JP2004523654A - 高強度および良好な圧延性を有するアルミニウム合金箔の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
本発明は、アルミニウム合金箔製品の製造方法に関する。特に、本発明は、材料が最終の圧延するステップでの優れた圧延性と最終箔製品の良好な強度とを有する連続ストリップ鋳造プロセスを用いて、アルミニウム合金箔を製造するプロセスに関する。
[背景技術]
【0002】
薄いゲージ箔は、DCすなわち直接冷間鋳造として知られているプロセスにおいてAA8021のようなアルミニウム合金のインゴットを鋳造することにより一般に調製されている。そのインゴットは、一般に高温に加熱され、1mm〜10mm厚さの再圧延ゲージに熱間圧延されて、その後、典型的に0.2mm〜0.4mm厚さの「箔ストック」ゲージに冷間圧延されている。ストリップは、冷間圧延プロセスの間に中間アニールステップにしばしばさらされる。約5ミクロン〜約150ミクロン厚さの最終の箔を製造するためにダブル圧延技術をしばしば用いて、「箔ストック」はさらなる冷間圧延操作にさらされる。
【0003】
熱間圧延に先立って均質化が必要とされないし、また、再圧延加工ゲージを形成する熱間圧延量が大きく減じられるので、かかる箔の製造での始点時に連続ストリップ鋳造を用いることにコスト上の利点がある。高体積の連続鋳造が必要なところでは、一対のベルト鋳造が連続鋳造の好ましい方法である。しかしながら、連続ストリップ鋳造プロセスは、DC鋳造におけるものから固形化処理の間での異なった冷却条件を適用する。また、熱間圧延に先立つ高温均質化ステップが欠如している。従って、連続ストリップ鋳造プロセスが、DC鋳造および均質化によって通常調製されている合金と共に用いられるときに、これは、最終の箔ストック製品において、「モミ木影響」として知られている表面欠陥をもたらす、鋳造製品における異なった金属間(intermetallic)種の形成に帰着する。連続ストリップ鋳造では、鋳造中のストリップの冷却速度は、大きなDCインゴットにおける冷却速度より一般に速い(ある場合には非常に速い)。このように、連続ストリップ鋳造プロセスで処理されたかかる合金も、溶質元素のより高い過飽和を有しており、したがって、望ましくない硬化および軟化特性を有する箔ストックに帰着し、最終ゲージ厚さに箔ストックを圧延する際の困難さに帰着する。
【0004】
連続ストリップ鋳造によってAA8021タイプ合金からアルミ箔を製造することができることに、特別の関心がある。AA8021タイプ合金は0.2重量%未満のシリコンおよび1.2重量%〜1.7重量%の鉄を有し、残りがアルミニウムおよび付随的な不純物という標準組成を有している。この合金は、直接冷間鋳造によって通常鋳造される箔の製造において例えば日本で広く用いられる。同じAA8021合金が連続ストリップ鋳造機で鋳造されるときに、得られたストリップは直接冷間鋳造によって得られたそれと同じ微細構造ではない。例えば、ベルト鋳造は、DC鋳造よりはるかに高速で固形化処理での冷却速度を作り出し、これによって、微細構造制御に悪影響を及ぼす金属間(intermetallic)のサイズ及び濃度が様々に変化する。したがって、最終アニールは、箔として所望の構造を作り出すことができない。
【0005】
Mn、CuおよびSiのような他の強化合金元素の追加によって強化されたAA1200タイプ合金を連続ストリップ鋳造することによって高強度アルミ箔を製造することが知られている。かかる合金は、連続ストリップ鋳造機に容易に鋳造され、最終製品は優れた強度を有している。しかしながら、追加された強化溶質元素のために、冷間圧延間での材料の加工硬化度合が高い。このように、この材料を最終の薄いゲージに圧延することは難しい。
【0006】
高強度アルミ箔を製造するための双ロール鋳造プロセスは、古河アルミの日本国特許JP01-034548において記述される。そのプロセスは、重量パーセントで、0.8%〜2%のFe、0.1%〜1%のSi、0.01%〜0.5%のCu、0.01%〜0.5%のMgおよび0.01%〜1%のMnを含むアルミニウム合金を用いた。TiとBも粒子精製レベルで含まれていた。合金は、0.5mm〜3mm厚さに双ロール鋳造されるとともに、箔に圧延された。200℃〜450℃の熱処理も含まれていた。
【0007】
ワードらの米国特許5,725,695は、双ロール鋳造で処理されたAA8111合金(0.30重量%〜1.0重量%のSiおよび0.40重量%〜1.0重量%のFeを含んでいる)を利用し、最高441℃までの中間アニールと最終アニールで冷間圧延した。鉄の量に等しいか鉄の量より多いシリコンを含む合金が使用された。
【0008】
Al-Fe-Siタイプのアルミニウム合金を使った連続ストリップ鋳造技術も、カタノらの国際特許出願99/23269に記述されている。連続鋳造材料は2つの異なった温度範囲を用いて、2ステップのプロセスで中間アニールされた。
【0009】
Al-Fe-Si合金を基にした高強度箔材料を作るための他の手順は、フルカワのJP06-101004に記述される。この手順では、合金は、5mm〜10mmの好ましい厚さにストリップ鋳造され、それに続いて中間アニール、冷間圧延および最終アニールが行われる。
【0010】
本発明の目的は、低い加工硬化度合と良好な圧延性とを有するものの、最終箔製品で高強度を提供するというアルミ箔を、連続ストリップ鋳造を用いて製造することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、高生産性の鋳造方法を用いて、低い加工硬化度合と良好な圧延性を有し、最終箔製品の強度が高いアルミ箔を製造することである。
【0012】
本発明のさらなる目的、特徴および利点は、単に非限定的な例として提供されている以下の説明および添付図面から、明白になるであろう。
[発明の開示]
【0013】
本発明によれば、連続ストリップ鋳造機を用いて高品質のアルミニウム合金箔を製造するという問題は、新しい合金組成および新しい処理ルートによって解決された。このように、用いられる合金は1.2wt%〜1.7wt%のFeおよび0.35wt%〜0.8wt%のSiを含み、残りがアルミニウムおよび付随的な不純物を含む合金である。上記合金は、連続ストリップ鋳造機でストリップ厚さが約25mm未満に、好ましくは約5mm〜約25mmに鋳造され、その後続けて中間アニールゲージに冷間圧延される。中間アニールは、少なくとも400℃の温度で実行され、その後続けて最終ゲージに冷間圧延され且つ最終アニールされる。
【0014】
中間アニールは、好ましくは、約1時間〜約8時間、約400℃〜約520℃の温度で実行される。最終アニールは、好ましくは、約1時間〜約12時間、約250℃〜約400℃の温度であり、連続ストリップ鋳造は、好ましくはベルト鋳造機で処理される。
【0015】
上記手順では、連続的に鋳造されたストリップは、中間アニールゲージに冷間圧延される前に、再圧延ゲージ(典型的に1mm〜5mm)に任意に熱間圧延されている。中間アニールに先立った冷間圧延圧下率は典型的に少なくとも40%である。最良の結果について、中間アニール段階での加熱速度および冷却速度の両方が、約20℃/h〜約60℃/hの範囲に維持される。
【0016】
上記合金組成の使用は、「モミ木影響」を実質的に除去した。このモミ木影響の欠如は、最終箔の表面品質が改善され、最終箔中のピンホール頻度が減じられることを意味する。
【0017】
驚いたことには、合金組成および処理ルートの上記組合せで、合金の加工硬化挙動が、完全に均質化された直接冷間鋳造AA8021のそれに類似していることが分かっている。この驚くべき効果が中間アニールプロセス中でのマトリックス合金における過飽和の合金元素の加速された分解の結果であると信じられている。
【0018】
このように、本発明は、良好な品質で高強度の箔を作ることに不可欠な箔材料の構造および特性を提供するものである。すなわち、
(a)鋳放しの状態での均一な金属間(intermetallic)相分布(モミ木影響はない)、
(b)低い加工硬化度合および良好な圧延性(90%の冷間圧延後の最大抗張力は190MPa未満である)、
(c)最終製品における高強度(0焼き戻し(最終アニール後)の最大抗張力は90MPaを越える)。
【0019】
上記合金では、Feは第一の強化元素であり、その後の圧延段階の間でより小さな粒子に壊される鋳造中での金属間(intermetallic)粒子を含むFeを形成する。これらの粒子は、粒子強化により、および、最終アニール段階での粒子核生成の刺激により強化することに寄与し、最終製品における細粒構造に帰着する。Feが1.2wt%未満であるならば、強化は不十分である。また、Feが1.7wt%以上であるならば、圧延加工および箔製品の品質に有害な大きな第一の金属間(intermetallic)粒子は、鋳造中に形成する。
【0020】
上記合金では、Siは、鋳造の間に非平衡の金属間化合物の形成を遅らせる。したがって、金属間化合物は、鋳造構造の均一性を改善する(「モミ木」影響を除去する)。また、それは圧延性を改善する。Siが0.35wt%未満であるならば、鋳造構造の均一性を促進することは不十分である。しかし、Siが0.8wt%を超過するとき、それは加工硬化度合を増加させることができ、圧延に対する悪影響をもたらす。
【0021】
連続鋳造ステップは、好ましくは一対のベルト鋳造機で処理される。ストリップの最終特性は、微粒子サイズの達成に依存する。また、本発明の合金およびその後の処理が用いられるときに、双ロール鋳造はベルト鋳造ほどの微粒子サイズを達成することができない。更に、ベルト鋳造機は、双ロール鋳造機より実質的に高速での製造が可能である。
【0022】
ベルト鋳造は、動いていて可撓性で冷却されたベルトの間で実行された連続ストリップ鋳造の方式である。ベルトは適切な冷却を保証するためにストリップ上に力を働かせるが、好ましくは、ストリップが凝固している間、力はストリップを圧縮させるには不十分である。典型的に、ベルト鋳造機は、約25mm未満の厚さの、好ましくは約5mmを越える厚さのストリップを鋳造するだろう。本発明の合金を鋳造するための冷却速度は、一般に、約20℃/秒〜約300℃/秒である。
[発明を実施するための最良の形態]
【0023】
以下、本発明のアルミニウム合金箔について図面を参照しながら説明する。
[実施例]
【0024】
一連のテストは、表1に示した6つの合金で行なわれた。
表1
【0025】
表1の合金は、実験室レベルの双ベルト鋳造機で約7.3mmの厚さに鋳造された。用いられるベルトは、1.5mW/m2〜2.5mW/m2の熱流束を与えるために操作された織りスチールベルトだった。これは、ストリップの厚さを通して平均で150℃/s〜275℃/sの冷却速度と等価である。
【0026】
鋳放しのストリップ試料は、金属組織学的に調製され、横断面の鋳造構造が調べられた。
図1は、鋳造1、3および4から試料用に陽極処理された断面の表面を示す。これは、金属間(intermetallic)粒子不均一性の程度を明らかにしている。金属間(intermetallic)相の均一性が合金のSi含有量に明確に関連していることは明白である。この検査から、高いFe合金(創造性のある範囲でFeを備えた)がベルト鋳造機に鋳造されるときに、0.29wt%のレベルのSi(創造性のある範囲より下)が、非同一の鋳造構造に帰着することは理解される。6つの合金はすべて同じ方法によって検査された。また、合金1、5および6だけが均一の微細構造(モミ木影響がない)を有していた。合金2、3および4は構造上堅固でなかった(モミ木影響)。表2に記述されるように、合金1、5および6はさらに処理された。
【0027】
鋳造番号1からの合金ストリップは、多くの異なった処理ルートを用いて処理された。得られた試料の加工硬化挙動が調べられた。図2は、最大抗張力と、3つの異なった中間アニール条件によって処理された試料の加工硬化挙動を示す%冷間加工との関係をプロットしている。第一の試料が400℃、4時間で中間アニールされる一方、第二の試料が500℃、4時間で中間アニールされた。第三の試料は500℃、4時間に続いて400℃、2時間で中間アニールされた。図3は、最大抗張力と、500℃で中間アニールされたベルト鋳造合金及びDC鋳造AA8021合金の加工硬化挙動の比較を与える%冷間加工との関係をプロットしている。これらの結果から、本発明によるベルト鋳造材料が、直接冷間鋳造AA8021と同じ加工硬化挙動を本質的に行っていることは理解される。
【0028】
材料が最終製品の目標強度(0焼き戻しで90MPa以上の最大抗張力)に合致するかどうかをテストするために、ベルト鋳造(鋳造番号1、5および6)およびDC鋳造材料の両方は、最終ゲージに処理され、0焼き戻しアニールされ、最終アニール前後の圧延試料は、引張試験された。処理条件および得られた結果は、表2に示している。
表2
*処理時間は4時間
【0029】
合金1が本発明の好適に制御された中間アニールプロセス(加熱速度及び冷却速度が25℃/h)で処理されるとき、シートが有していた均一な微細構造(モミ木はない)および90%減少で最終アニール後(O焼き戻し)の強度は、DC鋳造特性(上記の表のAA8021に対する)に匹敵した。しかしながら、同じ合金がベルト鋳造されるが、好ましい範囲より中間アニール時に早く加熱・冷却処理されるとき、90%減少後の強度は、好ましいルートによって処理された同じ合金の強度より高くなった。
【0030】
合金5は、創造性のある範囲より低いFeおよびSiを有している。ベルト鋳造によって処理されたときに、好ましい中間アニールプロセスは、O焼き戻し状態で(最終アニール後)非常に低い強度を与えた。
【0031】
合金6は、創造性のある範囲内の組成を有しており、中間アニール温度が好ましい範囲より下であるという点を除いて、本発明の条件に従って処理された。これは、90%の冷間圧延後に過度の高強度を備えた材料に導いた。
【0032】
本発明の材料が従来の高強度DC材料に匹敵する特性を有しており、90%冷間圧延および0焼き戻しでの目標強度に合致していることは、表2に明確に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】様々なシリコン含有量での鋳放しストリップの横断面の鋳造構造を示す。
【図2】異なった中間アニール条件に対するパーセント冷間加工と最大抗張力(UTS)との関係を示すグラフである。
【図3】本発明および直接冷間鋳造AA8021の製品に対するパーセント冷間加工と最大抗張力(UTS)との関係を示すグラフである。
Claims (12)
- 製品が優れた圧延性とともに最終箔製品の高強度を示す連続ストリップ鋳造によってアルミ箔製品を製造するプロセスであって、
(a)1.2重量%〜1.7重量%のFeおよび0.35重量%〜0.80重量%のSiを含み、残りがアルミニウムおよび付随的な不純物を備えるアルミニウム合金を準備するステップと、
(b)前記合金を連続ストリップ鋳造して、厚さが約25mm未満の鋳放しの鋳造ストリップを形成するステップと、
(c)前記鋳造ストリップを中間アニールゲージに冷間圧延するステップと、
(d)少なくとも400℃の温度でストリップを中間アニールするステップと、
(e)前記中間アニールストリップを最終ゲージに冷間圧延するステップと、
(f)最終ゲージストリップを最終アニールするステップと、
を備えることを特徴とするプロセス。 - 連続ストリップ鋳造がベルト鋳造機で処理されることを特徴とする、請求項1記載のプロセス。
- ストリップが約5mm〜約25mm厚さの鋳放しに鋳造されることを特徴とする、請求項1または2記載のプロセス。
- 鋳放しのストリップは冷間圧延に先立って熱間圧延されることを特徴とする、請求項1、2または3記載のプロセス。
- 中間アニールが520℃以下の温度で行われる、請求項1〜4のいずれか1項記載のプロセス。
- 中間アニールが、約400℃〜約520℃の温度で約1時間〜約8時間処理されることを特徴とする、請求項5記載のプロセス。
- 最終アニールが、約250℃〜約400℃の温度で行われることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項記載のプロセス。
- 最終アニールが、約250℃〜約400℃の温度で約1〜約12時間処理されることを特徴とする、請求項7記載のプロセス。
- ストリップ鋳造に続くステップでの冷却処理及び加熱処理が、約20℃/h〜約60℃/hの冷却速度及び加熱速度であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項記載のプロセス。
- 中間アニール後のストリップが、190MPa未満の90%冷間圧延後の最高引張強さ(最大抗張力)を有し、最終アニール後の箔が、90MPaより大きい0焼き戻しでの最高引張強さ(最大抗張力)を有していることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項記載のプロセス。
- 1.2重量%〜1.7重量%のFeおよび0.35重量%〜0.80重量%のSiを含み、残りがアルミニウムおよび付随的な不純物を備えた合金から形成されたアルミニウム合金箔であって、最終ゲージでの箔が、90MPaより大きい0焼き戻しでの最高引張強さ(最大抗張力)を有することを特徴とするアルミニウム合金箔。
- 最終ゲージ箔に圧延されるのに先立つ合金が、190MPa未満の90%冷間圧延後の最高引張強さ(最大抗張力)を有することを特徴とする、請求項11記載のアルミニウム合金箔。
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