnoloら(1973年)Biochim.Biophys.Acta 326巻、155〜166ページ)。セルレニンは抗菌剤、主にカンジダおよびサッカロミセス種に対する抗菌剤に分類されている。
【0028】
幾つかの実施形態では、FAS阻害剤はセルレニンおよびセルレニン類似体から成るグループから選択されるが、それには薬学的に許容し得るその塩および溶媒化合物が含まれる。本明細書内で使用される場合、用語「類似体」は、セルレニンと構造的に関連しており、そして少なくとも測定可能量のFAS阻害活性を保持している化合物を意味する。セルレニンおよびセルレニン類似体の非限定的な例としては、Morisakiら(1992年)Chem.Pharm.Bull.40巻、2945〜2953ページ、Shimazawaら(1992年)Chem.Pharm.Bull.40巻、2954〜2957ページ、および米国特許第5,539,132号(発明者:Royerら、1996年7月23日発行)に記載のものが挙げられる。あるいは、セルレニンはシグマ社(Sigma)(セントルイス、ミズーリ州)より購入してもよい。
【0029】
幾つかの実施形態では、FAS阻害剤はα−メチレン−γ−ブチロラクトンおよびα−メチレン−γ−ブチロラクトン類似体より成るグループから選択されるが、これには薬学的に許容し得るその塩および溶媒化合物が包含される。本明細書内で使用される場合、用語「類似体」はそれぞれのα−メチレン−γ−ブチロラクトンと構造的に関連しており、そして少なくとも測定可能量のFAS阻害活性を保持している化合物を意味する。α−メチレン−γ−ブチロラクトン類似体の非限定的な例としては、米国特許第5,981,575号(発明者:Kuhajdaら、1999年11月9日発行)に記載のものが挙げられる。別法として、α−メチレン−γ−ブチロラクトンはシグマ社(Sigma)(セントルイス、ミズーリ州)より購入できるだろう。
【0030】
幾つかの実施形態では、FAS阻害剤はチオラクトマイシンおよびチオラクトマイシン類似体より成るグループから選択されるが、これには薬学的に許容し得るその塩および溶媒化合物が包含される。これに関し用いる場合、用語「類似体」はチオラクトマイシンと構造的に関連しており、そして少なくとも測定可能量のFAS阻害活性を保持している化合物を意味する。チオラクトマイシンおよびその類似体の非限定的な例としては、Wangら(1984年)Tetrahdron Lett.25巻、5243〜5246ページ、Oishiら(1982年)J.Antibiotics 35巻、391〜395ページ(そこで開示されたATCC株番号31319)およびKremerら(2000年)、J.Bio.Chem.275巻、16857〜16864ページに記載されている。
【0031】
別の実施形態では、FAS阻害剤はトリクロサンまたはその類似体である。トリクロサンはI型脂肪酸合成酵素のエノイル還元酵素を阻害することが知られている(Luiら、Cancer Chemother.Pharmacol.49巻、187〜193ページ(2002年))。別の実施形態では、FAS阻害剤は4−フェニル−5−フェニルイミノ−[1,2,4]ジチアゾリジン−3−オン)または5−クロロ−4−フェニル−[1,2]−ジチオール−3−オン)である(Heら、Antimicorbial Agents and Chemotherapy 46巻、1310〜1318ページ(2002年))。
【0032】
好適なFAS阻害剤は高い治療指数により特徴づけてもよい。例えば阻害剤は細胞培養体中の脂肪酸合成を50%阻害するのに必要な濃度(IC50またはID50)で特徴付けできる。高い治療指数を持つFAS阻害剤は外因性の脂肪酸存在下で、細胞増殖阻害のIC50より低い濃度で(IC50により測定した時)脂肪酸合成を阻害するだろう。これら2種類の細胞活動に及ぼす作用の違いが大きい阻害剤ほどより好ましい。脂肪酸合成の好ましい阻害剤は、細胞増殖について決定された阻害剤のIC50に比べ少なくとも一対数、より好ましくは少なくとも2対数、そしてさらに好ましくは少なくとも3対数低い脂肪酸合成活性に関するIC50を持つだろう。
【0033】
FAS阻害剤が本発明の方法において有益であるかどうかを決定する別の方法は、メラニン形成の低減を証明できる当業者既知のアッセイを用いる方法である。例えば下記実施例1に記載の様に、培養したメラノサイトを提案されるFAS阻害剤試験化合物とインキュベーションし、メラニン含有量を、例えば分光測光的に試験できる。つぎにこのメラニン含有量を未処理の培養メラノサイトのメラニン含有量と比較して、このFAS阻害剤がメラニン形成を阻害するかどうかを決定する。
【0034】
非限定的な例では、メラニン形成はヒト初代メラノサイトでアッセイしてもよい。簡単に述べると、試験化合物をα−メラノサイト刺激ホルモン(α−MSH)存在下にヒト初代メラノサイトと2〜3日間インキュベーションする。次に細胞を水酸化ナトリウムとドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を用い溶解し、メラニンシグナルを405nmで分光測光法により読み取る。あるいは14C−DOPAを試験化合物と一緒に細胞に添加し、シンチレーションカウンターで酸不溶性の14C−メラニンを定量してもよい。計算されたIC50値はα−MSHで刺激を受けた新規メラニン合成における化合物の阻害能を反映する。メラニン形成アッセイはヒトの皮膚を使った同等モデルでも実施できる。簡単に述べると、ヒトメラノサイトとケラチノサイトの混合物を空気−液体界面内で増殖させる。この組織培養体は組織学的および顕微鏡的にヒト皮膚上皮に似た3次元構造を形成する。試験化合物をこの細胞の上に加え、薬物の局所適用を模する。化合物とインキュベーションした後、細胞をよく洗い、溶解してDOPAオキシダーゼアッセイにかける。
【0035】
メラニン形成はインビボでも検証できる。簡単に述べると、このタイプの試験には皮膚の色が均一な黒または濃褐色であるモルモットが使用できる。試験化合物溶液(例えばエタノール:プロピレングリコール、70:30の1〜5%溶液)および賦形剤コントロールをこの動物の皮膚に1日2回、1週間に5日で4〜8週間作用させる。このアッセイを用い、例えば皮膚の色素脱失が観察できる。
【0036】
米国特許第5,759,837号(発明者:Kuhajdaら、1998年6月2日発行)に詳述されている様に、本発明にとって有益なFASのその他非限定的な阻害剤例としては、1,3−ジブロモプロパノン、エルマン試薬[5,5′−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸),DTNB]、4−(4′−クロロベンジルオキシ)ベンジルニコチン酸塩(KCD−232)、4−(4′−クロロベンジルオキシ)安息香酸(MII)、2[5(4−クロロフェニル)ペンチル]オキシラン−2−カルボン酸塩(POCA)およびそのCoA誘導体、無水エトキシ蟻酸塩、チオラクトマイシン、フェニルセルレニン、メラルソプロール、ヨード酢酸塩、ペントスタム、メリチン、メチルマロニルCoA、ならびにそれらのFAS−阻害類似体が挙げられる。
【0037】
本発明はまた上記いずれかの化合物の薬学的に許容し得る酸付加塩および塩基性塩の利用に関する。本発明の上記塩基化合部の薬学的に許容し得る酸付加塩の調製に用いられる酸は、非毒性の酸付加塩、即ち薬学的に許容し得るアニオンを含有する塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、重酒石酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、糖酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩およびパモ酸塩(即ち1,1−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸塩)のような塩を形成する酸である。
【0038】
本質的に塩基性である、本発明による有用化合物は、様々な無機および有機酸と極めて多様な塩を形成できる。このような塩は動物への投与が薬学的に許容し得るものでなければならないが、実際には薬学的に許容し得ない塩である反応混合物からまず化合物を単離し、次にこの化合物を単にアルカリ試薬で処理して遊離型の塩基性化合物に変換し、続いてこの遊離型塩基を薬学的に許容し得る酸付加塩に変換することが望ましい場合が多い。本発明の活性塩基性化合物の酸付加塩は、この塩基性化合物を実質的に等量の選択した鉱物酸もしくは有機酸の水性溶媒またはメタノールもしくはエタノールの様な好適な有機溶媒で処理することで容易に調製される。溶媒を注意しながら蒸発させれば、所望の固形塩が容易に得られる。
【0039】
本質的に酸性である、本発明による有用化合物は、各種薬学的に許容し得るカチオン類と塩基性塩を形成できる。このような塩の例としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の塩、ならびに特にナトリウムおよびカリウム塩が挙げられる。これらの塩は従来の技術により調製できる。本発明の薬学的に許容し得る塩基性塩を調製する試薬として用いられる塩基性化学物質は、本発明の酸性化合物と無毒の塩基性塩を形成するものである。このような無毒の塩基塩としては、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウム等の薬学的に許容し得るカチオンから誘導された塩が挙げられる。これら塩は、対応する酸性化合物を所望の薬学的に許容し得るカチオンを含む水溶液で処理し、次に得られた溶液を、好ましくは減圧下に蒸発して乾燥することで容易に調製できる。あるいはこれら塩は酸性化合物の低級アルカノール溶液と所望のアルカリ金属アルコキシドとを混合し、次に得られた溶液を上記と同様に蒸発して乾燥することで調製できる。いずれの場合も、反応を確実に完了させ、所望の最終産物を最大量回収するためには、試薬を化学量論的な量用いることが好ましい。
【0040】
本明細書で論じるFAS阻害剤は一般的には酵素を直接阻害する低分子化合物であるが、FASの生合成を特異的に阻止することが所望の結果を達成する均等手段であることは通常の知識を有する臨床医にとって自明である。従って、本発明はまたメラニン形成を阻害する方法または皮膚を美白化する方法としてのFAS生合成の阻害も想定している。これはFASをコードしているmRNAを選択的に分解すること、またはその転写および/または翻訳を妨害することで達成されるだろう。例えばこれは、FASのmRNAに特異的なリボザイムを導入することで達成できるだろう(リボザイムの方法論については例えばCzubaykoら(1994年)J.Biol.Chem.269巻、21358〜21363ページを参照)。あるいは、これはFASの核酸配列に対し相補的なアンチセンスRNAにより達成できるだろう。ヒトFASのcDNAの配列はGenBankに寄託されている(GenBank番号NM004104)。一実施形態では、アンチセンス治療は、アンチセンス方向に発現する様にプロモーターと作動可能に連結したヒトFASをコードする配列の少なくとも一部を含む発現ベクターを包含する。別の実施形態では、アンチセンス配列は既知FAS配列の知識を用いて設計され、化学的に合成される。いずれの場合も、アンチセンス分子は分子が分解耐性となる様式で産生されてもよい。このような修飾としては、修飾型主鎖、キャップ構造、または分解を防止することが当業者に知られているその他の修飾が挙げられる。結果として、FAS mRNAに対し相補的であり、それに結合もしくはハイブリダイゼーションできるアンチセンス分子が生成される。FAS mRNAへ結合することで、そのmRNAの翻訳が阻止され、その結果FASは産生されない。アンチセンス発現ベクターの産生および使用は米国特許第5,107,065号(発明者:Shewmakerら、1992年4月21日発行)および米国特許第5,190,931号(発明者:Masayori Inouye、1993年3月2日発行)にさらに詳しく記載されている。
【0041】
メラノサイトでのFASの阻害、およびその結果として起こるその後のメラニン合成の阻害または減少は、皮膚の美白を目的とする方法に有用である。即ち、メラノサイトをインビトロまたはインビボでメラニン産生を阻害するのに有効である量のFAS阻害剤と接触させると、所望の皮膚美白効果が生じるだろう。この目的に好適な化合物としては、FAS活性の阻害に関する上記化合物があり、そしてセルレニンおよびそのFAS阻害性類似体、α−メチレン−α−ブチロラクトンおよびそのFAS阻害性類似体、ならびにチオラクトマイシンおよびそのFAS阻害性類似体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
本明細書では用語「皮膚の美白」は、ある個体の皮膚にFAS阻害剤を含む治療処方剤を接触させた後に皮膚の色素沈着が検知可能に低減すること、例えば肉眼で確認できる低減をすることを意味している。
【0043】
好ましくは、本発明の方法および組成物は、脊椎動物の細胞または個体、より詳細には哺乳動物の細胞または個体、最も好ましくは人の細胞または個体に適用される。用語「個体」は本明細書では脊椎動物、哺乳動物またはヒトを表すのに用いている。
【0044】
医薬品または化粧品としての使用に関しては、皮膚メラノサイト内のFAS活性を阻害することで皮膚の色素沈着を低減する化合物が医薬品組成物の一部であることが好ましい。本発明の医薬品組成物は、メラニンの誤った産生、および/または過剰産生を引き起こす様な病気、障害または状態を持つヒト、または動物に投与されるだろう。
【0045】
医薬品として使用に加え、本発明の組成物および方法は美容目的でも有益である。例えばメラニンの産生または過剰産生の結果として皮膚または髪に生じた顕著な望ましくない色素形成は、本発明の方法を利用して治療できるだろう。本発明の方法の美容分野への応用としては、メラノサイト内のFASを阻害してメラノサイト内のメラニン産生を減少させ、皮膚または毛髪の外観を向上または変化させる化合物を1種類またはそれ以上含む組成物の利用が挙げられる。あるいは、例えば日光または紫外線照射の結果起こるメラニン産生を予防することも、本発明の皮膚美白方法の適切な応用と考えられる。
【0046】
本明細書中に使用される場合、「その必要がある人」とは、顕著な、望まれない色素沈着状態の個体、または顕著な望まれない色素沈着状態は存在しないが色素形成を減少させることを決めた個体を指す。
【0047】
当業者が本開示を考慮して気が付く様に、本明細書に開示された発明の方法で用いられる組成物は、FAS活性を阻害するために単独で、または互いに組み合わせて用いることが可能である。さらに本発明の方法は、メラニン合成を阻害することが当分野で既知であるその他の化合物を追加使用することも包含している。例えば本発明の化合物はチロシナーゼ阻害剤と組み合わせて使用されてもよいが、チロシナーゼはメラニン合成の重要酵素である。このような阻害剤は当業者に既知である(例えば米国特許第5,580,549号(発明者:Fukudaら、1996年12月3日発行)を参照)。これとは別に、あるいは追加的に、ヒドロキノン類の様な皮膚漂白化合物を組成物に加えても良い。
【0048】
本発明の医薬品組成物はヒトまたは動物といった被験体に投与される。好ましくは、投与は局所適用により行われる。本発明の組成物の形態は、医薬業界または美容業界において局所適用に関し一般的である各種形態のいずれでもよく、溶液、ゲル、ローション、軟膏、クリーム、懸濁液、ペースト、塗布剤、パウダー、チンキ、エアゾール、経皮的ドラッグデリバリーシステム、または膏薬が挙げられる。好ましい成分としては、増粘剤、pH安定化剤、酸化防止剤、安定化剤、芳香剤および着色剤が挙げられる。一実施形態では、調剤は治療域に留まるのに十分な粘度を持ち、容易に蒸発せず、そして随意に石鹸、洗浄剤、および/またはシャンプーを用いて、水で濯ぐことにより簡単に除去することができるものである。別の実施形態では、本発明は水による濯ぎ、あるいは石鹸、洗浄剤および/またはシャンプーによる洗浄で容易に除去されない調剤を包含する。局所調剤を調製する実際の方法は当業者に既知であるかまたは明らかであり、レミントン薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)、17版、(1990年)Mack Publishing Company、イーストン、ペンシルバニア州;および医薬品投与形態とドラッグデリバリーシステム(Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems)、6版、Williams & Wilkins(1995年)に詳述されている。
【0049】
活性成分の経皮吸収を高めるために、1またはそれ以上の数の作用物質を局所調剤に加えても良く、作用物質としてはジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、界面活性剤、アゾン、アルコール、アセトン、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコールを挙げることができるが、これらに限定されない。さらに物理的方法、例えばイオン導入法または音響導入法を用い経皮的浸透性を高めることもできる。この代わりに、またはこれに加え、リポソームを使用してもよい。
【0050】
本発明による有用化合物(即ちFAS阻害剤)、およびそれらの薬学的に許容し得る塩は、ヒトの色素沈着障害の治療に有用である。本発明による有用化合物は本発明の調剤中に約0.01重量%ないし約50重量%、またはより好ましくは約0.1重量%ないし約10重量%、または最も好ましくは約0.5重量%ないし約5重量%含まれる。
【0051】
本明細書で用いる場合、化合物の「皮膚美白有効量」とは、治療効果期間後に皮膚を検知可能に明るくする化合物の量を意味する。当業者は特定の診断と所望の皮膚美白効果に基づき「治療有効期間」を決定できる。ヒト色素沈着障害の非限定的な例としては、日光または単純黒子(しみ/肝斑を含む)、黒皮症/褐色斑および炎症後色素沈着過度がある。上記化合物はメラニンの産生を阻害することで皮膚のメラニンレベルを下げるが、メラニンは構成的またはUV照射(日光への曝露等)に反応して産生される。従って本発明で用いられる一部の活性化合物は非病的状態まで皮膚メラニン含有量を低減し、皮膚の色調を使用者が望む程度に明るくするか、UV照射に曝露した皮膚へのメラニンの沈積を防止することができる。それらはまた皮膚ピーリング剤(グリコール酸またはトリクロロ酢酸による顔面ピーリングを含む)と組み合わせて用い、皮膚の色調を明るくし、色素の再形成を防ぐことができる。
【0052】
本発明はFAS阻害剤または薬学的に許容し得るその塩、および1またはそれ以上の本明細書に参照したその他活性成分とを同一医薬品組成物の一部として一緒に投与して皮膚の色素形成を調整する方法、および併用治療の利益を獲得することを目的にデザインされた適当な投与形態の一部としてそれらを別々に投与する方法の両方に関する。適当な投与形態、各投薬量、および各活性作用物質の具体的な投与間隔は、用いる活性作用物質の具体的な組み合わせ、治療対象患者の状態、治療対象となる障害または状態の性質および重症度により決まるだろう。このような追加の活性成分は、一般に単独の局所治療薬として有効である量より少ないかまたは等しい量投与される。ヒトへの投与についてFDAの承認を得たこのような活性作用物質については、FDA承認投与量が公開されている。
【0053】
例えば本発明の皮膚美白方法に従い用いられる化合物は、チロシナーゼ阻害剤または当分野既知であるかもしくは将来開発されるその他の皮膚美白剤と組み合わせ使用することができるが、これら作用物質には特に次の特許文献に記載されるそのような作用物質の1またはそれ以上が含まれる:米国特許第4,278,656号(発明者:Nagaiら、1981年7月14日発行);米国特許第4,369,174号(発明者:Nagaiら、1983年1月18日発行);米国特許第4,959,393号(発明者:Toriharaら、1990年9月25日発行);米国特許第5,580,549号(発明者:Fukudaら、1996年12月3日発行);米国特許第6,123,959号(発明者:Jonesら、2000年9月26日発行);米国特許第6,132,740号(発明者:Hu、2000年10月17日発行);米国特許第6,159,482号(発明者:Tuloupら、2000年12月12日発行);国際出願公開WO99/32077号(出願人:L’Oreal、1999年7月1日公開);国際出願公開WO99/64025号(出願人:Fytokem Prod.Inc.、1999年12月16日公開);国際出願公開WO00/56702号(出願人:Pfizer Inc.、2000年9月28日公開);国際出願公開WO00/76473号(出願人:Shiseido Co.Ltd.、2000年12月12日公開);欧州特許公報EP997140号(出願人:L’Oreal SA、2000年5月3日公開);特開平5−221846号(出願人:Kunimasa Tomoji、1993年8月31日公開);特開平7−242687号(出願人:Shiseido Co.Ltd.、1995年9月19日公開);特開平7−324023号(出願人:Itogawa H、1995年12月12日公開);特開平8−012552号(出願人:Shiseido Co.Ltd.、1996年1月16日公開);特開平8−012554号(出願人:Shiseido Co.Ltd.、1996年1月16日公開);特開平8−012557号(出願人:Shiseido Co.Ltd.、1996年1月16日公開);特開平8−012560号(出願人:Shiseido Co.Ltd.、1996年1月16日公開);特開平8−012561号(出願人:Shiseido Co.Ltd.、1996年1月16日公開);特開平8−134090号(出願人:Fujisawa、1996年5月28日公開);特開平8−168378号(出願人:Kirinjo KK、1996年7月2日公開);特開平8−277225号(出願人:Kansai Koso KK、1996年10月22日公開);特開平9−002967号(出願人:Sanki Shoji KK、1997年1月7日公開);特開平9−295927号(出願人:Yagi Akira、1997年11月18日公開);特開平10−072330号(出願人:Kansai Kouso、1998年3月17日公開);特開平10−081626号(出願人:Kamiyama KK、1998年3月31日公開);特開平10−101543号(出願人:Kansai Kouso KK、1998年4月21日公開);特開平11−071231号(出願人:Maruzen Pharm.、1999年3月16日公開);特開平11−079934号(出願人:Kyodo Nyugyo、1999年3月23日公開);特開平11−246347号(出願人:Shiseido Co.Ltd.、1999年9月14日公開);特開平11−246344号(出願人:Shiseido Co.Ltd.、1999年9月14日公開);特開2000−080023号(出願人:Kanebo Ltd.、2000年3月21日公開);特開2000−095663号(出願人:Kose KK、2000年4月4日公開);特開2000−159681号(出願人:Hai Tai Confectionary Co.Ltd.、2000年6月13日公開);特開2000−247907号(出願人:Kanebo Ltd.、2000年9月12日公開);特開平9−002967号(出願人:Sanki Shoji KK、1997年1月7日公開);特開平7−206753号(出願人:Nikken Food KK、1995年8月8日公開);特開平5−322025号(出願人:Kunimasa T、1993年12月3日公開);および特開平5−9157009号(出願人:Yakurigaku Chuou KE、1984年9月6日公開)。
【0054】
皮膚美白に関して、本発明に用いられる活性化合物は日焼け止め剤(UVAまたはUVBブロッカー)と組み合わせて使用し、色素再形成を防ぎ、日光またはUVによる皮膚の黒ずみから保護し、または皮膚メラニンを減らす能力およびそれらの皮膚漂白作用を高めることもできる。皮膚美白に関して、本発明に用いられる活性化合物はレチノイン酸もしくはその誘導体、またはレチノイン酸受容体と相互作用する化合物と組み合わせ使用することもでき、皮膚メラニンを減らす本発明の能力および皮膚漂白作用を増進しまたは高め、あるいは皮膚メラニンの沈積を防ぐ本発明の能力を高めることができる。皮膚美白に関し、本発明に用いられる活性化合物は4−ヒドロキシアニソールと組み合わせて使用することもできる。皮膚美白に関し、本発明に用いられる活性化合物はアスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体およびアスコルビン酸をベースとする生成物(例えばアスコルビン酸マグネシウム)またはそれらの持つ皮膚メラニンを減らす能力およびそれらの皮膚漂白作用を増進しまたは高める抗酸化機序を持つ他の生成物(レズベラトロールの様な)と組み合わせて使用することもできる。
【0055】
局所適用される本発明の組成物は、本明細書に記載の様にFAS活性を阻害する医薬品としての効果を持つ作用物質、および担体としての用途に必要とされる成分を含む。これら担体の非限定的な例は以下詳細に説明されており、そして国際特許出願公開WO00/62742号(2000年10月26日公開)、米国特許第5,691,380号(発明者:Masonら、1997年11月25日発行)、米国特許第5,968,528号(発明者:Deckerら、1999年10月19日発行)、米国特許第4,139,619号(発明者:Chides,III、1979年2月13日発行)、および米国特許第4,684,635号(発明者:Orentreichら、1987年8月4日発行)、に見いだすことができるだろう。好適な医薬品担体はさらにこの分野の標準的な参考文献であるレミントンの薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)、(1990年)(上記)にさらに詳しく記載されている。
【0056】
本発明の医薬品組成物はさらにその他構成成分を含んでもよい。このような随意の構成成分は角質組織への適用に好適でなければならず、換言すれば組成物内に取り込んだ時にそれら成分はヒト角質組織との接触使用に好適であり、正しい医学的判断の範囲にある過度の毒性、不適合性、不安定性、アレルギー反応等がない。さらにこのような随意の構成成分は、FAS阻害剤および本発明のその他活性化合物の利益を許容不能な形で変化させない場合に有用である。CTFA化粧品成分ハンドブック(CTFA Cosmetic Ingredient Handbook)(1992年)第2版は、スキンケア産業で一般的に使用されている様々な非限定的な化粧用および医薬品用成分を掲載しているが、これらは本発明の組成物での使用に好適である。これら成分分類の例としては、研磨成分、吸湿成分、エステティック成分(芳香剤、顔料、着色剤/染料、エッセンシャルオイル、皮膚感触改良成分、アストリンゼン等(例えば丁子油、メタノール、カンフル、ユーカリ油、オイゲノール、乳酸メンチル、アメリカマンサク蒸留エキス))、ニキビ治療薬、塊防止剤、消泡剤、抗菌剤(例えばヨードプロピルブチルカルバメート)、酸化防止剤、結合剤、生物学的添加剤、緩衝剤、増量剤、キレート剤、化学添加物、着色料、化粧品用アストリンゼン、化粧品用殺虫剤、変成剤、薬用アストリンゼン、外用鎮痛剤、組成物の膜形成特性と直接性を助けるための塗膜形成剤または塗膜材料(例えばポリマー)(例えばエイコセンとビニルピロリドンのコポリマー)、不透明化剤、pH調整剤、推進剤、還元剤、金属イオン封鎖剤、皮膚コンディショニング剤(例えば湿潤剤、種々雑多のものおよび閉鎖型のものを含む)、皮膚軟化剤および/または治癒剤(例えばパンテノールと誘導体(例えばエチルパンテノール)、アロエ、パントテン酸とその誘導体、アラントイン、ビスアボロール、およびグリシルリジン酸二カリウム)、皮膚処理剤、増粘剤、ならびにビタミンとその誘導体が挙げられる。
【0057】
薬学的有効量のFAS阻害剤に加え、本発明の局所組成物はさらに皮膚科学的に許容し得る担体を含む。本明細書で用いる句「皮膚科学的に許容し得る担体」とは、この担体が皮膚、即ち角質組織への局所適用に好適であること、良好な審美特性を有すること、本発明の活性作用物質およびその他成分に適合していること、ならびに安全性または毒性に関する問題を起こさないことを意味する。担体の安全有効量は組成物の約50%ないし約99.99%、好ましくは約80%ないし約99.9%、より好ましくは約90%ないし約98%、そして最も好ましくは約90%ないし約95%である。
【0058】
本発明の組成物で利用される担体は様々な形態が可能である。そのような形態としては水中油、油中水、水中油中水、およびシリコーン中水中油乳剤を含むがこれらに限定されない乳剤担体、クリーム、軟膏、水溶液、ローションまたはエアゾールが挙げられる。当業者により理解される様に、加えられた成分は組成物中のその成分が持つ水溶解性/分散性に従って主として水または油/シリコーン相のいずれかに分配される。
【0059】
本発明による乳剤は一般には薬学的有効量のFAS阻害剤と脂質または油を含む。脂質および油は動物、植物または石油に由来するものでよく、そして天然または合成(即ち人工)のいずれのものでよい。好ましい乳剤はグリセリンの様な湿潤剤も含む。好ましくは、乳剤はさらに担体重量をベースとして約1%ないし約10%、より好ましくは約2%ないし約5%の乳化剤を含むだろう。乳化剤は非イオン性でも、アニオン性でもカチオン性でもよい。好適な乳化剤は例えば1973年8月28日発行、米国特許第3、755、560号to Dickertら、およびMcCutcheonの界面活性剤と乳化剤(McCutcheon's Detergents and Emulsifiers)、北米版、317〜324ページ(1986年)に開示されている。
【0060】
乳剤は角質組織に用いた時に泡の形成を最小限にするための泡消去剤を含んでもよい。泡消去剤としては高分子量シリコーンおよびその使用について当分野周知のその他物質を挙げることができる。
【0061】
好適な乳剤は所望の製品形態に応じて広範囲の粘度を有するだろう。好ましい低粘度乳剤例は約50センチストークス以下、より好ましくは約10センチストークス以下、最も好ましくは約5センチストークス以下の粘度を有する。乳剤はまた角質組織に用いた時に泡の形成を最小限にするための泡消去剤を含んでもよい。泡消去剤としては高分子量シリコーンおよびその使用について当分野周知のその他物質を挙げることができる。
【0062】
乳剤のタイプの一つはシリコーン中水乳剤である。シリコーン中水乳剤は連続シリコーン相と分散水相を含む。好ましい本発明のシリコーン中水乳剤は、約1重量%ないし約60重量%、好ましくは約5重量%ないし約40重量%、より好ましくは約10重量%ないし約20重量%の連続シリコーン相を含む。連続シリコーン相は以下記載の不連続水相を含む、または取り囲む外相として存在する。
【0063】
連続シリコーン相は有機ポリシロキサン油を含んでもよい。好ましいシリコーン中水乳剤系は、薬学的有効量のFAS阻害剤の運搬に適した酸化的に安定した賦形剤を提供するよう調合される。これら好適な乳剤の連続シリコーン相は約50重量%ないし約99.9重量%の有機ポリシロキサン油と、約50重量%未満の非シリコーン油を含む。特に好ましい実施形態では、連続シリコーン相は連続シリコーン相の重量の少なくとも約50%、好ましくは約60%ないし約99.9%、より好ましくは約70%ないし約99.9%、さらにより好ましくは約80%ないし約99.9%の有機ポリシロキサン油と、連続シリコーン相の重量の最大約50%、好ましくは約40%未満、より好ましくは約30%未満、さらにより好ましくは約10%未満、そして最も好ましくは約2%未満の非シリコーン油を含む。これら有益な乳剤系はより低濃度の有機ポリシロキサン油を含む同等の油中水乳剤に比べより長期間、より高い酸化安定性を示すだろう。組成物中の本発明の活性化合物の酸化安定性をさらに高め得るように、連続シリコーン相内の非シリコーン油の濃度は最小限にするか、すべて無くす。このタイプのシリコーン中水乳剤は米国特許第5,691,380号(発明者:Masonら、1997年11月25日発行)に記載されている。
【0064】
組成物内での使用に適した有機ポリシロキサン油は揮発性シリコーン、不揮発性シリコーン、または揮発性シリコーンと不揮発性シリコーンの混合物のいずれでもよい。この文脈の中で用いられる場合、用語「不揮発性」は室温条件下で液体であり約摂氏100度以上の引火点を有する(1気圧下において)シリコーン類を指す。この文脈の中で用いられる場合、用語「揮発性」はその他全てのシリコーン油を表す。好適な有機ポリシロキサン油は広範囲の揮発性と粘度を持つ多様なシリコーン類から選ぶことができる。好適な有機ポリシロキサン油の例としては、ポリアルキルシロキサン類、環式ポリアルキルシロキサン類、およびポリアルキルアリールシロキサン類が挙げられるが、これらは当業者に既知であり、そして市販されている。
【0065】
連続シリコーン相は1またはそれ以上の非シリコーン油を含んでもよい。連続シリコーン相内の非シリコーン油濃度は、組成物中の薬学的有効作用物質の酸化安定性をさらに高めるために、最低限にとどめるかまたは完全に排除することが望ましい。好適な非シリコーン油は1気圧下で約25℃以下の融点を持つ。連続シリコーン相内での使用に好適な非シリコーン油の例は、油中水乳剤型の局所用パーソナルケア製品の化学分野では周知であり、例えば鉱油、植物油、合成油、半合成油等である。
【0066】
本発明の有益な局所用組成物は約30%ないし約90%、より好ましくは約50%ないし約85%、そして最も好ましくは約70%ないし約80%の分散水相を含む。乳剤技術分野では、用語「分散相」は当業者に周知な用語であり、その相が小さい粒子または小滴として連続相中に懸濁し取り囲まれて存在していることを意味する。分散相は内相または不連続相ともいう。分散水相は上記連続シリコーン相内に懸濁し取り囲まれている小さな水の粒子または小滴の分散である。水相は水、または水と1またはそれ以上の水溶性もしくは分散性成分の組み合わせでもよい。このような随意の成分の非限定的な例としては、増粘剤、酸、塩基、塩、キレート剤、ガム、水溶性もしくは分散性アルコール類およびポリオール類、緩衝剤、保存剤、日焼け止め剤、着色剤等を挙げることができる。
【0067】
本発明の局所用組成物は通常、組成物重量の約25%ないし約90%、好ましくは約40%ないし約80%、より好ましくは約60%ないし約80%の水を分散水相内に含む。
【0068】
本発明のシリコーン中水乳剤は乳化剤を含むことが好ましい。好適な実施形態では、組成物は組成物重量の約0.1%ないし約10%の乳化剤を、より好ましくは約0.5%ないし約7.5%、最も好ましくは約1%ないし約5%の乳化剤を含む。乳化剤は連続シリコーン相内での水相の分散および懸濁を助ける。
【0069】
本発明では様々な乳化剤を用いて好ましいシリコーン中水乳剤を作ることができる。選択した乳化剤が組成物の必須成分に化学的および物理的に適合している限りにおいて、そして所望の分散特性が得られる限りにおいて、組成物には既知または従来の乳化剤を使用できる。好適な乳化剤としては、当業者にはシリコーン界面活性剤としても知られるシリコーン乳化剤、例えば有機修飾型有機ポリシロキサン類や、シリコーン非含有乳化剤、およびその混合物が挙げられるが、これらは局所用パーソナルケア製品への使用に関し当業者に既知である。
【0070】
有用な乳化剤には多種多様のシリコーン乳化剤が含まれる。これらシリコーン乳化剤は通常、有機修飾型有機ポリシロキサン類であるが、これらは当業者にはシリコーン界面活性剤としても知られている。好適な乳化剤は、例えばMcCutcheonの界面活性剤と乳化剤(McCutcheon's Detergents and Emulsifiers)、北米版(1986年)、Allured Publishing Corporation;米国特許第5,011,681号(発明者:Ciottieら、1991年4月30日発行);米国特許第4,421,769号(発明者:Dixonら、1983年12月20日発行);および米国特許第3,755,560号(発明者:Dickertら、1973年8月28日発行)に記載されている。
【0071】
その他好ましい局所用担体としては、連続水相およびその中に分散した疎水性の水不溶性相(「油相」)を有する水中油乳剤が挙げられる。水中油乳剤を含む好適な担体の例は米国特許第5,073,371号(発明者:Turnerら、1991年12月17日発行)、および米国特許第5,073,372号(発明者:Turnerら、1991年12月17日発行)に記載されている。特に好ましい水中油乳剤は、構造化剤、親水性界面活性剤および水を含み、詳しく後述される。
【0072】
好ましい水中油乳剤は液晶性ゲル網構造の形成を補助する構造化剤を含む。理論による限定ではないが、構造化剤は組成物の安定性に寄与するレオロジー特性を組成物に付与するのを助けると考えられる。構造化剤はまた乳化剤または界面活性剤としても機能するだろう。本発明の好ましい組成物は組成物重量の約0.5%ないし約20%、より好ましくは約1%ないし約10%、最も好ましくは約1%ないし約5%の構造化剤を含む。本発明の好ましい構造化剤はステアリン酸、パルミチン酸、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ベヘニルアルコール、ステアリン酸、パルミチン酸、平均して約1ないし約21個のエチレンオキシド単位を有するステアリルアルコールのポリエチレングリコールエーテル、平均して約1ないし約5個のエチレンオキシド単位を有するセチルアルコールのポリエチレングリコールエーテル、およびそれらの混合物から成るグループより選択される。
【0073】
好ましい水中油乳剤は(局所用担体の重量百分率として)約0.05%ないし約10%、好ましくは約1%ないし約6%、より好ましくは約1%ないし約3%の、水相中に疎水性物質を分散できる親水性界面活性剤を少なくとも1種類含む。界面活性剤は、最低限、水中に分散するのに十分な程度親水性でなければならない。好適な界面活性剤には既知の各種カチオン性、アニオン性、両性イオン性、および両性界面活性剤が含まれる。McCutcheonの界面活性剤と乳化剤(McCutcheon's Detergents and Emulsifiers)、北米版(1986年)、Allured Publishing Corporation;米国特許第5,011,681号(発明者:Ciottiら、1991年4月30日発行);米国特許第4,421,769号(発明者:Dixonら、1983年12月20日発行)および米国特許第3,755,560号(発明者:Dickertら、1973年8月28日発行)を参照。的確な界面活性剤の選択は組成物および存在するその他の成分のpHに依存する。好ましい界面活性剤はカチオン性界面活性剤、特にジアルキル第4級アンモニウム化合物であり、その例は、米国特許第5,151,209号(発明者:McCallら、1992年9月29日発行);第5,151,210号(発明者:Steuriら、1992年9月29日発行);第5,120,532号(発明者:Wellsら、1992年6月9日発行);第4,387,090号(発明者:Bolich,Jr、1983年6月7日発行);第3,155,591号(発明者:Hilferら、1964年11月3日発行);第3,929,678号(発明者:Laughlinら、1975年12月30日発行);および第3,959,461号(発明者:Baileyら、1976年5月25日発行)並びにMcCutcheonの界面活性剤と乳化剤(Detergents & Emulsifiers)(北米版、1979年)M.C.Publishing Co.;およびSchwartzら、界面活性剤、その化学と技術(Surface Active Agents, Their Chemistry and Technology)、ニューヨーク:Interscience Publishers、1949年、に記載されている。その他有益なカチオン性乳化剤としてはアミノアミドがある。本発明では多種多様なアニオン性界面活性剤も有用である。例えば上記米国特許第3,929,678号(発明者:Laughilinら、1975年12月30日発行)を参照せよ。さらに両性および両イオン性界面活性剤も本発明では有用である。
【0074】
好ましい水中油乳剤は、局所用担体重量の約25重量%ないし約98重量%、好ましくは約65重量%ないし約95重量%、より好ましくは約70重量%ないし約90重量%の水を含む。
【0075】
疎水相は連続水相内に分散される。疎水相は水不溶性または部分的に水溶性である当業者に既知の物質を含むが、そのような物質としては、本明細書で水中シリコーン乳剤に関連して記載されているシリコーン類ならびに乳剤に関連して記載された上記のような他の油および脂質が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0076】
ローションおよびクリームを含むがこれらに限定されない本発明の局所用組成物は、皮膚科学的に許容し得る皮膚軟化剤を含んでもよい。この様な組成物は約2%ないし約50%の皮膚軟化剤を含むことが好ましい。本明細書で使用する場合、「皮膚軟化剤」とは乾燥防止または軽減に有用であると同時に皮膚の保護にも有用な物質を指す。多種多様な好適な皮膚軟化剤が既知であり、ここに用いることができる。Sagarinの化粧品、科学および技術(Cosmetics, Science and Technology)、第2版、1巻、3243ページ(1972年)には皮膚軟化剤として好適な物質の例が数多く載っている。好ましい皮膚軟化剤はグリセリンである。グリセリンは0.001%または約0.001%ないし20%または約20%、より好ましくは0.01%または約0.01%ないし10%または約10%、最も好ましくは0.1%または約0.1%ないし5%または約5%、例えば3%の量で用いられるのが好ましい。
【0077】
本発明によるローションおよびクリームは一般には溶液担体系および1またはそれ以上の皮膚軟化剤を含む。ローションは通常、約1%ないし約20%、好ましくは約5%ないし約10%の皮膚軟化剤;約50%ないし約90%、好ましくは約60%ないし約80%の水;および薬学的有効量の本明細書に記載のFAS阻害剤を含む。クリームは通常、約5%ないし約50%、好ましくは約10%ないし約20%の皮膚軟化剤;約45%ないし約85%、好ましくは約50%ないし約75%の水;および薬学的有効量の本明細書に記載のFAS阻害剤を含む。
【0078】
本発明の軟膏は動物もしくは植物油、または半固体炭化水素(油性)の単担体基材;水を吸収して乳剤を形成する吸収軟膏基材、または水溶性担体、例えば水溶性溶液担体を含むだろう。軟膏はさらにSagarin、化粧品、科学および技術(Cosmetics, Science and Technology)、第2版、1巻、72〜73ページ(1972年)に記載されているような増粘剤、および/または皮膚軟化剤を含んでもよい。例えば軟膏は約2%ないし約10%の皮膚軟化剤;約0.1%ないし約2%の増粘剤、および薬学的有効量の本明細書に記載のFAS阻害剤を含むだろう。
【0079】
非限定的に例示すると、局所用クリーム1000gは次のタイプと量の成分から調製する:皮膚美白有効量のFAS阻害剤、テガシド・レギュラー(tegacid regular)(150g)(Goldschmidt Chemical Corporation(ニューヨーク、ニューヨーク州)製の自己乳化型モノステアリン酸グリセリル)、ポリソルベート80(50g)、鯨蝋(100g)、プロピレングリコール(50g)、メチルパラベン(1g)、および合計1000gになる量の脱イオン水。テガシドおよび鯨蝋を一緒に70〜80℃の温度で融解する。メチルパラベンを約500gの水に溶解し、次にプロピレングリコール、ポリソルベート80および6−アミノ−1,2−ジヒドロ−1−ヒドロキシ−2−イミノ−4−ピペリジノピリミジン遊離塩基を順に加え、75〜80℃の温度に保つ。メチルパラベン混合物をテガシドと鯨蝋の融解物に一定速度で攪拌しながらゆっくり加える。この添加は少なくとも30分かけて行い、さらに40〜45℃に温度が下がるまで攪拌を続ける。最後に最終重量が1000gになるのに十分な量の水を加え、冷めて凝固するまで調合体を攪拌しつづけ均質性を保つ。
【0080】
非限定的に例示すると、局所用軟膏1000gは次のタイプと量の成分から調製する:皮膚美白有効量のFAS阻害剤、酸化亜鉛(50g)、カラミン(50g)、流動パラフィン(重流動性)(250g)、羊毛脂(200g)および合計1000gになるのに十分な量の白色ワセリン。簡単に述べると、白色ワセリンと羊毛脂を融解し、流動パラフィン100gをこれに加える。薬学的有効量のFAS阻害剤、酸化亜鉛、カラミンを残りの流動パラフィンに加え、この混合物を粉末が細かく分かれ均一に分散するまでミルにかける。この混合物を前記白色ワセリン内に混ぜ入れ融解し、軟膏が固まるまで攪拌しながら冷やす。
【0081】
非限定的に例示すると、薬学的有効量のFAS阻害剤を含む軟膏1000gは次のタイプと量の成分から調製する:皮膚美白有効量のFAS阻害剤、軽流動パラフィン(250g)、羊毛脂(200g)および合計1000gになるのに十分な量の白色ワセリン。簡単に述べると、薬学的有効量のFAS阻害剤を細かく分け、軽流動パラフィンに加える。羊毛脂と白色ワセリンを一緒に融解し、濾過し、温度を45〜50℃に調整する。流動パラフィンのスラリーを加え、軟膏を固まるまで攪拌する。
【0082】
非限定的に例示すると、皮膚美白有効量のFAS阻害剤を含む水溶液1000mlは次のタイプと量の成分から調製する:皮膚美白有効量のFAS阻害剤、ポリエチレングリコール4000(120g)、ミリスチル−γ−塩化ピコリニウム(0.2g)、ポリビニルピロリドン(1g)および合計1000ミリリットルにするのに十分な量の脱イオン水。簡単に述べると、これら成分を水に溶解し、得られた溶液を濾過滅菌する。
【0083】
非限定的に例示すると、皮膚美白有効量のFAS阻害剤を含むローション1000gは次のタイプと量の成分から調製する:薬学的有効量のFAS阻害剤、N−メチルピロリドン(40g)および合計1000gにするのに十分な量のプロピレングリコール。
【0084】
非限定的に例示すると、皮膚美白有効量のFAS阻害剤を含むエアゾールは次のタイプと量の成分から調製する:薬学的有効量のFAS阻害剤、無水アルコール(4.37g)、ジクロロジフルオロエタン(DCFE)(1.43g)およびジクロロテトラフルオロエタン(DCTFE)(5.70g)。簡単に述べると、薬学的有効量のFAS阻害剤を無水アルコールに溶解し、得られた溶液を濾過して粒子およびリントを除く。この溶液を約マイナス30℃まで冷却する。つぎにこの溶液にDCFEとDCTFEの冷混合物を加える。
【0085】
FAS活性を阻害する化合物(即ち活性作用物質または成分)は硬質または軟質ゼラチンカプセル、錠剤または粉末の様な固体または半固体の調剤形状、あるいはエリキシル、シロップまたは懸濁液の様な液体調剤形状で経口投与もできる。さらに、化合物は非経口的に、滅菌液体の調剤形状または座薬の形で投与することもできる。本発明のFAS阻害剤は直腸、経鼻、血管内、筋肉内等に投与することもできる。
【0086】
インビボでの使用を想定していることから、組成物は高純度であると同時に潜在的に有害である汚染物質を実質的に含まないことが好ましく、例えば少なくともNational Food(NF)等級、一般には少なくとも分析等級、そして好ましくは少なくとも医薬品等級である。ある化合物を使用前に合成しなければならない場合には、好ましくはこれらの合成およびそれに続く精製は、合成および精製工程中に用いられた汚染の可能性のある有毒作用物質を実質的に含まない産物を生成するものでなければならない。
【0087】
経口投与に関しては、ゼラチンカプセルまたは液体が充填された軟質ゼラチンカプセルは乳糖、レシチンデンプン、セルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸等の粉末または液体担体にFAS阻害剤およびその他の活性成分を含むことができる。同様の希釈剤を用いて圧縮錠剤を作製できる。錠剤およびカプセルは共に数時間の期間にわたり薬物を連続的に放出する持続性放出製品として製造できる。圧縮製剤に糖衣をかけるか、またはフィルムコーティングして不快な味を隠し、そして大気から錠剤を保護すること、あるいは腸溶コートを用い胃腸管内にて選択的な標的に合わせた崩壊を行うことができる。経口投与用の液体調剤形状は患者の受入れを高めるために、着色剤および/または調味料を含むことができる。
【0088】
一般に、非経口溶液、滅菌水、油、生理食塩水、デキストロース(グルコース)水溶液、ポリソルベートおよび関連糖溶液、ならびにプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールの様なグリコール類は有益なFAS阻害剤に好適な担体である。非経口投与用の溶液または乳剤は、約5〜15%のポリソルベート80またはレシチン、好適な安定化剤、および必要に応じて緩衝物質を含むことが好ましい。もとよりこれらに限定されるものではないが、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、またはアスコルビン酸の様な酸化防止剤は単独または組み合わせのいずれでも好適な安定化剤である。またクエン酸およびその塩、ならびにEDTAナトリウムも有用である。さらに非経口溶液は塩化ベンザルコニウム、メチル−またはプロピル−パラベンおよびクロロブタノールを包含するがこれらに限定されない保存剤を含むことができる。
【0089】
このように、本発明はさらに皮膚美白有効量のFAS阻害剤を薬学的または美容学的に許容し得る担体と混合することを包含する皮膚美白用組成物の製造方法を提供する。
【0090】
本開示から当業者には理解される様に、本発明の組成物はキットの形で提供されてもよい。本発明のキットはFAS活性を阻害することで皮膚を美白化する本発明の特異的組成物を1種類またはそれ以上含む。キットはまたメラニン産生を阻害するか、または皮膚を美白化する追加の作用物質、ならびに薬学的または美容学的に許容し得る担体を含むこともできる。キットはさらにこれら組成物を用い皮膚を美白化する方法を指示するラベルまたは能書のような印刷された取扱説明書を随意に含んでもよい。化合物は汚染を防止し、組成物の蒸発または乾燥等を最小限にとどめるよう設計された無菌容器内に入れられることが好ましい。化合物は事前に設定された投与量または利用量の形で提供されても、そうでなくてもよい。
【0091】
以上、本発明について説明したので、以下限定ではなく例示の形でこれら組成物を用いて皮膚を美白化する実施例を提供する。
【実施例】
【0092】
実施例1
セルレニン処理後のメラニン産生のアッセイ
p座について野生型であるC57BLI6Jマウスから不死化されたメラノサイト樹立株であるメラン−aメラノサイト(a/a、P/P)(Bennettら(1987年)、Int.J.Cancer 39巻、414〜418ページ)をダルベッコ改変イーグル培地(DMEM:10%ウシ胎児血清、2mM L−グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、1% MEM非必須アミノ酸100X、50μ/Lペニシリン、50μg/Lストレプトマイシン)内でインキュベーションした。培地を使用する直前に酢酸テトラデカノイルホルボール(TPA)を200nMになるよう加えた。細胞をT−25フラスコ内に4×104細胞/ml×4.5ml/フラスコ(集密度10〜20%)で接種し、5%CO2を用い37℃で増殖した。24時間後、試験化合物(0.5mlの培地で希釈したもの)を培地に加えた。薬物添加の48時間後に培地と薬物の両方を交換した。さらに48または78時間経過した後(集密度100%)細胞を採取した。
【0093】
細胞を採取する際、試薬と細胞は4℃に保った。簡単に説明すると、培地を細胞から取り除き、チロシナーゼアッセイに必要な場合には1ミリリットルの培地を確保した。次に細胞を約500μlの冷1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用い、PBS濯ぎ液が透明になるまで濯ぎ洗いした。冷抽出緩衝液(50mMトリス、pH7.5、2mM EDTA、150mM NaCl、および1% Triton x−100(シグマ(Sigma)、セントルイス、ミズーリ州)(500μl))を加え、サンプルを氷上で数分間または細胞がフラスコの底から剥がれ始めるまでインキュベーションを続けた。フラスコをたたいて細胞をさらに剥がし落とした後、500μlの抽出緩衝液/細胞を取り出し、微量遠心チューブに入れた。サンプルを4℃にて14,000×gで5分間遠心分離した後、上清を取り出し、タンパク質アッセイ(および必要な場合にはチロシナーゼアッセイ)用に微量遠心チューブ内に保存した。この段階で細胞の沈査を、メラニンをアッセイするまで4℃で一晩、または−20℃ではより長期間保存してもよい。
【0094】
メラニンをアッセイするために300〜500μlのエタノール/エーテル(1:1)を各細胞沈査に加えた。サンプルをボルテックスしてから約10分間または溶媒中に沈殿したタンパク質が観察できるようになるまで静置した。必要に応じて微量遠心チューブ用乳棒で沈査を軽く押しつぶした。溶媒の除去(およびメラニンを残すこと)が困難になるため、沈査が砕け多くの小片にならないように注意した。ガラス製ピペットを用い、メラニンを取り除かない様注意しながら溶媒/タンパク質を除去する。この抽出段階を繰り返してから沈査を乾燥させる。次に2NのNaOHの20%ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液を250μl各微量遠心チューブに加えた。サンプルをメラニンが完全に溶解するまで60〜70℃に加熱した。各試験サンプル毎に、200μlのNaOH/メラニン溶液を96ウエル・プレートに移した。2NのNaOHの20%DMSO溶液をブランクに用い、サンプルを490nmの波長で読み取った。データは全サンプルについて計算されたタンパク質当たりのメラニン吸光度として報告した。
【0095】
メラニン産生に及ぼすセルレニンの効果を決定するために、メラン−aメラノサイトを上記に概要を示した様に0.05:9、1:9、0.5:9、または5:9のセルレニン(シグマ(Sigma)、セントルイス、ミズーリ州)存在下にインキュベーションした。これとは別に、細胞をさらにチロシナーゼの直接阻害剤である300μMの1−フェニル−2−チオ尿素(PTU)(シグマ(Sigma)、セントルイス、ミズーリ州)、およびホスホジエステラーゼ阻害剤である100μMのイソブチルメチルキサンチン(IBMX)(シグマ(Sigma)、セントルイス、ミズーリ州)で処理するか、またはいずれの薬物でも処理しなかった。
【0096】
図1に示す様に結果はセルレニンは3μMでメラン−aメラノサイトの色素形成を平均50%減少させることを示している。
実施例2
α−メチレン−γ−ブチロラクトン処理後のメラニン産生のアッセイ
その他の阻害剤のメラニン産生に及ぼす効果を、実施例1にその概要を示した手順に従い、0.1μM、1.0μM、10.0μM、または100.0μMのα−メチレン−γ−ブチロラクトン(シグマ(Sigma)、セントルイス、ミズーリ州)存在下にメラン−aメラノサイトをインキュベーションすることにより試験した。さらにこれとは別に細胞を20μMのIMP(シグマ(Sigma)、セントルイス、ミズーリ州)、300μMのPTU(シグマ(Sigma)、セントルイス、ミズーリ州)、100μMのIBMX(シグマ(Sigma)、セントルイス、ミズーリ州)で処理するか、または未処理とした。
【0097】
これらの処理細胞でもメラニン産生が低減することが期待される。
実施例3
チオラクトマイシン処理後のメラニン産生のアッセイ
その他のFAS阻害剤のメラニン産生に及ぼす効果を、実施例1にその概要を示した手順に従い、0.1μM、1.0μM、10.0μM、または100.0μMのチオラクトマイシン存在下にメラン−aメラノサイトをインキュベーションすることにより試験した。さらにこれとは別に細胞を20μMのIMP(シグマ(Sigma)、セントルイス、ミズーリ州)、300μMのPTU(シグマ(Sigma)、セントルイス、ミズーリ州)、100μMのIBMX(シグマ(Sigma)、セントルイス、ミズーリ州)で処理するか、または未処理とした。
【0098】
これらの処理細胞でもメラニン産生が低減することが期待される。
【0099】
均等物
当業者は、通常以上の実験を行うことなく、本明細書に記載した発明の特定実施形態に対する多くの均等物を認識するか、または確認できるだろう。このような均等物は特許請求の範囲に包含されると解釈される。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】メラン−aメラノサイトに対するセルレニンの作用を示す図である。細胞を、実施例1に記載の様に、300:9のフェニル−2−チオ尿素(PTU)、100:9のイソブチルメチルキサンチン(IBMX)または0.05:9、1:9、0.5:9、もしくは5:9のセルレニンで処理するか、あるいは未処理とした。
【0001】
本発明は、医学、薬理学、生化学および細胞生物学の分野に関する。より詳細には、本発明は皮膚科学および化粧品の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
メラニンは紫外線を防ぎ、動物の皮膚、眼、毛および下毛に装飾を施す、植物および動物に見いだされる黒色の色素である(Riley(1997年)、Int.J.Biochem.Cell Biol.11巻、1235〜39ページに概説されている)。メラノサイトはメラニン産生に特殊化した表皮細胞であり、そしてメラニンには2つの型、すなわち、褐/黒色のユーメラニンと黄/赤色のフェオメラニンがある。精緻な細胞間シグナル伝達系が、個々のメラノサイトがユーメラニンまたはフェオメラニンのどちらを産生するかを決定している(BrillantとBrashにより、色素システム:生理学と病理生理学(The Pigmentary System: Physiology and Pathophysiology)、Nordlundら編集(1998年)オックスフォード大学、ニューヨーク、217〜229ページに概説されている)。
【0003】
メラノサイトはメラノソームと呼ばれる特殊化した細胞内器官の内部でメラニンを合成する(Orlowにより色素システム:生理学と病理生理学(The Pigmentary System: Physiology and Pathophysiology)、Nordlundら編集(1998年)オックスフォード大学、ニューヨーク、97〜106ページに概説されている)。これら細胞内器官は2つのタイプの小胞が融合して形成される。一方のタイプの小胞はプレメラノソームと呼ばれ、滑面小胞体またはトランスゴルジネットワークかに直接由来するらしい。他方のタイプの小胞はトランスゴルジネットワークに由来する。これらのタイプの小胞はそれぞれ、メラノソームの機能に必要なタンパク質をメラノソームに与える。
【0004】
あらゆる年齢の多くの個体にとって、メラニンの不適切な産生または過剰産生は重大な美容上の問題である。例えば多くの子供が日光を浴びた後にそばかすをつくり、そして中年または高齢者では日焼け後のしみ、そばかす、そして色素沈着を起こすかまたはその頻度が高くなる傾向にある。さらにこれらの色素沈着は直ぐには消えず、年齢が高くなるほど永久化しやすくなる。
【0005】
皮膚の色素形成を減少させる効果を持つ生成物が数多く開発されている。このような生成物の一つは皮膚の脱色に関し周知の活性物質であるヒドロキノンを含んでいる(例えば米国特許第6,139,854号(発明者:Kawatoら、2000年10月31日発行)を参照)。しかしヒドロキノンは、長期間使用すると深刻な副作用を起こすことがある。例えばヒドロキノンを皮膚に使用した場合、永久的な色素脱失を起こし、そのために紫外線曝露時の皮膚の光感受性が高くなることがある。この様な理由から幾つかの国では、皮膚脱色に関してヒドロキノンは限定濃度での使用が許可されているだけであり、その他の国ではこの目的でのこの生成物の使用は完全に禁止されている。
【0006】
その他、様々な物質が皮膚の色素形成の制御または阻害に関し提案されている。これら物質のほとんど全てのものが、既存の色素を漂白するか、またはメラニン産生の主要な律速酵素であるチロシナーゼの活性を阻害することにより新規の色素合成を阻止することにより機能する。例えば米国特許第6,123,959号(発明者:Jonesら、2000年9月26日発行)は、リン脂質のリポソーム、およびメラニン合成酵素の少なくとも1種類の競合的阻害剤とを含む水性組成物と、メラニン合成酵素の少なくとも1種類の非競合的阻害剤との組み合わせ用途について記載している。米国特許第6,132,740号(発明者:Lan Hu、2000年10月17日発行)は皮膚美白剤としてのある種のレゾルシノール誘導体の用途を記載している。国際出願公開WO9964025A1(出願人:Fytokem Products Inc.、1999年12月16日公開)はカナダ原産の双子葉植物種由来のチロシナーゼ阻害抽出物を含む皮膚美白用組成物を記載している。米国特許第5,580,549号(発明者:Fukudaら、1996年12月3日発行)はチロシナーゼ阻害剤として2−ヒドロキシ安息香酸誘導体とその塩を含む皮膚美白用外用剤を記載している。国際出願公開WO9909011A1(出願人:Ostuka Pharmaceutical Co.,Ltd.、1999年2月25日公開)は、少なくとも1種類のカルボスチリル誘導体、およびその塩を含む、皮膚紅班および/または皮膚色素形成を阻害するための作用物質を記載している。米国特許第5,214,028号(発明者:Tomitaら、1993年5月25日発行)および米国特許第5,389,611号(発明者:Tomitaら、1995年2月14日発行)はラクトフェリン水解物のチロシナーゼ阻害作用物質としての用途を記載している。
皮膚を美白化するこれらおよびその他組成物の開発にもかかわらず、当技術分野では皮膚の漂白に関しより毒性が低く、より安全な代替物、およびメラニン産生をより効果的、且つ効率的に阻害する方法の開発が今も求められている。皮膚を美白化するための新規方法および改良方法に対する需要は、皮膚美白剤の世界市場が優に年間10億ドルを越えるという化粧品産業の見積もりから明らかである。このように皮膚での色素形成を制限または阻害する改良型作用物質の開発が今も望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
驚くべきことに、脂肪酸生合成を阻害する各種作用物質がメラニン産生阻害に有益であることが発見された。より詳細には、脂肪酸合成酵素(FAS)を阻害できる作用物質は同時にメラノサイト内でのメラニン産生も阻害することが確認された。これら発見を利用して本発明が提供されているが、本発明は皮膚での色素形成を減少させることに有益な方法および医薬品組成物を包含している。
【0008】
一態様では、本発明はメラノサイトに於けるメラニン合成を減少させる方法を提供する。この方法はメラノサイトをFAS阻害剤と接触させ、それによりメラノサイト内のメラニン合成を低減することを含む。
【0009】
別の態様では、本発明は皮膚を美白化する方法を提供する。この方法はそれを必要とする患者の皮膚を皮膚美白有効量のFAS阻害剤と接触させ、それによりメラニン合成を低減または阻害し、そしてそれにより皮膚を美白化することを含む。
【0010】
本発明はまた別の態様において皮膚を美白化するための組成物を提供する。この組成物は皮膚美白有効量のFAS阻害剤および薬学的に許容し得る担体を含む。
【0011】
別の態様では本発明はさらにFAS活性を阻害する皮膚美白有効量の化合物を含む組成物の入った容器を備えたキットを提供する。一実施形態では、キットはさらに皮膚を美白化する医薬品組成物の使用について指示するラベルまたは添付文書として印刷された取扱説明書を含む。
【0012】
別の態様では、本発明は皮膚美白有効量のFAS阻害剤と薬学的に許容し得る担体とを組み合わせることを含む皮膚美白用医薬品組成物の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
幾つかの実施形態では、FAS阻害剤は、セルレニンおよびセルレニン類似体から成るグループより選択されるが、これには薬学的に許容し得るその塩およびその溶媒化合物が包含される。これに関し用いられる場合、用語「類似体」はセルレニンと構造的に関連しており、そして少なくとも測定可能量のFAS阻害活性を保持している化合物を意味する。セルレニン類似体の非限定的な例としては、Morisakiら(1992年)Chem.Pharm.Bull.40巻、2945〜2953ページ、Shimazawaら(1992年)Chem.Pharm.Bull.40巻、2954〜2957ページおよび米国特許第5,539,132号(発明者:Royerら、1996年7月23日発行)に記載のセルレニン類似体が挙げられる。セルレニンはシグマ社(Sigma)(セントルイス、ミズーリ州)より購入できるだろう。
【0014】
幾つかの実施形態では、FAS阻害剤はα−メチレン−γ−ブチロラクトンおよびα−メチレン−γ−ブチロラクトン類似体より成るグループから選択されるが、これには薬学的に許容し得るその塩および溶媒化合物が包含される。これに関し用いる場合、用語「類似体」はそれぞれのα−メチレン−γ−ブチロラクトンと構造的に関連しており、そして少なくとも測定可能量のFAS阻害活性を保持している化合物を意味する。α−メチレン−γ−ブチロラクトン類似体の非限定的な例としては、米国特許第5,981,575号(発明者:Kuhajdaら、1999年11月9日発行)に記載のものが挙げられる。α−メチレン−γ−ブチロラクトンはシグマ社(Sigma)(セントルイス、ミズーリ州)より購入できるだろう。
【0015】
幾つかの実施形態では、FAS阻害剤はチオラクトマイシンおよびチオラクトマイシン類似体より成るグループから選択されるが、これには薬学的に許容し得るその塩および溶媒化合物が包含される。これに関し用いる場合、用語「類似体」はチオラクトマイシンと構造的に関連しており、そして少なくとも測定可能量のFAS阻害活性を保持している化合物を意味する。そのチオラクトマイシン類似体の非限定的な例としては、Wangら(1984年)Tetrahdron Lett.25巻、5243〜5246ページ、Oishiら(1982年)J.Antibiotics 35巻、391〜395ページ(そこに開示されたATCC株番号31319)およびKremerら(2000年)J.Bio.Chem.275巻、16857〜16864ページに記載されている。
【0016】
別の実施形態では、FAS阻害剤はトリクロサンまたはその類似体である。トリクロサンはI型脂肪酸合成酵素のエノイル還元酵素を阻害することが知られている。別の実施形態では、FAS阻害剤は4−フェニル−5−フェニルイミノ−[1,2,4]ジチアゾリジン−3−オン)または5−クロロ−4−フェニル−[1,2]−ジチオール−3−オン)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本明細書において参照される特許および科学文献は、当業者にとって利用可能な知識を確認する。本明細書に引用されている発行済み特許、出願、参考文献は、それぞれが明確且つ個別的に参照により援用されるように指示されているかのごとく参照により本明細書に援用される。
【0018】
本発明は脂肪酸合成酵素(FAS)の活性を阻害する作用物質の使用を含むメラニン産生および皮膚への色素沈着を阻害するための方法および医薬品組成物を提供する。
【0019】
FAS(E.C.2.3.1.85)はヒトに於ける脂肪酸生合成経路を構成する4種類の主要酵素の一つである。脂肪酸生合成経路の構成要素には次のものが含まれる:マロニルCoAを合成する律速酵素であるアセチルCoAカルボキシラーゼ;NADPHを産生するリンゴ酸酵素;アセチルCoAを合成するクエン酸リアーゼ;およびアセチルCoAとマロニルCoAから脂肪酸へのNADPH依存的合成を触媒するFAS。FAS活性の最終産物である遊離脂肪酸は、他の産物への取込みに関して補酵素Aによる別の酵素的誘導が必要である。高等生物では、FASは単一分子に対し次の7種類の酵素機能を発揮することがよく知られている多機能酵素である:アセチルトランスアシラーゼ、マロニルトランスアシラーゼ、β−ケトアシル合成酵素(濃縮酵素)、β−ヒドロキシアシル還元酵素、β−ヒドロキシアシルデヒドラーゼ、エノイル還元酵素、およびチオエステラーゼ(Wakil(1989年)Biochem.28巻、4523〜4530ページ参照)。
【0020】
本発明はFASの活性の阻害がメラノサイト内でのメラニン産生の減少をもたらすという発見を利用するものである。当技術分野ではコレステロール合成とメラニン産生との間の結びつきが注目されている(米国特許第6,126,947号(発明者:Savionら、2000年10月3日発行))。また脂肪酸が遊離コレステロールの細胞内エステル化にとって必要な基質であることも知られている。さらに脂肪酸がチロシナーゼのタンパク質分解性の分解を修飾し、メラノーマでのメラニン形成に抑制的な効果を発揮することも知られている(Andoら(1999年)J.Lipid Res.10巻、1312〜1316ページ)。しかしこれまで脂肪酸生合成経路がメラニン形成に影響を及ぼすことができるということは知られていなかった。
【0021】
それ故に一態様では、本発明はメラノサイトに於けるFASの阻害を介したメラノサイト内のメラニン産生を減少させる方法を提供する。
【0022】
本明細書では用語「メラニン産生を減少させる」は、FASを阻害する化合物に曝露されたメラノサイトが新たに合成するメラニンの量が、未処理の対照メラノサイトが新たに合成するメラニン量に比べ検知可能なほど低下することを意味する。好ましくは、用語「低下する」は新たに合成されたメラニン量が約10%ないし約100%減少することを意味する。より好ましくは用語「低下する」とは新たに合成されたメラニンの量が約25%ないし約100%減少することを表す。最も好ましくは、用語「低下する」は新たに合成されたメラニンの量が約50%ないし約100%減少することを表す。
【0023】
句「FASの活性を阻害する」は本明細書ではFAS活性の約10%ないし約100%の減少を表すのに用いられる。より好ましくは、用語「FASの活性を阻害する」はFAS活性の約25%ないし約100%の減少を表し、最も好ましくはFAS活性の約50%ないし約100%の減少を表す。本発明はFAS活性に必要とされる上記7種類の酵素段階の任意のもの、およびいかなる固有の段階または過程を介したFASの阻害をも想定している。FAS活性の減少または変化は、NADPHの酸化に基づく分光測光法、またはアセチルもしくはマロニルCoAの様なFAS基質内への放射活性もしくはその他標識体の取込みを含む方法を包含するいかなる既知の方法によって測定することも可能である(Dilsら(1975年)Meth.Enzymol.35巻、74〜83ページ)が、これら方法に限定されない。
【0024】
用語「約」は本明細書ではおおよそ、ほぼ、大まかまたは前後を意味するのに用いられる。用語「約」をある数値範囲と共に用いる時は、その境界を記載されている数値の上下に拡張してその範囲を緩和する。一般に本明細書では用語「約」は数値を記載されている数値の上下、偏差20%まで緩和することを意味する。
【0025】
「FASの阻害剤」には競合的および非競合的FAS阻害剤が包含される。競合的FAS阻害剤は相互に基質結合を排除する形でFAS酵素に結合する分子である。通常、FASの競合的阻害剤は活性部位に結合する。非競合的FAS阻害剤はFASの合成を阻害するものであってもよいが、その酵素への結合は基質結合に関し相互に排除的ではない。本発明で想定するFAS阻害剤は、少なくとも同程度の濃度において他の細胞活動にいかなる重大な影響をも及ぼすことなく動物細胞内のFASの活性を低減する化合物である。
【0026】
様々な化合物がFASを阻害することが分かっており、本発明での使用に関し好適であるFAS阻害剤を選択することは当業者の技術範囲内である。FASを阻害する化合物は、精製FAS酵素を用いてその化合物の脂肪酸合成酵素活性阻害能力を試験することで同定できる。例えばFAS合成酵素の活性は、NADPHの酸化に基づく分光測光法により、または放射線標識されたアセチルもしくはマロニルCoAの取込を測定することで放射活性的に測定できる。(Dilsら(1975年)Meth.Enzymol.35巻、74〜83ページ)。FAS阻害剤は、例えば国際特許出願公開WO94/02108号(出願人:The Johns Hopkins University、1994年2月3日公開)に例示されている。好適なFAS阻害剤はまた、FAS阻害剤への曝露が細胞毒である腫瘍細胞株を用いる簡単な試験でも同定できるだろう。この様な細胞株にはZR−75−1(ATCC番号CRL−1500)および好ましくはHL60(ATCC番号CCL−240)(アメリカン・タイプ・ティシュ・コレクション(ATCC)、マナサス、バージニア州)が挙げられる。好適なFAS阻害剤はこれら細胞株の増殖を阻害するが、細胞はFAS酵素の脂肪酸産物を外部から供給することで救済される。細胞増殖を外因性の脂肪酸(例えばパルミチン酸塩またはオレイン酸塩)がある状態と無い状態で測定する時、特異的FAS阻害剤による阻害はこれら脂肪酸により解除される。
【0027】
非限定的に例示すると、セルレニンは本発明の方法に有益な非競合的FAS阻害剤の1つである。構造的にはセルレニンは[2R,3S]−2,3−エポキシ−4−オキソ−7,10−trans,trans−ドデカン酸アミドとして特徴づけられる。セルレニンは元来潜在的な抗菌性抗生物質としてセファロスポリウム・カエルレンス(Cephalosporium caerulens)の培養液から単離された。その作用機序は、不可逆的な結合を介した、脂肪酸生合成に必要な濃縮酵素であるβ−ケトアシル−ACP合成酵素の阻害であることが示されている(D’Agnoloら(1973年)Biochim.Biophys.Acta 326巻、155〜166ページ)。セルレニンは抗菌剤、主にカンジダおよびサッカロミセス種に対する抗菌剤に分類されている。
【0028】
幾つかの実施形態では、FAS阻害剤はセルレニンおよびセルレニン類似体から成るグループから選択されるが、それには薬学的に許容し得るその塩および溶媒化合物が含まれる。本明細書内で使用される場合、用語「類似体」は、セルレニンと構造的に関連しており、そして少なくとも測定可能量のFAS阻害活性を保持している化合物を意味する。セルレニンおよびセルレニン類似体の非限定的な例としては、Morisakiら(1992年)Chem.Pharm.Bull.40巻、2945〜2953ページ、Shimazawaら(1992年)Chem.Pharm.Bull.40巻、2954〜2957ページ、および米国特許第5,539,132号(発明者:Royerら、1996年7月23日発行)に記載のものが挙げられる。あるいは、セルレニンはシグマ社(Sigma)(セントルイス、ミズーリ州)より購入してもよい。
【0029】
幾つかの実施形態では、FAS阻害剤はα−メチレン−γ−ブチロラクトンおよびα−メチレン−γ−ブチロラクトン類似体より成るグループから選択されるが、これには薬学的に許容し得るその塩および溶媒化合物が包含される。本明細書内で使用される場合、用語「類似体」はそれぞれのα−メチレン−γ−ブチロラクトンと構造的に関連しており、そして少なくとも測定可能量のFAS阻害活性を保持している化合物を意味する。α−メチレン−γ−ブチロラクトン類似体の非限定的な例としては、米国特許第5,981,575号(発明者:Kuhajdaら、1999年11月9日発行)に記載のものが挙げられる。別法として、α−メチレン−γ−ブチロラクトンはシグマ社(Sigma)(セントルイス、ミズーリ州)より購入できるだろう。
【0030】
幾つかの実施形態では、FAS阻害剤はチオラクトマイシンおよびチオラクトマイシン類似体より成るグループから選択されるが、これには薬学的に許容し得るその塩および溶媒化合物が包含される。これに関し用いる場合、用語「類似体」はチオラクトマイシンと構造的に関連しており、そして少なくとも測定可能量のFAS阻害活性を保持している化合物を意味する。チオラクトマイシンおよびその類似体の非限定的な例としては、Wangら(1984年)Tetrahdron Lett.25巻、5243〜5246ページ、Oishiら(1982年)J.Antibiotics 35巻、391〜395ページ(そこで開示されたATCC株番号31319)およびKremerら(2000年)、J.Bio.Chem.275巻、16857〜16864ページに記載されている。
【0031】
別の実施形態では、FAS阻害剤はトリクロサンまたはその類似体である。トリクロサンはI型脂肪酸合成酵素のエノイル還元酵素を阻害することが知られている(Luiら、Cancer Chemother.Pharmacol.49巻、187〜193ページ(2002年))。別の実施形態では、FAS阻害剤は4−フェニル−5−フェニルイミノ−[1,2,4]ジチアゾリジン−3−オン)または5−クロロ−4−フェニル−[1,2]−ジチオール−3−オン)である(Heら、Antimicorbial Agents and Chemotherapy 46巻、1310〜1318ページ(2002年))。
【0032】
好適なFAS阻害剤は高い治療指数により特徴づけてもよい。例えば阻害剤は細胞培養体中の脂肪酸合成を50%阻害するのに必要な濃度(IC50またはID50)で特徴付けできる。高い治療指数を持つFAS阻害剤は外因性の脂肪酸存在下で、細胞増殖阻害のIC50より低い濃度で(IC50により測定した時)脂肪酸合成を阻害するだろう。これら2種類の細胞活動に及ぼす作用の違いが大きい阻害剤ほどより好ましい。脂肪酸合成の好ましい阻害剤は、細胞増殖について決定された阻害剤のIC50に比べ少なくとも一対数、より好ましくは少なくとも2対数、そしてさらに好ましくは少なくとも3対数低い脂肪酸合成活性に関するIC50を持つだろう。
【0033】
FAS阻害剤が本発明の方法において有益であるかどうかを決定する別の方法は、メラニン形成の低減を証明できる当業者既知のアッセイを用いる方法である。例えば下記実施例1に記載の様に、培養したメラノサイトを提案されるFAS阻害剤試験化合物とインキュベーションし、メラニン含有量を、例えば分光測光的に試験できる。つぎにこのメラニン含有量を未処理の培養メラノサイトのメラニン含有量と比較して、このFAS阻害剤がメラニン形成を阻害するかどうかを決定する。
【0034】
非限定的な例では、メラニン形成はヒト初代メラノサイトでアッセイしてもよい。簡単に述べると、試験化合物をα−メラノサイト刺激ホルモン(α−MSH)存在下にヒト初代メラノサイトと2〜3日間インキュベーションする。次に細胞を水酸化ナトリウムとドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を用い溶解し、メラニンシグナルを405nmで分光測光法により読み取る。あるいは14C−DOPAを試験化合物と一緒に細胞に添加し、シンチレーションカウンターで酸不溶性の14C−メラニンを定量してもよい。計算されたIC50値はα−MSHで刺激を受けた新規メラニン合成における化合物の阻害能を反映する。メラニン形成アッセイはヒトの皮膚を使った同等モデルでも実施できる。簡単に述べると、ヒトメラノサイトとケラチノサイトの混合物を空気−液体界面内で増殖させる。この組織培養体は組織学的および顕微鏡的にヒト皮膚上皮に似た3次元構造を形成する。試験化合物をこの細胞の上に加え、薬物の局所適用を模する。化合物とインキュベーションした後、細胞をよく洗い、溶解してDOPAオキシダーゼアッセイにかける。
【0035】
メラニン形成はインビボでも検証できる。簡単に述べると、このタイプの試験には皮膚の色が均一な黒または濃褐色であるモルモットが使用できる。試験化合物溶液(例えばエタノール:プロピレングリコール、70:30の1〜5%溶液)および賦形剤コントロールをこの動物の皮膚に1日2回、1週間に5日で4〜8週間作用させる。このアッセイを用い、例えば皮膚の色素脱失が観察できる。
【0036】
米国特許第5,759,837号(発明者:Kuhajdaら、1998年6月2日発行)に詳述されている様に、本発明にとって有益なFASのその他非限定的な阻害剤例としては、1,3−ジブロモプロパノン、エルマン試薬[5,5′−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸),DTNB]、4−(4′−クロロベンジルオキシ)ベンジルニコチン酸塩(KCD−232)、4−(4′−クロロベンジルオキシ)安息香酸(MII)、2[5(4−クロロフェニル)ペンチル]オキシラン−2−カルボン酸塩(POCA)およびそのCoA誘導体、無水エトキシ蟻酸塩、チオラクトマイシン、フェニルセルレニン、メラルソプロール、ヨード酢酸塩、ペントスタム、メリチン、メチルマロニルCoA、ならびにそれらのFAS−阻害類似体が挙げられる。
【0037】
本発明はまた上記いずれかの化合物の薬学的に許容し得る酸付加塩および塩基性塩の利用に関する。本発明の上記塩基化合部の薬学的に許容し得る酸付加塩の調製に用いられる酸は、非毒性の酸付加塩、即ち薬学的に許容し得るアニオンを含有する塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、重酒石酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、糖酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩およびパモ酸塩(即ち1,1−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸塩)のような塩を形成する酸である。
【0038】
本質的に塩基性である、本発明による有用化合物は、様々な無機および有機酸と極めて多様な塩を形成できる。このような塩は動物への投与が薬学的に許容し得るものでなければならないが、実際には薬学的に許容し得ない塩である反応混合物からまず化合物を単離し、次にこの化合物を単にアルカリ試薬で処理して遊離型の塩基性化合物に変換し、続いてこの遊離型塩基を薬学的に許容し得る酸付加塩に変換することが望ましい場合が多い。本発明の活性塩基性化合物の酸付加塩は、この塩基性化合物を実質的に等量の選択した鉱物酸もしくは有機酸の水性溶媒またはメタノールもしくはエタノールの様な好適な有機溶媒で処理することで容易に調製される。溶媒を注意しながら蒸発させれば、所望の固形塩が容易に得られる。
【0039】
本質的に酸性である、本発明による有用化合物は、各種薬学的に許容し得るカチオン類と塩基性塩を形成できる。このような塩の例としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の塩、ならびに特にナトリウムおよびカリウム塩が挙げられる。これらの塩は従来の技術により調製できる。本発明の薬学的に許容し得る塩基性塩を調製する試薬として用いられる塩基性化学物質は、本発明の酸性化合物と無毒の塩基性塩を形成するものである。このような無毒の塩基塩としては、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウム等の薬学的に許容し得るカチオンから誘導された塩が挙げられる。これら塩は、対応する酸性化合物を所望の薬学的に許容し得るカチオンを含む水溶液で処理し、次に得られた溶液を、好ましくは減圧下に蒸発して乾燥することで容易に調製できる。あるいはこれら塩は酸性化合物の低級アルカノール溶液と所望のアルカリ金属アルコキシドとを混合し、次に得られた溶液を上記と同様に蒸発して乾燥することで調製できる。いずれの場合も、反応を確実に完了させ、所望の最終産物を最大量回収するためには、試薬を化学量論的な量用いることが好ましい。
【0040】
本明細書で論じるFAS阻害剤は一般的には酵素を直接阻害する低分子化合物であるが、FASの生合成を特異的に阻止することが所望の結果を達成する均等手段であることは通常の知識を有する臨床医にとって自明である。従って、本発明はまたメラニン形成を阻害する方法または皮膚を美白化する方法としてのFAS生合成の阻害も想定している。これはFASをコードしているmRNAを選択的に分解すること、またはその転写および/または翻訳を妨害することで達成されるだろう。例えばこれは、FASのmRNAに特異的なリボザイムを導入することで達成できるだろう(リボザイムの方法論については例えばCzubaykoら(1994年)J.Biol.Chem.269巻、21358〜21363ページを参照)。あるいは、これはFASの核酸配列に対し相補的なアンチセンスRNAにより達成できるだろう。ヒトFASのcDNAの配列はGenBankに寄託されている(GenBank番号NM004104)。一実施形態では、アンチセンス治療は、アンチセンス方向に発現する様にプロモーターと作動可能に連結したヒトFASをコードする配列の少なくとも一部を含む発現ベクターを包含する。別の実施形態では、アンチセンス配列は既知FAS配列の知識を用いて設計され、化学的に合成される。いずれの場合も、アンチセンス分子は分子が分解耐性となる様式で産生されてもよい。このような修飾としては、修飾型主鎖、キャップ構造、または分解を防止することが当業者に知られているその他の修飾が挙げられる。結果として、FAS mRNAに対し相補的であり、それに結合もしくはハイブリダイゼーションできるアンチセンス分子が生成される。FAS mRNAへ結合することで、そのmRNAの翻訳が阻止され、その結果FASは産生されない。アンチセンス発現ベクターの産生および使用は米国特許第5,107,065号(発明者:Shewmakerら、1992年4月21日発行)および米国特許第5,190,931号(発明者:Masayori Inouye、1993年3月2日発行)にさらに詳しく記載されている。
【0041】
メラノサイトでのFASの阻害、およびその結果として起こるその後のメラニン合成の阻害または減少は、皮膚の美白を目的とする方法に有用である。即ち、メラノサイトをインビトロまたはインビボでメラニン産生を阻害するのに有効である量のFAS阻害剤と接触させると、所望の皮膚美白効果が生じるだろう。この目的に好適な化合物としては、FAS活性の阻害に関する上記化合物があり、そしてセルレニンおよびそのFAS阻害性類似体、α−メチレン−α−ブチロラクトンおよびそのFAS阻害性類似体、ならびにチオラクトマイシンおよびそのFAS阻害性類似体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
本明細書では用語「皮膚の美白」は、ある個体の皮膚にFAS阻害剤を含む治療処方剤を接触させた後に皮膚の色素沈着が検知可能に低減すること、例えば肉眼で確認できる低減をすることを意味している。
【0043】
好ましくは、本発明の方法および組成物は、脊椎動物の細胞または個体、より詳細には哺乳動物の細胞または個体、最も好ましくは人の細胞または個体に適用される。用語「個体」は本明細書では脊椎動物、哺乳動物またはヒトを表すのに用いている。
【0044】
医薬品または化粧品としての使用に関しては、皮膚メラノサイト内のFAS活性を阻害することで皮膚の色素沈着を低減する化合物が医薬品組成物の一部であることが好ましい。本発明の医薬品組成物は、メラニンの誤った産生、および/または過剰産生を引き起こす様な病気、障害または状態を持つヒト、または動物に投与されるだろう。
【0045】
医薬品として使用に加え、本発明の組成物および方法は美容目的でも有益である。例えばメラニンの産生または過剰産生の結果として皮膚または髪に生じた顕著な望ましくない色素形成は、本発明の方法を利用して治療できるだろう。本発明の方法の美容分野への応用としては、メラノサイト内のFASを阻害してメラノサイト内のメラニン産生を減少させ、皮膚または毛髪の外観を向上または変化させる化合物を1種類またはそれ以上含む組成物の利用が挙げられる。あるいは、例えば日光または紫外線照射の結果起こるメラニン産生を予防することも、本発明の皮膚美白方法の適切な応用と考えられる。
【0046】
本明細書中に使用される場合、「その必要がある人」とは、顕著な、望まれない色素沈着状態の個体、または顕著な望まれない色素沈着状態は存在しないが色素形成を減少させることを決めた個体を指す。
【0047】
当業者が本開示を考慮して気が付く様に、本明細書に開示された発明の方法で用いられる組成物は、FAS活性を阻害するために単独で、または互いに組み合わせて用いることが可能である。さらに本発明の方法は、メラニン合成を阻害することが当分野で既知であるその他の化合物を追加使用することも包含している。例えば本発明の化合物はチロシナーゼ阻害剤と組み合わせて使用されてもよいが、チロシナーゼはメラニン合成の重要酵素である。このような阻害剤は当業者に既知である(例えば米国特許第5,580,549号(発明者:Fukudaら、1996年12月3日発行)を参照)。これとは別に、あるいは追加的に、ヒドロキノン類の様な皮膚漂白化合物を組成物に加えても良い。
【0048】
本発明の医薬品組成物はヒトまたは動物といった被験体に投与される。好ましくは、投与は局所適用により行われる。本発明の組成物の形態は、医薬業界または美容業界において局所適用に関し一般的である各種形態のいずれでもよく、溶液、ゲル、ローション、軟膏、クリーム、懸濁液、ペースト、塗布剤、パウダー、チンキ、エアゾール、経皮的ドラッグデリバリーシステム、または膏薬が挙げられる。好ましい成分としては、増粘剤、pH安定化剤、酸化防止剤、安定化剤、芳香剤および着色剤が挙げられる。一実施形態では、調剤は治療域に留まるのに十分な粘度を持ち、容易に蒸発せず、そして随意に石鹸、洗浄剤、および/またはシャンプーを用いて、水で濯ぐことにより簡単に除去することができるものである。別の実施形態では、本発明は水による濯ぎ、あるいは石鹸、洗浄剤および/またはシャンプーによる洗浄で容易に除去されない調剤を包含する。局所調剤を調製する実際の方法は当業者に既知であるかまたは明らかであり、レミントン薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)、17版、(1990年)Mack Publishing Company、イーストン、ペンシルバニア州;および医薬品投与形態とドラッグデリバリーシステム(Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems)、6版、Williams & Wilkins(1995年)に詳述されている。
【0049】
活性成分の経皮吸収を高めるために、1またはそれ以上の数の作用物質を局所調剤に加えても良く、作用物質としてはジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、界面活性剤、アゾン、アルコール、アセトン、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコールを挙げることができるが、これらに限定されない。さらに物理的方法、例えばイオン導入法または音響導入法を用い経皮的浸透性を高めることもできる。この代わりに、またはこれに加え、リポソームを使用してもよい。
【0050】
本発明による有用化合物(即ちFAS阻害剤)、およびそれらの薬学的に許容し得る塩は、ヒトの色素沈着障害の治療に有用である。本発明による有用化合物は本発明の調剤中に約0.01重量%ないし約50重量%、またはより好ましくは約0.1重量%ないし約10重量%、または最も好ましくは約0.5重量%ないし約5重量%含まれる。
【0051】
本明細書で用いる場合、化合物の「皮膚美白有効量」とは、治療効果期間後に皮膚を検知可能に明るくする化合物の量を意味する。当業者は特定の診断と所望の皮膚美白効果に基づき「治療有効期間」を決定できる。ヒト色素沈着障害の非限定的な例としては、日光または単純黒子(しみ/肝斑を含む)、黒皮症/褐色斑および炎症後色素沈着過度がある。上記化合物はメラニンの産生を阻害することで皮膚のメラニンレベルを下げるが、メラニンは構成的またはUV照射(日光への曝露等)に反応して産生される。従って本発明で用いられる一部の活性化合物は非病的状態まで皮膚メラニン含有量を低減し、皮膚の色調を使用者が望む程度に明るくするか、UV照射に曝露した皮膚へのメラニンの沈積を防止することができる。それらはまた皮膚ピーリング剤(グリコール酸またはトリクロロ酢酸による顔面ピーリングを含む)と組み合わせて用い、皮膚の色調を明るくし、色素の再形成を防ぐことができる。
【0052】
本発明はFAS阻害剤または薬学的に許容し得るその塩、および1またはそれ以上の本明細書に参照したその他活性成分とを同一医薬品組成物の一部として一緒に投与して皮膚の色素形成を調整する方法、および併用治療の利益を獲得することを目的にデザインされた適当な投与形態の一部としてそれらを別々に投与する方法の両方に関する。適当な投与形態、各投薬量、および各活性作用物質の具体的な投与間隔は、用いる活性作用物質の具体的な組み合わせ、治療対象患者の状態、治療対象となる障害または状態の性質および重症度により決まるだろう。このような追加の活性成分は、一般に単独の局所治療薬として有効である量より少ないかまたは等しい量投与される。ヒトへの投与についてFDAの承認を得たこのような活性作用物質については、FDA承認投与量が公開されている。
【0053】
例えば本発明の皮膚美白方法に従い用いられる化合物は、チロシナーゼ阻害剤または当分野既知であるかもしくは将来開発されるその他の皮膚美白剤と組み合わせ使用することができるが、これら作用物質には特に次の特許文献に記載されるそのような作用物質の1またはそれ以上が含まれる:米国特許第4,278,656号(発明者:Nagaiら、1981年7月14日発行);米国特許第4,369,174号(発明者:Nagaiら、1983年1月18日発行);米国特許第4,959,393号(発明者:Toriharaら、1990年9月25日発行);米国特許第5,580,549号(発明者:Fukudaら、1996年12月3日発行);米国特許第6,123,959号(発明者:Jonesら、2000年9月26日発行);米国特許第6,132,740号(発明者:Hu、2000年10月17日発行);米国特許第6,159,482号(発明者:Tuloupら、2000年12月12日発行);国際出願公開WO99/32077号(出願人:L’Oreal、1999年7月1日公開);国際出願公開WO99/64025号(出願人:Fytokem Prod.Inc.、1999年12月16日公開);国際出願公開WO00/56702号(出願人:Pfizer Inc.、2000年9月28日公開);国際出願公開WO00/76473号(出願人:Shiseido Co.Ltd.、2000年12月12日公開);欧州特許公報EP997140号(出願人:L’Oreal SA、2000年5月3日公開);特開平5−221846号(出願人:Kunimasa Tomoji、1993年8月31日公開);特開平7−242687号(出願人:Shiseido Co.Ltd.、1995年9月19日公開);特開平7−324023号(出願人:Itogawa H、1995年12月12日公開);特開平8−012552号(出願人:Shiseido Co.Ltd.、1996年1月16日公開);特開平8−012554号(出願人:Shiseido Co.Ltd.、1996年1月16日公開);特開平8−012557号(出願人:Shiseido Co.Ltd.、1996年1月16日公開);特開平8−012560号(出願人:Shiseido Co.Ltd.、1996年1月16日公開);特開平8−012561号(出願人:Shiseido Co.Ltd.、1996年1月16日公開);特開平8−134090号(出願人:Fujisawa、1996年5月28日公開);特開平8−168378号(出願人:Kirinjo KK、1996年7月2日公開);特開平8−277225号(出願人:Kansai Koso KK、1996年10月22日公開);特開平9−002967号(出願人:Sanki Shoji KK、1997年1月7日公開);特開平9−295927号(出願人:Yagi Akira、1997年11月18日公開);特開平10−072330号(出願人:Kansai Kouso、1998年3月17日公開);特開平10−081626号(出願人:Kamiyama KK、1998年3月31日公開);特開平10−101543号(出願人:Kansai Kouso KK、1998年4月21日公開);特開平11−071231号(出願人:Maruzen Pharm.、1999年3月16日公開);特開平11−079934号(出願人:Kyodo Nyugyo、1999年3月23日公開);特開平11−246347号(出願人:Shiseido Co.Ltd.、1999年9月14日公開);特開平11−246344号(出願人:Shiseido Co.Ltd.、1999年9月14日公開);特開2000−080023号(出願人:Kanebo Ltd.、2000年3月21日公開);特開2000−095663号(出願人:Kose KK、2000年4月4日公開);特開2000−159681号(出願人:Hai Tai Confectionary Co.Ltd.、2000年6月13日公開);特開2000−247907号(出願人:Kanebo Ltd.、2000年9月12日公開);特開平9−002967号(出願人:Sanki Shoji KK、1997年1月7日公開);特開平7−206753号(出願人:Nikken Food KK、1995年8月8日公開);特開平5−322025号(出願人:Kunimasa T、1993年12月3日公開);および特開平5−9157009号(出願人:Yakurigaku Chuou KE、1984年9月6日公開)。
【0054】
皮膚美白に関して、本発明に用いられる活性化合物は日焼け止め剤(UVAまたはUVBブロッカー)と組み合わせて使用し、色素再形成を防ぎ、日光またはUVによる皮膚の黒ずみから保護し、または皮膚メラニンを減らす能力およびそれらの皮膚漂白作用を高めることもできる。皮膚美白に関して、本発明に用いられる活性化合物はレチノイン酸もしくはその誘導体、またはレチノイン酸受容体と相互作用する化合物と組み合わせ使用することもでき、皮膚メラニンを減らす本発明の能力および皮膚漂白作用を増進しまたは高め、あるいは皮膚メラニンの沈積を防ぐ本発明の能力を高めることができる。皮膚美白に関し、本発明に用いられる活性化合物は4−ヒドロキシアニソールと組み合わせて使用することもできる。皮膚美白に関し、本発明に用いられる活性化合物はアスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体およびアスコルビン酸をベースとする生成物(例えばアスコルビン酸マグネシウム)またはそれらの持つ皮膚メラニンを減らす能力およびそれらの皮膚漂白作用を増進しまたは高める抗酸化機序を持つ他の生成物(レズベラトロールの様な)と組み合わせて使用することもできる。
【0055】
局所適用される本発明の組成物は、本明細書に記載の様にFAS活性を阻害する医薬品としての効果を持つ作用物質、および担体としての用途に必要とされる成分を含む。これら担体の非限定的な例は以下詳細に説明されており、そして国際特許出願公開WO00/62742号(2000年10月26日公開)、米国特許第5,691,380号(発明者:Masonら、1997年11月25日発行)、米国特許第5,968,528号(発明者:Deckerら、1999年10月19日発行)、米国特許第4,139,619号(発明者:Chides,III、1979年2月13日発行)、および米国特許第4,684,635号(発明者:Orentreichら、1987年8月4日発行)、に見いだすことができるだろう。好適な医薬品担体はさらにこの分野の標準的な参考文献であるレミントンの薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)、(1990年)(上記)にさらに詳しく記載されている。
【0056】
本発明の医薬品組成物はさらにその他構成成分を含んでもよい。このような随意の構成成分は角質組織への適用に好適でなければならず、換言すれば組成物内に取り込んだ時にそれら成分はヒト角質組織との接触使用に好適であり、正しい医学的判断の範囲にある過度の毒性、不適合性、不安定性、アレルギー反応等がない。さらにこのような随意の構成成分は、FAS阻害剤および本発明のその他活性化合物の利益を許容不能な形で変化させない場合に有用である。CTFA化粧品成分ハンドブック(CTFA Cosmetic Ingredient Handbook)(1992年)第2版は、スキンケア産業で一般的に使用されている様々な非限定的な化粧用および医薬品用成分を掲載しているが、これらは本発明の組成物での使用に好適である。これら成分分類の例としては、研磨成分、吸湿成分、エステティック成分(芳香剤、顔料、着色剤/染料、エッセンシャルオイル、皮膚感触改良成分、アストリンゼン等(例えば丁子油、メタノール、カンフル、ユーカリ油、オイゲノール、乳酸メンチル、アメリカマンサク蒸留エキス))、ニキビ治療薬、塊防止剤、消泡剤、抗菌剤(例えばヨードプロピルブチルカルバメート)、酸化防止剤、結合剤、生物学的添加剤、緩衝剤、増量剤、キレート剤、化学添加物、着色料、化粧品用アストリンゼン、化粧品用殺虫剤、変成剤、薬用アストリンゼン、外用鎮痛剤、組成物の膜形成特性と直接性を助けるための塗膜形成剤または塗膜材料(例えばポリマー)(例えばエイコセンとビニルピロリドンのコポリマー)、不透明化剤、pH調整剤、推進剤、還元剤、金属イオン封鎖剤、皮膚コンディショニング剤(例えば湿潤剤、種々雑多のものおよび閉鎖型のものを含む)、皮膚軟化剤および/または治癒剤(例えばパンテノールと誘導体(例えばエチルパンテノール)、アロエ、パントテン酸とその誘導体、アラントイン、ビスアボロール、およびグリシルリジン酸二カリウム)、皮膚処理剤、増粘剤、ならびにビタミンとその誘導体が挙げられる。
【0057】
薬学的有効量のFAS阻害剤に加え、本発明の局所組成物はさらに皮膚科学的に許容し得る担体を含む。本明細書で用いる句「皮膚科学的に許容し得る担体」とは、この担体が皮膚、即ち角質組織への局所適用に好適であること、良好な審美特性を有すること、本発明の活性作用物質およびその他成分に適合していること、ならびに安全性または毒性に関する問題を起こさないことを意味する。担体の安全有効量は組成物の約50%ないし約99.99%、好ましくは約80%ないし約99.9%、より好ましくは約90%ないし約98%、そして最も好ましくは約90%ないし約95%である。
【0058】
本発明の組成物で利用される担体は様々な形態が可能である。そのような形態としては水中油、油中水、水中油中水、およびシリコーン中水中油乳剤を含むがこれらに限定されない乳剤担体、クリーム、軟膏、水溶液、ローションまたはエアゾールが挙げられる。当業者により理解される様に、加えられた成分は組成物中のその成分が持つ水溶解性/分散性に従って主として水または油/シリコーン相のいずれかに分配される。
【0059】
本発明による乳剤は一般には薬学的有効量のFAS阻害剤と脂質または油を含む。脂質および油は動物、植物または石油に由来するものでよく、そして天然または合成(即ち人工)のいずれのものでよい。好ましい乳剤はグリセリンの様な湿潤剤も含む。好ましくは、乳剤はさらに担体重量をベースとして約1%ないし約10%、より好ましくは約2%ないし約5%の乳化剤を含むだろう。乳化剤は非イオン性でも、アニオン性でもカチオン性でもよい。好適な乳化剤は例えば1973年8月28日発行、米国特許第3、755、560号to Dickertら、およびMcCutcheonの界面活性剤と乳化剤(McCutcheon's Detergents and Emulsifiers)、北米版、317〜324ページ(1986年)に開示されている。
【0060】
乳剤は角質組織に用いた時に泡の形成を最小限にするための泡消去剤を含んでもよい。泡消去剤としては高分子量シリコーンおよびその使用について当分野周知のその他物質を挙げることができる。
【0061】
好適な乳剤は所望の製品形態に応じて広範囲の粘度を有するだろう。好ましい低粘度乳剤例は約50センチストークス以下、より好ましくは約10センチストークス以下、最も好ましくは約5センチストークス以下の粘度を有する。乳剤はまた角質組織に用いた時に泡の形成を最小限にするための泡消去剤を含んでもよい。泡消去剤としては高分子量シリコーンおよびその使用について当分野周知のその他物質を挙げることができる。
【0062】
乳剤のタイプの一つはシリコーン中水乳剤である。シリコーン中水乳剤は連続シリコーン相と分散水相を含む。好ましい本発明のシリコーン中水乳剤は、約1重量%ないし約60重量%、好ましくは約5重量%ないし約40重量%、より好ましくは約10重量%ないし約20重量%の連続シリコーン相を含む。連続シリコーン相は以下記載の不連続水相を含む、または取り囲む外相として存在する。
【0063】
連続シリコーン相は有機ポリシロキサン油を含んでもよい。好ましいシリコーン中水乳剤系は、薬学的有効量のFAS阻害剤の運搬に適した酸化的に安定した賦形剤を提供するよう調合される。これら好適な乳剤の連続シリコーン相は約50重量%ないし約99.9重量%の有機ポリシロキサン油と、約50重量%未満の非シリコーン油を含む。特に好ましい実施形態では、連続シリコーン相は連続シリコーン相の重量の少なくとも約50%、好ましくは約60%ないし約99.9%、より好ましくは約70%ないし約99.9%、さらにより好ましくは約80%ないし約99.9%の有機ポリシロキサン油と、連続シリコーン相の重量の最大約50%、好ましくは約40%未満、より好ましくは約30%未満、さらにより好ましくは約10%未満、そして最も好ましくは約2%未満の非シリコーン油を含む。これら有益な乳剤系はより低濃度の有機ポリシロキサン油を含む同等の油中水乳剤に比べより長期間、より高い酸化安定性を示すだろう。組成物中の本発明の活性化合物の酸化安定性をさらに高め得るように、連続シリコーン相内の非シリコーン油の濃度は最小限にするか、すべて無くす。このタイプのシリコーン中水乳剤は米国特許第5,691,380号(発明者:Masonら、1997年11月25日発行)に記載されている。
【0064】
組成物内での使用に適した有機ポリシロキサン油は揮発性シリコーン、不揮発性シリコーン、または揮発性シリコーンと不揮発性シリコーンの混合物のいずれでもよい。この文脈の中で用いられる場合、用語「不揮発性」は室温条件下で液体であり約摂氏100度以上の引火点を有する(1気圧下において)シリコーン類を指す。この文脈の中で用いられる場合、用語「揮発性」はその他全てのシリコーン油を表す。好適な有機ポリシロキサン油は広範囲の揮発性と粘度を持つ多様なシリコーン類から選ぶことができる。好適な有機ポリシロキサン油の例としては、ポリアルキルシロキサン類、環式ポリアルキルシロキサン類、およびポリアルキルアリールシロキサン類が挙げられるが、これらは当業者に既知であり、そして市販されている。
【0065】
連続シリコーン相は1またはそれ以上の非シリコーン油を含んでもよい。連続シリコーン相内の非シリコーン油濃度は、組成物中の薬学的有効作用物質の酸化安定性をさらに高めるために、最低限にとどめるかまたは完全に排除することが望ましい。好適な非シリコーン油は1気圧下で約25℃以下の融点を持つ。連続シリコーン相内での使用に好適な非シリコーン油の例は、油中水乳剤型の局所用パーソナルケア製品の化学分野では周知であり、例えば鉱油、植物油、合成油、半合成油等である。
【0066】
本発明の有益な局所用組成物は約30%ないし約90%、より好ましくは約50%ないし約85%、そして最も好ましくは約70%ないし約80%の分散水相を含む。乳剤技術分野では、用語「分散相」は当業者に周知な用語であり、その相が小さい粒子または小滴として連続相中に懸濁し取り囲まれて存在していることを意味する。分散相は内相または不連続相ともいう。分散水相は上記連続シリコーン相内に懸濁し取り囲まれている小さな水の粒子または小滴の分散である。水相は水、または水と1またはそれ以上の水溶性もしくは分散性成分の組み合わせでもよい。このような随意の成分の非限定的な例としては、増粘剤、酸、塩基、塩、キレート剤、ガム、水溶性もしくは分散性アルコール類およびポリオール類、緩衝剤、保存剤、日焼け止め剤、着色剤等を挙げることができる。
【0067】
本発明の局所用組成物は通常、組成物重量の約25%ないし約90%、好ましくは約40%ないし約80%、より好ましくは約60%ないし約80%の水を分散水相内に含む。
【0068】
本発明のシリコーン中水乳剤は乳化剤を含むことが好ましい。好適な実施形態では、組成物は組成物重量の約0.1%ないし約10%の乳化剤を、より好ましくは約0.5%ないし約7.5%、最も好ましくは約1%ないし約5%の乳化剤を含む。乳化剤は連続シリコーン相内での水相の分散および懸濁を助ける。
【0069】
本発明では様々な乳化剤を用いて好ましいシリコーン中水乳剤を作ることができる。選択した乳化剤が組成物の必須成分に化学的および物理的に適合している限りにおいて、そして所望の分散特性が得られる限りにおいて、組成物には既知または従来の乳化剤を使用できる。好適な乳化剤としては、当業者にはシリコーン界面活性剤としても知られるシリコーン乳化剤、例えば有機修飾型有機ポリシロキサン類や、シリコーン非含有乳化剤、およびその混合物が挙げられるが、これらは局所用パーソナルケア製品への使用に関し当業者に既知である。
【0070】
有用な乳化剤には多種多様のシリコーン乳化剤が含まれる。これらシリコーン乳化剤は通常、有機修飾型有機ポリシロキサン類であるが、これらは当業者にはシリコーン界面活性剤としても知られている。好適な乳化剤は、例えばMcCutcheonの界面活性剤と乳化剤(McCutcheon's Detergents and Emulsifiers)、北米版(1986年)、Allured Publishing Corporation;米国特許第5,011,681号(発明者:Ciottieら、1991年4月30日発行);米国特許第4,421,769号(発明者:Dixonら、1983年12月20日発行);および米国特許第3,755,560号(発明者:Dickertら、1973年8月28日発行)に記載されている。
【0071】
その他好ましい局所用担体としては、連続水相およびその中に分散した疎水性の水不溶性相(「油相」)を有する水中油乳剤が挙げられる。水中油乳剤を含む好適な担体の例は米国特許第5,073,371号(発明者:Turnerら、1991年12月17日発行)、および米国特許第5,073,372号(発明者:Turnerら、1991年12月17日発行)に記載されている。特に好ましい水中油乳剤は、構造化剤、親水性界面活性剤および水を含み、詳しく後述される。
【0072】
好ましい水中油乳剤は液晶性ゲル網構造の形成を補助する構造化剤を含む。理論による限定ではないが、構造化剤は組成物の安定性に寄与するレオロジー特性を組成物に付与するのを助けると考えられる。構造化剤はまた乳化剤または界面活性剤としても機能するだろう。本発明の好ましい組成物は組成物重量の約0.5%ないし約20%、より好ましくは約1%ないし約10%、最も好ましくは約1%ないし約5%の構造化剤を含む。本発明の好ましい構造化剤はステアリン酸、パルミチン酸、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ベヘニルアルコール、ステアリン酸、パルミチン酸、平均して約1ないし約21個のエチレンオキシド単位を有するステアリルアルコールのポリエチレングリコールエーテル、平均して約1ないし約5個のエチレンオキシド単位を有するセチルアルコールのポリエチレングリコールエーテル、およびそれらの混合物から成るグループより選択される。
【0073】
好ましい水中油乳剤は(局所用担体の重量百分率として)約0.05%ないし約10%、好ましくは約1%ないし約6%、より好ましくは約1%ないし約3%の、水相中に疎水性物質を分散できる親水性界面活性剤を少なくとも1種類含む。界面活性剤は、最低限、水中に分散するのに十分な程度親水性でなければならない。好適な界面活性剤には既知の各種カチオン性、アニオン性、両性イオン性、および両性界面活性剤が含まれる。McCutcheonの界面活性剤と乳化剤(McCutcheon's Detergents and Emulsifiers)、北米版(1986年)、Allured Publishing Corporation;米国特許第5,011,681号(発明者:Ciottiら、1991年4月30日発行);米国特許第4,421,769号(発明者:Dixonら、1983年12月20日発行)および米国特許第3,755,560号(発明者:Dickertら、1973年8月28日発行)を参照。的確な界面活性剤の選択は組成物および存在するその他の成分のpHに依存する。好ましい界面活性剤はカチオン性界面活性剤、特にジアルキル第4級アンモニウム化合物であり、その例は、米国特許第5,151,209号(発明者:McCallら、1992年9月29日発行);第5,151,210号(発明者:Steuriら、1992年9月29日発行);第5,120,532号(発明者:Wellsら、1992年6月9日発行);第4,387,090号(発明者:Bolich,Jr、1983年6月7日発行);第3,155,591号(発明者:Hilferら、1964年11月3日発行);第3,929,678号(発明者:Laughlinら、1975年12月30日発行);および第3,959,461号(発明者:Baileyら、1976年5月25日発行)並びにMcCutcheonの界面活性剤と乳化剤(Detergents & Emulsifiers)(北米版、1979年)M.C.Publishing Co.;およびSchwartzら、界面活性剤、その化学と技術(Surface Active Agents, Their Chemistry and Technology)、ニューヨーク:Interscience Publishers、1949年、に記載されている。その他有益なカチオン性乳化剤としてはアミノアミドがある。本発明では多種多様なアニオン性界面活性剤も有用である。例えば上記米国特許第3,929,678号(発明者:Laughilinら、1975年12月30日発行)を参照せよ。さらに両性および両イオン性界面活性剤も本発明では有用である。
【0074】
好ましい水中油乳剤は、局所用担体重量の約25重量%ないし約98重量%、好ましくは約65重量%ないし約95重量%、より好ましくは約70重量%ないし約90重量%の水を含む。
【0075】
疎水相は連続水相内に分散される。疎水相は水不溶性または部分的に水溶性である当業者に既知の物質を含むが、そのような物質としては、本明細書で水中シリコーン乳剤に関連して記載されているシリコーン類ならびに乳剤に関連して記載された上記のような他の油および脂質が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0076】
ローションおよびクリームを含むがこれらに限定されない本発明の局所用組成物は、皮膚科学的に許容し得る皮膚軟化剤を含んでもよい。この様な組成物は約2%ないし約50%の皮膚軟化剤を含むことが好ましい。本明細書で使用する場合、「皮膚軟化剤」とは乾燥防止または軽減に有用であると同時に皮膚の保護にも有用な物質を指す。多種多様な好適な皮膚軟化剤が既知であり、ここに用いることができる。Sagarinの化粧品、科学および技術(Cosmetics, Science and Technology)、第2版、1巻、3243ページ(1972年)には皮膚軟化剤として好適な物質の例が数多く載っている。好ましい皮膚軟化剤はグリセリンである。グリセリンは0.001%または約0.001%ないし20%または約20%、より好ましくは0.01%または約0.01%ないし10%または約10%、最も好ましくは0.1%または約0.1%ないし5%または約5%、例えば3%の量で用いられるのが好ましい。
【0077】
本発明によるローションおよびクリームは一般には溶液担体系および1またはそれ以上の皮膚軟化剤を含む。ローションは通常、約1%ないし約20%、好ましくは約5%ないし約10%の皮膚軟化剤;約50%ないし約90%、好ましくは約60%ないし約80%の水;および薬学的有効量の本明細書に記載のFAS阻害剤を含む。クリームは通常、約5%ないし約50%、好ましくは約10%ないし約20%の皮膚軟化剤;約45%ないし約85%、好ましくは約50%ないし約75%の水;および薬学的有効量の本明細書に記載のFAS阻害剤を含む。
【0078】
本発明の軟膏は動物もしくは植物油、または半固体炭化水素(油性)の単担体基材;水を吸収して乳剤を形成する吸収軟膏基材、または水溶性担体、例えば水溶性溶液担体を含むだろう。軟膏はさらにSagarin、化粧品、科学および技術(Cosmetics, Science and Technology)、第2版、1巻、72〜73ページ(1972年)に記載されているような増粘剤、および/または皮膚軟化剤を含んでもよい。例えば軟膏は約2%ないし約10%の皮膚軟化剤;約0.1%ないし約2%の増粘剤、および薬学的有効量の本明細書に記載のFAS阻害剤を含むだろう。
【0079】
非限定的に例示すると、局所用クリーム1000gは次のタイプと量の成分から調製する:皮膚美白有効量のFAS阻害剤、テガシド・レギュラー(tegacid regular)(150g)(Goldschmidt Chemical Corporation(ニューヨーク、ニューヨーク州)製の自己乳化型モノステアリン酸グリセリル)、ポリソルベート80(50g)、鯨蝋(100g)、プロピレングリコール(50g)、メチルパラベン(1g)、および合計1000gになる量の脱イオン水。テガシドおよび鯨蝋を一緒に70〜80℃の温度で融解する。メチルパラベンを約500gの水に溶解し、次にプロピレングリコール、ポリソルベート80および6−アミノ−1,2−ジヒドロ−1−ヒドロキシ−2−イミノ−4−ピペリジノピリミジン遊離塩基を順に加え、75〜80℃の温度に保つ。メチルパラベン混合物をテガシドと鯨蝋の融解物に一定速度で攪拌しながらゆっくり加える。この添加は少なくとも30分かけて行い、さらに40〜45℃に温度が下がるまで攪拌を続ける。最後に最終重量が1000gになるのに十分な量の水を加え、冷めて凝固するまで調合体を攪拌しつづけ均質性を保つ。
【0080】
非限定的に例示すると、局所用軟膏1000gは次のタイプと量の成分から調製する:皮膚美白有効量のFAS阻害剤、酸化亜鉛(50g)、カラミン(50g)、流動パラフィン(重流動性)(250g)、羊毛脂(200g)および合計1000gになるのに十分な量の白色ワセリン。簡単に述べると、白色ワセリンと羊毛脂を融解し、流動パラフィン100gをこれに加える。薬学的有効量のFAS阻害剤、酸化亜鉛、カラミンを残りの流動パラフィンに加え、この混合物を粉末が細かく分かれ均一に分散するまでミルにかける。この混合物を前記白色ワセリン内に混ぜ入れ融解し、軟膏が固まるまで攪拌しながら冷やす。
【0081】
非限定的に例示すると、薬学的有効量のFAS阻害剤を含む軟膏1000gは次のタイプと量の成分から調製する:皮膚美白有効量のFAS阻害剤、軽流動パラフィン(250g)、羊毛脂(200g)および合計1000gになるのに十分な量の白色ワセリン。簡単に述べると、薬学的有効量のFAS阻害剤を細かく分け、軽流動パラフィンに加える。羊毛脂と白色ワセリンを一緒に融解し、濾過し、温度を45〜50℃に調整する。流動パラフィンのスラリーを加え、軟膏を固まるまで攪拌する。
【0082】
非限定的に例示すると、皮膚美白有効量のFAS阻害剤を含む水溶液1000mlは次のタイプと量の成分から調製する:皮膚美白有効量のFAS阻害剤、ポリエチレングリコール4000(120g)、ミリスチル−γ−塩化ピコリニウム(0.2g)、ポリビニルピロリドン(1g)および合計1000ミリリットルにするのに十分な量の脱イオン水。簡単に述べると、これら成分を水に溶解し、得られた溶液を濾過滅菌する。
【0083】
非限定的に例示すると、皮膚美白有効量のFAS阻害剤を含むローション1000gは次のタイプと量の成分から調製する:薬学的有効量のFAS阻害剤、N−メチルピロリドン(40g)および合計1000gにするのに十分な量のプロピレングリコール。
【0084】
非限定的に例示すると、皮膚美白有効量のFAS阻害剤を含むエアゾールは次のタイプと量の成分から調製する:薬学的有効量のFAS阻害剤、無水アルコール(4.37g)、ジクロロジフルオロエタン(DCFE)(1.43g)およびジクロロテトラフルオロエタン(DCTFE)(5.70g)。簡単に述べると、薬学的有効量のFAS阻害剤を無水アルコールに溶解し、得られた溶液を濾過して粒子およびリントを除く。この溶液を約マイナス30℃まで冷却する。つぎにこの溶液にDCFEとDCTFEの冷混合物を加える。
【0085】
FAS活性を阻害する化合物(即ち活性作用物質または成分)は硬質または軟質ゼラチンカプセル、錠剤または粉末の様な固体または半固体の調剤形状、あるいはエリキシル、シロップまたは懸濁液の様な液体調剤形状で経口投与もできる。さらに、化合物は非経口的に、滅菌液体の調剤形状または座薬の形で投与することもできる。本発明のFAS阻害剤は直腸、経鼻、血管内、筋肉内等に投与することもできる。
【0086】
インビボでの使用を想定していることから、組成物は高純度であると同時に潜在的に有害である汚染物質を実質的に含まないことが好ましく、例えば少なくともNational Food(NF)等級、一般には少なくとも分析等級、そして好ましくは少なくとも医薬品等級である。ある化合物を使用前に合成しなければならない場合には、好ましくはこれらの合成およびそれに続く精製は、合成および精製工程中に用いられた汚染の可能性のある有毒作用物質を実質的に含まない産物を生成するものでなければならない。
【0087】
経口投与に関しては、ゼラチンカプセルまたは液体が充填された軟質ゼラチンカプセルは乳糖、レシチンデンプン、セルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸等の粉末または液体担体にFAS阻害剤およびその他の活性成分を含むことができる。同様の希釈剤を用いて圧縮錠剤を作製できる。錠剤およびカプセルは共に数時間の期間にわたり薬物を連続的に放出する持続性放出製品として製造できる。圧縮製剤に糖衣をかけるか、またはフィルムコーティングして不快な味を隠し、そして大気から錠剤を保護すること、あるいは腸溶コートを用い胃腸管内にて選択的な標的に合わせた崩壊を行うことができる。経口投与用の液体調剤形状は患者の受入れを高めるために、着色剤および/または調味料を含むことができる。
【0088】
一般に、非経口溶液、滅菌水、油、生理食塩水、デキストロース(グルコース)水溶液、ポリソルベートおよび関連糖溶液、ならびにプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールの様なグリコール類は有益なFAS阻害剤に好適な担体である。非経口投与用の溶液または乳剤は、約5〜15%のポリソルベート80またはレシチン、好適な安定化剤、および必要に応じて緩衝物質を含むことが好ましい。もとよりこれらに限定されるものではないが、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、またはアスコルビン酸の様な酸化防止剤は単独または組み合わせのいずれでも好適な安定化剤である。またクエン酸およびその塩、ならびにEDTAナトリウムも有用である。さらに非経口溶液は塩化ベンザルコニウム、メチル−またはプロピル−パラベンおよびクロロブタノールを包含するがこれらに限定されない保存剤を含むことができる。
【0089】
このように、本発明はさらに皮膚美白有効量のFAS阻害剤を薬学的または美容学的に許容し得る担体と混合することを包含する皮膚美白用組成物の製造方法を提供する。
【0090】
本開示から当業者には理解される様に、本発明の組成物はキットの形で提供されてもよい。本発明のキットはFAS活性を阻害することで皮膚を美白化する本発明の特異的組成物を1種類またはそれ以上含む。キットはまたメラニン産生を阻害するか、または皮膚を美白化する追加の作用物質、ならびに薬学的または美容学的に許容し得る担体を含むこともできる。キットはさらにこれら組成物を用い皮膚を美白化する方法を指示するラベルまたは能書のような印刷された取扱説明書を随意に含んでもよい。化合物は汚染を防止し、組成物の蒸発または乾燥等を最小限にとどめるよう設計された無菌容器内に入れられることが好ましい。化合物は事前に設定された投与量または利用量の形で提供されても、そうでなくてもよい。
【0091】
以上、本発明について説明したので、以下限定ではなく例示の形でこれら組成物を用いて皮膚を美白化する実施例を提供する。
【実施例】
【0092】
実施例1
セルレニン処理後のメラニン産生のアッセイ
p座について野生型であるC57BLI6Jマウスから不死化されたメラノサイト樹立株であるメラン−aメラノサイト(a/a、P/P)(Bennettら(1987年)、Int.J.Cancer 39巻、414〜418ページ)をダルベッコ改変イーグル培地(DMEM:10%ウシ胎児血清、2mM L−グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、1% MEM非必須アミノ酸100X、50μ/Lペニシリン、50μg/Lストレプトマイシン)内でインキュベーションした。培地を使用する直前に酢酸テトラデカノイルホルボール(TPA)を200nMになるよう加えた。細胞をT−25フラスコ内に4×104細胞/ml×4.5ml/フラスコ(集密度10〜20%)で接種し、5%CO2を用い37℃で増殖した。24時間後、試験化合物(0.5mlの培地で希釈したもの)を培地に加えた。薬物添加の48時間後に培地と薬物の両方を交換した。さらに48または78時間経過した後(集密度100%)細胞を採取した。
【0093】
細胞を採取する際、試薬と細胞は4℃に保った。簡単に説明すると、培地を細胞から取り除き、チロシナーゼアッセイに必要な場合には1ミリリットルの培地を確保した。次に細胞を約500μlの冷1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用い、PBS濯ぎ液が透明になるまで濯ぎ洗いした。冷抽出緩衝液(50mMトリス、pH7.5、2mM EDTA、150mM NaCl、および1% Triton x−100(シグマ(Sigma)、セントルイス、ミズーリ州)(500μl))を加え、サンプルを氷上で数分間または細胞がフラスコの底から剥がれ始めるまでインキュベーションを続けた。フラスコをたたいて細胞をさらに剥がし落とした後、500μlの抽出緩衝液/細胞を取り出し、微量遠心チューブに入れた。サンプルを4℃にて14,000×gで5分間遠心分離した後、上清を取り出し、タンパク質アッセイ(および必要な場合にはチロシナーゼアッセイ)用に微量遠心チューブ内に保存した。この段階で細胞の沈査を、メラニンをアッセイするまで4℃で一晩、または−20℃ではより長期間保存してもよい。
【0094】
メラニンをアッセイするために300〜500μlのエタノール/エーテル(1:1)を各細胞沈査に加えた。サンプルをボルテックスしてから約10分間または溶媒中に沈殿したタンパク質が観察できるようになるまで静置した。必要に応じて微量遠心チューブ用乳棒で沈査を軽く押しつぶした。溶媒の除去(およびメラニンを残すこと)が困難になるため、沈査が砕け多くの小片にならないように注意した。ガラス製ピペットを用い、メラニンを取り除かない様注意しながら溶媒/タンパク質を除去する。この抽出段階を繰り返してから沈査を乾燥させる。次に2NのNaOHの20%ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液を250μl各微量遠心チューブに加えた。サンプルをメラニンが完全に溶解するまで60〜70℃に加熱した。各試験サンプル毎に、200μlのNaOH/メラニン溶液を96ウエル・プレートに移した。2NのNaOHの20%DMSO溶液をブランクに用い、サンプルを490nmの波長で読み取った。データは全サンプルについて計算されたタンパク質当たりのメラニン吸光度として報告した。
【0095】
メラニン産生に及ぼすセルレニンの効果を決定するために、メラン−aメラノサイトを上記に概要を示した様に0.05:9、1:9、0.5:9、または5:9のセルレニン(シグマ(Sigma)、セントルイス、ミズーリ州)存在下にインキュベーションした。これとは別に、細胞をさらにチロシナーゼの直接阻害剤である300μMの1−フェニル−2−チオ尿素(PTU)(シグマ(Sigma)、セントルイス、ミズーリ州)、およびホスホジエステラーゼ阻害剤である100μMのイソブチルメチルキサンチン(IBMX)(シグマ(Sigma)、セントルイス、ミズーリ州)で処理するか、またはいずれの薬物でも処理しなかった。
【0096】
図1に示す様に結果はセルレニンは3μMでメラン−aメラノサイトの色素形成を平均50%減少させることを示している。
実施例2
α−メチレン−γ−ブチロラクトン処理後のメラニン産生のアッセイ
その他の阻害剤のメラニン産生に及ぼす効果を、実施例1にその概要を示した手順に従い、0.1μM、1.0μM、10.0μM、または100.0μMのα−メチレン−γ−ブチロラクトン(シグマ(Sigma)、セントルイス、ミズーリ州)存在下にメラン−aメラノサイトをインキュベーションすることにより試験した。さらにこれとは別に細胞を20μMのIMP(シグマ(Sigma)、セントルイス、ミズーリ州)、300μMのPTU(シグマ(Sigma)、セントルイス、ミズーリ州)、100μMのIBMX(シグマ(Sigma)、セントルイス、ミズーリ州)で処理するか、または未処理とした。
【0097】
これらの処理細胞でもメラニン産生が低減することが期待される。
実施例3
チオラクトマイシン処理後のメラニン産生のアッセイ
その他のFAS阻害剤のメラニン産生に及ぼす効果を、実施例1にその概要を示した手順に従い、0.1μM、1.0μM、10.0μM、または100.0μMのチオラクトマイシン存在下にメラン−aメラノサイトをインキュベーションすることにより試験した。さらにこれとは別に細胞を20μMのIMP(シグマ(Sigma)、セントルイス、ミズーリ州)、300μMのPTU(シグマ(Sigma)、セントルイス、ミズーリ州)、100μMのIBMX(シグマ(Sigma)、セントルイス、ミズーリ州)で処理するか、または未処理とした。
【0098】
これらの処理細胞でもメラニン産生が低減することが期待される。
【0099】
均等物
当業者は、通常以上の実験を行うことなく、本明細書に記載した発明の特定実施形態に対する多くの均等物を認識するか、または確認できるだろう。このような均等物は特許請求の範囲に包含されると解釈される。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】メラン−aメラノサイトに対するセルレニンの作用を示す図である。細胞を、実施例1に記載の様に、300:9のフェニル−2−チオ尿素(PTU)、100:9のイソブチルメチルキサンチン(IBMX)または0.05:9、1:9、0.5:9、もしくは5:9のセルレニンで処理するか、あるいは未処理とした。
Claims (11)
- メラノサイトをメラニン合成阻害量の脂肪酸合成酵素(FAS)阻害剤に接触させ、それにより該メラノサイトにおけるメラニン合成を低減することを含む、メラノサイトにおけるメラニン合成を減少させる方法。
- 前記FAS阻害剤がセルレニンまたは薬学的に許容し得るその塩もしくは溶媒化合物である、請求項1記載の方法。
- 前記FAS阻害剤がα−メチレン−γ−ブチロラクトンまたは薬学的に許容し得るその塩もしくは溶媒化合物である、請求項1記載の方法。
- 前記FAS阻害剤がチオラクトマイシンまたは薬学的に許容し得るその塩もしくは溶媒化合物である、請求項1記載の方法。
- 皮膚を美白化することを必要とする患者の皮膚に皮膚美白効果量の脂肪酸合成酵素(FAS)阻害剤を接触させることを含む、皮膚を美白化する方法。
- 前記FAS阻害剤がセルレニンまたは薬学的に許容し得るその塩もしくは溶媒化合物である、請求項5記載の方法。
- 前記FAS阻害剤がα−メチレン−γ−ブチロラクトンまたは薬学的に許容し得るその塩もしくは溶媒化合物である、請求項5記載の方法。
- 前記FAS阻害剤がチオラクトマイシンまたは薬学的に許容し得るその塩もしくは溶媒化合物である、請求項5記載の方法。
- FAS活性を阻害する化合物を皮膚美白効果量含む無菌容器を備えたキット。
- 皮膚を美白化する化合物の用途を指示する印刷された取扱説明書のセットをさらに含む、請求項9記載のキット。
- 皮膚美白有効量のFAS阻害剤と薬学的または美容的に許容し得る担体とを組み合わせることを含む皮膚美白組成物製造方法。
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