JP2004501326A - 開放クラッチくぼみを有するオーバーランニングクラッチプーリー - Google Patents
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Abstract
オーバーランニングクラッチプーリーは、好ましくは滑車部材と、滑車部材内にほぼ同心状に設けられたハブ部材と、クラッチ部材と、エンドキャップを備えている。滑車部材は好ましくは、入力装置に係合するようになっている滑車入力部と、滑車クラッチ面を形成する滑車クラッチ部を有する。同様にハブ部材は好ましくは、出力装置に係合するようになっているハブ出力部と、ハブクラッチ面を形成するハブクラッチ部を有する。好ましい実施例では、滑車クラッチ面とハブクラッチ面が、協働して開放クラッチくぼみを形成する。好ましくは滑車部材に固定されるエンドキャップは、好ましくは開放クラッチくぼみをほぼシールするようになっている。
【選択図】図1
【選択図】図1
Description
【0001】
【技術分野】
この発明は、一般的にはオーバーランニングクラッチ分野における装置、より具体的には自動車エンジンによって、ベルトを介して駆動される補機に用いる改良されたオーバーランニングクラッチプーリーに関する。
【0002】
【背景】
自動車エンジンの作動中に、様々な補機を駆動し、作動させるために駆動ベルトが通常使われる。これらの補機の一つに、自動車に電力を供給する自動車用オルターネータ(交流発電機)がある。駆動ベルトのいくつかの構造が用いられているが、いくつかの補機を駆動する多軸掛け構造が現在最も好まれている。多軸掛け構造は、エンジン(「出力装置」)のクランク軸に接続された駆動プーリーと、駆動プーリーに掛け渡された駆動ベルトから成る。駆動ベルトはまた、様々な補機(「入力装置」)の入力軸に接続された一つかそれ以上の従来の従動プーリーにも掛け渡されている。
【0003】
大半の従来の従動プーリーは、オーバーランニング機能のない一体設計で形成されている。言い換えると、従来の従動プーリーは入力軸に固定的に取り付けられており、従動プーリーの部分と入力軸間の相対回転運動を許容することができない。オーバーランニング能力の欠如と、補機による大きな慣性の発生により、駆動ベルトが入力軸に対して突然減速すると、駆動ベルトと従動プーリーの間で相対的なスリップが起きることがある。この相対的なスリップは、聴覚的見地からいらいらさせる鳴きや、機械的見地から望ましくない駆動ベルトの過度の摩耗を引き起こす可能性がある。
【0004】
通常の駆動状況において、駆動ベルトは入力軸に対して急激な減速を受けることがよくある。この状況は、たとえばスロットルを広く開けた加速状態での第1ギアから第2ギアへのシフト中に起きることがある。この状況は、シフト直後にスロットルが閉じられると悪化する。このような状況において、駆動ベルトは急速に減速するが、補機からの高い慣性を受けている従動プーリーは、駆動ベルトと従動プーリー間の摩擦にも係わらず高回転速度を維持する。
【0005】
急激な減速の場合に加え、駆動ベルトは、耳に聞こえる振動や望ましくない摩耗を引き起こす他の状況に曝されることもある。一例として、従来の従動プーリーを有する多軸掛け機構は、(燃費を向上させる)極端に低いアイドルエンジン速度を有する自動車エンジンに用いられることがある。このような状況では、前記機構は、自動車エンジンの定期的なシリンダーの爆発により、固有周波数内で同機構の共鳴および駆動ベルトの耳に聞こえる振動や摩耗を引き起こすとき、駆動ベルトの「ばたつき」を生じる。
【0006】
従来の従動プーリーの欠点、すなわち駆動ベルトの鳴き、摩耗、振動は、従来の従動プーリーの代わりに、オーバーランニングクラッチプーリーを用いることによって避けられる。オーバーランニングクラッチプーリーは、駆動ベルトの急激な減速の後で、プーリーが同じ速度で同じ回転方向に回転し続けることを許容する。ある意味でオーバーランニングは、自転車の後輪ハブのように機能する;従来の自転車の後輪ハブと後輪は、自転車のペダルとクランク軸の急激な減速の後でさえも、同じ回転速度で同じ回転方向に回転し続ける。オーバーランニングクラッチプーリーの一例は、本発明と同じ譲受人に与えられ、ここに言及することによって全体が組み込まれた米国特許・5598913に記載されている。
【0007】
上記特許のオーバーランニングクラッチプーリーの成功にも係わらず、自動車のほとんど全ての部品の重量とコストを減らしたい願望が引き続きある。本発明は重量とコストを減らすことを意図した特徴を有するオーバーランニングクラッチプーリーを提供する。
【0008】
【好ましい実施例の詳細説明】
本発明の好ましい実施例の下記説明はこの発明の範囲を、実施例に限定することを意図したものではなく、オーバーランニングクラッチの分野の当業者が、この発明を実施し、用いることができるようにするためのものである。
【0009】
図1に示すように、本発明は、入力装置12と出力装置14を回転方向に係合させるためのオーバーランニングクラッチプーリー10を備えている。オーバーランニングクラッチプーリー10は、駆動ベルト16を入力装置12とし、円筒軸18を出力装置14として用いられるようになっている。より具体的には、オーバーランニングクラッチプーリー10は、溝が形成された面を有する駆動ベルト16と、自動車用オルターネータの円筒軸18に用いるように設計されている。しかしオーバーランニングクラッチプーリー10は、他の環境では、滑らかなベルト、歯付きベルト、V形ベルト、あるいは歯付きギアも含む他の適当な入力装置、および多角形軸等の他の適当な出力装置に用いてもよい。さらにオーバーランニングクラッチプーリー10は、回転入力の役割を交代して行う2つの装置、および実際は回転入力を出す「出力装置」と実際は回転入力を受ける「入力装置」と共に用いることもできる。このような実施例においては、「入力装置」「出力装置」の用語は入替え可能である。
【0010】
図2に示すように、好ましい実施例のオーバーランニングクラッチプーリー10は、滑車部材20と、滑車部材20内にほぼ同心状に位置するハブ部材22と、クラッチ部材24と、エンドキャップ26を備えている。滑車部材20は、好ましくは入力装置に係合するようになっている滑車入力部28、滑車クラッチ面32を形成する滑車クラッチ部30を備えている。同様にハブ部材22は、好ましくは出力装置に係合するようになっているハブ出力部34と、ハブクラッチ面38を形成するハブクラッチ部36を備えている。好ましい実施例では、滑車クラッチ面32とハブクラッチ面38が協働して、開放クラッチくぼみ40を作成する。好ましくは滑車部材20に固定されるエンドキャップ26は、好ましくは開放クラッチくぼみ40をほぼシールし、クラッチ部材24を開放クラッチくぼみ40内で軸方向に保持するようになっている。クラッチ部材24を開放クラッチくぼみ40内で軸方向に保持するために、滑車部材20の一部を省略したこの構造は、従来の従動プーリーと比較して重量とコストが減少する。
【0011】
好ましい実施例の滑車部材20の滑車入力部28は、駆動ベルトに係合するようになっている。滑車部材20と駆動ベルトの回転方向および軸方向のスリップを実質的に防ぐために、滑車入力部28は、好ましくは2つの滑車入力肩部44と、少なくとも一つの滑車入力溝46を有する滑車入力面42を形成する。またはその代わりに滑車入力部28には、歯付き面、リブ付き面などの、入力装置に係合する他の面を形成してもよい。滑車入力面42は、好ましくは(オーバーランニングクラッチプーリー10の回転軸線から遠ざかる方向に)外側を向いており、好ましくはほぼ円筒形である。滑車入力部28は、好ましくは鋼などの従来の構造材料で従来の方法で形成されるが、他の適当な材料で、他の適当な方法で形成してもよい。
【0012】
好ましい実施例のハブ部材22のハブ出力部34は、円筒軸に係合するようになっている。ハブ出力部34には、好ましくは円筒軸の面に対応するハブ出力面48が形成されている。オーバーランニングクラッチプーリーは、好ましくは回転方向および軸方向のスリップを防ぐためにネジ付きナット50を用いている。もちろんハブ出力部34は、回転方向および軸方向スリップを防ぐため、および円筒軸に係合するため、およびオーバーランニングクラッチプーリー10を円筒軸に締めつけたり緩めたりするための工具と係合するため、他の適当な装置を備えていたり、他の面を形成していてもよい。好ましくは、ハブ出力面48は、内側(オーバーランニングクラッチプーリー10の回転軸線の方)を向いており、好ましくはほぼ円筒形である。ハブ出力部34は、好ましくは鋼などの従来の構造材料で、従来の方法で形成されるが、他の適当な材料で、他の適当な方法で形成してもよい。
【0013】
好ましい実施例のオーバーランニングクラッチプーリー10は、滑車部材20とハブ部材22の相対回転運動を許容する機能がある軸受部材52を備えている。好ましくは転がり要素型の軸受部材52は、好ましくは、滑車部材20にプレスばめされる外レース要素54と、好ましくはハブ部材22にプレスばめされる内レース要素56と、好ましくは外レース要素54と内レース要素56の間に設けられる玉軸受要素58と、好ましくは玉軸受要素58の両側で外レース要素54と内レース要素56の間を延びる軸受シール60を備えている。あるいはその代わりに軸受部材52は、ジャーナル軸受またはころ軸受等の他の適当なタイプのものでもよく、あるいは他の適当な方法で他の適当な面に取り付けてもよい。軸受部材は従来の装置であるので、好ましくは従来の材料で、従来の方法で製造するが、他の適当な材料で、他の適当な方法で製造してもよい。
【0014】
好ましい実施例の滑車クラッチ部30とハブクラッチ部36は、それぞれクラッチ部材24と係合するための滑車クラッチ面32とハブクラッチ面38を提供する役目をする。滑車クラッチ部30は好ましくは、滑車部材20から半径方向内向きに延びる。こうして滑車クラッチ部30は、好ましくは滑車入力部28と同じ材料で、同じ方法で製造されるが、他の適当な材料で、(下記のような)他の適当な方法で製造してもよい。滑車クラッチ面32は、好ましくはクラッチ部材24の開放クラッチくぼみ40への挿入を容易にするテーパ部61を備えているが、代わりに円筒形の真っ直ぐな断面を有していてもよい。ハブクラッチ部36は、好ましくはハブ出力部34から半径方向外向きに、それを超えて軸方向に延びる。こうしてハブクラッチ部36は、好ましくはハブ出力部34と同じ材料で、同じ方法で製造されるが、他の適当な材料で、(後で説明するように)他の適当な方法で製造してもよい。この構造で、滑車クラッチ面32とハブクラッチ面38が、好ましくは協働して開放クラッチくぼみ40を形成する。「開放クラッチくぼみ」という用語は、好ましくはクラッチ部材24がエンドキャップ26なしに環境に開放されているという事実を指す。それと対照的に、閉じたクラッチくぼみを有するオーバーランニングクラッチプーリーにおいては、クラッチ部材24は、滑車部材20、ハブ部材22、軸受部材52の組み合わせによって環境から実質上シールされている。
【0015】
好ましい実施例では、滑車クラッチ面32とハブクラッチ面38は、軸方向の隙間62を互いの間に介してほぼ隣接する位置にある。滑車クラッチ面32とハブクラッチ面38は、好ましくは内側(オーバーランニングクラッチプーリー10の回転軸線の方)を向いており、好ましくはほぼ円筒形である。さらに滑車クラッチ面32とハブクラッチ面38は、好ましくは同様の半径方向直径と同様の軸方向長さと同様の滑らかな仕上げを有する。これらの特徴が、クラッチ部材24に最適の性能を与える。しかし滑車クラッチ面32とハブクラッチ面38は、これらおよび他の設計仕様に関して互いに異なっていてもよい。
【0016】
軸方向隙間62を横切って位置する、好ましい実施例のクラッチ部材24は、ハブ部材22に対して滑車部材20が第1の回転方向に加速すると、滑車クラッチ面32とハブクラッチ面38も係合し、ハブ部材22に対して滑車部材20が第1の回転方向に減速すると、滑車クラッチ面32とハブクラッチ面38との係合を解除する役目をする。好ましい実施例では、クラッチ部材24はコイルバネ64である。従来の材料で、従来の方法で製造されるコイルバネ64は、開放クラッチくぼみ40内のコイルバネ64の特定のサイズおよび向きによって、上記特徴を達成する。別の実施例では、クラッチ部材24は上記特徴を達成するために他の適当な装置を備えていてもよい。
【0017】
コイルバネ64は、緩んだときの直径が好ましくは滑車クラッチ面32とハブクラッチ面38の内径より少し大きいように設計される。したがって、開放クラッチくぼみ40に挿入され、滑車部材20またはハブ部材22が回転運動をしていないときは、コイルバネ64は、滑車クラッチ面32とハブクラッチ面38の両方に摩擦的に係合し、外向きの力を加える。さらにコイルバネ64は、好ましくはコイルが滑車クラッチ面32からハブクラッチ面38に第1の回転方向に軸方向に延びる向きに、開放クラッチくぼみ40内に設けられる。このような向きにすることによって、滑車部材20とハブ部材22の相対回転運動によって、バネ部材が締まったり、緩んだりする。言い換えると、滑車部材20がハブ部材22に対して第1の回転方向へ加速されると、コイルバネ64は緩む方に付勢され、滑車部材20がハブ部材22に対して第1の回転方向へ減速されると、コイルバネ64は締まる方に付勢される。
【0018】
コイルバネ64が緩むと、滑車クラッチ面32とハブクラッチ面38に対するコイルバネ64の外力が増加し、そのため滑車部材20とハブ部材22は係合すなわち「ロック」する。この係合状態は、好ましくは、滑車部材20がハブ部材22に対して第1の回転方向に加速すると起きる。一方コイルバネ64が締まると、滑車クラッチ面32とハブクラッチ面38に対するコイルバネ64の外力が減少する傾向を示し、そのため滑車部材20とハブ部材22は係合解除すなわち「スリップ」する。この係合解除状態は、好ましくは、滑車部材20がハブ部材22に対して第1の回転方向に減速すると起きる。
【0019】
オーバーランニングクラッチプーリー10の「スリップ」状態の間、コイルバネ64は滑車クラッチ面32またはハブクラッチ面38と軽く擦れ、これが上記面の摩耗を引き起こす可能性がある。同様にオーバーランニングクラッチプーリー10の「ロック」状態の間、コイルバネ64は強制的に滑車クラッチ面32とハブクラッチ面38に係合し、これも上記面の摩耗を引き起こす可能性がある。これらの面の摩耗に耐えるために、滑車クラッチ面32とハブクラッチ面38は、好ましくは十分な表面硬度値を有するように形成するか処理する。
【0020】
開放クラッチくぼみ40を実質的にシールすることに加えて、エンドキャップ26はまた、好ましくは開放クラッチくぼみ40内でクラッチ部材24を軸方向に保持する機能がある。クラッチ部材24の偶発的な締まり、緩みを避けるために、エンドキャップ26は好ましくは、クリンプまたは据え込み法によって滑車部材20の滑車フランジ面72に固定する。あるいはエンドキャップ26は、適当な装置、方法で、滑車部材の適当な面に連結してもよい。エンドキャップ26は、好ましくはハブクラッチ部36によって形成されるハブフランジ面66と協働して軸方向の保持機能を行う。しかしクラッチ部材24を開放クラッチくぼみ40内で軸方向に保持するために、他の適当な面あるいは構造とエンドキャップ26を協働させてもよい。
【0021】
好ましい実施例のエンドキャップ26は、エンドキャップ26をハブ部材22に連結し、開放クラッチくぼみ40をシールする機能があるキャップ延長部68を備えている。エンドキャップ26は好ましくは滑車部材20に固定されており、滑車部材20はハブ部材22に対して回転するため、キャップ延長部68は、好ましくはリップシール70でハブ部材22に摺動自在に接触する。代わりにキャップ延長部68は、いかなる適当な構造または方法で、ハブ部材22の適当な面に連結してもよい。
【0022】
滑車部材20とハブ部材22の相対回転運動を許容することに加え、軸受部材はまた、好ましくは滑車部材20とハブ部材22が半径方向隙間74を形成するように、滑車部材20とハブ部材22を位置決めする機能がある。好ましい実施例では、滑車部材20とハブ部材22間の接触を防ぐために、半径方向隙間74と軸方向隙間62が互いにつながっている。さらに好ましい実施例では、半径方向隙間74と軸方向隙間62は、軸受部材52と連通している。こうすることで、軸受部材52は、もしオーバーランニングクラッチプーリーが、軸受部材52とクラッチ部材24に合うグリース材料を含んでいる場合、クラッチ部材24に対向する軸受シール60を省略できる。
【0023】
オーバーランニングクラッチプーリーの分野の技術者ならわかるように、これまでの詳細説明および図面、クレームから、上記のクレームで定義されるこの発明の範囲から外れずに、発明の好ましい実施例に変更を加えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
駆動ベルトを入力装置、円筒軸を出力装置として示す、本発明のオーバーランニングクラッチプーリーの斜視図
【図2】
好ましい実施例のオーバーランニングクラッチプーリーの、図1の2−2線に沿った部分横断面図
【技術分野】
この発明は、一般的にはオーバーランニングクラッチ分野における装置、より具体的には自動車エンジンによって、ベルトを介して駆動される補機に用いる改良されたオーバーランニングクラッチプーリーに関する。
【0002】
【背景】
自動車エンジンの作動中に、様々な補機を駆動し、作動させるために駆動ベルトが通常使われる。これらの補機の一つに、自動車に電力を供給する自動車用オルターネータ(交流発電機)がある。駆動ベルトのいくつかの構造が用いられているが、いくつかの補機を駆動する多軸掛け構造が現在最も好まれている。多軸掛け構造は、エンジン(「出力装置」)のクランク軸に接続された駆動プーリーと、駆動プーリーに掛け渡された駆動ベルトから成る。駆動ベルトはまた、様々な補機(「入力装置」)の入力軸に接続された一つかそれ以上の従来の従動プーリーにも掛け渡されている。
【0003】
大半の従来の従動プーリーは、オーバーランニング機能のない一体設計で形成されている。言い換えると、従来の従動プーリーは入力軸に固定的に取り付けられており、従動プーリーの部分と入力軸間の相対回転運動を許容することができない。オーバーランニング能力の欠如と、補機による大きな慣性の発生により、駆動ベルトが入力軸に対して突然減速すると、駆動ベルトと従動プーリーの間で相対的なスリップが起きることがある。この相対的なスリップは、聴覚的見地からいらいらさせる鳴きや、機械的見地から望ましくない駆動ベルトの過度の摩耗を引き起こす可能性がある。
【0004】
通常の駆動状況において、駆動ベルトは入力軸に対して急激な減速を受けることがよくある。この状況は、たとえばスロットルを広く開けた加速状態での第1ギアから第2ギアへのシフト中に起きることがある。この状況は、シフト直後にスロットルが閉じられると悪化する。このような状況において、駆動ベルトは急速に減速するが、補機からの高い慣性を受けている従動プーリーは、駆動ベルトと従動プーリー間の摩擦にも係わらず高回転速度を維持する。
【0005】
急激な減速の場合に加え、駆動ベルトは、耳に聞こえる振動や望ましくない摩耗を引き起こす他の状況に曝されることもある。一例として、従来の従動プーリーを有する多軸掛け機構は、(燃費を向上させる)極端に低いアイドルエンジン速度を有する自動車エンジンに用いられることがある。このような状況では、前記機構は、自動車エンジンの定期的なシリンダーの爆発により、固有周波数内で同機構の共鳴および駆動ベルトの耳に聞こえる振動や摩耗を引き起こすとき、駆動ベルトの「ばたつき」を生じる。
【0006】
従来の従動プーリーの欠点、すなわち駆動ベルトの鳴き、摩耗、振動は、従来の従動プーリーの代わりに、オーバーランニングクラッチプーリーを用いることによって避けられる。オーバーランニングクラッチプーリーは、駆動ベルトの急激な減速の後で、プーリーが同じ速度で同じ回転方向に回転し続けることを許容する。ある意味でオーバーランニングは、自転車の後輪ハブのように機能する;従来の自転車の後輪ハブと後輪は、自転車のペダルとクランク軸の急激な減速の後でさえも、同じ回転速度で同じ回転方向に回転し続ける。オーバーランニングクラッチプーリーの一例は、本発明と同じ譲受人に与えられ、ここに言及することによって全体が組み込まれた米国特許・5598913に記載されている。
【0007】
上記特許のオーバーランニングクラッチプーリーの成功にも係わらず、自動車のほとんど全ての部品の重量とコストを減らしたい願望が引き続きある。本発明は重量とコストを減らすことを意図した特徴を有するオーバーランニングクラッチプーリーを提供する。
【0008】
【好ましい実施例の詳細説明】
本発明の好ましい実施例の下記説明はこの発明の範囲を、実施例に限定することを意図したものではなく、オーバーランニングクラッチの分野の当業者が、この発明を実施し、用いることができるようにするためのものである。
【0009】
図1に示すように、本発明は、入力装置12と出力装置14を回転方向に係合させるためのオーバーランニングクラッチプーリー10を備えている。オーバーランニングクラッチプーリー10は、駆動ベルト16を入力装置12とし、円筒軸18を出力装置14として用いられるようになっている。より具体的には、オーバーランニングクラッチプーリー10は、溝が形成された面を有する駆動ベルト16と、自動車用オルターネータの円筒軸18に用いるように設計されている。しかしオーバーランニングクラッチプーリー10は、他の環境では、滑らかなベルト、歯付きベルト、V形ベルト、あるいは歯付きギアも含む他の適当な入力装置、および多角形軸等の他の適当な出力装置に用いてもよい。さらにオーバーランニングクラッチプーリー10は、回転入力の役割を交代して行う2つの装置、および実際は回転入力を出す「出力装置」と実際は回転入力を受ける「入力装置」と共に用いることもできる。このような実施例においては、「入力装置」「出力装置」の用語は入替え可能である。
【0010】
図2に示すように、好ましい実施例のオーバーランニングクラッチプーリー10は、滑車部材20と、滑車部材20内にほぼ同心状に位置するハブ部材22と、クラッチ部材24と、エンドキャップ26を備えている。滑車部材20は、好ましくは入力装置に係合するようになっている滑車入力部28、滑車クラッチ面32を形成する滑車クラッチ部30を備えている。同様にハブ部材22は、好ましくは出力装置に係合するようになっているハブ出力部34と、ハブクラッチ面38を形成するハブクラッチ部36を備えている。好ましい実施例では、滑車クラッチ面32とハブクラッチ面38が協働して、開放クラッチくぼみ40を作成する。好ましくは滑車部材20に固定されるエンドキャップ26は、好ましくは開放クラッチくぼみ40をほぼシールし、クラッチ部材24を開放クラッチくぼみ40内で軸方向に保持するようになっている。クラッチ部材24を開放クラッチくぼみ40内で軸方向に保持するために、滑車部材20の一部を省略したこの構造は、従来の従動プーリーと比較して重量とコストが減少する。
【0011】
好ましい実施例の滑車部材20の滑車入力部28は、駆動ベルトに係合するようになっている。滑車部材20と駆動ベルトの回転方向および軸方向のスリップを実質的に防ぐために、滑車入力部28は、好ましくは2つの滑車入力肩部44と、少なくとも一つの滑車入力溝46を有する滑車入力面42を形成する。またはその代わりに滑車入力部28には、歯付き面、リブ付き面などの、入力装置に係合する他の面を形成してもよい。滑車入力面42は、好ましくは(オーバーランニングクラッチプーリー10の回転軸線から遠ざかる方向に)外側を向いており、好ましくはほぼ円筒形である。滑車入力部28は、好ましくは鋼などの従来の構造材料で従来の方法で形成されるが、他の適当な材料で、他の適当な方法で形成してもよい。
【0012】
好ましい実施例のハブ部材22のハブ出力部34は、円筒軸に係合するようになっている。ハブ出力部34には、好ましくは円筒軸の面に対応するハブ出力面48が形成されている。オーバーランニングクラッチプーリーは、好ましくは回転方向および軸方向のスリップを防ぐためにネジ付きナット50を用いている。もちろんハブ出力部34は、回転方向および軸方向スリップを防ぐため、および円筒軸に係合するため、およびオーバーランニングクラッチプーリー10を円筒軸に締めつけたり緩めたりするための工具と係合するため、他の適当な装置を備えていたり、他の面を形成していてもよい。好ましくは、ハブ出力面48は、内側(オーバーランニングクラッチプーリー10の回転軸線の方)を向いており、好ましくはほぼ円筒形である。ハブ出力部34は、好ましくは鋼などの従来の構造材料で、従来の方法で形成されるが、他の適当な材料で、他の適当な方法で形成してもよい。
【0013】
好ましい実施例のオーバーランニングクラッチプーリー10は、滑車部材20とハブ部材22の相対回転運動を許容する機能がある軸受部材52を備えている。好ましくは転がり要素型の軸受部材52は、好ましくは、滑車部材20にプレスばめされる外レース要素54と、好ましくはハブ部材22にプレスばめされる内レース要素56と、好ましくは外レース要素54と内レース要素56の間に設けられる玉軸受要素58と、好ましくは玉軸受要素58の両側で外レース要素54と内レース要素56の間を延びる軸受シール60を備えている。あるいはその代わりに軸受部材52は、ジャーナル軸受またはころ軸受等の他の適当なタイプのものでもよく、あるいは他の適当な方法で他の適当な面に取り付けてもよい。軸受部材は従来の装置であるので、好ましくは従来の材料で、従来の方法で製造するが、他の適当な材料で、他の適当な方法で製造してもよい。
【0014】
好ましい実施例の滑車クラッチ部30とハブクラッチ部36は、それぞれクラッチ部材24と係合するための滑車クラッチ面32とハブクラッチ面38を提供する役目をする。滑車クラッチ部30は好ましくは、滑車部材20から半径方向内向きに延びる。こうして滑車クラッチ部30は、好ましくは滑車入力部28と同じ材料で、同じ方法で製造されるが、他の適当な材料で、(下記のような)他の適当な方法で製造してもよい。滑車クラッチ面32は、好ましくはクラッチ部材24の開放クラッチくぼみ40への挿入を容易にするテーパ部61を備えているが、代わりに円筒形の真っ直ぐな断面を有していてもよい。ハブクラッチ部36は、好ましくはハブ出力部34から半径方向外向きに、それを超えて軸方向に延びる。こうしてハブクラッチ部36は、好ましくはハブ出力部34と同じ材料で、同じ方法で製造されるが、他の適当な材料で、(後で説明するように)他の適当な方法で製造してもよい。この構造で、滑車クラッチ面32とハブクラッチ面38が、好ましくは協働して開放クラッチくぼみ40を形成する。「開放クラッチくぼみ」という用語は、好ましくはクラッチ部材24がエンドキャップ26なしに環境に開放されているという事実を指す。それと対照的に、閉じたクラッチくぼみを有するオーバーランニングクラッチプーリーにおいては、クラッチ部材24は、滑車部材20、ハブ部材22、軸受部材52の組み合わせによって環境から実質上シールされている。
【0015】
好ましい実施例では、滑車クラッチ面32とハブクラッチ面38は、軸方向の隙間62を互いの間に介してほぼ隣接する位置にある。滑車クラッチ面32とハブクラッチ面38は、好ましくは内側(オーバーランニングクラッチプーリー10の回転軸線の方)を向いており、好ましくはほぼ円筒形である。さらに滑車クラッチ面32とハブクラッチ面38は、好ましくは同様の半径方向直径と同様の軸方向長さと同様の滑らかな仕上げを有する。これらの特徴が、クラッチ部材24に最適の性能を与える。しかし滑車クラッチ面32とハブクラッチ面38は、これらおよび他の設計仕様に関して互いに異なっていてもよい。
【0016】
軸方向隙間62を横切って位置する、好ましい実施例のクラッチ部材24は、ハブ部材22に対して滑車部材20が第1の回転方向に加速すると、滑車クラッチ面32とハブクラッチ面38も係合し、ハブ部材22に対して滑車部材20が第1の回転方向に減速すると、滑車クラッチ面32とハブクラッチ面38との係合を解除する役目をする。好ましい実施例では、クラッチ部材24はコイルバネ64である。従来の材料で、従来の方法で製造されるコイルバネ64は、開放クラッチくぼみ40内のコイルバネ64の特定のサイズおよび向きによって、上記特徴を達成する。別の実施例では、クラッチ部材24は上記特徴を達成するために他の適当な装置を備えていてもよい。
【0017】
コイルバネ64は、緩んだときの直径が好ましくは滑車クラッチ面32とハブクラッチ面38の内径より少し大きいように設計される。したがって、開放クラッチくぼみ40に挿入され、滑車部材20またはハブ部材22が回転運動をしていないときは、コイルバネ64は、滑車クラッチ面32とハブクラッチ面38の両方に摩擦的に係合し、外向きの力を加える。さらにコイルバネ64は、好ましくはコイルが滑車クラッチ面32からハブクラッチ面38に第1の回転方向に軸方向に延びる向きに、開放クラッチくぼみ40内に設けられる。このような向きにすることによって、滑車部材20とハブ部材22の相対回転運動によって、バネ部材が締まったり、緩んだりする。言い換えると、滑車部材20がハブ部材22に対して第1の回転方向へ加速されると、コイルバネ64は緩む方に付勢され、滑車部材20がハブ部材22に対して第1の回転方向へ減速されると、コイルバネ64は締まる方に付勢される。
【0018】
コイルバネ64が緩むと、滑車クラッチ面32とハブクラッチ面38に対するコイルバネ64の外力が増加し、そのため滑車部材20とハブ部材22は係合すなわち「ロック」する。この係合状態は、好ましくは、滑車部材20がハブ部材22に対して第1の回転方向に加速すると起きる。一方コイルバネ64が締まると、滑車クラッチ面32とハブクラッチ面38に対するコイルバネ64の外力が減少する傾向を示し、そのため滑車部材20とハブ部材22は係合解除すなわち「スリップ」する。この係合解除状態は、好ましくは、滑車部材20がハブ部材22に対して第1の回転方向に減速すると起きる。
【0019】
オーバーランニングクラッチプーリー10の「スリップ」状態の間、コイルバネ64は滑車クラッチ面32またはハブクラッチ面38と軽く擦れ、これが上記面の摩耗を引き起こす可能性がある。同様にオーバーランニングクラッチプーリー10の「ロック」状態の間、コイルバネ64は強制的に滑車クラッチ面32とハブクラッチ面38に係合し、これも上記面の摩耗を引き起こす可能性がある。これらの面の摩耗に耐えるために、滑車クラッチ面32とハブクラッチ面38は、好ましくは十分な表面硬度値を有するように形成するか処理する。
【0020】
開放クラッチくぼみ40を実質的にシールすることに加えて、エンドキャップ26はまた、好ましくは開放クラッチくぼみ40内でクラッチ部材24を軸方向に保持する機能がある。クラッチ部材24の偶発的な締まり、緩みを避けるために、エンドキャップ26は好ましくは、クリンプまたは据え込み法によって滑車部材20の滑車フランジ面72に固定する。あるいはエンドキャップ26は、適当な装置、方法で、滑車部材の適当な面に連結してもよい。エンドキャップ26は、好ましくはハブクラッチ部36によって形成されるハブフランジ面66と協働して軸方向の保持機能を行う。しかしクラッチ部材24を開放クラッチくぼみ40内で軸方向に保持するために、他の適当な面あるいは構造とエンドキャップ26を協働させてもよい。
【0021】
好ましい実施例のエンドキャップ26は、エンドキャップ26をハブ部材22に連結し、開放クラッチくぼみ40をシールする機能があるキャップ延長部68を備えている。エンドキャップ26は好ましくは滑車部材20に固定されており、滑車部材20はハブ部材22に対して回転するため、キャップ延長部68は、好ましくはリップシール70でハブ部材22に摺動自在に接触する。代わりにキャップ延長部68は、いかなる適当な構造または方法で、ハブ部材22の適当な面に連結してもよい。
【0022】
滑車部材20とハブ部材22の相対回転運動を許容することに加え、軸受部材はまた、好ましくは滑車部材20とハブ部材22が半径方向隙間74を形成するように、滑車部材20とハブ部材22を位置決めする機能がある。好ましい実施例では、滑車部材20とハブ部材22間の接触を防ぐために、半径方向隙間74と軸方向隙間62が互いにつながっている。さらに好ましい実施例では、半径方向隙間74と軸方向隙間62は、軸受部材52と連通している。こうすることで、軸受部材52は、もしオーバーランニングクラッチプーリーが、軸受部材52とクラッチ部材24に合うグリース材料を含んでいる場合、クラッチ部材24に対向する軸受シール60を省略できる。
【0023】
オーバーランニングクラッチプーリーの分野の技術者ならわかるように、これまでの詳細説明および図面、クレームから、上記のクレームで定義されるこの発明の範囲から外れずに、発明の好ましい実施例に変更を加えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
駆動ベルトを入力装置、円筒軸を出力装置として示す、本発明のオーバーランニングクラッチプーリーの斜視図
【図2】
好ましい実施例のオーバーランニングクラッチプーリーの、図1の2−2線に沿った部分横断面図
Claims (13)
- 入力装置に係合するようになっている滑車入力部と、前記滑車入力部から内向きに延び、前記滑車入力部にほぼ隣接する滑車クラッチ面を形成する滑車クラッチ部を備えた滑車部材と、
前記滑車部材内にほぼ同心状に設けられ、出力装置に係合するようになっているハブ出力部と、前記ハブ出力部から外向きに、それを超えて軸方向に延び、ハブクラッチ面を形成するハブクラッチ部を備えたハブ部材を備え、前記滑車クラッチ面と前記ハブクラッチ面は、協働して開放クラッチくぼみを形成しており、
前記開放クラッチくぼみ内にほぼ位置し、前記滑車部材が前記ハブ部材に対して第1の回転方向に減速すると、前記滑車クラッチ面と前記ハブクラッチ面に係合し、前記滑車部材が前記ハブ部材に対して第1の回転方向に減速すると、前記滑車クラッチ面と前記ハブクラッチ面との係合が解除されるようになっているクラッチ部材と、
前記滑車部材に固定され、前記開放クラッチくぼみをほぼシールするようになっているエンドキャップから成る、
入力装置と出力装置を回転方向に係合させるためのオーバーランニングクラッチプーリー。 - 前記滑車入力部に、協働して入力装置としての溝つきベルトと係合して前記滑車入力面と溝つきベルト間の回転方向および軸方向のスリップを防止する2つの滑車肩部と、少なくとも1本の滑車入力溝を有する滑車入力面が形成されている請求項1のオーバーランニングクラッチプーリー。
- 前記滑車クラッチ面が内向きで、ほぼ円筒形の請求項1のオーバーランニングクラッチプーリー。
- 前記クラッチ部材を前記開放クラッチくぼみに容易に挿入できるように、前記滑車クラッチ面にテーパーが付いている請求項1のオーバーランニングクラッチプーリー。
- 前記ハブ出力部に、出力装置としての円筒軸に係合するハブ出力面が形成されている請求項1のオーバーランニングクラッチプーリー。
- 前記ハブクラッチ面が内向きで、ほぼ円筒形の請求項1のオーバーランニングクラッチプーリー。
- 前記エンドキャップが前記クラッチ部材を軸方向に保持するようになっている請求項1のオーバーランニングクラッチプーリー。
- 前記エンドキャップが、前記ハブ部材に向かって軸方向に延び、ハブ部材に当接してシールしているキャップ延長部を備えている請求項1のオーバーランニングクラッチプーリー。
- 前記エンドキャップが、前記滑車部材と前記ハブ部材との相対回転運動中に、前記ハブ部材に対して摺動する請求項8のオーバーランニングクラッチプーリー。
- 前記滑車部材と前記ハブ部材の間に位置し、前記滑車部材と前記ハブ部材の相対回転運動を許容するようになっている軸受部材をさらに備えている請求項1のオーバーランニングクラッチプーリー。
- 前記滑車クラッチ面と前記ハブクラッチ面が軸方向隙間を形成し、前記クラッチ部材が前記軸方向隙間を横切って位置している請求項1のオーバーランニングクラッチプーリー。
- 前記軸受部材がさらに、前記滑車部材と前記ハブ部材が半径方向隙間を形成するように、前記滑車部材と前記ハブ部材を位置決めするようになっており、前記半径方向隙間と前記軸方向隙間が互いにつながっている請求項11のオーバーランニングクラッチプーリー。
- 前記半径方向隙間が、前記軸受部材と連通している請求項11のオーバーランニングクラッチプーリー。
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